説明

乗用車

【課題】 後部座席の乗員がトレイを使用することができる自動車用トレイ装置を提供する。
【解決手段】コンソールボックス2には、その後端面下部から前方へ向かって水平に延びる収容孔4を形成する。この収容孔4には、トレイ5を挿脱可能に収容させる。トレイ5の使用時には、トレイ5を収容孔4から抜き出す。その後、トレイ5の前端部に形成された係合突出部5fをコンソールボックス2の後端面上部に形成された係合孔2aに挿入するとともに、トレイ5の後端部を後部座席3のシートクッション3a上に載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、後部座席の乗員がコップ等を保持可能なトレイを使用することができるようにするための自動車用トレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のトレイ装置としては、下記特許文献1に記載のものがある。この特許文献1に記載のトレイ装置は、乗用車の前部座席(運転席及び/又は助手席)の背面部に設けられたテーブル(トレイ)を有している。テーブルは、不使用時には前部座席の背面に沿うように折り畳まれ、使用時には水平位置に回動させられる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−266956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のトレイ装置においては、前部座席をリクライニング状態に倒したときにはテーブルを使用することができないという問題があった。また、不使用時には、テーブルのほぼ全体が後部座席の乗員に目視される状態になっており、車内の美観が損なわれるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するために、車内前部に、運転席、助手席及びこれらの間に配置されたコンソールボックスが設けられ、車内後部に後部座席が設けられた自動車において、上記車内後部に臨む上記コンソールボックスの後面下部と上記後部座席の前面下部との少なくとも一方に収容孔が設けられ、この収容孔にトレイが前後方向へ出没可能に収容され、上記トレイの前後方向の長さが、上記コンソールボックスの後端部と上記後部座席の前端部との間に掛け渡し可能な長さに設定されていることを特徴としている。
この場合、上記コンソールボックスの後面上部に、上記トレイの前端部が上下及び左右方向へ移動不能に係合する係合部が形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、トレイを収容孔から取り出した後、トレイをコンソールボックスの後端部と後部座席の前端部との間に掛け渡すことにより、後部座席の乗員がトレイを使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図3は、この発明の一実施の形態を示す。この実施の形態の自動車においては、車内前部Fに運転席1及び助手席(図示せず)が左右方向へ互いに離間して設けられている。運転席1と助手席との間には、コンソールボックス2が設けられている。また、車内後部Rには、後部座席3が設けられている。
【0008】
コンソールボックス2には、収容孔4が設けられている。収容孔4は、前後方向へ水平に延びており、その後端部がコンソールボックス2の後端面下部に開口している。収容孔4は、上下方向において互いに連通した上側の上孔部4aと下側の下孔部4bとから構成されている。上孔部4a及び下孔部4bは、いずれも左右方向の長さが上下方向の長さより長い断面長方形状に形成されている。下孔部4bの左右方向の長さは、上孔部4aの左右方向の長さより短く設定されている。しかも、下孔部4bは、その左右方向の中央が上孔部4aの左右方向の中央と一致するように配置されている。この結果、上孔部4aの左右の両側部は、下孔部4bから左右方向に突出し、一種のガイド溝の状況を呈している。
【0009】
上孔部4aの上側面の開口側端部は、後方へ向かうにしたがって上方へ向かう逃げ面4cとされている。また、下孔部4bの開口側端部の両側部には、切欠き部4dが形成されている。この結果、収容孔4の開口縁における形状は、左右方向の長さが上孔部4の左右方向の長さと同一で、上下方向の長さが、上孔部4aの上下方向の長さ、下孔部4bの上下方向の長さ、及び逃げ面4cの上下方向の長さを加えた長さと同一である長方形になっている。収容孔4の開口部側端部をこのように構成した理由は後述する。
【0010】
収容孔4には、トレイ5が挿脱可能に収容されている。トレイ5は、平板部5aを有している。平板部5aは、上孔部4bとほぼ同一の断面形状を有しており、上孔部4aに摺動可能に挿入されている。平板部5aの下面の先端部には、突出部5bが形成されている。この突出部5bは、下孔部4bに挿脱可能に挿入されている。突出部5bは、必ずしも形成する必要がない。突出部5bを形成しない場合には、トレイ5が平板部5aだけで構成されることになり、それに対応して収容孔4が上孔部4aだけで構成されることになる。平板部5aの上面の突出部5bに対応する箇所には、凹部5cが形成されている。この凹部5cには、例えばチューインガム等の小物が収容される。凹部5aと平板部5aの後端との間には、平板部5aを上下に貫通する二つの貫通孔5d、5dが前後方向へ互いに離間して形成されている。各貫通孔5dには、例えばテーパ状をなすコップが挿入支持される。
【0011】
平板部5aの下面の後端部には、下方に突出する遮蔽部5eが形成されている。この遮蔽部5eの突出量は、下孔部4bの上下方向の長さとほぼ同一に設定されている。平板部5aの先端面の左右方向における中央部には、係合突出部5fが形成されている。この係合突出部5fの先端面から平板部5aの後端面までの長さ、つまりトレイ5の前後方向の長さは、収容孔4の長さ(深さ)とほぼ同一に設定されている。したがって、係合突出部5fの先端面が上孔部4aの底面に突き当たるまでトレイ5を収容孔4に挿入すると、図1に示すように、トレイ5全体が収容孔4に収容され、トレイ5の後端面(平板部5a及び遮蔽部5eの両後端面)がコンソールボックス2の後端面とほぼ面一になる。しかも、収容孔4の開口部が、逃げ面4cが形成された部分を除いて、トレイ5の平板部5aの後端部及び遮蔽部5eによって閉じられる。
【0012】
コンソールボックス2の後端面の上部には、係合凹部(係合部)2aが形成されている。この係合凹部2aは、係合突出部5fの断面形状とほぼ同一の断面形状を有している。したがって、係合凹部2aに係合突出部5fを挿入すると、トレイ5の少なくとも前端部が上下方向及び左右方向へ移動不能になる。
【0013】
平板部5aの前後方向の長さは、コンソールボックス2の後端面と後部座席3の前面との間の距離より長く設定されている。したがって、平板部5aの前端面がコンソールボックス2の後端面に突き当たった状態では、遮蔽部5eが後部座席3のシートクッション3aの前端部より若干後方に位置する。しかも、係合突出部5fが係合凹部2aに挿入された状態では、遮蔽部5eがシートクッション3aと上下に対向するようになり、遮蔽部5eをシートクッション3a上に載置すると、トレイ5がほぼ水平になる。
【0014】
上記構成の自動車用トレイ装置において、いま、トレイ5が図1において実線で示すように、収容孔4に収容されているものとする。トレイ5をコップ立て等として使用する場合には、まずトレイ5を収容孔4から抜き出す。このとき、トレイ5の全長がコンソールボックス2の後端面と後部座席3の前端面との間の距離より長いので、トレイ5を単に後方へ移動させると、トレイ5全体が収容孔4から抜け出る前にトレイ5が後部座席3の前端面に突き当たってしまう。そこで、トレイ5を所定の位置まで後方へ移動させた後は、図1において想像線で示すように、トレイ5を水平方向後方(矢印A方向)へ移動させつつ、トレイ5の後端部を矢印B方向へ回動させる。これによって、トレイ5を後部座席3に突き当たることなく収容孔4から抜き出すことが可能になっている。トレイ5をこのようにして抜き出すことができるようにするために、逃げ面4c及び切欠き部4dが形成されているのである。
【0015】
収容孔4から抜き出されたトレイ5は、その係合突出部5fが係合凹部2aに挿入されるとともに、遮蔽部5eが後部座席3のシートクッション3a上に載置される。これによって、後部座席3に着座した乗員がトレイ5を使用することができる。
【0016】
トレイ5は、上記と逆の手順によって収容孔4に収容することができる。収容孔4に収容されたトレイ5は、その後端面が目視されるだけである。したがって、車内の美観が損なわれることがない。
【0017】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、トレイ5を収容する収容孔4をコンソールボックス2の車内後部Rに臨む後端面下部に形成しているが、図1において想像線で示すように、後部座席3のシートフレーム3bの前面下部に収容孔4を形成してもよい。
また、トレイ5については、前後方向へ移動可能に係合する前後二つの部材によって構成することによって前後方向へ伸縮可能に構成し、トレイ5を縮小させたときにはその前後方向の長さがコンソールボックス2と後部座席3との間の距離より短くなり、伸張させたときにはトレイ5の前後方向の長さがコンソールボックス2と後部座席3との間の距離より長くなるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施の形態の要部を、トレイを収容孔に収容させた状態で示す一部切欠き側面図である。
【図2】同実施の形態の要部を、トレイをコンソールボックスと後部座席との間に掛け渡した状態で示す一部切欠き側面図である。
【図3】同実施の形態の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
F 車内前部
R 車内後部
1 運転席
2 コンソールボックス
2a 係合凹部(係合部)
3 後部座席
3a シートクッション
3b シートフレーム
4 収容孔
5 トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内前部に、運転席、助手席及びこれらの間に配置されたコンソールボックスが設けられ、車内後部に後部座席が設けられた自動車において、
上記車内後部に臨む上記コンソールボックスの後面下部と上記後部座席の前面下部との少なくとも一方に収容孔が設けられ、この収容孔にトレイが前後方向へ出没可能に収容され、上記トレイの前後方向の長さが、上記コンソールボックスの後端部と上記後部座席の前端部との間に掛け渡し可能な長さに設定されていることを特徴とする自動車用トレイ装置。
【請求項2】
上記コンソールボックスの後面上部に、上記トレイの前端部が上下及び左右方向へ移動不能に係合する係合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用トレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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