説明

乗客コンベア

【課題】デッキ内にデッキ固定用のボルトやカラー、コロ等が配されていても、移動手摺の全長にわたって加温することができ、熱伝達効率の優れた移動手摺の凍結防止機能を備えた乗客コンベアを提供する。
【解決手段】乗客コンベアは、利用者を乗せ無端状に連結して走行する踏段と同期して走行する移動手摺1を備えた乗客コンベアにおいて、移動手摺1と接触する案内レール3内部に熱源10を組み込み、当該熱源10により移動手摺1を暖めることにより、移動手摺1の凍結を防止する移動手摺の凍結防止機能を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、移動手摺1をガイドする案内レール3内に断熱材4を入れ、その上に電熱線(発熱体)5を組み込み、その発熱の空気伝播により移動手摺1を暖める構造が知られている。図5において、2はデッキボードであり、6はケーブル押さえである。このように移動手摺を暖める理由は、寒冷地に設置されている乗客コンベアが、夜間などの停止時に移動手摺が冷却されて凍結することにより移動手摺を構成するゴム成分が硬化して柔軟性が欠如することにより、乗客コンベアの早朝起動時にスムーズに作動しないというトラブルが発生するおそれがあり、移動手摺の柔軟性を維持し、乗客コンベアの早朝起動時のトラブルを未然に防止するために加温しておく必要があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−269142公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、デッキ内には、図3に示すようにデッキ固定用のボルト7及びカラー8が設置されていたり、図4に示すように移動手摺1の走行抵抗を減らすためにコロ9が配されている。そのため、従来の図5に示す構造においては、このようなボルト7及びカラー8あるいはコロ9が邪魔になるため、これらの部品が配されていない部分のデッキ内にしか電熱線を通すことができないので、電熱線の配線が断続的かつ部分的にならざるを得ない。したがって、移動手摺が走行中は移動手摺を加温することができるが、夜間などの乗客コンベアの停止中は移動手摺も停止するので、移動手摺の加温ができない箇所が発生する。したがって、前記の加温できない箇所においては移動手摺が凍結し、乗客コンベアの起動時にスムーズに作動しないというトラブルが発生するおそれがあった。また、図5に示すように、従来構造においては、電熱線と移動手摺とが離れており、空気伝播による加温であるため熱伝達効率が悪いものであった。
【0005】
本発明の実施形態は、デッキ内にデッキ固定用のボルトやカラー、コロ等が配されていても、移動手摺の全長にわたって加温することができ、熱伝達効率の優れた移動手摺の凍結防止機能を備えた乗客コンベアの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る乗客コンベアは、利用者を乗せ無端状に連結して走行する踏段と同期して走行する移動手摺を備えた乗客コンベアにおいて、移動手摺と接触する案内レール内部に熱源を組み込み、当該熱源により移動手摺を暖めることにより、移動手摺の凍結を防止する移動手摺の凍結防止機能を備えたことを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1のエスカレーターの全体概要を示す図である。
【図2】図1の欄干部分におけるA−A端面図である。
【図3】図2の固定用ボルト及びカラーが設置されている部分における一部を省略したB部拡大断面図である。
【図4】図2のコロが配設されている部分における一部を省略したB部拡大断面図である。
【図5】従来構成の移動手摺を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例に係る乗客コンベアについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0009】
図1〜図4において、1はエスカレータの踏段と同期して走行する移動手摺であり、2はエスカレータの両側に設置される欄干の上端に配され、移動手摺1を支持するデッキボードであり、3は移動手摺1の走行をガイドする案内レールである。7は案内レール3をデッキボードに固定するための固定用ボルトであり、8は案内レールを一定の高さに支持するカラーである。9は移動手摺1の走行抵抗を低減するために配設したコロである。10は案内レール3の内部に取り付けられた熱源である。当該熱源は、電気を通すことにより加熱される電熱線やコードヒーター、温水を通すことにより加温される温水管、又は温風を通すことにより加温される温風管等により構成される。
【0010】
前記熱源10は図3及び図4に示すように、案内レール3が移動手摺1に接触する部分、すなわち本実施例においては移動手摺1の両端湾曲部の内側に位置して移動手摺1を支承するために両側に張り出した案内レール3の鍔部分の内部に配されている。この案内レール3の鍔部分は、移動手摺1の全長にわたって途切れことなく配備されるものである。したがって、熱源10から発せられる熱は案内レール3の少なくとも鍔部分全体を加熱し、加熱された案内レール3の熱は移動手摺1に伝播されるため、熱源10の熱が移動手摺1の全長にわたって極めて効率よく伝達される。
【0011】
図3は、固定ボルト7及びカラー8が配設された箇所における熱源10の配置状態を示しており、このように本実施例においては固定ボルト7及びカラー8が配設されていても、熱源10の配設に支障にならないことが明らかである。また、図4は、コロ9が配設された箇所における熱源10の配置状態を示しており、このように本実施例においてはコロ9が配設されていても、熱源10の配設に支障にならないことが明らかである。
【0012】
以上のように、本実施例に係るエスカレーターは、寒冷地に設置される利用者を乗せ無端状に連結して走行する踏段と同期して走行する移動手摺1の凍結を防止するため、従来のように移動手摺をガイドする案内レールの内方下部に設置するのではなく、案内レール3が移動手摺1と接触する部分の内部に電熱線を利用した熱源10を組み込み、移動手摺1の凍結を防止するものである。また、案内レール3の移動手摺接触部内部に設置される熱源10としては、電熱線だけでなくコードヒータや温水管、温風管等の多様な熱源を利用することができる。
【0013】
以上詳述した本発明の実施例によれば、移動手摺1をガイドする案内レール3の移動手摺接触部内部に熱源10を組み込むことにより、エスカレータの停止時に移動手摺1が暖められることになるので、移動手摺1の凍結防止ができるようになる。したがって、早朝起動時の移動手摺1の凍結による起動不可状態の発生を低減が図れる。
【符号の説明】
【0014】
1・・・移動手摺
2・・・デッキボード
3・・・案内レール
4・・・断熱材
5・・・電熱線(発熱体)
6・・・ケーブル押さえ
7・・・固定用ボルト
8・・・カラー
9・・・コロ
10・・・熱源(電熱線、コードヒーター、温水管、温風管等)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を乗せ無端状に連結して走行する踏段と同期して走行する移動手摺を備えた乗客コンベアにおいて、移動手摺と接触する案内レール内部に熱源を組み込み、当該熱源により移動手摺を暖めることにより、移動手摺の凍結を防止する移動手摺の凍結防止機能を備えたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
熱源が加熱された電熱線であり、加熱された電熱線により移動手摺を暖めることにより、移動手摺の凍結を防止する移動手摺の凍結防止機能を備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
熱源が加熱されたコードヒーターであり、加熱されたコードヒーターにより移動手摺を暖めることにより、移動手摺の凍結を防止する移動手摺の凍結防止機能を備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
熱源が温水管であり、温水管により移動手摺を暖めることにより、移動手摺の凍結を防止する移動手摺の凍結防止機能を備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
熱源が温風管であり、温風管により移動手摺を暖めることにより、移動手摺の凍結を防止する移動手摺の凍結防止機能を備えたことを特徴とした請求項1に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−6729(P2012−6729A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145126(P2010−145126)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】