説明

乗用田植機

【課題】 強度を維持しつつ軽量化を図るとともに、コストダウンを可能とし、かつ機能を向上させた延長ステップを備えた乗用田植機を提供する。
【解決手段】 走行機体11の後方に植付け装置21を昇降自在に支持した乗用田植機10において、走行機体11に設けたリヤカバー32の後部に配置されたステップ33の後方に着脱自在に取付ける延長ステップ41を、上面に滑り止め用突起42及び排水用溝を有し、かつ裏面に、前記走行機体11から延びている支持ステー37を受入れる取付け位置決め用凹部を有する、ブロー成形された中空部材で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後方に植付け装置を昇降自在に支持し、かつ走行機体に設けたリヤカバーの後部にステップを配置し、該ステップの後方に延長ステップを着脱自在に取付けた乗用田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体の後方に植付け装置を昇降自在に支持した乗用田植機により行う田植え作業には、苗の植付け作業のみを行う場合と、走行機体後部に施肥機を搭載し、苗の植付けと該苗に対する施肥作業を同時に行う場合とがある。
【0003】
従来の乗用田植機においては、前記苗の植付け作業のみを行う場合には、走行機体のリヤカバーの後部に配置されたステップの後方に、延長ステップを取付け、植付け装置に対するマット苗の供給などの作業性を向上させるように構成され、苗の植付け作業と施肥作業を同時に行う場合には、前記延長ステップを取外したあとに施肥機を搭載して、植付け作業と施肥作業を同時に行うように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−143909号公報(第7ページ、図15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術では、延長ステップを取付けて作業する場合、延長ステップ上面が平らであるため、植付け装置にマット苗を供給するために、延長ステップに足をかけた際に足が滑り易いなど延長ステップとしての機能が不十分なものになっていた。
【0006】
前記の事情に鑑み、本発明は、強度を維持しつつ軽量化を図ると共に、コストダウンを可能とし、かつ機能を向上させた延長ステップを備えた乗用田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、走行機体(11)の後方に植付け装置(21)を昇降自在に支持し、かつ走行機体(11)に設けたリヤカバー(32)の後部にステップ(33)を配置し、更に該ステップ(33)の後方に延長ステップ(41)を着脱自在に取付けた、乗用田植機(10)において、
前記延長ステップ(41)は、ブロー成形による中空部材からなり、上面に滑り止め用突起(42)及び排水用溝(43)を有し、かつ裏面に、前記走行機体(11)から延びている支持ステー(37)を受入れる取付け位置決め用凹部(45)を有している、
ことを特徴とする乗用田植機にある。
【0008】
請求項2に係る本発明は、前記延長ステップ(41)は、前記取付け位置決め用凹部(45)を後部に配置し、前端部に取付け孔(46)を空けた圧潰部(47)を有し、
前記取付け位置決め用凹部(45)に前記支持ステー(37)を受け入れると共に、前記走行機体(11)に、前記取付け孔(46)を前記リヤカバー(32)と共に共締して、前記走行機体(11)に前記延長ステップ(41)を取付けてなる、
請求項1記載の乗用田植機にある。
【0009】
請求項3に係る本発明は、前記延長ステップ(41)を、左右に分割して、左延長ステップ(51)と、右延長ステップ(52)により構成し、
これら左右延長ステップ(51、52)をそれぞれ前記走行機体(11)に着脱自在とした、
請求項1又は2に記載の乗用田植機にある。
【0010】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、延長ステップをブロー成形による中空部材から形成したので、強度を維持しつつ軽量化を図ると共にコストダウンが可能となり、かつ排水及び滑り止め等の延長ステップとしての機能を向上し、また走行機体への取付けを容易かつ確実に行うことができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、延長ステップの取付けを容易かつ確実に行うことができ、また共締めによる部品点数の削減を図ることができる。
【0013】
請求項3に係る本発明によると、走行機体の後方に設置する作業機器が、例えばペースト施肥装置か粒状施肥装置かに応じて、左右延長ステップのいずれか又は両方を取付け・取外しをすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用した乗用田植機の側面図、図2は、延長ステップの取付け構造を示す側面図、図3は、図2の平面図、図4は、本発明による延長ステップを示すもので(a)は平面図、(b)は背面図、(c)は底面図である。
【0016】
図1に示すように、乗用田植機10は、走行機体11と、該走行機体11の後部に接続された植付け装置21とで構成されている。前記走行機体11は、前輪12及び後輪13に支持された機体15を有しており、該機体15の前方にはエンジン(図示せず)が搭載され、ボンネット16で覆われている。運転席は、前記ボンネット16の後方に配設され、ステアリングハンドル17と座席シート18、その他乗用田植機10の運転操作に必要なレバー、ペダル類(図示せず)が配置されている。
【0017】
前記植付け装置21は、前記走行機体11の後部に昇降リンク機構22を介して連結されている。該植付け装置21には、複数の植付け杆23を有する複数のプランタ25と、複数のフロート26と、マット状の苗を搭載する苗のせ台27を有している。そして、植付け杆23を回転させることにより、苗のせ台27上の苗を掻き取り植付けを行うようになっている。
【0018】
図1、図2、図3に示すように、前記機体15の後部には、機体15と該機体15に立設された逆U字状の支持部材31とによりリヤカバー32が支持され、前記支持部材31に後方に突出するように固定されたブラケット35にボルト36で固定されている。該リヤカバー32の後端上部には、ステップ33が形成されている。
【0019】
前記支持部材31にその一端が後方へ突出するように固定された支持ステー37の後端部は、平面視L字状に形成されている。延長ステップ41は、前記ブラケット35及び支持ステー37に載置され、その先端部が前記リヤカバー32と共に前記ボルト36でブラケット35に固定される。
【0020】
ブロー成形による中空部材からなる延長ステップ41は、図4に示すように、上面に滑り止め用突起42及び排水用溝43が形成され、裏面の後部には、前記支持ステー37を受入れる取付け位置決め用凹部45が形成されている。また、前端部には、前記ボルト36を貫通させる長孔で形成された取付け孔46をあけた圧潰部47が形成されている。
【0021】
前記延長ステップ41はこのような構成であるから、乗用田植機10に延長ステップ41を取付ける際には、リヤカバー32を固定しているボルト36を外し、前記裏面に形成された位置決め用凹部45を前記支持ステー37に嵌め合わせると共に、圧潰部47をリヤカバー32の後端部に上から重ね、取付け孔46及びリヤカバー32の取付け孔(図示せず)にボルト36を貫通させて、該ボルト36をブラケット35に形成されたねじ穴(図示せず)に螺合させ締付ける。即ち、リヤカバー32と延長ステップ41を共締めにて取付けることができる。
【0022】
また、延長ステップ41を取外す際には、延長ステップ41がリヤカバー32の上に重ねてあるので、ボルト36を取外すだけで容易に延長ステップ41を取外すことができる。
【0023】
前記のように、延長ステップ41をブロー成形により形成することにより、延長ステップ41の強度を維持しつつ、延長ステップ41の軽量化、コストダウンを実現することができる。
【0024】
また、延長ステップ41の上面には、滑り止め用突起42が形成されているので、延長ステップ41に足を乗せた場合、安定した作業姿勢を維持することができ、植付け装置21へのマット苗の補給等の作業を安全に、かつ効率よく行うことができる。また、排水用溝43が形成されているので、延長ステップ41の上面に水がかかっても速やかに排水することができ、水による滑り等を防止することができ、延長ステップ41の機能を向上させることができる。
【0025】
図5は、本発明による延長ステップの第2の実施形態を示す平面図である。
【0026】
図5に示すように、延長ステップ41を、左延長ステップ51と右延長ステップ52で構成している。前記左右延長ステップ51、52は、前記延長ステップ41と同様に、それぞれ上面に滑り止め用突起42と排水用溝43が形成され、裏面には、位置決め用凹部(図示せず)が形成されている。また、左右延長ステップ51、52の前端部には、前記ボルト36を貫通させる長孔で形成された取付け孔46をあけた圧潰部47が形成されている。
【0027】
このような構成としても、前記実施の形態と同様に、延長ステップ41の強度を維持しつつ軽量化、コストダウン、機能を得ることができる。
【0028】
また、走行機体11の後方に作業機器(図示せず、例えば、施肥装置)を設置する場合、施肥装置が、ペースト施肥装置か粒状施肥装置かに応じて、左右延長ステップのいずれか一方又は両方を取付け・取外しをすることができ、乗用田植機10に置ける作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用した乗用田植機の側面図である。
【図2】延長ステップの取付け構造を示す側面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】本発明による延長ステップを示すもので(a)は平面図、(b)は背面図、(c)は底面図である。
【図5】本発明による延長ステップの第2の実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 乗用田植機
11 走行機体
21 植付け装置
32 リヤカバー
33 ステップ
37 支持ステー
41 延長ステップ
42 滑り止め用突起
43 排水用溝
45 取付け位置決め用凹部
46 取付け孔
47 圧潰部
51 左延長ステップ
52 右延長ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後方に植付け装置を昇降自在に支持し、かつ走行機体に設けたリヤカバーの後部にステップを配置し、更に該ステップの後方に延長ステップを着脱自在に取付けた、乗用田植機において、
前記延長ステップは、ブロー成形による中空部材からなり、上面に滑り止め用突起及び排水用溝を有し、かつ裏面に、前記走行機体から延びている支持ステーを受け入れる取付け位置決め用凹部を有している、
ことを特徴とする乗用田植機。
【請求項2】
前記延長ステップは、前記取付け位置決め用凹部を後部に配置し、前端部に取付け孔を空けた圧潰部を有し、
前記取付け位置決め用凹部に前記支持ステーを受け入れると共に、前記走行機体に、前記取付け孔を前記リヤカバーと共に共締して、前記走行機体に前記延長ステップを取付けてなる、
請求項1記載の乗用田植機。
【請求項3】
前記延長ステップを、左右に分割して、左延長ステップと、右延長ステップにより構成し、
これら左右延長ステップをそれぞれ前記走行機体に着脱自在とした、
請求項1又は2に記載の乗用田植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−67906(P2006−67906A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255513(P2004−255513)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)