説明

乗物シート用緩衝体

【課題】耐久性の高い乗物シート用緩衝体を提供する。
【解決手段】シートフレームに懸架されてパッドを弾性的に支持し得る乗物シート用緩衝体1であって、シートフレームに両端部が掛け止められて並設される複数のワイヤー2と、ワイヤー2間を連結する樹脂部材6を有する。樹脂部材6には、複数のワイヤー2間方向の弾性変形を許容する屈曲部6d,6eが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートフレームに懸架されてパッドを弾性的に支持し得る乗物シート用緩衝体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの乗物に搭載される乗物シートは、一般に、矩形状のシートフレームと、シートフレームに装着されるパッドと、パッドの裏側においてシートフレームに懸架される緩衝体を有している。緩衝体は、パッドが弾性変形した際に、弾性的にパッドを支持することで、シートに着座した者に伝わり得る衝撃を緩和する。緩衝体は、例えば、シートフレームに両端部が掛け止められる複数のワイヤーと、並設された複数のワイヤー間を連結する樹脂部材を有している(特許文献1参照)。そして樹脂部材は、ワイヤー間の近接・離間を規制することで緩衝体の緩衝性能を安定させる役割等を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−313045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の樹脂部材は、ワイヤー間を一直線で結んでいる。そして樹脂部材は、一般に熱によって収縮し、熱が原因で経時的に縮み、ワイヤー間を近接する方向に引っ張る。その結果、樹脂部材は、ワイヤーに取付く取付部が除々に白化し、取付部の強度が弱くなり、耐久性に問題がある。そこで本発明は、耐久性の高い乗物シート用緩衝体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える乗物シート用緩衝体であることを特徴とする。請求項1に記載の発明によると、緩衝体は、シートフレームに両端部が掛け止められて並設される複数のワイヤーと、ワイヤー間を連結する樹脂部材を有している。そして樹脂部材には、複数のワイヤー間方向の弾性変形を許容する屈曲部が形成されている。したがって樹脂部材は、熱などによって収縮した場合、屈曲部近傍を中心に弾性変形して、ワイヤー間方向の長さが変化する。そのため樹脂部材が収縮した場合、樹脂部材の内部応力が樹脂部材の弾性変形によって分散され得る。かくしてワイヤーに取付く樹脂部材の取付部に応力が集中することが緩和され、取付部の白化が防止され得る。その結果、樹脂部材の耐久性が向上する。
【0006】
さらに請求項1に記載の発明によると、樹脂部材は、複数のワイヤーを結んだ平面上において延出する一対の第一部と、一対の第一部の間において第一部よりもパッドから遠い位置に位置する第二部と、各第一部と前記第二部を連結する連結部を有している。各第一部と各連結部の間と、第二部と各連結部の間に屈曲部が形成されている。したがって樹脂部材は、複数の屈曲部近傍において変形し得る。また樹脂部材は、第一部が複数のワイヤーを結んだ平面上に位置しているため、第二部がパッドから遠い位置から第一部に近接する方向に変形することで、ワイヤー間方向に弾性変形する。そのため樹脂部材は、弾性変形した場合もパッドの邪魔にならない。
【0007】
請求項2に記載の発明によると、樹脂部材の第二部には、クリップまたはセンサが装着される装着部が設けられている。第二部とパッドの間には、クリップの頭部またはセンサが設置される。したがって樹脂部材は、第二部が第一部よりもパッドから遠い位置に位置するため、第二部とパッドの間に隙間を形成し得る。そしてその隙間にクリップの頭部またはセンサが配設される。そのためクリップの頭部またはセンサは、パッドの邪魔にならない。
【0008】
請求項3に記載の発明によると、樹脂部材の第二部の外周縁には、リブが形成されている。リブの高さは、該外周縁から突出して第一部が位置する平面と略同じになるように設定されている。したがってリブは、第一部が位置する平面と略同じ高さであるため、パッドの邪魔になることなく、十分に高くなる。これにより第二部の強度が十分に強くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】車両用シートの一部断面斜視図である。
【図2】緩衝体の斜視図である。
【図3】緩衝体とシートフレームの上面図である。
【図4】緩衝体とシートフレームの左側面図である。
【図5】緩衝体をシートフレームに掛止する様子を示す緩衝体とシートフレームの一部拡大斜視図である。
【図6】緩衝体とシートフレームの一部拡大斜視図である。
【図7】緩衝体とプレート部材の一部拡大上面図である。
【図8】樹脂部材と一対のワイヤーの一部拡大上面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面矢視図である。
【図10】他の樹脂部材と一対のワイヤーの一部拡大上面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面矢視図である。
【図12】他の樹脂部材と一対のワイヤーの一部拡大上面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図1〜13にしたがって説明する。図1に示すようにシート20は、車両などの乗物に搭載されるシートであって、シートクッション20aと、シートクッション20aに角度調整可能に連結されるシートバック20bを有している。シートクッション20aとシートバック20bは、それぞれシートフレーム23と、シートフレーム23に取付けられるパッド21と、パッド21の表面を覆う表皮22を有している。パッド21は、発泡ウレタンなどの発泡樹脂から形成される。
【0011】
シートクッション20aのシートフレーム23は、図1に示すように矩形状であって、前側に配される板状のプレート部材24と、後側に配される筒状のバー25と、左右両側に立設される板状のサイドフレーム26を有している。プレート部材24とバー25には、パッド21の裏側(下側)に配設される緩衝体1が架橋される。
【0012】
緩衝体1は、図1に示すようにパッド21の裏面に配設されて、パッド21が弾性変形した際に、パッド21を弾性的に支持する。これにより緩衝体1は、シート20に着座した者に伝わり得る衝撃を緩和する。この緩衝体1は、図2,3に示すように弾性力を有する金属製のスプリング体1aと、複数の樹脂部材4〜11を一体に有している。スプリング体1aは、並設される一対のワイヤー2と、ワイヤー2の一端部間を接続する接続ワイヤー3を一本状に有している。
【0013】
ワイヤー2は、長手方向(図3上下方向)に延出する長手延出部2aと、長手延出部2aに対して略直交する短手方向(図3左右方向)に延出する短手延出部2bを交互に複数有している。長手延出部2aと短手延出部2bの間には、これらを接続するワイヤー屈曲部2cが設けられている。ワイヤー2の一端部には、バー25に掛止されるフック2dが形成されている。フック2dは、上方に円弧状に延出している。一対のフック2d間には、これらを接続する接続ワイヤー3が短手方向に延設されている。
【0014】
樹脂部材4〜11は、ポリプロピレンなどの樹脂材、好ましくは耐クリープ性の高いポリアセタールなどの樹脂材から形成される。樹脂部材4〜11の成形は、成形型にスプリング体1aをセットして射出成形することでスプリング体1aと一体に成形される(図2,3参照)。樹脂部材10は、ワイヤー2の一番前側の短手延出部2bに設けられる。樹脂部材10は、図5に示すように短手延出部2bの両端部を内包する一対の支持部10a,10bと、短手延出部2bの中央部を内包する取付部10cを有している。取付部10cは、シートフレーム23のプレート部材24に切起こされた爪24aに前方から掛止される。
【0015】
図6に示すように一対の支持部10a,10bは、爪24aの左右両側に配設される。したがってワイヤー2は、支持部10a,10bによってプレート部材24に対して左右方向への移動が規制される。また支持部10a,10bは、取付部10cよりも径が大きく、爪24aの高さよりも高い。したがって爪24aにパッド21が接触することが支持部10a,10bによって防止される。これによりパッド21が爪24aによって破損するがこと支持部10a,10bによって防止され得る。
【0016】
図2に示すように樹脂部材11は、ワイヤー2の後端のフック2dを内包する。樹脂部材11は、フック2dとともにシートフレーム23のバー25に下側から掛止される。これにより樹脂部材11は、金属製のワイヤー2とバー25とが直接接触することを防止して、これらの接触により生じ得る異音の発生を防止する。
【0017】
図3,7に示すように樹脂部材4,5は、ワイヤー2の前寄り部に設けられる。樹脂部材4は、各ワイヤー2に取付けられる一対の内包体4eと、一対の内包体4eを連結する連結部4dを一体に有している。内包体4eは、円筒状であって、前から二つ目の長手延出部2aを内包する長手内包部4aと、前から二つ目の短手延出部2bを内包する短手内包部4bを有している。長手内包部4aと短手内包部4bの間には、ワイヤー屈曲部2cを内包する屈曲内包部4cが形成されている。樹脂部材4は、各ワイヤー2においてワイヤー屈曲部2cを一つ内包し、かつ連続して複数のワイヤー屈曲部2cを内包しない構成になっている。連結部4dは、屈曲内包部4cを避けた位置において一対の長手内包部4aを連結する。
【0018】
樹脂部材5は、図7に示すように各ワイヤー2の一部を内包する一対の内包体5eと、一対の内包体5eを連結する連結部5dを一体に有している。内包体5eは、円筒状であって、前から一つ目の長手延出部2aを内包する長手内包部5aと、前から二つ目の短手延出部2bを内包する短手内包部5bを有している。長手内包部5aと短手内包部5bの間には、ワイヤー屈曲部2cを内包する屈曲内包部5cが形成されている。樹脂部材5は、各ワイヤー2においてワイヤー屈曲部2cを一つ内包し、かつ連続して複数のワイヤー屈曲部2cを内包しない構成になっている。連結部5dは、屈曲内包部5cを避けた位置において一対の長手内包部4aを連結する。
【0019】
図3,7に示すように樹脂部材4,5は、ワイヤー2とともにプレート部材24に載置される。したがって樹脂部材4,5は、ワイヤー2とプレート部材24が直接接触することを防止し、これらが接触することで発生する異音を防止する。また樹脂部材4,5は、一対のワイヤー2間を連結する連結部4d,5dを有している。したがって一対のワイヤー2が樹脂部材4,5によって連結される。樹脂部材4,5の間には、ワイヤー屈曲部2c間のワイヤー2の一部を露出する露出部2eが形成されている。したがって樹脂部材4,5を射出成形する際、露出部2eによって露出されるワイヤー2に該当する部分をワイヤー固定ピンによって保持できる。
【0020】
図2,3に示すように樹脂部材6,7は、薄板状であって、四本のワイヤー2に跨って設けられる。樹脂部材6は、緩衝体1の前側部において左右方向に延設される。一方、樹脂部材7は、緩衝体1の後側部において左右方向に延設される。樹脂部材6は、図8,9に示すようにワイヤー2に取付く取付部6aと、ワイヤー2を結んだ平面上において延出する第一部6bと、窪み部6cとフック6fを有している。
【0021】
取付部6aは、図8,9に示すようにワイヤー2を内包する。窪み部6cは、第一部6bの途中でかつ樹脂部材6の左右両側位置において下方に窪んでいる。窪み部6cは、第一部6bからパッド21から遠ざかる方向(下方)に屈曲する一対の屈曲部6d,6eを有している。屈曲部6eの第一部6bに対する傾斜角度は、屈曲部6dの傾斜角度よりも小さく、緩やかになっている。緩やかな屈曲部6eの隣接位置には、第一部6bの幅広部6b1が形成されている。幅広部6b1は、第一部6bの他の部分よりも幅が広く、中央には切欠き部6b2が形成され、幅広部6b1は、環状になっている。
【0022】
幅広部6b1には、図8,9に示すようにフック6fが設けられている。フック6fは、切欠き部6b2の緩衝体1の中心側一端から外側に向けて片持ち梁状に延出している。フック6fは、第一部6bから斜め下方に延出する本体部6f1と、本体部6f1の先端から上方に張出す抜止部6f2と、抜止部6f2の先端から下方に湾曲する受入部6f3を有している。受入部6f3の近傍には、受入部6f3と略並行に緩やかな角度で延出する屈曲部6eが位置する。
【0023】
フック6fには、図9に示すように電気配線部材13が引っ掛けられる。その方法は、先ず電気配線部材13を緩やかな屈曲部6e側から受入部6f3に移動させる。これによりフック6fが弾性変形し、電気配線部材13が本体部6f1に挿入される。電気配線部材13は、フック6fが弾性戻りして抜止部6f2によって本体部6f1から抜け止めされる。フック6fの基端部と本体部6f1の間には、フック6fを厚み方向に厚くする補強部6f4が形成されている。これによりフック6fは、強度が強くなっている。
【0024】
図10,11に示すように樹脂部材7は、ワイヤー2に取付く複数の取付部7aと、ワイヤー2を結んだ平面上において延出する複数の第一部7bと、貫通孔を備える複数の第二部7cを有している。取付部7aは、ワイヤー2を内包する。第二部7cは、第一部7bよりもパッド21から遠い位置において延出している。第一部7bと第二部7cの間には、これらを連結する連結部7hが設けられている。第一部7bと連結部7hの間には、第一部7bから下方に屈曲する屈曲部7dが設けられ、第二部7cと連結部7hの間には、第二部7cから上方に屈曲する屈曲部7eが設けられている。
【0025】
図10,11に示すように第二部7cは、第一部7bよりも幅が広い。第二部7cには、貫通孔を備える環状の装着部7fが設けられる。装着部7fには、クリップ12が装着され、クリップ12は、頭部12aと脚部12bを一体に有している。頭部12aは、装着部7fの貫通孔に挿入されて、装着部7fに弾性的に取付く。脚部12bは、電気配線部材13が掛止される掛止爪を有している。クリップ12の頭部12aは、樹脂部材7の上方に配設されたパッド21と第二部7cの間に設置される。したがって頭部12aは、パッド21の邪魔にならない位置に配設される。
【0026】
図10,11に示すように第二部7cの外周縁には、リブ7gが形成されている。リブ7gは、第一部7bと略同じ高さになっており、パッド21の邪魔にならない。したがって樹脂部材7は、リブ7gによって剛性が高くなり、これによってシートに使用者が着座した際に樹脂部材7によってパッド21が大きく落ち込むことを十分に防止できる。
【0027】
樹脂部材8は、図2,3に示すように薄板状であって、中央二本のワイヤー2に跨って設けられる。図12,13に示すように樹脂部材8は、ワイヤー2に取付く取付部8aと、一対の第一部8bと、一対の第一部8bの間に設けられる第二部8cを有している。取付部8aは、ワイヤー2を内包する。第一部8bは、ワイヤー2を結んだ平面上において延出する。第二部8cは、第一部8bよりもパッド21から遠い位置において延出する。第一部8bと第二部8cの間には、これらを連結する連結部8hが設けられる。第一部8bと連結部8hの間には、第一部8bから下方に屈曲する屈曲部8dが設けられる。第二部8cと連結部8hの間には、第二部8cから上方に屈曲する屈曲部8eが設けられる。
【0028】
図12,13に示すように第二部8cは、後方に延出する延出部8c1を有している。延出部8c1には、一対のリブ8f1を備える装着部8fが形成される。装着部8fには、センサ(圧力センサ)14が装着され、センサ14は、樹脂部材8の上方に配設されたパッド21と第二部8cの間に設置される。したがってセンサ14は、パッド21の邪魔にならない位置に配設される。センサ14は、使用者がシートに着座することでパッド21から圧力を受けて使用者の着座を検知し得る。
【0029】
樹脂部材9は、図2,3に示すように緩衝体1の左右両側でかつ前後中央位置に設けられる。樹脂部材9は、下方に窪んでおり、クリップが装着される貫通孔を有する取付部9aを有している。図4に示すように樹脂部材6,9の取付部6a,9aは、傾斜する前面6a1,9a1と後面6a2,9a2を有している。前面6a1,9a1と後面6a2,9a2は、下後方に傾斜している。そのため使用者がシートクッション20aに着座すると、パッド21が使用者の大腿部によって前下方の力Fを受け、その力Fに対面する方向に取付部6a,9aの後面6a2,9a2が傾斜している。そのためパッド21は、取付部6a,9aによって破れ難くなっている。
【0030】
以上のように、樹脂部材6〜8には、図8〜13に示すように屈曲部6d〜8d,6e〜8eが形成されている。そして樹脂部材6〜8は、屈曲部6d〜8d,6e〜8eによってワイヤー2間方向の弾性変形が許容される。したがって樹脂部材6〜8は、熱などによって収縮した場合、屈曲部6d〜8d,6e〜8e近傍を中心に弾性変形して、ワイヤー2間方向の長さが変化する。そのため樹脂部材6〜8が収縮した場合、樹脂部材6〜8の内部応力が樹脂部材6〜8の弾性変形によって分散され得る。かくしてワイヤー2に取付く樹脂部材6〜8の取付部6a〜8aに応力が集中することが緩和され、取付部6a〜8aの白化が防止され得る。その結果、樹脂部材6〜8の耐久性が向上する。
【0031】
また樹脂部材6〜8は、図8〜13に示すように複数のワイヤー2を結んだ平面上において延出する第一部6b〜8bを有している。樹脂部材6〜8の屈曲部6d〜8dは、第一部6b〜8bからパッド21から遠い側に屈曲している。したがって屈曲部6d〜8dは、パッド21から遠い側へ屈曲しているため、パッド21の邪魔にならない。また屈曲部6d〜8d近傍は、第一部6b〜8bが複数のワイヤー2を結んだ平面上に位置するため、ワイヤー2間を近接する方向に引っ張った際、第一部6b〜8b以外の部分が第一部6b〜8bに向けて変形し、パッド21の邪魔にはならない領域において変形する。そのため樹脂部材6〜8は、弾性変形した場合もパッド21の邪魔にならない。
【0032】
また樹脂部材7,8は、図10〜13に示すように一対の第一部7b,8bと、第二部7c,8cと、各第一部7b,8bと第二部7c,8cを連結する連結部7h,8hを有している。各第一部7b,8bと各連結部7h,8hの間と、第二部7c,8cと各連結部7h,8hの間に屈曲部7d,7e,8d,8eが形成されている。したがって樹脂部材7,8は、複数の屈曲部7d,7e,8d,8e近傍において変形し得る。また樹脂部材7,8は、第一部7b,8bが複数のワイヤー2を結んだ平面上に位置しているため、第二部7c,8cがパッド21から遠い位置から第一部7b,8bに近接する方向に変形することで、ワイヤー2間方向に弾性変形する。そのため樹脂部材7,8は、弾性変形した場合もパッド21の邪魔にならない。
【0033】
また樹脂部材7,8の第二部7c,8cには、図10〜13に示すようにクリップ12またはセンサ14が装着される装着部7f,8fが設けられている。第二部7c,8cとパッド21の間には、クリップ12の頭部12aまたはセンサ14が設置される。したがって樹脂部材7,8は、第二部7c,8cが第一部7b,8bよりもパッド21から遠い位置に位置するため、第二部7c,8cとパッド21の間に隙間を形成し得る。そしてその隙間にクリップ12の頭部12aまたはセンサ14が配設される。そのためクリップ12の頭部12aまたはセンサ14は、パッド21の邪魔にならない。
【0034】
また樹脂部材7の第二部7cの外周縁には、図10,11に示すようにリブ7gが形成されている。リブ7gの高さは、該外周縁から突出して第一部7bが位置する平面と略同じになるように設定されている。したがってリブ7gは、第一部7bが位置する平面と略同じ高さであるため、パッド21の邪魔になることなく、十分に高くなる。これにより第二部7cの強度が十分に強くなる。
【0035】
また樹脂部材6は、図3に示すようにシートフレーム23の爪24aによって左右方向への移動が規制されたワイヤー2の前端部に比較的近い位置に設けられている。したがってワイヤー2の前端部は、樹脂部材6が熱等によって収縮した場合でも左右にほとんど移動しない。そのため樹脂部材6の収縮による力は、ワイヤー2の前端部の移動によって緩和されず、樹脂部材6に加わり続ける。しかしその力は、樹脂部材6の屈曲部6d,6e近傍における弾性変形によって緩和され得る(図8,9参照)。そのため樹脂部材6の取付部6aへの力の集中は、樹脂部材6の弾性変形によって緩和され得る。
【0036】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。
(1)上記実施の形態の緩衝体1は、シートクッション20aのパッド21の裏面(下面)に設けられている。しかし緩衝体1がシートバック20bのパッド21の裏面に設けられる形態であっても良い。
(2)上記実施の形態の樹脂部材6〜8は、薄板状でパッド21に並設され、屈曲部6d〜8d,6e〜8eがパッド21の厚み方向に屈曲する形態である。しかし樹脂部材が薄板状でパッドに対して立設され、屈曲部がパッド21に沿って屈曲し、屈曲部の近傍が変形することで樹脂部材がワイヤー間方向に弾性変形する形態であっても良い。
(3)上記実施の形態の樹脂部材6〜8は、薄板状であったが、棒状であっても良い。
(4)上記実施の形態では、樹脂部材6が緩衝体1の前側部に設けられ、樹脂部材7,8が緩衝体1の後側部に設けられている。しかし樹脂部材6が後側部に設けられても良いし、樹脂部材7,8が前側部に設けられる形態であっても良い。
(5)上記実施の形態の樹脂部材7は、リブ7gを有し、リブ7gが連結部7hと接続されている。しかしリブ7gと連結部7hが接続しておらず、これによって樹脂部材7がワイヤー2間方向に弾性変形し易い形態であっても良い。
【符号の説明】
【0037】
1…緩衝体
1a…スプリング体
2…ワイヤー
2a…長手延出部
2b…短手延出部
2c…ワイヤー屈曲部
2d…フック
2e…露出部
3…接続ワイヤー
4〜11…樹脂部材
4a,5a…長手内包部
4b,5b…短手内包部
4c,5c…屈曲内包部
4d,5d…連結部
4e,5e…内包体
6a〜9a…取付部
6b〜8b…第一部
6d〜8d,6e〜8e…屈曲部
6f…フック
7c,8c…第二部
7f,8f…装着部
7g…リブ
7h,8h…連結部
12…クリップ
12a…頭部
13…電気配線部材
14…センサ
20…シート
20a…シートクッション
20b…シートバック
21…パッド
23…シートフレーム
24…プレート部材
24a…爪
25…バー
26…サイドフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレームに懸架されてパッドを弾性的に支持し得る乗物シート用緩衝体であって、
前記シートフレームに両端部が掛け止められて並設される複数のワイヤーと、前記ワイヤー間を連結する樹脂部材を有し、
前記樹脂部材には、前記複数のワイヤー間方向の弾性変形を許容する屈曲部が形成され、
前記樹脂部材は、複数の前記ワイヤーを結んだ平面上において延出する一対の第一部と、前記一対の第一部の間において前記第一部よりもパッドから遠い位置に位置する第二部と、前記各第一部と前記第二部を連結する連結部を有し、
前記各第一部と前記各連結部の間と、前記第二部と前記各連結部の間に屈曲部が形成されていることを特徴とする乗物シート用緩衝体。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物シート用緩衝体であって、
樹脂部材の第二部には、クリップまたはセンサが装着される装着部が設けられ、
前記第二部とパッドの間には、前記クリップの頭部または前記センサが設置されることを特徴とする乗物シート用緩衝体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乗物シート用緩衝体であって、
樹脂部材の第二部の外周縁には、リブが形成され、
前記リブの高さは、該外周縁から突出して第一部が位置する平面と略同じになるように設定されていることを特徴とする乗物シート用緩衝体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−100107(P2013−100107A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−38318(P2013−38318)
【出願日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【分割の表示】特願2008−303964(P2008−303964)の分割
【原出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】