説明

乗物用シート

【課題】ハイトアジャスト機構に大きな負荷が掛かった場合に、ハイトアジャスト機構の破損を抑制する。
【解決手段】左右のサイドフレーム30を有する着座部(着座部フレーム3)と、当該着座部に固定されたシートバック(シートバックフレーム2)とを備え、着座部の高さを調整可能な車両用シート1である。車両用シート1は、車体に対し、着座部を昇降可能に支持するハイトアジャスト機構と、サイドフレーム30に固定され、ハイトアジャスト機構と係合して着座部の高さ位置をロックするハイトブレーキ8とを備え、ハイトブレーキ8はサイドフレーム30に対し、ハイトアジャスト機構から所定以上の衝撃荷重が掛かった場合に移動できるように固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座部の高さを調整可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、着座部の高さを調整可能な車両用シートなどの乗物用シートが知られている。例えば、特許文献1には、左右のサイドフレームと、サイドフレームの下方に設けられたシートライザーと、サイドフレームとシートライザーの間に介在されたフロントリンクおよびリアリンクとによって4節リンク機構が構成され、一方のサイドフレームに設けられた駆動手段を操作することで4節リンク機構が駆動して着座部が昇降する、ハイトアジャスト機構付の車両用シートが開示されている。
【0003】
この車両用シートにおいては、ピニオンギヤが、リンクの1つと連動するサブギヤと噛合しており、駆動手段によりピニオンギヤを回転させることで、着座部を昇降するようになっている。そして、このピニオンギヤは、乗員から着座部に掛かる荷重によって回転することがないように、通常、ロック機構(例えば、特許文献2)によりピニオンギヤ側からの回転がロックされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−265365号公報
【特許文献2】特開2011−163542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両が衝突したときには、シートバックに乗員や他の物から大きな荷重が掛かり、着座部に衝撃的なモーメントが掛かる。例えば、車両が後方から衝突された場合(「後突」という)には、乗員からシートバックに掛かる力が着座部を下へ押すように働き、ハイトアジャスト機構に大きな負荷を掛け、場合によっては破損するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ハイトアジャスト機構に大きな負荷が掛かった場合にも、ハイトアジャスト機構の破損を抑制することができる乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するための本発明は、左右のサイドフレームを有する着座部と、当該着座部に固定されたシートバックとを備え、着座部の高さを調整可能な乗物用シートであって、乗物の機体に対し、着座部を昇降可能に支持するハイトアジャスト機構と、前記サイドフレームに固定され、前記ハイトアジャスト機構と係合して着座部の高さ位置をロックするハイトブレーキとを備え、前記ハイトブレーキは前記サイドフレームに対し、前記ハイトアジャスト機構から所定以上の衝撃荷重が掛かった場合に移動できるように固定されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、後突などによりシートバックを介して着座部に大きな衝撃的な荷重が掛かったときに、ハイトブレーキがサイドフレームに対し移動するので、この移動により衝撃を吸収してハイトアジャスト機構の破損を抑制することができる。
【0009】
前記した乗物用シートにおいて、前記ハイトブレーキは、操作部材の操作により回転するピニオンギヤを有し、当該ピニオンギヤが前記ハイトアジャスト機構と係合しており、前記衝撃荷重により、前記サイドフレームに対し前記ピニオンギヤの回転軸線を基準として周方向に移動するように構成されるのが望ましい。
【0010】
このように、ハイトブレーキが、ピニオンギヤの回転軸線を基準として、周方向に移動することで、ハイトブレーキの移動のために必要な領域を小さくすることができ、衝撃吸収のための機構をコンパクト化することができる。
なお、ここでの周方向に移動とは、周方向に回りながら径方向にも動いてよい意味である。
【0011】
この乗物用シートにおいて、前記ハイトブレーキは、前記衝撃荷重により、前記サイドフレームに対し前記ピニオンギヤの回転軸線を中心として回動するように構成されるのが望ましい。
【0012】
ハイトブレーキがピニオンギヤの回転軸線を中心として回動することで、ハイトブレーキが移動するのに必要なスペースはさらに小さくなり、衝撃吸収のための機構をよりコンパクト化することができる。
【0013】
前記したピニオンギヤを有するハイトブレーキを備える乗物用シートにおいては、前記サイドフレームおよび前記ハイトブレーキの一方は、第1穴部を備え、前記サイドフレームおよび前記ハイトブレーキの他方は、前記第1穴部に遊びを持って入り込む第1突出部を備え、前記衝撃荷重により、前記サイドフレームと前記ハイトブレーキとが相対的に移動するときに、前記第1突出部が前記第1穴部内で移動するように構成することができる。
【0014】
このように構成すれば、ハイトブレーキとサイドフレームの相対的な移動の方向を突出部と穴の形状により決めることができるので、動作を安定させることができる。
【0015】
この乗物用シートにおいて、前記第1穴部は、前記ピニオンギヤの回転軸線の周囲で、当該回転軸線を囲むように複数設けられ、前記第1突出部は、前記第1穴部に対応して前記回転軸線を囲むように複数設けられることが望ましい。
【0016】
このように、複数の第1穴部および第1突出部が回転軸線を囲むように配置されていれば、ハイトブレーキがサイドブレーキに対して周方向に移動するときに、動作をより安定させることができる。
【0017】
前記した第1穴部を有する乗物用シートにおいて、前記第1穴部は、前記第1突出部の移動方向に長く形成され、長手方向の中間部に前記第1突出部と干渉可能な第1くびれ部を有する構成とすることができる。
【0018】
このような構成によれば、第1突出部が第1穴部内で移動したときに、第1くびれ部と干渉することで、衝撃を吸収することができる。
【0019】
前記した乗物用シートにおいては、前記ハイトブレーキを前記サイドフレームに取り付けるため前記サイドフレームと前記ハイトブレーキの間に介在される取付部材をさらに備え、前記取付部材および前記サイドフレームの一方は、第2穴部を備え、前記取付部材および前記サイドフレームの他方は、前記第2穴部に遊びを持って入り込む第2突出部を備え、前記衝撃荷重により、前記サイドフレームと前記ハイトブレーキとが相対的に移動するときに、前記第2突出部が前記第2穴部内で移動する構成とすることができる。
【0020】
このように、取付部材を用いた場合においても、第2穴部と第2突出部を設けることで、ハイトブレーキとサイドフレームの相対的な移動の方向を突出部と穴の形状により決めることができるので、動作を安定させることができる。
【0021】
また、前記した乗物用シートにおいては、前記ハイトブレーキを前記サイドフレームに取り付けるため前記サイドフレームと前記ハイトブレーキの間に介在される取付部材をさらに備え、前記サイドフレームおよび前記取付部材の一方は、第3穴部を備え、前記サイドフレームおよび前記取付部材の他方は、前記第3穴部に遊びを持って入り込む第3突出部を備え、前記取付部材および前記ハイトブレーキの一方は、第4穴部を備え、前記取付部材および前記ハイトブレーキの他方は、前記第4穴部に遊びを持って入り込む第4突出部を備え、前記衝撃荷重により、前記サイドフレームと前記ハイトブレーキとが相対的に移動するときに、前記第3突出部が前記第3穴部内で移動し、前記第4突出部が前記第4穴部内で移動する構成とすることができる。
【0022】
このように、取付部材を用い、第3穴部と第3突出部によりサイドフレームと取付部材を相対的に移動させるとともに、第4穴部と第4突出部によりハイトブレーキと取付部材を相対的に移動させることで、シートバックに衝撃的荷重が掛かったときの衝撃の吸収量を大きくすることができる。
【0023】
この第3穴部と第4穴部を有する構成において、前記第3穴部は、前記第3突出部の移動方向に長く形成され、長手方向の中間部に前記第3突出部と干渉可能な第2くびれ部を有し、前記第4穴部は、前記第4突出部の移動方向に長く形成され、長手方向の中間部に前記第4突出部と干渉可能な第3くびれ部を有する構成とすることができる。
【0024】
これによれば、第3突出部が第3穴部内で移動したときに、第2くびれ部と干渉することで、衝撃を吸収し、第4突出部が第4穴部内で移動したときに、第3くびれ部と干渉することで衝撃を吸収する。すなわち、衝撃の吸収量をさらに大きくすることができる。
【0025】
そして、この構成において、前記第3突出部が前記第2くびれ部を乗り越えるためのモーメントは、前記第4突出部が前記第3くびれ部を乗り越えるためのモーメントと異なる構成とすることができる。
【0026】
これによれば、シートバックに衝撃的な荷重が掛かったときに、第3突出部と第4突出部のいずれかが先にくびれ部を乗り越えて衝撃を吸収し、もう一方が後からくびれ部を乗り越えて衝撃を吸収する。これにより、衝撃力が小さかった場合には、一方の突出部のみがくびれ部を乗り越えるので、乗物用シートの修復が容易である。また、突出部がくびれ部を乗り越えるタイミングがずれるので乗り越え時にシートバックに掛かる反力を小さくすることができる。
【0027】
前記したピニオンギヤを有するハイトブレーキを備える乗物用シートにおいて、前記ハイトアジャスト機構は、前記サイドフレームの前部に対し回動可能に結合されたフロントリンクと、前記サイドフレームの後部に対し回動可能に結合されたリアリンクと、前記フロントリンクの下部および前記リアリンクの下部に対し回動可能に結合されたリンク支持部材とを有し、前記ピニオンギヤは、前記フロントリンクまたは前記リアリンクと連動するセクタギヤに噛合するように設けられ、前記ピニオンギヤの回転を支持する部分と、前記セクタギヤに連動する前記フロントリンクまたは前記リアリンクの前記サイドフレームに対する回転を支持する部分とを連結する連結部材をさらに備えることが望ましい。
【0028】
このような構成によれば、シートバックに衝撃的な荷重が掛かってピニオンギヤとセクタギヤの間に大きな力が掛かっても、連結部材によりピニオンギヤとセクタギヤの軸間距離が保たれ、ピニオンギヤやセクタギヤの軸が互いに斜めにずれたりしにくいので、ハイトブレーキをサイドフレームに対し設定通り移動させ易くなる。また、軸間距離が保たれる結果、移動後のハイトアジャスト機構の動作を確保し易くなる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に記載の構成によれば、後突などによりシートバックを介して着座部に大きな衝撃的な荷重が掛かったときに、ハイトブレーキがサイドフレームに対し移動するので、この移動により衝撃を吸収してハイトアジャスト機構の破損を抑制することができる。
【0030】
請求項2に記載の構成によれば、ハイトブレーキの移動のために必要な領域を小さくすることができ、衝撃吸収のための機構をコンパクト化することができる。
【0031】
請求項3に記載の構成によれば、ハイトブレーキが移動するのに必要なスペースはさらに小さくなり、衝撃吸収のための機構をよりコンパクト化することができる。
【0032】
請求項4に記載の構成によれば、ハイトブレーキとサイドフレームの相対的な移動の方向を突出部と穴の形状により決めることができるので、動作を安定させることができる。
【0033】
請求項5に記載の構成によれば、ハイトブレーキがサイドブレーキに対して周方向に移動するときに、動作をより安定させることができる。
【0034】
請求項6に記載の構成によれば、第1突出部が第1穴部内で移動したときに、第1くびれ部と干渉することで、衝撃を吸収することができる。
【0035】
請求項7に記載の構成によれば、動作を安定させることができる。
【0036】
請求項8に記載の構成によれば、シートバックに衝撃的荷重が掛かったときの衝撃の吸収量を大きくすることができる。
【0037】
請求項9に記載の構成によれば、衝撃の吸収量をさらに大きくすることができる。
【0038】
請求項10に記載の構成によれば、衝撃力が小さかった場合には、一方の突出部のみがくびれ部を乗り越えるので、乗物用シートの修復が容易である。また、突出部がくびれ部を乗り越えるタイミングがずれるので乗り越え時にシートバックに掛かる反力を小さくすることができる。
【0039】
請求項11に記載の構成によれば、ハイトブレーキをサイドフレームに対し設定通り移動させ易くなる。また、移動後のハイトアジャスト機構の動作を確保し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【図2】右のサイドフレーム周りを外側から見た側面図である。
【図3】右のサイドフレーム周りを内側から見た側面図である。
【図4】操作ユニットの固定を説明するための斜視図(a)と、長孔周辺の拡大斜視図(b)である。
【図5】着座部の高さ調整を説明するための図であり、着座部が最低位置にあるときを示す図(a)と、着座部が最高位置にあるときを示す図(b)である。
【図6】後突時の本発明の作用を説明する図であり、(a)車両用シートの右側面図と、(b)操作ユニットの部分の拡大図である。
【図7】前突時の本発明の作用を説明する図であり、(a)車両用シートの右側面図と、(b)操作ユニットの部分の拡大図である。
【図8】第1の変形例に係る車両用シートのハイトブレーキの固定状態を説明する側面図である。
【図9】第2の変形例に係る車両用シートのハイトブレーキの固定状態を説明する断面図(a)と、側面図(b)である。
【図10】第3の変形例に係る車両用シートのハイトブレーキの固定状態を説明する断面図(a)と、側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明において、前後、左右および上下は、シートに座る乗員を基準とする。
【0042】
図1に示すように、乗物用シートの一例としての車両用シート1は、乗員が着座する着座部の高さを調整可能に構成されており、シートバックのフレームを構成するシートバックフレーム2と、着座部のフレームを構成する着座部フレーム3とを主に備えている。
【0043】
この車両用シート1は、シートバックフレーム2および着座部フレーム3の外側に、ウレタンフォームなどからなるシートクッション(図示省略)を被せることで構成される。
【0044】
着座部フレーム3は、着座部の左右のフレームを構成する略板状の左右のサイドフレーム30と、左右のサイドフレーム30の前部を連結するパンフレーム39とを主に備えている。各サイドフレーム30およびパンフレーム39は、それぞれ、金属板をプレス加工するなどして形成されている。
【0045】
なお、本実施形態おいては、ハイトブレーキ8を左右いずれのサイドフレーム30にも取り付けることができるように、一対のサイドフレーム30は左右対称に形成されている。しかし、本発明はこれに限定されず、ハイトブレーキ8が固定される右のサイドフレーム30と、ハイトブレーキ8が固定されない左のサイドフレーム30とは、左右対称な形状でなくてもよい。
【0046】
サイドフレーム30は、後端部においての角度を調整するための公知のリクライニング機構9が設けられており、このリクライニング機構9を介して、サイドフレーム30にシートバックフレーム2が固定されている。
【0047】
着座部フレーム3は、機体の一例としての車体に対し、ハイトアジャスト機構により昇降可能に支持されている。具体的に本実施形態では、ハイトアジャスト機構は、サイドフレーム30の前部に対し回動可能に結合されたフロントリンク6と、サイドフレーム30の後部に対し回動可能に結合されたリアリンク7と、フロントリンク6の下部およびリアリンク7の下部に対し回動可能に結合されたリンク支持部材の一例としてのスライドレール5とを備えて構成されている。ハイトアジャスト機構は、サイドフレーム30、フロントリンク6、リアリンク7およびスライドレール5により4節リンク機構を構成している。
【0048】
スライドレール5は、着座部フレーム3を前後に移動させるための公知の構成であり、ロアレール51と、アッパーレール52とから主に構成されている。
ロアレール51は、前後に長く延びた形状を有しており、左右に所定の間隔をあけて2つ設けられている。各ロアレール51は、車両の床に固定されている。
アッパーレール52は、前後に長く延びた形状を有し、ロアレール51に対して前後にスライド移動可能に係合している。このアッパーレール52の上端には、フロントリンク6やリアリンク7の後述するストッパ部62,72,73が当接する略前後方向に延びる平面状の被当接面52Aと、フロントリンク6およびリアリンク7を回動可能に支持する側面視略三角形状のリンク支持部52Bとがそれぞれ設けられている。
【0049】
フロントリンク6は、図2に示すように、左右に1つずつ設けられ(一方のみ図示)、それぞれ、上端がピン91によりサイドフレーム30の前部に節点を形成するように連結されている。ピン91は、フロントリンク6を回転可能に軸支しており、これにより、フロントリンク6がサイドフレーム30に対して回動可能となっている。また、フロントリンク6の下端は、ピン92によりアッパーレール52の前側のリンク支持部52Bに節点を形成するように連結されている。ピン92は、フロントリンク6を回転可能に軸支しており、これにより、フロントリンク6がスライドレール5に対して回動可能となっている。
【0050】
図3に示すように、フロントリンク6の後部(ピン92よりも後ろ側(ピン91が配置された側)の部分)は、下方に突出してその下端にストッパ部62が形成されている。ストッパ部62は、アッパーレール52の被当接面52Aに当接することで、リアリンク7の後述する第2ストッパ部73とともに、着座部フレーム3の最低位置を規制する部位である。
【0051】
図2に示すように、リアリンク7は、左右に1つずつ設けられ(一方のみ図示)、それぞれ、上端が、ピン93により、サイドフレーム30の後部に節点を形成するように連結されている。ピン93は、リアリンク7を回転可能に軸支しており、これにより、リアリンク7がサイドフレーム30に対して回動可能となっている。
【0052】
また、リアリンク7の下端は、ピン94によりアッパーレール52の後側のリンク支持部52Bに節点を形成するように連結されている。ピン94は、リアリンク7を回転可能に軸支しており、これにより、リアリンク7がスライドレール5に対して回動可能となっている。
【0053】
図3に示すように、右のリアリンク7Rの外周縁には、セクタギヤ71と、ストッパ部(第1ストッパ部72および第2ストッパ部73)とが一体に設けられている。なお、本実施形態において、左のリアリンク7Lの外周縁には、セクタギヤ71と第1ストッパ部72は設けられておらず、第2ストッパ部73だけが一体に設けられている(図1参照)。
【0054】
セクタギヤ71は、ハイトブレーキ8に設けられたピニオンギヤ82と噛み合って、ピニオンギヤ82の回動により4節リンク機構を作動させるギヤであり、リアリンク7Rが図3に示す姿勢にある状態で、リアリンク7Rの後端の上面部に形成されている。セクタギヤ71の各ギヤ歯は、リアリンク7Rのサイドフレーム30側の回動軸であるピン93を中心とする略円弧上に配置されている。
【0055】
第1ストッパ部72および第2ストッパ部73は、アッパーレール52の被当接面52Aに当接することで4節リンク機構の駆動範囲を規制する部位である。より詳細に、第1ストッパ部72は、ピン94よりも前(ピン93が配置された側と反対側)に突出して下方に向いた面を有して形成され、第2ストッパ部73は、ピン94よりも後ろの部分において下方に突出して形成されている。第1ストッパ部72は、被当接面52Aに当接して着座部フレーム3の最高位置を規制し、第2ストッパ部73は、被当接面52Aに当接して着座部フレーム3の最低位置を規制するように機能する。
【0056】
図1に示すように、左右のフロントリンク6は、略円筒状の連結パイプ65によって互いに連結され、左右のリアリンク7は、略円筒状の連結パイプ75によって互いに連結されている。これにより、左右のフロントリンク6およびリアリンク7の一方に入力された4節リンク機構の駆動力を他方に伝達し、着座部フレーム3のスムーズな昇降を可能にしている。
【0057】
ハイトブレーキ8は、乗員の操作によって4節リンク機構を駆動させ、着座部の高さを調整するための部材であり、左右のサイドフレーム30のうちの、右のサイドフレーム30の左右方向外側の面の後部に固定されている。このハイトブレーキ8は、図4(a)に示すように、操作部材としての操作ノブ81と、ピニオンギヤ82(図3参照)と、台座部83とを主に有して構成されている。
【0058】
操作ノブ81は、台座部83に対して回動可能に支持され、サイドフレーム30の左右方向外側に向けて突出するように設けられている。なお、図示は省略するが、この操作ノブ81は、公知の構成によって、台座部83に対して回転可能であるとともに、ピニオンギヤ82側からのトルクの入力によっては回転しないようにするロック機構を備えている。このロック機構により、乗員の重みによってハイトアジャスト機構が作動して着座部フレーム3が下降するのが防止されている。
【0059】
ピニオンギヤ82は、台座部83に対し操作ノブ81と同軸で操作ノブ81の操作により共に回動するように支持され、サイドフレーム30の左右方向内側に設けられている。このピニオンギヤ82は、リアリンク7Rのセクタギヤ71と噛み合っている。このような構成により、操作ノブ81を回動させることで、ピニオンギヤ82が回動し、4節リンク機構を駆動させて着座部の高さを調整することができるようになっている。
【0060】
台座部83には、ボルト88を挿通するための孔83Aが2つ設けられている。孔83Aは、ピニオンギヤ82のシャフト81Aを前後方向に挟むように配置されている。孔83Aの大きさは、ボルト88のネジ軸88A(本明細書では、ネジ山が形成されている部分と形成されていない部分をまとめてネジ軸88Aと呼ぶ。)がちょうど入るくらいの大きさで形成されている。
【0061】
一方、サイドフレーム30には、孔83Aに対応した2箇所に、第1穴部の一例としての長孔33が形成されている。長孔33は、その長手方向が、ピニオンギヤ82のシャフト81Aを中心とする略円周方向に沿って延びている。そして、図4(b)に示すように、長孔33は、幅方向両側の縁が内側に突出することで長孔33のくびれを形成する第1くびれ部33Aを有している。第1くびれ部33Aにより形成される狭まった長孔33の幅は、ネジ軸88Aに干渉可能なようにネジ軸88Aの直径よりも小さくなっている。第1くびれ部33Aは、各長孔33の長手方向の中間部に2箇所(両側で数えると計4箇所)設けられていることで、長孔33は、長手方向に3箇所の幅の広い部分が形成されている。この幅の広い部分を時計回り方向に順に第1孔34A、第2孔34B、第3孔34Cと呼ぶことにする。
【0062】
図4(a)に示すように、ハイトブレーキ8は、ボルト88のネジ軸88Aを孔83A、第2孔34Bに通して、ナット89を螺合することでサイドフレーム30に固定されている。このボルト88のネジ軸88Aは、第1突出部の一例であり、長孔33に対して長孔33の長手方向に遊びを持って入り込んでいる。ハイトブレーキ8は、ボルト88とナット89の締結力のみによってサイドフレーム30に押し付けられて固定されているため、ハイトブレーキ8とサイドフレーム30を互いにずらそうとする過大な荷重が掛かった場合には、ボルト88のネジ軸88Aと長孔33の遊びの範囲内、つまり、長孔33内で移動可能であり、これにより、ハイトブレーキ8がサイドフレーム30に対して移動可能となっている。なお、この移動を可能とするため、セクタギヤ71は、着座部フレーム3が最高位置と最低位置の間にあるときのピニオンギヤ82が噛み合う範囲よりも両側に(図3で言えば、上側と下側)に広い範囲でギヤ歯が形成されている。
【0063】
図3に示すように、ピニオンギヤ82の回転を支持する部分である、ピニオンギヤ82のシャフト81Aと、セクタギヤ71が設けられたリアリンク7のサイドフレーム30に対する回転を支持する部分であるピン93とは、サイドフレーム30の内側において連結部材95により連結されている。これにより、セクタギヤ71とピニオンギヤ82の位置関係の規制が強化されている。
【0064】
以上のように構成された車両用シート1の昇降動作および車両衝突時の作用について説明する。
図5(a)に示すように、着座部フレーム3が最低位置にあるとき、フロントリンク6のストッパ部62と、リアリンク7の第2ストッパ部73がスライドレール5の被当接面52Aに当たることで着座部フレーム3の下方への移動が規制されている。すなわち、操作ノブ81の操作により図5(a)の反時計回りにピニオンギヤ82を回転させようとしても、回転させることはできず、着座部フレーム3は動かない。
【0065】
図5(a)の状態から、操作ノブ81を操作してピニオンギヤ82を時計回りに回転させると、ピニオンギヤ82がセクタギヤ71を反時計回りに回動させ、これにより、リアリンク7の後部が起き上がる。このリアリンク7の動作により、フロントリンク6も後部が起き上がるように反時計回りに回動し、着座部フレーム3は上昇する。
【0066】
操作ノブ81をさらに時計回りに回転させていくと、図5(b)に示すように、リアリンク7の第1ストッパ部72がスライドレール5の被当接面52Aに当たることで着座部フレーム3の上昇が規制される。
【0067】
着座部フレーム3を下降させる場合、操作ノブ81の操作によりピニオンギヤ82を図5の反時計回りに回転させる。これにより、ピニオンギヤ82がセクタギヤ71を時計回りに回動させ、リアリンク7およびフロントリンク6が時計回りに回動することで図5(b)から図5(a)のように着座部フレーム3が下降する。
【0068】
車両が後方から追突された場合、図6(a)に示すように、乗員の慣性により乗員からシートバックフレーム2に後ろ向きの衝撃荷重が掛かる。この衝撃荷重は、シートバックフレーム2を図6の反時計回りに回転させるモーメントとして働き、着座部フレーム3を下に押し下げるように働く。そのため、リアリンク7は、図6(b)に示すように、ピン93を中心に図示反時計回りに回るようにモーメントが掛かり、このモーメントがセクタギヤ71を介してピニオンギヤ82を図示時計回りに回転させる。
【0069】
このとき、ピニオンギヤ82は、台座部83に対してロックされているので、台座部83に対して回転することはできない。そのため、ピニオンギヤ82に図6(b)の時計回りのモーメントが掛かると、台座部83を時計回りに回転させるモーメントが働く。この台座部83のモーメントは、ボルト88およびナット89の締結力による台座部83とサイドフレーム30の間の摩擦力に打ち勝つと、サイドフレーム30に対して台座部83(すなわち、ハイトブレーキ8自体)をピニオンギヤ82の回転軸線を中心に時計回りに回動させる。この回動時に、ボルト88のネジ軸88Aは、第2孔34Bの位置から、時計回り方向に隣接する(図6(b)の右のネジ軸88Aでは下、左のネジ軸88Aでは上の)第1くびれ部33Aと干渉し、第1くびれ部33Aを乗り越えて第3孔34Cに移動する。このとき、第1くびれ部33A同士の間隔によっては、ネジ軸88Aが第1くびれ部33Aを少し変形させながら乗り越える。
【0070】
このように、シートバックフレーム2に後方への過大な荷重が掛かると、ネジ軸88Aが第1くびれ部33Aを乗り越えながらハイトブレーキ8が回動するので、ハイトアジャスト機構、ピニオンギヤ82およびセクタギヤ71の破損を抑制することができる。このようなハイトブレーキ8のサイドフレーム30に対する相対的な移動は、着座部フレーム3の高さ位置によらずに起こる。しかし、特に、図6(a)に示すように着座部フレーム3が最低位置にあってフロントリンク6のストッパ部62およびリアリンク7の第2ストッパ部73が被当接面52Aに当接しているときには、フロントリンク6およびリアリンク7の撓みによる衝撃吸収が小さくなるので、セクタギヤ71とピニオンギヤ82の間に掛かる衝撃荷重は大きくなり、ハイトブレーキ8は移動しやすくなる。すなわち、このような場合に、リンクの撓みによる緩衝が小さいのでハイトブレーキ8が移動する意義が大きいと言える。
【0071】
そして、本実施形態の車両用シート1においては、ハイトブレーキ8の移動は、ピニオンギヤ82の回転軸線を中心とする回動動作であるので、移動後においても、昇降範囲は若干狭くなるものの、着座部フレーム3を昇降動作させることが可能である。
【0072】
また、ピニオンギヤ82のシャフト81Aとピン93とは連結部材95(図3参照)により連結されているので、セクタギヤ71とピニオンギヤ82の間に衝撃荷重が掛かったときにもピニオンギヤ82とセクタギヤ71(ピン93)の軸間距離が維持され、ピニオンギヤ82やセクタギヤ71の軸が互いに斜めにずれたりしにくいので、ピニオンギヤ82のサイドフレーム30に対する位置が安定し、ハイトブレーキ8をサイドフレーム30に対し設定通り移動させ易くなる。また、軸間距離が保たれる結果、移動後のハイトアジャスト機構の動作を確保し易くなる。
【0073】
一方、車両が前方から追突した場合、図7(a)に示すように、車両用シート1の後方に置いてあった物などがシートバックに当たることにより、シートバックフレーム2に前向きの衝撃荷重が掛かる。この衝撃荷重は、シートバックフレーム2を図7の時計回りに回転させるモーメントとして働き、着座部フレーム3を上に押し上げるように働く。そのため、リアリンク7は、図7(b)に示すように、ピン93を中心に図示時計回りに回るようにモーメントが掛かり、このモーメントがセクタギヤ71を介してピニオンギヤ82を図示反時計回りに回転させる。
【0074】
このとき、ピニオンギヤ82は、台座部83に対してロックされているので、台座部83に対して回転することはできない。そのため、ピニオンギヤ82に図7(b)の反時計回りのモーメントが掛かると、台座部83を反時計回りに回転させるモーメントが働く。この台座部83のモーメントは、ボルト88およびナット89の締結力による台座部83とサイドフレーム30の間の摩擦力に打ち勝つと、サイドフレーム30に対して台座部83(すなわち、ハイトブレーキ8自体)をピニオンギヤ82の回転軸線を中心に反時計回りに回動させる。この回動時に、ボルト88のネジ軸88Aは、第2孔34Bの位置から、反時計回り方向に隣接する(図7(b)の右のネジ軸88Aでは上、左のネジ軸88Aでは下の)第1くびれ部33Aと干渉し、第1くびれ部33Aを乗り越えて第1孔34Aに移動する。このとき、第1くびれ部33A同士の間隔によっては、ネジ軸88Aが第1くびれ部33Aを少し変形させながら乗り越える。
【0075】
このように、シートバックフレーム2に前方への衝撃荷重が掛かった場合にも、本実施形態の車両用シート1によれば、サイドフレーム30に対するハイトブレーキ8の移動によってハイトアジャスト機構に掛かる衝撃を吸収するので、ハイトアジャスト機構、ピニオンギヤ82およびセクタギヤ71の破損を抑制することができる。特に、図7(a)のように、着座部フレーム3が最高位置にあるときには、リンクの撓みによる緩衝が小さいのでこの意義が大きい。
【0076】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
例えば、前記実施形態においては、突出部(ネジ軸88A)と穴部(長孔33)との係合をピニオンギヤ82を挟む2箇所としていたが、3箇所以上とし、ピニオンギヤ82の回転軸線の周囲で回転軸線を囲むように設けることもできる。例えば、図8に示すハイトブレーキ108のように、サイドフレーム30に3箇所の穴部133を設け、この穴部133にハイトブレーキ108の突出部としてのネジ軸88Aを遊びを持って入り込ませるとよい。このように、複数の穴部がピニオンギヤ82の回転軸線を囲む(ネジ軸88Aを結んだ多角形内に回転軸線が位置する)と、ハイトブレーキ108がサイドフレーム30に対して周方向に移動するときに、動作をより安定させることができる。
【0077】
また、図8に示す例のように、穴部133を単なる長孔として、くびれ部を設けないように構成してもよい。そして、ピニオンギヤ82の回転軸線を中心とする円周C1に対して穴部133の長手方向を少し斜めにすれば、ハイトブレーキ108が回動したときに、ハイトブレーキ108が徐々に回りにくくなり、シートバックフレーム2に掛かった衝撃荷重の大きさに応じてハイトブレーキ108の回動量を調整しやすくなる。すなわち、衝撃荷重が小さいときに、ハイトブレーキ108が回りすぎなくなるので、そのような場合には、ハイトアジャスト機構、ピニオンギヤ82およびセクタギヤ71の破損を抑制しつつ、ハイトブレーキ108が移動した後も、移動前とほぼ同様の機能を発揮させることができる。
【0078】
前記実施形態においては、ハイトブレーキ8の台座部83から、サイドフレーム30に向けて突出する突出部をネジ軸88Aにより設けたが、図9(a),(b)に示す例のように、ハイトブレーキ8の台座部83とサイドフレーム30の間に取付部材の一例としての取付板180を介在させ、サイドフレーム30に対して取付板180を介してハイトブレーキ8を固定することもできる。この場合、例えば、取付板180に対しては溶接部181において台座部83を溶接し、取付板180からは2箇所の長孔233(第2穴部)に遊びを持って入り込む突出部188(第2突出部)を一体に設け、図9(a)のように突出部188の先端189を潰してかしめにより固定することができる。
【0079】
このように、取付部材を用いる場合においても取付部材とサイドフレームの間で移動可能に構成することで衝撃吸収をすることができる。また、この図9の変形例において、取付部材とサイドフレームの間で移動可能とするのではなく、ハイトブレーキ(台座部83)と取付部材の間で移動可能に構成することもできる。
【0080】
さらに、図10(a),(b)に示す例((a)は(b)のZ−Z断面で図示)のように、図9の例に対して、取付板180とハイトブレーキ8の間でも移動可能に構成してもよい。この場合、サイドフレーム30の長孔233(第3穴部)に取付板180の突出部188(第3突出部)を遊びを持って入り込ませるだけでなく、取付板180に長孔233と同様の長孔333(第4穴部)を2箇所設け、一方、ハイトブレーキ8の台座部83から突出部288(第4突出部)を長孔333に対応して2つ設ける。そして、突出部288を長孔333に遊びを持って入り込ませて、突出部288の先端289を潰してかしめることができる。
【0081】
このように、ハイトブレーキ8と取付板180の間、および、取付板180とサイドフレーム30の間の両方で移動可能に構成することで、シートバックフレーム2に衝撃荷重が掛かったときに突出部188を長孔233内で移動させるとともに、突出部288を長孔333内で移動させることで移動可能量を大きくして、衝撃吸収量を大きくすることができる。
【0082】
また、この場合には、長孔233にくびれ部233A(第2くびれ部)を設けると共に、長孔333にくびれ部333A(第3くびれ部)を設けるとよい。そして、突出部188がくびれ部233Aを乗り越えるためのモーメントは、突出部288がくびれ部333Aを乗り越えるためのモーメントと異なっているのが望ましい。このモーメントを異ならせるためには、くびれ部233Aとくびれ部333Aにより形成されたくびれの幅を同じにして、くびれ部233Aとくびれ部333Aのピニオンギヤ82の回転中心からの距離の違いを利用してもよいし、くびれ部233Aとくびれ部333Aにより形成されたくびれの幅を変更して、乗り越えに必要なモーメントを積極的に異ならせてもよい。このように乗り越えのためのモーメントを異ならせれば、シートバックフレーム2に衝撃的な荷重が掛かったときに、突出部188と突出部288のいずれかが先にくびれ部233A,333Aを乗り越え、もう一方が後で乗り越える。このため、衝撃力が小さかった場合には、一方の突出部のみがくびれ部を乗り越えるので、ハイトブレーキ8が移動した後の車両用シート1の修復が容易である。また、突出部188,288がくびれ部233A,333Aを乗り越えるタイミングがずれるので、乗り越え時にシートバックフレーム2に掛かる反力を小さくすることができる。
【0083】
また、前記実施形態においては、ハイトブレーキ8は、ピニオンギヤ82の回転軸線を中心として回動するように移動したが、サイドフレーム30に対しピニオンギヤ82の回転軸線を基準として周方向に移動するように構成されていてもよい。すなわち、周方向に移動しつつ、径方向にも多少ずれるように移動してもよい。このような構成によっても、ハイトブレーキ8の移動に必要なスペースを小さくできるので、衝撃吸収の仕組みのためのスペースを小さくすることができる。さらに、ハイトブレーキ8は、周方向に移動することなく、ピニオンギヤ82とセクタギヤ71の軸間距離が広がるように移動してもよい。
【0084】
また、前記実施形態においては、突出部は、ハイトブレーキ8をサイドフレーム30に固定するための部材としても機能していたが、突出部を穴部との係合によりハイトブレーキ8の移動方向を規定するためだけの部分として機能させ、ハイトブレーキ8をサイドフレーム30に固定するための部材は別の部材を用いてもよい。
【0085】
前記実施形態では、ハイトブレーキ8からサイドフレーム30に向けて突出する突出部を設け、サイドフレーム30に穴部を設けたが、これを逆にして、サイドフレーム30に突出部を設け、ハイトブレーキ8に穴部を設けてもよい。図9および図10に例示した変形例においても同様に、穴部と突出部の設け方を逆にすることができる。また、穴部の例として部材(サイドフレーム30など)を貫通する貫通孔を例示したが、穴部は底付の穴であってもよい。さらに、穴部の形状は、長穴に限らず、突出部の断面形状より大きく、その内部で突出部が移動できる大きさであれば、特に形状は限定されない。
【0086】
前記実施形態では、ピニオンギヤ82はリアリンク7に設けられたセクタギヤ71と噛み合っていたが、ピニオンギヤ82は、フロントリンク6またはリアリンク7と連動するように配置されたセクタギヤに噛合する構成であればよい。すなわち、セクタギヤが、フロントリンクに設けられ、ピニオンギヤは、フロントリンクに設けられたセクタギヤに噛合する構成でもよく、また、セクタギヤがフロントリンクまたはリアリンクと連動する他の部材に設けられた構成でもよい。
【0087】
前記実施形態では、連結部材は、ピニオンギヤ82のシャフト81Aとピン93を連結していたが、例えば、回転を支持する部分は、軸受でもよく、ピニオンギヤ82のシャフト81Aを回転支持する軸受とピン93を連結するように構成することもできる。
【0088】
前記実施形態では、乗物用シートの適用例として、自動車などの車両用シート1を示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート、例えば、船舶用や航空機用のシートに適用することもできる。
【符号の説明】
【0089】
1 車両用シート
2 シートバックフレーム
3 着座部フレーム
5 スライドレール
6 フロントリンク
7 リアリンク
8 ハイトブレーキ
9 リクライニング機構
30 サイドフレーム
33 長孔
33A くびれ部
71 セクタギヤ
81 操作ノブ
81A シャフト
82 ピニオンギヤ
83 台座部
83A 孔
88 ボルト
88A ネジ軸
89 ナット
91〜94 ピン
95 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドフレームを有する着座部と、当該着座部に固定されたシートバックとを備え、着座部の高さを調整可能な乗物用シートであって、
乗物の機体に対し、着座部を昇降可能に支持するハイトアジャスト機構と、
前記サイドフレームに固定され、前記ハイトアジャスト機構と係合して着座部の高さ位置をロックするハイトブレーキとを備え、
前記ハイトブレーキは前記サイドフレームに対し、前記ハイトアジャスト機構から所定以上の衝撃荷重が掛かった場合に移動できるように固定されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記ハイトブレーキは、操作部材の操作により回転するピニオンギヤを有し、当該ピニオンギヤが前記ハイトアジャスト機構と係合しており、前記衝撃荷重により、前記サイドフレームに対し前記ピニオンギヤの回転軸線を基準として周方向に移動するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記ハイトブレーキは、前記衝撃荷重により、前記サイドフレームに対し前記ピニオンギヤの回転軸線を中心として回動するように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記サイドフレームおよび前記ハイトブレーキの一方は、第1穴部を備え、
前記サイドフレームおよび前記ハイトブレーキの他方は、前記第1穴部に遊びを持って入り込む第1突出部を備え、前記衝撃荷重により、前記サイドフレームと前記ハイトブレーキとが相対的に移動するときに、前記第1突出部が前記第1穴部内で移動することを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1穴部は、前記ピニオンギヤの回転軸線の周囲で、当該回転軸線を囲むように複数設けられ、前記第1突出部は、前記第1穴部に対応して前記回転軸線を囲むように複数設けられたことを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第1穴部は、前記第1突出部の移動方向に長く形成され、長手方向の中間部に前記第1突出部と干渉可能な第1くびれ部を有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記ハイトブレーキを前記サイドフレームに取り付けるため前記サイドフレームと前記ハイトブレーキの間に介在される取付部材をさらに備え、
前記取付部材および前記サイドフレームの一方は、第2穴部を備え、
前記取付部材および前記サイドフレームの他方は、前記第2穴部に遊びを持って入り込む第2突出部を備え、
前記衝撃荷重により、前記サイドフレームと前記ハイトブレーキとが相対的に移動するときに、前記第2突出部が前記第2穴部内で移動することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記ハイトブレーキを前記サイドフレームに取り付けるため前記サイドフレームと前記ハイトブレーキの間に介在される取付部材をさらに備え、
前記サイドフレームおよび前記取付部材の一方は、第3穴部を備え、
前記サイドフレームおよび前記取付部材の他方は、前記第3穴部に遊びを持って入り込む第3突出部を備え、
前記取付部材および前記ハイトブレーキの一方は、第4穴部を備え、
前記取付部材および前記ハイトブレーキの他方は、前記第4穴部に遊びを持って入り込む第4突出部を備え、
前記衝撃荷重により、前記サイドフレームと前記ハイトブレーキとが相対的に移動するときに、前記第3突出部が前記第3穴部内で移動し、前記第4突出部が前記第4穴部内で移動することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記第3穴部は、前記第3突出部の移動方向に長く形成され、長手方向の中間部に前記第3突出部と干渉可能な第2くびれ部を有し、
前記第4穴部は、前記第4突出部の移動方向に長く形成され、長手方向の中間部に前記第4突出部と干渉可能な第3くびれ部を有することを特徴とする請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記第3突出部が前記第2くびれ部を乗り越えるためのモーメントは、前記第4突出部が前記第3くびれ部を乗り越えるためのモーメントと異なることを特徴とする請求項9に記載の乗物用シート。
【請求項11】
前記ハイトアジャスト機構は、前記サイドフレームの前部に対し回動可能に結合されたフロントリンクと、前記サイドフレームの後部に対し回動可能に結合されたリアリンクと、前記フロントリンクの下部および前記リアリンクの下部に対し回動可能に結合されたリンク支持部材とを有し、
前記ピニオンギヤは、前記フロントリンクまたは前記リアリンクと連動するセクタギヤに噛合するように設けられ、
前記ピニオンギヤの回転を支持する部分と、前記セクタギヤに連動する前記フロントリンクまたは前記リアリンクの前記サイドフレームに対する回転を支持する部分とを連結する連結部材をさらに備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の乗物用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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