説明

乗物用座席のクッション性能測定器

【課題】乗物に設置された状態にて座席の座部のクッション性能を測定することができ、もって、ヘタリが使用限度に達していない座部を無用に交換することなく継続して使用できるようにすると共に、使用限度を超えたヘタリが生じた座部を的確に交換できるようにする。
【解決手段】キャスター21a,21bを有し、乗物の床面1上を移動可能な基台20と、基台20の前方に突出するアーム30と、アーム30の先端部分に昇降可能に設けられ、下降することで座部の上面を押圧する押圧体35と、押圧体35に加わる荷重を計測する荷重計測装置(ロードセル)33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用座席のクッション性能測定器に関するものであり、詳しくは、乗物に設置されたままの状態で座席の座部のクッション性能を測定することができるクッション性能測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両、船舶、航空機、自動車等の乗物には、乗客設備として座席が設置されている。ここで、座席の座部(使用者が臀部を載せる部分)は、座席の製造時には良好なクッション性能を有するものの、長年の使用によって、クッション性能が低下する所謂「ヘタリ」が生じる。そして、ヘタリが生じた座部を交換することは、普通に想定される一般的事項である。
【0003】
ところで、従来、乗物に設置された座席の座部のクッション性能を測定できる測定器はなく、乗物の管理者が座席に腰掛けた際の感覚によって座部のヘタリ具合を確認して、使用限度を超えるヘタリが生じた座部を交換することが一般的になされていた。また、使用限度を超えるヘタリが生じた座部をそのまま使用しないようにするために、ヘタリ具合を確認せず、全ての座部を定期的に交換することも一般的になされていた。
【0004】
なお、座席を製造する座席メーカー等においては、座席の座部のクッション性能を測定する適宜の測定器を用いて、座部のクッション性能を確認することが通常なされている。しかしながら、座席メーカー等で使用される測定器は、座部を単体の部品として、測定台に置かれた単体の座部を押圧体によって押圧すると共に、適宜の計測装置によって、押圧体に加わる荷重と押圧量とを計測して、座部のクッション性能を測定するものであり、乗物内に持ち込むことが困難なものであるばかりか、乗物に設置された状態の座席の座部に対して、そのクッション性能を測定できるものではなかった。
【0005】
上記背景技術は、一般的になされている事項であり、本願出願人は、出願時において、この背景技術が記載された文献を特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように乗物の管理者(人)の感覚によってヘタリ具合を確認して座部を交換することは、人の感覚に頼らざるを得ず、未だ使用に耐え得る座部を無用に交換してしまったり、逆に、既に使用に耐え得ない座部を継続して使用してしまうといった問題を生じる。また、ヘタリ具合を確認せず、全ての座部を定期的に交換すると、未だ使用に耐え得る座部を無用に交換してしまうといった問題を生じる。
【0007】
なお、座席メーカー等で使用される測定器によって座部のヘタリ具合を数値的に把握し、使用限度を超えたヘタリが生じた座部のみを的確に交換することも想定できるが、この場合には、乗物に設置された全ての座席から座部を取外して、座部を乗物外に持ち出してそのクッション性能を測定しなければならず、その測定作業は甚だ煩わしい作業となる。
【0008】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、乗物に設置された状態にて座席の座部のクッション性能を測定することができ、もって、ヘタリが使用限度に達していない座部を無用に交換することなく継続して使用できるようにすると共に、使用限度を超えたヘタリが生じた座部を的確に交換できるようにする乗物用座席のクッション性能測定器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「乗物に設置された座席の座部のクッション性能を測定する乗物用座席のクッション性能測定器であって、
キャスターを有し、前記乗物の床面上を移動可能な基台と、
前記基台の前方に突出するアームと、
該アームの先端部分に昇降可能に設けられ、下降することで前記座部の上面を押圧する押圧体と、
該押圧体に加わる荷重を計測する荷重計測装置と
を備えることを特徴とする乗物用座席のクッション性能測定器」
である。
【0010】
上記構成のクッション性能測定器は、基台が乗物の床面上を移動可能であり、押圧体が、基台の前方に突出するアームの先端部分に設けられているため、乗物に設置された状態の座席に対して、座席の近傍に基台を移動させ、座席の座部の上面を押圧体によって押圧することができる。そして、荷重計測装置の計測値を読取ることで、座部のヘタリ具合を数値的に把握することができる。
【0011】
よって、上記構成のクッション性能測定器によれば、乗物に設置された状態にて座席の座部のクッション性能を測定することができる。また、乗物に設置された状態にて座席の座部のクッション性能を測定することができることから、乗物に設置されたままの状態の座席に対して、ヘタリが使用限度に達していない座部を無用に交換することなく継続して使用することを数値的に判断することができ、使用限度を超えたヘタリが生じた座部を的確に交換することを数値的に判断することができる。
【0012】
上述した手段において、
「前記基台は、測定者を乗せる踏み台を有する
ことを特徴とするクッション性能測定器」
としてもよい。
【0013】
押圧体がアームの先端部分に設けられていることから、押圧体によって座部を押圧すると、基台に浮き上がる力が加わる。そして、基台が浮き上がってしまうと、荷重測定装置によって押圧体に加わる荷重を正確に計測できなくなってしまう。ここで、基台が浮き上がらないように、基台自体の重量を十分に重くすることが想定できる。しかしながら、基台自体の重量を重くすることは、基台を移動させ難くなるため、不適切である。
【0014】
そこで、上記構成のクッション性能測定器では、基台を、測定者を乗せる踏み台を有するものとして構成する。測定時に測定者が基台の踏み台に乗れば、測定者の体重が加わって基台が重たくなり、浮き上がり難くなるため、基台自体の重量を軽量化しても、押圧体に加わる荷重を正確に計測することが可能となる。
【0015】
よって、上記構成のクッション性能測定器によれば、基台自体の重量を軽量化して、乗物内を移動させ易くすることができる。
【0016】
上述した手段において、
「前記基台は、上下方向に位置調節可能な昇降台座を有し、
前記アームは、前記昇降台座に取付けられている
ことを特徴とする乗物用座席のクッション性能測定器」
としてもよい。
【0017】
上記構成のクッション性能測定器では、上下方向の位置調節が可能な昇降台座にアームが取付けられているため、基台に対するアームの高さが調節可能となる。ここで、乗物の床面に対する座席の座部の上面の高さは、種々のタイプの座席において様々であるが、アームの高さを調節可能とすることで、座部の上面の高さが様々な種々のタイプの座席に的確に対応させることができる。
【0018】
また、押圧体を所定ストロークで下降させた際における押圧体に加わる荷重によって、座部のヘタリ具合を数値的に測定する場合には、押圧体を下降させる前の段階である「測定開始段階」において、座部の上面に対する押圧体の当り具合にバラツキが生じていると、所定ストロークで下降させても、押圧体に加わる荷重を正確に測定できない。
【0019】
これに対して、アームの高さが調節可能であれば、アームの高さを調節して、上昇した状態の押圧体に所定の荷重が加わった段階を測定開始段階とし、以降、押圧体を所定ストロークで下降させて押圧体に加わる荷重を計測して座部のヘタリ具合を測定することとすれば、測定開始段階において、座部の上面に対する押圧体の当り具合を定常化することができ、これにより、座部のヘタリ具合を正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0020】
上述した通り、本発明によれば、乗物に設置された状態にて座席の座部のクッション性能を測定することができ、もって、ヘタリが使用限度に達していない座部を無用に交換することなく継続して使用できるようにすると共に、使用限度を超えたヘタリが生じた座部を的確に交換できるようにする乗物用座席のクッション性能測定器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る乗物用座席のクッション性能測定器の実施形態としての一例を、以下、図面に従って詳細に説明する。
【0022】
なお、以下に説明するクッション性能測定器は、鉄道車両、船舶、航空機、自動車等の各種の乗物に乗客設備として設置された座席の座部のクッション性能、すなわち「ヘタリ具合」を測定することができるものである。特に、車両の床面がフラットに形成されており、車両の前後方向と座席の前後方向とが同一方向となるように、車両の前後方向に多数の座席が所定間隔で配設された新幹線や特急列車等の鉄道車両において、前後の座席の間に置いて、後ろ側の座席の座部のヘタリ具合を良好に測定することができるものである。ここで、測定時には、クッション性能測定器を、測定対象の座席の座部の前方に対向するように配置するため、クッション性能測定器の前後方向(測定者から見た方向)が、座席の前後方向(座席に着座した使用者から見た方向)とは逆方向になる。よって、以下では、座席の前後方向とクッション性能測定器の前後方向とを、互いに逆方向として説明する。
【0023】
図1〜3に示すように、本例のクッション性能測定器10は、キャスター21a,21bを有し、乗物の床面1上を移動可能な基台20と、この基台20の前方に突出するアーム30と、このアーム30の先端部分に昇降可能に設けられ、下降することで座席の座部の上面を押圧する押圧体35と、この押圧体35に加わる荷重を計測する荷重計測装置33とを具備している。基台20、アーム30、押圧体35及び荷重計測装置33の詳細な構造は、以下の通りである。
【0024】
基台20は、平面視で略T字状に形成されており、全体がコンパクトに納められている。そして、本例では、基台20が、前部の左右の夫々に一つづつの旋回不能なキャスター21aと、後部の中央部分に旋回自在な一つのキャスター21bとを有しており、乗物の床面1上を移動する際に、小回りがきくものとなっている。また、後部のキャスター21bとして、車輪の回転を規制するロック機構を有するものが用いられており、このキャスター21bのロック機構をロックすることで、基台20を床面1上にて移動不能に固定することができる。さらに、基台20の上部の中央部分には、T字状のハンドルバー22が突設されており、ハンドルバー22を手で押すことで、基台20を任意の方向に移動させることができる。
【0025】
なお、基台20が具備するキャスターとしては、上述のキャスター21a,21bに限らず、全てのキャスターとして、旋回自在なキャスターを採用してもよい。このようにすることで、クッション性能測定器10を床面1上にて向きを変えずに横方向にスライド移動させることができ、横方向に連設された複数の座席の座部のヘタリ具合を、順次、測定する際に、各座席の前方にクッション性能測定器10を迅速に移動させることができる。
【0026】
また、基台20は、左右に一つづつの踏み台25を有しており、測定時においては、測定者が左右の踏み台25に乗ることで、基台20全体を重くすることができ、基台20が浮き上がることを防止することができる。ここで、左右の踏み台25は、夫々個別に上下方向に回動自在(図1における矢印A参照)となるように、基台20に軸支されており、上方向に回動させると、基台20に収納された状態となり、下方向に回動させると、展開された状態となる。
【0027】
クッション性能測定器10を乗物内に搬入する際等においては、踏み台25を収容した状態とすることで、踏み台25を邪魔になり難くすることができる。なお、基台20には、固定フック25aが設けられており、収容状態の踏み台25を固定フック25aに掛止することで、踏み台25を収容状態で固定することができる。
【0028】
一方、座部のヘタリ具合を測定する際には、踏み台25を展開した状態として、展開した状態の踏み台25に測定者が乗って基台20全体を重くするのであるが、基台20には、進退自在に構成されると共に、圧縮コイルスプリング等の付勢部材によって前進方向に付勢されたストッパ25bが設けられており、展開した状態となるように踏み台25を下方向に回動させても、ストッパ25bに踏み台25が当接し、踏み台25の自重によってそれ以上に下方に回動することが規制されて、踏み台25が床面に接触することなく、僅かに浮いた状態となる。クッション性能測定器10を乗物内にて移動させる際には、このように踏み台25が浮いた状態とすることで、踏み台25が床面1上にて引きずられることなく、クッション性能測定器10を円滑に移動させることができる。
【0029】
そして、このように展開した状態で床面1から僅かに浮いている踏み台25に測定者が乗ると、踏み台25に測定者の体重が加わり、前進した状態で踏み台25に当接して踏み台のさらなる下方への回動を規制しているストッパ25が付勢力に抗して後退して、踏み台25は、さらに下方向に回動して、床面1に接触する。このように、踏み台25を床面1に接触させることで、クッション性能測定器10を床面1上に堅固に固定することができる。
【0030】
また、基台20には、詳細は後述する荷重計測装置33からの出力データを処理するノート型パソコン等のデータ処理機器40を収納する収納部23が設けられている。
【0031】
さらに、基台20の前面には、測定対象の座席の座部の前端面に当接して、座席に対する基台20の前後方向の位置を位置決めする当て座24と、上下方向に位置調節可能な昇降台座26とが設けられている。そして、上記昇降台座26にアーム30が取付けられており、アーム30は、基台20に対して高さ調節可能な構造となっている。ここで、昇降台座26は、送りねじ機構を用いて上下方向に位置調節可能となっており、基台20の上部に設けられた高さ調節ハンドル26aを手動によって回動操作することで、基台20の前面において、上下動する。
【0032】
アーム30の先端部分には、圧縮コイルスプリング等の付勢部材によって上昇方向に付勢され、加圧レバー31を手動により下方に回動操作することで下降する昇降軸32を有する昇降機構が組込まれている。そして、押圧体35は、この昇降機構の昇降軸32の下端に取着されており、加圧レバー31の回動操作によって(図1における矢印B参照)、所定ストロークの範囲で昇降する構造となっている(図1における矢印C参照)。
【0033】
押圧体35は、直径200mmの円板状に形成されており、ある程度の範囲で軸線を三次元方向に振ることができるように、ユニバーサルジョイント34を介して昇降軸に取着されている。よって、座部の上面が傾斜していても、押圧体35が座部の上面に倣うように傾くことで、座部の上面を良好に押圧することができる。
【0034】
また、昇降軸32には、押圧体35に加わる荷重を計測する荷重計測装置33が組込まれている。ここで、本例では、荷重計測装置33として、ロードセルを用いて構成され、圧力を電気信号として出力する荷重計を採用しており、荷重計測装置33の計測値は、荷重計に接続されたデータ処理機器40によって読取ることができる。
【0035】
また、本例のクッション性能測定器10は、アーム30に対して押圧体35を上昇限まで上昇させた状態で押圧体35を座部の上面に当接させた時に、初期荷重として所定の荷重が押圧体35に付加された状態を測定開始段階とし、この状態から加圧レバー31を下方に回動操作して、常時一定のストロークとなるように、押圧体35を下降限まで下降させて、この時に押圧体35に加わった荷重によって、座部のヘタリ具合を測定することとしている。そして、データ処理機器40は、コンピュータを用いて構成されており、所定のプログラムを実行することで、測定初期段階の荷重が加わったことや、ヘタリ具合の測定値等の、適宜事項を出力するものとなっている。
【0036】
次に、図4に基づいて、本例のクッション性能測定器10によって座席2の座部4のヘタリ具合を測定する使用態様を説明する。
【0037】
まず、踏み台25を基台20に収容した状態で乗物内にクッション性能測定器10を搬入して、基台20のハンドルバー22を手で押して乗物の床面1上を移動させ、測定対象の座席2の前方に位置させる。この時、予め、押圧体35が座部3の上面よりも上方に位置するようにしておく。そして、座席2の座部3の前端面に基台20の前面に設けられた当て座24を当接させて、座席2に対する基台20の前後方向の位置を位置決めする。このような位置決めによって、座部3の前端面からの押圧体35の距離を、常時、一定とすることができる。なお、座席2の幅方向については、目測によって、座部3の左右の中央部分にクッション性能測定器10を位置決めする。
【0038】
ここで、乗物の座席2は、背当4を具備するものが一般的であり、背当4の後方に測定器を置いて座部3のヘタリ具合を測定しようとすると、測定器全体を、背当4を超える高さとしなければならず、大型化するが、本例のクッション性能測定器10のように、座席2の前方に置いて測定できるものとすることで、全体の構造をコンパクトに納めることができる。
【0039】
座席2に対してクッション性能測定器10を位置決めした後は、キャスター21bをロックし、収容状態の踏み台25を展開状態に回動させる。そして、測定者は、踏み台25に乗って、基台20に体重を加えると共に、踏み台25の下面を床面1に接触させることで、クッション性能測定器10を床面1上にて堅固に固定する。
【0040】
次に、基台20の上部の高さ調節ハンドル26aを回動操作して、アーム30を下方向に移動させる。このアーム30を下方向に移動させる操作については、押圧体35が座部3に当接して、さらに、所定の初期荷重が加わるまで継続することとする。そして、押圧体35に所定の初期荷重が加わると、データ処理機器40からその旨が出力表示され、これを確認した測定者は、アーム30を下方向に移動する操作を終了させる。
【0041】
次に、加圧レバー31を下方にゆっくりと回動操作して、押圧体35によって座部3をさらに押圧する。そして、押圧体35を下降限まで下降させた後、加圧レバー31に加えた力を緩めると、押圧体35は、上方向に付勢された昇降軸32と共に自動的に上昇する。このような測定作業にて、押圧体35に加わった最大荷重が計測値としてデータ処理機器40にて出力表示され、この出力表示を確認することで、座部3のヘタリ具合を数値的に確認することができる。また、データ処理機器40では、座席2の種類に応じて、ヘタリ具合の許容限度が設定されており、許容限度を超えていれば、許容限度を超えていることを計測値と共に出力表示し、使用に耐え得るヘタリ具合であれば、許容限度以内であることを計測値と共に出力表示する。また、許容限度以内であっても、十分に使用に耐え得る良好な状態の限度を超えていれば、その旨を計測値と共に出力表示する。なお、データ処理機器40には、測定に先駆けて、当然、座席2の種類に関する情報が入力されており、上述の処理は、入力情報に基づいて行なわれる。
【0042】
上述のように一つの座席2に対する測定を終了すると、測定者は、アーム30を上方向に移動させ、踏み台25から降りて、キャスター21bのロックを解除して、次の測定対象の座席2の前方にクッション性能測定器10を移動させ、この座席2に対する測定を開始する。なお、踏み台25が邪魔にならない程度の移動距離であれば、踏み台25を展開状態のままとしてクッション性能測定器10を移動させる。この時、踏み台25は、床面から僅かに浮いているため、床面1上にて引きずられることなく、クッション性能測定器10を円滑に移動させることができる。
【0043】
このような測定作業を繰返して乗物に設置された多数の座席2に対して測定を行なうのであるが、データ処理機器40は、例えば乗物が列車であれば、車両の号数や座席番号等、個々の座席2を特定できるデータを入力可能となっており、計測値を、個々の座席ごとに記憶するものとして構成されている。よって、測定時ばかりでなく、全ての座席2の測定後に、データ処理機器40に記憶された各座席2の計測値を参照することで、個々の座席2の座部3について、使用に耐え得るか否かを判断することができる。
【0044】
ところで、本例のクッション性能測定器10では、当て座24が、ネジ止めによって基台20に組付けられており、座席2の種類に応じたアタッチメントとして交換可能となっている。そして、基台20の前面からの突出量が異なる適宜の当て座24を用いることで、当て座24の前面に対する押圧体35の距離を変動させることができ、多様な形態の座席2について、座部3のヘタリ具合を測定できるものとなっている。
【0045】
また、基台20の昇降台座26に対してアーム30がネジ止めによって組付けられており、昇降台座26とアーム30との間に、適宜間隔を確保するスペーサを介在させることが可能な構造となっている。よって、スペーサの有無や、スペーサの大きさ(昇降台座26とアーム30との間隔)を変えることでも、当て座24の前面に対する押圧体35の距離を変動させることができ、この構成によっても、多様な形態の座席2について、座部3のヘタリ具合を測定できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】クッション性能測定器の一例を示す左側面図である。
【図2】図1に示したクッション性能測定器の平面図である。
【図3】図1に示したクッション性能測定器の背面図である。
【図4】クッション性能測定器の使用状態を示す左側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 床面
2 座席
3 座部
4 背当
10 クッション性能測定器
20 基台
21a キャスター
21b キャスター
22 ハンドルバー
23 収納部
24 当て座
25 踏み台
25a 固定フック
25b ストッパ
26 昇降台座
26a 高さ調節ハンドル
30 アーム
31 加圧レバー
32 昇降軸
33 荷重計測装置(ロードセル)
34 ユニバーサルジョイント
35 押圧体
40 データ処理機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設置された座席の座部のクッション性能を測定する乗物用座席のクッション性能測定器であって、
キャスターを有し、前記乗物の床面上を移動可能な基台と、
前記基台の前方に突出するアームと、
該アームの先端部分に昇降可能に設けられ、下降することで前記座部の上面を押圧する押圧体と、
該押圧体に加わる荷重を計測する荷重計測装置と
を備えることを特徴とする乗物用座席のクッション性能測定器。
【請求項2】
前記基台は、測定者を乗せる踏み台を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の乗物用座席のクッション性能測定器。
【請求項3】
前記基台は、上下方向に位置調節可能な昇降台座を有し、
前記アームは、前記昇降台座に取付けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用座席のクッション性能測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−2924(P2008−2924A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172108(P2006−172108)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000003517)天龍工業株式会社 (17)
【出願人】(306021181)新幹線エンジニアリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】