説明

乗用車の車両構造

【課題】乗用車の外観性、空力性能、低重心化、運転者と後席乗員とのコミュニケーション性、および後席乗員の乗降性を良好に保ちつつ、運転者の視界および後席乗員の前方視界を良好に確保できる乗用車の車両構造を提供する。
【解決手段】乗用車の車両構造10は、後席15,16に着座した乗員86の頭部86aを運転席13に着座した運転者85の頭部85aより上方になるように運転席13の座面を後席15,16の座面に対して低く設定し、フロント窓ガラス18の略中央をフロントガラスレール41で下側窓ガラスおよび上側窓ガラスに仕切り、下側フロント窓ガラス55を運転者85の前方に設け、上側フロント窓ガラス56を乗員86の前方に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席の後部に後席を備えるとともに運転席の前方にフロント窓ガラスと後席の上方にルーフを備えた乗用車の車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車の車両構造のなかには、運転席に着座した運転者の前方斜め上向きの視界を確保するために、ルーフに窓を形成し、窓に窓ガラスを設けたものがある。
ここで、ルーフに設けた窓ガラスで運転者の前方斜め上向きの視界を確保するためには、ルーフの窓ガラスを車体前方に寄せて運転者の上方に設ける必要がある。
【0003】
しかし、ルーフの窓ガラスを運転者の上方に設けるためには、フロント窓ガラスの上端部を車体前方側に設ける必要があり、フロント窓ガラスの傾斜角が大きくなる。
このため、乗用車の外観性や空力性能を良好に確保することが難しい。
【0004】
また、乗用車の車両構造のなかには、フロアの後部を高くして運転者と後席に着座した乗員(以下、「後席乗員」という)との着座高さに差をつけ、この着座高さに合わせてルーフの後部を高くし、高くした部位に窓ガラスを設けて後席乗員の前方視界を確保する自動車が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−22273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の乗用車の車両構造は、ルーフの後部が高く形成されているため、そのことが車両の重心を低く抑える妨げになる。
また、ルーフの後部を高く形成するために、ルーフの前部と後部とで車室空間が仕切られ、そのことが運転者と後席乗員とのコミュニケーションを良好に保つ妨げになる。
さらに、運転者と後席乗員との着座高さに差をつける目的でフロアの後部を高くするため、そのことが後席乗員の乗降性を良好に保つ妨げになる。
【0006】
本発明は、乗用車の外観性、空力性能、低重心化、運転者と後席乗員とのコミュニケーション性、および後席乗員の乗降性を良好に保ちつつ、運転者の視界および後席乗員の前方視界を良好に確保することができる乗用車の車両構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、運転者が着座する運転席と、運転席の後部に後席を備えるとともに運転席の前方にフロント窓ガラスと後席の上方にルーフを備えた乗用車の車両構造において、前記後席に着座した乗員の頭部を運転席に着座した運転者の頭部より上方になるように運転席の座面を後席の座面に対して低く設定し、前記運転席に着座した運転者および前記後席に着座した乗員のそれぞれの前方に前記フロント窓ガラスを設け、前記フロント窓ガラスの略中央に、前記フロント窓ガラスを下側フロント窓ガラスおよび上側フロント窓ガラスに仕切るフロントガラスレールを設け、前記下側フロント窓ガラスを前記運転席に着座した運転者の前方に設け、前記フロントガラスレールと前記ルーフとの間に設けられた前記上側フロント窓ガラスを、前記後席に着座した乗員の前方に設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記フロントガラスレールに、車体後方を視認するバックミラー、眩光を遮るサンバイザーを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記ルーフの後端部から車体の側部に沿って下方に延出された縦ピラーと、前記フロントガラスレールから車体後方に向けて延出され、後端部が前記縦ピラーに連結された横ピラーと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、運転席の座面を後席の座面に対して低く設定し、運転席に着座した運転者および後席に着座した乗員のそれぞれの前方にフロント窓ガラスを設けた。
このフロント窓ガラスをフロントガラスレールで上下に仕切り、下側フロント窓ガラスを運転者の前方に設け、上側フロント窓ガラスを後席乗員の前方に設けた。
上側フロント窓ガラスを後席乗員の前方に設けることで、ルーフの後部を高くすることなく、後席乗員の前方視界を良好に確保することができる。
【0011】
さらに、上側フロント窓ガラスは、下側フロント窓ガラスの上部近傍に位置する。よって、上側フロント窓ガラスを、運転者の上方に設けることが可能になり、上側フロント窓ガラスで運転者の前方斜め上の視界を良好に確保することができる。
これにより、運転者は、下側フロント窓ガラスで前方視界を確保するとともに、上側フロント窓ガラスで前方斜め上の視界を確保することができるので、運転者の視界を良好に確保することができる。
【0012】
このように、運転席の座面を後席の座面に対して低く設定し、それぞれの席に着座した運転者および乗員の前方にフロント窓ガラスを設けることで、ルーフの後部を高くすることなく、運転者の視界および後席乗員の前方視界を良好に確保することができる。
【0013】
また、運転席の座面を後席の座面に対して低く設定し、運転者および後席乗員のそれぞれの前方にフロント窓ガラスを設けることで、フロント窓ガラスの傾斜角を小さく抑えることが可能になる。
これにより、乗用車の外観性や空力性能を良好に確保することができる。
【0014】
さらに、運転席の座面を後席の座面に対して低く設定し、運転者および後席乗員のそれぞれの前方にフロント窓ガラスを設けることで、ルーフの後部を高く形成する必要がなく、車両の重心を低く抑えることができる。
【0015】
また、ルーフの後部を高く形成する必要がないので、運転者の空間および後席乗員の空間を分けることなく一つの空間とすることができる。
これにより、運転者と後席乗員とのコミュニケーションを良好に保つことができる。
【0016】
さらに、運転席の座面を後席の座面に対して低く設定したので、運転者と後席乗員との着座高さに差をつける目的でフロアの後部を高くする必要がない。
これにより、後席の座面を高くする必要がないので、後席乗員の乗降性を良好に保つことができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、フロントガラスレールにバックミラーやサンバイザーを備えた。
フロントガラスレールをバックミラーやサンバイザーを設ける部材として兼用することで、バックミラーやサンバイザーを設けるために専用部材を設ける必要がない。
これにより、専用部材で運転者や後席乗員の視界が遮られることがなく、さらに、部品点数を抑えることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、ルーフの後端部から車体の側部に沿って縦ピラーが下方に延出されている。また、フロントガラスレールから車体後方に向けて横ピラーが延出され、横ピラーの後端部が縦ピラーに連結されている。
横ピラーの後端部を縦ピラーに連結することで、車体の剛性および強度を確保することができる。
【0019】
ここで、フロントガラスレールでフロント窓ガラスを仕切ることで、下側フロント窓ガラスが運転者の前方に設けられ、上側フロント窓ガラスが後席乗員の前方に設けられている。
よって、フロントガラスレールは、運転席に着座した運転者の頭部と後席に着座した乗員の頭部との間に設けられている。
これにより、横ピラーをフロントガラスレールから延出することで、横ピラーを運転者の視界や後部乗員の視界を遮らない部位に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る乗用車の車両構造を前斜め上方から見た状態を示す斜視図、図2は本発明に係る乗用車の車両構造を前斜め前方から見た状態を示す斜視図である。
乗用車の車両構造10は、車体11と、車体11で形成された車室12(図3参照)に設けられた運転席13および助手席14と、運転席13および助手席14の後部に設けられたセカンド席(後席)15およびサード席(後席)16と、運転席13および助手席14の前方に設けられたフロント窓ガラス18と、セカンド席15の上方に設けられたルーフ窓ガラス19と、フロント窓ガラス18の左右側下方に設けられた左右のフロントサイドドア21,22と、ルーフ窓ガラス19の左右側下方に設けられた左右のリヤサイドドア23,24とを備える。
【0021】
この乗用車の車両構造10は、運転席13に着座した運転者85および助手席14に着座した乗員87の前方にフロント窓ガラス18の下半部が設けられ、セカンド席15およびサード席16に着座した乗員86の前方にフロント窓ガラス18の上半部が設けられている。
【0022】
フロント窓ガラス18は、上下方向に僅かに湾曲するとともに、車幅方向に僅かに湾曲した略平坦なガラスである。
さらに、ルーフ窓ガラス19は、車幅方向に僅かに湾曲した略平坦なガラスである。
略平坦なフロント窓ガラス18やルーフ窓ガラス19を用いることで、乗用車の外観性や空力性能を良好に確保することが可能になる。
【0023】
なお、運転席13および助手席14は、構成の理解を容易にするために、運転席13について説明して助手席14の説明を省略する。
また、サード席16として、3人掛けを例示するが、構成の理解を容易にするために、サード席16の中央に着座した乗員のみについて説明する。
【0024】
図3は本発明に係る乗用車の車両構造を示す分解斜視図、図4は図3の要部拡大図である。
車体11は、前部を構成する前部構造31と、後部を構成する後部構造32と、前部構造31および後部構造32間に設けられた骨格構造33と、前部構造31および後部構造32間に設けられた床構造34とを備える。
【0025】
骨格構造33は、前部構造31の左右端部から車体後方に向けて上り勾配に設けられた左右のフロントピラー(フロントピラー)36,37と、左右のフロントピラー36,37間に設けられたフロントガラスレール41と、左右のフロントピラー36,37の後端部36a,37aに連結されたルーフ42と、ルーフ42の左右側の前端部42a,42bから車体11の側部に沿って下方に延出された左右の縦ピラー(縦ピラー)45,46と、左右のフロントピラー36,37から車体後方に向けて延出された左右の横ピラー(横ピラー)48,49とを備える。
【0026】
左フロントピラー36は、前部構造31の左端部31aから傾斜角θで車体後方に向けて上り勾配で延出され、後端部36aが車体前後方向に向けて湾曲状に形成された支柱である。
左フロントピラー36の前半部36bに略三角形の左フロントコーナ窓枠51が形成されている。左フロントコーナ窓枠51には、左フロントコーナ窓ガラス52が設けられている。
【0027】
右フロントピラー37は、左フロントピラー36と左右対称の部材であり、前部構造31の右端部31bから傾斜角θで車体後方に向けて上り勾配で延出され、後端部37aが車体前後方向に向けて湾曲状に形成された支柱である。
右フロントピラー37の前半部37bに略三角形の右フロントコーナ窓枠53が形成されている。右フロントコーナ窓枠53には、右フロントコーナ窓ガラス54が設けられている。
以下、左フロントピラー36について説明して右フロントピラー37の説明を省略する。
【0028】
フロントガラスレール41は、左右のフロントピラー36,37の略中央36c,37cに亘って設けられることで車幅方向に延出された部材である。
フロントガラスレール41の左端部41aが左フロントピラー36の略中央36cに連結されている。また、フロントガラスレール41の右端部41bが右フロントピラー37の略中央37cに連結されている。
【0029】
このフロントガラスレール41は、フロント窓ガラス18の前後方向の略中央に設けられて、フロント窓ガラス18を下側フロント窓ガラス55および上側フロント窓ガラス56に仕切るレール部材である。
【0030】
左右のフロントピラー36,37の前半部36b,37b、フロントガラスレール41およびカウルトップ58で運転者用フロント窓61が略矩形状に形成されている。
この運転者用フロント窓61に、フロント窓ガラス18のうちの下側半部を構成する下側フロント窓ガラス55が設けられている。
下側フロント窓ガラス55は、フロント窓ガラス18のうちの下側半部を構成する略矩形状のガラスである。
カウルトップ58は、前部構造31に設けられている。
【0031】
左右のフロントピラー36,37の後半部36d,37d、フロントガラスレール41およびルーフ42の前端部42cで後席乗員用フロント窓62が略矩形状に形成されている。
この後席乗員用フロント窓62、すなわち、フロントガラスレール41とルーフ42との間に、フロント窓ガラス18のうちの上側半部を構成する上側フロント窓ガラス56が設けられている。
上側フロント窓ガラス56は、フロント窓ガラス18のうちの上側半部を構成する略矩形状のガラスである。
【0032】
ルーフ42は、左フロントピラー36の後端部36aに左側前端部42aが連結されるとともに、右フロントピラー37の後端部37aに右側前端部42bが連結され、左右のフロントピラー36,37の後方に略水平に設けられている。
このルーフ42は、ルーフ42の略前半部42dに略矩形状のルーフ窓64が形成されている。
ルーフ窓64には、略矩形状のルーフ窓ガラス19が設けられている。
【0033】
左縦ピラー45は、ルーフ42の左側前端部42aから車体11の左側部に沿って左サイドシル66まで延出された支柱である。
左縦ピラー45、ルーフ42の左側部42e、後部構造32の左前ピラー68および、左後サイドシル66aで略矩形状の左リヤサイド開口部71が形成されている。
左リヤサイド開口部71に左リヤサイドドア23が開閉自在に設けられている。左リヤサイドドア23には、左リヤサイド窓ガラス23aが上下方向に昇降自在に設けられている。
【0034】
右縦ピラー46は、左縦ピラー45と左右対称の部材であり、ルーフ42の右側前端部42bから車体11の右側部に沿って右サイドシル67まで延出された支柱である。
右縦ピラー46、ルーフ42の右側部42f、後部構造32の右前ピラー69および、右後サイドシル(図示せず)で略矩形状の右リヤサイド開口部72が形成されている。
右リヤサイド開口部72に右リヤサイドドア24(図1参照)が開閉自在に設けられている。右リヤサイドドア24には、右リヤサイド窓ガラス24a(図5参照)が上下方向に昇降自在に設けられている。
【0035】
左横ピラー48は、左フロントピラー36の略中央36cから車体後方に向けて延出され、後端部48aが左縦ピラー45の上端部45aに連結された部材である。
左横ピラー48の後端部48aを左縦ピラー45に連結することで、車体11の剛性および強度を確保することができる。
【0036】
左フロントピラー36の略中央36cには、フロントガラスレール41の左端部41aが連結されている。
よって、左横ピラー48の前端部48bは、左フロントピラー36の略中央36cを介してフロントガラスレール41の左端部41aに連結されている。
【0037】
左横ピラー48、左縦ピラー45、左前サイドシル66b、左フロントコーナ窓枠51および前部構造31の左後端部31cで略矩形状の左フロントサイド開口部74が形成されている。
左フロントサイド開口部74に左フロントサイドドア21が開閉自在に設けられている。左フロントサイドドア21には、左フロントサイド窓ガラス21aが上下方向に昇降自在に設けられている。
【0038】
さらに、左フロントピラー36の後半部36d、左縦ピラー45の上端部45a、および左横ピラー48で略三角形状の左上窓枠75が形成されている。
左上窓枠75には、略三角形状の左上窓ガラス76が設けられている。
【0039】
右横ピラー49は、左横ピラー48と左右対称の部材であり、右フロントピラー37の略中央37cから車体後方に向けて延出され、後端部49aが右縦ピラー46の上端部46aに連結された部材である。
右横ピラー49の後端部49aを右縦ピラー46に連結することで、車体11の剛性および強度を確保することができる。
【0040】
右フロントピラー37の略中央37cには、フロントガラスレール41の右端部41bが連結されている。
よって、右横ピラー49の前端部49b(図6参照)は、右フロントピラー37の略中央37cを介してフロントガラスレール41の右端部41bに連結されている。
【0041】
右横ピラー49、右縦ピラー46、右前サイドシル67b、右フロントコーナ窓枠53および前部構造31の右後端部31dで略矩形状の右フロントサイド開口部77が形成されている。
右フロントサイド開口部77に右フロントサイドドア22(図1参照)が開閉自在に設けられている。右フロントサイドドア22には、右フロントサイド窓ガラス22a(図6参照)が上下方向に昇降自在に設けられている。
【0042】
さらに、右フロントピラー37の後半部37d、右縦ピラー46の上端部46a、および右横ピラー49で略三角形状の右上窓枠78が形成されている。
右上窓枠78には、略三角形状の右上窓ガラス79が設けられている。
【0043】
図5は本発明に係る乗用車の車両構造を示す断面図、図6は図5の要部拡大図である。
床構造34は、前側に位置する前フロア部82と、前フロア部82の後側に設けられた後フロア部83とを有するフロアパネル81を備える。
前フロア部82は、後フロア部83に対してH寸法だけ下方に設けられている。
前フロア部82に、運転者85が着座する運転席13が設けられ、後フロア部83に乗員86が着座するセカンド席15やサード席16が設けられている。
【0044】
よって、運転席13の座面13aを、セカンド席15の座面15aやサード席16の座面16aに対して低く設定することができる。
座面13aは、座面15aや座面16aに対して200mmを超えて低く設定することが好ましい。
座面13aを座面15aや座面16aに対して低く設定することで、セカンド席15やサード席16に着座した乗員86の頭部86aを、運転席13に着座した運転者85の頭部85aより上方に配置することができる。
【0045】
運転席13の座面13aを、セカンド席15の座面15aやサード席16の座面16aに対して低く設定することで、下側フロント窓ガラス55が、運転席13に着座した運転者85の前方に設けられている。
よって、運転者85は、下側フロント窓ガラス55で前方視界を矢印Aの如く確保することができる。
【0046】
さらに、上側フロント窓ガラス56は、下側フロント窓ガラス55の上部近傍に位置する。上側フロント窓ガラス56を、運転者85の上方に設けることが可能になる。
よって、運転者85は、上側フロント窓ガラス56で前方斜め上の視界を矢印Bの如く良好に確保することができる。
【0047】
これにより、運転者85は、下側フロント窓ガラス55で前方視界を確保するとともに、上側フロント窓ガラス56で前方斜め上の視界を確保することができるので、運転者85の視界を良好に確保することができる。
【0048】
一方、セカンド席15の座面15aやサード席16の座面16aを、運転席13の座面13aに対して高く設定することで、上側フロント窓ガラス56が、セカンド席15やサード席16に着座した乗員86の前方に設けられている。
上側フロント窓ガラス56を、セカンド席15やサード席16の乗員86の前方に設けることで、従来技術のようにルーフの後部を高くすることなく、セカンド席15やサード席16の乗員86の前方視界を矢印Cの如く良好に確保することができる。
【0049】
さらに、ルーフ窓ガラス19は、上側フロント窓ガラス56の後部近傍に位置する。ルーフ窓ガラス19を、セカンド席15に着座した乗員86の上方に設けることが可能になる。
よって、セカンド席15の乗員86は、ルーフ窓ガラス19で前方斜め上の視界を矢印Dの如く良好に確保することができる。
【0050】
加えて、ルーフ窓ガラス19は、サード席16の前上方に位置する。ルーフ窓ガラス19は、サード席16に着座した乗員86の前上方に位置している。
よって、サード席16の乗員86は、ルーフ窓ガラス19で前方斜め上の視界を矢印Eの如く良好に確保することができる。
【0051】
以上説明したように、運転席13の座面13aをセカンド席15の座面15aやサード席16の座面16aに対して低く設定し、それぞれの席13,15,16に着座した運転者85および乗員86の前方にフロント窓ガラス18を設けることで、ルーフ42の後部を高くすることなく、運転者85の視界および後席乗員86の前方視界を良好に確保することができる。
【0052】
また、運転席13の座面13aをセカンド席15の座面15aやサード席16の座面16aの座面に対して低く設定し、運転者85および後席乗員86のそれぞれの前方にフロント窓ガラス18を設けた。
これにより、フロント窓ガラス18の傾斜角θを小さく抑えることが可能になり、車両(乗用車)の外観性や空力性能を良好に確保することができる。
【0053】
また、運転席13の座面13aをセカンド席15の座面15aやサード席16の座面16aに対して低く設定し、運転者85および後席乗員86のそれぞれの前方にフロント窓ガラス18を設けた。
これにより、従来技術のようにルーフ42の後部を高く形成する必要がなく、車両の重心を低く抑えることができる。
【0054】
さらに、従来技術のようにルーフ42の後部を高く形成する必要がないので、運転者85の空間12aおよび後席乗員86の空間12bを分けることなく一つの車室12とすることができる。
これにより、運転者85と後席乗員86とのコミュニケーションを良好に保つことができる。
【0055】
加えて、運転席13の座面13aをセカンド席15の座面15aやサード席16の座面16aに対して低く設定した。よって、運転者85と後席乗員86との着座高さに差をつける目的でフロアパネルの後部を高くする必要がない。
セカンド席15の座面15aやサード席16の座面16aを高くする必要がないので、後席乗員86の乗降性を良好に保つことができる。
【0056】
ところで、右横ピラー49は、右フロントピラー37の略中央37cから車体後方に延出され、後端部49aが左縦ピラー46の上端部46a近傍に連結されている。
右横ピラー49を右フロントピラー37の略中央37cから車体後方に延出することで、右横ピラー49はフロントガラスレール41と同じ高さに設けられている。
【0057】
ここで、フロントガラスレール41でフロント窓ガラス18を仕切ることで、下側フロント窓ガラス55が運転者85の前方に設けられ、上側フロント窓ガラス56がセカンド席15やサード席16の乗員86の前方に設けられている。
よって、フロントガラスレール41は、運転席13に着座した運転者85の頭部85aとセカンド席15やサード席16に着座した乗員86の頭部86との間に設けられている。
これにより、右横ピラー49をフロントガラスレール41から延出することで、右横ピラー49を運転者85の視界、およびセカンド席15やサード席16の乗員86の視界を遮らない部位に設けることができる。
【0058】
なお、図4に示す左横ピラー48も、右横ピラー49と同様に、運転者85の視界、およびセカンド席15やサード席16の乗員86の視界を遮らない部位に設けることができる。
【0059】
さらに、右横ピラー49の上側に右上窓ガラス79が設けられている。よって、右上窓ガラス79は運転者85の上方に配置されている。
図4に示す左上窓ガラス76も、右上窓ガラス79と同様に、運転者85の上方に配置されている。
【0060】
図7は本発明に係る乗用車の車両構造を車室内から見た状態を示す図である。
フロントガラスレール41は、車体後方を視認するルームミラー(バックミラー)91と、ルームミラー91の左右側に設けられて光を遮る左右のサンバイザー(サンバイザー)92,93とを備える。
【0061】
フロントガラスレール41をルームミラー91や左右のサンバイザー92,93を設ける部材として兼用することで、ルームミラー91や左右のサンバイザー92,93を設けるために専用部材を設ける必要がない。
【0062】
これにより、図5に示す運転席13に着座した運転者85や、セカンド席15やサード席16に着座した乗員86の視界が、ルームミラー91や左右のサンバイザー92,93を設けるための専用部材で遮られることがない。
さらに、ルームミラー91や左右のサンバイザー92,93を設けるために専用部材を設ける必要がないので、部品点数を抑えることができる。
【0063】
左横ピラー48には、図示しない左エアバッグや左サイドカーテンが設けられている。
左横ピラー48を左エアバッグや左サイドカーテンを設ける部材として兼用することで、図示しない左エアバッグや左サイドカーテンを設けるために専用部材を設ける必要がない。
右横ピラー49には、左横ピラー48と同様に、図示しない右エアバッグや右サイドカーテンが設けられている。
右横ピラー49を右エアバッグや右サイドカーテンを設ける部材として兼用することで、図示しない右エアバッグや右サイドカーテンを設けるために専用部材を設ける必要がない。
【0064】
つぎに、乗用車の車両構造10のセカンド席15やサード席16に着座した乗員86の視界を図8〜図9に基づいて説明する。
図8は本発明に係る乗用車の車両構造のセカンド席に着座した乗員の視界について説明する図である。
運転席13および助手席14の後方のセカンド席15(図6参照)に乗員86が着座している。
セカンド席15の乗員86は、運転席13、運転席13に着座した運転者85、助手席14や助手席14に着座した乗員87に遮られることなく車外の展望をパノラマ的に確保することができる。
【0065】
すなわち、セカンド席15の乗員86は、フロント窓ガラス18(下側フロント窓ガラス55および上側フロント窓ガラス56)、左右の上窓ガラス76,79や左右のフロントサイド窓ガラス21a,22aから車外の景色96を広い範囲で見ることができ、十分な展望を確保することができる。
特に、乗員86は、比較的大きな上側フロント窓ガラス56から車外の景色96を見ることが可能になり、車外の景色96の展望を良好に確保することができる。
【0066】
図9は本発明に係る乗用車の車両構造のサード席に着座した乗員の視界について説明する図である。
セカンド席15の後方のサード席16(図5参照)に乗員86が着座している。
サード席16の乗員86は、運転席13、運転席13に着座した運転者85、助手席14および助手席14に着座した乗員87、セカンド席15やセカンド席15に着座した乗員86に遮られることなく車外の展望をパノラマ的に確保することができる。
【0067】
すなわち、サード席16の乗員86は、フロント窓ガラス18(下側フロント窓ガラス55および上側フロント窓ガラス56)、ルーフ窓ガラス19、左右の上窓ガラス76,79、左右のフロントサイド窓ガラス21a,22aや左右のリヤサイド窓ガラス23a,24aから車外の景色96を広い範囲で見ることができ、十分な展望を確保することができる。
特に、乗員86は、比較的大きな上側フロント窓ガラス56、ルーフ窓ガラス19から車外の景色96を見ることが可能になり、車外の景色96の展望を良好に確保することができる。
【0068】
なお、前記実施の形態では、フロアパネル81の前フロア部82を後フロア部83に対してH寸法だけ下方に設けることで、運転席13の座面13aを、セカンド席15の座面15aやサード席16の座面16aに対して低く設定した例について説明したが、座面13aを座面15a,16aに対して低くする方法はこれに限定するものではない。
【0069】
例えば、フロアパネル81の前フロア部82および後フロア部83を平坦に形成し、運転席13をスポーツカータイプのように可能な限り下方に配置し、セカンド席15やサード席16のシートクッション厚さ寸法を大きくすることで、運転席13の座面13aを、セカンド席15の座面15aやサード席16の座面16aに対して低く設定することも可能である。
【0070】
また、前記実施の形態では、乗用車の車両構造10として運転席13の後方に後席としてセカンド席15およびサード席16を備えた車両を例示したが、これに限らないで、運転席13の後方に後席としてセカンド席15のみを備えた車両とすることも可能である。
【0071】
さらに、前記実施の形態では、フロントガラスレール41にルームミラー91や左右のサンバイザー92,93を設けた例について説明したが、これに限らないで、上側フロント窓ガラス56にルームミラー91や左右のサンバイザー92,93を設けることも可能である。
【0072】
また、前記実施の形態では、左右の横ピラー48,49にエアバッグやサイドカーテンを設けた例について説明したが、これに限らないで、左右のフロントサイドドア21,22のドア内装に設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の乗用車の車両構造は、運転席の後部に後席を備えるとともに運転席の前方にフロント窓ガラスと後席の上方にルーフを備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る乗用車の車両構造を前斜め上方から見た状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る乗用車の車両構造を前斜め前方から見た状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る乗用車の車両構造を示す分解斜視図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明に係る乗用車の車両構造を示す断面図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】本発明に係る乗用車の車両構造を車室内から見た状態を示す図である。
【図8】本発明に係る乗用車の車両構造のセカンド席に着座した乗員の視界について説明する図である。
【図9】本発明に係る乗用車の車両構造のサード席に着座した乗員の視界について説明する図である。
【符号の説明】
【0075】
10…乗用車の車両構造、11…車体、12…車室、13…運転席、13a…運転席の座面、15…セカンド席(後席)、15a…セカンド席(後席)の座面、16…サード席(後席)、16a…サード席(後席)の座面、18…フロント窓ガラス、19…ルーフ窓ガラス、36…左フロントピラー(フロントピラー)、37…右フロントピラー(フロントピラー)、41…フロントガラスレール、42…ルーフ、45…左縦ピラー(縦ピラー)、46…右縦ピラー(縦ピラー)、48…左横ピラー(横ピラー)、48a…左横ピラーの後端部、49…右横ピラー(横ピラー)、49a…右横ピラーの後端部、55…下側フロント窓ガラス、56…上側フロント窓ガラス、85…運転者、85a…運転者の頭部、86…乗員、86a…乗員の頭部、91…ルームミラー(バックミラー)、92…左サンバイザー(サンバイザー)、93…右サンバイザー(サンバイザー)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が着座する運転席と、運転席の後部に後席を備えるとともに運転席の前方にフロント窓ガラスと後席の上方にルーフを備えた乗用車の車両構造において、
前記後席に着座した乗員の頭部を運転席に着座した運転者の頭部より上方になるように運転席の座面を後席の座面に対して低く設定し、
前記運転席に着座した運転者および前記後席に着座した乗員のそれぞれの前方に前記フロント窓ガラスを設け、
前記フロント窓ガラスの略中央に、前記フロント窓ガラスを下側フロント窓ガラスおよび上側フロント窓ガラスに仕切るフロントガラスレールを設け、
前記下側フロント窓ガラスを前記運転席に着座した運転者の前方に設け、
前記フロントガラスレールと前記ルーフとの間に設けられた前記上側フロント窓ガラスを、前記後席に着座した乗員の前方に設けたことを特徴とする乗用車の車両構造。
【請求項2】
前記フロントガラスレールに、車体後方を視認するバックミラー、眩光を遮るサンバイザーを備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗用車の車両構造。
【請求項3】
前記ルーフの後端部から車体の側部に沿って下方に延出された縦ピラーと、
前記フロントガラスレールから車体後方に向けて延出され、後端部が前記縦ピラーに連結された横ピラーと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗用車の車両構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−46051(P2009−46051A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215108(P2007−215108)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】