説明

乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具

【課題】パッキンカバーをパッキンベースから容易に外すことができ、パッキンベース及びパッキンカバーの破損の防止を図ることができる乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具を得る。
【解決手段】パッキンカバー着脱具21は、着脱具本体22と、着脱具本体22に回転自在に設けられたローラ23とを有している。着脱具本体22は、基部24と、基部24から突出し、パッキンカバー11の長さ方向端部の外側からパッキンベース10とパッキンカバー11との間の隙間に挿入可能な挿入部25と、基部24に設けられた持ち手部26とを有している。パッキンカバー着脱具21は、パッキンベース10とパッキンカバー11との間に挿入部25が挿入された状態で、ローラ23が着脱具本体22を支えながらパッキンベース10上を転動されることにより、パッキンベース10とパッキンカバー11との間の隙間を挿入部25で押し広げるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベヤ(例えばエスカレータや動く歩道等)のインナデッキに設けられたパッキンベースに対してパッキンカバーを着脱するための乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータでは、保守点検時の作業性を改善するために、インナデッキの欄干パネル側の端部に取り付けられたプラスチック製のパッキンベースに係合部を設け、プラスチック製のパッキンカバーをパッキンベースの係合部に係合するようにして、パッキンベースに対してパッキンカバーを着脱可能にした欄干装置が知られている。パッキンカバーは、パッキンベースに押し付けられるだけで、パッキンカバーの弾性変形によりパッキンベースの係合部に係合される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、目地用シール部材の表面にローラを押し付けながら転動させることにより、2枚のパネル間の隙間に目地用シール部材を押し込むようにする目地用シール部材の押込治具が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−347650号公報
【特許文献2】特開2000−328772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されているエスカレータでは、パッキンベースにパッキンカバーを押し付けるだけでパッキンカバーがパッキンベースに取り付けられるので、パッキンベースにパッキンカバーを取り付ける際に、特許文献2に示されている目地用シール部材の押込治具を用いると、パッキンベースに対するパッキンカバーの取り付け作業を効率良く行うことができる。しかし、特許文献2に示されている目地用シール部材の押込治具では、パッキンベースからパッキンカバーを取り外すことができない。
【0006】
パッキンカバーをパッキンベースから取り外す方法としては、例えば金属製の定規(鋼尺)をパッキンカバーとパッキンベースとの間に側方から差し込んで、パッキンカバーをパッキンベースから剥す方法が考えられる。しかし、パッキンベースとパッキンカバーとの間に側方から定規を差し込んでも、パッキンカバーと係合部との係合が一部でしか外れないことが多い。この場合、パッキンカバーをパッキンベースから無理に外そうとすると、残りの係合部分でパッキンベースやパッキンカバーが割れてしまうおそれがある。また、このようにパッキンベースやパッキンカバーが割れるおそれがあるので、作業者はパッキンカバーが割れないように慎重に作業することとなり、パッキンベースからパッキンカバーを取り外す作業に手間がかかってしまう。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、パッキンカバーをパッキンベースから容易に外すことができるとともに、パッキンベース及びパッキンカバーの破損の防止を図ることができる乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具は、インナデッキに設けられたパッキンベースに対して、パッキンベースを覆うパッキンカバーを着脱するための乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具であって、基部と、基部から突出し、パッキンカバーの長さ方向端部の外側からパッキンベースとパッキンカバーとの間の隙間に挿入可能な挿入部と、基部に設けられた持ち手部とを有する着脱具本体、及び着脱具本体に回転自在に設けられたローラを備え、パッキンベースとパッキンカバーとの間に挿入部が挿入された状態で、ローラが着脱具本体を支えながらパッキンベース上を転動されることにより、パッキンベースとパッキンカバーとの間の隙間を挿入部で押し広げてパッキンカバーをパッキンベースから外すようになっている。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具では、着脱具本体の挿入部が、パッキンカバーの長さ方向端部の外側からパッキンベースとパッキンカバーとの間の隙間に挿入可能になっており、ローラが着脱具本体に設けられているので、パッキンカバーをパッキンベースから取り外すときに、パッキンカバーとパッキンバースとの間の隙間の幅方向中間部に挿入部を挿入することができる。これにより、パッキンカバーとパッキンベースとの間の隙間を挿入部で押し広げるときの力の偏りを少なくすることができ、パッキンベース及びパッキンカバーの破損の防止を図ることができる。また、パッキンカバーをパッキンベースから取り外すときに、ローラが着脱具本体を支えながらパッキンベース上を転動されるので、パッキンカバーとパッキンベースとの間の隙間に挿入部を挿入させた状態を保ちながら、着脱具本体を容易に移動させることができる。従って、パッキンカバーをパッキンベースから容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1によるエスカレータを示す模式的な側面図である。
【図2】図1のII-II線に沿った模式的な断面図である。
【図3】図2のIII部を示す拡大斜視図である。
【図4】図3のパッキンカバーをパッキンベースから取り外すときに用いられるパッキンカバー着脱具を示す斜視図である。
【図5】図4のパッキンカバー着脱具を示す側面図である。
【図6】図1のパッキンカバー着脱具によってパッキンカバーがパッキンベースから取り外される直前の状態を示す側面図である。
【図7】図6のパッキンカバー着脱具によってパッキンカバーの一部がパッキンベースから外れている状態を示す側面図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるパッキンカバー着脱具を示す分解斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるパッキンカバー着脱具を示す斜視図である。
【図10】図9のパッキンカバー着脱具を示す側面図である。
【図11】図9のパッキンカバー着脱具を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエスカレータを示す模式的な側面図である。また、図2は、図1のII-II線に沿った模式的な断面図である。図において、エスカレータ(乗客コンベヤ)の長手方向に沿って配置された主枠(トラス)1には、無端状に連結された複数の踏段2が支持されている。各踏段2は、主枠1内に設置された駆動機(図示せず)の駆動力によってエスカレータの上部乗降口及び下部乗降口間を循環移動される。この例でのエスカレータは、各踏段2の幅方向寸法が1人分の乗客の幅に応じて設定された幅狭タイプのエスカレータとされている。
【0012】
主枠1上には、一対の欄干3が設けられている。各欄干3は、踏段2の幅方向両側に配置され、かつ主枠1の長手方向に沿って配置されている。各欄干3には、各踏段2と同期して移動される移動手摺4がそれぞれ支持されている。移動手摺4は、欄干3の外周部に沿って移動される。
【0013】
欄干3は、図2に示すように、主枠1に鉛直に立てられた状態で主枠1の長手方向へ並べられた複数の欄干パネル5と、主枠1の長手方向へ並べられ、踏段2の側面に隙間を介して対向する複数の金属製のスカートガード6と、主枠1の長手方向へ並べられ、欄干パネル5の下部とスカートガード6との間の空間を覆う複数の金属製のインナデッキ7と、欄干パネル5とインナデッキ7との間に介在するパッキン装置8と、欄干パネル5よりもエスカレータの幅方向外側で欄干パネル5の下部を覆う金属製のアウタデッキ9とを有している。
【0014】
欄干パネル5の下端部は、主枠1内で固定された図示しない保持装置により保持されている。これにより、欄干パネル5は、保持装置を介して主枠1に取り付けられている。
【0015】
図3は、図2のIII部を示す拡大斜視図である。図において、各インナデッキ7は、欄干パネル5の下部の側面とスカートガード6の上端部との間に配置されている。インナデッキ7のスカートガード6側の端部(幅方向一端部)は、スカートガード6の上端部に設けられた溝6aに差し込まれた状態でスカートガード6に支持されている。インナデッキ7の欄干パネル5側の端部(幅方向他端部)は、留めねじ(図示せず)で主枠1内の保持装置に着脱可能に取り付けられている。インナデッキ7は、留めねじを保持装置から外すことにより、欄干パネル5とスカートガード6との間から取り外し可能になっている。
【0016】
パッキン装置8は、インナデッキ7の留めねじが通される部分を避けてインナデッキ7の欄干パネル5側の端部に取り付けられた複数のプラスチック製のパッキンベース10と、各パッキンベース10を覆う複数のプラスチック製のパッキンカバー11とを有している。
【0017】
各パッキンベース10は、欄干パネル5の下部の側面に接触するパッキンベース本体12と、パッキンベース本体12に設けられ、パッキンカバー11と係合するための一対のベース側係合部13とを有している。
【0018】
パッキンベース本体12には、インナデッキ7の欄干パネル5側の端部が差し込まれるデッキ差込溝14が設けられている。パッキンベース10は、インナデッキ7の欄干パネル5側の端部がデッキ差込溝14に差し込まれることによりインナデッキ7に取り付けられている。
【0019】
各ベース側係合部13は、パッキンベース本体12の上面から突出し、パッキンベース10の長さ方向に沿って配置されている。また、各ベース側係合部13は、パッキンベース10の幅方向について互いに離して配置されている。
【0020】
各パッキンカバー11は、パッキンベース10を覆うパッキンカバー本体15と、パッキンカバー本体15の幅方向両端部から幅方向内側へそれぞれ突出し、各ベース側係合部13に個別に係合する一対のカバー側係合部16とを有している。
【0021】
パッキンカバー11は、カバー側係合部16がベース側係合部13に弾性的に係合されることによりパッキンベース10に着脱可能に取り付けられている。パッキンカバー11がパッキンベース10に取り付けられている状態では、パッキンカバー本体15とパッキンベース本体12との間に隙間が存在している。また、パッキンカバー11は、パッキンベース10及び留めねじをまとめて覆った状態で、パッキンベース10に取り付けられる。
【0022】
例えば主枠1内の機器の保守点検等を行う場合には、パッキンカバー11がパッキンベース10から取り外された後に、インナデッキ7を留める留めねじが外されることにより、インナデッキ7が欄干3から外される。パッキンカバー11をパッキンベース10から取り外すときには、パッキンカバー着脱具が用いられる。
【0023】
図4は、図3のパッキンカバー11をパッキンベース10から取り外すときに用いられるパッキンカバー着脱具を示す斜視図である。また、図5は、図4のパッキンカバー着脱具を示す側面図である。図において、パッキンカバー着脱具21は、着脱具本体22と、着脱具本体22に回転自在に設けられたローラ23とを有している。
【0024】
着脱具本体22は、所定の長さを持つ棒状の基部24と、基部24から突出し、パッキンベース10とパッキンカバー11との間の隙間に挿入可能な挿入部25と、基部24に設けられた棒状の持ち手部26とを有している。基部24、挿入部25及び持ち手部26は、分解不可能に一体に成形されている。着脱具本体22を構成する材料としては、例えば金属(アルミニウム等)やプラスチック等が用いられる。
【0025】
挿入部25は、基部24の軸線と交差する方向へ基部24の一端部から突出している。この例では、挿入部25が、基部24の軸線に対して垂直な方向へ基部24の一端部から突出している。また、この例では、挿入部25の長さが100mm〜150mmの範囲内に設定されている。
【0026】
挿入部25の幅方向は、基部24の軸線方向及び挿入部25の長さ方向のいずれに対しても垂直な方向と一致している。また、挿入部25の厚さ方向は、挿入部25の長さ方向及び挿入部25の幅方向のいずれに対しても垂直な方向と一致している。
【0027】
挿入部25の幅方向寸法は、各ベース側係合部13間の空間距離よりも小さくなっている。この例では、挿入部25の幅方向寸法が12mm〜15mmの範囲内に設定されている。
【0028】
挿入部25の厚さ方向寸法は、図5に示すように、基部24の位置で最も大きくなっており、基部24から挿入部25の先端部25aに向かって連続的に小さくなっている。また、挿入部25の先端部25aの厚さ寸法は、パッキンカバー11がパッキンベース10に取り付けられているときのパッキンカバー本体15とパッキンベース本体12との間の隙間よりも小さくなっている。挿入部25の先端部25aの断面形状は、幅方向寸法よりも厚さ方向寸法が小さい扁平状となっている。
【0029】
挿入部25には、ローラ配置用貫通穴27が設けられている。ローラ配置用貫通穴27は、挿入部25の厚さ方向へ挿入部25を貫通している。ローラ配置用貫通穴27は、挿入部25の長さ方向に沿った長穴となっている。
【0030】
ローラ23の外径は、ローラ配置用貫通穴27の深さ寸法よりも大きくなっている。これにより、ローラ23は、挿入部25の上面及び下面から一部が出ている状態でローラ配置用貫通穴27内に配置されている。また、ローラ23は、ローラ配置用貫通穴27内を挿入部25の幅方向に沿って通された回転軸28を中心に回転自在になっている。ローラ23は、回転軸28を介して挿入部25に取り付けられている。挿入部25におけるローラ23の位置は、基部24よりも挿入部25の先端部25aに近い位置とされている。ローラ23を構成する材料としては、例えばゴムやプラスチック、金属等が用いられる。
【0031】
持ち手部26は、基部24の軸線と交差する方向で、かつ挿入部25の長さ方向と異なる方向へ基部24の他端部から突出している。この例では、持ち手部26が、基部24の軸線方向及び挿入部25の長さ方向のいずれに対しても垂直な方向へ基部24の他端部から突出している。即ち、この例では、持ち手部26が、ローラ23の回転軸28と平行に基部24の他端部から突出している。持ち手部26は、ローラ23の回転軸28の軸線方向について基部24の左右のいずれかにのみ設けられている。
【0032】
挿入部25の先端部25aの外面、挿入部25と基部24との結合部の外面、及び持ち手部26と基部24との結合部の外面のそれぞれは、パッキンベース10及びパッキンカバー11を傷つけにくい滑らかな曲面となっている。
【0033】
次に、パッキンカバー11をパッキンベース10から取り外すときの手順について説明する。図6は、図1のパッキンカバー着脱具21によってパッキンカバー11がパッキンベース10から取り外される直前の状態を示す側面図である。また、図7は、図6のパッキンカバー着脱具21によってパッキンカバー11の一部がパッキンベース10から外れている状態を示す側面図である。
【0034】
まず、図6に示すように、互いに隣り合うパッキンカバー11間の隙間(即ち、パッキンカバー11の長さ方向端部の外側)から、パッキンカバー本体15とパッキンベース本体12との間の隙間に挿入部25の先端部25aを挿入する。このとき、基部24からみて持ち手部26が欄干パネル5側と反対側になるようにパッキンカバー着脱具21を配置する。
【0035】
この後、ローラ23を支点にしながら持ち手部26を動かして挿入部25の先端部25aを上方へ変位させる。これにより、パッキンカバー11の長さ方向端部における各カバー側係合部16が各ベース側係合部13から外れる。
【0036】
この後、パッキンカバー本体15とパッキンベース本体12との間の隙間に挿入部25を挿入したまま、持ち手部26を押しながらパッキンカバー着脱具21をパッキンカバー11の長さ方向へ移動させる。このとき、ローラ23は、着脱具本体22を支えながらパッキンベース本体12上をパッキンカバー11の長さ方向へ転動される。これにより、パッキンベース10とパッキンカバー11との間の隙間が挿入部25で押し広げられ、図7に示すように、パッキンカバー着脱具21の移動に伴ってパッキンカバー11がパッキンベース10から外れていく。
【0037】
次に、パッキンカバー11をパッキンベース10に取り付けるときの手順について説明する。まず、パッキンベース10上にパッキンカバー11を載せる。この後、着脱具本体22の一部(この例では、基部24の下端部(基部24と挿入部25との結合部))をパッキンカバー11の欄干パネル5側の端部に押し付けながら、パッキンカバー着脱具21をパッキンカバー11の長さ方向へ移動させる。これにより、一対のカバー側係合部16のうち、欄干パネル5に近い側のカバー側係合部16が弾性変形しながらベース側係合部13に係合される。
【0038】
この後、パッキンカバー11のスカートガード6側の端部を上方からパッキンベース10に押し付ける。これにより、残りのカバー側係合部16が弾性変形しながらベース側係合部13に係合される。このようにして、パッキンカバー11のパッキンベース10に対する取り付け作業が完了する。
【0039】
このようなパッキンカバー着脱具21では、着脱具本体22の挿入部25が、パッキンカバー11の長さ方向端部の外側からパッキンベース10とパッキンカバー11との間の隙間に挿入可能になっており、ローラ23が着脱具本体22に設けられているので、パッキンカバー11をパッキンベース10から取り外すときに、パッキンカバー11とパッキンベース10との間の隙間の幅方向中間部に挿入部25を挿入することができる。これにより、パッキンカバー11とパッキンベース10との間の隙間を挿入部25で押し広げるときの力の偏りを少なくすることができ、各カバー側係合部16の各ベース側係合部13に対する係合を容易に外すことができる。これにより、パッキンベース10及びパッキンカバー11の破損の防止を図ることができる。また、パッキンカバー11をパッキンベース10から取り外すときに、ローラ23が着脱具本体22を支えながらパッキンベース10上を転動されるので、パッキンカバー11とパッキンベース10との間の隙間に挿入部25を挿入させた状態を保ちながら、着脱具本体22を容易に移動させることができる。従って、パッキンカバー11をパッキンベース10から容易に外すことができる。
【0040】
また、挿入部25の厚さ方向寸法は、基部24から挿入部25の先端部25aに向かって連続的に小さくなっているので、パッキンカバー11の長さ方向端部の外側からパッキンカバー11とパッキンベース10との間の隙間に挿入部25を挿入しやすくすることができる。
【0041】
また、挿入部25に設けられたローラ23の位置は、基部24よりも挿入部25の先端部25aに近い位置とされているので、ローラ23を支点として挿入部25の先端部25aを上下に変位させるときに、てこの原理により、持ち手部26に与える力を弱くすることができる。従って、パッキンベース10からパッキンカバー11をさらに容易に外すことができる。
【0042】
また、持ち手部26は、ローラ23の回転軸28と平行に基部24から突出しているので、ローラ23が転動される方向へ持ち手部26に力を加えやすくすることができる。
【0043】
実施の形態2.
実施の形態1では、基部24、挿入部25及び持ち手部26が分解不可能に一体に成形されているが、持ち手部26が基部24に対して着脱可能になっていてもよい。
【0044】
即ち、図8は、この発明の実施の形態2によるパッキンカバー着脱具を示す分解斜視図である。図において、持ち手部26には、持ち手部26の軸線方向に沿って突出するねじ部31が設けられている。基部24の他端部には、ねじ部31が螺合されるねじ穴32が設けられている。ねじ穴32は、基部24を貫通している。この例では、ねじ穴32は、基部24の軸線方向及び挿入部25の長さ方向のいずれに対しても垂直な方向へ基部24を貫通している。持ち手部26は、ねじ部31がねじ穴32に螺合されることにより基部24の他端部に着脱可能に取り付けられている。
【0045】
ねじ部31は、ローラ23の回転軸28の軸線方向について基部24の左右のいずれの側からでも、ねじ穴32に螺合可能になっている。従って、持ち手部26は、ローラ23の回転軸28の軸線方向について基部24の左右に付け替え可能になっている。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0046】
このようなパッキンカバー着脱具21では、持ち手部26がローラ23の回転軸28の軸線方向について基部24の左右に付け替え可能になっているので、パッキンカバー11をパッキンベース10から外すときに持ち手部26が欄干パネル5と干渉しないように、パッキンカバー着脱具21を移動させる方向に応じて持ち手部26を基部24に対して付け替えることができる。これにより、パッキンカバー11をパッキンベース10から取り外す作業を効率良く行うことができる。また、持ち手部26が基部24に対して着脱可能になっているので、パッキンカバー着脱具21を使用しないときには、持ち手部26を基部24から外すことによりパッキンカバー着脱具21をコンパクトにすることができ、パッキンカバー着脱具21の保管や運搬を行うためのスペースを節約することができる。
【0047】
実施の形態3.
実施の形態1では、ローラ23が挿入部25に設けられているが、ローラを基部24と挿入部25との結合部に設けてもよい。
【0048】
即ち、図9は、この発明の実施の形態3によるパッキンカバー着脱具を示す斜視図である。また、図10は、図9のパッキンカバー着脱具を示す側面図である。さらに、図11は、図9のパッキンカバー着脱具を示す背面図である。図において、基部24と挿入部25との結合部には、一対のローラ41が設けられている。各ローラ41は、基部24と挿入部25との結合部の幅方向両側に設けられた一対の窪み部42に個別に配置されている。
【0049】
各ローラ41は、基部24の軸線方向及び挿入部25の長さ方向のいずれに対しても垂直な軸線を持つ共通の回転軸28を中心に回転自在になっている。回転軸28の軸線方向についての各ローラ41の外面間の寸法は、各ベース側係合部13間の空間距離よりも小さくなっている。回転軸28は、その軸線が基部24の軸線と交わる位置に配置されている。この例では、実施の形態1のローラ23及びローラ配置用貫通穴27は挿入部25に設けられていない。他の構成は実施の形態1と同様である。また、パッキンカバー11がパッキンベース10から取り外されるときの手順も、実施の形態1と同様である。
【0050】
パッキンカバー11がパッキンベース10に取り付けられるときには、パッキンベース10上にパッキンカバー11を載せた後、パッキンカバー11の欄干パネル5側の端部にローラ41を押し付けながらパッキンカバー11の長さ方向へ転動させて、欄干パネル5に近い側のカバー側係合部16をベース側係合部13に係合させる。この後の手順は、実施の形態1と同様である。
【0051】
このようなパッキンカバー着脱具21では、ローラ41が基部24と挿入部25との結合部に設けられているので、ローラ41の位置を持ち手部26に近づけることができ、パッキンカバー11をパッキンベース10に取り付けるときに、パッキンカバー11にローラ41を押し付けやすくすることができる。また、パッキンカバー11にローラ41を押し付けながら転動させることができるので、パッキンカバー着脱具21の移動も容易にすることができる。これにより、パッキンカバー11をパッキンベース10から取り外す作業だけでなく、パッキンカバー11をパッキンベース10に取り付ける作業も容易にすることができる。
【0052】
なお、上記の例では、基部24と挿入部25との結合部の幅方向両側に設けられた一対の窪み部42に一対のローラ41が個別に配置されているが、基部24と挿入部25との結合部の幅方向中央に窪み部を設け、この窪み部にローラを配置してもよい。
【0053】
また、上記の例では、実施の形態1のローラ23及びローラ配置用貫通穴27が挿入部25に設けられていないが、基部24と挿入部25との結合部にローラ41及び窪み部42を設ける構成に加えて、実施の形態1のローラ23及びローラ配置用貫通穴27を挿入部25に設けてもよい。
【0054】
また、実施の形態3の基部24と挿入部25との結合部にローラ41及び窪み部42を設ける構成を実施の形態2に適用してもよい。
【0055】
また、各上記実施の形態では、基部24が棒状となっているが、基部24の形状を例えば板状やブロック状等としてもよい。
【0056】
また、各上記実施の形態では、この発明がエスカレータに適用されているが、動く歩道(乗客コンベヤ)にこの発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
7 インナデッキ、10 パッキンベース、11 パッキンカバー、21 パッキンカバー着脱具、22 着脱具本体、23,41 ローラ、24 基部、25 挿入部、26 持ち手部、28 回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナデッキに設けられたパッキンベースに対して、上記パッキンベースを覆うパッキンカバーを着脱するための乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具であって、
基部と、上記基部から突出し、上記パッキンカバーの長さ方向端部の外側から上記パッキンベースと上記パッキンカバーとの間の隙間に挿入可能な挿入部と、上記基部に設けられた持ち手部とを有する着脱具本体、及び
上記着脱具本体に回転自在に設けられたローラ
を備え、
上記パッキンベースと上記パッキンカバーとの間に上記挿入部が挿入された状態で、上記ローラが上記着脱具本体を支えながら上記パッキンベース上を転動されることにより、上記パッキンベースと上記パッキンカバーとの間の隙間を上記挿入部で押し広げて上記パッキンカバーを上記パッキンベースから外すことを特徴とする乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具。
【請求項2】
上記挿入部の厚さ方向寸法は、上記基部から上記挿入部の先端部に向かって連続的に小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具。
【請求項3】
上記ローラは、上記挿入部に設けられており、
上記ローラの位置は、上記基部よりも上記挿入部の先端部に近い位置とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具。
【請求項4】
上記ローラは、上記挿入部と上記基部との結合部に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具。
【請求項5】
上記持ち手部は、上記ローラの回転軸と平行に上記基部から突出していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具。
【請求項6】
上記持ち手部は、上記ローラの回転軸の軸線方向について上記基部の左右に付け替え可能になっていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の乗客コンベヤのパッキンカバー着脱具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−218869(P2012−218869A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85506(P2011−85506)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】