説明

乗用車のフロントバンパ

【課題】本発明は、バンパカバーにおいてバンパグリルを覆う部分と、その他の部分との色分けを容易に高品質に行えるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る乗用車のフロントバンパのバンパカバー30は、バンパグリル34と一体成形されたバンパカバー本体部32と、そのバンパカバー本体部32のバンパグリル部分34を覆い、バンパカバー本体部32の意匠面、及びフードパネルの意匠面とほぼ連続する意匠面を備えるバンパカバー装飾部40とからなり、バンパカバー装飾部40はバンパカバー本体部32に連結されて、そのバンパカバー装飾部40の意匠面とバンパカバー本体部32の意匠面とが色分けされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパカバーの空気取入れ口に設けられたバンパグリルを備えており、前記バンパカバーの意匠面がフードパネルの意匠面とほぼ連続するように構成された乗用車のフロントバンパに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車のフロントバンパに関する技術が特許文献1に記載されている。
特許文献1のフロントバンパは、バンパカバーと、バンパカバーの空気取入れ口に設けられたバンパグリルとを備えている。一般的に、バンパカバーとバンパグリルとは個別に成形された後、互いの意匠面が重ならないように相互に連結されて一体化される。そして、一体化されたバンパカバーとバンパグリルとが乗用車のボディのラジエータ支持部材等に取付けられている。
【0003】
図9には、デザイン上の観点からバンパグリル103を覆うように成形されたバンパカバー101を有するフロントバンパ100が表示されている。
前記フロントバンパ100では、バンパカバー101に覆われて外部から見えないバンパグリル103はそのバンパカバー101の補強用の部材として使用される。即ち、バンパカバー101とバンパグリル103とは個別に樹脂成形された後、バンパグリル103がバンパカバー101の裏側からそのバンパカバー101に取付けられる。
このように、乗用車の意匠面を構成するバンパカバー101と補強用の部材であるバンパグリル103とが別々に成形されるため、バンパカバー101の肉厚寸法を均一にでき、そのバンパカバー101の意匠面を凹凸のない状態で高品質で成形できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−25787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記フロントバンパ100において、バンパカバー101をデザイン上の観点からバンパグリル103を覆う部分とそれ以外の部分とに色分けしたい場合がある。このような場合には、一般的に、塗装マスク、あるいはマスキングテープ等を使用して各々の色彩毎にバンパカバー101を塗装する。しかし、この方法では、塗装前の準備に手間が掛かるとともに、きれいで高品質の色分けを行うのが難しい。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、バンパカバーにおいてバンパグリルを覆う部分と、その他の部分との色分けを容易に高品質に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、バンパカバーの空気取入れ口に設けられたバンパグリルを備えており、前記バンパカバーの意匠面がフードパネルの意匠面とほぼ連続するように構成された乗用車のフロントバンパであって、前記バンパカバーは、前記バンパグリルと一体成形されたバンパカバー本体部と、そのバンパカバー本体部のバンパグリル部分を覆い、前記バンパカバー本体部の意匠面、及び前記フードパネルの意匠面とほぼ連続する意匠面を備えるバンパカバー装飾部とからなり、前記バンパカバー装飾部は前記バンパカバー本体部に連結されて、そのバンパカバー装飾部の意匠面と前記バンパカバー本体部の意匠面とが色分けされていることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、バンパカバー本体部と、そのバンパカバー本体部のバンパグリル部分を覆うバンパカバー装飾部とが別部品である。このため、バンパカバー本体部の意匠面とバンパカバー装飾部の意匠面とを境界部分できれいに高品質で色分けできるようになる。さらに、バンパカバー本体部とバンパカバー装飾部とが一部品であるときに必要であったマスキングテープ等が不要になるため、塗装前の準備に手間が掛からない。
また、バンパカバー本体部の意匠面は、一体成形されるバンパグリル部分とは別の位置(重ならない位置)に形成されている。このため、バンパカバー本体部の意匠面形成部分とバンパグリル部分との肉厚寸法が異なっていても、素材(樹脂)の凝固時にバンパカバー本体部の意匠面にひけが生じるような不具合はない。
【0009】
請求項2の発明によると、バンパカバー本体部の上端部とバンパカバー装飾部の上端部とが共に乗用車のボディに連結されており、前記バンパカバー本体部と前記バンパカバー装飾部とは、前記上端部を除く部分が相互連結機構により上下方向に相対変位可能な状態で連結されていることを特徴とする。
このため、例えば、比較的重いバンパカバー本体部が乗用車のボディに対して自重により下方に変形するような場合でも、バンパカバー装飾部は相互連結機構の働きでバンパカバー本体部から下方への引っ張り力を受けることがない。このため、バンパカバー本体部が乗用車のボディに対して下方に変形しても、バンパカバー装飾部の乗用車のボディに対する高さ位置は変化しない。したがって、バンパカバー装飾部の意匠面とフードパネルの意匠面との見切り隙の間隔が経時的に広がるような不具合がなくなる。
【0010】
請求項3の発明によると、バンパカバー本体部とバンパカバー装飾部との相互連結機構は、前記バンパカバー本体部と前記バンパカバー装飾部とのいずれか一方に形成された突起と、いずれか他方に形成されて、前記突起が挿入される穴部とを備え、前記穴部の係合部と前記突起の被係合部とが前記突起の挿入により係合することで、前記バンパカバー本体部と前記バンパカバー装飾部とが連結される構成であり、前記突起の外壁面と前記穴部の内壁面との間には、挿入方向に対して交差する方向に前記突起と前記穴部とが相対変位可能な隙間が形成されていることを特徴とする。
即ち、バンパカバー装飾部とバンパカバー本体部とは、突起の外壁面と穴部の内壁面との間の隙間分だけ相対変位が可能になる。
【0011】
請求項4の発明によると、バンパカバー本体部とバンパカバー装飾部との相互連結機構は、前記バンパカバー本体部と前記バンパカバー装飾部とのいずれか一方に設けられて貫通穴部を有する板状突起と、いずれか他方に形成されて、前記板状突起が挿入されるスリット条開口とを備え、前記スリット条開口に通された前記板状突起の貫通穴部に抜け止め部材を挿入することで、前記スリット状開口に対する前記板状突起の抜け止めを図る構成であり、前記抜け止め部材は、前記板状突起の貫通穴部に対して所定位置まで挿入された状態でその板状突起に対して挿抜方向に変位不能に保持されることを特徴とする。
このように、抜け止め部材は、板状突起の貫通穴部に対して挿抜方向に変位不能な状態で挿入されるため、抜け止め部材が板状突起に対して挿抜方向に振動して異音が発生するようなことがなくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、バンパカバーにおいてバンパグリルを覆う部分と、その他の部分との色分けを容易に高品質で行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る乗用車のフロントバンパ及びエンジンフードを乗用車の右前方から見た模式斜視図である。
【図2】前記フロントバンパのバンパカバー等の分解斜視図である。
【図3】バンパカバー本体部の上端部とバンパカバー装飾部の上端部とを連結する構造を表す縦断面図(図1におけるIII-III矢視断面図)である。
【図4】バンパカバー本体部の上端部とバンパカバー装飾部の上端部とをボディ側のラジエータ支持部材に取付ける構造を表す縦断面図である。
【図5】バンパカバー本体部とバンパカバー装飾部とを連結する第1相互連結機構を表す縦断面図(図1のV-V矢視断面図)である。
【図6】本発明の実施形態1に係る乗用車のフロントバンパを乗用車の右前下方から見た模式斜視図である。
【図7】バンパカバー本体部とバンパカバー装飾部とを連結する第2相互連結機構の縦断面図(図1のVII-VII矢視断面図)である。
【図8】第2相互連結機構の斜視図(図6のVIII矢視図)である。
【図9】従来のフロントバンパのバンパカバーとバンパグリルを表す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、図1から図8に基づいて本発明の実施形態1に係る乗用車のフロントバンパについて説明する。
なお、図中の前後左右、及び上下は前記フロントバンパが取付けられる乗用車の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<フロントバンパ20の概要について>
フロントバンパ20は、図1に示すように、乗用車のボディの前下部に設けられた衝撃緩和装置であり、車幅方向に延びるバンパリインフォース(図示省略)と、そのバンパリインフォースの前面に取付けられる緩衝部材であるバンパアブソーバ(図示省略)と、前記バンパアブソーバ及びバンパリインフォースを前方から覆うバンパカバー30とから構成されている。
バンパカバー30は、フロントバンパ20の外形意匠を構成する部材であり、図2に示すように、バンパカバー本体部32とバンパカバー装飾部40とから構成されている。
【0016】
<バンパカバー本体部32について>
バンパカバー本体部32は、樹脂の射出成形品であり、図2に示すように、その中央上部位置に上部グリル部34が設けられている。上部グリル部34は、従来はバンパカバー本体部32と別部品でそのバンパカバー本体部32の上部空気取入れ口(図示省略)に取付けられて、その部分の補強と装飾を兼ねる部材であった。しかし、本実施形態に係るフロントバンパ20では、上部グリル部34はバンパカバー本体部32と一体成形されて、上部空気取入れ口(図示省略)の位置でそのバンパカバー本体部32の一部を構成している。上部グリル部34の上端縁(後端縁)には、バンパカバー本体部32を乗用車のボディにボルト止めするためのフランジ部34fが形成されている。
また、バンパカバー本体部32には、上部グリル部34の下側に車幅方向に延びる中央カバー部35が設けられている。さらに、中央カバー部35の下側には、車幅方向に延びる略角形の下部空気取入れ口36hを備える下部カバー部36が設けられている。そして、下部カバー部36に対して裏側からその下部カバー部36の下部空気取入れ口36hを覆うように別部品である下部グリル26(図1参照)が取付けられている。
また、バンパカバー本体部32には、中央カバー部35と下部カバー部36との左右両側位置に端部カバー部37が設けられており、その端部カバー部37にフォグランプ50(図1参照)を取付けるランプ取付部37r等が形成されている。
ここで、バンパカバー本体部32の材料としては、ポリプロピレン樹脂が好適に使用される。
【0017】
<バンパカバー装飾部40について>
バンパカバー装飾部40は、図1、図2に示すように、バンパカバー本体部32の上部グリル部34を覆う装飾板であり、バンパカバー30の中央上部とその他の部分とを色分けするために使用される。バンパカバー装飾部40は、樹脂の射出成形品であり、図1等に示すように、バンパカバー本体部32と異なる色彩で塗装されている。
バンパカバー装飾部40の上端縁(後端縁)には、図2に示すように、前記バンパカバー本体部32の上部グリル部34のフランジ部34fに重ねられるフランジ部43が形成されている。そして、バンパカバー装飾部40のフランジ部43には、上部グリル部34のフランジ部34fのボルト孔(符号省略)と重なる位置にボルト穴(符号省略)が形成されている。
バンパカバー装飾部40の車両前後方向における長さ寸法は、バンパカバー本体部32の上部グリル部34の車両前後方向における長さ寸法とほぼ等しく設定されている。このため、バンパカバー装飾部40のフランジ部43を上部グリル部34のフランジ部34fに重ねた状態で、そのバンパカバー装飾部40により上部グリル部34の前端位置までが覆われるようになる。
【0018】
ここで、上部グリル部34がバンパカバー装飾部40によって覆われた状態で、図1に示すように、バンパカバー装飾部40の前端縁(下端縁)とバンパカバー本体部32の中央カバー部35との間にはスリット状の上部空気取入れ口34hが形成される。
また、バンパカバー装飾部40の車幅方向における長さ寸法は、バンパカバー本体部32における上部グリル部34の車幅方向の長さ寸法よりも若干小さく設定されている。このため、図1に示すように、バンパカバー装飾部40が上部グリル部34を覆った状態で、上部グリル部34の左右の鋭角部分34kが露出するようになる。
即ち、バンパカバー本体部32おける上部グリル部34の鋭角部分34k、中央カバー部35、下部カバー部36、及び左右の端部カバー部37の表面が本発明におけるバンパカバー本体部の意匠面に相当する。また、上部グリル部34が本発明のバンパグリル部分に相当する。さらに、バンパカバー装飾部40の表面が本発明におけるバンパカバー装飾部の意匠面に相当する。
【0019】
<バンパカバー本体部32とバンパカバー装飾部40の連結構造について>
バンパカバー装飾部40は、複数の第1相互連結機構60、及び第2相互連結機構70等によってバンパカバー本体部32に連結される。そして、相互に連結されたバンパカバー本体部32(上部グリル部34)のフランジ部34fとバンパカバー装飾部40のフランジ部43とが、図4等に示すように、共に乗用車のボディに設けられたラジエータ支持部材14のブラケット15にボルト止めされる。
第1相互連結機構60は、図5(図1のV-V矢視断面図)に示すように、バンパカバー装飾部40の前端部(下端部)と上部グリル部34の前端部(下端部)とを上下方向に相対変位可能な状態で連結する機構である。
【0020】
第1相互連結機構60は、図5に示すように、バンパカバー装飾部40の裏面40bから斜め下後方に突出した帯状突起62と、その帯状突起62が挿入されるように上部グリル部34に形成された幅広の穴部64とから構成されている。バンパカバー装飾部40の帯状突起62には、途中位置に前記穴部64の爪部64k(後記する)が嵌合可能な開口62hが形成されている。また、上部グリル部34の穴部64は、断面略V字形の窪み部64vと、その窪み部64vの底位置に形成されたスリット状の貫通部64sとを備えている。そして、断面略V字形の窪み部64vの上側壁部64wに上記した爪部64kが形成されている。爪部64kは、上側壁部64wに対して幅方向両側と下辺とを切り離すことで形成されており、その上側壁部64wに対して基端部(上部)を中心に樹脂の弾性力に抗して一定量だけ回動可能に構成されている。そして、前記爪部64kの先端部(下端部)が窪み部64vの内側に突出する位置に保持されている。これにより、バンパカバー装飾部40の帯状突起62が上部グリル部34の穴部64の貫通部64sに所定寸法だけ挿入されると、穴部64の爪部64kが弾性力で帯状突起62の開口62hと係合し、第1相互連結機構60の帯状突起62と穴部64とが連結されるようになる。
【0021】
第1相互連結機構60の帯状突起62と穴部64の上側壁部64wとの間には、前記帯状突起62と穴部64とが連結された状態で、帯状突起62と穴部64とが上下方向に一定寸法だけ相対変位が可能なように隙間Tが形成されている。即ち、第1相互連結機構60によりバンパカバー装飾部40と上部グリル部34とは上下方向に一定寸法Tだけ相対変位可能な状態で連結される。
このように、前記帯状突起62が本発明の突起に相当し、その帯状突起62の開口62hが本発明の被係合部に相当する。また、穴部64の爪部64kが本発明の係合部に相当する。
【0022】
第2相互連結機構70は、図7(図1のVII-VII矢視断面図)、図8(図6のVIII矢視図)に示すように、バンパカバー装飾部40の右、あるいは左端部と上部グリル部34の右、あるいは左端部とを上下方向に相対変位可能な状態で連結する部分である。
第2相互連結機構70は、図7に示すように、バンパカバー装飾部40の裏面40bから斜め下方に突出し、途中位置に貫通穴部72hを有する板状突起72と、その板状突起72が挿入されるように上部グリル部34に形成されたスリット状開口74と、上部グリル部34の裏側でそのスリット状開口74に通された板状突起72の貫通穴部72hに挿入される抜け止め部材77とを備えている。
抜け止め部材77は、スリット状開口74に通された板状突起72の貫通穴部72hに対し、上部グリル部34の裏面に沿って移動しながら挿入できるように構成されている。
【0023】
即ち、抜け止め部材77は、上部グリル部34の裏面に沿って移動できるように構成された平面視略U字形の本体部78(図8参照)と、前記本体部78の基端部位置で、その本体部78に対して直角に形成された取手部79と、前記本体部78の先端位置で側面楔状に形成された鉤部78kとを備えている。さらに、抜け止め部材77の本体部78の幅方向両側位置には、上部グリル部34の裏面に突出形成された一対のピン部74pの外周面が嵌合する円弧状窪み部78mが形成されている。
前記第2相互連結機構70によりバンパカバー装飾部40とバンパカバー本体部32の上部グリル部34とを連結するには、先ず、バンパカバー装飾部40の板状突起72を上部グリル部34のスリット状開口74に挿入する。次に、上部グリル部34の裏側で、一対のピン部74pの間に抜け止め部材77を配置し、前記抜け止め部材77を上部グリル部34の裏面に沿って移動させ、その抜け止め部材77の本体部78をバンパカバー装飾部40の板状突起72の貫通穴部72hに挿入する。そして、抜け止め部材77の本体部78の挿入により、その本体部78の鉤部78kが前記板状突起72の貫通穴部72hの周縁に係合した段階で、その本体部78の幅方向両側の円弧状窪み部78mに上部グリル部34の一対のピン部74pが嵌合し、板状突起72の貫通穴部72hに対する本体部78の挿入が規制される。
これにより、上部グリル部34のスリット状開口74に対するバンパカバー装飾部40の板状突起72の抜け止めが図られるとともに、その板状突起72の貫通穴部72hに対する抜け止め部材77の本体部78の挿抜方向における移動が禁止される。
【0024】
<乗用車のボディに対するバンパカバー本体部32とバンパカバー装飾部40の取付け構造について>
バンパカバー本体部32とバンパカバー装飾部40とは、第1相互連結機構60と第2相互連結機構70等によって相互に連結された状態で、図4に示すように、乗用車のボディを構成するラジエータ支持部材14のブラケット15にボルト止めされる。
即ち、バンパカバー装飾部40の前端部(下端部)は、車幅方向に複数設けられた第1相互連結機構60によってバンパカバー本体部32の上部グリル部34に連結される。第1相互連結機構60は、バンパカバー装飾部40側に設けられた帯状突起62が、図5に示すように、上部グリル部34側に形成された穴部64に挿入されることで、その穴部64の爪部64kが前記帯状突起62の開口62hと係合し、上下方向に一定寸法だけ相対変位可能な連結状態に保持される。
また、バンパカバー装飾部40の左、あるいは右端部は、車両前後方向に複数設けられた第2相互連結機構70によってバンパカバー本体部32の上部グリル部34に連結される。第2相互連結機構70は、バンパカバー装飾部40側に設けられた板状突起72が、図7、図8に示すように、上部グリル部34側に形成されたスリット状開口74に挿入され、その板状突起72の貫通穴部72hに抜け止め部材77の本体部78が挿入されることで、上下方向に一定寸法だけ相対変位可能な連結状態に保持される。
【0025】
前記バンパカバー装飾部40とバンパカバー本体部32とが第1相互連結機構60、第2相互連結機構70によって相互に連結された状態で、図3、図4に示すように、バンパカバー装飾部40のフランジ部43とバンパカバー本体部32のフランジ部34fとが上下に重ねられる。そして、上下に重ねられたバンパカバー装飾部40のフランジ部43とバンパカバー本体部32のフランジ部34fとが、図3に示すように、連結ピン12によって相対移動不能な状態で連結される。
このように、第1相互連結機構60、第2相互連結機構70、及び連結ピン12によって相互に連結されたバンパカバー装飾部40とバンパカバー本体部32とのフランジ部43,34fは、図4に示すように、連結ピン12と異なる位置がボルト&ナット13によってラジエータ支持部材14のブラケット15に連結される。
そして、バンパカバー装飾部40のフランジ部43の上に、図3に示すように、エンジンフード18とバンパカバー装飾部40のフランジ部43との間をシールするゴム製のシール部材16が取付けられる。これにより、エンジンフード18がエンジンルームの開口部(図示省略)を閉じた状態で、エンジンフード18のフードパネル18pとバンパカバー装飾部40の意匠面との間に形成される見切り隙Sがシール部材16によって塞がれるようになる。
なお、図4では、シール部材16、及びエンジンフード18は省略されている。
即ち、前記フードパネル18pの表面が本発明におけるフードパネルの意匠面に相当する。
【0026】
<本実施形態に係るフロントバンパ20の長所について>
本実施形態に係るフロントバンパ20によると、バンパカバー本体部32と、そのバンパカバー本体部32の上部グリル部34(バンパグリル部分)を覆うバンパカバー装飾部40とが別部品である。このため、バンパカバー本体部32の意匠面とバンパカバー装飾部40の意匠面とを境界部分できれいに高品質で色分けできるようになる。さらに、バンパカバー本体部32とバンパカバー装飾部40とが一部品であるときに必要であったマスキングテープ等が不要になるため、塗装前の準備に手間が掛からない。
また、バンパカバー本体部32の意匠面は、一体成形される上部グリル部34とは別の位置(重ならない位置)に形成されている。このため、バンパカバー本体部32の意匠面形成部分と上部グリル部34との肉厚寸法が異なっていても、素材(樹脂)の凝固時にバンパカバー本体部32の意匠面にひけが生じるような不具合はない。
【0027】
また、バンパカバー本体部32のフランジ部34f(上端部)とバンパカバー装飾部40のフランジ部43(上端部)とが共に乗用車のボディに連結されており、バンパカバー本体部32とバンパカバー装飾部40とは、前記フランジ部34f,43(上端部)を除く部分が第1相互連結機構60、第2相互連結機構70により上下方向に相対変位可能な状態で連結されている。このため、例えば、比較的重いバンパカバー本体部32が乗用車のボディに対して自重により下方に変形するような場合でも、バンパカバー装飾部40は第1相互連結機構60、第2相互連結機構70の働きでバンパカバー本体部32から下方への引っ張り力を受けなくなる。
このため、バンパカバー本体部32が乗用車のボディに対して下方に変形しても、前記乗用車のボディに対するバンパカバー装飾部40の高さ位置は変化しない。したがって、バンパカバー装飾部40の意匠面とフードパネル18pの意匠面との見切り隙Sの間隔が経時的に広がるような不具合がなくなる。
また、第2相互連結機構70の抜け止め部材77は、バンパカバー装飾部40の板状突起72の貫通穴部72hに対して挿抜方向に変位不能な状態で挿入されるため、抜け止め部材77が板状突起72に対して挿抜方向に振動して異音が発生するようなことがなくなる。
【0028】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態に係る乗用車のフロントバンパ20では、バンパカバー本体部32の上部グリル部34を一枚のバンパカバー装飾部40で覆う例を示した。しかし、バンパカバー装飾部40を複数枚のバンパカバー装飾部片から構成し、各々のバンパカバー装飾部片を色分けする構成でも可能である。
また、本実施形態に係るフロントバンパ20では、上部グリルをバンパカバーと一体成形し、その上部グリル部34をバンパカバー装飾部40で覆う例を示した。しかし、バンパカバー30の下部空気取入れ口36hに取付けられる下部グリル26を前記バンパカバー30の一体成形し、その下部グリル26の部分を下部バンパカバー装飾部で覆うように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
18・・・・エンジンフード
18p・・・フードパネル
30・・・・バンパカバー
32・・・・バンパカバー本体部
34f・・・フランジ部(上端部)
34・・・・上部グリル部(バンパグリル部分)
40・・・・バンパカバー装飾部
43・・・・フランジ部(上端部)
60・・・・第1相互連結機構
62・・・・帯状突起(突起)
62h・・・開口(被係合部)
64k・・・爪部(係合部)
64・・・・穴部
70・・・・第2相互連結機構
72・・・・板状突起
72h・・・貫通穴部
74・・・・スリット状開口
77・・・・抜け止め部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパカバーの空気取入れ口に設けられたバンパグリルを備えており、前記バンパカバーの意匠面がフードパネルの意匠面とほぼ連続するように構成された乗用車のフロントバンパであって、
前記バンパカバーは、前記バンパグリルと一体成形されたバンパカバー本体部と、そのバンパカバー本体部のバンパグリル部分を覆い、前記バンパカバー本体部の意匠面、及び前記フードパネルの意匠面とほぼ連続する意匠面を備えるバンパカバー装飾部とからなり、
前記バンパカバー装飾部は前記バンパカバー本体部に連結されて、そのバンパカバー装飾部の意匠面と前記バンパカバー本体部の意匠面とが色分けされていることを特徴とする乗用車のフロントバンパ。
【請求項2】
請求項1に記載された乗用車のフロントバンパであって、
前記バンパカバー本体部の上端部と前記バンパカバー装飾部の上端部とが共に乗用車のボディに連結されており、
前記バンパカバー本体部と前記バンパカバー装飾部とは、前記上端部を除く部分が相互連結機構により上下方向に相対変位可能な状態で連結されていることを特徴とする乗用車のフロントバンパ。
【請求項3】
請求項2に記載された乗用車のフロントバンパであって、
前記バンパカバー本体部と前記バンパカバー装飾部との相互連結機構は、前記バンパカバー本体部と前記バンパカバー装飾部とのいずれか一方に形成された突起と、いずれか他方に形成されて、前記突起が挿入される穴部とを備え、前記穴部の係合部と前記突起の被係合部とが前記突起の挿入により係合することで、前記バンパカバー本体部と前記バンパカバー装飾部とが連結される構成であり、
前記突起の外壁面と前記穴部の内壁面との間には、挿入方向に対して交差する方向に前記突起と前記穴部とが相対変位可能な隙間が形成されていることを特徴とする乗用車のフロントバンパ。
【請求項4】
請求項2に記載された乗用車のフロントバンパであって、
前記バンパカバー本体部と前記バンパカバー装飾部との相互連結機構は、前記バンパカバー本体部と前記バンパカバー装飾部とのいずれか一方に設けられて貫通穴部を有する板状突起と、いずれか他方に形成されて、前記板状突起が挿入されるスリット条開口とを備え、前記スリット条開口に通された前記板状突起の貫通穴部に抜け止め部材を挿入することで、前記スリット状開口に対する前記板状突起の抜け止めを図る構成であり、
前記抜け止め部材は、前記板状突起の貫通穴部に対して所定位置まで挿入された状態でその板状突起に対して挿抜方向に変位不能に保持されることを特徴とする乗用車のフロントバンパ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−71610(P2013−71610A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212408(P2011−212408)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)