乗用型田植機
【課題】ボンネットカバーの後端面と、その後方に続くカバー部材の前端面とが正確に当接し、エンジンルーム内の密閉性が高いと共に、その外観の良い乗用型田植機を提供する。
【解決手段】エンジンルームは、ボンネットカバー9,パネルカバー56及びパネルリヤカバー55によって覆われていると共に、ハンドルポスト57の前方側では、機体上方側に延設された取付けフレーム60がL字状のブラケット59を介して機体に取付けられている。取付けフレーム60は、その先端に一対の突起部62を備えたブラケット61を支持しており、ボンネットカバー9は、突起部62を中心に回動して開閉可能に設けられている。また、取付けフレーム60には、パネルリヤカバー55の前端側も取付けられており、ボンネットカバー9の後端面9aと、パネルリヤカバー55の前端面55aとは、取付けフレーム60の側方で当接する。
【解決手段】エンジンルームは、ボンネットカバー9,パネルカバー56及びパネルリヤカバー55によって覆われていると共に、ハンドルポスト57の前方側では、機体上方側に延設された取付けフレーム60がL字状のブラケット59を介して機体に取付けられている。取付けフレーム60は、その先端に一対の突起部62を備えたブラケット61を支持しており、ボンネットカバー9は、突起部62を中心に回動して開閉可能に設けられている。また、取付けフレーム60には、パネルリヤカバー55の前端側も取付けられており、ボンネットカバー9の後端面9aと、パネルリヤカバー55の前端面55aとは、取付けフレーム60の側方で当接する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を圃場に移植する乗用型田植機に係り、詳しくは、エンジンが収納されるエンジンルーム周りのカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用型田植機は、機体の前方にエンジンを配置すると共に、その後方には、スピードメータ及びタコメータなどが配置される表示部や、操作ハンドルなどからなる運転操作部が設けられている。これらエンジン及び運転操作部は、カバーによって覆われていると共に、該カバーの内、エンジンルームを覆うボンネットは、開閉自在に構成されている。
【0003】
従来、上記ボンネット及びカバーを、合成樹脂によって形成する共に、上部ボンネット部36、前部ボンネット部37及び後部ボンネット部38に分割して構成した乗用型田植機が案出されている(特許文献1参照)。
【0004】
上記後部ボンネット部38は、操作ハンドル(操縦ハンドル)11のハンドルポスト40の下方部分を覆っており、この後部ボンネット部38の上部には、上部ボンネット部36が取付けられている。また、上部ボンネット部36の前部には、一対の支持ピン36aが設けられており、エンジンを覆う前部ボンネット部37は、この支持ピン36aに、C字状に形成された保持部が嵌められることによって、支持ピン36aを中心として上下に開閉自在に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−185148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載のように、エンジンルームを覆うボンネットカバーが、その後方に続くカバー部材に回転自在に支持されていると、カバーの加工誤差や歪みによって、ボンネットの後端面と、カバー部材の前端面とが揃わず、エンジンルームの密閉性が損なわれて、雨水や圃状から撥ねた泥水などがエンジンルームに入り易くなってしまうと共に、外観が損なわれる虞がある。
【0007】
特に、カバー部材が樹脂により形成されている場合、樹脂は熱膨張係数が大きいため成形後に周囲の温度変化によって膨張したり、成形時に生じる熱歪及び残留応力などにより変形したり、をすることがある。
【0008】
そこで、本発明は、開閉するボンネットカバーの回動支点に支持すると共に、閉じた状態のボンネットカバーに続くカバー部材を取付ける取付けフレームを設けることによって、上記課題を解決した乗用田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、走行車輪(2,3)に支持された機体(5)と、前記機体(5)に搭載されたエンジンと、前記エンジンを収納するエンジンルーム(53)を覆うと共に開閉自在に設けられたボンネットカバー(9)と、閉じた状態の前記ボンネットカバー(9)と連続するカバー部材(55)と、を備えた乗用型田植機(1)において、
前記機体(5)に取付けフレーム(60)を固定し、
該取付けフレーム(60)に、前記ボンネットカバー(9)を回動自在に支持する枢支部材(61,62)を配置すると共に、前記カバー部材(55,56)を取付け、
閉じた状態の前記ボンネットカバー(9)の後端面(9a)と前記カバー部材(55)の前端面(55a)とを、前記取付けフレーム(60)を介して連続するように構成した、
ことを特徴とする乗用型田植機にある。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記カバー部材(55)は、前記取付けフレーム(60)に嵌合する取付部(69)を有すると共に、
前記取付けフレーム(69)の側方で、前記ボンネットカバー(9)の後端面(9a)と、前記カバー部材(55)の前端面(55a)とが当接するようにした、
請求項1記載の乗用型田植機(1)にある。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記エンジンルームの側方に、上方を作業者が移動可能なステップ(17)を形成し、
該ステップ(17)の上面に敷設されたステップマット(39)の前記エンジンルーム側の側縁部(39a)に、前記ボンネットカバー(9)及びカバー部材(55)の下端部が嵌る溝(71)を設けた、
請求項1又は2記載の乗用型田植機(1)にある。
【0012】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、ボンネットカバーを取付けフレームに配置した枢支部材により回転自在に支持して、後方のカバー部材に回動支点を形成しないように構成したことによって、ボンネットカバーの取付け精度を向上させることができる。また、ボンネットカバーの後方に続くカバー部材を、上記取付けフレームに取付けることによりカバー部材の膨張などの変形を抑えることができる。ボンネットカバーの取付け精度が向上すると共に、カバー部材の変形が抑えられることによって、ボンネットカバーが閉じた状態でボンネットカバーの後端面と、カバー部材の前端面と、が正確に合わさり、エンジンルームの密閉性の向上を図ることができると共に、乗用田植え機の外観も向上する。
【0014】
請求項2に係る発明によると、カバー部材に取付けフレームに嵌合する取付部を設けたことにより、カバー部材を容易に取付けフレームに取付けることが出来る。また、ボンネットカバーの後端面と、カバー部材の前端面とを、取付けフレームの側方で当接するように構成したことによって、カバー部材の前端面側を、取付けフレームによって効果的に規制することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、ステップマットに溝部を設け、該溝部にボンネットカバー及びカバー部材の下端部を嵌るようにしたことにより、ステップマットが捲れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の側面図。
【図2】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の平面図。
【図3】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の機体の組立図。
【図4】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の機体の平面図。
【図5】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の機体の斜視図。
【図6】本願発明の実施の形態に係る後部サイドステップの取付部を示す要部拡大図。
【図7】本願発明の実施の形態に係るフロントステップの組立図。
【図8】本願発明の実施の形態に係るフロントステップの底面斜視図。
【図9】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の機体の側面図。
【図10】本願発明の実施の形態に係るエンジンルーム周りの構造を示す斜視図。
【図11】本願発明の実施の形態に係る機体のボンネットカバーが開いた状態を示す斜視図。
【図12】本願発明の実施の形態に係るフロアマット構造を示す要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[乗用型田植機の概略構成]
以下、本願発明に係る乗用田植え機について図面に基づいて説明をする。乗用田植え機1は、図1及び2に示すように、それぞれ左右一対の前輪2,2及び後輪3,3からなる走行車輪に支持された走行機体(機体)5を有しており、その後方には昇降リンク6を介して植付部7が昇降自在に取付けられている。上記走行機体5の前方には、ボンネットカバー9に覆われたエンジン(不図示)が搭載されていると共に、エンジンの後方には、ステアリングハンドル11及びメータパネル12などからなる運転操作部13と、作業者が着座する運転座席15と、からなる運転席16が設けられている。
【0018】
また、図3に示すように、上記走行機体5には、上方を作業者が移動可能な床面を形成する複数のステップ17,23,25,26,27が設けられており、このステップは、機体前端から運転操作部13の後端に亘ってエンジン(エンジンルーム53)の左右側方に設けられたフロントステップ(ステップ)17と、運転座席15の前方の床面を形成するフロアステップ23と、該フロアステップ23の側方に配設された左右のサイドステップ25,25と、運転座席15の左右側方に位置し、フロアステップ23及びサイドステップ25よりも一段高く形成された後部サイドステップ26,26と、左右の後部サイドステップ26,26の間かつ運転座席15の後方側に設けられたリヤセンターステップ27と、から構成されている。
【0019】
[ステップの構成]
ついで、上記ステップの構成について詳しく説明をする。図3及び図4に示すように、走行機体5の機体フレーム19は、機体中央部において、前後に延設された左右一対のメインフレーム29,29と、これら左右のメインフレーム29,29から機体幅方向に延びる複数の第1サブフレーム30と、第1サブフレーム30と交差して連結すると共に機体前後方向に延びる第2サブフレーム31と、フロアステップ23及びサイドステップ25の外周を囲う外枠32と、を有しており、上記フロントステップ17は、該外枠32から機体前方に延設された前部フレーム33に設けられた4箇所のフロントステップ取付部35にボルトによって固定されている。
【0020】
フロントステップ17は、機体前方からエンジンを囲むようにU字状に形成されていると共に、その外縁を形成する枠体36と、該枠体36に取付けられた鉄板からなり、その上方を作業者が移動する左右のステップ面37L,37Rと、ステップ面37L,37Rの上面に敷設されるステップマット39と、から構成されている(図7参照)。該フロントステップ17の後縁17a,17aは、平面状に形成された上記フロアステップ23及びサイドステップ25の前縁23a,25aと接続して略面一状に連続しており、このフロアステップ23は、フロントステップ17と同様にステップ面を形成する鉄板の上にステップマット40を敷設した構造となっている。
【0021】
上記フロアステップ23は、両側縁23b,23bが機体後方側に広がった左右対称な略台形形状をしており、その後縁23cの両端は、運転座席15(中央カバー24)を跨いで左右の後部サイドステップ26,26の機体幅方向中途部にそれぞれ位置していると共に、後縁23cの中央部は、機体前方に一段突出して配置された運転座席15に沿って機体前方側に窪んでいる。
【0022】
機体外側に広がった上記フロアステップ23の両側縁23bには、サイドステップ25の機体内側の側縁である内側縁25bが接続しており、左右のサイドステップ25,25の前縁25aは、後縁25cに比して機体内側に位置している。サイドステップ25は、上述したフロントステップ17及びフロアステップ23とは違い、スノコ状に成形された樹脂によって形成されていると共に、フロントステップ17よりも機体外側に突出している。フロントステップ17の後縁17aと接続するサイドステップ25の前縁25aは、該フロントステップ17の後縁17aよりも機体外側まで延設されており、フロントステップ17から機体外側に段状に広がっている。この段差部41の延長線上にフロントステップ17とフロアステップ23の境界が形成されている。言い換えると、フロアステップ23の前縁23aと、サイドステップ25の前縁25aとを、同一直線上に設け、フロントステップ17の後縁17aを、これらフロアステップ23及びサイドステップ25の前縁23a,25aと機体幅方向においてオーバーラップするようにして接続している。
【0023】
また、サイドステップ25の外側縁25dは、機体に対して前後に平行な後半部と、機体前半ほど機体内側に位置するように傾斜した前半部とから構成されており、左右のサイドステップ25は、フロアステップ23を中心として左右対称に設けられている。そのため、これら左右のサイドステップ25は、その左右の側縁23bに接続するフロアステップ自身(外形)が左右対称の形状であることと相俟って、裏返すことによって左右どちらの側にでも取付けることができるように構成されている。
【0024】
一方、後部サイドステップ26は、図5に示すように、フロアステップ23及びサイドステップ25から略垂直に立ち上がる立ち上り面26aと、該立ち上り面26aと直角に接続した水平なフロア面26bと、がブロー成形により一体に形成されたL字状の樹脂部材であり、これら左右の後部サイドステップ26,26は、同一形状かつ、左右対称形状に構成されている。後部サイドステップ26は、図6に示すように、外枠32から機体後方側に延設された後部フレーム42の取付部42aにフロア面26bを固定すると共に、フロアステップ23及びサイドステップ25を支持する第1サブフレーム30の取付部30aに立ち上り面26aを固定しており、それ自体がフレームの強度メンバーとして、後部フレーム42と第1サブフレーム30とを連結している。
【0025】
また、後部サイドステップ26と、運転座席15との間には、植付部7の昇降、植付クラッチの係脱、フロートの感度調整などを行う複数の操作レバー43・・・が配置されるレバー配置部44が介在しており、これら運転座席15の左右に設けられたレバー配置部44は、運転座席15の下方を覆う中央カバー24によって、一体に覆われている。この中央カバー24は、その略中央に位置する運転座席の下方部分が機体前方に突出していると共に、レバー配置部44を覆うカバー部分は、該運転座席の下方部分よりも機体後方側に一段下がって構成されている。上述した後部サイドステップ26の立ち上り部26aは、この一段下がったレバー配置部44を覆う中央カバー24の立ち上り部24aと略面一状に連続するように形成されており、これにより、フロアステップ23及びサイドステップ25のステップ面は、機体後方側に広く確保されている。
【0026】
ついで、フロントステップ17の分割構成について説明をする。上述したフロントステップ17の枠体36は、図7に示すように、エンジンの前方に配置された前部枠体36Fと、該前部枠体36Fの左右両端から機体後方側に延設された左右の側部枠体36L,36Rと、の3つに分割して構成されており、これら側部枠体36L,36Rには、ステップ面37L,37Rを形成する鉄板がボルトによって固定されている。
【0027】
上記側部枠体36L,36R及び前部枠体36Fはプレスによって成形されており、それぞれ機体取付け時に下方側になる下縁45,46,47が側面に対して機体内側に屈曲して断面視、略コ字形状となるように構成されている。左右の側部枠体36L,36Rは、前部枠体36Fの左右両端にその前端部が差し込まれて溶接により固定されており、図8に示すように、枠体36の下縁45,46,47は、全周に亘って機体内側に向かって屈曲している。また、枠体36の後端側である左右の側部枠体36L,36Rの後端側では、その下縁46,47(反り返り部46a,47a)が機体上方側に反り返って形成されている。
【0028】
更に、枠体36の内周縁を形成するステップ面37L,37Rの内周縁50,51及び該ステップ面37L,37Rと連続する前部枠体36Fの内周縁52は、機体上方側に屈曲して縁部を形成しており、ステップマット39がフロントステップ17の内周側にずれないようにしている。
【0029】
これによりフロントステップ17は、上述した左右の側部枠体36L,36R,ステップ面37L,37R及びステップマット39,39からなり、エンジンの左右側方で作業者が移動するステップを構成する左右の側部フロントステップ部と、前部枠体36Fからなり、これら左右の側部フロントステップ部の間をエンジンの前方で連結する前部フロントステップ部と、の3つに分割された構成となっている。
【0030】
[エンジンルーム周りのカバー構成]
ついで、エンジンルーム周りのカバー構成について説明をする。エンジンを収納するエンジンルーム53は、U字状に形成されたフロントステップ17の内周縁17bと、フロアステップ23の前縁23aとによって画定されており(図4参照)、図9に示すように、エンジンルーム53の前方側を覆うボンネットカバー9と、該ボンネットカバー9の後方でエンジンルーム53と運転席16とを仕切るパネルリヤカバー(カバー部材)55と、パネルリヤカバー55の上方でメータパネルなどを覆うパネルカバー56と、によって機体5の前端側からステアリングハンドル11の下方に亘って連続的に覆われている。
【0031】
図10に示すように、フロントステップ17の左右のステップ面(鉄板)37L,37Rの内周縁には、ステアリングハンドル11のハンドルポスト57の前方側においてL字状のブラケット59,59が溶接されており、これら左右のL字状のブラケット59,59を介して門型形状の取付けフレーム60がボルトによって機体5に取付けられている。
【0032】
この門型の取付けフレーム60のうち、機体から上方に立ち上がる左右の側面部(立設部)60L,60Rの間を掛け渡された上面部(架設部)60Uには、平面視略コ字状のブラケット61が取付けられており、その先端部にはそれぞれ機体外側に向けて突起部62,62が設けられている。これら一対の突起部62,62には、ボンネットカバー9の内周側に設けられたC字状の保持部(不図示)が遊嵌しており、ボンネットカバー9は、図11に示すように、突起部62,62を回動支点として開閉自在となっている。つまり、ブラケット61及び突起部62,62が、ボンネットカバー9の枢支部材となっている。
【0033】
また、上記ブラケット61の腕部の間には、棒状の補強部材63が架設されており、アーム部分が変形しないように構成されている。更に、ブラケット61は、取付けフレーム60により支持されるだけでなく、その背面部が機体後方側のハンドルポスト57から延設されたブラケット65にも取付けられて支持されている。
【0034】
一方、上記パネルリヤカバー55は、機体後方側から機体前方側に向けてハンドルポスト57の下方部分を覆うように取付けられており、該ハンドルポスト57から延設されたブラケット66にノブボルト67によって固定されている。また、パネルリヤカバー55の前端面55aは、上記ボンネットカバー9の後端面9aと当接する取付けフレーム60の側方まで延設されており、その内周側には、取付けフレーム60の側面部60L,60Rが嵌る切欠きを有した取付部69・・・が形成されている。
【0035】
この取付部69・・・は、パネルリヤカバー55の内側において、その上端側と、下端側の2個所にそれぞれ設けられており、この取付部69,69間において、取付けフレーム60の左右の側面部60L,60Rには、ボンネットカバー9が閉じた状態で互いに当接するボンネットカバー9の後端面9aと、パネルリヤカバー55の前端面55aと、を内側からサポートするサポート部材70が設けられている。
【0036】
また、図12に示すように、フロントステップ17のステップマット39のエンジンルーム側の側縁部である内周縁39aには、上記パネルリヤカバー55及びボンネットカバー9の下端部が嵌る溝71が設けられており、ボンネットカバー9及びパネルリヤカバー55は、その下端部がステップマット39及びステップ面37L,37Rの内周縁50,51によって規制されている。また、上記パネルリヤカバー55及ボンネットカバー9の下端部によって、ステップカバー39は上方から押さえられて捲れないようになっている。更に、図示していないが、フロアパネル23のステップマットも同様にその側縁に溝部が形成されており、中央カバー24及びパネルリヤカバー55の下端部によって押さえられるように構成されている。
【0037】
また、パネルカバー56は、メータパネル12の周囲を覆う庇56aを有していると共に、該メータパネル12も作業者の視線に対して略垂直になるように傾斜させて構成しており、日差しを遮断して視認性を向上させている(図11参照)。
【0038】
なお、本実施形態では、取付けフレーム60にパネルリヤカバー55の前端側が嵌合して、その左右の側面の変形を規制していると共に、前端面を位置決めしているが、ボンネットカバー9の後端面9aとパネルリヤカバー55の前端面55aとは、取付けフレーム60の側方で当接しているため、当然にボンネットカバー9の後端側に取付部を設け、取付けフレーム60に嵌合するように構成しても良い。
【0039】
また、パネルリヤカバー55の取付部69は、切欠きを取付けフレーム60に差し込む構成であるが、例えば、ボルトや磁石による締結など、パネルリヤカバー55は、他のどのような手段によって取付けフレーム60に取付けられても良い。更に、パネルリヤカバー55の上方でボンネットカバー9の後端面9aと当接するパネルカバー56も取付けフレーム60に取付けるように構成してもよい。
【0040】
また、エンジンルーム53は、上記ボンネットカバー9,パネルリヤカバー55及びパネルカバー56の3つのカバー部材によって覆われているが、これらパネルリヤカバー55及びパネルカバー56を一体に構成しても良いと共に、更にカバー部材を細かく分割した構成にしても良い。つまり、エンジンルーム53のカバー構成は、ボンネットカバー9と当接するカバー部材が、取付けフレーム60に取付けられて、その変形を防止することができるものであれば、どのような構成及び形状でも良い。
【0041】
更に、上記エンジンルーム53を覆うカバー部材は、樹脂製が望ましいが、必ずしも樹脂製である必要は無く、鉄板などの他の部材によって形成されてもよい。
【0042】
また、レバー配置部44は、中央カバー24により一体に覆われているが、必ずしも中央カバー24により覆われる必要はなく、中央カバー24とは別にレバー配置部44のカバーを形成してもよい。
【0043】
更に、上記フロントステップ17は、枠体36と、ステップ面(鉄板)37とを別に部材としているが、側部枠体36L,36Rと、ステップ面37とを一体に形成しても良い。また、サイドステップ25は、必ずしもフロントステップ17と直接接続している必要はない。
【0044】
上述したように、ボンネットカバー9が、取付けフレーム60に支持されたブラケット61の突起部62に高い精度で取付けられていると共に、該ボンネットカバー9と連続するパネルリヤカバー55の側面が、取付け部フレーム60の側面部60L,60Rによって位置決めされているため、ボンネット9は、図11の開位置から図9の閉位置に回動すると、その後端面9aがパネルリヤカバー55の前端面55aとぴったりと当接して、略面一状に連続する。
【0045】
また、これらボンネットカバー9及びパネルリヤカバー55は、(閉じた状態で)その下端部がステップマット39の溝71及びステップ面37L,37Rの内周縁50,51によって規制されると共に、機体後方側に軽微に傾斜して上方に伸びる当接面9a,55aが、その内側を沿う取付けフレーム60の側面部60L,60Rにより案内されることによっても、カバーの変形及び位置決めがなされるため、その端面同士は、より正確に当接する。
【0046】
それにより、エンジンルーム53は、密閉性が向上し、雨水や圃場から撥ねた泥水の浸入を防止することが出来ると共に、カバーの端面同士が正確に合わさっているため、その外観も向上する。
【0047】
また、左右の後部サイドステップ26,26が同一形状でありかつ、左右対称の形状であるため、作業者は、後部サイドステップ26,26を運転座席15の左右どちらの側にも配設することができ、部品点数を削減してコストを低減することができると共に、組間違いもないため、組立効率が向上した。
【0048】
更に、後部サイドステップ26の立ち上り面26aを、その端面がレバー配置部44の立ち上り面24aの端面と略面一状に接続して連続するようにしたことによって、立ち上り面26aとステップ面26bとが一体に形成された後部サイドステップ26の形状を簡単にして多機種への展開を容易にすることが出来ると共に、フロアステップ23の面積を広くして作業者の移動を容易にすることができる。
【0049】
また、後部サイドステップ26により、第1サブフレーム30と、後部フレーム42と、を連結し、該後部サイドステップ26をフレームの強度メンバーとすることによって、フレーム構成を簡素化して機体の強度を維持したまま軽量化することができる。
【0050】
更に、フロントステップ17の枠体36を、前部枠体36Fと、左右の側部枠体36L,36Rと、の3つに分割して構成することによって、簡単な形状の側部枠体36L,36Rを変更するだけで、前部枠体36Fを兼用しつつ、他の仕様の乗用田植機に対応することができる。また、フロントステップ17と、サイドステップ25及びフロアステップ23と、の境界が、段差部41の延長線上にあるため、フロントステップ17の形状を単純なU字形状とすることができ、その分割構成を簡単なものとすることが出来ると共に、サイドステップ25及びフロントステップ23の形状も簡単な形状とすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 乗用田植機
2 走行車輪(前輪)
3 走行車輪(後輪)
5 機体
9 ボンネットカバー
9a ボンネットカバーの後端面
17 ステップ(フロントステップ)
39 ステップマット
39a ステップマットの側縁部
53 エンジンルーム
55 カバー部材(パネルリヤカバー)
55a カバー部材の前端面
60 取付けフレーム
61 枢支部材(ブラケット)
62 枢支部材(突起部)
69 取付部
71 溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を圃場に移植する乗用型田植機に係り、詳しくは、エンジンが収納されるエンジンルーム周りのカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用型田植機は、機体の前方にエンジンを配置すると共に、その後方には、スピードメータ及びタコメータなどが配置される表示部や、操作ハンドルなどからなる運転操作部が設けられている。これらエンジン及び運転操作部は、カバーによって覆われていると共に、該カバーの内、エンジンルームを覆うボンネットは、開閉自在に構成されている。
【0003】
従来、上記ボンネット及びカバーを、合成樹脂によって形成する共に、上部ボンネット部36、前部ボンネット部37及び後部ボンネット部38に分割して構成した乗用型田植機が案出されている(特許文献1参照)。
【0004】
上記後部ボンネット部38は、操作ハンドル(操縦ハンドル)11のハンドルポスト40の下方部分を覆っており、この後部ボンネット部38の上部には、上部ボンネット部36が取付けられている。また、上部ボンネット部36の前部には、一対の支持ピン36aが設けられており、エンジンを覆う前部ボンネット部37は、この支持ピン36aに、C字状に形成された保持部が嵌められることによって、支持ピン36aを中心として上下に開閉自在に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−185148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載のように、エンジンルームを覆うボンネットカバーが、その後方に続くカバー部材に回転自在に支持されていると、カバーの加工誤差や歪みによって、ボンネットの後端面と、カバー部材の前端面とが揃わず、エンジンルームの密閉性が損なわれて、雨水や圃状から撥ねた泥水などがエンジンルームに入り易くなってしまうと共に、外観が損なわれる虞がある。
【0007】
特に、カバー部材が樹脂により形成されている場合、樹脂は熱膨張係数が大きいため成形後に周囲の温度変化によって膨張したり、成形時に生じる熱歪及び残留応力などにより変形したり、をすることがある。
【0008】
そこで、本発明は、開閉するボンネットカバーの回動支点に支持すると共に、閉じた状態のボンネットカバーに続くカバー部材を取付ける取付けフレームを設けることによって、上記課題を解決した乗用田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、走行車輪(2,3)に支持された機体(5)と、前記機体(5)に搭載されたエンジンと、前記エンジンを収納するエンジンルーム(53)を覆うと共に開閉自在に設けられたボンネットカバー(9)と、閉じた状態の前記ボンネットカバー(9)と連続するカバー部材(55)と、を備えた乗用型田植機(1)において、
前記機体(5)に取付けフレーム(60)を固定し、
該取付けフレーム(60)に、前記ボンネットカバー(9)を回動自在に支持する枢支部材(61,62)を配置すると共に、前記カバー部材(55,56)を取付け、
閉じた状態の前記ボンネットカバー(9)の後端面(9a)と前記カバー部材(55)の前端面(55a)とを、前記取付けフレーム(60)を介して連続するように構成した、
ことを特徴とする乗用型田植機にある。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記カバー部材(55)は、前記取付けフレーム(60)に嵌合する取付部(69)を有すると共に、
前記取付けフレーム(69)の側方で、前記ボンネットカバー(9)の後端面(9a)と、前記カバー部材(55)の前端面(55a)とが当接するようにした、
請求項1記載の乗用型田植機(1)にある。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記エンジンルームの側方に、上方を作業者が移動可能なステップ(17)を形成し、
該ステップ(17)の上面に敷設されたステップマット(39)の前記エンジンルーム側の側縁部(39a)に、前記ボンネットカバー(9)及びカバー部材(55)の下端部が嵌る溝(71)を設けた、
請求項1又は2記載の乗用型田植機(1)にある。
【0012】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、ボンネットカバーを取付けフレームに配置した枢支部材により回転自在に支持して、後方のカバー部材に回動支点を形成しないように構成したことによって、ボンネットカバーの取付け精度を向上させることができる。また、ボンネットカバーの後方に続くカバー部材を、上記取付けフレームに取付けることによりカバー部材の膨張などの変形を抑えることができる。ボンネットカバーの取付け精度が向上すると共に、カバー部材の変形が抑えられることによって、ボンネットカバーが閉じた状態でボンネットカバーの後端面と、カバー部材の前端面と、が正確に合わさり、エンジンルームの密閉性の向上を図ることができると共に、乗用田植え機の外観も向上する。
【0014】
請求項2に係る発明によると、カバー部材に取付けフレームに嵌合する取付部を設けたことにより、カバー部材を容易に取付けフレームに取付けることが出来る。また、ボンネットカバーの後端面と、カバー部材の前端面とを、取付けフレームの側方で当接するように構成したことによって、カバー部材の前端面側を、取付けフレームによって効果的に規制することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、ステップマットに溝部を設け、該溝部にボンネットカバー及びカバー部材の下端部を嵌るようにしたことにより、ステップマットが捲れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の側面図。
【図2】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の平面図。
【図3】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の機体の組立図。
【図4】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の機体の平面図。
【図5】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の機体の斜視図。
【図6】本願発明の実施の形態に係る後部サイドステップの取付部を示す要部拡大図。
【図7】本願発明の実施の形態に係るフロントステップの組立図。
【図8】本願発明の実施の形態に係るフロントステップの底面斜視図。
【図9】本願発明の実施の形態に係る乗用型田植機の機体の側面図。
【図10】本願発明の実施の形態に係るエンジンルーム周りの構造を示す斜視図。
【図11】本願発明の実施の形態に係る機体のボンネットカバーが開いた状態を示す斜視図。
【図12】本願発明の実施の形態に係るフロアマット構造を示す要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[乗用型田植機の概略構成]
以下、本願発明に係る乗用田植え機について図面に基づいて説明をする。乗用田植え機1は、図1及び2に示すように、それぞれ左右一対の前輪2,2及び後輪3,3からなる走行車輪に支持された走行機体(機体)5を有しており、その後方には昇降リンク6を介して植付部7が昇降自在に取付けられている。上記走行機体5の前方には、ボンネットカバー9に覆われたエンジン(不図示)が搭載されていると共に、エンジンの後方には、ステアリングハンドル11及びメータパネル12などからなる運転操作部13と、作業者が着座する運転座席15と、からなる運転席16が設けられている。
【0018】
また、図3に示すように、上記走行機体5には、上方を作業者が移動可能な床面を形成する複数のステップ17,23,25,26,27が設けられており、このステップは、機体前端から運転操作部13の後端に亘ってエンジン(エンジンルーム53)の左右側方に設けられたフロントステップ(ステップ)17と、運転座席15の前方の床面を形成するフロアステップ23と、該フロアステップ23の側方に配設された左右のサイドステップ25,25と、運転座席15の左右側方に位置し、フロアステップ23及びサイドステップ25よりも一段高く形成された後部サイドステップ26,26と、左右の後部サイドステップ26,26の間かつ運転座席15の後方側に設けられたリヤセンターステップ27と、から構成されている。
【0019】
[ステップの構成]
ついで、上記ステップの構成について詳しく説明をする。図3及び図4に示すように、走行機体5の機体フレーム19は、機体中央部において、前後に延設された左右一対のメインフレーム29,29と、これら左右のメインフレーム29,29から機体幅方向に延びる複数の第1サブフレーム30と、第1サブフレーム30と交差して連結すると共に機体前後方向に延びる第2サブフレーム31と、フロアステップ23及びサイドステップ25の外周を囲う外枠32と、を有しており、上記フロントステップ17は、該外枠32から機体前方に延設された前部フレーム33に設けられた4箇所のフロントステップ取付部35にボルトによって固定されている。
【0020】
フロントステップ17は、機体前方からエンジンを囲むようにU字状に形成されていると共に、その外縁を形成する枠体36と、該枠体36に取付けられた鉄板からなり、その上方を作業者が移動する左右のステップ面37L,37Rと、ステップ面37L,37Rの上面に敷設されるステップマット39と、から構成されている(図7参照)。該フロントステップ17の後縁17a,17aは、平面状に形成された上記フロアステップ23及びサイドステップ25の前縁23a,25aと接続して略面一状に連続しており、このフロアステップ23は、フロントステップ17と同様にステップ面を形成する鉄板の上にステップマット40を敷設した構造となっている。
【0021】
上記フロアステップ23は、両側縁23b,23bが機体後方側に広がった左右対称な略台形形状をしており、その後縁23cの両端は、運転座席15(中央カバー24)を跨いで左右の後部サイドステップ26,26の機体幅方向中途部にそれぞれ位置していると共に、後縁23cの中央部は、機体前方に一段突出して配置された運転座席15に沿って機体前方側に窪んでいる。
【0022】
機体外側に広がった上記フロアステップ23の両側縁23bには、サイドステップ25の機体内側の側縁である内側縁25bが接続しており、左右のサイドステップ25,25の前縁25aは、後縁25cに比して機体内側に位置している。サイドステップ25は、上述したフロントステップ17及びフロアステップ23とは違い、スノコ状に成形された樹脂によって形成されていると共に、フロントステップ17よりも機体外側に突出している。フロントステップ17の後縁17aと接続するサイドステップ25の前縁25aは、該フロントステップ17の後縁17aよりも機体外側まで延設されており、フロントステップ17から機体外側に段状に広がっている。この段差部41の延長線上にフロントステップ17とフロアステップ23の境界が形成されている。言い換えると、フロアステップ23の前縁23aと、サイドステップ25の前縁25aとを、同一直線上に設け、フロントステップ17の後縁17aを、これらフロアステップ23及びサイドステップ25の前縁23a,25aと機体幅方向においてオーバーラップするようにして接続している。
【0023】
また、サイドステップ25の外側縁25dは、機体に対して前後に平行な後半部と、機体前半ほど機体内側に位置するように傾斜した前半部とから構成されており、左右のサイドステップ25は、フロアステップ23を中心として左右対称に設けられている。そのため、これら左右のサイドステップ25は、その左右の側縁23bに接続するフロアステップ自身(外形)が左右対称の形状であることと相俟って、裏返すことによって左右どちらの側にでも取付けることができるように構成されている。
【0024】
一方、後部サイドステップ26は、図5に示すように、フロアステップ23及びサイドステップ25から略垂直に立ち上がる立ち上り面26aと、該立ち上り面26aと直角に接続した水平なフロア面26bと、がブロー成形により一体に形成されたL字状の樹脂部材であり、これら左右の後部サイドステップ26,26は、同一形状かつ、左右対称形状に構成されている。後部サイドステップ26は、図6に示すように、外枠32から機体後方側に延設された後部フレーム42の取付部42aにフロア面26bを固定すると共に、フロアステップ23及びサイドステップ25を支持する第1サブフレーム30の取付部30aに立ち上り面26aを固定しており、それ自体がフレームの強度メンバーとして、後部フレーム42と第1サブフレーム30とを連結している。
【0025】
また、後部サイドステップ26と、運転座席15との間には、植付部7の昇降、植付クラッチの係脱、フロートの感度調整などを行う複数の操作レバー43・・・が配置されるレバー配置部44が介在しており、これら運転座席15の左右に設けられたレバー配置部44は、運転座席15の下方を覆う中央カバー24によって、一体に覆われている。この中央カバー24は、その略中央に位置する運転座席の下方部分が機体前方に突出していると共に、レバー配置部44を覆うカバー部分は、該運転座席の下方部分よりも機体後方側に一段下がって構成されている。上述した後部サイドステップ26の立ち上り部26aは、この一段下がったレバー配置部44を覆う中央カバー24の立ち上り部24aと略面一状に連続するように形成されており、これにより、フロアステップ23及びサイドステップ25のステップ面は、機体後方側に広く確保されている。
【0026】
ついで、フロントステップ17の分割構成について説明をする。上述したフロントステップ17の枠体36は、図7に示すように、エンジンの前方に配置された前部枠体36Fと、該前部枠体36Fの左右両端から機体後方側に延設された左右の側部枠体36L,36Rと、の3つに分割して構成されており、これら側部枠体36L,36Rには、ステップ面37L,37Rを形成する鉄板がボルトによって固定されている。
【0027】
上記側部枠体36L,36R及び前部枠体36Fはプレスによって成形されており、それぞれ機体取付け時に下方側になる下縁45,46,47が側面に対して機体内側に屈曲して断面視、略コ字形状となるように構成されている。左右の側部枠体36L,36Rは、前部枠体36Fの左右両端にその前端部が差し込まれて溶接により固定されており、図8に示すように、枠体36の下縁45,46,47は、全周に亘って機体内側に向かって屈曲している。また、枠体36の後端側である左右の側部枠体36L,36Rの後端側では、その下縁46,47(反り返り部46a,47a)が機体上方側に反り返って形成されている。
【0028】
更に、枠体36の内周縁を形成するステップ面37L,37Rの内周縁50,51及び該ステップ面37L,37Rと連続する前部枠体36Fの内周縁52は、機体上方側に屈曲して縁部を形成しており、ステップマット39がフロントステップ17の内周側にずれないようにしている。
【0029】
これによりフロントステップ17は、上述した左右の側部枠体36L,36R,ステップ面37L,37R及びステップマット39,39からなり、エンジンの左右側方で作業者が移動するステップを構成する左右の側部フロントステップ部と、前部枠体36Fからなり、これら左右の側部フロントステップ部の間をエンジンの前方で連結する前部フロントステップ部と、の3つに分割された構成となっている。
【0030】
[エンジンルーム周りのカバー構成]
ついで、エンジンルーム周りのカバー構成について説明をする。エンジンを収納するエンジンルーム53は、U字状に形成されたフロントステップ17の内周縁17bと、フロアステップ23の前縁23aとによって画定されており(図4参照)、図9に示すように、エンジンルーム53の前方側を覆うボンネットカバー9と、該ボンネットカバー9の後方でエンジンルーム53と運転席16とを仕切るパネルリヤカバー(カバー部材)55と、パネルリヤカバー55の上方でメータパネルなどを覆うパネルカバー56と、によって機体5の前端側からステアリングハンドル11の下方に亘って連続的に覆われている。
【0031】
図10に示すように、フロントステップ17の左右のステップ面(鉄板)37L,37Rの内周縁には、ステアリングハンドル11のハンドルポスト57の前方側においてL字状のブラケット59,59が溶接されており、これら左右のL字状のブラケット59,59を介して門型形状の取付けフレーム60がボルトによって機体5に取付けられている。
【0032】
この門型の取付けフレーム60のうち、機体から上方に立ち上がる左右の側面部(立設部)60L,60Rの間を掛け渡された上面部(架設部)60Uには、平面視略コ字状のブラケット61が取付けられており、その先端部にはそれぞれ機体外側に向けて突起部62,62が設けられている。これら一対の突起部62,62には、ボンネットカバー9の内周側に設けられたC字状の保持部(不図示)が遊嵌しており、ボンネットカバー9は、図11に示すように、突起部62,62を回動支点として開閉自在となっている。つまり、ブラケット61及び突起部62,62が、ボンネットカバー9の枢支部材となっている。
【0033】
また、上記ブラケット61の腕部の間には、棒状の補強部材63が架設されており、アーム部分が変形しないように構成されている。更に、ブラケット61は、取付けフレーム60により支持されるだけでなく、その背面部が機体後方側のハンドルポスト57から延設されたブラケット65にも取付けられて支持されている。
【0034】
一方、上記パネルリヤカバー55は、機体後方側から機体前方側に向けてハンドルポスト57の下方部分を覆うように取付けられており、該ハンドルポスト57から延設されたブラケット66にノブボルト67によって固定されている。また、パネルリヤカバー55の前端面55aは、上記ボンネットカバー9の後端面9aと当接する取付けフレーム60の側方まで延設されており、その内周側には、取付けフレーム60の側面部60L,60Rが嵌る切欠きを有した取付部69・・・が形成されている。
【0035】
この取付部69・・・は、パネルリヤカバー55の内側において、その上端側と、下端側の2個所にそれぞれ設けられており、この取付部69,69間において、取付けフレーム60の左右の側面部60L,60Rには、ボンネットカバー9が閉じた状態で互いに当接するボンネットカバー9の後端面9aと、パネルリヤカバー55の前端面55aと、を内側からサポートするサポート部材70が設けられている。
【0036】
また、図12に示すように、フロントステップ17のステップマット39のエンジンルーム側の側縁部である内周縁39aには、上記パネルリヤカバー55及びボンネットカバー9の下端部が嵌る溝71が設けられており、ボンネットカバー9及びパネルリヤカバー55は、その下端部がステップマット39及びステップ面37L,37Rの内周縁50,51によって規制されている。また、上記パネルリヤカバー55及ボンネットカバー9の下端部によって、ステップカバー39は上方から押さえられて捲れないようになっている。更に、図示していないが、フロアパネル23のステップマットも同様にその側縁に溝部が形成されており、中央カバー24及びパネルリヤカバー55の下端部によって押さえられるように構成されている。
【0037】
また、パネルカバー56は、メータパネル12の周囲を覆う庇56aを有していると共に、該メータパネル12も作業者の視線に対して略垂直になるように傾斜させて構成しており、日差しを遮断して視認性を向上させている(図11参照)。
【0038】
なお、本実施形態では、取付けフレーム60にパネルリヤカバー55の前端側が嵌合して、その左右の側面の変形を規制していると共に、前端面を位置決めしているが、ボンネットカバー9の後端面9aとパネルリヤカバー55の前端面55aとは、取付けフレーム60の側方で当接しているため、当然にボンネットカバー9の後端側に取付部を設け、取付けフレーム60に嵌合するように構成しても良い。
【0039】
また、パネルリヤカバー55の取付部69は、切欠きを取付けフレーム60に差し込む構成であるが、例えば、ボルトや磁石による締結など、パネルリヤカバー55は、他のどのような手段によって取付けフレーム60に取付けられても良い。更に、パネルリヤカバー55の上方でボンネットカバー9の後端面9aと当接するパネルカバー56も取付けフレーム60に取付けるように構成してもよい。
【0040】
また、エンジンルーム53は、上記ボンネットカバー9,パネルリヤカバー55及びパネルカバー56の3つのカバー部材によって覆われているが、これらパネルリヤカバー55及びパネルカバー56を一体に構成しても良いと共に、更にカバー部材を細かく分割した構成にしても良い。つまり、エンジンルーム53のカバー構成は、ボンネットカバー9と当接するカバー部材が、取付けフレーム60に取付けられて、その変形を防止することができるものであれば、どのような構成及び形状でも良い。
【0041】
更に、上記エンジンルーム53を覆うカバー部材は、樹脂製が望ましいが、必ずしも樹脂製である必要は無く、鉄板などの他の部材によって形成されてもよい。
【0042】
また、レバー配置部44は、中央カバー24により一体に覆われているが、必ずしも中央カバー24により覆われる必要はなく、中央カバー24とは別にレバー配置部44のカバーを形成してもよい。
【0043】
更に、上記フロントステップ17は、枠体36と、ステップ面(鉄板)37とを別に部材としているが、側部枠体36L,36Rと、ステップ面37とを一体に形成しても良い。また、サイドステップ25は、必ずしもフロントステップ17と直接接続している必要はない。
【0044】
上述したように、ボンネットカバー9が、取付けフレーム60に支持されたブラケット61の突起部62に高い精度で取付けられていると共に、該ボンネットカバー9と連続するパネルリヤカバー55の側面が、取付け部フレーム60の側面部60L,60Rによって位置決めされているため、ボンネット9は、図11の開位置から図9の閉位置に回動すると、その後端面9aがパネルリヤカバー55の前端面55aとぴったりと当接して、略面一状に連続する。
【0045】
また、これらボンネットカバー9及びパネルリヤカバー55は、(閉じた状態で)その下端部がステップマット39の溝71及びステップ面37L,37Rの内周縁50,51によって規制されると共に、機体後方側に軽微に傾斜して上方に伸びる当接面9a,55aが、その内側を沿う取付けフレーム60の側面部60L,60Rにより案内されることによっても、カバーの変形及び位置決めがなされるため、その端面同士は、より正確に当接する。
【0046】
それにより、エンジンルーム53は、密閉性が向上し、雨水や圃場から撥ねた泥水の浸入を防止することが出来ると共に、カバーの端面同士が正確に合わさっているため、その外観も向上する。
【0047】
また、左右の後部サイドステップ26,26が同一形状でありかつ、左右対称の形状であるため、作業者は、後部サイドステップ26,26を運転座席15の左右どちらの側にも配設することができ、部品点数を削減してコストを低減することができると共に、組間違いもないため、組立効率が向上した。
【0048】
更に、後部サイドステップ26の立ち上り面26aを、その端面がレバー配置部44の立ち上り面24aの端面と略面一状に接続して連続するようにしたことによって、立ち上り面26aとステップ面26bとが一体に形成された後部サイドステップ26の形状を簡単にして多機種への展開を容易にすることが出来ると共に、フロアステップ23の面積を広くして作業者の移動を容易にすることができる。
【0049】
また、後部サイドステップ26により、第1サブフレーム30と、後部フレーム42と、を連結し、該後部サイドステップ26をフレームの強度メンバーとすることによって、フレーム構成を簡素化して機体の強度を維持したまま軽量化することができる。
【0050】
更に、フロントステップ17の枠体36を、前部枠体36Fと、左右の側部枠体36L,36Rと、の3つに分割して構成することによって、簡単な形状の側部枠体36L,36Rを変更するだけで、前部枠体36Fを兼用しつつ、他の仕様の乗用田植機に対応することができる。また、フロントステップ17と、サイドステップ25及びフロアステップ23と、の境界が、段差部41の延長線上にあるため、フロントステップ17の形状を単純なU字形状とすることができ、その分割構成を簡単なものとすることが出来ると共に、サイドステップ25及びフロントステップ23の形状も簡単な形状とすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 乗用田植機
2 走行車輪(前輪)
3 走行車輪(後輪)
5 機体
9 ボンネットカバー
9a ボンネットカバーの後端面
17 ステップ(フロントステップ)
39 ステップマット
39a ステップマットの側縁部
53 エンジンルーム
55 カバー部材(パネルリヤカバー)
55a カバー部材の前端面
60 取付けフレーム
61 枢支部材(ブラケット)
62 枢支部材(突起部)
69 取付部
71 溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪に支持された機体と、前記機体に搭載されたエンジンと、前記エンジンを収納するエンジンルームを覆うと共に開閉自在に設けられたボンネットカバーと、閉じた状態の前記ボンネットカバーと連続するカバー部材と、を備えた乗用型田植機において、
前記機体に取付けフレームを固定し、
該取付けフレームに、前記ボンネットカバーを回動自在に支持する枢支部材を配置すると共に、前記カバー部材を取付け、
閉じた状態の前記ボンネットカバーの後端面と前記カバー部材の前端面とを、前記取付けフレームを介して連続するように構成した、
ことを特徴とする乗用型田植機。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記取付けフレームに嵌合する取付部を有すると共に、
前記取付けフレームの側方で、前記ボンネットカバーの後端面と、前記カバー部材の前端面とが当接するようにした、
請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記エンジンルームの側方に、上方を作業者が移動可能なステップを形成し、
該ステップの上面に敷設されたステップマットの前記エンジンルーム側の側縁部に、前記ボンネットカバー及びカバー部材の下端部が嵌る溝を設けた、
請求項1又は2記載の乗用型田植機。
【請求項1】
走行車輪に支持された機体と、前記機体に搭載されたエンジンと、前記エンジンを収納するエンジンルームを覆うと共に開閉自在に設けられたボンネットカバーと、閉じた状態の前記ボンネットカバーと連続するカバー部材と、を備えた乗用型田植機において、
前記機体に取付けフレームを固定し、
該取付けフレームに、前記ボンネットカバーを回動自在に支持する枢支部材を配置すると共に、前記カバー部材を取付け、
閉じた状態の前記ボンネットカバーの後端面と前記カバー部材の前端面とを、前記取付けフレームを介して連続するように構成した、
ことを特徴とする乗用型田植機。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記取付けフレームに嵌合する取付部を有すると共に、
前記取付けフレームの側方で、前記ボンネットカバーの後端面と、前記カバー部材の前端面とが当接するようにした、
請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記エンジンルームの側方に、上方を作業者が移動可能なステップを形成し、
該ステップの上面に敷設されたステップマットの前記エンジンルーム側の側縁部に、前記ボンネットカバー及びカバー部材の下端部が嵌る溝を設けた、
請求項1又は2記載の乗用型田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−24519(P2011−24519A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175517(P2009−175517)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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