説明

乗客コンベア

【課題】踏段の移動方向に沿った乗降板の長さ寸法を短くしても乗客に違和感や恐怖心を与えにくく、乗客が踏段から乗降板へ降りるときに躓きにくい乗客コンベア。
【解決手段】無端状の踏段チェーンに取り付けられ一対の乗降口の間を循環移動する踏段2と、乗降口において踏段2の上方に設けられた乗降板16aと、乗降板16aの先端に設けられたコム17とを備え、乗降板16aは、先端に行くほど低くなる第1傾斜部30と、第1傾斜部30の先端から下方に向けて屈曲する第2傾斜部32とを備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアにおいては、無端状の踏段チェーンに取り付けられた多数の踏段を一対の乗降口の間で循環移動させるとともに、これらの踏段の左右両側に立設されている欄干の外周に設けた移動手摺りを踏段に同期させて移動させている。
【0003】
一対の乗降口には、乗降板が敷設され、乗降板の下面にコム取付梁が設けられている。コム取付梁には乗降板の先端に位置するようにコムが取り付けられており、踏段がコム及び乗降板の下方を所定の間隔をあけてほぼ水平方向に移動するようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
このような乗客コンベアでは、乗客が乗降口において踏段から乗降板へ降りるときに、乗降板に足を引っ掛けたり、ステップと乗降板との間につま先を挟んだりすることを防止するため、乗降板の先端に設けられたコムと踏段との上下方向の間隔を小さくするように乗降板が先端に行くほど低くなるように傾斜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−84013公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、乗客コンベアを設置する建屋によっては、踏段の移動方向に沿った乗降板の長さ寸法を大きくすることができない場合があり、このような場合、コムと踏段との間隔を所定寸法以下に設定すると、水平面に対する乗降板の傾斜角度が大きくなりすぎるため、乗客に違和感や恐怖心が与えたり、乗客が踏段から乗降板へ降りるときに躓きやすくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題を考慮してなされたものであり、踏段の移動方向に沿った乗降板の長さ寸法を短くしても乗客に違和感や恐怖心を与えにくく、乗客が踏段から乗降板へ降りるときに躓きにくい乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の乗客コンベアは、無端状の踏段チェーンに取り付けられ一対の乗降口の間を循環移動する踏段と、前記乗降口において前記踏段の上方に設けられた乗降板と、前記乗降板の先端に設けられたコムとを備え、前記乗降板は、先端に行くほど低くなる第1傾斜部と、前記第1傾斜部の先端から下方に向けて屈曲する第2傾斜部とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る乗客コンベアを示す側面図である。
【図2】図1の乗客コンベアに設けられた乗降口の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示す本実施形態の乗客コンベア1は、図1に示すように、多数の踏段2を上階側の乗降口8と下階側の乗降口9との間で循環移動させることで、踏段2の踏み面2aに搭乗した乗客を上階と下階とにわたって搬送するものである。
【0012】
踏段2の両側部には左右一対の欄干10が設けられ、これら欄干10の外周部に踏段2と同期して循環移動する手摺ベルト12が装着されている。
【0013】
踏段2の踏み面2aには、図2に示すように、踏段の移動方向Mに沿って延びる複数本のクリート突条13が所定間隔をあけて互いに平行に設けられ、隣接するクリート突条13の間にクリート溝14が形成されている。
【0014】
多数の踏段2は、無端状の踏段チェーン3によって連結されており、建物の床下に設置されたトラス4内に配置されている。トラス4の内部の上階側にはスプロケット5と駆動モータ及び減速機を備えた駆動装置6とが配置され、トラス4の内部の下階側にはスプロケット7が配置されており、駆動装置6からの出力によって上階側のスプロケット5が回転駆動されることで、下階側のスプロケット7との間に架け渡された踏段チェーン3が循環移動し、踏段2が下階から上階へ、又は、上階から下階へ移動する。
【0015】
図1及び図2に示すように、上階側の乗降口8及び下階側の乗降口9には、踏段の移動方向Mに沿って複数の乗降板16が並べて敷設され、最も踏段2側寄りの乗降板16aの下面にコム取付梁19が設けられている。コム取付梁19には乗降板16aの先端に位置するようにコム17が取り付けられており、踏段2がコム取付梁19及びコム17の下方をほぼ水平方向に移動するようになっている。
【0016】
コム17の先端部には、図3及び図4に示すように、踏段2の踏み面2aに設けられたクリート突条13と噛み合う櫛歯18が設けられており、踏段2上の乗客の足や異物等を乗降板16a上にすくい上げ、乗客の足や異物等が踏段2と乗降板16aとの間に挟まれることを防止している。
【0017】
上記構成の乗客コンベア1において、最も踏段2側寄りの乗降板16aは、先端(つまり、コム17側)に行くほど低くなるように傾斜する第1傾斜部30と、第1傾斜部30の先端30aから下方に向けて屈曲し第1傾斜部30より大きな勾配に設けられた第2傾斜部32とを備える。
【0018】
乗降板16aに設けられた第1傾斜部30は、水平面Hに対する傾斜角度θ1が4°〜5°に設定され、第2傾斜部32は、例えば、水平面Hに対する傾斜角度θ2が5°〜10°に設定され、本実施形態では、第1傾斜部30の傾斜角度θ1が4°に第2傾斜部32の傾斜角度θ2が7.9°に設定されている。
【0019】
また、乗降板16aの先端に設けられたコム17は、第2傾斜部32とコム17との接合部分に角が表れずなだらかに第2傾斜部32に繋がるように傾斜している。
【0020】
以上のように本実施形態の乗客コンベア1では、乗降口8,9に設けられた乗降板16aが、先端に行くほど低くなる第1傾斜部30と、第1傾斜部30の先端30aから下方に向けて屈曲し第1傾斜部30より大きな勾配に設けられた第2傾斜部32とを備え、乗降板16aの先端部が、第1傾斜部30において緩やかに下方へ傾斜してから第2傾斜部32において第1傾斜部30より急に下方へ傾斜する。
【0021】
これにより、第2傾斜部32の傾斜角度θ2の大きさの割りに第2傾斜部32の傾斜が目立ちにくくなるため、乗降板16aの傾斜角度を大きく設けて踏段2の移動方向Mに沿った乗降板16aの長さ寸法を短くしても、乗降口8,9において踏段2から乗降板16aへ降りるときに、乗客が違和感や恐怖心を感じにくく踏段から乗降板16aへ降りるときに躓きにくくなる。
【0022】
このように踏段2の移動方向Mに沿った乗降板16aの長さ寸法を短くすることで、乗降板16aを支持するコム取付梁19を短くすることができ、乗降板16の下方に設けられた機械室のスペースが広く確保したり、あるいは、乗客コンベア1の据付に必要なスペースを縮小することができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0024】
1…乗客コンベア 2…踏段 3…踏段チェーン
4…トラス 5…スプロケット 6…駆動装置
7…スプロケット 8…乗降口 9…乗降口
10…欄干 12…手摺ベルト 13…クリート突条
14…クリート溝 16…乗降板 16a…乗降板
17…コム 18…櫛歯 19…コム取付梁
30…第1傾斜部 32…第2傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の踏段チェーンに取り付けられ一対の乗降口の間を循環移動する踏段と、
前記乗降口において前記踏段の上方に設けられた乗降板と、
前記乗降板の先端に設けられたコムとを備え、
前記乗降板は、先端に行くほど低くなる第1傾斜部と、前記第1傾斜部の先端から下方に向けて屈曲する第2傾斜部とを備えることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記第1傾斜部は水平面に対する傾斜角度が4°〜5°に設定され、前記第2傾斜部は水平面に対する傾斜角度が5°〜10°に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−14401(P2013−14401A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147549(P2011−147549)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】