説明

乱丁検査装置

【課題】基準画像と撮像画像との一致率を低く設定することができる乱丁検査装置。
【解決手段】複数の丁合駒を有する丁合装置に設けられ、前記丁合駒から1部ずつ取り出された折丁の印刷面の一部を検査画像として撮像し、該検査画像と予め記憶された基準画像とを比較して乱丁を検査する乱丁検査装置であって、折丁の印刷面の一部を撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像された撮像画像の一部を切り取った対象画像から複数の基準画像を設定する基準画像設定手段と、該複数の各基準画像と検査画像とをそれぞれ対比して乱丁を判断する乱丁判断手段と、対象画像における平均濃度およびコントラストを算出する対象画像状態算出手段と、対象画像状態算出手段により算出された状態を表示する対象画像状態表示手段と、を有し、複数の基準画像は、対象画像状態表示手段における表示に基づいて選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は,帳票等を丁合する際に乱丁を検査する乱丁検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製本中での乱丁、落丁等(本明細書においては乱丁と総称する)の検査装置として、従来から、CCDカメラを用いた乱丁検査装置が知られている。
例えば、中綴じ機械においては、丁合駒ごとにストックされた帳票は、各丁合駒の帳票取出機構によって1枚ずつ取り出され、搬送装置(ギャザリングチェーン)に配置された鞍上に順に載置され、丁合束として形成されて下流の中綴じ機に搬送される。
ここで、該丁合駒ごとに配置された乱丁検査用のCCDカメラがその折丁画像を撮影し、その撮像画像と予め登録されている基準画像とを比較して折丁の画像異常の有無を検出し、その画像異常の検出信号と、CCDカメラの撮像を行うタイミング及び搬送装置(ギャザリングチェーン)の折丁送り量とによって、どの丁合駒で乱丁が起きたかを検知することが行われている。
【0003】
ここで、撮影画像と予め登録されている基準画像とを比較して乱丁を検出するに際し、基準画像の領域を広く設定すると、撮像画像との相違点がわずかな違いにしかならないため、基準画像と撮像画像との一致率を下げられず、乱丁を正確に検出するためには一致率を高く設定しなければならない。一方、基準画像の領域を狭く設定すると、他の折丁、例えば、隣接する丁合駒における折丁において同様の撮像画像を得る可能性が高くなるため(隣接駒間における丁合画像は、往々にして類似性が高いことによる。)、隣接駒間の誤挿入等を検知するには、やはり、一致率を高く設定しなければならない。
しかしながら、撮像画像には折丁が搬送される際に発生する歪みや撓みが反映されるため、このように一致率を高く設定すると、この歪みや撓みが誤検知の要因となってしまう。
【0004】
そこで、一致率を低く設定しても誤検知が発生しないようにするために、基準画像の領域を設定する際に、隣接する丁合駒間で類似性の低い丁合画像を当該駒における基準画像として採用することが提案されている。(特許文献1)
また、基準画像の領域を当該折丁の特徴的部分に設定するための設定手段を設けることも提案されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−136925号公報
【特許文献2】特開2009−292088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のように、隣接する丁合駒間で折丁画像を相互に比較して、類似性の低い丁合画像を基準画像として設定するには、そのための時間と手間が必要になるし、装置も高価になる。また、丁合駒への折丁の誤挿入は隣接する丁合駒間のみに発生するわけではないから、精確な乱丁検査の失敗予防をするためには、隣接する駒間だけでなく全部の丁合駒間での類似性を判断することが必要であり、駒数が多くなると、基準画像の設定に更に手間と時間が掛かると共に、そのための装置もコスト高となってしまう。
また、特許文献2のように、特徴的部分への設定手段を有していても、その紙面画像中に基準画像と同じ文字列や図柄、或いは類似した文字列や図柄が存在してしまった場合には、一致率を下げて運用していると、良品と判断してしまう検査ミスが生じる可能性があり、一致率を上げて運用しても、上記したように、搬送中の歪みや撓みが誤検知の要因となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明は、複数の丁合駒を有する丁合装置に設けられ、前記丁合駒から1部ずつ取り出された折丁の印刷面の一部を検査画像として撮像し、該検査画像と予め記憶された基準画像とを比較して乱丁を検査する乱丁検査装置であって、
前記折丁の印刷面の一部を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像された撮像画像の一部を切り取った対象画像から複数の前記基準画像を設定する基準画像設定手段と、前記複数の各基準画像と前記検査画像とをそれぞれ対比して乱丁を判定する乱丁判定手段と、前記対象画像における画像状態を検出する対象画像状態検出手段と、を有し、
前記複数の基準画像は、前記対象画像状態検出手段における検出結果に基づいて選択されることを特徴とする乱丁検査装置とした。
【0008】
このように構成したことにより、一致率を必要以上に高く設定する必要がないので、折丁の搬送に伴う歪みや撓み、外乱光などに影響されない安定した検査結果を得ることができる。
また、撮像画像の内から検査に適した基準画像を選択するにあたって、対象画像状態を検査する対象画像状態検出手段の検出結果に基づいて選択することができるとともに、対象画像における特徴部分の抽出を綿密に行って基準画像の設定をする必要もないので、設定時間の短縮が図れ、迅速な作業ができる。
さらに、隣接駒間との類似性の低い部分の抽出を考慮する必要がないので、装置自体のコストパフォーマンスに優れている。
【0009】
また本発明は、前記対象画像状態検出手段は、前記対象画像における平均濃度およびコントラストを算出する手段であり、前記対象画像状態検出手段による検出結果を表示する対象画像状態表示手段を有することを特徴とする乱丁検査装置とした。
【0010】
このように構成したことにより、対象画像の基準画像としての適否評価を平均濃度とコントラストの2つのファクターを用いて簡便に行えるので、基準画像としての適否評価において特徴部分の抽出を厳密に行う必要がなく、基準画像の設定作業が容易である。
また、対象画像状態表示手段に表示される平均濃度とコントラストの2つのファクターを観つつ基準画像の設定作業を行うことができるので、作業が容易である。
【0011】
また本発明は、前記対象画像状態検出手段における検出結果が基準画像として適切な所定範囲の範囲内であるか否かを判定する基準画像判定手段を有し、前記基準画像設定手段は、前記基準画像判定手段が基準画像として適切であると判定した前記対象画像を前記基準画像として選択することを特徴とする乱丁検査装置とした。
【0012】
このように構成したことにより、基準画像設定手段は平均濃度およびコントラストが所定範囲内にある場合の対象画像を基準画像として選択するので、オペレーターが対象画像状態表示手段における表示をいちいち見ながら行う必要がない。
【0013】
また本発明は、前記基準画像設定手段によって前記平均濃度あるいはコントラストが所定範囲外である対象画像を基準画像として選択した場合、選択した当該基準画像が前記所定範囲外であることを注意表示する範囲外選択表示手段を有することを特徴とする乱丁検査装置とした。
【0014】
このように構成したことにより、オペレーターの選択設定した基準画像が基準画像としてふさわしくない場合に、ふさわしくないことを表示することができるので、オペレーターに注意喚起を促すことで基準画像設定を適切に行うことができる。
【0015】
さらに本発明は、前記基準画像設定手段によって設定する前記基準画像数を2個とし、前記乱丁判断手段は、前記設定した2個の基準画像と該2個の基準画像に対応する検査画像とを比較して、該2個の検査画像がいずれも所定の一致率以上で一致した場合に、正常な丁合が行われたと判断することを特徴とする乱丁検査装置とした。
【0016】
このように構成したことにより、折丁の搬送に伴う歪みや撓み、外乱光などに影響されない安定した検査結果を得ることができる。
また、撮像画像の内から検査に適した基準画像を選択するにあたって迅速な作業ができる。
さらに、隣接駒間との類似性の低い部分の抽出や、対象画像における特徴部分の抽出をする必要がないので、装置自体のコストパフォーマンスに優れている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、このように構成したことにより、基準画像の設定作業が容易であるにも関わらず基準画像と検査画像との一致率(閾値)を低く設定でき、折丁の歪みや撓みに影響されない検査結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】中綴じ製本ラインに適用した乱丁検査装置の全体構成図。
【図2】本発明における乱丁検査装置の構成図。
【図3】本発明における乱丁検査装置の駒乱丁検査部の外観図。
【図4】本発明における乱丁検査装置の検査タイミングの説明図。
【図5】本発明における乱丁検査装置の検査フロー図。
【図6】本発明における基準画像としての最適範囲を説明する説明図。
【図7】本発明における折丁画像、撮像画像、基準画像の関係を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本件発明の第1の実施の形態例を、丁合装置に応用した例を用いて、以下に説明する。
なお、以下の説明における「撮像画像」、「対象画像」、「基準画像」、「検査画像」を定義付けると、図7に示すように、「撮像画像」Aは、用紙(折丁)Bの一部を撮像手段が撮像した全範囲の画像をいい、「対象画像」Cは、撮像画像の一部であって基準画像として適しているか否かを判定する判定対象の画像をいい、「基準画像」Dは、対象画像の中から、乱丁検査のための対比画像として適していると判定されて選択され、記憶される画像をいい、「検査画像」Eは、各丁合駒から取り出された折丁の印刷面の一部を撮像手段が撮像した被検査画像の一部であって、基準画像位置によって規定される所定のサーチエリアを有する画像をいう。
【0020】
丁合装置10は、図1に示すように、それぞれに折丁収納手段11を有した複数の丁合駒10-1〜nを有しており、また、水平方向に延びた回転軸13、当該回転軸13を回転駆動する駆動部16、折り丁収納手段11を支持する折り丁載台12、各折り丁収納手段11に対応して当該回転軸13に配設された複数のドラム14、各丁合駒10-1〜nからの折丁を搬送する搬送ライン(ギャザリングチェーン)17、及び該搬送ライン17上に設けられる鞍(図示せず)とから構成されている。
回転軸13が回転駆動されると、各丁合駒10-1〜nの折丁載台12に載置された折丁が、ドラム14の爪にて1部ずつ引き出されて搬送ライン17の鞍上に落下する。
落下した折丁は、搬送されるに従い各丁合駒から順に上積みされて、丁合装置10終端において当該複数の折丁全てがページ順に積層された丁合束が形成される。
【0021】
乱丁検査装置20は、図1、図2に示すように、各丁合駒10-1〜nに1つずつ配置される駒乱丁検査部20-1〜nと、ネットワーク(I/O)を介して接続されるライン制御ユニット30から構成されている。
各駒乱丁検査部20-1〜nは、いずれも同一の構成を有しており、それぞれ、折丁を撮像する撮像手段21、検査側制御部22、入力操作手段23、表示手段24を有している。
撮像手段21は、丁合駒10-1〜nから引き出された折丁の印刷面の一部を撮像するCCDカメラ等からなる撮像手段である。
【0022】
検査側制御部22は、前記撮像手段で撮像された撮像画像の一部を切り取って対象画像情報を取得する等の画像処理を行う丁合画像処理手段22aと、該丁合画像処理手段22aで切り取った対象画像情報の平均濃度およびコントラストを算出する対象画像状態検出手段22bと、該対象画像状態検出手段22bにおける算出結果が基準画像として適切な所定範囲の範囲内であるか否かを判定する基準画像判定手段22cと、該基準画像判定手段22cにおける判定結果が基準画像として適切であると判断した複数の対象画像を基準画像として選択し記憶する基準画像設定手段22dと、該複数の各基準画像と検査画像とをそれぞれ対比して乱丁を判定する乱丁判定手段22eと、その判定結果を当該乱丁駒における各種設定情報と共に記憶する検査情報記憶手段22fと、乱丁判定手段22eから検査情報と入力操作手段23からの設定情報とに基づいて当該丁合装置10を停止する等の制御を行ったり、ネットワーク(I/O)を介してライン制御ユニット30へ検査情報等を出力したりする駒制御手段22gと、を有している。
【0023】
入力操作手段23は、検査側制御部22に対して、基準画像として許容される平均濃度およびコントラストの範囲を設定したり、基準画像と検査画像との許容される一致率を設定したり、あるいは乱丁が連続して発生した場合に丁合装置10を停止する条件を設定したりする入力手段である。
さらに、表示手段24は、撮像手段21で撮像している撮像画像や該撮像画像から特定される対象画像、さらには入力操作手段23によって入力される設定値等を表示したりする液晶表示手段である。
そして、該駒乱丁検査部20-1〜nは、撮像手段21を除き、図3に示す筐体28に収納されており、該筐体28は、オペレーターによって操作されるように各丁合駒10-1〜nの近傍にそれぞれ配置されている。
【0024】
該ライン制御ユニット30は、ネットワーク(I/O)を介して複数の駒乱丁検査部20-1〜nを制御するために、各検査側制御部22とは別個に設けられているものであり、1台で、あるいは最小限の台数で、丁合装置10および乱丁検査装置20を含むシステム全体の制御をするように構成されている。
該ライン制御ユニット30は、図2に示すように、各丁合駒10-1〜nに共通する標準時刻を供給する標準時刻供給手段30b(タイムサーバ30b−1及び電波時計30b−2)、各丁合駒10-1〜n毎の検査側制御部22等へ各種設定情報を入力する入力操作手段30d、該入力操作手段30dによる入力操作や各駒乱丁検査部20-1〜nの稼働状態等を表示する表示手段30c、各駒乱丁検査部20-1〜nからの検査情報を集計分析し記憶する検査情報分析・記憶手段30e、およびスターター15からのスタート信号31、エンコーダー32からのパルス信号及び入力操作手段30dからの入力信号等を受けてライン制御ユニット30を制御するメイン制御手段30aを有している。
該メイン制御手段30aは、前記設定情報および検査情報に基づき、丁合装置10および乱丁検査装置20を制御するものであり、丁合装置10に乱丁が発生して乱丁検査装置20から乱丁検査情報(検査情報)が出力された場合に丁合装置10を自動停止したり、入力操作手段30dによる設定情報に基づき、当該駒乱丁検査部20-1〜nに対し該設定情報を出力したり、駒乱丁検査部20-1〜nのストップスイッチをオペレーターが操作した場合に、丁合装置10全体を強制停止したりする機能を備えている。
【0025】
スターター15は、ドラム14の一回転毎にスタート信号31を発生させるものであり、各検査側制御部22に内蔵したカウンターは、メイン制御手段30aを通して供給される該スタート信号31をカウントアップする。したがって、このカウンターのカウント数により、各丁合駒における折丁の特定が可能となる。
エンコーダー32はドラム14の回転に同期してパルス信号を発生するものであり、該パルス信号により、折丁収納手段11に対するドラム14上に設けられた爪の基準位置(回転角度位置)が設定される。
【0026】
そして、該駒乱丁検査部20-1〜nは、撮像手段21を除き、図3に示す筐体28に収納されており、該筐体28は、オペレーターによって操作されるように各丁合駒10-1〜nの近傍にそれぞれ配置されている。
該筐体28の前面側には、表示手段24と共に、その表示手段24の周囲の操作パネル上に入力操作手段23が設けられており、さらにその上部には、検査異常等を報知するための赤色回転ランプ25が設けられている。
また、表示手段24は、撮像画像のための表示領域の右側の表示領域24’に、対象画像状態検出手段22bが算出した平均濃度やコントラスト等に基づく対象画像状態を表示する対象画像状態表示手段24a、および基準画像として選択した対象画像の平均濃度やコントラストが、オペレーターが入力操作手段23によって予め設定した乱丁判定の許容範囲外である場合に、範囲外であることを注意表示する範囲外選択表示手段24bを有している。
さらに、該表示領域24’には、これら表示の他に、乱丁判定手段22eによって判定された一致率の値や、入力操作手段によって設定された各種数値、例えば許容エラー枚数や検査モードなどが併せて表示される。
【0027】
また、撮像手段21のための撮像画像領域には、検査画像領域を囲む検査画像領域線24cと、対象画像の画像領域を囲む対象画像領域線24d(該対象画像領域線24dは、その対象画像が基準画像として設定される場合には、基準画像の画像領域を囲む基準画像領域線24d’となる。)と、が表示される。ここで、該対象画像領域線24dは青色、基準画像領域線24d’は赤色として、その線色を異ならせるなどによってお互いを区別できるように構成されており、したがって、対象画像の画像領域内に赤線で囲まれた領域がある場合には、その領域が基準画像として選択設定されたものであることを区別することができる。
【0028】
該対象画像領域線24dは、操作パネル上に設けられている対象画像移動スイッチ23aの操作によって、X,Y方向に移動させることができるように構成されている。その際、対象画像の移動量は、対象画像移動スイッチ23aの1回の押下により、X,Y方向いずれも、対象画像領域に対し10%の割合とされている。
そして、オペレーターによる該対象画像移動スイッチ23aの操作により該対象画像領域線24dが撮像領域内を移動すると、検査画像領域を囲む検査画像領域線24cも、該対象画像領域線24dと所定の位置関係を保ったまま移動するように構成されている。該検査画像領域線24cは、桃色に着色されて、他の領域線と区別することができるように構成されている。乱丁検査時には、該該検査画像領域線24cによって囲まれる検査画像が、予め設定された基準画像と対比されるのである。
【0029】
また、折丁における撮像画像位置を調整することができるように、撮像画像移動スイッチ23dが設けられており、該撮像画像移動スイッチ23dを操作することにより、折丁画像内を上下方向(図3に示す上下方向)に移動するように構成されている。この場合にも、該撮像画像移動スイッチ23dを1回押下する毎に、上下方向いずれも、撮像画像領域に対し10%の割合で移動するように構成されている。
【0030】
さらに、操作パネル上には、対象画像領域線24dで囲まれた対象画像を基準画像として設定するための基準画像設定スイッチ23bが設けられている。
該基準画像設定スイッチ23bは、CH1〜CH3からなる3個のスイッチを有しており、該スイッチCH1〜CH3が押下されることにより、それぞれ第1〜第3基準画像が設定されるように構成されている。また、各スイッチCH1〜CH3には、それぞれに3色(橙、緑、赤)の発光ダイオードからなる点灯手段23b’が付属されており、該点灯手段23b’の発光色によって、当該基準画像の設定状況および検査状況を区別することができるように構成されている。
より具体的には、橙色に点灯している場合には、基準画像がまだ設定されていない状態を示し、緑色で点灯する場合には、基準画像が設定され、あるいは当該設定された基準画像が検査中である状態を示し、赤色で点灯している場合には、検査中の当該基準画像に一致率の異常があり、丁合エラーが生じている状態を示す。
【0031】
次に、このように構成されている第1の実施の形態例において、複数個の基準画像を設定し、それら基準画像を用いて乱丁を検査する手順について説明する。
まず、オペレーターによる基準画像の設定について説明する。
オペレーターが、それぞれの駒乱丁検査部20-1〜nの対象画像移動スイッチ23aを操作して対象画像領域線24dを撮像画像領域内で移動させると、移動させた位置における該対象画像領域内の平均濃度およびコントラストが対象画像状態検出手段22bによって順次算出され、その算出値が対象画像状態表示手段24aに表示される。
そこで、オペレーターは、表示されたその算出値を観測しながら、その算出値が基準画像として適切な所定範囲の範囲内であるか否かを判断し、基準画像として適切であると判断した場合は、該対象画像領域線24dで囲まれた対象画像を基準画像として登録すべく、基準画像設定スイッチ23b(CH1)を押下する。これにより、当該対象画像が第1の基準画像として設定され、その画像領域が基準画像領域線24d’によって表示される。この基準画像の設定位置は、基準画像設定スイッチ23b(CH1)の押下に伴って、表示されている対象画像領域線24dが基準画像領域線24d’に変更されること(具体的には、対象画像領域線24dの青色が基準画像領域線24d’の赤色に変化したこと)により確認することができ、基準画像領域線24d’がその位置に固定表示される。この固定表示により、基準画像領域線24d’は検査位置移動スイッチ23aを操作しても移動しない。さらに、この設定作業によって、基準画像設定スイッチ23b(CH1)の点灯手段23b’が未設定状体の橙色から設定状態の緑色に点灯色が変更されるので、第1の基準画像の設定が終了したことを確認することができる。
なお、撮像画像領域内で基準画像として選択設定するに適当な領域が無い場合には、撮像画像移動スイッチ23dを押下して撮像画像位置を変更し、同様に基準画像を選択設定する作業を行う。
【0032】
このように、第1の基準画像の設定を完了すると、オペレーターは、次に、橙色に点灯している未設定の基準画像設定スイッチ23b(CH2)によって、引き続き同様な作業を行い、第2の基準画像を設定する。
この作業によって、撮像画像領域内に2個の基準画像が設定される。
同様に、基準画像設定スイッチ23b(CH3)により第3の基準画像を設定しても良いが、ここではその作業を省略する。
【0033】
ここで、上記オペレーター作業において、対象画像状態表示手段24aに表示された算出値を観測しながら、その算出値が基準画像として適切な所定範囲の範囲内であるか否かを判断する作業に関しては、次のように行われる。
本実施の形態例においては、この適切な所定範囲を、図6の斜線部に示すように、その基準画像領域内の平均濃度およびコントラストに基づいて設定する。
平均濃度は、該領域内の全画素の明暗の平均値とされており、1画素の明暗は0〜63のレベルで構成されている。乱丁を判定する際の対比判定においては、暗すぎ及び明るすぎに注意する必要があり、したがって最適な範囲は、例えば20〜45である。
コントラストは、該領域内の10画素の最も暗い部分と、同じ領域内の10画素の最も明るい部分との差によって求められる。明暗の差が小さいと、対比判定においてはっきりしない画像となる。したがって最適な範囲は、例えば20〜63である。
このように、本実施の形態例においては、平均濃度およびコントラストがいずれも該最適範囲にある対象画像を、基準画像にふさわしいものとする。
【0034】
したがって、オペレーターは、検査位置移動スイッチ23a(および、必要に応じて撮像画像移動スイッチ23d)の操作によって、撮像画像24の中から基準画像としてふさわしいと思われる位置に対象画像領域線24dを移動させる。そして、その位置の平均濃度およびコントラストを対象画像状態表示手段24aの数値によって確認し、該数値が基準画像としてふさわしい数値範囲内であれば、その位置を、基準画像設定スイッチ23b(CH1〜3)を押下して基準画像位置として設定するのである。
そして、オペレーターがこのように基準画像位置を設定したとしても、設定された基準画像がこのような適切範囲でない場合には、操作パネル上の範囲外選択表示手段24bによって、適切範囲を逸脱する設定が行われたことがオペレーターに対し報知される。オペレーターは、該報知を認識することにより、必要に応じて、当該基準画像をキャンセルして新たに基準画像を再設定する作業を行うか、あるいは第3の基準画像を設定する作業を行う。
【0035】
次に、このように2個の基準画像が設定された場合の乱丁検査について説明する。
図1および図4に示すように、スターター15は、ドラム14の一回転毎にスタート信号31を発生させるものであり、駒制御手段22gにおいて、メイン制御手段30aを通して供給される該スタート信号31をカウントアップすることにより、乱丁が発生した場合の駒乱丁検査部20−1〜nにおける当該折丁の特定が可能となる。
また、エンコーダー32はドラム14の回転に同期してパルス信号を発生するものであり、該パルス信号により、折り丁収納手段11に対するドラム14上に設けられた爪の基準位置(回転角度位置)が設定される。
【0036】
そして、図4に示すように、スタート信号31が発生されるタイミングでパルスカウントが開始され、所定のカウントウェイト(期間A)を経たところで、折丁1に対して照明用LED(図示せず)を50ms点灯して折丁画像を撮像し、所定のタイミングで、その折丁1の撮像画像を丁合画像処理手段22aに取り込む。丁合画像処理手段22aは、取り込んだ撮像画像の中から、予め設定された基準画像位置に対応した所定の位置関係に基づいて検査画像位置を特定し、その位置における検査画像情報と上記のように予め設定した基準画像情報とを乱丁判定手段22eにより対比し、乱丁判定を行う。(期間B)
その判定結果は、駒制御手段22gからネットワーク(I/O)を経てメイン制御手段30aに出力されると共に、それぞれの駒乱丁検査部の検査情報記憶手段22fに記憶される。(期間C)
また、折丁1の検査結果は、それぞれの駒乱丁検査部における表示手段24の右側の表示領域24’にデータ表示される。
次の折丁2についても、折丁1と同一のタイミング(期間A,B,C)で乱丁検査を行い、その検査結果が、同様に表示される。
【0037】
この第1の実施の形態例では、1つの折丁に対し、2つの基準画像をそれぞれに対応する検査画像と対比するために画像取得を行う。
このため、1つの折丁に対し、図4に示すように、前記期間Bに対応して行う画像取得(b)と共に、基準画像位置に対応して予め設定されたタイミングで画像取得(b’)を行って所定の検査領域を有する2個の検査画像を取得するか(例1)、或いは、前記期間Bにおいて、2つの基準画像領域を含むように、例1における所定の検査領域よりも比較的大きな検査領域を有する1個の検査画像を取得するか(例2)、を行う。
例1及び例2のいずれでも良いが、例2の場合には、基準画像が接近して配置されて1つの検査画像領域内に位置することとなるので、基準画像が例えば「シカ」と「ツカ」などのように近似している場合には、対比判断する際に2つの基準画像を混同して判断してしまう恐れが生じる。
一方、例1のように2つの検査画像を取得する場合には、検査画像を別々に対比判断するのでこのような混同は生じないが、基準画像が接近している場合でも2個の検査画像領域が選択されるので、例2と比較すると大きな検査領域となってしまい、検査処理に負担が掛かる恐れがある。
【0038】
次に、そのように取得された検査画像と、基準画像とを対比する一致率判定について説明する。
本実施の形態例では、図5に示すように、検査画像領域内において基準画像に相当する画像の画像位置の特定を、粗サーチ及び微調サーチの2段階で行うことで効率化している。
まず、粗サーチにより、基準画像に相当する画像のおおよその位置特定を行う。具体的には、検査画像領域を16分割した1つの分割枠領域(該分割枠領域は、縦(Y)方向13画素、横(X)方向20画素から構成されている。)に対し、1/4の粗さでY方向2画素、X方向1画素でシフトしつつ(S1)、基準画像との一致率が最大となる位置(基準画像との重ね合わせが最大となる点)を検出する(S2)。
次に、該粗サーチにより得られた座標の周囲を、サーチ粗さを粗くしないで微調サーチを行い(S3)、最も一致する位置を検出する(S4)。
次に、この微調サーチによって画像位置が特定できると、当該分割枠領域での基準画像に相当する画像の形状判定を行う(S5)。具体的には、基準画像から中間調領域を除去し、明るい部分と暗い部分のみを撮像画像と比較し、一致率を算出する。
次に、この作業を分割枠数分、繰り返し(S7)、分割枠数(16個)分のそれぞれの一致率を求め、それらの内から最も低い値を基準画像との一致率とする(S8)。
【0039】
このようにして、1つの基準画像に対する一致率が求められると、もう1つの基準画像に対しても、同様に一致率を求める。
そして、それら一致率を用いて、乱丁判定手段22eによる乱丁判定を行う。
本発明では、それぞれの基準画像に対する一致率に基づく合否判定を、従来よりも低く設定した閾値(この2個の基準画像を用いる実施例では、80%としている。)に基づいて行うことができる。
この乱丁判定手段22eによる乱丁判定は、2個の基準画像に対する一致率が、いずれも、このように低く設定された閾値をクリアし、合格と判断された場合には、乱丁の発生がないものとする。
これに対し、1個以上が不合格と判断された場合には、次のように判定する。つまり、2個とも不合格の場合は直ちに乱丁発生と判定し、1個が不合格である場合は、その状態が連続して発生することを条件として乱丁発生と判定する。
【0040】
次に、本件発明の第2の実施の形態例を説明する。
この第2の実施形態例では、複数の基準画像の設定が自動的に行えるように構成されている。
筐体28には、図3に示すように、基準画像設定スイッチ23bのCH1〜CH3が設けられており、該スイッチは、撮像チャンネル選択スイッチ機能を有するよう構成されている。そしてこの機能は、自動選択スイッチ23cを押下することで働くように構成されている。
この機能が働く場合、この基準画像設定スイッチ(撮像チャンネル選択スイッチ)CH1〜CH3は、それぞれ、折丁の撮像エリア内のそれぞれの所定位置を基準画像位置として自動的に選択設定するスイッチとなり、例えば該スイッチCH1を押下すると、撮像エリア内のエンコーダカウントタイミングで、図4に示すエンコーダカウントt10〜t29の画像領域を基準画像領域として選択し、スイッチCH2を押下すると、エンコーダカウントt30〜t49の画像領域を基準画像領域として選択し、スイッチCH3を押下すると、エンコーダカウントt50〜t69の画像領域を基準画像領域として選択するように構成されている。
【0041】
この際、そのように選択した画像領域の平均濃度及びコントラストが対象画像状態検出手段22bによって求められ、該数値が図6に示す適正範囲でない場合には、この画像取込位置をX方向又はY方向に領域面積に対し自動的に10%ずつシフトさせ、このシフトが適正範囲に入るまで行われる。
したがって、自動選択スイッチ23cを押下して自動選択モードに変更した後、撮像チャンネル選択スイッチCH1〜CH3を押下すると、押下したチャンネル毎に基準画像領域が設定される。
そして、その設定位置は、基準画像領域線24d’によって表示手段24上に表示されるとともに、撮像チャンネル選択スイッチCH1〜CH3にそれぞれ付属する点灯手段23b’の発光色によって、当該基準画像の設定状況および検査状況を区別することができるように構成されている。
なお、この実施形態例では、3個の撮像チャンネル選択スイッチCH1〜CH3が設けられているが、第1の実施の形態例と同様に、最低2個でよい。
また、このように設定された基準画像と検査画像との対比判定は、前記第1の実施の形態例と同様に行うことができる。
【0042】
以上記載したように、本発明では、検査画像に対する基準画像の一致率閾値を従来の90%程度から80%程度へと低く設定することが可能となることにより、検査時における外光の変化や、丁合搬送時の用紙の撓みや歪みなどに影響することのない、安定した検査結果を得ることのできる丁合検査装置を提供することができる。
また、撮像画像の内から検査に適した基準画像を選択するにあたって迅速な作業ができ、しかも、隣接駒間との類似性の低い部分の抽出をする必要がなく、対象画像における特徴部分の抽出も特にする必要がないので、装置自体のコストパフォーマンスに優れた丁合検査装置を提供することができる。
【0043】
なお、本発明は上述した実施形態例1又は2に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術思想の範囲で様々な変形が可能である。変形例としては、例えば以下のものがある。
(1)上述した実施形態では、複数(2個)の撮像エリア内にそれぞれ1個の基準画像位置を設定したが、これに限ることなく、図4の例2に示すように、1つの撮像エリア内に複数個(2個)の基準画像位置を設定するように構成することもできる。但し、1つの撮像エリア内に複数個の基準画像位置を設定する場合には、それら基準画像位置が近接することにより基準画像が近似してしまう恐れが生ずるので、本発明が比較的ラフな基準画像設定を可能とするものであるとしても、基準画像判定手段による確認がより重要になる。
【0044】
(2)上記の実施形態例では丁合対象をモノクロ画像として説明したが、カラー画像を対象としても、同様に、丁合検査装置を構成することができる。
【0045】
(3)上記の実施形態例では基準画像を2個として説明したが、2個以上であれば良く、例えば3個以上とした場合には、乱丁の発生を検出する場合の判定基準を変更することができる。例えば、3個の場合には、何れか2個の基準画像が所定の一致率でよい、などとすることができる。
【0046】
(4)上記実施の形態例では、基準画像と検査画像のパターンマッチング法として重ね合わせの部分が最大となる一致点を求める方法、いわゆる残差マッチング方法を用いているが、他の、例えば、正規化相関値法などを使用することもできる。
いずれにしても、パターンマッチングでの一致率の閾値を下げて設定することができる点では、同一である。
【0047】
(5)上記実施の形態例では、それぞれの基準画像でエラーレベル(一致率)を所定のレベル(初期値として、80%)に統一しているが、基準画像毎にエラーレベルを設定することができるように構成することもできる。例えば、コントラストがはっきりした文字画像領域が基準画像として選択されている場合には、エラーレベルを前記初期値より高くするなどにより、より高いエラーレベルとすることにより、より信頼性の高い乱丁検査装置とすることができる。このため、対象画像状態検出手段22bにおける算出値に対応させてエラーレベルを自動的に変更するように構成することもできる。
さらには、基準画像設定数に応じて、エラーレベルを更に低く設定することもできる。例えば、3個の場合には、何れか2個の基準画像が所定の一致率でよい、などとする場合には、該所定の一致率の閾値をさらに低く設定することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 丁合装置
10−1〜n 丁合駒装置
20 乱丁検査装置
21 撮像手段(撮像装置)
22a 丁合画像処理手段
22b 対象画像状態検出手段
22c 基準画像判定手段
22d 基準画像設定手段
22e 乱丁判定手段
23 入力操作手段
23b 基準画像設定スイッチ(撮像チャンネル選択スイッチ)
23c 自動選択スイッチ
24 表示手段
24a 対象画像状態表示手段
24b 範囲外選択表示手段
28 筐体
30 ライン制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の丁合駒を有する丁合装置に設けられ、前記丁合駒から1部ずつ取り出された折丁の印刷面の一部を検査画像として撮像し、該検査画像と予め記憶された基準画像とを比較して乱丁を検査する乱丁検査装置であって、
前記折丁の印刷面の一部を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像された撮像画像の一部を切り取った対象画像から複数の前記基準画像を設定する基準画像設定手段と、前記複数の各基準画像と前記検査画像とをそれぞれ対比して乱丁を判定する乱丁判定手段と、前記対象画像における画像状態を検出する対象画像状態検出手段と、を有し、
前記複数の基準画像は、前記対象画像状態検出手段における検出結果に基づいて選択されることを特徴とする乱丁検査装置。
【請求項2】
請求項1において、前記対象画像状態検出手段は、前記対象画像における平均濃度およびコントラストを算出する手段であり、前記対象画像状態検出手段による検出結果を表示する対象画像状態表示手段を有することを特徴とする乱丁検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記対象画像状態検出手段における検出結果が基準画像として適切な所定範囲の範囲内であるか否かを判定する基準画像判定手段を有し、前記基準画像設定手段は、前記基準画像判定手段が基準画像として適切であると判定した前記対象画像を前記基準画像として選択することを特徴とする乱丁検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3において、前記基準画像設定手段によって前記平均濃度あるいはコントラストが所定範囲外である対象画像を基準画像として選択した場合、選択した当該基準画像が前記所定範囲外であることを注意表示する範囲外選択表示手段を有することを特徴とする乱丁検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4において、前記基準画像設定手段によって設定する前記基準画像数を2個とし、前記乱丁判断手段は、前記設定した2個の基準画像と該2個の基準画像に対応する検査画像とを比較して、該2個の検査画像がいずれも所定の一致率以上で一致した場合に、正常な丁合が行われたと判断することを特徴とする乱丁検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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