説明

乗客コンベア

【課題】既設フレーム内に新設フレームを設置する乗客コンベアにおいて新設フレーム内の空間を拡大した乗客コンベアを提供する。
【解決手段】乗客コンベアは、既設の乗客コンベアの構成部品を撤去したフレームである既設フレームの内部に全体または一部分が配置されるように設置され、自身の内部に空間を有する新設フレーム(3)と、新設フレーム(3)に設置される構成部品とを有し、新設フレーム(3)の短手方向の両端に、新設フレーム(3)から張り出した支持体(4、5)が設けられ、支持体(4、5)を既設フレーム(1)上に配置するようにして、新設フレーム(3)が既設フレーム(1)に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターや動く歩道などに代表される乗客コンベアに関し、特に、既設の乗客コンベアのフレームを利用して新設の乗客コンベアを設置するリニューアルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば老朽化した既設の乗客コンベアを撤去し、同じ場所に新設の乗客コンベアを設置することで乗客コンベアのリニューアルが行われることがある。リニューアル方法として、既設の乗客コンベアを撤去する際、そのフレーム(既設フレーム)を撤去せずに残し、既設フレーム内に新設の乗客コンベアを設置する工法が知られている(特許文献1参照)。この工法には、乗客コンベアの据付性に優れ、コストが削減できる等のメリットがある。
【0003】
既設フレーム内に新設の乗客コンベアを設置する場合、新設フレームの長手方向の両端に支持部材を設け、新設フレームの支持部材を既設フレームの支持部材の上に置き、既設フレームで新設フレームを支持する方法がある(特許文献2参照)。
【0004】
図1は、新設フレームの長手方向の両端に設けた支持部材を既設フレームの支持部材の上に配置した支持部近傍の構造を示す図である。
【0005】
図1を参照すると、建屋梁8上に既設フレーム1の支持部材2が配置されている。そして、その既設フレーム1の支持部材2の上に、新設フレーム3の支持部材13が配置されている。既設フレーム1の上面と新設フレーム3の上面の高さが一致するように、支持部材13は、既設フレーム1の支持部材2上に配置する部分が新設フレーム3の上面よりも高い位置になるように、新設フレーム3に取り付けられている。支持部材13が新設フレーム3に取り付けられている取り付け部分は補強部材14で補強されている。新設フレーム3の上面が既設フレーム1の上面と同じ高さになっているので、新設エスカレータ床10の高さを建屋床9の高さと一致させることができている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−152782号公報
【特許文献2】特開2008−230727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図1に示した構造では、新設フレーム3の長手方向の端部が既設フレーム1の端部よりもg2だけ内側に入り、それだけ新設フレーム3が小さくなる。これは新設フレーム3に固定された支持部材13の厚さ等が原因である。新設フレーム3が小さくなると、新設エスカレータの駆動機や電気盤などの機器を設置する新設フレーム3内部の機械室12bのスペースが狭くなり、それら機器の設置性、操作性、保守性が低下してしまう。
【0008】
本発明の目的は、既設フレーム内に新設フレームを設置する乗客コンベアにおいて新設フレーム内の空間を拡大した乗客コンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による乗客コンベアは、既設の乗客コンベアの構成部品を撤去したフレームである既設フレームの内部に全体または一部分が配置されるように設置され、自身の内部に空間を有する新設フレームと、前記新設フレームに設置される構成部品とを有し、前記新設フレームの短手方向の両端に、前記新設フレームから張り出した支持体が設けられ、前記支持体を前記既設フレーム上に配置するようにして、前記新設フレームが前記既設フレームに設置される。
【0010】
また、前記新設フレームは、長手方向の両端のうち少なくとも一方の端部近傍に、前記短手方向の両端に前記新設フレームから張り出した前記支持体が設けられていてもよい。
【0011】
また、前記支持体は前記新設フレームの平坦部に設けられていてもよい。
【0012】
また、前記支持体は、前記新設フレームに前記新設フレームから張り出すように取り付けられた支持具と、前記既設フレームに対する前記新設フレームの高さ調整が可能に前記支持具に固定され、前記既設フレームに当接するジャッキボルトと、を有するものであってもよい。
【0013】
また、前記支持具は、前記ジャッキボルトを前記新設フレームの上面よりも高い面で保持するL字板であってもよい。
【0014】
また、前記新設フレームはその上面が前記既設フレームの上面より高い位置となるように支持され、建屋の床面と乗客コンベアの床面との間にスロープが設けられるものであってもよい。
【0015】
あるいは、前記支持具は、前記ジャッキボルトを前記新設フレームの上面と同じ高さの面で保持するL字板であってもよい。
【0016】
また、前記支持具は、長手方向に伸びて前記新設フレームの上面を構成する新設上弦材に取り付けられてもよい。
【0017】
また、前記新設フレームは、前記新設フレームの両端近傍の平坦部と、前記平坦部の間に設けられた傾斜部とを有し、両方の前記平坦部に前記支持体が設けられ、前記傾斜部には前記支持体が設けられていないものであってもよい。
【0018】
また、前記新設フレームは、前記新設フレームの両端近傍の平坦部と、前記平坦部の間に設けられた傾斜部とを有し、両方の前記平坦部と前記傾斜部に前記支持体が設けられ、前記平坦部に設けられた支持体は、前記新設フレームに前記新設フレームから張り出すように取り付けられた支持具と、前記既設フレームに対する前記新設フレームの高さ調整が可能に前記支持具に固定され、前記既設フレームに当接するジャッキボルトと、を有し、前記傾斜部に設けられた支持体は、前記新設フレームに前記新設フレームから張り出すように取り付けられた支持具と、前記既設フレームに対する前記新設フレームの高さ調整が可能に前記支持具と前記既設フレームとに固定されるジャッキボルトと、を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、既設フレーム内に新設フレームを設置する乗客コンベアにおいて新設フレーム内の空間を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】新設フレームの長手方向の両端に設けた支持部材を既設フレームの支持部材の上に配置した支持部近傍の構造を示す図である。
【図2】本実施形態の乗客コンベアのフレームが設置された状態の正面図である。
【図3】本実施形態の乗客コンベアの長手方向の一方の端部近傍の平面図である。
【図4】図3のA−A線に沿った断面図である。
【図5】図3のB−B線に沿った断面図である。
【図6】新設フレームにおける支持体の取り付け位置の一例について説明するための図である。
【図7】新設フレームにおける支持体の取り付け位置の他の例について説明するための図である。
【図8】図7における傾斜部3bの支持体の支持構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について説明する。
【0022】
図2は、本実施形態の乗客コンベアのフレームが設置された状態の正面図である。ここでは乗客コンベアの例としてエスカレーターが示されている。
【0023】
本実施形態の乗客コンベアは、既設の乗客コンベアの構成部品を撤去したフレームである既設フレーム1内に、新たなフレーム(新設フレーム3)を設置するリニューアル工法で新規に設置される乗客コンベアである。本実施形態の乗客コンベアは、既設フレーム1の内部に全体または一部分が配置されるように設置され、自身の内部に空間を有する新設フレーム3と、その新設フレーム3に設置される構成部品(不図示)とを有する。
【0024】
構成部品には、無端状に配置されて移動するステップ、ステップを案内するレール、ステップの移動方向に沿って直立する欄干、ステップと同期して移動するハンドレール、ステップ及びハンドレールを駆動する駆動装置等が含まれる。これら構成部品は本発明に直接関連しないので、図示していない。
【0025】
図3は、本実施形態の乗客コンベアの長手方向の一方の端部近傍の平面図である。
【0026】
既設フレーム1には長手方向の端部に張り出すように支持部材(受梁)2が接合されており、既設フレームは支持部材2を建屋梁8(不図示)上に乗せるように設置されている。
【0027】
新設フレーム3は、その短手方向の両端に支持体(受梁)が設けられ、支持体を既設フレーム1上に乗せるようにして、既設フレーム1に設置されている。支持体は、新設フレーム3に、新設フレーム3から張り出すように取り付けられたL字板である支持具4と、既設フレーム1に対する新設フレーム3の高さ調整が可能に支持具4にねじ込まれて固定され、既設フレーム1に当接するジャッキボルト5とを有している。ジャッキボルト5のねじ込み量を調整することによって、新設フレーム3の高さ方向における設置位置を調整することができる。
【0028】
このような構成の支持体は、新設フレーム3の長手方向の両端のうち少なくとも一方の端部近傍に設けられる。このような構成の支持体が新設フレーム3のいずれか一方の端部近傍のみに設けられる場合、他方の端部には例えば、図1に示したような他の支持構成が採用される。
【0029】
図4は、図3のA−A線に沿った断面図である。
【0030】
既設フレーム1の上面は長手方向に伸びる上弦材6で構成されている。新設フレーム3の上面は長手方向に伸びる上弦材7で構成されている。支持具4はこの上弦材7に接合されている。支持具4にはジャッキボルト5が適切なねじ込み量で固定されており、ジャッキボルト5が既設フレーム1の上弦材6に当接している。
【0031】
新設フレーム3の支持具4が短手方向の両端に配置されているので、長手方向において、新設フレーム3の端部の位置を既設フレーム1の端部に近づけることができ、新設フレーム3内の空間を拡大することができる。
【0032】
図5は、図3のB−B線に沿った断面図である。
【0033】
既設フレーム1に取り付けられた支持部材2が建屋梁8上に配置されている。新設フレーム3には長手方向の端部に支持部材等が無いので、新設フレーム3の長手方向の端部は既設フレーム1の長手方向の端部に近づけることができている。
【0034】
新設フレーム3の長手方向の端部は、既設フレーム1を構成する部材の厚さによって、既設フレーム1の端部よりもg1だけ内側となっている。このg1は図1のg2と比べると、g1<g2である。これにより、新設フレーム3を長手方向に延長し、新設フレーム3の機械室となる空間12aを広く確保することができる。その結果、機械室に設置された機器の操作や保守点検の作業が容易になる。
【0035】
図1に示したように、新設フレーム3の長手方向の端部に支持部材13を設ける場合、一般的には既設フレーム1の上面と新設フレーム3の上面の高さを合わせるため、新設フレーム3の支持部材13の上面と新設フレーム3の上面との間に高低差を与える。しかし、その高低差を与えるために、溶接などによる新設フレーム3と支持部材13との接合部分には強度低下が懸念される。そのため、接合部分に沿った補強材14を用いて強度の低下を防止するという方策が採られる。しかし、そのために、補強材14と接合する作業が工場内の作業として発生し、コストアップになっていた。
【0036】
それに対して、本実施形態では、図4に示したように、新設フレーム3の上面が既設フレーム1の上面よりも高い位置となっている。L字板である支持具4が、ジャッキボルト5を新設フレーム3の上弦材7の上面よりも高い面で保持しているからである。この構成により、補強材14が不要となり、工場内における補強材14を接合する作業を省くことが可能となっている。
【0037】
なお、図5に示されているように、本実施形態では、建屋梁8上の建屋床9と、新設フレーム3上のエスカレーター床10との間にスロープ11が設けられている。本実施形態では、図4に示したように、新設フレーム3の上弦材7上面が、既設フレーム1の上弦材6上面よりも高い位置にあるため、建屋床9とエスカレーター床10との継ぎ目に高さの違いが生じている。そのため、乗客が躓いて転倒するのを防止するために、段差を緩やかな傾斜にするスロープ11が設けられている。
【0038】
なお、本実施形態では、上述のように、支持具4が、ジャッキボルト5を新設フレーム3の上弦材7の上面よりも高い面で保持する例を示したが、本発明はこれに限定されない。他の例として、L字板である支持具4が、ジャッキボルト5を新設フレーム3の上面と同じ高さの面で保持するものであってもよい。その場合、上述の補強材14が必要となる場合があるが、その一方で、建屋床9とエスカレーター床10との継ぎ目に高さの違いが生じず、スロープ11が不要となる場合がある。
【0039】
また、本実施形態では乗客コンベアの例としてエスカレーターを例示したが、本発明はこれに限定されない。他の例として動く歩道にも本発明を適用することができる。
【0040】
以下、エスカレーターの新設フレーム3における支持体の取り付け位置の例について説明する。
【0041】
図6は、新設フレームにおける支持体の取り付け位置の一例について説明するための図である。図6を参照すると、本例の乗客コンベアはエスカレーターであり、新設フレーム3は、長手方向の両端近傍にある平坦部(水平部)3aと、両端の平坦部3aの間にある傾斜部3bとを有している。
【0042】
本例では、支持具4を含む支持体は両端の平坦部3aにそれぞれ設けられている。平坦部3aに支持体を設け、既設フレーム1の平坦部で支持することで、新設フレーム3を既設フレーム1上に安定して支持することができる。
【0043】
また、支持具4を含む支持体は、両端の平坦部3aには設けられているが、傾斜部3bには設けられていない。傾斜部3bにて、支持体のジャッキボルト5が既設フレーム1に当接すると、振動などで新設フレーム3に長手方向に力が加わり、新設フレーム3がずれたり、特定の部位に無理な力がかかってしまう可能性がある。本例の構成によれば、振動などで新設フレーム3に長手方向に力が加わるのを防止することができる。
【0044】
図7は、新設フレームにおける支持体の取り付け位置の他の例について説明するための図である。図7を参照すると、本例の乗客コンベアもエスカレーターであり、新設フレーム3は、図6の例と同様、長手方向の両端近傍にある平坦部3aと、両端の平坦部3aの間にある傾斜部3bとを有している。
【0045】
本例では、支持具4を含む支持体は両端の平坦部3aのそれぞれと、傾斜部3bとに設けられている。傾斜部3bの支持体の支持構成は、平坦部3aの支持構成とは異なっている。
【0046】
図8は、図7における傾斜部3bの支持体の支持構成を示す図である。図8では、ジャッキボルト5が既設フレーム1の上弦材6に当接するのではなく、上弦材6に固定されている。本例の構成によれば、振動などで新設フレーム3に長手方向に力が加わるのを防止することができる。
【0047】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 既設フレーム、10 エスカレーター床、11 スロープ、12a 空間、13 支持部材、14 補強材、2 支持部材、3 新設フレーム、3a 平坦部、3b 傾斜部、4 支持具、5 ジャッキボルト、6 上弦材、7 上弦材、8 建屋梁、9 建屋床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の乗客コンベアの構成部品を撤去したフレームである既設フレームの内部に全体または一部分が配置されるように設置され、自身の内部に空間を有する新設フレームと、
前記新設フレームに設置される構成部品とを有し、
前記新設フレームの短手方向の両端に、前記新設フレームから張り出した支持体が設けられ、前記支持体を前記既設フレーム上に配置するようにして、前記新設フレームが前記既設フレームに設置される、乗客コンベア。
【請求項2】
前記新設フレームは、長手方向の両端のうち少なくとも一方の端部近傍に、前記短手方向の両端に前記新設フレームから張り出した前記支持体が設けられている、請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記支持体は前記新設フレームの平坦部に設けられている、請求項1または2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記支持体は、前記新設フレームに前記新設フレームから張り出すように取り付けられた支持具と、前記既設フレームに対する前記新設フレームの高さ調整が可能に前記支持具に固定され、前記既設フレームに当接するジャッキボルトと、を有する、請求項1から3の何れかに記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記支持具は、前記ジャッキボルトを前記新設フレームの上面よりも高い面で保持するL字板である、請求項4に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記新設フレームはその上面が前記既設フレームの上面より高い位置となるように支持され、
建屋の床面と乗客コンベアの床面との間にスロープが設けられる、
請求項5に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記支持具は、前記ジャッキボルトを前記新設フレームの上面と同じ高さの面で保持するL字板である、請求項4に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記支持具は、長手方向に伸びて前記新設フレームの上面を構成する新設上弦材に取り付けられる、請求項4から7の何れかに記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記新設フレームは、前記新設フレームの両端近傍の平坦部と、前記平坦部の間に設けられた傾斜部とを有し、両方の前記平坦部に前記支持体が設けられ、前記傾斜部には前記支持体が設けられていない、
請求項1から8の何れかに記載の乗客コンベア。
【請求項10】
前記新設フレームは、前記新設フレームの両端近傍の平坦部と、前記平坦部の間に設けられた傾斜部とを有し、両方の前記平坦部と前記傾斜部に前記支持体が設けられ、
前記平坦部に設けられた支持体は、前記新設フレームに前記新設フレームから張り出すように取り付けられた支持具と、前記既設フレームに対する前記新設フレームの高さ調整が可能に前記支持具に固定され、前記既設フレームに当接するジャッキボルトと、を有し、
前記傾斜部に設けられた支持体は、前記新設フレームに前記新設フレームから張り出すように取り付けられた支持具と、前記既設フレームに対する前記新設フレームの高さ調整が可能に前記支持具と前記既設フレームとに固定されるジャッキボルトと、を有する、
請求項1に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−67462(P2013−67462A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206179(P2011−206179)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】