説明

乗用型作業車

【課題】キースイッチ以外の操作具の操作に基づいてエンジンを停止させるように構成した場合、エンジンがオーバーヒートの状態になることを防止する。
【解決手段】エンジンの始動及び停止を行うキースイッチ34と、キースイッチ34とは別の操作具と、キースイッチ34がオン操作されている状態において操作具の操作に基づいてエンジンを停止させるエンジン停止手段72を備える。エンジン停止手段72によりエンジンが停止されてもラジエータ30のファン31を回転駆動する電動モータ32を停止させずに継続して作動させる継続手段74を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機や乗用型直播機等の乗用型作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型作業車の一例である乗用型田植機では、特許文献1に開示されているように、走行用の変速装置を操作する変速レバー(別の操作具に相当)の操作経路(中立位置)に、エンジンの停止位置を接続して、キースイッチがオン操作された状態において、変速レバーを停止位置に操作するとエンジンが自動的に停止するように構成されたものがある。この場合、キースイッチがオン操作された状態において、変速レバーを停止位置から別の位置に操作すると、エンジンが自動的に始動するように構成されている。
【0003】
これにより、植付作業中において苗のせ台の苗が少なくなった場合、変速レバーを中立位置に操作して機体を停止させ次に停止位置に操作することにより、キースイッチを操作せずにエンジンを停止させることができるのであり、比較的時間を要する苗のせ台への苗の補給において燃料の節約を図ることができる。苗のせ台への苗の補給を終了すると、変速レバーを停止位置から別の位置に操作することにより、キースイッチを操作せずにエンジンを始動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−94753号公報(図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の乗用型田植機において、例えば泥が硬く且つ深い水田での植付作業等のようにエンジンに大きな負荷が掛かっている状態において、前述のように変速レバーを停止位置に操作してエンジンを停止させた場合、エンジンの冷却も停止すると、エンジンの熱が放出されずにエンジンが一時的にオーバーヒートの状態になることがある。
本発明は、キースイッチがオン操作されている状態においてキースイッチ以外の操作具の操作に基づいてエンジンを停止させるように構成した場合、エンジンがオーバーヒートの状態になることを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、乗用型作業車において次のように構成することにある。
エンジンと、ラジエータと、前記ラジエータに冷却風を供給するファンと、前記ファンを回転駆動する電動モータとをボンネットに収容し、
前記エンジンの始動及び停止を行うキースイッチと、前記キースイッチとは別の操作具と、前記キースイッチがオン操作されている状態において前記操作具の操作に基づいてエンジンを停止させるエンジン停止手段とを備え、
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止されても前記電動モータを停止させずに継続して作動させる継続手段を備えてある。
【0007】
(作用及び発明の効果)
本発明の第1特徴のエンジンは空冷型式ではなく水冷(液冷)型式であり、ラジエータ用のファンはエンジンの動力により直接に駆動されるのではなく、電動モータにより駆動される。
本発明の第1特徴によると、キースイッチとは別の操作具を操作してエンジンが停止されても、ラジエータ用のファンの電動モータは停止せずに作動を継続する。これにより、エンジンが停止されても、電動モータ及びファンによりボンネット内(エンジンの周囲)に外気が供給されるので(又は電動モータ及びファンによりボンネット内(エンジンの周囲)の空気が外部に排出されるので)、エンジンの熱が放出されてエンジンのオーバーヒートを抑えることができるようになり、エンジンのオーバーヒートによる不具合の発生を抑えることができた。
【0008】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の乗用型作業車において次のように構成することにある。
前記ラジエータの冷却水の温度を検出する温度センサーを備え、
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止されてから、前記温度センサーの検出値が設定温度以下になると、前記継続手段を停止させて前記電動モータを停止させる停止手段を備えてある。
【0009】
(作用及び発明の効果)
前項[I]に記載のように、エンジン停止手段によりエンジンが停止されても、ラジエータ用のファンの電動モータが停止せずに作動を継続すると、バッテリの電力の消費が大きくなる。
本発明の第2特徴によると、エンジン停止手段によりエンジンが停止されてから、冷却水の温度(温度センサーの検出値)が設定温度以下になると、電動モータが自動的に停止するので、バッテリの電力が必要以上に消費されることはなく、この後のエンジンの始動の際にバッテリの電力が不足するというような状態を避けることができる。
【0010】
ラジエータの冷却水の温度を検出する温度センサーは、本発明の第2特徴のエンジン停止手段を備えていない乗用型作業車において一般的に装備されているので、このような乗用型作業車に本発明の第2特徴のエンジン停止手段を装備した場合、既存の部材である温度センサーを有効に利用して、本発明の第2特徴の停止手段を構成することができるようになり、構造の簡素化の面でも有利なものとなった。
【0011】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1特徴の乗用型作業車において次のように構成することにある。
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止されてから、設定時間が経過すると、前記継続手段を停止させて前記電動モータを停止させる停止手段を備えてある。
【0012】
(作用及び発明の効果)
前項[I]に記載のように、エンジン停止手段によりエンジンが停止されても、ラジエータ用のファンの電動モータが停止せずに作動を継続すると、バッテリの電力の消費が大きくなる。
本発明の第3特徴によると、エンジン停止手段によりエンジンが停止されてから、設定時間が経過すると、電動モータが自動的に停止するので、バッテリの電力が必要以上に消費されることはなく、この後のエンジンの始動の際にバッテリの電力が不足するというような状態を避けることができた。
【0013】
エンジン停止手段によりエンジンが停止されてからの設定時間は、ソフトウェア等により簡単に計測することができるので、設定時間の計測用の特別な装置を備えなくても本発明の第3特徴の停止手段を構成することができるようになり、構造の簡素化の面でも有利なものとなった。
【0014】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第1特徴の乗用型作業車において次のように構成することにある。
前記ラジエータの冷却水の温度を検出する温度センサーを備え、
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止されてから、前記温度センサーの検出値が設定温度以下になる状態又は設定時間が経過する状態のどちらか早い方の状態になると、前記継続手段を停止させて前記電動モータを停止させる停止手段を備えてある。
【0015】
(作用及び発明の効果)
前項[I]に記載のように、エンジン停止手段によりエンジンが停止されても、ラジエータ用のファンの電動モータが停止せずに作動を継続すると、バッテリの電力の消費が大きくなる。
本発明の第4特徴によると、エンジン停止手段によりエンジンが停止されてから、冷却水の温度(温度センサーの検出値)が設定温度以下になる状態、又は設定時間が経過する状態のどちらか早い方の状態になると、電動モータが自動的に停止する。
【0016】
これにより、バッテリの電力が十分に残されている状態でも(電動モータによるファンの駆動が長い時間に亘って行える状態でも)、冷却水の温度(温度センサーの検出値)が設定温度以下になると電動モータが自動的に停止する点、逆に冷却水の温度(温度センサーの検出値)が設定温度以下にならなくても、設定時間が経過すると電動モータが自動的に停止する点により、バッテリの電力が必要以上に消費されることはなく、バッテリの電力の消費を抑えるという面で有利なものとなった。
【0017】
前項[II]に記載のように、既存の部材である温度センサーを有効に利用して本発明の第4特徴の停止手段を構成することができる点、並びに、前項[III]に記載のように、設定時間の計測用の特別な装置を備えなくても本発明の第4特徴の停止手段を構成することができる点により、構造の簡素化の面でも有利なものとなった。
【0018】
[V]
(構成)
本発明の第5特徴は、本発明の第1〜第4特徴の乗用型作業車うちのいずれか一つにおいて次のように構成することある。
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止されていることを報知する報知手段を備えてある。
【0019】
(作用及び発明の効果)
本発明の第5特徴によると、キースイッチとは別の操作具を操作してエンジンが停止された場合、このことが報知されて、作業者はキースイッチとは別の操作具(エンジン停止手段)によりエンジンが停止したことを認識することができるので、作業者の誤解を少なくして、作業者の誤解に基づく誤操作を抑えることができた。
【0020】
[VI]
(構成)
本発明の第6特徴は、本発明の第5特徴の乗用型作業車において次のように構成することにある。
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止された後、前記継続手段により前記電動モータが継続して作動していることを報知するように、前記報知手段を構成してある。
【0021】
(作用及び発明の効果)
本発明の第6特徴によると、作業者はキースイッチとは別の操作具(エンジン停止手段)によりエンジンが停止した後、電動モータ及びファンが作動を継続した場合、このことが報知されて、作業者は継続手段により電動モータ及びファンが作動を継続していることを認識することができるので、作業者の誤解を少なくして、作業者の誤解に基づく誤操作を抑えることができた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】変速レバー及び案内部材の付近の側面図である。
【図4】変速レバー及び案内部材の付近の正面図である。
【図5】案内部材の平面図である。
【図6】操作パネルのレバーガイドの平面図である。
【図7】変速レバー及びブレーキペダルの付近の側面図である。
【図8】制御系のブロック図である。
【図9】エンジンの停止及び始動操作の流れを示す図である。
【図10】エンジンの停止及び始動操作の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[1]
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体に運転席3が備えられ、油圧シリンダ5により昇降駆動されるリンク機構5が機体の後部に備えられており、リンク機構5を介して6条植型式の苗植付装置4が昇降自在に支持されて、乗用型作業車の一例である乗用型田植機が構成されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、苗植付装置4は、3個の伝動ケース18、伝動ケース18の後部に回転駆動自在に支持された一対の回転ケース19、回転ケース19の両端に備えられた植付アーム20、接地フロート23、6個の苗のせ面を備えて左右方向に往復横送り駆動される苗のせ台21等を備えて構成されている。これにより、苗のせ台21が左右方向に横送り駆動されるのに伴って、植付アーム20が苗のせ台21の下部から苗を取り出して田面に植え付ける。
【0025】
図1及び図8に示すように、右及び左のマーカー47が苗植付装置4の右及び左側部に備えられており、田面に接地して指標を形成する作用姿勢、及び田面から上方に離れた格納姿勢に操作自在に構成されている。右及び左のマーカー47は上下に揺動自在に苗植付装置5に支持されたアーム部47aと、アーム部47aの先端部に自由回転自在に支持された回転体47bとを備えて構成されており、右及び左のマーカー47を作用姿勢及び格納姿勢に操作する右及び左の電動モータ48が備えられている。
【0026】
図1及び図2に示すように、運転席3の後部に、4個の繰り出し部25及びホッパー24が備えられ、運転席3の下側にブロア28が備えられており、接地フロート23に備えられた作溝器27と繰り出し部25とに亘ってホース26が接続されて、施肥装置が構成されている。これにより、ホッパー24に貯留された肥料が繰り出し部25により繰り出されて、ブロア28の風によりホース26から作溝器27に供給され、作溝器27により田面に形成された溝に供給される。
【0027】
[2]
次に、エンジン12の付近の構造について説明する。
図1及び図2に示すように、機体の前部にミッションケース9が備えられ、ミッションケース9に連結されて前方に延出された支持フレーム11に、エンジン12(ディーゼル型式)が支持されており、ミッションケース9の左横側面に静油圧式無段変速装置7が連結されている。ミッションケース9の右及び左横側面に前輪支持ケース8が連結されており、前輪支持ケース8に右及び左の前輪1が操向自在に支持されている。機体の後部に後車軸ケース10がローリング自在に支持されて、後車軸ケース10に右及び左の後輪2が支持されている。
【0028】
図1及び図2に示すように、エンジン12の後側にラジエータ30が左右方向に沿って備えられ、エンジン12とラジエータ30との間に、ラジエータ30に冷却風を供給するファン31と、ファン31を回転駆動する電動モータ32(図8参照)とが備えられている。エンジン12、ラジエータ30、ファン31及び電動モータ32を覆う前部ボンネット13及び後部ボンネット15が備えられており、機体に固定された後部ボンネット15に対して、前部ボンネット13が後方上部の横軸芯(図示せず)周りに上方に開放自在に支持されている。
【0029】
図2に示すように、後部ボンネット15の後面(運転席3側の面)に多数の小さな開口部(図示せず)が形成されている。前部ボンネット13の右及び左横側面に横長のスリット状の開口部13aが形成され、前部ボンネット13の前面にも開口部(図示せず)が形成されている。
【0030】
図1及び図2に示すように、電動モータ32によりファン31が回転駆動されると、外気が冷却風として後部ボンネット15の後面の開口部から前部及び後部ボンネット13,15の内部に吸入されて、ラジエータ30及びファン31を通過し、エンジン12の周囲を通過しながら前部ボンネット13の右及び左横側面の開口部13a、前面の開口部から外部に排出される。エンジン12とラジエータ30との間で冷却水を循環させる冷却水ホンプ(図示せず)が備えられており、冷却水ポンプはエンジン12の動力によって駆動される。
【0031】
図1及び図2に示すように、運転席3と後部ボンネット15との間にステップ16が備えられており、ステップ13の右及び左の前部から前部ボンネット13の右及び左横側に亘って、乗降用のステップ22が延出されている。ステップ22の右及び左横側に予備苗のせ台17が備えられている。
【0032】
[3]
次に、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2、苗植付装置4への伝動系について説明する。
図1に示すように、エンジン12の動力が、ベルト伝動装置46から静油圧式無段変速装置7、ミッションケース9に内装された副変速装置(図示せず)、前輪デフ装置(図示せず)を介して右及び左の前輪1に伝達され、副変速装置から伝動軸49及び後車軸ケース10に内装された右及び左のサイドクラッチ(図示せず)を介して、右及び左の後輪2に伝達される。
【0033】
図1及び図8に示すように、静油圧式無段変速装置7及び副変速装置の間から分岐した動力が、ミッションケース9に内装された株間変速装置(図示せず)及び植付クラッチ43から伝動軸45を介して苗植付装置4に伝達されており、施肥クラッチ44を介して繰り出し部25に伝達されている。
【0034】
図1及び図2に示すように、後部ボンネット15の上部に操作パネル35が備えられており、操作パネル35の左右中央の前部に液晶を使用した表示部36(報知手段に相当)が備えられている。操作パネル35の左右中央後部に、右及び左の前輪1を操向操作する操縦ハンドル14が備えられており、操縦ハンドル14の左横側に静油圧式無段変速装置7を操作する変速レバー29(別の操作具に相当)が備えられ、操縦ハンドル14の右横側にエンジン12の始動及び停止を行うキースイッチ34が備えられている。
【0035】
[4]
次に、苗植付装置4の操作系について説明する。
図2及び図8に示すように、運転席3の右横側に昇降レバー33が備えられて、昇降レバー33は上昇位置、中立位置、下降位置、植付位置及び自動位置に操作自在に構成されており、昇降レバー33の操作位置が制御装置40に入力されている。植付及び施肥クラッチ43,44を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ39が備えられている。
【0036】
図8に示すように、油圧シリンダ5に作動油を給排操作する電磁操作式の制御弁37、中央の接地フロート23の苗植付装置4に対する高さ(田面から苗植付装置4までの高さ)を検出するポテンショメータ型式の高さセンサー38が備えられており、自動昇降制御手段71がソフトウェアとして制御装置40に備えられている。
【0037】
図8に示すように、自動昇降制御手段71の作動状態において、苗植付装置4に対する中央の接地フロート23の高さ(田面(中央の接地フロート23)から苗植付装置4までの高さ)に基づいて、苗植付装置4が田面から設定高さに維持されるように(高さセンサー38の検出値(高さセンサー38と中央の接地フロート23との上下間隔)が設定値に維持されるように)、制御弁37が操作され、油圧シリンダ5が伸縮作動して、苗植付装置4が自動的に昇降する。
【0038】
図8に示すように、昇降レバー33を上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作した状態(昇降レバー33を自動位置に操作していない状態)において、以下の説明のように制御装置40により、制御弁37及び電動モータ39,48が操作されて、油圧シリンダ5、植付及び施肥クラッチ43,44、右及び左のマーカー47が操作される。この場合、後述する[5]に記載の操作レバー50の上昇位置U及び下降位置Dの機能は作動せず、操作レバー50の右及び左マーカー位置R,Lの機能だけが作動する。
【0039】
図8に示すように、昇降レバー33を上昇位置に操作すると、自動昇降制御手段71が停止し、植付及び施肥クラッチ43,44が遮断状態に操作され、右及び左のマーカー47が格納姿勢に操作されて、油圧シリンダ5が収縮作動して苗植付装置4が上昇する。
昇降レバー33を中立位置に操作すると、自動昇降制御手段71が停止し、植付及び施肥クラッチ43,44が遮断状態に操作され、右及び左のマーカー47が格納姿勢に操作された状態で、油圧シリンダ5が停止する。
【0040】
図8に示すように、昇降レバー33を下降位置に操作すると、自動昇降制御手段71が停止し、植付及び施肥クラッチ43,44が遮断状態に操作され、右及び左のマーカー47が格納姿勢に操作された状態で、油圧シリンダ5が伸長作動して苗植付装置4が下降する。次に中央の接地フロート23が田面に接地すると自動昇降制御手段71が作動して、苗植付装置4が田面に接地して停止した状態となる(苗植付装置4が田面から設定高さに維持されるように(高さセンサー38の検出値(高さセンサー38と中央の接地フロート23との上下間隔)が設定値に維持されるように)、苗植付装置4が自動的に昇降する状態)。
【0041】
図8に示すように、昇降レバー33を植付位置に操作すると、右及び左のマーカー47が格納姿勢に操作され、自動昇降制御手段71が作動した状態で、植付及び施肥クラッチ43,44が伝動状態に操作される。
このように、昇降レバー33を上昇位置、中立位置及び下降位置に操作することによって、苗植付装置4を任意の高さに上昇及び下降させて停止させることができる。
【0042】
[5]
次に、操作レバー50について説明する。
図2及び図8に示すように、操縦ハンドル14の下側の右横側に操作レバー50が備えられ、操作レバー50が右の横外方に延出されている。操作レバー50は中立位置Nから上方の上昇位置U、下方の下降位置D、後方の右マーカー位置R及び前方の左マーカー位置Lの十字方向に操作自在に構成されて、中立位置Nに付勢されており、操作レバー50の操作位置が制御装置40に入力されている。
【0043】
昇降レバー33を自動位置に操作した状態において、以下の説明ように、操作レバー50の操作に基づいて、制御装置40により制御弁37及び電動モータ39,48が操作されて、油圧シリンダ5、植付及び施肥クラッチ43,44、右及び左のマーカー47が操作される。
【0044】
図8に示すように、操作レバー50を上昇位置Uに操作すると、植付及び施肥クラッチ43,44が遮断状態に操作されて、自動昇降制御手段71が停止し、油圧シリンダ5が収縮作動して苗植付装置4が上昇し、右及び左のマーカー47が格納姿勢に操作される。
【0045】
図8に示すように、操作レバー50を下降位置Dに操作すると、自動昇降制御手段71が停止し、植付及び施肥クラッチ43,44が遮断状態に操作され、右及び左のマーカー47が格納姿勢に操作された状態で、油圧シリンダ5が伸長作動して苗植付装置4が下降する。次に中央の接地フロート23が田面に接地すると、自動昇降制御手段71が作動して、苗植付装置4が田面に接地して停止した状態となる(苗植付装置4が田面から設定高さに維持されるように(高さセンサー38の検出値(高さセンサー38と中央の接地フロート23との上下間隔)が設定値に維持されるように)、苗植付装置5が自動的に昇降する状態)。
【0046】
前述のように、操作レバー50を下降位置Dに操作して中立位置Nに操作した後に再び下降位置Dに操作すると、自動昇降制御手段71が作動した状態で、植付及び施肥クラッチ43,44が伝動状態に操作される。
【0047】
図8に示すように、機体に対するリンク機構6の上下角度を検出するポテンショメータ型式の高さセンサー54が備えられており、高さセンサー54の検出値により機体に対する苗植付装置4の高さを検出することができる。
これにより、機体に対する苗植付装置4の高さが事前に設定された所定高さよりも低い状態において、制御装置40により以下のような操作が行われる。
【0048】
図8に示すように、右(左)のマーカー47が格納姿勢に操作された状態において、操作レバー50を右マーカー位置R(左マーカー位置L)に第1所定時間(比較的短い時間)に亘って操作すると、右(左)のマーカー47が作用姿勢に操作される。
右(左)のマーカー47が作用姿勢に操作された状態において、操作レバー50を右マーカー位置R(左マーカー位置L)に第2所定時間(前述の第1所定時間よりも長い時間)に亘って操作すると、右(左)のマーカー47が格納姿勢に操作される。
【0049】
図8に示すように、苗植付装置4が上昇して、機体に対する苗植付装置4の高さが事前に設定された所定高さよりも高くなると、作用姿勢の右及び左のマーカー47が格納姿勢に操作される。機体に対する苗植付装置4の高さが事前に設定された所定高さよりも高い状態では、前述のように操作レバー50を右及び左マーカー位置R,Lに操作しても、これに関係なく右及び左のマーカー47が格納姿勢に維持される。
【0050】
[6]
次に、静油圧式無段変速装置7の操作系について説明する。
図3及び図4に示すように、静油圧式無段変速装置7は中立位置、前進の高速側及び後進の高速側に無段階に変速自在に構成されている。後部ボンネット15の内部において、操縦ハンドル14を支持するハンドルポスト65にフレーム56が連結され、フレーム56の横軸芯P1周りに操作軸57が回転自在に支持されている。変速レバー29の基部29bに、丸棒材を側面視でL字状に折り曲げた操作部29aが連結されている。操作軸57の端部に扇型の変速部材58が連結されて、変速部材58のブラケット58aの前後軸芯P2周りに、変速レバー29の操作部29aが揺動自在に支持されており、変速レバー29が操作パネル35のレバーガイド41を通って上方に延出されている。
【0051】
図3及び図4に示すように、後部ボンネット15の内部の横軸芯P3周りに、連係部材60が揺動自在に支持されており、変速部材58と連係部材60とに亘って連係ロッド61が接続されている。静油圧式無段変速装置7のトラニオン軸62に操作アーム63が連結されて、操作アーム63と連係部材60とに亘って連係ロッド64が接続されている。フレーム56に平板状の案内部材55が固定されて、案内部材55に板バネ部材68が片持ち状に支持されており、板バネ部材68の先端のローラー68aが変速部材58の下部に形成された複数の凹部58bの一つに係合している。
【0052】
図3及び図6に示すように、操作パネル35にレバーガイド41が開口されており、レバーガイド41は左右方向の中立経路41N、中立経路41Nの操縦ハンドル14の側の端部から前方に延出された前進経路41F、及び中立経路41Nの操縦ハンドル14の反対側の端部から後方に延出された後進経路41Rを備えて構成されている。
【0053】
これにより、図3及び図6に示すように、変速レバー29をレバーガイド41の中立経路41Nに操作すると、静油圧式無段変速装置7が中立位置に操作される。静油圧式無段変速装置7が中立位置に操作されると、静油圧式無段変速装置7においてエンジン12の動力が遮断された状態となるのであり、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2、苗植付装置4への動力が遮断されて、機体は停止する。
【0054】
図3及び図6に示すように、変速レバー29をレバーガイド41の前進経路41Fに沿って前方に操作すると、静油圧式無段変速装置7が前進の高速側に操作され、変速レバー29をレバーガイド41の後進経路41Rに沿って後方に操作すると、静油圧式無段変速装置7が後進の高速側に操作される。レバーガイド41の中立経路41N、前進及び後進経路41F,41Rにおいて、板バネ部材68のローラー68aが変速部材58の凹部58bの一つに係合することにより、変速レバー29が所望の位置に保持される。
【0055】
[7]
次に、ブレーキ42について説明する。
図7に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2を制動可能なブレーキ42がミッションケース9の内部に備えられている。ステップ16の下側に支持軸84が回転自在に支持され、支持軸84に連結されたブレーキペダル52が右のステップ22から上方に突出しており、ブレーキペダル52とブレーキ42とに亘って連係ロッド80が接続されている。
【0056】
図7に示す状態は、ブレーキペダル52を踏み込み操作していない解除位置の状態であり、図7に示す状態からブレーキペダル52を制動位置に踏み込み操作すると、ブレーキ42が制動状態に操作されるのであり、ブレーキペダル52から足を離すと戻しバネ(図示せず)により、ブレーキペダル52は解除位置に戻る。
【0057】
図7に示すように、支持軸84に操作アーム85が連結されて、操作アーム85の上端にボス部86が横軸芯P4周りに回転自在に支持されている。後部ボンネット15の内部の横軸芯P5周りに操作アーム81が揺動自在に支持されており、操作アーム81に接続された連係ロッド87がボス部86に挿入され、ボス部86と連係ロッド87との間に融通用のバネ88が取り付けられている。
【0058】
図7に示すように、操作アーム81の横軸芯P6周りに補助アーム81aが揺動自在に支持されており、補助アーム81aの端部に備えられたボルト81bを操作アーム81に接当させてボルト81の突出量を調節することにより、操作アーム81における補助アーム81aの姿勢を微調節することができる。連係部材60において操作アーム81及び補助アーム81aに対向する位置に、ピン60a,60bが固定されている。
【0059】
図7に示す状態は、変速レバー29をレバーガイド41の前進経路41Fに操作した状態(静油圧式無段変速装置7が前進の高速側に操作された状態)であり、ブレーキペダル52が解除状態である。連係部材60のピン60aが操作アーム81に接近しており、連係部材60のピン60bが操作アーム81の補助アーム81aから離れている。
【0060】
図7に示す状態からブレーキペダル52を制動位置に踏み込み操作すると、操作アーム81(補助アーム81a)が図7の紙面時計方向に揺動して、操作アーム81が連係部材60のピン60aに接当し、バネ88が圧縮されながら操作アーム81により連係部材60が図7の紙面反時計方向に揺動して、連係部材60のピン60bが操作アーム81の補助アーム81aに接当し、連係部材60及び操作アーム81(補助アーム81a)が停止する。この連係部材60及び操作アーム81(補助アーム81a)が停止した位置において、変速レバー29がレバーガイド41の中立経路41Nに位置するのであり、静油圧式無段変速装置7が中立位置に戻されたことになる。
【0061】
逆に変速レバー29をレバーガイド41の後進経路41Rに操作した状態(静油圧式無段変速装置7が後進の高速側に操作された状態)では、連係部材60のピン60aが操作アーム81から離れており、連係部材60のピン60bが操作アーム81の補助アーム81aに接近している。
【0062】
この状態においてブレーキペダル52を制動位置に踏み込み操作すると、操作アーム81(補助アーム81a)が図7の紙面時計方向に揺動して、操作アーム81の補助アーム81aが連係部材60のピン60bに接当し、バネ88が圧縮されながら操作アーム81の補助アーム81aにより連係部材60が図7の紙面時計方向に揺動して、連係部材60のピン60aが操作アーム81に接当し、連係部材60及び操作アーム81(補助アーム81a)が停止する。この連係部材60及び操作アーム81(補助アーム81a)が停止した位置において、変速レバー29がレバーガイド41の中立経路41Nに位置するのであり、静油圧式無段変速装置7が中立位置に戻されたことになる。
【0063】
[8]
次に、レバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)について説明する。
図5に示すように、案内部材55に左右方向の中立経路55N、中立経路55Nの操縦ハンドル14の側の端部から前方に延出された後進経路55R、及び中立経路55Nの操縦ハンドル14の反対側の端部から後方に延出された前進経路55Fが開口されている。
【0064】
図3,4,5に示すように、変速レバー29の操作部29aが下方に延出されて案内部材55の中立経路55N、前進及び後進経路55F,55Rに挿入されている。変速レバー29の操作部29aにバネ70が取り付けられて、バネ70により変速レバー29が操縦ハンドル14の側(図4の紙面左方)に付勢されている(変速レバー29の操作部29aがハンドルポスト65から離れる側(図4の紙面右方)に付勢されている。
【0065】
図4及び図5に示すように、案内部材55において、中立経路55Nの操縦ハンドル14の反対側の端部からさらに操縦ハンドル14の反対側に停止位置55Sが形成されており、変速レバー29の操作部29aが停止位置55Sに位置することを検出するリミットスイッチ型式の停止位置センサー51が、案内部材55に備えられている。図6に示すようにレバーガイド41において、中立経路41Nの操縦ハンドル14の側の端部からさらに操縦ハンドル14の側に停止位置41Sが形成されている。
【0066】
この場合、図3及び図4に示すように、変速レバー29が横軸芯P1及び前後軸芯P2周りに揺動自在に支持されているので、変速レバー29の上部の動作と変速レバー29の操作部29aの動作とが逆になる為、レバーガイド41の前進及び後進経路41F,41R、停止位置41Sと、案内部材55の前進及び後進経路55F,55R、停止位置55Sとが、互いに逆の位置関係となっている。図4及び図5に示すように、板バネを折り曲げて形成されたデテント部材53が案内部材55に取り付けられており、デテント部材53が案内部材55の中立経路55Nと停止位置55Sとの間に入りこんでいる。
【0067】
図5及び図6に示すように、変速レバー29(操作部29a)をレバーガイド41の中立経路41N(案内部材55の中立経路55N)に位置させている状態において、変速レバー29(操作部29a)は、デテント部材53に接当する位置(停止位置41S(55S)の手前の位置)に位置している。この場合、デテント部材53の付勢力がバネ70の付勢力よりも大きいことによって、変速レバー29(操作部29a)が、デテント部材53を押し退けてレバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)に入り込むことはない。
【0068】
[9]
次に、エンジン12の始動及び停止の制御の前半について、図9及び図10に基づいて説明する。
図8に示すように、エンジン12を始動させるスタータ59、エンジン12への燃料を遮断してエンジン12を停止させる電磁操作式の燃料遮断弁66、ブレーキペダル52が制動位置に踏み込み操作されたことを検出するリミットスイッチ型式の操作位置センサー67(図7参照)、ラジエータ30の冷却水の温度を検出する温度センサー83が備えられている。
【0069】
制御装置40や電動モータ39,48、スタータ59等に電力を供給するバッテリ(図示せず)が運転席3の下側に備えられている。エンジン12にオルタネータ(図示せず)が連結されて、エンジン12の動力によりオルタネータが駆動されるのであり、オルタネータによりバッテリが充電される。
【0070】
図1,2,8に示すように、前部ボンネット13の前部に備えられたセンターマスコット69の上端部に、第1発光部82a、第2発光部82b、第3発光部82c、第4発光部82dが備えられている。第1〜第4発光部82a〜82dはLED又は電球によって構成されて後側の運転席3に向いており、運転席3から見て最上部の第1発光部82a、第1発光部82aの下側の第2発光部82b、第2発光部82bの下側の左側の第3発光部82c、第2発光部82bの下側の右側の第4発光部82dという配置となっている。
【0071】
図8に示すように、エンジン停止手段72、エンジン始動手段73、継続手段74及び停止手段75が制御装置40にソフトウェアとして備えられている。これによりキースイッチ34の操作位置(OFF位置、ON位置、スタート位置)、停止位置センサー51、操作位置センサー67及び温度センサー83の検出信号に基づいて、以下の説明のように制御装置40(エンジン停止手段72、エンジン始動手段73、継続手段74及び停止手段75)により、スタータ59及び燃料遮断弁66、電動モータ32、表示部36、第1〜第4発光部82a〜82dが操作される。
【0072】
図9に示すように、エンジン12が停止した状態においてキースイッチ34をON位置に操作すると(ステップS1)、第1〜第4発光部82a〜82dが設定時間だけ点灯して消灯する(ステップS2,S3)。これは、第1〜第4発光部82a〜82dの作動をチェックする為である。
【0073】
次にキースイッチ34をスタート位置に操作すると(ステップS1)、スタータ59によりエンジン12の始動操作が行われ(ステップS4)、電動モータ32によりファン31が駆動される(ステップS5)。キースイッチ34をOFF位置に操作すると(ステップS1)、燃料遮断弁66によりエンジン12の停止操作が行われ(ステップS6)、ファン31が停止する(ステップS7)。
【0074】
[10]
次に、エンジン12の始動及び停止の制御の中半について、図9及び図10に基づいて説明する。
前項[9]に記載のように、キースイッチ34をON位置からスタート位置に操作してエンジン12を始動させた後、キースイッチ34をON位置に戻し操作したとする。(ステップS1,S2)。この状態において変速レバー29を、レバーガイド41の中立経路41N(案内部材55の中立経路55N)に操作し(この時点において、静油圧式無段変速装置7が中立位置に操作されて機体は停止する)、レバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)に操作したとする(ステップS4)。
【0075】
変速レバー29がレバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)に操作されると(ステップS8)、タイマーのカウントが開始され(ステップS9)、第1設定時間T1が経過すると(ステップS11)、制御装置40(エンジン停止手段72)及び燃料遮断弁66によりエンジン12の停止操作が行われる(ステップS12)。
この場合、第1設定時間T1が経過するまでに、変速レバー29がレバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)から別の位置に操作されると、エンジン12の停止操作は行われない(ステップS10)。
【0076】
前述のようにしてエンジン12の停止操作が行われると、第1〜第4発光部82a〜82dが点滅を開始し(ステップS13)、変速レバー29がレバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)に操作されたことによりエンジン12の停止操作が行われたことが、表示部36に表示される(ステップS14)。
【0077】
前述のようにエンジン12の停止操作が行われても、制御装置40(継続手段74)により電動モータ32の作動が維持され、ファン31の駆動が維持される。この場合、エンジン12の停止操作は行われたが、電動モータ32の作動及びファン31の駆動が維持されていることが表示部36に表示される(ステップS14)。
【0078】
エンジン12の停止操作が行われると冷却水ポンプも停止することになるが、ファン31の駆動が維持されるので、外気が冷却風として後部ボンネット15の後面の開口部から前部及び後部ボンネット13,15の内部に吸入されて、ラジエータ30及びファン31を通過し、エンジン12の周囲を通過しながら前部ボンネット13の右及び左横側面の開口部13a、前面の開口部から外部に排出される。
これにより、前部及び後部ボンネット13,15の内部(エンジン12の周囲)に外気が供給され、前部及び後部ボンネット13,15の内部(エンジン12の周囲)の空気が外部に排出されることになるので、エンジン12の熱が放出されてエンジン12のオーバーヒートが抑えられる。
【0079】
前述のようにエンジン12の停止操作が行われると、タイマーのカウントが開始され(ステップS15)、温度センサー83により冷却水の温度が検出される。
これにより、冷却水の温度が設定温度以下になる状態(エンジン12の温度が十分に低下する状態)(ステップS16)、又は第2設定時間T2が経過する状態のどちらか早い方の状態になると(ステップS17)、制御装置40(停止手段75)により電動モータ32が停止されて、ファン31が停止する(ステップS18)。これと同時に、表示部36において、電動モータ32の作動及びファン31の駆動が維持されていることの表示が消える(ステップS19)。
この場合、第1及び第2設定時間T1,T2が同じ長さに設定されるか、又は第1設定時間T1よりも第2設定時間T2が長いものに設定されている。
【0080】
[11]
次に、エンジン12の始動及び停止の制御の後半について、図9及び図10に基づいて説明する。
前項[10]に記載のように、エンジン12が停止操作された状態において、変速レバー29がレバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)以外の位置に操作され(ステップS21)、且つ、ブレーキペダル52が制動位置に踏み込み操作されると(ステップS22)、制御装置40(エンジン始動手段73)及びスタータ59により、エンジン12の始動操作が行われるのであり(ステップS23)、ステップS18によりファン31が停止していると、電動モータ32によりファン31が駆動される(ステップS24)。
【0081】
前述のようにエンジン12の始動操作が行われると、第1〜第4発光部82a〜82dが消灯し(ステップS25)、表示部36において、変速レバー29がレバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)に操作されたことによりエンジン12の停止操作が行われたことの表示が消える(ステップS26)。
【0082】
前項[10]に記載のように、エンジン12が停止操作された状態において、変速レバー29をレバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)以外の位置に操作したり、ブレーキペダル52を制動位置に踏み込み操作したりしなくても、キースイッチ34をスタート位置に操作すると(ステップS20)、ステップS23に移行して、制御装置40(エンジン始動手段73)及びスタータ59により、エンジン12の始動操作が行われる。
【0083】
[12]
次に、第1〜第4発光部82a〜82dの作動について説明する。
(1)
苗のせ台21に載置された苗が設定量以下に少なくなった状態、ホッパー24に貯留された肥料が設定量以下に少なくなった状態、作溝器27に肥料の詰まりが発生した状態、昇降レバー33又は操作レバー50により植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が遮断状態に操作された状態のうちの少なくとも一つの状態が検出された状態において、昇降レバー33又は操作レバー50により苗植付装置4の下降が行われると第1発光部82aが点滅する。
この場合、昇降レバー33又は操作レバー50により植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が遮断状態に操作された状態を、前述の条件から外してもよい。
【0084】
(2)
昇降レバー33又は操作レバー50により植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が伝動状態に操作されると、第2発光部82bが点灯し、昇降レバー33又は操作レバー50により植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が遮断状態に操作されると、第2発光部82bが消灯する。
【0085】
(3)
操作レバー50により左のマーカー47が作用姿勢に操作されると、第3発光部82cが点灯し、操作レバー50又は苗植付装置4の上昇により左のマーカー47が格納姿勢に操作されると、第3発光部82cが消灯する。
操作レバー50により右のマーカー47が作用姿勢に操作されると、第4発光部82dが点灯し、操作レバー50又は苗植付装置4の上昇により右のマーカー47が格納姿勢に操作されると、第4発光部82dが消灯する。
【0086】
(4)
乗用型田植機では、一つの圃場において一回の植付行程が終了して機体が畦際に達すると、植付クラッチ43(施肥クラッチ44)を遮断状態に操作して苗植付装置4を田面から上昇させ、畦際で約180度の旋回を行い、次に苗植付装置4を田面に下降させ、植付クラッチ43(施肥クラッチ44)を伝動状態に操作して次の植付行程に入る。
【0087】
この場合、機体が畦際に達して運転者が植付クラッチ43(施肥クラッチ44)を遮断状態に操作した後、畦際での旋回が終了して運転者が苗植付装置4を田面に下降させた状態において、機体が畦際に達した際に植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が遮断状態に操作された位置に苗植付装置4が達すると、植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が自動的に伝動状態に操作される自動操作手段を備えることがある。これにより、畦際において苗の植え終わりの位置と苗の植え始めの位置が揃えられる。
【0088】
前述のような自動操作手段を備えた場合、自動操作手段を作動させる作動状態と自動操作手段を作動させない停止状態とに手動で切換自在に構成されており、以下に示す(4)−1,2,3のうちのいずれかに記載のように構成される。
(4)−1
自動操作手段の作動状態が設定されると、植付クラッチ43(施肥クラッチ44)の伝動及び遮断状態に関係なく、第2発光部82bが点灯する。自動操作手段の作動状態において、一回の植付行程が終了して機体が畦際に達し、運転者が植付クラッチ43(施肥クラッチ44)を遮断状態に操作すると、第2発光部82bが点滅する。畦際での旋回が終了して自動操作手段により植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が伝動状態に操作されると、第2発光部82bが点灯する状態に戻る。
【0089】
(4)−2
自動操作手段の停止状態が設定されると、前項(2)の記載の内容が行われる。
自動操作手段の作動状態が設定された状態において、植付行程で植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が伝動状態に操作されていると、第2発光部82bが点灯する。一回の植付行程が終了して機体が畦際に達し、運転者が植付クラッチ43(施肥クラッチ44)を遮断状態に操作すると、第2発光部82bが点滅する。畦際での旋回が終了して自動操作手段により植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が伝動状態に操作されると、第2発光部82bが点灯する状態に戻る。
【0090】
(4)−3
自動操作手段の停止状態が設定されると、前項(2)の記載の内容が行われる。
自動操作手段の作動状態が設定された状態において、植付行程で植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が伝動状態に操作されていると、第2発光部82bが消灯する。一回の植付行程が終了して機体が畦際に達し、運転者が植付クラッチ43(施肥クラッチ44)を遮断状態に操作すると、第2発光部82bが点滅する。畦際での旋回が終了して自動操作手段により植付クラッチ43(施肥クラッチ44)が伝動状態に操作されると、第2発光部82bが消灯する状態に戻る。
【0091】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための形態]の図10において、ステップS15,S17を削除することにより、エンジン12の停止操作が行われた状態において、冷却水の温度が設定温度以下になると(エンジン12の温度が十分に低下すると)(ステップS16)、制御装置40(停止手段75)により電動モータ32が停止されて、ファン31が停止するように構成してもよい(ステップS18)。
【0092】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための形態]の図10において、ステップS16を削除することにより、エンジン12の停止操作が行われると、タイマーのカウントが開始され(ステップS15)、第2設定時間T2が経過すると(ステップS17)、制御装置40(停止手段75)により電動モータ32が停止されて、ファン31が停止するように構成してもよい(ステップS18)。
【0093】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]において、以下に示す牽制手段を制御装置40に備えてもよい。
バッテリに残されている電力(バッテリ容量)(バッテリ電圧)を検出する容量センサー(図示せず)を備える。
【0094】
冷却水の温度(温度センサー83の検出値)が設定温度よりも高いか、又は容量センサーの検出値が設定値以下(バッテリに残された電力(容量)が少なくなっている状態)であると、図9のステップS8〜S11において、変速レバー29がレバーガイド41の中立経路41N(案内部材55の中立経路55N)に操作されて、第1設定時間T1が経過しても、牽制手段によりステップS12に移行せず、エンジン12の停止操作が行われない。
【0095】
この場合、冷却水の温度(温度センサー83の検出値)が設定温度よりも高いか、又は容量センサーの検出値が設定値以下(バッテリに残された電力(バッテリ容量)(バッテリ電圧)が少なくなっている状態)であることにより、エンジン12の停止操作が行われないことが、表示部36に表示される。
【0096】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第3別形態]において、液晶を使用した表示部36に代えて(又は表示部36の表示に加えて)、スピーカ(報知手段に相当)(図示せず)により、変速レバー29がレバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)に操作されたことによりエンジン12の停止操作が行われたこと等を報知するように構成してもよい。
【0097】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第4別形態]において、ディーゼル型式のエンジン12に代えてガソリン型式のエンジン12を使用した場合、制御装置40(エンジン停止手段72)がエンジン12の点火プラグの電装系を遮断することにより、エンジン12の停止操作を行うように構成してもよい。
【0098】
[発明の実施の第6別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第5別形態]において、エンジン12の動力により冷却水ポンプが駆動されるのではなく、ファン31の電動モータ32や、この電動モータ32とは別の電動モータ(図示せず)により、冷却水ポンプが駆動されるように構成してもよい。
これにより、図10のステップS12〜S18において、エンジン12の停止操作中にファン31に加えて冷却水ポンプも駆動されるように構成することができ、エンジン12の冷却を促進させることができる。
【0099】
[発明の実施の第7別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第6別形態]において、変速レバー29をレバーガイド41の停止位置41S(案内部材55の停止位置55S)に操作することによりエンジン12の停止操作が行われる構成に代えて、以下の(1)〜(6)に記載の操作によりエンジン12の停止操作が行われるように構成してもよい。
【0100】
(1)変速レバー29がレバーガイド41の中立経路41N(案内部材55の中立経路55N)に操作されること。
(2)レバーガイド41の前進又は後進経路41F,41R(案内部材55の前進又は後進経路55F,55R)の一部に停止位置41S,55Sを接続して、変速レバー29(操作部29a)がこの停止位置41S(55S)に操作されること。
(3)変速レバー29とは別の副変速レバー(別の操作具に相当)(図示せず)が中立位置に操作されること。
(4)ブレーキペダル52(別の操作具に相当)が制動位置に設定時間以上に亘って保持されること。
(5)エンジン12から前輪1及び後輪2、苗植付装置4への伝動系において、最もエンジン12に近い位置に主クラッチ(図示せず)を備え、主クラッチを操作するクラッチペダル(別の操作具に相当)(図示せず)を備えて、クラッチペダルにより主クラッチが遮断状態に操作されること。
(6)キースイッチ34とは別のエンジン12を停止操作する専用のエンジン停止スイッチ(別の操作具に相当)(図示せず)を備え、このエンジン停止スイッチが操作されること。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、乗用型田植機ばかりではなく、機体の後部に直播装置を備えた乗用型直播機等の乗用型作業車や、運転席の下側にエンジンを備えた乗用型作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0102】
12 エンジン
13 ボンネット(前部ボンネット)
15 ボンネット(後部ボンネット)
29 別の操作具
30 ラジエータ
31 ファン
32 電動モータ
34 キースイッチ
36 報知手段
72 エンジン停止手段
74 継続手段
75 停止手段
83 温度センサー
T2 設定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、ラジエータと、前記ラジエータに冷却風を供給するファンと、前記ファンを回転駆動する電動モータとをボンネットに収容し、
前記エンジンの始動及び停止を行うキースイッチと、前記キースイッチとは別の操作具と、前記キースイッチがオン操作されている状態において前記操作具の操作に基づいてエンジンを停止させるエンジン停止手段とを備え、
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止されても前記電動モータを停止させずに継続して作動させる継続手段を備えてある乗用型作業車。
【請求項2】
前記ラジエータの冷却水の温度を検出する温度センサーを備え、
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止されてから、前記温度センサーの検出値が設定温度以下になると、前記継続手段を停止させて前記電動モータを停止させる停止手段を備えてある請求項1記載の乗用型作業車。
【請求項3】
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止されてから、設定時間が経過すると、前記継続手段を停止させて前記電動モータを停止させる停止手段を備えてある請求項1記載の乗用型作業車。
【請求項4】
前記ラジエータの冷却水の温度を検出する温度センサーを備え、
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止されてから、前記温度センサーの検出値が設定温度以下になる状態又は設定時間が経過する状態のどちらか早い方の状態になると、前記継続手段を停止させて前記電動モータを停止させる停止手段を備えてある請求項1記載の乗用型作業車。
【請求項5】
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止されていることを報知する報知手段を備えてある請求項1〜4のうちのいずれか一つに記載の乗用型作業車。
【請求項6】
前記エンジン停止手段により前記エンジンが停止された後、前記継続手段により前記電動モータが継続して作動していることを報知するように、前記報知手段を構成してある請求項5記載の乗用型作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−79040(P2013−79040A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221197(P2011−221197)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】