説明

乗物用ウインドウガラスの調光制御装置

【課題】例えば公道上での停車中の安全性を確保しながら、公道上以外の特定の場所ではキーを抜脱しなくてもウインドウを不透明な状態に切り換えられるようにする。
【解決手段】位置判定手段11により乗物100の所在位置が特定領域に属していると判定され且つ速度判定手段12により乗物100の移動速度がゼロであると判定された場合に限り、調整手段13により調光ガラス110の透過率を所定値未満に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の乗物用ウインドウガラスの透明度(可視光線の透過率)を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗物、例えば自動車のウインドウガラスとしては、運転者の視界を維持して安全性を確保すべく、透明なもの(可視光線の透過率が所定値以上のもの)が用いられている。しかし、ウインドウガラスが透明であると、日が車内に差し込んで車内が暑くなったり他人に車内を覗かれプライバシイやセキュリティを保てなくなったりする。このため、ウインドウガラスを不透明にする黒色等(可視光線の透過率の低い濃い色)のフィルムをウインドウガラスに貼ることが行なわれている。
【0003】
ただし、可視光線の透過率を低下させるフィルムの貼付対象となるウインドウガラスについては、後述する道路運送車両の保安基準による制限があり、フロントウインドウや運転者席横のサイドウインドウにフィルムを貼付できないため、車内温度上昇を確実に抑制したりプライバシイやセキュリティを確実に保護したりすることができない。
【0004】
そこで、例えば下記特許文献1では、自動車の各ウインドウに液晶フィルムを貼り付けておき、液晶フィルムに対する電圧供給を制御することにより、ウインドウの透明/不透明の切換を行なっている。より具体的に説明すると、下記特許文献1では、車を駐車してキーを抜いた状態では、液晶フィルムに対する電圧印加を停止して液晶フィルムつまりは各ウインドウを暗い状態にし、車内に日が差し込んだり他人に覗かれたりするのを防止する一方、車を運転すべくキーをキー挿入口に入れると液晶フィルムに対する電圧印加を行なって液晶フィルムつまりは各ウインドウを透明な状態にすることが開示されている。
【0005】
また、例えば下記特許文献2では、自動車において、任意の光透過率に調整可能な調光ガラスと、イグニッションキースイッチ装置とを連動させることにより、キーを抜脱した際には自動的にウインドウの光透過率を低下させることで車内を視認不可能にすることが開示されている。さらに、下記特許文献2では、有機エレクトロルミネッセンス素子を挟入された調光ガラスを用いることで、上述と同様にキーを抜脱した際には自動的に車内を視認不可能にするほか、自動車において盗難,事故等の異常を検知した際には、有機エレクトロルミネッセンス素子により外部に向けての発光表示を行なうことにより異常の報知を行なったり、走行中にはリアウインドウを成す調光ガラスの有機エレクトロルミネッセンス素子により広告等の画像表示を行なったりすることが可能になることが開示されている。
【0006】
なお、車のフロントウインドウおよびサイドウインドウ(運転者席のサイド部)については、道路運送車両の保安基準(第29条第4項)で、下記のような規定が定められている。
前面ガラスおよび側面ガラス(運転者席よりも後方の部分を除く)には、次のもの以外の標識、ポスター等を貼り付けおよび塗装を行なってはならない。
1.国土交通大臣または地方運輸局長が指定したもの
2.臨時検査合格標章
3.検査標章
4.道路交通法に定める違法駐車ステッカ,故障ステッカ
5.車室内に備える貼り付け式の後写鏡
6.貼り付けられまたは塗装された状態において、透明であり、かつ、運転者が交通状況
を確認するために、必要な視野の範囲における可視光線の透過率が70%以上確保できるもの。
【0007】
これらの項目1〜6の中で特に重要なものが項目6であり、この項目6は、走行中に運転者の視界を妨げることを防ぐための規定であり、走行中に、フロントウインドウおよび運転者席横のサイドウインドウにおける可視光線の透過率が70%未満になることを禁止している。
従って、特許文献1,2に開示された技術では、いずれも、基本的にキーを抜脱した場合にのみ自動車の全てのウインドウ(液晶フィルムや調光ガラス)を不透明な状態に切り換えるようにしている。これにより、走行中にウインドウにおける可視光線の透過率が70%未満になることを防止している。
【特許文献1】特開平6−72150号公報
【特許文献2】特開2004−138795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、停車中、車内で食事をとったり睡眠をとったりするような場合には、プライバシイを守るためにウインドウを不透明な状態に切り換えることが多くなる。
しかしながら、特許文献1,2に開示された技術のごとくキーを抜脱しなければ不透明状態に切り換えられない構成では、車内での食事や睡眠に際し、エンジンを起動させエアコン等を作動させながら、ウインドウを不透明な状態に切り換えることができない。
【0009】
一方、特許文献1,2に開示された技術では、公道上であっても、停車してキーを抜脱すれば、フロントウインドウおよび運転者席横のサイドウインドウを含む全てのウインドウを不透明な状態に切り換えることができてしまう。しかし、上記保安基準の上記項目6によれば、自動車が走行中でない状態であっても公道上で停車しているのであれば、運転者が交通状況を確認するために、フロントウインドウおよび運転者席横のサイドウインドウについては、必要な視野の範囲における可視光線の透過率を70%以上に確保しておく必要があるものと考えられる。従って、特許文献1,2に開示された技術のごとく、キーを抜脱すれば公道上であっても全てのウインドウを不透明な状態に切換可能な構成とすることは、上記保安基準の規定に照らして好ましくないものと考えられる。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑み創案されたもので、例えば公道上での停車中の安全性を確保しながら、公道上以外の特定の場所では、停止していればキーを抜脱しなくてもウインドウを不透明な状態に切り換えられるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置(請求項1)は、可視光線の透過率を調整可能な調光ガラスをウインドウガラスとしてそなえた乗物において、前記調光ガラスの前記透過率を制御するものであって、前記乗物の所在位置を検出する位置検出手段と、前記乗物の移動速度を検出する速度検出手段と、前記位置検出手段によって検出された前記乗物の所在位置が、予め指定された特定領域に属しているか否かを判定する位置判定手段と、前記速度検出手段によって検出された前記乗物の移動速度がゼロであるか否かを判定する速度判定手段と、前記位置判定手段によって前記乗物の所在位置が前記特定領域に属していると判定され且つ前記速度判定手段によって前記乗物の移動速度がゼロであると判定された場合、前記調光ガラスの前記透過率を所定値未満に調整する調整手段とをそなえて構成されていることを特徴としている。
【0012】
上述した調光制御装置においては、前記位置判定手段によって前記乗物の所在位置が前記特定領域に属していないと判定された場合、もしくは、前記速度判定手段によって前記
乗物の移動速度がゼロでないと判定された場合、前記調整手段が、前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値以上に調整する(請求項2)。
【0013】
ここで、前記調光ガラスの第1例としては、所定の電圧の印加により液晶分子の配向性を変化させることで可視光線を遮る液晶層を2枚の透明電極間に挟入して成る液晶フィルムを含むものが用いられる。この場合、前記調整手段が、前記2枚の透明電極に前記所定の電圧を印加して前記液晶分子の配向性を変化させることにより前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値未満に調整する(請求項3)。さらに、前記調光ガラスが、所定の電圧の印加により発光する透明な発光層を2枚の透明電極間に挟入して成る有機エレクトロルミネッセンス素子層を含んで構成され、前記発光層が、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に配列して構成され、各発光体の発光状態を制御することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において任意の発色もしくは任意の画像の表示を実行させる表示制御手段をさらにそなえて構成されていてもよい(請求項4)。
【0014】
前記調光ガラスの第2例としては、所定の電圧の印加により発光する透明な発光層を2枚の透明電極間に挟入して成る有機エレクトロルミネッセンス素子層と、前記発光層から発せられる特定波長の光に反応して着色されるフォトクロミックガラス層とを含むものが用いられる。この場合、前記調整手段が、前記発光層に前記特定波長の光を発光させ前記フォトクロミックガラス層を着色させることにより、前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値未満に調整する(請求項5)。また、前記発光層が、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に配列して構成され、各発光体の発光状態を制御することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において任意の発色もしくは任意の画像の表示を実行させる表示制御手段をさらにそなえて構成されていてもよい(請求項6)。
【0015】
前記調光ガラスの第3例としては、所定の電圧の印加により発光する透明な発光層を2枚の透明電極間に挟入して成る有機エレクトロルミネッセンス素子層を含むものが用いられる。この場合、前記調整手段が、前記発光層に所定色の光を発光させることにより、前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値未満に調整する(請求項7)。また、前記発光層が、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に配列して構成され、各発光体の発光状態を制御することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において任意の発色もしくは任意の画像の表示を実行させる表示制御手段をさらにそなえて構成されていてもよい(請求項8)。
【0016】
そして、前記表示制御手段が、前記乗物の移動中にリアウインドウガラスとして用いられる前記調光ガラスの前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において、前記乗物のブレーキ操作に連動した表示を実行させてもよいし(請求項9)、前記表示制御手段が、前記乗物の移動中にリアウインドウガラスとして用いられる前記調光ガラスの前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において、前記乗物の方向指示器の動作に連動した表示を実行させてもよい(請求項9)。
【0017】
なお、前記乗物が自動車である場合、前記特定領域を、前記自動車の走行移動しうる公道上以外の領域としてもよいし(請求項10)、前記位置検出手段は、GPS(Global Positioning System)を用いて前記乗物の所在位置を検出してもよい。
また、前記調整手段は、少なくとも前記乗物の運転者の前方および両側方におけるウインドウガラスとして用いられる調光ガラスを、前記位置判定手段および前記速度判定手段による判定結果に従った前記透過率の調整対象としてもよく(特に前記乗物が自動者である場合)、このとき、前記乗物の運転者の前方および両側方におけるウインドウガラス以外のウインドウガラスとして用いられる前記調光ガラスの前記透過率については、前記速
度判定手段および前記位置判定手段による判定結果と関係なく、前記調整手段によって前記所定値未満もしくは前記所定値以上のいずれか一方に選択的に切り換えさせる切換手段をさらにそなえて構成されていてもよい。
【0018】
さらに、前記乗物の外部の明度を検出する明度検出手段をさらにそなえ、前記調整手段が、前記明度検出手段によって検出された明度に応じて前記調光ガラスの透過率を調整するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置によれば、乗物の所在位置が特定領域に属していると判定され且つ乗物の移動速度がゼロであると判定された場合に限り、調光ガラスの透過率は所定値未満に調整される一方、乗物の所在位置が特定領域に属していないと判定された場合、もしくは、乗物の移動速度がゼロでないと判定された場合、調光ガラスの透過率は所定値以上に調整される。
【0020】
従って、乗物としての車両等が、例えば公道上での停車中や、公道上でなくとも移動中には、ウインドウガラス(調光ガラス)の透過率を所定値未満に切り換えることはできず、つまりウインドウガラスを不透明な状態に切り換えることができないので、公道上での停車中の安全性や、公道上以外の領域での移動中の安全性を確保することができる。
【0021】
このように安全性を確保しながら、公道上以外の特定の場所では、停止していればキーを抜脱しなくてもウインドウガラス(調光ガラス)の透過率を所定値未満に切り換えてウインドウガラスを不透明な状態に切り換えることができるので、停止中の乗物内温度上昇を確実に抑制できるとともに、プライバシイやセキュリティを確実に保護できる。また、キーを抜脱しなくても済むので、乗物内での食事や睡眠に際してエンジンを起動させエアコン等を作動させながら、ウインドウガラスを不透明な状態に切り換えることができる。
【0022】
ここで、調光ガラスとして液晶フィルムを含むものを用いた場合には、2枚の透明電極間に所定の電圧を印加するだけで、極めて容易に調光ガラスの透過率を所定値未満に切り換えてウインドウガラスを不透明な状態にすることができる。
調光ガラスとして有機エレクトロルミネッセンス素子層およびフォトクロミックガラス層を含むものを用いた場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子層の発光層に特定波長の光を発光させるだけで、極めて容易に調光ガラスの透過率を所定値未満に切り換えてウインドウガラスを不透明な状態にすることができる。このとき、有機エレクトロルミネッセンス素子層から発した光によりフォトクロミックガラス層が着色されるので、透過率の低下変更が充分に行なわれる一方、フォトクロミックガラス層を着色させる波長の光以外の光を有機エレクトロルミネッセンス素子層に発光させた場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子層を含む調光ガラスを、後述するごとく外部に対する表示装置として機能させることが可能となる。
【0023】
調光ガラスとして有機エレクトロルミネッセンス素子層のみを含むものを用いた場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子層の発光層に所定色の光を発光させるだけで、極めて容易に調光ガラスの透過率を所定値未満に切り換えてウインドウガラスを不透明な状態にすることができる。この場合も、有機エレクトロルミネッセンス素子層を含む調光ガラスを、後述するごとく外部に対する表示装置として機能させることが可能となる。
【0024】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子層における発光層を、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に配列して構成し、各発光体の発光状態を制御することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子層において任意の発色や任意の画像の表示を行なうことが可能になり、ウインドウガラスを外部に対する表示装置として用
いることができる。
【0025】
例えば、乗物の停止中に全てのウインドウガラスの色を乗物外面と同じ色にすることで、外観上、お洒落で極めて目立つ状態となるので、悪意をもった第三者が盗難等の不法行為を行ない辛くなり、その乗物に対する不法行為の防止に大きく寄与することになる。
また、乗物の移動中にリアウインドウガラスとして用いられる調光ガラスの有機エレクトロルミネッセンス素子層において、乗物のブレーキ操作に連動した表示や乗物の方向指示器の動作に連動した表示を実行することにより、ブレーキランプやウインカーだけでなくリアウインドウガラスを用いた大きな表示によって、後方の乗物の運転者に対し運転者のブレーキングや移動方向の意志を明確に伝えることが可能になり、走行移動中の安全性を高めることができる。
【0026】
なお、近年、自動車等に一般的に装備されているカーナビゲーションシステムのGPS機能を用いることで、特別な位置検出手段を新たにそなえることなく、極めて容易に乗物の所在位置を検出することができる。
また、上記道路運送車両の保安基準(第29条第4項)に従えば、少なくとも運転者の前方および両側方におけるウインドウガラスを、位置判定手段および速度判定手段による判定結果に従った透過率調整対象とすればよく、これらの対象ウインドウガラス以外のウインドウガラスとして用いられる調光ガラスの透過率については、乗物の停止中/移動中に関係なくまた乗物の所在位置に関係なく、所定値未満か以上のいずれか一方に選択的に切り換え可能に構成することで、対象ウインドウガラス以外のウインドウガラスについては、乗物の乗員の意志によって透明/不透明の切換をいつでも行なうことが可能であり、利便性を高めることができる。
【0027】
さらに、乗物の外部の明度に応じて調光ガラスの透過率を調整することにより、乗物外が暗い場合には透過率を高めて視界を確保することができる一方、乗物外が極めて明るい場合には透過率を低くして運転者や乗員の受ける眩しさを低減することができるので、運転者は乗物外の状況を確実に視認することが可能になり、安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
〔1〕本実施形態の調光制御装置の構成
図1は本発明の一実施形態としての乗物用ウインドウガラスの調光制御装置の構成を示すブロック図で、この図1に示すように、本実施形態の調光制御装置1は、可視光線の透過率を調整可能な調光ガラス110を、ウインドウガラス111〜116としてそなえた自動車(車両,乗物)100において、各調光ガラス110の透過率を制御するものである。
【0029】
本実施形態における乗物としての自動車100は、一般的な4ドアタイプの乗用車とし、6枚のウインドウガラス111〜116(フロントウインドウガラス111,右前サイドウインドウガラス112,左前サイドウインドウガラス113,右後サイドウインドウガラス114,左後サイドウインドウガラス115およびリアウインドウガラス116)をそなえている。
【0030】
これらのウインドウガラス111〜116を成す調光ガラス110としては、図2に示すような調光ガラス110A、もしくは、図3に示すような調光ガラス110B、もしくは、図4に示すような調光ガラス110Cのいずれかを用いることができる。
ここで、「調光ガラス」とは、ガラスそのものの可視光線の透過率や着色具合などを自由に調整可能とすることで、カーテンやシャッタなどを用いることなく、当該ガラスの隔てた側を視認不可能なもの(不透明な状態)とすることが可能なガラスである。また、こ
こでいう「調光ガラス」の「ガラス」とは、いわゆる二酸化珪素を主成分とするガラスという材質を指すのではなく、窓などに利用され得る、通常、略無色透明である板状のものを指す広義の「ガラス」であり、プラスチックなどの材質のものも含まれる。
【0031】
図2は調光ガラス(第1例)110Aの構造を模式的に示す断面図で、この図2に示すように、調光ガラス110Aは、液晶を用いて調光可能に構成されたものであり、通常は透明な状態であったものが、電圧の印加により液晶分子の配向性が変わることにより光が遮られる構成を有している。
より具体的に説明すると、調光ガラス110Aは、2枚のガラス板(透明板)120,130の間に有機エレクトロルミネッセンス素子層140が挟入されることによって構成されている。なお、以下では「エレクトロルミネッセンス」を「EL」と略記する場合がある。
【0032】
有機EL素子層140は、陽極透明電極141と陰極透明電極142とが有機EL層143を挟入することにより構成されている。そして、陽極透明電極141と陰極透明電極142との間に電圧を印加することにより、有機EL層143が発光するようになっている。この有機EL層143は、陽極側から順に正孔輸送層144,発光層145および電子輸送層146の3層を積層されて構成されており、陽極透明電極141と陰極透明電極142との間に電圧が印加されることにより発光層146から陽極方向に向けて発光光が発せられるのである。
【0033】
また、発光層146は、光の3原色である赤(R),緑(G),青(B)を各々発光する発光体を、マトリクス状に規則正しく配列して構成されており、このような構成により、調光ガラス110Aを、カラー表示装置として機能させることが可能になっている。調光ガラス110Aにおいて、有機EL素子層140による表示状態(3原色用発光体の発光状態)は、後述する表示制御手段14によって制御され、全面的に同一色の着色表示を行なえるだけでなく、任意の画像を表示させ、外部に対して様々な情報を報知することが可能になっている。
【0034】
なお、本実施形態においては、有機EL層143は正孔輸送層144,発光層145および電子輸送層146の3層により構成されているが、本発明はこれに限らず、単一の層からなるものや、正孔輸送層と発光層の2層からなるもの等、有機EL層と呼ばれるものによって構成されていればよい。
【0035】
そして、調光ガラス110Aでは、可視光線の透過率を調整すべく、液晶フィルム150が車室内側に貼付されている。液晶フィルム150を調光ガラス110Aの車室内側つまりガラス板130に貼付することで、この液晶フィルム150による調光(可視光線の透過率の変更・調整;後述)を行なっても、有機EL素子層140による外部(車室外)に対する表示(後述)が液晶フィルム150によって遮られることはない。
【0036】
液晶フィルム150は、2枚の透明薄膜151,152の間に、透明電極153,154および液晶層(液晶分子)155が挟入されることによって構成されている。液晶層155は、透明電極153,154の間に挟入されている。そして、これらの透明電極153,154の間に所定の電圧を印加することにより、液晶層155における液晶分子の配向性を変化させることで可視光線が遮られるように構成されている。
【0037】
即ち、液晶フィルム150つまりは調光ガラス110Aは、電圧を印加しない状態で透明な状態(可視光線の透過率が所定値である70%以上の状態)であるが、所定の電圧を印加すると不透明な状態(可視光線の透過率が所定値である70%未満の状態)に切り換えられるようになっている。この液晶フィルム150に対する印加電圧は、後述する調整
手段13によって調整・制御される。
【0038】
上述のごとく、1枚の調光ガラス110Aにおいて、有機EL素子層140および液晶フィルム150をそなえることにより、有機EL素子層140によるカラー表示装置としての機能と、液晶フィルム150による一般的な調光ガラスとしての機能との両方を実現することが可能になるのである。なお、調光ガラス110Aにおいて、カラー表示を目的としないのであれば、RGBの3色の発光体全てをそなえる必要はない。
【0039】
図3は調光ガラス(第2例)110Bの構造を模式的に示す断面図で、この図3に示すように、調光ガラス110Bは、フォトクロミック方式を用いて調光可能に構成されたもので、図2に示した調光ガラス110Aとほぼ同様に構成されているが、調光ガラス110Bでは、調光ガラス110Aの液晶フィルム150に代え、フォトクロミックガラス層160がそなえられている。このフォトクロミックガラス層160は、特定の波長の光を照射することにより、着色する物質を用いたもので、調光ガラス110Bの車室外側つまりガラス板120に貼付されている。なお、図3中、既述の符号と同一の符号は、同一もしくはほぼ同一の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0040】
より具体的に説明すると、調光ガラス110Bにおいては、可視光線の透過率を調整すべく、陽極側のガラス板120の外側に、特定波長の光の照射により着色する機能を有するフォトクロミックガラス層160が設けられている。このフォトクロミックガラス層160つまりは調光ガラス110Bは、通常、透明な状態(可視光線の透過率が所定値である70%以上の状態)であるが、有機EL層143(発光層145)に当該特定波長を有する光を発光させると着色され不透明な状態(可視光線の透過率が所定値である70%未満の状態)に切り換えられるようになっている。フォトクロミックガラス層160を着色すべく有機EL層143(発光層145)に当該特定波長を有する光を発光させる指示・制御は、後述する調整手段13によって行なわれる。
【0041】
このとき、調光ガラス110Bにおいて、フォトクロミックガラス層160は、特定の紫外線光により着色するものとし、有機EL素子層140の発光層145は、赤(R),緑(G),青(B)の光の3原色および当該特定の紫外線光を発する4種類の発光体をマトリクス状に規則正しく配列して構成されているものとする。この場合、紫外線光用発光体の発光状態の制御は、後述する調整手段13によって行なわれる一方、有機EL素子層140による表示状態(3原色用発光体の発光状態)は、調光ガラス110Aと同様、後述する表示制御手段14によって制御され、全面的に同一色の着色表示を行なえるだけでなく、任意の画像を表示させ、外部に対して様々な情報を報知することが可能になっている。
【0042】
上述のごとく、1枚の調光ガラス110Bにおいて、有機EL素子層140およびフォトクロミックガラス層160をそなえることにより、有機EL素子層140によるカラー表示装置としての機能と、有機EL素子層140(紫外線用発光体)およびフォトクロミックガラス層160の協働動作による調光ガラスとしての機能との両方を実現することが可能になるのである。なお、調光ガラス110Bにおいてカラー表示を目的としないのであれば、RGBの3色の発光体全てをそなえる必要はなく、また、フォトクロミックガラス層160を着色するための光は紫外線光に限らず、赤外線光や、単色表示時であれば表示用の光と異なる波長の光でもよく、表示装置として使用する際に用いられる波長の光でなければよい。
【0043】
図4は調光ガラス(第3例)110Cの構造を模式的に示す断面図で、この図4に示すように、調光ガラス110Cは、図2に示す調光ガラス110Aの液晶フィルム150を取り除いたもの、もしくは、図3に示す調光ガラス110Bのフォトクロミックガラス層
160を取り除いたものと等価な構成になっている。なお、フォトクロミックガラス層160をそなえていないので、当然、調光ガラス110Bについて上述した、有機EL素子層140における紫外線用発光体も不要になる。また、図4中、既述の符号と同一の符号は、同一もしくはほぼ同一の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0044】
より具体的に説明すると、調光ガラス110Cにおいては、有機EL素子層140が、カラー表示を行なうだけでなく、可視光線の透過率を調整するものとして機能する。つまり、有機EL素子層140つまりは調光ガラス110Cは、通常、透明な状態(可視光線の透過率が所定値である70%以上の状態)であるが、有機EL層143(発光層145)を発光させ何らかのカラー表示を行なうと不透明な状態(可視光線の透過率が所定値である70%未満の状態)に切り換えられるようになっている。
【0045】
このとき、調光ガラス110Cを不透明にすることを目的とする有機EL層143の発光制御は、後述する調整手段13によって行なわれる一方、調光ガラス110Cにおいてカラー表示を行なうことを目的とする有機EL層143の発光制御は、後述する後述する表示制御手段14によって行なわれる。この調光ガラス110Cにおいても、有機EL素子層140による表示状態(3原色用発光体の発光状態)は、調光ガラス110A,110Bと同様、後述する表示制御手段14によって制御され、全面的に同一色の着色表示を行なえるだけでなく、任意の画像を表示させ、外部に対して様々な情報を報知することが可能になっている。
【0046】
上述のごとく、1枚の調光ガラス110Cにおいて、有機EL素子層140をそなえることにより、カラー表示装置としての機能と調光ガラスとしての機能との両方を実現することが可能になるのである。なお、調光ガラス110Cにおいてカラー表示を目的としないのであれば、RGBの3色の発光体全てをそなえる必要はない。
【0047】
さて、図1に示す本実施形態の自動車100においては、エンジン(図示略)の駆動がダイナモ(図示略)に伝わり該ダイナモによる発電が行なわれ、その電力は、通常のバッテリと本実施形態の調光制御装置1のための専用バッテリと(いずれも図示略)に蓄積される。ここで、通常のバッテリは、エンジンの点火プラグや各種装備品を作動させるための電源であり、専用バッテリは本実施形態に係る調光ガラス110を動作させるための専用の電源である。このように、他の装備品等を作動させるための電源と、調光ガラス110を作動させるための電源とを分離することにより、エンジン非作動時に調光ガラス110が電力を消費していても、エンジン始動のためのバッテリが上がってしまうのを防止できるようになっている。また、専用バッテリは調光制御装置1に接続されており、調光制御装置1は専用バッテリからの電力供給を受けて動作する。
【0048】
そして、本実施形態の調光制御装置1は、図1に示すように、6枚のウインドウガラス111〜116を成す調光ガラス110のそれぞれに接続され、各調光ガラス110における可視光線の透過率を調整制御するとともに、各調光ガラス110における有機EL素子層140によるカラー表示を制御するもので、CPU10,GPS位置検出部21,速度センサ22,明度センサ23,切換スイッチ24,表示指示入力部25,ROM30およびRAM40をそなえて構成されている。
【0049】
ROM(Read Only Memory)30は、調光制御装置1としての機能を実現すべくCPU10が実行すべき各種プログラム(調光制御プログラム/表示制御プログラム)や、これらのプログラムを実行するために必要になる初期データ(デフォルト値等)や、後述する位置判定手段11および速度判定手段12による判定でそれぞれ必要となる位置判定条件および速度判定条件や、その判定に必要となる領域情報(後述する特定領域の経度・緯度情報)および速度情報(後述する速度ゼロの情報)や、ウインドウガラス111〜116
を成す各調光ガラス110における有機EL素子層140で表示されるオリジナル画像データ(後述するブレーキ用表示画像データや方向指示用表示画像データのほか、ユーザの好みによって格納された各種表示画像データ等)などを記憶するものである。なお、本実施形態において、位置判定条件は、自動車100の所在位置が、予め指定された特定領域(より具体的には、自動車100の走行移動しうる公道上以外の領域;例えば私有地やコンビニの駐車場など)に属していることであり、速度判定条件は、自動車100の移動速度(車速)がゼロであることである。
【0050】
RAM(Random Access Memory)40は、ROM30に記憶されたプログラムをCPU10が実行する際に使用するデータ(フラグや変数の値など)を一時的に記憶するほか、ウインドウガラス111〜116を成す各調光ガラス110における有機EL素子層140によってカラー表示を行なう際に有機EL素子層140で表示すべき画像データを一時的に記憶するものである。
【0051】
GPS位置検出部(位置検出手段)21は、自動車100の所在位置(現在位置;緯度・経度情報)を、例えば既設のカーナビゲーションのGPS(Global Positioning System)機能を用いて検出するものである。速度センサ(速度検出手段)22は、自動車10
0の移動速度(車速)を検出するもので、この速度センサ22も、自動車100に既設のものが用いられる。明度センサ(明度検出手段)23は、自動車100外部の明度(車室外の明るさの度合い;単位:ルクス(lx))を検出するものである。
【0052】
切換スイッチ(切換手段)24は、各調光ガラス110の透明状態から不透明状態への切換指示や各調光ガラス110の不透明状態から透明状態への切換指示を、CPU10(後述する調整手段13)に対して行なうもので、フロントウインドウガラス111,右前サイドウインドウガラス112,左前サイドウインドウガラス113,右後サイドウインドウガラス114,左後サイドウインドウガラス115およびリアウインドウガラス116の全てについて同時に切り換える指示や、これらのウインドウガラス111〜116のうちの少なくとも一つを指定して選択的に切り換える指示を行なえるようになっている。また、切換スイッチ24は、後述するごとく明度センサ23による検出結果(明度)に応じた透過率調整を行なう明度調整モードの設定・解除も行なえるようになっている。
【0053】
表示指示入力部25は、各調光ガラス110における有機EL素子層140によるカラー表示についての実行指示や解除指示を、CPU10(後述する表示制御手段14)に対して行なうもので、例えば、各調光ガラス110で表示されるべき画像をROM30に保存されているオリジナル画像データの中から指定しその画像の表示指示や解除指示を行なったり、各調光ガラス110で発光されるべき色を指定しその色による表示指示や解除指示を行なったり、図5を参照しながら後述するようなブレーキ用表示画像を運転者のブレーキ50の操作に応じてリアウインドウガラス116(調光ガラス110)に表示させるブレーキ表示モードの設定や解除を指示したり、図6を参照しながら後述するような方向指示用表示画像を、運転者によって操作される方向指示器60の動作に応じて表示させる方向指示表示モードの設定や解除を指示したりするものである。
【0054】
CPU(Central Processing Unit)10は、ROM30に記憶されている調光制御プ
ログラム/表示制御プログラムを読み出して実行することにより、後述する位置判定手段11,速度判定手段12,調整手段13および表示制御手段14としての機能を果たすものである。
【0055】
位置判定手段11は、GPS位置検出部21によって検出された自動車100の所在位置(現在位置;緯度・経度情報)が、ROM30に記憶されている位置判定条件を満たしているか否か、即ち、特定領域(自動車100の走行移動しうる公道上以外の領域;例え
ば私有地やコンビニの駐車場など)に属しているか否かを判定するものである。この位置判定手段11による判定は、GPS位置検出部21によって検出された所在位置の緯度・経度情報が、ROM30に予め登録されている特定領域の経度・緯度情報に属しているか否かを判定することによって行なわれる。
【0056】
速度判定手段12は、速度センサ22によって検出された自動車100の移動速度(車速)が、ROM30に記憶されている速度判定条件を満たしているか否か、即ち、ゼロであるか否かを判定するものである。
調整手段13は、図7を参照しながら後述するように、上記道路運送車両の保安基準(第29条第4項)に従い、運転者の前方および両側方におけるウインドウガラス111〜113を、位置判定手段11および速度判定手段12による判定結果と切換スイッチ24によって行なわれる切換指示とに従った透過率調整対象とする一方、図8を参照しながら後述するように、上記ウインドウガラス111〜113以外のウインドウガラス114〜116を、切換スイッチ24によって行なわれる切換指示のみに従った透過率調整対象としている。
【0057】
つまり、調整手段13は、ウインドウガラス111〜113を成す各調光ガラス110を透明状態から不透明状態へ切り換える指示を切換スイッチ24から受けると、位置判定手段11によって自動車100の所在位置が特定領域に属していると判定され且つ速度判定手段12によって自動車100の移動速度がゼロであると判定された場合に限り、ウインドウガラス111〜113を成す各調光ガラス110の透過率を所定値未満(例えば70%未満)に調整し、各調光ガラス110を透明状態から不透明状態へ切り換える。
【0058】
このようにウインドウガラス111〜113を成す各調光ガラス110を不透明状態へ切り換えた後も、所定制御周期毎に、GPS位置検出部21および速度センサ22による検出、および、その検出結果に基づく位置判定手段11および速度判定手段12による判定が実行されており、位置判定手段11によって自動車100の所在位置が特定領域に属していないと判定された場合、もしくは、速度判定手段12によって自動車100の移動速度がゼロでないと判定された場合には、直ちに、調整手段13が、ウインドウガラス111〜113を成す各調光ガラス110の透過率を所定値以上(例えば70%以上)に調整し、各調光ガラス110を不透明状態から透明状態へ切り換える。
【0059】
また、調整手段13は、上記道路運送車両の保安基準(第29条第4項)の対象外であるウインドウガラス114〜116を成す各調光ガラス110を透明状態から不透明状態へ切り換える指示を切換スイッチ24から受けると、速度判定手段11および位置判定手段12による判定結果と関係なく、各調光ガラス110の透過率を所定値未満(例えば70%未満)に調整し、各調光ガラス110を透明状態から不透明状態へ切り換える。
【0060】
さらに、調整手段は13は、ウインドウガラス111〜116を成す各調光ガラス110を透明状態から不透明状態へ切り換える指示を受けると、各調光ガラス110の透過率を所定値以上(例えば70%以上)に調整し、各調光ガラス110を不透明状態から透明状態へ切り換える。
【0061】
また、本実施形態の調整手段13は、切換スイッチ24により前記明度調整モードが設定されている場合、明度センサ23によって検出された、自動車100外部の明度(車室外の明るさの度合い)に応じて、各調光ガラス110の透過率を調整する機能も有している。例えば、自動車100外部の明度が低い場合(つまり車外が暗い場合)、各調光ガラス110の透過率を高めるように調整する一方、自動車100外部の明度が高い場合(つまり車外が明るい場合)、各調光ガラス110の透過率を低くするように調整する。
【0062】
なお、各調光ガラス110が図2に示す調光ガラス110Aである場合、調整手段13は、液晶フィルム150における2枚の透明電極153,154に所定の電圧を印加し、液晶層155における液晶分子の配向性を変化させることにより、調光ガラス110の透過率を所定値未満に調整する。また、各調光ガラス110が図3に示す調光ガラス110Bである場合、調整手段13は、有機EL素子層140の透明電極141,142に所定の電圧を印加し、発光層145に特定波長の光(本実施形態では紫外線光)を発光させフォトクロミックガラス層160を着色させることにより、調光ガラス110の透過率を所定値未満に調整する。さらに、各調光ガラス110が図4に示す調光ガラス110Cである場合、調整手段13は、有機EL素子層140の透明電極141,142に所定の電圧を印加し、発光層145に所定色の光を発光させることにより、調光ガラス110の透過率を所定値未満に調整する。
【0063】
表示制御手段14は、各調光ガラス110における有機EL素子層140の発光層145の各発光体の発光状態を制御することにより、有機EL素子層140において任意の発色もしくは任意のカラー画像の表示を実行させるものである。
特に、本実施形態の表示制御手段14は、図10を参照しながら後述するように、上記道路運送車両の保安基準(第29条第4項)に従い、運転者の前方および両側方におけるウインドウガラス111〜113でのカラー表示についての実行指示を表示指示入力部25から受けた場合には、位置判定手段11によって自動車100の所在位置が特定領域に属していると判定され且つ速度判定手段12によって自動車100の移動速度がゼロであると判定された場合に限り、ウインドウガラス111〜113を成す各調光ガラス110の有機EL素子層140に、表示指示入力部25によって指定された画像等のカラー表示を実行させる。
【0064】
また、表示制御手段14は、図9や図11を参照しながら後述するように、ウインドウガラス114〜116でのカラー表示についての実行指示を表示指示入力部25から受けた場合には、上述のごとき判定を行なうことなく、直ちに、ウインドウガラス114〜116を成す各調光ガラス110の有機EL素子層140に、表示指示入力部25によって指定された画像等のカラー表示を実行させる。
【0065】
さらに、表示制御手段14は、図9を参照しながら後述するように、リアウインドウガラス116について、上述したブレーキ表示モードを表示指示入力部25により設定された場合には、自動車100の走行中にリアウインドウガラス116として用いられる調光ガラス110の有機EL素子層140において、自動車100の運転者によるブレーキ50の操作に連動した表示を実行させる。このブレーキ表示モードの設定時には、例えば運転者がブレーキ50を操作するとブレーキランプが点灯すると同時に、リアウインドウガラス116において例えば図5に示すようなブレーキ用表示画像(「ブレーキ!」を含む画像)が表示される。なお、ブレーキ用表示画像は図5に示す例に限定されるものではない。
【0066】
同様に、表示制御手段14は、図9を参照しながら後述するように、リアウインドウガラス116について、上述した方向指示表示モードを表示指示入力部25により設定された場合には、自動車100の走行中にリアウインドウガラス116として用いられる調光ガラス110の有機EL素子層140において、自動車100の運転者によって操作される方向指示器60の動作に連動した表示を実行させる。この方向指示表示モードの設定時には、例えば運転者が方向指示器60を操作すると指示方向に応じたウインカーが点灯すると同時に、リアウインドウガラス116において例えば図6に示すような方向指示用表示画像(右方向指示に応じた、大きな右矢印を含む画像)が表示される。なお、方向指示用表示画像は図6に示す例に限定されるものではない。
【0067】
〔2〕本実施形態の調光制御装置の動作
次に、上述のごとく構成された本実施形態の調光制御装置1の調光制御動作(調整手段13の動作)について、図7および図8を参照しながら説明する。なお、図7は本実施形態の調光制御装置1の調光制御動作(フロントウインドウガラス111およびフロントサイドウインドウガラス112,113に対する調光制御動作)を説明するためのフローチャート、図8は本実施形態の調光制御装置1の調光制御動作(リアサイドウインドウガラス114,115およびリアウインドウガラス116に対する調光制御動作)を説明するためのフローチャートである。
【0068】
CPU10(調整手段13)は、前述した通り、切換スイッチ24からの指示に応じて動作し、上記道路運送車両の保安基準(第29条第4項)の対象になっている、運転者の前方および両側方におけるウインドウガラス111〜113については、図7に示すフローチャート(ステップS11〜S20)に従って調光ガラス110の調光制御を行なう一方、それ以外のウインドウガラス114〜116については、図8に示すフローチャート(ステップS21〜S25)に従って調光ガラス110の調光制御を行なう。
【0069】
図7に示すように、ウインドウガラス111〜113が透明な状態〔可視光線の透過率が所定値(70%)以上の状態〕に設定されている際(ステップS11のYESルート)に、切換スイッチ24から、全てのウインドウガラス111〜116を指定して、もしくは、ウインドウガラス111〜113のうちの少なくとも一つを指定して、調光ガラス110を透明状態から不透明状態へ切り換える指示がCPU10に入力されると(ステップS12のYESルート)、位置判定手段11により、GPS位置検出部21によって検出された自動車100の現在位置(緯度・経度情報)が、特定領域(自動車100の走行移動しうる公道上以外の領域;例えば私有地やコンビニの駐車場など)に属しているか否かを判定するとともに、速度判定手段12により、速度センサ22によって検出された自動車100の移動速度(車速)がゼロであるか否か、つまり自動車100が停車しているか否かを判定する(ステップS13)。
【0070】
そして、自動車100の現在位置が特定領域に属し且つ自動車100が停車していると判定された場合(ステップS14のYESルート)、調整手段13により、ウインドウガラス111〜113を成す各調光ガラス110の透過率が所定値(70%)未満に調整され、各調光ガラス110が透明状態から不透明状態へ切り換えられる一方(ステップS15)、自動車100の現在位置が特定領域に属していない、もしくは、自動車100が停車していないと判定された場合(ステップS14のNOルート)、調整手段13による不透明状態への切換調整を行なわず、切換を行なえない旨を運転者(切換操作者)に対しエラーとして通知する(ステップS16)。なお、エラー通知は、ビープ音や、コンソールディスプレイでのエラー表示等によって行なう。
【0071】
ウインドウガラス111〜113が既に不透明な状態〔可視光線の透過率が所定値(70%)未満の状態〕に設定されている際(ステップS11のNOルート)に、切換スイッチ24から、全てのウインドウガラス111〜116を指定して、もしくは、ウインドウガラス111〜113のうちの少なくとも一つを指定して、調光ガラス110を不透明状態から透明状態へ切り換える指示がCPU10に入力されると(ステップS17のYESルート)、調整手段13により、直ちに、ウインドウガラス111〜113を成す各調光ガラス110の透過率が所定値(70%)以上に調整され、各調光ガラス110が不透明状態から透明状態へ切り換えられる(ステップS20)。
【0072】
また、ウインドウガラス111〜113が既に不透明な状態〔可視光線の透過率が所定値(70%)未満の状態〕に設定され(ステップS11のNOルート)、且つ、切換スイッチ24から、調光ガラス110の不透明状態から透明状態への切換指示がCPU10に
入力されない状態(ステップS17のNOルート)では、所定制御周期毎に、GPS位置検出部21および速度センサ22による検出、および、その検出結果に基づく位置判定手段11および速度判定手段12による判定が実行され(ステップS18)、位置判定手段11によって自動車100の現在位置が特定領域に属していないと判定された場合、もしくは、速度判定手段12によって自動車100が動き出したと判定された場合には(ステップS19のNOルート)、調整手段13により、直ちに、ウインドウガラス111〜113を成す各調光ガラス110の透過率が所定値(70%)以上に調整され、各調光ガラス110が不透明状態から透明状態へ切り換えられる(ステップS20)。
【0073】
図8に示すように、ウインドウガラス114〜116が透明な状態〔可視光線の透過率が所定値(70%)以上の状態〕に設定されている際(ステップS21のYESルート)に、切換スイッチ24から、全てのウインドウガラス111〜116を指定して、もしくは、ウインドウガラス114〜116のうちの少なくとも一つを指定して、調光ガラス110を透明状態から不透明状態へ切り換える指示がCPU10に入力されると(ステップS22のYESルート)、調整手段13により、直ちに、ウインドウガラス114〜116を成す各調光ガラス110の透過率が所定値(70%)未満に調整され、各調光ガラス110が透明状態から不透明状態へ切り換えられる(ステップS23)。
【0074】
そして、ウインドウガラス114〜116が既に不透明な状態〔可視光線の透過率が所定値(70%)未満の状態〕に設定されている際(ステップS21のNOルート)に、切換スイッチ24から、全てのウインドウガラス111〜116を指定して、もしくは、ウインドウガラス114〜116のうちの少なくとも一つを指定して、調光ガラス110を不透明状態から透明状態へ切り換える指示がCPU10に入力されると(ステップS24のYESルート)、調整手段13により、直ちに、ウインドウガラス114〜116を成す各調光ガラス110の透過率が所定値(70%)以上に調整され、各調光ガラス110が不透明状態から透明状態へ切り換えられる(ステップS25)。
【0075】
なお、ウインドウガラス111〜116のうちの少なくとも一つが透明な状態に設定されている場合で、且つ、切換スイッチ24により前記明度調整モードが設定されている場合には、透明な状態に設定されたウインドウガラスの調光ガラス110について、調整手段13により、明度センサ23によって検出された、自動車100外部の明度(車室外の明るさの度合い)に応じて、透過率が調整される。例えば、自動車100外部の明度が低い場合(つまり車外が暗い場合)、各調光ガラス110の透過率を高く調整して視界を確保する一方、自動車100外部の明度が高い場合(つまり車外が明るい場合)、各調光ガラス110の透過率を低く調整して運転者や乗員の受ける眩しさを低減する。ただし、透過率を低く調整する場合、ウインドウガラスが不透明な状態になってしまうほど透過率を低く調整することはなく、ウインドウガラス(調光ガラス110)を通しての視界を確保しながら眩しさを低減できる程度、透過率を低く調整する。
【0076】
ついで、本実施形態の調光制御装置の表示制御動作(表示制御手段14の動作)について、図9〜図11を参照しながら説明する。なお、図9は本実施形態の調光制御装置1の表示制御動作(リアウインドウガラス116に対する表示制御動作)を説明するためのフローチャート、図10は本実施形態の調光制御装置1の表示制御動作(フロントウインドウガラス111およびフロントサイドウインドウガラス112,113に対する表示制御動作)を説明するためのフローチャート、図11は本実施形態の調光制御装置1の表示制御動作(リアサイドウインドウガラス114,115に対する表示制御動作)を説明するためのフローチャートである。
【0077】
CPU10(表示制御手段14)は、前述した通り、表示指示入力部25からの指示に応じて動作し、リアウインドウガラス116については、図9に示すフローチャート(ス
テップS31〜S42)に従って調光ガラス110(有機EL素子層140)の表示制御を行ない、上記道路運送車両の保安基準(第29条第4項)の対象になっている、運転者の前方および両側方におけるウインドウガラス111〜113については、図10に示すフローチャート(ステップS51〜S58)に従って調光ガラス110(有機EL素子層140)の表示制御を行ない、それ以外のウインドウガラス114,115については、図11に示すフローチャート(ステップS61〜S65)に従って調光ガラス110(有機EL素子層140)の表示制御を行なう。
【0078】
図9に示すように、表示指示入力部25から、リアウインドウガラス116を指定してこのリアウインドウガラス116の調光ガラス110における有機EL素子層140によるカラー表示についての実行指示がCPU10に入力されると(ステップS31のYESルート)、その実行指示が、前記ブレーキ表示モードおよび前記方向指示表示モードを設定するものであるか否かを判定される(ステップS32)。
【0079】
実行指示が、前記ブレーキ表示モードおよび前記方向指示表示モードを設定するものであった場合(ステップS32のYESルート)、以降、表示指示入力部25からこれらのモードの設定解除指示が入力されるまで(ステップS37でYES判定となるまで)、表示制御手段14によりステップS33〜S36の処理が実行される。つまり、運転者がブレーキ50を操作すると(ステップS33のYESルート)、ブレーキランプが点灯すると同時に、表示制御手段14により、リアウインドウガラス116において例えば図5に示すようなブレーキ用表示画像(「ブレーキ!」を含む画像)が表示される(ステップS34)。また、運転者が方向指示器60を操作すると(ステップS33のNOルートからステップS35のYESルート)、指示方向に応じたウインカーが点灯すると同時に、表示制御手段14により、リアウインドウガラス116において例えば図6に示すような方向指示用表示画像(右方向指示に応じた、大きな右矢印を含む画像)が表示される(ステップS36)。そして、表示指示入力部25からこれらのモードの設定解除指示が入力されると(ステップS37のYESルート)、前記ブレーキ表示モードおよび前記方向指示表示モードの設定が解除される(ステップS38)。
【0080】
一方、実行指示が、前記ブレーキ表示モードおよび前記方向指示表示モードを設定するものでなかった場合(ステップS32のNOルート)、その実行指示は、ROM30に保存されているオリジナル画像データの中から指定された任意画像の表示指示、あるいは、指定色の発光・表示指示であると、表示制御手段14によって判断される。そして、表示制御手段14により、指定された画像もしくは色に関するデータがROM30から読み出されるとともに(ステップS39)、読み出されたデータに基づいて任意画像もしくは指定色がリアウインドウガラス116において発光・表示される(ステップS40)。このステップS40による表示は、表示指示入力部25から表示解除指示が入力されるまで(ステップS41でYES判定となるまで)継続され、表示指示入力部25から表示解除指示が入力されると(ステップS41のYESルート)、任意画像もしくは指定色の表示が解除される(ステップS42)。
【0081】
なお、図9に示す例では、ブレーキ表示モードおよび方向指示表示モードの両方を設定している場合について説明しているが、ブレーキ表示モードまたは方向指示表示モードのいずれか一方のみが指定されている場合には、指定されたモードに対応するブレーキ表示もしくは方向指示表示を行なうようにする。
【0082】
図10に示すように、表示指示入力部25から、ウインドウガラス111〜113のうちの少なくとも一つを指定して調光ガラス110における有機EL素子層140によるカラー表示についての実行指示(ROM30に保存されているオリジナル画像データの中から指定された任意画像の表示指示、あるいは、指定色の発光・表示指示)がCPU10に
入力されると(ステップS51のYESルート)、位置判定手段11により、GPS位置検出部21によって検出された自動車100の現在位置(緯度・経度情報)が、特定領域(自動車100の走行移動しうる公道上以外の領域;例えば私有地やコンビニの駐車場など)に属しているか否かを判定するとともに、速度判定手段12により、速度センサ22によって検出された自動車100の移動速度(車速)がゼロであるか否か、つまり自動車100が停車しているか否かを判定する(ステップS52)。
【0083】
そして、自動車100の現在位置が特定領域に属し且つ自動車100が停車していると判定された場合(ステップS53のYESルート)、表示制御手段14により、指定された画像もしくは色に関するデータがROM30から読み出されるとともに(ステップS54)、読み出されたデータに基づいて任意画像もしくは指定色が調光ガラス110において発光・表示される(ステップS55)。このステップS55による表示は、表示指示入力部25から表示解除指示が入力されるまで、もしくは、位置判定手段11によって自動車100の現在位置が特定領域に属していないと判定されるまで、もしくは、速度判定手段12によって自動車100が動き出したと判定されるまで(ステップS56でYES判定となるまで)継続され、表示指示入力部25から表示解除指示が入力されるか、自動車100の現在位置が特定領域外になるか、自動車100が移動し始めると(ステップS56のYESルート)、任意画像もしくは指定色の表示が解除される(ステップS57)。
【0084】
一方、ステップS53において、自動車100の現在位置が特定領域に属していない、もしくは、自動車100が停車していないと判定された場合(NOルート)、表示制御手段14による表示制御を行なわず、表示を行なえない旨を運転者(切換操作者)に対しエラーとして通知する(ステップS58)。なお、エラー通知は、ビープ音や、コンソールディスプレイでのエラー表示等によって行なう。
【0085】
図11に示すように、表示指示入力部25から、ウインドウガラス114,115のうちの少なくとも一つを指定して調光ガラス110における有機EL素子層140によるカラー表示についての実行指示(ROM30に保存されているオリジナル画像データの中から指定された任意画像の表示指示、あるいは、指定色の発光・表示指示)がCPU10に入力されると(ステップS61のYESルート)、表示制御手段14により、指定された画像もしくは色に関するデータがROM30から読み出されるとともに(ステップS62)、読み出されたデータに基づいて任意画像もしくは指定色が調光ガラス110において発光・表示される(ステップS63)。このステップS63による表示は、表示指示入力部25から表示解除指示が入力されるまで(ステップS64でYES判定となるまで)継続され、表示指示入力部25から表示解除指示が入力されると(ステップS64のYESルート)、任意画像もしくは指定色の表示が解除される(ステップS65)。
【0086】
〔3〕本実施形態の調光制御装置の効果
このように、本発明の一実施形態としての調光制御装置1によれば、自動車100の所在位置が特定領域(公道上以外の領域)に属していると判定され且つ自動車100の移動速度がゼロであると判定された場合に限り、調光ガラス110の透過率は所定値(例えば70%)未満に調整される一方、自動車100の所在位置が特定領域に属していない(つまり、例えば公道上に属している)と判定された場合、または、自動車100の移動速度がゼロでないと判定された場合、調光ガラス110の透過率は所定値以上に調整される。
【0087】
従って、例えば公道上での停車中や、公道上でなくとも移動中には、ウインドウガラス111〜113(調光ガラス110)の透過率を所定値未満に切り換えることはできず、つまりウインドウガラス111〜113を不透明な状態に切り換えることができないので、公道上での停車中の安全性や、公道上以外の領域での移動中の安全性を確保することができる。
【0088】
このように安全性を確保しながら、公道上以外の特定の場所(例えば私有地やコンビニの駐車場など)では、停止していればキーを抜脱しなくてもウインドウガラス111〜116(調光ガラス110)の透過率を所定値未満に切り換えてウインドウガラス111〜116を不透明な状態に切り換えることができるので、停止中の車内温度上昇を確実に抑制できるとともに、プライバシイやセキュリティを確実に保護できる。また、キーを抜脱しなくても済むので、自動車100内での食事や睡眠に際してエンジンを起動させエアコン等を作動させながら、ウインドウガラス111〜116を不透明な状態に切り換えることができる。
【0089】
ここで、調光ガラス110として液晶フィルム150を含むもの(図2に示す調光ガラス110A)を用いた場合には、2枚の透明電極153,154の間に所定の電圧を印加するだけで、極めて容易に調光ガラス110Aの透過率を所定値未満に切り換えてウインドウガラス111〜116を不透明な状態にすることができる。
【0090】
調光ガラス110として有機EL素子層140およびフォトクロミックガラス層160を含むもの(図3に示す調光ガラス110B)を用いた場合には、有機EL素子層140の発光層145に特定波長の光(紫外線光)を発光させるだけで、極めて容易に調光ガラス110Bの透過率を所定値未満に切り換えてウインドウガラス111〜116を不透明な状態にすることができる。このとき、有機EL素子層140から発した光によりフォトクロミックガラス層160が着色されるので、透過率の低下変更が充分に行なわれる一方、フォトクロミックガラス層160を着色させる波長の光以外の光を有機EL素子層140に発光させた場合には、有機EL素子層140を含む調光ガラス110Bを、上述したように外部に対する表示装置として機能させることが可能となる。
【0091】
調光ガラス110として有機エレクトロルミネッセンス素子層140のみを含むもの(図4に示す調光ガラス110C)を用いた場合には、有機EL素子層140の発光層145に所定色の光を発光させるだけで、極めて容易に調光ガラス110Cの透過率を所定値未満に切り換えてウインドウガラス111〜116を不透明な状態にすることができる。この場合も、有機EL素子層140を含む調光ガラス110Cを、上述したように外部に対する表示装置として機能させることが可能となる。
【0092】
また、有機EL素子層140における発光層145を、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に規則正しく配列して構成し、各発光体の発光状態を制御することにより、有機EL素子層140において任意の発色や任意の画像の表示を行なうことが可能になり、ウインドウガラス111〜116(調光ガラス110)を外部に対する表示装置として用いることができる。
【0093】
例えば、自動車100の停車中もしくは駐車中に全てのウインドウガラス111〜116(調光ガラス110)の色を車体外面と同じ色にすることで、外観上、お洒落で極めて目立つ状態となるので、悪意をもった第三者が盗難等の不法行為を行ない辛くなり、その自動車100に対する不法行為の防止に大きく寄与することになる。
【0094】
また、自動車100の走行中にリアウインドウガラス116として用いられる調光ガラス110の有機EL素子層140において、自動車100のブレーキ50の操作に連動した表示や自動車100の方向指示器60の動作に連動した表示を実行することにより、ブレーキランプやウインカーだけでなくリアウインドウガラス116を用いた大きな表示によって、後方の乗物の運転者に対し運転者のブレーキングや移動方向の意志を明確に伝えることが可能になり、走行移動中の安全性を高めることができる。
【0095】
なお、近年、自動車等に一般的に装備されているカーナビゲーションシステムのGPS機能を用いることで、特別な位置検出手段を新たにそなえることなく、極めて容易に自動車100の所在位置(現在位置)を検出することができる。
また、上記道路運送車両の保安基準(第29条第4項)に従えば、少なくとも運転者の前方および両側方におけるウインドウガラス111〜113を透過率調整対象とすればよく、これらの対象ウインドウガラス111〜113以外のウインドウガラス114〜116として用いられる調光ガラス110の透過率については、自動車100の停止中/移動中に関係なくまた自動車100の所在位置に関係なく、切換スイッチ24により、所定値未満か以上のいずれか一方に選択的に切り換え可能に構成することで、対象ウインドウガラス111〜113以外のウインドウガラス114〜116については、自動車100の乗員の意志によって透明/不透明の切換をいつでも行なうことが可能であり、利便性を高めることができる。
【0096】
さらに、自動車100の外部の明度に応じて調光ガラス110の透過率を調整することにより、自動車100の外部が暗い場合には透過率を高めて視界を確保することができる一方、自動車の外部が極めて明るい場合(紫外線が多い場合等)には透過率を低くして運転者や乗員の受ける眩しさを低減することができるので、運転者は自動車100の外部の状況を確実に視認することが可能になり、安全性を高めることができる。
【0097】
また、本実施形態では、表示制御手段14により、上記道路運送車両の保安基準(第29条第4項)の対象であるウインドウガラス111〜113においてカラー表示を行なう場合、自動車100の所在位置が特定領域(公道上以外の領域)に属していると判定され且つ自動車100の移動速度がゼロであると判定された場合に限り、調光ガラス110(有機EL素子層140)によるカラー表示が行なわれる一方、自動車100の所在位置が特定領域に属していない(つまり、例えば公道上に属している)と判定された場合、または、自動車100の移動速度がゼロでないと判定された場合、カラー表示が解除調整される。従って、例えば公道上での停車中や、公道上でなくとも移動中には、ウインドウガラス111〜113(調光ガラス110)によるカラー表示を行なうことはできないので、公道上での停車中の安全性や、公道上以外の領域での移動中の安全性を確保することができる。
【0098】
〔4〕その他
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、本実施形態では、乗物が自動車である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、クルーザ,小型船等の船や、航空機や、電車のごとくウインドウガラスのある乗物であればで、本発明は、上述した実施形態と同様に適用され、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0099】
また、カラー表示等の表示を一切行なわない場合には、有機EL素子層140をそなえない通常のガラス板に図2に示すような液晶フィルム150のみを貼付して各調光ガラス110を構成するとともに、CPU10が位置判定手段11,速度判定手段12および調整手段13としての機能を果たすように構成し、調整手段13が、図7および図8にて説明した手順で各調光ガラス110の透過率を調整するように構成してもよい。
【0100】
このような構成によれば、有機EL素子層140によるカラー表示は行なえないが、自動車100について、例えば公道上での停車中の安全性を確保しながら、公道上以外の特定の場所では、停止していればキーを抜脱しなくてもウインドウを不透明な状態に切り換えられるようにすることができ、上述した本願発明特有の作用効果を得ることができるのである。
【0101】
また、本実施形態においては6枚の調光ガラス110が使用されているが、本発明は、これに限定されず、本発明の調光制御装置1を搭載する乗物に使用されるウインドウガラスの枚数分の調光ガラス110が使用される。
さらに、調光ガラス110は全体が1つの有機ELパネルから成るものでなくてもよく、複数の有機ELパネルを組み合わせて1つの調光ガラス110とするように構成してもよい。このように構成することにより、大型の有機ELパネルが、技術的または経済的な理由などにより入手が困難な場合であっても、有機ELパネルからなる調光ガラス110の大型化が可能となるのである。
【0102】
また、上述した位置判定手段11,速度判定手段12,調整手段13および表示制御手段14としての機能(各手段の全部もしくは一部の機能)は、コンピュータ(CPU,情報処理装置,各種端末を含む)が所定のアプリケーションプログラム(調光制御プログラムもしくは表示制御プログラム)を実行することによって実現される。
【0103】
そのプログラムは、例えばフレキシブルディスク,CD(CD−ROM,CD−R,CD−RWなど),DVD(DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−R,DVD−RW,DVD+R,DVD+RWなど)等のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。この場合、コンピュータはその記録媒体から調光制御プログラムを読み取って内部記憶装置もしくは外部記憶装置に転送し格納して用いる。また、そのプログラムを、例えば磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の記憶装置(記録媒体)に記録しておき、その記憶装置から通信回線を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【0104】
ここで、コンピュータとは、ハードウエアとOS(オペレーティングシステム)とを含む概念であり、OSの制御の下で動作するハードウエアを意味している。また、OSが不要でアプリケーションプログラム単独でハードウェアを動作させるような場合には、そのハードウェア自体がコンピュータに相当する。ハードウエアは、少なくとも、CPU等のマイクロプロセッサと、記録媒体に記録されたプログラムを読み取るための手段とをそなえている。上記の調光制御プログラムもしくは表示制御プログラムとしてのアプリケーションプログラムは、上述のようなコンピュータに、位置判定手段11,速度判定手段12,調整手段13および表示制御手段14としての機能を実現させるプログラムコードを含んでいる。また、その機能の一部は、アプリケーションプログラムではなくOSによって実現されてもよい。
【0105】
さらに、本実施形態における記録媒体としては、上述したフレキシブルディスク,CD,DVD,磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスクのほか、ICカード,ROMカートリッジ,磁気テープ,パンチカード,コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ),外部記憶装置等や、バーコードなどの符号が印刷された印刷物等の、コンピュータ読取可能な種々の媒体を利用することもできる。
【0106】
〔5〕付記
(付記1)
可視光線の透過率を調整可能な調光ガラスをウインドウガラスとしてそなえた乗物において、前記調光ガラスの前記透過率を制御する調光制御装置であって、
前記乗物の所在位置を検出する位置検出手段と、
前記乗物の移動速度を検出する速度検出手段と、
前記位置検出手段によって検出された前記乗物の所在位置が、予め指定された特定領域に属しているか否かを判定する位置判定手段と、
前記速度検出手段によって検出された前記乗物の移動速度がゼロであるか否かを判定す
る速度判定手段と、
前記位置判定手段によって前記乗物の所在位置が前記特定領域に属していると判定され且つ前記速度判定手段によって前記乗物の移動速度がゼロであると判定された場合、前記調光ガラスの前記透過率を所定値未満に調整する調整手段とをそなえて構成されていることを特徴とする、乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0107】
(付記2)
前記位置判定手段によって前記乗物の所在位置が前記特定領域に属していないと判定された場合、もしくは、前記速度判定手段によって前記乗物の移動速度がゼロでないと判定された場合、前記調整手段が、前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値以上に調整することを特徴とする、付記1記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0108】
(付記3)
前記調光ガラスが、所定の電圧の印加により液晶分子の配向性を変化させることで可視光線を遮る液晶層を2枚の透明電極間に挟入して成る液晶フィルムを含んで構成され、
前記調整手段が、前記2枚の透明電極に前記所定の電圧を印加して前記液晶分子の配向性を変化させることにより、前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値未満に調整することを特徴とする、付記1または付記2に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0109】
(付記4)
前記調光ガラスが、さらに、所定の電圧の印加により発光する透明な発光層を2枚の透明電極間に挟入して成る有機エレクトロルミネッセンス素子層を含んで構成され、
前記発光層が、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に配列して構成され、
各発光体の発光状態を制御することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において任意の発色もしくは任意の画像の表示を実行させる表示制御手段をさらにそなえて構成されていることを特徴とする、付記3記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0110】
(付記5)
前記調光ガラスが、所定の電圧の印加により発光する透明な発光層を2枚の透明電極間に挟入して成る有機エレクトロルミネッセンス素子層と、前記発光層から発せられる特定波長の光に反応して着色されるフォトクロミックガラス層とを含んで構成され、
前記調整手段が、前記発光層に前記特定波長の光を発光させ前記フォトクロミックガラス層を着色させることにより、前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値未満に調整することを特徴とする、付記1または付記2に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0111】
(付記6)
前記発光層が、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に配列して構成され、
各発光体の発光状態を制御することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において任意の発色もしくは任意の画像の表示を実行させる表示制御手段をさらにそなえて構成されていることを特徴とする、付記5記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0112】
(付記7)
前記調光ガラスが、所定の電圧の印加により発光する透明な発光層を2枚の透明電極間に挟入して成る有機エレクトロルミネッセンス素子層を含んで構成され、
前記調整手段が、前記発光層に所定色の光を発光させることにより、前記調光ガラスの
前記透過率を前記所定値未満に調整することを特徴とする、付記1または付記2に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0113】
(付記8)
前記発光層が、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に配列して構成され、
各発光体の発光状態を制御することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において任意の発色もしくは任意の画像の表示を実行させる表示制御手段をさらにそなえて構成されていることを特徴とする、付記7記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0114】
(付記9)
前記表示制御手段が、前記乗物の移動中にリアウインドウガラスとして用いられる前記調光ガラスの前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において、前記乗物のブレーキ操作に連動した表示を実行させることを特徴とする、付記4,付記6,付記8に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0115】
(付記10)
前記表示制御手段が、前記乗物の移動中にリアウインドウガラスとして用いられる前記調光ガラスの前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において、前記乗物の方向指示器の動作に連動した表示を実行させることを特徴とする、付記4,付記6,付記8,付記9のいずれか一項に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0116】
(付記11)
前記乗物が自動車であり、
前記特定領域が、前記自動車の走行移動しうる公道上以外の領域であることを特徴とする、付記1〜付記10のいずれか一項に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
(付記12)
前記位置検出手段が、GPS(Global Positioning System)を用いて前記乗物の所在
位置を検出することを特徴とする、付記1〜付記11のいずれか一項に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0117】
(付記13)
前記調整手段は、少なくとも前記乗物の運転者の前方および両側方におけるウインドウガラスとして用いられる調光ガラスを、前記位置判定手段および前記速度判定手段による判定結果に従った前記透過率の調整対象とすることを特徴とする、付記1〜付記12のいずれか一項に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0118】
(付記14)
前記乗物の運転者の前方および両側方におけるウインドウガラス以外のウインドウガラスとして用いられる前記調光ガラスの前記透過率については、前記速度判定手段および前記位置判定手段による判定結果と関係なく、前記調整手段によって前記所定値未満もしくは前記所定値以上のいずれか一方に選択的に切り換えさせる切換手段をさらにそなえて構成されていることを特徴とする、付記13記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【0119】
(付記15)
前記乗物の外部の明度を検出する明度検出手段をさらにそなえ、
前記調整手段が、前記明度検出手段によって検出された明度に応じて前記調光ガラスの透過率を調整することを特徴とする、付記1〜付記14のいずれか一項に記載の乗物用ウ
インドウガラスの調光制御装置。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の一実施形態としての乗物用ウインドウガラスの調光制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態のウインドウガラスとして用いられる調光ガラスの第1例の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本実施形態のウインドウガラスとして用いられる調光ガラスの第2例の構造を模式的に示す断面図である。
【図4】本実施形態のウインドウガラスとして用いられる調光ガラスの第3例の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】本実施形態のリアウインドウガラスにおいて走行中に表示される表示画像例(ブレーキ操作に連動する例)を示す図である。
【図6】本実施形態のリアウインドウガラスにおいて走行中に表示される表示画像例(方向指示器の動作に連動する例)を示す図である。
【図7】本実施形態の調光制御装置の調光制御動作(フロントウインドウガラスおよびフロントサイドウインドウガラスに対する調光制御動作)を説明するためのフローチャートである。
【図8】本実施形態の調光制御装置の調光制御動作(リアサイドウインドウガラスおよびリアウインドウガラスに対する調光制御動作)を説明するためのフローチャートである。
【図9】本実施形態の調光制御装置の表示制御動作(リアウインドウガラスに対する表示制御動作)を説明するためのフローチャートである。
【図10】本実施形態の調光制御装置の表示制御動作(フロントウインドウガラスおよびフロントサイドウインドウガラスに対する表示制御動作)を説明するためのフローチャートである。
【図11】本実施形態の調光制御装置の表示制御動作(リアサイドウインドウガラスに対する表示制御動作)を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0121】
1 乗物用ウインドウガラスの調光制御装置
10 CPU
11 位置判定手段
12 速度判定手段
13 調整手段
14 表示制御手段
21 GPS位置検出部(位置検出手段)
22 速度センサ(速度検出手段)
23 明度センサ(明度検出手段)
24 切換スイッチ(切換手段)
25 表示指示入力部
30 ROM
40 RAM
50 ブレーキ
60 方向指示器
100 自動車(車両,乗物)
110,110A,110B,110C 調光ガラス
111 フロントウインドウガラス
112 右前サイドウインドウガラス
113 左前サイドウインドウガラス
114 右後サイドウインドウガラス
115 左後サイドウインドウガラス
116 リアウインドウガラス
120,130 ガラス板(透明板)
140 有機エレクトロルミネッセンス素子層
141 陽極透明電極
142 陰極透明電極
143 有機エレクトロルミネッセンス層
144 正孔輸送層
145 発光層(発光体)
146 電子輸送層
150 液晶フィルム
151,152 透明薄膜
153,154 透明電極
155 液晶層(液晶分子)
160 フォトクロミックガラス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光線の透過率を調整可能な調光ガラスをウインドウガラスとしてそなえた乗物において、前記調光ガラスの前記透過率を制御する調光制御装置であって、
前記乗物の所在位置を検出する位置検出手段と、
前記乗物の移動速度を検出する速度検出手段と、
前記位置検出手段によって検出された前記乗物の所在位置が、予め指定された特定領域に属しているか否かを判定する位置判定手段と、
前記速度検出手段によって検出された前記乗物の移動速度がゼロであるか否かを判定する速度判定手段と、
前記位置判定手段によって前記乗物の所在位置が前記特定領域に属していると判定され且つ前記速度判定手段によって前記乗物の移動速度がゼロであると判定された場合、前記調光ガラスの前記透過率を所定値未満に調整する調整手段とをそなえて構成されていることを特徴とする、乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【請求項2】
前記位置判定手段によって前記乗物の所在位置が前記特定領域に属していないと判定された場合、もしくは、前記速度判定手段によって前記乗物の移動速度がゼロでないと判定された場合、前記調整手段が、前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値以上に調整することを特徴とする、請求項1記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【請求項3】
前記調光ガラスが、所定の電圧の印加により液晶分子の配向性を変化させることで可視光線を遮る液晶層を2枚の透明電極間に挟入して成る液晶フィルムを含んで構成され、
前記調整手段が、前記2枚の透明電極に前記所定の電圧を印加して前記液晶分子の配向性を変化させることにより、前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値未満に調整することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【請求項4】
前記調光ガラスが、さらに、所定の電圧の印加により発光する透明な発光層を2枚の透明電極間に挟入して成る有機エレクトロルミネッセンス素子層を含んで構成され、
前記発光層が、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に配列して構成され、
各発光体の発光状態を制御することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において任意の発色もしくは任意の画像の表示を実行させる表示制御手段をさらにそなえて構成されていることを特徴とする、請求項3記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【請求項5】
前記調光ガラスが、所定の電圧の印加により発光する透明な発光層を2枚の透明電極間に挟入して成る有機エレクトロルミネッセンス素子層と、前記発光層から発せられる特定波長の光に反応して着色されるフォトクロミックガラス層とを含んで構成され、
前記調整手段が、前記発光層に前記特定波長の光を発光させ前記フォトクロミックガラス層を着色させることにより、前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値未満に調整することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【請求項6】
前記発光層が、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に配列して構成され、
各発光体の発光状態を制御することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において任意の発色もしくは任意の画像の表示を実行させる表示制御手段をさらにそなえて構成されていることを特徴とする、請求項5記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【請求項7】
前記調光ガラスが、所定の電圧の印加により発光する透明な発光層を2枚の透明電極間に挟入して成る有機エレクトロルミネッセンス素子層を含んで構成され、
前記調整手段が、前記発光層に所定色の光を発光させることにより、前記調光ガラスの前記透過率を前記所定値未満に調整することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【請求項8】
前記発光層が、光の3原色である赤,緑,青を各々発光する発光体をマトリクス状に配列して構成され、
各発光体の発光状態を制御することにより、前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において任意の発色もしくは任意の画像の表示を実行させる表示制御手段をさらにそなえて構成されていることを特徴とする、請求項7記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【請求項9】
前記表示制御手段が、前記乗物の移動中にリアウインドウガラスとして用いられる前記調光ガラスの前記有機エレクトロルミネッセンス素子層において、前記乗物のブレーキ操作もしくは前記乗物の方向指示器の動作に連動した表示を実行させることを特徴とする、請求項4,請求項6,請求項8に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。
【請求項10】
前記乗物が自動車であり、
前記特定領域が、前記自動車の走行移動しうる公道上以外の領域であることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の乗物用ウインドウガラスの調光制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−326526(P2007−326526A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161057(P2006−161057)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【特許番号】特許第3887655号(P3887655)
【特許公報発行日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(592112938)クオリティ株式会社 (121)
【Fターム(参考)】