説明

乗客コンベア

【課題】外装板へのオイル漏出をなくすために、中段横梁に油堰き止め板を設け、またオイルパンの欠損部にオイル漏れ阻止カバーを設けてオイル漏れを解消した乗客コンベアを提供する。
【解決手段】中段横梁4a、4bから接続縦梁2a、2bを通じて下部側のメイン梁におけるL字アングルの接続箇所から下方に滴下するまでの流路に、トラスT内に飛散するオイルが該流路を伝って漏出するのを阻止するオイル漏出阻止体8aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
通常幅、すなわち大人2人が並んで乗ることのできる乗客コンベアにおいては、乗客コンベアを構成するトラスが大型であるためトラスの幅と踏段の幅との間に余裕があり、メイン梁の上下を固定する縦梁がメイン梁より内側に出っ張ることがあっても、トラスを構成する左右下側のメイン梁の間にオイルパンを配することにより、踏段及び踏段を駆動するチェーン等の駆動機構から落下又は飛散するオイルや塵芥を該オイルパンが受け止めることが可能であった。
【0003】
一方、建屋の都合等により、2人乗り乗客コンベアを設置するだけの十分な幅がとれない場合には、大人1人のみが乗れる狭幅形乗客コンベアも設置使用されている。狭幅形乗客コンベアを構成するトラスは小型にせざるを得ず、そのため、トラス幅が狭く、トラス幅と踏段幅に余裕がない。したがって、トラスを構成する左右下側のメイン梁のL字アングルの間隔一杯にオイルパンを配する必要があるが、メイン梁のL字アングルの接続部に配する接続縦梁がオイルパンの箇所まで出っ張るためにオイルパンを左右下側のメイン梁のL字アングルの間隔一杯に配することができず、そのため、オイルパンの一部に欠損部を設けて接続縦梁の出っ張りを迂回しなければならなかった。
【0004】
また、接続縦梁を固定するためにオイルパン上を跨いて左右の接続縦梁に水平方向に架け渡して配される中段横梁は、通常、L字アングルが使用され、その設計上、L字アングルの内角側を上方に向けて配されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、狭幅形乗客コンベアにおいて、踏段チェーンのオイルがトラス下方に配した外装板へ漏れる不具合が多発し、改修の要請が出ている。
【0006】
上記の接続縦梁に水平方向に架け渡して配された中段横梁は、L字アングルの内角側を上方に向けて配されているため、トラス内で踏段チェーン等から飛散又は滴下したオイルがL字アングルの内角側に付着し、このL字アングルが樋の役目となって中段横梁を伝って左右に流れ出し、接続縦梁を迂回するために設けたオイルパンの欠損部に落下し、又は、オイルが接続縦梁を伝ってメイン梁のL字アングルの接続部から外装板に漏出する不具合が発生していた。
【0007】
本発明の実施形態は、外装板へのオイル漏出をなくすために、中段横梁に油堰き止め板を設け、またオイルパンの欠損部にオイル漏れ阻止カバーを設けてオイル漏れを解消した乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る乗客コンベアは、乗客コンベアの走行方向に沿って乗客コンベアの左右下部側及び左右上部側に配され、それぞれ複数のL字アングルを接続してなるメイン梁と、左下部側のメイン梁と右下部側のメイン梁との間を架け渡して配されたオイルパンであって、その左右の端部が各メイン梁に近接して配されたオイルパンと、メイン梁内側に配され、左側上下のメイン梁に架け渡して左側メイン梁におけるL字アングルの接続を固定する接続縦梁及び右側上下のメイン梁に架け渡して右側メイン梁におけるL字アングルの接続を固定する接続縦梁と、オイルパン上を跨いで接続縦梁間に水平方向に配された中段横梁とを有するトラスを備える乗客コンベアであって、中段横梁から接続縦梁を通じて下部側のメイン梁におけるL字アングルの接続箇所から下方に滴下するまでの流路に、トラス内に飛散するオイルが該流路を伝って漏出するのを阻止するオイル漏出阻止体を設けたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施態様に係る乗客コンベアにおいて、上側メイン梁のL字アングルの接続部における接続縦梁と中段横梁との構成を示す一部概略斜視図である。
【図2】図1のA部の要部拡大斜視図である。
【図3】本発明の実施態様に係る乗客コンベアにおいて、下側メイン梁のL字アングルの接続部におけるオイルパンの欠損部にオイル漏れ阻止カバーを配した状態を示す概略図であって、図中の(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は右側面図である。
【図4】図3(a)におけるB部の部分拡大図である。
【図5】図3(a)において、オイル漏れ阻止カバーを分解した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例に係る乗客コンベアについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1においてTはトラスを示す。乗客コンベアであるエスカレータは、上階床と下階床の間にわたって配されたトラスTと、トラスT内で、上階床と下階床の各近傍位置に配された一対の踏段チェーンスプロケットと、当該一対の踏段チェーンスプロケットの間に掛け渡された無端状の踏段チェーンと、当該踏段チェーンに等間隔に連結された複数の踏段と、当該踏段が所定の軌道上を循環走行するよう案内するガイドレールと、トラスTの上面の左右位置に立設された一対の欄干と、当該一対の欄干の外周を循環走行する一対の移動手摺とを備えている。
【0012】
トラスTは、複数の踏段を循環走行させる駆動機構を全て支持する。トラスTは、主としてエスカレータの走行方向に沿って乗客コンベアの左右下部側及び左右上部側の4箇所にメイン梁と各メイン梁を固定するための複数の横梁と縦梁とで構成され、その下方には、外装板が配される(もちろん、両側方にも配される)。該メイン梁は、複数のL字アングルをその長手方向に接続して構成されるものであって、L字アングルの内角側をトラス内方に向けて配されている。
【0013】
図1の1a、1bは4箇所のメイン梁のうちの右上側のメイン梁を構成するL字アングルを示し、上階側のL字アングル1aと下階側のL字アングル1bとが接続された状態を表す。右側メイン梁の内側には、上下のメイン梁に架け渡して右側メイン梁におけるL字アングル1a、1bの接続を固定する接続縦梁2a、2bが配されている。当該接続縦梁2a、2bはL字アングルよりなり、接続縦梁2a、2bの間に接続板3a、3bを介在させてL字アングル1a、1bが接続されている。
【0014】
また、図1及び図2に示すように、右側メイン梁における接続縦梁2a、2bには、不図示の左側メイン梁における接続縦梁との間に、中段横梁4a、4bが、後述するオイルパンの上を跨いで水平方向に配され、接続縦梁を支持している。中段横梁4a、4bは、L字アングルよりなり、L字アングルの内角側を上方に向けて配されている。
【0015】
図3〜図5の1c、1dは4箇所のメイン梁のうちの左下側のメイン梁を構成するL字アングルを示し、上階側のL字アングル1cと下階側のL字アングル1dとが接続された状態を表す。左側メイン梁の内側には上下のメイン梁に架け渡して左側メイン梁におけるL字アングル1c、1dの接続を固定する接続縦梁2c、2dが配されている。当該接続縦梁2c、2dはL字アングルよりなり、接続縦梁2c、2dの間に接続板3c、3dを介在させてL字アングル1c、1dが接続されている。
【0016】
また、左下部側のメイン梁を構成するL字アングル1c、1dと不図示の右下部側のメイン梁を構成するL字アングルとの間には、その間を架け渡してオイルパン5c、5dが配されており、オイルパン5c、5dは、上階側に配されるオイルパン5cが上に、下階側に配されるオイルパン5dが下になるように一部を重ねて配されており、オイルパン上に落下したオイルがオイルパン5cからオイルパン5dへ流下する際に、オイルパン5cとオイルパン5dとの継ぎ目から下方にオイルが漏出しないようになっている。さらに、オイルパン5c、5dは、その左右の端部6c、6dが、左右の下部側のメイン梁を構成するL字アングルに近接して配され、左下部側のメイン梁を構成するL字アングル1c、1d及び不図示の右下部側のメイン梁を構成するL字アングルとオイルパン5c、5dとの間に隙間が生じないように設計されている。ところで、図示するように、左下部側のメイン梁を構成するL字アングル1c、1dには、その接続箇所に接続縦梁2c、2dがトラス内方側に出っ張って配されている。図示を省略するがもちろん右下部側のメイン梁を構成するL字アングルにも、その接続箇所に接続縦梁がトラス内方側に出っ張って配されている。そのため、図5に示すように、オイルパン5cに欠損部7cを形成して、この接続縦梁2c、2dを迂回するように構成している。
【0017】
そこで、本実施例においては、中段横梁4a、4bから接続縦梁2a、2b、2c、2dを通じて下部側のメイン梁におけるL字アングル1c、1d(上部側L字アングル1a、1bの下部側のメイン梁を含む)の接続箇所からその下方に滴下するまでの流路の2箇所に、トラスT内に飛散するオイルが該流路を伝って漏出するのを阻止するオイル漏出阻止体が設けられている。
【0018】
第1のオイル漏出阻止体は、図1及び図2に示すように、中段横梁4aのL字アングルの内角部を遮断するオイル堰き止め板8aにより構成される。図示を省略するが、もちろん中段横梁4bにもオイル堰き止め板が設けられている。オイル堰き止め板8aは、L字アングルの各端縁を結ぶ線分を長辺とする直角三角形状の形態をなし、オイル堰き止め板8aにおける直角を挟む2辺がをL字アングルに取着されている。オイル堰き止め板8aのL字アングルに対する取着にはコーキング剤9aを使用し、オイル堰き止め板8aとL字アングルとの間に隙間が生じないように接着する。中段横梁4aに設けたオイル堰き止め板8aの位置は、オイルパン5c、5dの左右の端部に近接する内側の上方とする。すなわち、中段横梁4aの内角部に飛散又は滴下したオイルはオイル堰き止め板8aにより遮断され、中段横梁4aの内角部から溢れたオイルはオイルパン5c、5d内に落下するように構成する。
【0019】
第2のオイル漏出阻止体は、図3〜図5に示すように、接続縦梁2c、2d下部の下部側メイン梁におけるL字アングル1c、1dの接続箇所を被覆するオイル漏れ阻止カバー8bにより構成される。すなわち、オイル漏れ阻止カバー8bは、オイルパン5cにおける欠損部7cに蓋をするもので、図5に示すように、オイルパン5cとオイルパン5dとにより形成された欠損領域の長さ及び幅より若干大きい矩形の板よりなり、かつ、接続縦梁の断面形状を切り欠いた形状をなすものである。このオイル漏れ阻止カバー8bをオイルパン5c、5dの上から、欠損部7cを覆うように重ねてL字アングル1c、1d及び接続縦梁2c、2dにコーキング剤9bを使用して隙間なく取着し、接続縦梁や隣接する梁にバインド線10で固定する。なお、オイル漏れ阻止カバー8bは、図3(c)に示すように、オイルパン5c側に下方に傾斜させて取り付ける。このようにオイル漏れ阻止カバー8bにて欠損部7cを覆うことにより、L字アングル1c、1dの接続箇所を被覆することができる。したがって、例えば、中段横梁4aに配したオイル堰き止め板8aの外側に飛散又は滴下したオイルは、接続縦梁2c、2dを伝って垂下していくが、オイル漏れ阻止カバー8bにより、垂下してきたオイルは、接続縦梁2c、2d下部の下部側メイン梁におけるL字アングル1c、1dの接続箇所には至らず、オイルパン5cに流下し、したがって、トラスT外に漏出することはなく、よってトラスT下方の外装板にオイルが染み出すことがない。
【0020】
上記したオイル堰き止め板8a及びオイル漏れ阻止カバー8bは取り付けが容易であり、かつ、既設のエスカレータのトラスにも容易に取り付けることができるので、狭幅形のエスカレータにおけるオイル漏出防止としては最適のものである。
【0021】
なお、本実施例はエスカレータについて説明したが、動く歩道における踏段に対しても適用できるものである。また、実施の形態は例示であり、発明の範囲は実施の形態に限られるものではない。
【0022】
以上のように本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0023】
T・・・トラス
1a・・右上側のメイン梁における上階側のL字アングル
1b・・右上側のメイン梁における下階側のL字アングル
1c・・左下側のメイン梁における上階側のL字アングル
1d・・左下側のメイン梁における下階側のL字アングル
2a・・L字アングルの接続縦梁
2b・・L字アングルの接続縦梁
2c・・L字アングルの接続縦梁
2d・・L字アングルの接続縦梁
3a・・接続板
3b・・接続板
3c・・接続板
3d・・接続板
4a・・中段横梁
4b・・中段横梁
5c・・オイルパン
5d・・オイルパン
6c・・オイルパンの端部
6d・・オイルパンの端部
7c・・オイルパンの欠損部
8a・・オイル堰き止め板(オイル漏出阻止体)
8b・・オイル漏れ阻止カバー(オイル漏出阻止体)
9a・・コーキング剤塗布部
9b・・コーキング剤塗布部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの走行方向に沿って乗客コンベアの左右下部側及び左右上部側に配され、それぞれ複数のL字アングルを接続してなるメイン梁と、
左下部側のメイン梁と右下部側のメイン梁との間を架け渡して配されたオイルパンであって、その左右の端部が各メイン梁に近接して配されたオイルパンと、
メイン梁内側に配され、左側上下のメイン梁に架け渡して左側メイン梁におけるL字アングルの接続を固定する接続縦梁及び右側上下のメイン梁に架け渡して右側メイン梁におけるL字アングルの接続を固定する接続縦梁と、
オイルパン上を跨いで接続縦梁間に水平方向に配された中段横梁と
を有するトラスを備える乗客コンベアであって、
中段横梁から接続縦梁を通じて下部側のメイン梁におけるL字アングルの接続箇所から下方に滴下するまでの流路に、トラス内に飛散するオイルが該流路を伝って漏出するのを阻止するオイル漏出阻止体を設けた
ことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
中段横梁がL字アングルよりなるものであって、中段横梁は該L字アングルの内角側を上方に向けて配されており、
オイル漏出阻止体が、中段横梁のL字アングルの内角部を遮断するオイル堰き止め板であることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
中段横梁に設けたオイル堰き止め板の位置が、オイルパンの左右の端部に近接する内側の上方であることを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
オイル堰き止め板をコーキング剤により中段横梁に取着したことを特徴とする請求項2又は3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
オイル漏出阻止体が、接続縦梁下部の下部側メイン梁におけるL字アングルの接続箇所を被覆するオイル漏れ阻止カバーであることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
オイル漏れ阻止カバーをコーキング剤により接続縦梁下部及び下部側メイン梁に取着したことを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−18624(P2013−18624A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154032(P2011−154032)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】