説明

乗物シート用パッド支持装置

【課題】シートの座り心地を向上し得るパッド支持装置を提供する。
【解決手段】パッド11bの裏面を支持する乗物シート用パッド支持装置1であって、パッド11bの裏面を弾性的に支持しかつ両端部が乗物シート10のフレーム11aに取付けられるばね部材2と、ばね部材2よりも弾性変形し難い材料から形成されかつ両端部がフレーム11aに取付けられるワイヤ3とを有する。ワイヤ3は、ばね部材2よりもパッド11bの裏面から離れた位置で、かつパッド11bまたはばね部材2の裏方向への弾性変形量を規制し得る位置に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドの裏面を支持する乗物シート用パッド支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物シートは、パッドとパッドの裏面を支持するパッド支持装置を有する。パッド支持装置は、従来例えば、シートクッションの前後フレーム間を延出するSばねと、前後フレーム間を延出するワイヤとを有する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−1350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来のパッド支持装置は、Sばねとワイヤの関係が明確でない。そのためばねとワイヤがシートクッションの座り心地にどのように影響するのか良くわからない。そのため従来、シートの座り心地を向上し得るパッド支持装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える乗物シート用パッド支持装置であることを特徴とする。一つの特徴によると本発明は、パッドの裏面を弾性的に支持しかつ両端部が乗物シートのフレームに取付けられるばね部材と、ばね部材よりも弾性変形し難い材料から形成されかつ両端部がフレームに取付けられるワイヤとを有する。ワイヤは、ばね部材よりもパッドの裏面から離れた位置で、かつパッドまたはばね部材の裏方向への弾性変形量を規制し得る位置に設置される。
【0006】
したがってシートに着座した使用者の重みがパッドの表側に加わると、パッドとばね部材が弾性変形する。そのためパッドのみが弾性変形するシート等に比べて、シートの弾性変形量がばね部材の弾性変形によって多くなり、シートの座り心地が向上する。またパッド支持装置は、ばね部材よりも弾性変形し難いワイヤを有し、かつワイヤがばね部材よりもパッドの裏面から離れた位置に設置される。したがってパッドの表側から裏側に大きな力が加わると、パッドまたはばね部材がワイヤに当たる。これによりパッドまたはばね部材の裏側への弾性変形がワイヤによって規制され得る。かくしてシートが大きく変形し過ぎることで、使用者の姿勢が崩れることがワイヤによって抑制され得る。その結果、シートの座り心地が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】乗物シートの斜視図である。
【図2】図1のII―II線断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一つの実施の形態を図1,2にしたがって説明する。図1に示すように乗物シート10は、自動車等の乗物の床面に装着されるシートであって、シートクッション11とシートバック12を有する。シートバック12は、シートクッション11の後部に角度調整可能に取付けられる。
【0009】
シートクッション11は、図1,2に示すようにパッド11bと、パッド11bの表面を覆う表皮11cと、フレーム11aを有する。フレーム11aは、シートクッション11の左右縁に沿って前後方向に延出するサイドフレーム13と、サイドフレーム13の前部を連結する前フレーム14と、サイドフレーム13の後部を連結する後フレーム15を有する。
【0010】
前フレーム14には、図1に示すように前支持部材16と一対のばね取付部材17が取付けられる。前支持部材16は、前フレーム14の左右部から前方に延出し、かつ前フレーム14と略並行に延出する。ばね取付部材17は、前フレーム14の中央近傍の左右部から後下方に延出する。
【0011】
フレーム11aには、図1,2に示すようにパッド11bの裏面を支持するパッド支持装置1が取付けられる。パッド支持装置1は、ばね部材2とワイヤ3を有する。ばね部材2は、弾性材料、例えばばね鋼などのばね金属から形成される。ばね部材2は、棒部材であって、断面形状が円形である。ばね部材2には、強度を強くするために焼入れが施されることが好ましい。
【0012】
ばね部材2は、図1に示すようにシートクッション11の前後方向に延出する第一部2aと、シートクッション11の幅方向に延出する第二部2bを交互に連続して複数有する。ばね部材2は、S字形状を連続して有するSばねであって、幅方向に屈曲または湾曲しながら前後方向に延出する。第一部2aと第二部2bは、パッド11bの裏面に沿って設置され、パッド11bの裏面を広い領域において裏側から支持する。
【0013】
ばね部材2は、図2に示すように前端部2cがばね取付部材17の上面に取付けられ、後端部2dがスライド部材18を介して後フレーム15の上部に取付けられる。スライド部材18は、樹脂製であって、断面円弧形状で、後フレーム15の外周面にスライド可能に取付けられる。したがってばね部材2が上方から力を受けると、スライド部材18がばね部材2とともに後フレーム15に対して回転する。
【0014】
ばね部材2は、図2に示すように下側に凹んでおり、前傾斜部2eと後傾斜部2fを有する。前傾斜部2eは、前端部2cから下後方に延出し、最下部2gまで延出する。最下部2gは、シートクッション11に着座する使用者の体重が最も集中しすい臀部(Hポイント)の下側に位置する。後傾斜部2fは、最下部2gから後フレーム15の上面に向けて上後方に延出する。
【0015】
ばね部材2は、図1に示すようにシートクッション11の幅中心に位置するワイヤ3の両側に設置される。ワイヤ3と各サイドフレーム13の間には、それぞれ二本のばね部材2が設置される。二本のばね部材2は、左右対称の向きに配向される。複数のばね部材2は、シートクッション11の幅方向に所定間隔で平行に設置される。
【0016】
ワイヤ3は、ばね部材2よりも弾性変形し難い材料、例えば鋼などの金属材料から形成される。ワイヤ3は、棒部材であって、断面形状が円形である。ワイヤ3の直径は、ばね部材2よりも大きく、さらにばね部材2より弾性変形し難い構成になっている。
【0017】
ワイヤ3は、図1,2に示すようにワイヤ本体部3aとワイヤ前部3bを一体的に有する。ワイヤ本体部3aは、前フレーム14と後フレーム15の間を前後方向に延出する。ワイヤ前部3bは、前フレーム14と前支持部材16の間を延出する。ワイヤ3は、シートクッション11の幅中心において前後方向に延出する。
【0018】
ワイヤ本体部3aは、図2に示すように前端部3cが前フレーム14の上部に取付けられ、後端部3dが後フレーム15の上部に取付けられる。ワイヤ本体部3aは、下側に凹んでおり、前傾斜部3eと後傾斜部3fを有する。前傾斜部3eは、前端部3cから下後方に延出し、最下部3gまで延出する。最下部3gは、シートクッション11に着座する使用者の臀部(Hポイント)の下側に位置する。後傾斜部3fは、最下部3gから後フレーム15の上面に向けて上後方に延出する。
【0019】
図2に示すように前傾斜部3eは、前端部3cから延出する急傾斜部3e1と、急傾斜部3e1から延出する緩傾斜部3e2を有する。急傾斜部3e1と緩傾斜部3e2は、いずれもばね部材2の前傾斜部2eよりも水平線に対して大きな角度を有する。急傾斜部3e1は、緩傾斜部3e2よりも水平線に対して大きな角度を有する。
【0020】
ワイヤ3の前端部3cと後端部3dは、図2に示すようにそれぞればね部材2の前端部2cと後端部2dと略同じ高さに位置する。ワイヤ3の前傾斜部3eと後傾斜部3fは、それぞればね部材2の前傾斜部2eと後傾斜部2fよりもパッド11bの裏面よりも下側に位置する。ワイヤ3は、最下部3gにおいて最もばね部材2と上下方向に離れ、最下部2g,3g間は例えば20±10mmに設定される。
【0021】
パッド11bは、弾性変形しやすい材料、例えばウレタンなどの発砲樹脂材料から形成される。パッド11bは、図1,2に示すようにパッド支持装置1とフレーム11aの上に設置される。そのためパッド11bの裏面は、通常、ばね部材2とワイヤ前部3bとフレーム11aの一部によって支持される。
【0022】
シートクッション11に使用者が着座し、シートクッション11に表面から裏側に向けて使用者の体重が加わると、パッド11bとばね部材2が弾性変形する。使用者が通常の成人男性である場合、ばね部材2とワイヤ3が略同じ高さになる。それ以上の力がパッド11bに加わると、パッド11bの裏面がワイヤ3に当接する。これによりパッド11bの裏方向へ変形がワイヤ3によって規制される。その結果、パッド11bのみならず、ばね部材2の裏方向への変形もワイヤ3によって規制される。
【0023】
以上のようにパッド支持装置1は、図2に示すようにパッド11bの裏面を弾性的に支持しかつ両端部がフレーム11aに取付けられるばね部材2と、ばね部材2よりも弾性変形し難い材料から形成されかつ両端部がフレーム11aに取付けられるワイヤ3を有する。ワイヤ3は、ばね部材2よりもパッド11bの裏面から離れた位置で、かつパッド11bまたはばね部材2の裏方向への弾性変形量を規制し得る位置に設置される。
【0024】
したがってシート10に着座した使用者の重みがパッド11bの表側に加わると、パッド11bとばね部材2が弾性変形する。そのためパッドのみが弾性変形するシート等に比べて、シート10の弾性変形量がばね部材2の弾性変形によって多くなり、シート10の座り心地が向上する。またパッド支持装置1は、ばね部材2よりも弾性変形し難いワイヤ3を有し、かつワイヤ3がばね部材2よりもパッド11bの裏面から離れた位置に設置される。したがってパッド11bの表側から裏側に大きな力が加わると、パッド11bがワイヤ3に当たる。これによりパッド11bまたはばね部材2の裏側への弾性変形がワイヤ3によって規制され得る。かくしてシート10が大きく変形し過ぎることで、使用者の姿勢が崩れることがワイヤ3によって抑制され得る。その結果、シート10の座り心地が向上する。
【0025】
またパッド11bまたはばね部材2の裏側への弾性変形が規制されることで、パッド11bの裏側に位置する周辺部材に力が加わることがワイヤ3によって規制され得る。かくして力を受けて周辺部材が破損することがワイヤ3によって抑制され得る。あるいはパッド11bまたはばね部材2が予想以上に変形することがワイヤ3によって規制され得る。そのため予想以上に変形することでパッド11bとばね部材2が破損することがワイヤ3によって抑制され得る。
【0026】
またばね部材2とワイヤ3は、図1に示すようにパッド11bの厚み方向に対して相互に重ならない位置に配されている。したがってばね部材2は、ワイヤ3に邪魔されることなく、ワイヤ3の位置まで弾性変形し得る。そのためばね部材とワイヤが相互に重なる構造に比べ、パッド支持装置1の厚みを厚くすることなく、ばね部材2の弾性変形量を大きくすることができる。
【0027】
またワイヤ3は、図1に示すようにシート10の幅中心に位置する。したがってシート10が使用者から力を受けると、シート10は、通常、幅中心近傍を中心に弾性変形する。これに対してワイヤ3は、シート10の幅中心に位置しているため、シート10およびパッド11bの弾性変形を確実かつ効果的に規制することができる。
【0028】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば、図1,2に示すパッド支持装置1は、シートクッション11に設けられている。しかしパッド支持装置がシートバックに設けられても良い。この場合、ばね部材とワイヤは、上下方向に延出し、上下端部がフレームに取付けられることが好ましい。
【0029】
図1に示すばね部材2は、シートクッション11の幅方向に対して屈曲または湾曲しながら前後方向に延出する。しかしばね部材が幅方向に屈曲または湾曲せず、前後方向に延出しても良い。図2に示すワイヤ3は、両端部を除く略全体がばね部材2よりもパッド11bの裏面から離れている。しかしワイヤが両端部を含む全部分においてばね部材よりもパッドの裏面から離れていても良い。あるいはワイヤが中央部分においてばね部材よりもパッドの裏面から離れていても良い。
【0030】
図1に示すばね部材2とワイヤ3は、パッド11bの厚み方向に対して相互に重ならない位置に配されている。しかしばね部材とワイヤがパッドの厚み方向に対して一部重なるように配され、パッドとばね部材が大きく変形した際にばね部材がワイヤに当たっても良い。図1に示すシート10は、一人用シートであるが、複数人用シートであっても良い。乗物は、自動車、バスなどの車両でも良いが、船舶や航空機などであっても良い。
【符号の説明】
【0031】
1…パッド支持装置
2…ばね部材
3…ワイヤ
10…乗物シート
11…シートクッション
11a…フレーム
11b…パッド
13…サイドフレーム
14…前フレーム
15…後フレーム



【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドの裏面を支持する乗物シート用パッド支持装置であって、
前記パッドの裏面を弾性的に支持しかつ両端部が乗物シートのフレームに取付けられるばね部材と、前記ばね部材よりも弾性変形し難い材料から形成されかつ両端部が前記フレームに取付けられるワイヤとを有し、
前記ワイヤは、前記ばね部材よりも前記パッドの裏面から離れた位置で、かつ前記パッドまたは前記ばね部材の裏方向への弾性変形量を規制し得る位置に設置される乗物シート用パッド支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物シート用パッド支持装置であって、
前記ばね部材と前記ワイヤは、前記パッドの厚み方向に対して相互に重ならない位置に配されている乗物シート用パッド支持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乗物シート用パッド支持装置であって、
前記ワイヤは、前記乗物シートの幅中心に位置する乗物シート用パッド支持装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−173450(P2011−173450A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37242(P2010−37242)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】