説明

乗客コンベア

【課題】既設本体枠を利用して設置する新設の乗客コンベアの構成上の制限が少なく、良好な作業性で乗客コンベアのリニューアルを実現する。
【解決手段】乗客コンベアは、既設コンベアの構成部品を撤去した本体枠である既設本体枠(1)よりも小型の新設本体枠(11)を有し、新設本体枠(11)の長手方向における両端部に受梁(12E、13E)が設けられ、受梁(12E、13E)を既設本体枠(1)上に配置するようにして、新設本体枠(11)が既設本体枠(1)内に設置される。乗客コンベアは、新設本体枠(11)の傾斜角度が既設本体枠(1)の傾斜角度と等しく、新設本体枠(11)の長手方向における中間部(14)に、上方から作業が可能な支持体(50)を備え、支持体(50)が既設本体枠(1)の上面で支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道などに代表される乗客コンベアに関し、特に、既設の乗客コンベアの本体枠を利用して新設の乗客コンベアを設置するリニューアルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば老朽化した既設の乗客コンベアを撤去し、同じ場所に新設の乗客コンベアを設置することで乗客コンベアのリニューアルが行われることがある。リニューアル方法として、既設の乗客コンベアを撤去する際、その本体枠(既設本体枠)を撤去せずに残し、既設本体枠内に新設の乗客コンベアを設置する工法が知られている。この工法には、乗客コンベアの据付性に優れ、コストが削減できる等のメリットがある。
【0003】
既設本体枠内に新設の乗客コンベアを設置する場合、新設本体枠の長手方向の両端に受梁を設け、新設本体枠の受梁を既設本体枠の受梁の上に置き、既設本体枠で新設本体枠を支持する方法がある(特許文献1参照)。特許文献1では、エスカレータの長手方向の両端すなわち上下2か所で新設本体枠の受梁が既設本体枠の受梁の上に乗っている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された方法では、エスカレータの距離が長い場合や揚程が高い場合には、十分な強度の支持が得られない場合がある。特に新設本体枠は既設本体枠内に設定されるため小型かつ軽量であることが好ましいが、小型軽量化しようとすると機械強度が低下し、たわみやすいなどの問題が生じる。そのため、十分な強度を保つために小型軽量化ができない場合がある。
【0005】
既設本体枠に支持された新設本体枠の強度不足を補う方法として、両端部だけでなく中間部でも既設本体枠によって新設本体枠を支持するという方法がある(特許文献2、3、4参照)。
【0006】
特許文献2に記載された方法では、既設本体枠の傾斜角度よりも新設乗客コンベアの傾斜角度を大きくし、傾斜角度の違いによって中間部に生じる新設本体枠と既設本体枠の高さの違い(ギャップ)を利用して新設乗客コンベアの縦材に支持体を設け、その支持体を既設本体枠によって支持する。
【0007】
特許文献3に記載された方法では、新設の本体枠に相当する内側トラスが既設の本体枠に相当する外側トラスにボルトまたはピンで締結される。
【0008】
特許文献4に記載された方法では、既設本体枠に固定材が取り付けられており、新設の本体枠がその固定材によって支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−230727号公報
【特許文献2】国際公開98/22382号
【特許文献3】特開2009−184771号公報
【特許文献4】特公平3−48115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載された方法では、新設の本体枠を支持する構成において幾つかの制限がある。新設の乗客コンベアの傾斜角度が既設本体枠の傾斜角度と違っていなければならないという制限がある。また、支持体を新設の乗客コンベアの縦材に設けるので、支持体を設けることが可能な位置や間隔が縦材の位置や間隔に依存するという制限がある。
【0011】
また、特許文献2に記載された方法では作業性においても難がある。既設本体枠と新設の乗客コンベアの傾斜角度の違いで生じるギャップを利用するので、支持体を取り付けるべき高さ方向の位置が乗客コンベアの長手方向の位置によって異なる。また、新設の乗客コンベアの縦材の裏側においてジャッキボルトをねじ込む作業を行う必要がある。
【0012】
特許文献3に記載された方法では、外側トラスにボルト等を取り付けるために、現場において既設の外側トラスを加工するという煩雑な作業が必要とされる。また、特許文献4に記載された方法でも、現場において既設本体枠に固定材を取り付けるという煩雑な作業が必要とされる。
【0013】
本発明の目的は、既設本体枠を利用して設置する新設の乗客コンベアの構成上の制限が少なく、良好な作業性で乗客コンベアのリニューアルを実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様による乗客コンベアは、既設の乗客コンベアの構成部品を撤去した本体枠である既設本体枠の内部に全体または一部分が配置されるように設置され、自身の内部に空間を有する新設本体枠と、前記新設本体枠に設置される構成部品とを有し、前記新設本体枠の長手方向における両端部に受梁が設けられ、前記受梁を前記既設本体枠上に配置するようにして、前記新設本体枠が前記既設本体枠に設置され、前記新設本体枠の傾斜角度が前記既設本体枠の傾斜角度と等しく、前記新設本体枠の長手方向における中間部に、上方から作業が可能な支持体を備え、前記支持体が前記既設本体枠の上面で支持されるものである。
【0015】
また、前記支持体は、前記新設本体枠の長手方向の任意の位置に短手方向の両端に張り出すように設けられ、前記既設本体枠の上面に当接することにしてもよい。
【0016】
また、前記支持体は、前記新設本体枠に取り付けられた支持具と、前記既設本体枠に対する前記新設本体枠の高さ調整が可能に前記支持具に固定され、前記既設本体枠に当接するジャッキボルトと、を有することにしてもよい。
【0017】
また、前記支持体は前記新設本体枠と前記既設本体枠との間隔を所望の間隔に広げるように調整される、ことにしてもよい。
【0018】
また、前記支持体は、前記既設本体枠の中間部が建屋によって支持されている位置に基づいて定まる位置に設けられることにしてもよい。
【0019】
また、前記支持体は、前記既設本体枠の長手方向における、前記既設本体枠が支持されている位置と一致する位置に設けられることにしてもよい。
【0020】
また、前記傾斜角度が水平でない角度であり、前記支持体は、前記既設本体枠の長手方向における、前記既設本体枠が支持されている位置よりも傾斜の上側の位置に設けられることにしてもよい。
【0021】
また、前記長手方向における、前記支持体が設けられた前記位置の前後にそれぞれ更に支持体が設けられることにしてもよい。
【0022】
また、前記傾斜角度が水平でない角度であり、前記新設本体枠の前記傾斜角度をもった中間部である新設傾斜部の上面が、前記既設本体枠の前記傾斜角度をもった中間部である既設傾斜部の上面よりも上側に位置することにしてもよい。
【0023】
また、前記新設本体枠は前記新設傾斜部の両端部にそれぞれ配置された新設上部水平部と新設下部水平部とを有し、前記既設本体枠は前記既設傾斜部の両端部にそれぞれ配置された既設上部水平部と既設下部水平部とを有し、前記既設本体枠の両端部の上面と前記新設本体枠の両端部の上面とが同じ高さであることにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、既設本体枠を利用して設置する新設の乗客コンベアの構成上の制限が少なく、良好な作業性で乗客コンベアのリニューアルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態における既設本体枠内に設置された新設エスカレータの本体枠の側面図である。
【図2】建屋梁6周辺を拡大した側面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
本実施形態では、既設エスカレータの本体枠(既設本体枠)を利用して設置される新設のエスカレータを例示する。図1は、本実施形態における既設本体枠内に設置された新設エスカレータの本体枠の側面図である。図1において、既設本体枠1は二点鎖線で示され、新設エスカレータの本体枠である新設本体枠11は実線で示されている。
【0028】
完成体のエスカレータは、本体枠と、本体枠の内部あるいは上部に設置される様々な構成部品とを有する。構成部品には、無端状に配置されて移動するステップ、ステップを案内するレール、ステップの両端に直立する欄干、ステップと同期して移動するハンドレール、ステップ及びハンドレールを駆動する駆動装置等が含まれる。これら構成部品は本発明に直接関連しないので、図示していない。
【0029】
設置されたエスカレータから本体枠の内部あるいは上部の構成物品を撤去すると本体枠だけが残る。本実施形態の既設本体枠1は、このように内部および上部の構成部品が撤去されている。一方、新設本体枠11は内部および上部に少なくとも一部の構成部品を備えている。
【0030】
まず、既設本体枠1について説明する。
【0031】
図1を参照すると、既設のエスカレータから構成部品を撤去した既設本体枠1は、第1下部水平部2と、第1上部水平部3と、第1傾斜部4とから構成されている。
【0032】
第1下部水平部2は、既設本体枠1の下側の水平部分である。第1下部水平部2のある側は上りエスカレータであれば乗り口側となり、下りエスカレータであれば降り口側となる。第1上部水平部3は、既設本体枠1の上側の水平部分である。第1上部水平部3のある側は下りエスカレータであれば乗り口側となり、上りエスカレータであれば降り口側となる。
【0033】
第1傾斜部4は、既設本体枠1の第1下部水平部2と第1上部水平部3との間の傾斜部分である。第1傾斜部4の水平面に対する傾斜角度がθである。特殊な用途に用いられるエスカレータを除き、一般にはθ=30°である。
【0034】
既設本体枠1の第1下部水平部2側と第1上部水平部3側の両方の端部には、それぞれ受梁2Eと受梁3Eが設けられている。受梁2Eは建屋の下側階の梁である建屋梁5上に乗っている。受梁3Eは建屋の上側階の梁である建屋梁6上に乗っている。
【0035】
図2は建屋梁6周辺を拡大した側面図である。図2には図1のAの部分が拡大して示されている。図2を参照すると、建屋梁6上に受梁3Eが乗っている。建屋梁5周辺も建屋梁6周辺と同様の構造である。
【0036】
図3は図1のB−B断面図である。図3を参照すると、既設本体枠1の断面形状は、左右一対の側枠7A、7Bと、これら一対の側枠7A、7Bを下部で連結する底辺材8とを有し、これらによって略U字型に形成されている。既設本体枠1の内部には横内幅がWで深さがhの収納空間がある。既設本体枠1の収納空間には新設の乗客コンベアが収納される。
【0037】
側枠7Aは、上弦材9aと、この上弦材9aに対して間隔をおいて下方に位置する下弦材9bと、これら上弦材9aと下弦材9bとを連結する縦材9cとで構成されている。側枠7Aに対向する側枠7Bも側枠7Aと同様の構成である。底辺材8が側枠7Aの下弦材9bと側枠7Bの下弦材9bとを連結している。
【0038】
図1に戻り、既設本体枠1は一例として分離可能な3つの部分からなり、それらが長手方向の所定の中間位置X、Xで接合される分割構造である。本実施形態では中間位置X、Xは第1傾斜部4内にある。
【0039】
次に、新設本体枠11について説明する。
【0040】
新設のエスカレータの本体枠である新設本体枠11は、既設本体枠1の収納空間に収納されるため、長手方向および短手方向(収納空間の横幅方向)において既設本体枠1よりも小型にできている。
【0041】
図1を参照すると、新設本体枠11は、既設本体枠1と同様に、第2下部水平部12と、第2上部水平部13と、第2傾斜部14とから構成されている。新設本体枠11には、ステップ、ハンドレール、駆動装置、レールなど各種の構成部品が装着されているが、図には示していない。
【0042】
第2下部水平部12は、新設本体枠11の下側の水平部分である。第2下部水平部12のある側は上りエスカレータであれば乗り口側となり、下りエスカレータであれば降り口側となる。第2上部水平部13は、新設本体枠11の上側の水平部分である。第2上部水平部13のある側は下りエスカレータであれば乗り口側となり、上りエスカレータであれば降り口側となる。
【0043】
第2傾斜部14は、新設本体枠11の第2下部水平部12と第2上部水平部13の間の傾斜部分である。第2傾斜部14の水平面に対する傾斜角度θは、既設本体枠1における第1傾斜部4の傾斜角度θと同じであり、一般的な例として30°である。
【0044】
新設本体枠11の第2下部水平部12側と第2上部水平部13側の両方の端部には、それぞれ受梁12Eと受梁13Eが設けられている。受梁12Eは既設本体枠1の受梁2Eの上に高さ調整用のジャッキボルトを介して乗せられている。受梁13Eは既設本体枠1の受梁3Eの上に高さ調整用のジャッキボルトを介して乗せられている。図2を参照すると、建屋梁6上に既設本体枠1の受梁3Eと新設本体枠11の受梁13Eが乗せられている。建屋梁5周辺も建屋梁6周辺と同様の構造である。
【0045】
既設本体枠1の第1傾斜部4と新設本体枠11の第2傾斜部14の傾斜角度が同じなので、既設本体枠1の第1傾斜部4と新設本体枠11の第2傾斜部14との間隔は位置によらず一定である。本実施形態では第2傾斜部14の上面が第1傾斜部4の上面よりもギャップHだけ高くなるように設置されている。
【0046】
図3を参照すると、新設本体枠11の断面形状は、左右一対の側枠15A、15Bと、これら一対の側枠15A、15Bを下部で連結する底辺材16と、側枠15A、15Bを中間部で連結する横桁17とを有している。
【0047】
側枠15Aは、上弦材18aと、この上弦材18aに対して間隔をおいて下方に位置する下弦材18bと、これら上弦材18aと下弦材18bとを連結する縦材18cとで構成されている。側枠15Aに対向する側枠15Bも側枠15Aと同様の構成である。底辺材16が側枠15Aの下弦材18bと側枠15Bの下弦材18bとを連結している。
【0048】
図1に戻り、新設本体枠11は一例として分離可能な3つの部分からなり、それらが長手方向の所定の中間位置Y、Yで接合される分割構造である。本実施形態では中間位置Y、Yは第2傾斜部14内にある。
【0049】
本実施形態では、図3に示すように、支持体50が新設本体枠11の第2傾斜部14の上弦材18aの側面に、側方に張り出すように取り付けられている。この支持体50は上弦材18aの長手方向に並んで複数設けられている。
【0050】
より詳しく説明すると、新設本体枠11の上弦材18a側面に、新設本体枠11の長手方向に沿って複数の支持体50が互いに間隔をおいて取り付けられている。各支持体50は支持具51とジャッキボルト52を含む構成である。支持具51は、上弦材18a側面に溶接又はボルトで固定されている。ジャッキボルト52は支持具51に上方から下向きにねじ込まれ、その先端が既設本体枠1の上弦材9aの上面に当接する。ジャッキボルト52は直径20〜24mm程度が好適であり、既設本体枠1の上弦材9aに当接する部分は一例として平面である。
【0051】
なお、ジャッキボルト52の上弦材9aに当接する部分は平面でなく、凸部を有する形状であってもよい。
【0052】
また、ジャッキボルト52をねじ込む量を調整することにより、新設本体枠11のたわみや歪を補正し、据付精度を高めることができる。具体的には、受梁12E、13Eによって両端部で新設本体枠11が既設本体枠1に支えられているので、新設本体枠11の重みで縮まった、新設本体枠11の上面と既設本体枠1の上面との間隔を所望の間隔に広げるようにジャッキボルト52のねじ込み量を調整すればよい。
【0053】
図3では、ジャッキボルト52が支持具51にほぼ完全にねじ込まれている場合が描かれているが、実際には、上弦材18aで構成される第2傾斜部14の上面が、上弦材9aで構成される第1傾斜部4の上面よりもギャップHだけ高くなるように、ジャッキボルト52のねじ込み量は適切に調整される。例えばジャッキボルト52を適切なねじ込み位置にロックナットで固定すればよい。
【0054】
上述したように新設本体枠11と既設本体枠1の傾斜角度が同じであり、つまり第2傾斜部14と第1傾斜部4が平行なので、全ての支持具51を上弦材18aに対して同じ高さに取り付ければよいので、作業性がよい。例えば、支持具51の最上部を上弦材18aの上面と一致させればよい。
【0055】
また、新設本体枠11の長手方向に伸びる上弦材18aに支持具51を取り付け、その支持具51を既設本体枠1の長手方向に伸びる上弦材9aで支持するので、支持具51の長手方向の取り付け位置、間隔、個数が制限されない。そのため、支持による強度の確保が有効に働く位置に支持体50を設けることが可能である。
【0056】
例えば、既設本体枠1が中間部においても建屋によって支持されている場合、支持体50は、既設本体枠1が建屋によって支持されている位置に基づいて定まる位置に設けることが好ましい。より具体的には、既設本体枠1の長手方向における、既設本体枠1が支持されている位置と一致する位置に支持体50を設けるのが好ましい。また、傾斜角度θ、θが水平でない角度(30°)なので、既設本体枠1の長手方向における、既設本体枠1が支持されている位置よりも傾斜の上側の位置に支持体を設けるのも好ましい。また、既設本体枠1が支持されている位置に基づいて定めた位置に設けられた1つの支持体50に対して、長手方向における前後にそれぞれ更に支持体50を設けるのも好ましい。
【0057】
また、上述のような構成により、ジャッキボルト52の取り付けおよびねじ込み量の調整を上方からの作業で行うことができるので作業性がよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、既設本体枠1と新設本体枠11の傾斜角度の違いを利用するものではないので、既設本体枠1に対する新設本体枠11の傾斜角度の制限がない。また、本実施形態によれば、エスカレータの長手方向の任意の位置に支持体50を取り付け、その支持体50を既設本体枠1の上弦材9aによって支持するので、新設本体枠11に対する支持体50の取り付け位置など制限が無い。例えば、既設本体枠1が建屋によって支持されている位置の直上、つまり、既設本体枠1が建屋によって支持されている長手方向の位置と一致する位置に支持体50を設ければ、建屋の支持により強力な支持が得られる。
【0059】
また、既設本体枠1に対して新設本体枠11を設置するための加工等の追加作業を行うことなく、新設のエスカレータの縦荷重K1を既設本体枠1で受けて新設本体枠11およびエスカレータの強度を確保することができる。また、ジャッキボルト52による新設本体枠11の高さの調整を上方からの容易な作業で行うことができるので、容易に新設本体枠11のたわみや歪を低減し、据付精度を高めることができる。
【0060】
新設本体枠11を長手方向両端部の受梁12E、13Eで既設本体枠1に固定し、ジャッキボルト52で新設本体枠11と既設本体枠1の間隔を所望の間隔に押し広げるように調整されるので、ジャッキボルト52が既設本体枠1に垂直な強力な力で既設本体枠1に押し付けられ、安定した支持を実現することができる。
【0061】
また、支持体50の設置間隔を密にして新設の乗客コンベアにかかる荷重を分散させれば、新設本体枠11の構成材料の断面積を小さくしても、支持体50による支持で全体の強度が確保できる為、新設の乗客コンベアの軽量化を図ることも可能である。
【0062】
なお、上記実施形態は、既設本体枠1と新設本体枠11の傾斜角度θ、θが共に30°である場合を例示したが、本発明がこの例に限定されることはない。当然のことながら、既設本体枠1の傾斜角度θと新設本体枠11の傾斜角度θが等しければ、25°、35°など他の角度のエスカレータに本発明を適用することもできる。
【0063】
また、上記実施形態では、乗客コンベアの一例としてエスカレータを例示したが、本発明がエスカレータに限定されることはない。他の例として、踏面に段差がない動く歩道にも本発明は適用できる。その場合、傾斜角度θ、θが0°ということになる。
【0064】
ただし、上記実施形態のように上下に水平部があり、その間に傾斜部があるような構成のエスカレータでは、新設本体枠11の第2傾斜部14の上面を、既設本体枠1の第1傾斜部4の上面よりも、上側に位置するように配置することにより、第2傾斜部14と第1傾斜部4との間に高さの違い(ギャップH)が生じ、これを利用して支持体50を設けることができる。
【0065】
その場合に、例えば図1に示すように、第1上部水平部3の上面と第2上部水平部13の上面とを同じ高さにしつつ、新設本体枠11の第2上部水平部13と第2傾斜部14との間の上面側の折れ点の位置P2を、既設本体枠1の第1上部水平部3と第1傾斜部4との間の上面側の折れ点の位置P1の位置よりも傾斜部側に突出する位置にする、すなわち、第2上部水平部13の上面の長さの方が第1上部水平部3の上面の長さよりも長くなるようにすることで、傾斜部において上記ギャップHを形成できる。
【0066】
同様に、第1下部水平部2の上面と第2下部水平部12の上面とを同じ高さにしつつ、新設本体枠11の第2下部水平部12と第2傾斜部14との間の上面側の折れ点の位置P4を、既設本体枠1の第1下部水平部2と第1傾斜部4との間の上面側の折れ点の位置P3の位置よりも傾斜部側に突出する位置にする、すなわち、第2下部水平部12の上面の長さの方が第1下部水平部2の上面の長さよりも短くなるようにする。
【0067】
その結果、傾斜部に支持体50を設けても、第1上部水平部3と第2上部水平部13を同じ高さとし、第1下部水平部2と第2下部水平部12を同じ高さとすることができ、既設本体枠1と新設本体枠11の両端部の高さを同じにすることができる。上下の両端部において既設本体枠1と新設本体枠11の高さを同じにすれば、新設エスカレータの乗り口および降り口を既設エスカレータの乗り口および降り口と同じ高さに容易に設定することができるので、好適である。
【0068】
また、上記実施形態では、支持体50が上弦材18aの側面に固定的に取り付けられる例を示したが、本発明がこの例に限定されることはない。他のとして、支持体50が上弦材18aの長手方向に移動することができるように、かつ任意の位置に固定できるように設けられていてもよい。
【0069】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…既設本体枠、11…新設本体枠、12…下部水平部、12E…受梁、13…上部水平部、13E…受梁、14…傾斜部、15A…側枠、15B…側枠、16…底辺材、17…横桁、18a…上弦材、18b…下弦材、18c…縦材、2…下部水平部、2E…受梁、3…上部水平部、3E…受梁、4…傾斜部、5…建屋梁、50…支持体、51…支持具、52…ジャッキボルト、6…建屋梁、7A…側枠、7B…側枠、8…底辺材、9a…上弦材、9b…下弦材、9c…縦材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の乗客コンベアの構成部品を撤去した本体枠である既設本体枠の内部に全体または一部分が配置されるように設置され、自身の内部に空間を有する新設本体枠と、
前記新設本体枠に設置される構成部品とを有し、
前記新設本体枠の長手方向における両端部に受梁が設けられ、前記受梁を前記既設本体枠上に配置するようにして、前記新設本体枠が前記既設本体枠に設置され、
前記新設本体枠の傾斜角度が前記既設本体枠の傾斜角度と等しく、前記新設本体枠の長手方向における中間部に、上方から作業が可能な支持体を備え、前記支持体が前記既設本体枠の上面で支持される、乗客コンベア。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアにおいて、
前記支持体は、前記新設本体枠の長手方向の任意の位置に短手方向の両端に張り出すように設けられ、前記既設本体枠の上面に当接する、乗客コンベア。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乗客コンベアにおいて、
前記支持体は、前記新設本体枠に取り付けられた支持具と、前記既設本体枠に対する前記新設本体枠の高さ調整が可能に前記支持具に固定され、前記既設本体枠に当接するジャッキボルトと、を有する、乗客コンベア。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の乗客コンベアにおいて、
前記支持体は前記新設本体枠と前記既設本体枠との間隔を所望の間隔に広げるように調整される、乗客コンベア。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の乗客コンベアにおいて、
前記支持体は、前記既設本体枠の中間部が建屋によって支持されている位置に基づいて定まる位置に設けられる、乗客コンベア。
【請求項6】
請求項5に記載の乗客コンベアにおいて、
前記支持体は、前記既設本体枠の長手方向における、前記既設本体枠が支持されている位置と一致する位置に設けられる、乗客コンベア。
【請求項7】
請求項5に記載の乗客コンベアにおいて、
前記傾斜角度が水平でない角度であり、
前記支持体は、前記既設本体枠の長手方向における、前記既設本体枠が支持されている位置よりも傾斜の上側の位置に設けられる、乗客コンベア。
【請求項8】
請求項6または7の乗客コンベアにおいて、
前記長手方向における、前記支持体が設けられた前記位置の前後にそれぞれ更に支持体が設けられる、乗客コンベア。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の乗客コンベアにおいて、
前記傾斜角度が水平でない角度であり、
前記新設本体枠の前記傾斜角度をもった中間部である新設傾斜部の上面が、前記既設本体枠の前記傾斜角度をもった中間部である既設傾斜部の上面よりも上側に位置する、乗客コンベア。
【請求項10】
前記請求項9に記載の乗客コンベアにおいて、
前記新設本体枠は前記新設傾斜部の両端部にそれぞれ配置された新設上部水平部と新設下部水平部とを有し、
前記既設本体枠は前記既設傾斜部の両端部にそれぞれ配置された既設上部水平部と既設下部水平部とを有し、
前記既設本体枠の両端部の上面と前記新設本体枠の両端部の上面とが同じ高さである、乗客コンベア。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−67461(P2013−67461A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206172(P2011−206172)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】