説明

乱数発生装置及び遊技機

【課題】ソフトウェアに負担をかけず、ハードウェア構成の乱数生成回路内において、少なくとも所定カウント数毎に、初期値の変化を実現する。遊技処理の遅延や、演出バリエーションの低下等を招くことなく、遊技進行状況に伴って実行される抽選の際の、不正な乱数値取得を防止する。
【解決手段】調整カウント値をハードウェア構成の乱数発生装置300で生成することで、不正行為を軽減する。さらに、カウント値が1周する毎に不規則値を加算する構成としたため、高速カウントの下での初期値変更が可能となり、さらに不正行為防止のセキュリティを強化することができる。また、初期値変更は、乱数発生装置300内で行っているため、主制御部150のソフトウェアによるプログラム処理に負担をかけることがなく、図柄変動パターン演出の演出バリエーションを低下させることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガ信号に基づいて乱数を取得するための乱数発生装置及びこの乱数発生装置を用いた遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遊技機、例えばパチンコ機においては、遊技盤面に設けられた特別図柄始動入賞口に遊技球が入賞すると、制御上、内部的に当/落抽選(以下、「特別図柄抽選」という)が実行される。
【0003】
この特別図柄抽選を、より詳細に説明すると、始動入賞口に遊技球が入賞したことを入賞センサによって検知し、その時点で乱数カウンタから乱数を取得し、取得した乱数が予め設定した当たり値か否かを判定する処理である。
【0004】
特別図柄抽選の結果は、遊技盤面に設けられた表示装置(一般には、LCD(液晶表示装置)が適用され、センター役物の構成部品となっている。)を用いて、特別図柄に対応した演出図柄による図柄変動パターン演出を実行することで報知する。
【0005】
この特別図柄抽選の結果「大当たり」に当選した場合には、大当たり処理として、通常遊技状態では常に閉止状態の入賞口(「大入賞口」、「アタッカー」等と称する場合がある)を開放し、遊技者に有利な遊技状態(以下、「特別遊技状態」という)を付与することがなされている。
【0006】
大入賞口は、一般には、30秒間開放し、その後一旦閉止する動作を15ラウンド程度(最大16ラウンド)実行する。また、アタッカーの開放中に10個の遊技球が入賞(入賞による払出数は15個)することで、30秒を待たずに閉止して、次ラウンドへ移行するようになっており、結果として、特別遊技状態では、短期間に150個前後の入賞が期待できる(賞球数としては、約2250個)。
【0007】
このように、大当たりは遊技者にとって非常に有利な遊技状態であるため、前記特別図柄抽選は厳正なものである必要がある。
【0008】
一般に、乱数カウンタは、ソフト的な処理によって形成されている。ソフト的な処理とは、例えば、プログラムが1ループする毎に所定カウント(1カウント)するようにプログラミングしておくことで、例えば、1024カウントで1周期とすると、そのカウント値の中に3個の当たり値を設定しておくことで、約1/350の当選確率とすることができる。
【0009】
ところで、所謂ソフト的な乱数カウンタでは、1カウントが2msec〜4msecでインクリメント(カウント値i←i+1)していくため、ある程度「当たり値」の予測がつくと、この予測に合わせて始動入賞口への入賞タイミングとなるように、発射強度を調整するといった所謂不正行為が可能となる。
【0010】
このため、カウント値が1周する毎に初期値を変化させることで、当選確率を維持しつつ、当たり値に相当するカウント値の取得時期にランダム性を持たせている。
【0011】
一方、近年では、所謂ソフト的な乱数カウンタに代わり、所謂ハード的な乱数カウンタ(乱数生成回路)を設けることが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。上記特許文献1乃至3の中には、乱数カウンタの初期値を変化させることも開示されているものもある。
【0012】
ハードウェアで構成する乱数生成回路では、例えば、10MHzのカウントアップクロックを持ち、16ビットのカウンタを使用した場合、1カウント(周期T)が、10−7secになる(T=1/f:f=10MHz)。
【0013】
また、カウント総数は、16ビットのカウンタであるため、216=65536カウントであり、当たり値が、65536カウントの中の1つ存在するとした場合、この当たり値は、6.5536×10−3sec(約6msec)毎に定期的に出現するタイミングとなる。
【0014】
このように、約6msecで1周するハードウェア構成の乱数生成回路においても、タイミングを計り、当たり値の出現タイミングを予測する可能性があるため、ソフト的な乱数カウンタと同様に初期値を変化させることが好ましいが、この初期値の変化制御はソフトウェアで行う必要がある。
【0015】
なお、抽選の当選確率の設定や、カウント値取得後の処理等によって1周の内の当たり値の数は異なるが、上記では、カウンタが1周する内、少なくとも1つが当たり値とした場合を例示している。
【特許文献1】特開2003−117125公報
【特許文献2】特開2005−13764公報
【特許文献3】特開2002−78945公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、ハードウェア構成の乱数カウンタという、非常に高速なカウントアップ処理の下での1周毎の初期値の変化制御は、ソフトウェアに多大な負担をかけることになり、実用性に乏しい。
【0017】
上記の具体例で言えば、ソフトウェア処理では1カウントが2msec〜4msecであったのが、ハードウェア処理では、1周が約6msec(1カウントが10−7sec)となり、桁違いな処理速度の差がある。
【0018】
また、仮に、ソフトウェアによる初期値変更制御が実現できたとしても、この負担が、遊技機全体として、他の処理の遅延、演出バリエーションの低下等、悪影響を及ぼすことになる。
【0019】
本発明は上記事実を考慮し、ソフトウェアに負担をかけず、ハードウェア構成の乱数生成回路内において、少なくとも所定カウント数毎に、初期値の変化を実現することができるハードウェア乱数発生装置を得ることが目的である。
【0020】
また、上記目的に加え、遊技処理の遅延や、演出バリエーションの低下等を招くことなく、遊技進行状況に伴って実行される抽選の際の、不正な乱数値取得を防止することができる遊技機を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に記載の発明は、所定周期の基準クロックを生成するクロック発生回路と、前記クロック発生回路で発生したクロック周期に基づいて、所定数を限度として繰り返しカウントすると共に、前記所定数のカウント毎に桁上がり信号を発生するカウンタ回路と、前記カウンタ回路からの桁上がり信号の入力時期に基づいて、不規則な数値を発生する不規則値発生回路と、前記カウンタ回路からのカウント値と、前記不規則値発生回路からの不規則値とを加算することで、調整カウント値を生成する加算回路と、所定のトリガ信号が入力された時点で、前記加算回路から出力された前記調整カウント値をラッチするラッチ回路と、を有している。
【0022】
請求項1記載の発明によれば、クロック発生回路では、基準クロックを生成する。この基準クロックは、所定周期(周波数)である(例えば、10−7sec(10MHz)程度)。
【0023】
クロック発生回路で発生したクロック周期に基づいて、カウンタ回路では、所定数を限度として繰り返しカウントする。例えば、8ビットカウンタであれば、0〜255までを繰り返しカウントし、16ビットカウンタであれば、0〜65535までを繰り返しカウントする。
【0024】
また、カウンタ回路では、所定数のカウント毎(上記8ビットで言えば「255」→「0」、16ビットで言えば「65535」→「0」)に桁上がり信号を発生する。
【0025】
この桁上がり信号は、不規則値発生回路に入力する。不規則値発生回路では、前記カウンタ回路からの桁上がり信号の入力時期に基づいて、不規則値を発生し、加算回路へ出力する。
【0026】
一方、カウンタ回路のカウント値は、加算回路に入力する。このため、カウント値と前記不規則値とが加算される。この加算された数値(調整カウント値)は、カウンタ回路でのカウントが1周(所定数のカウント終了)する毎に初期値が変化することとなり、定期的に同一のカウント値となることがない。この結果、トリガ信号の入力に応じてラッチする調整カウント値の特定を困難とすることができる。
【0027】
請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記所定周期の基準クロックが、ソフトウェア処理ではカウントできない周期であることを特徴としている。
【0028】
請求項2に記載の発明によれば、現状のソフトウェアの処理の下でのカウントは、1カウント/数msecであり、本願発明が要求するカウントは、このソフトウェア処理ではカウントできない周期、すなわち、1カウント/数msecよりも速い。例えば、10−6sec(1MHz)以上であり、10−7sec(10MHz)程度が好ましい。
【0029】
請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記不規則値発生回路で発生可能な不規則値の総数が、前記カウンタ回路の最大カウント値の総数と同一であることを特徴としている。
【0030】
請求項3に記載の発明によれば、同じ桁数のカウント値であるため、偏った調整カウント値となることがない。
【0031】
請求項4に記載の発明は、前記請求項1〜請求項3の何れか1項記載の発明において、前記ラッチ回路への前記トリガ信号の入力時期を、前記カウンタ回路におけるカウントのクロック周期で適用するクロック信号の反転信号に同期させることを特徴としている。
【0032】
請求項4に記載の発明によれば、位相が反転することで、カウント値のインクリメント時期と、トリガ信号に基づく調整カウント値の取得時期とが一致することがなく、調整カウント値の誤取得を防止することができる。
【0033】
請求項5に記載の発明は、前記請求項1〜請求項4の何れか1項記載の乱数発生装置が適用された遊技機であって、始動信号をトリガ信号として、前記乱数発生装置から調整カウント値を取得し、この取得した調整カウント値と当たり値との比較によって当/落抽選を行ない、当該当/落抽選の結果が当選の場合に所定の大当たり処理を実行すると共に、前記大当たり処理の際に、次以降の当/落抽選に関わる条件を、演出画像を交えて表示装置に表示して報知することを特徴としている。
【0034】
請求項5に記載の発明によれば、トリガ信号として遊技機の始動信号を適用し、この始動信号に基づく当/落抽選の際に、当たり値と比較するカウント値として請求項1乃至請求項4の何れか1項の乱数発生装置によって発生する調整カウント値を適用することで、不正行為に対して強固なセキュリティ対策が可能となる。
【0035】
すなわち、高速でのカウント処理と、この高速カウント処理の下での1週毎の初期値変更という、2重の不正行為困難性を実現することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明した如く本発明では、ソフトウェアに負担をかけず、ハードウェア構成の乱数生成回路内において、少なくとも所定カウント数毎に、初期値の変化を実現することができるという優れた効果を有する。
【0037】
また、上記効果に加え、遊技処理の遅延や、演出バリエーションの低下等を招くことなく、遊技進行状況に伴って実行される抽選の際の、不正な乱数値取得を防止することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(パチンコ機の構成)
図1及び図2に示されるように、パチンコ機10の前面下部には、化粧パネルとなる下飾り12が取り付けられている。
【0039】
また、パチンコ機10の下飾り12の上部には、ガラス板14を装着したガラス枠16が配置されており、ガラス枠16は左側端部が軸支されて開閉可能に取り付けられている。このガラス枠16の裏面側には、矩形状の開口部が設けられ、交換可能とされた遊技盤100がセットされており、遊技盤100は、ガラス枠16を閉塞した状態でガラス板14に対向するようになっている。
【0040】
ガラス枠16におけるガラス板14の周囲には、遊技の進行に応じて点灯、消灯、及び点滅し照明による演出効果を生み出す照明演出用の表示灯20が配置されており、上部には、遊技の効果音をステレオ出力するスピーカ22L、22Rが配設されている。
【0041】
ガラス枠16の下部には、一体皿24が配置されている。この一体皿24の右側下部には打球の発射力(飛距離)を調整するための発射ハンドル26が取り付けられている。
【0042】
(遊技盤の構成)
図3には本実施の形態に係る遊技盤100が示されている。
【0043】
遊技盤100は、基板として透明の平板状合成樹脂材が適用されているため、以下、透明遊技盤100という。
【0044】
透明遊技盤100は、外周端部付近に、円弧状の外レール102、逆流防止弁103及び内レール104が取り付けられている。これらの外レール102、逆流防止弁103及び内レール104によって囲まれた円形状の領域は、発射装置(図示省略)から発射されて、逆流防止弁103で仕切られた放出口105を飛び出して打ち込まれた遊技球PBが自重落下により移動可能とされ、この領域が遊技を行う遊技領域101とされている。
【0045】
前記透明遊技盤100の裏面側には、少なくとも遊技領域101のほぼ全域に亘って表示面が対向する大型の液晶表示装置(LCD)200が配設されている。すなわち、遊技領域101が、LCD200の表示領域201となっていて、遊技者の視野のほぼ全域が覆われる。
【0046】
遊技領域101には、遊技領域101の中心部を基準として図3の左側に、通過ゲート(スルー・チャッカー)118が配置されている。また、図3の下部には、特別図柄始動入賞口(スタート・チャッカー)108が配設されており、この特別図柄始動入賞口108のさらにその下方には、遊技領域101の下端部付近に位置してアタッカー112が配置されている。
【0047】
アタッカー112には、開閉扉116が設けられており、当該開閉扉116が開放又は閉塞することによって開口又は閉口するようになっている。開閉扉116の開放時には、開閉扉116上に落下した遊技球が開閉扉116に案内されてアタッカー112へ入賞する。
【0048】
また、遊技領域101には、風車122や、遊技領域101内を自重落下する遊技球を所定の経路に誘導する多数の遊技釘123が設けられている。
【0049】
さらに、透明遊技盤100の中央下方には、透明遊技盤100の裏面側通路と前面側通路とに遊技球PBの通路が設けられたステージ124が設けられており、遊技球PBは、風車122や遊技釘123等によりステージ124上に案内される。なお、このステージ124上に案内された遊技球PBは、特別図柄始動入賞口108に入賞しやすくなる。
【0050】
また、透明遊技盤100の最下位置には、外れ球を透明遊技盤100の裏側へ排出するアウト口125が設けられている。
【0051】
(制御系の構成)
次に、図4を用いてパチンコ機10の制御系について説明する。図4に示されるように、本実施形態に係るパチンコ機10の制御系は、主制御部150を中心として構成されている。主制御部150には、遊技に関する基本的なプログラムが記憶されており、この主制御部150からの命令信号に基づいて、各部の動作が制御されるようになっている。
【0052】
主制御部150には、特別図柄始動入賞口108への入賞球を検出する始動入賞センサ180、普通図柄始動口である通過ゲート118への入賞球を検出する通過ゲート入賞センサ184、特別遊技状態の際に開放するアタッカー112への入賞球を検出する大入賞センサ186がそれぞれ接続されており、これらの各センサは、入賞球の検出時にその検出信号を主制御部150へ出力する。なお、必要に応じて、アタッカー112内には、大当たり処理のラウンドを継続するきっかけとなるVゾーンが設けられている場合には、このVゾーンを通過したことを検出するVゾーンセンサ188が配設される。
【0053】
さらに、主制御部150には、電動チューリップ110を作動させるソレノイド174、アタッカー112の開閉扉116を開放/閉塞させるソレノイド175がそれぞれ接続されている。なお、特図抽選(後述)の保留数を点灯数で示す保留ランプ(図示省略)等もこの主制御部150に接続されている。
【0054】
ここで、遊技球PBが通過ゲート118を通過すると、これを通過ゲート入賞センサ184で検出することで普通図柄の当たり/外れの抽選(以下、「普図抽選」という)が主制御部150にて実行され、その抽選結果をLCD200を用いて報知し、当たりとなった場合は、主制御部150が普通電動役物ソレノイド174を駆動制御して電動チューリップ110を所定時間開放する。
【0055】
また、遊技球PBが特別図柄始動入賞口108に入賞すると、これを始動入賞センサ180で検出することで特別図柄の当/落抽選(特図抽選)が主制御部150にて実行され、この特図抽選をLCD200を用いて報知し、当選の場合は、大当たりの処理として、通常遊技状態から特別遊技状態へ遊技状態が移行するように主制御部150にて制御する。
【0056】
特別遊技状態とは、前記アタッカー112が所定時間(一般には30秒)開放し、その後閉止する動作を1ラウンドとした場合に、複数ラウンド(一般には15ラウンド)繰り返される遊技状態を言い、この結果、多くの遊技球PBがアタッカー112へ入賞し、多くの入賞が期待できる。なお、通常は、1ラウンド中の最大入賞数が10個と制限されている。この大当たり処理(特別遊技状態)の期間においては、LCD200を用いて複数のラウンドにまたがる一連のストーリー性を持った画像演出を実行する。
【0057】
主制御部150からは盤用外部端子190を介してホールコンピュータへ遊技の進行状態を示す情報(始動入賞信号や大当たり信号、図柄確定回数信号)が送信される。
【0058】
さらに、主制御部150には、演出制御部152と、払出制御部154とがそれぞれ接続されており、これらの制御部は、主制御部150からのコマンド送信により制御される。
【0059】
演出制御部152には、図柄制御部156を介してLCD200が接続されている。また、演出制御部152は、遊技盤100の各種遊技部品に設けられた照明演出用の発光素子126、並びに、ガラス枠16に設けられた表示灯20の点灯、消灯、及び点滅を制御し、さらに、ガラス枠16前面に設けられたスピーカ22L、22Rを作動させて効果音等の出力を制御する。
【0060】
この演出制御部152に制御されるLCD200には、特図抽選の結果を報知するための図柄変動パターンの演出映像が表示され、スピーカ22L、22Rからはその図柄変動パターン演出時のBGMが出力される。これにより、遊技者は、視覚及び聴覚を通じて、特図抽選の結果に対応した演出図柄による演出を楽しむことができる。
【0061】
また、払出制御部154には、払出装置160及び発射制御部164が接続され、発射制御部164には発射装置40が接続されている。この払出制御部154は、パチンコ機10内に設けられた払出装置160を作動させて、賞球又は貸し球の払い出し及び停止動作と払出数を制御する。また、発射制御部164は、遊技者による発射ハンドル26(図1参照)の操作により発射装置40を作動させて、遊技球PBの発射開始、及び、発射ハンドル39の操作量に応じた発射力を制御する。
【0062】
さらに、払出制御部154では、枠用外部端子191を介して払出情報をホールに設置されたホールコンピュータへ送信するようになっている。
【0063】
ここで、本実施の形態の主制御部150では、前述したように、特別図柄の当/落抽選(特図抽選)が実行される。
【0064】
この特図抽選は、始動入賞口108にパチンコ球PBが入賞したことを、始動入賞センサ180で検知し、主制御部150で、この始動入賞センサ180の検出信号の入力時期の乱数を取得して、当たり値と比較することで当たり値か否かを判定する。
【0065】
この乱数取得に関して、本実施の形態では、主制御部150に、乱数発生装置300をハードウェアとして搭載している。実際には、1チップのICで構成されており、主制御部150を構成する主制御基板(図示省略)に取り付けられ、主制御部150でのソフトウェアのプログラム実行に応じて、乱数(調整カウント値)を出力するようになっている。
【0066】
言い換えれば、乱数発生装置30自体は、ソフトウェアのプログラムに関係なく、独自に稼働している。
【0067】
図5は、上記1チップICで構成される乱数発生装置300のハードウェア構成をブロック化して詳細に説明する。
【0068】
基準クロックは、クロックパルス発振器302と、第1のDフリップフロップ回路304とで生成されるようになっている。本実施の形態では、クロックパルス発振器302は、20MHzのクロックを出力する。このクロックパルス発振器302出力端302Aは、第1のDフリップフロップ回路304のCLK端子304Aに接続され、前記クロック信号(20MHz)を第1のDフリップフロップ回路304へ入力させる。
【0069】
第1のDフリップフロップ回路304では、入力クロック信号を1/2分周してクロック信号(10MHz)を生成し、当該クロック信号をQ端子304Bから出力すると共に、クロック信号の反転信号(基準クロック信号)をQr端子304Cから出力する。なお、Qr端子304CはD端子304Dに接続されることで、前記1/2分周を実現している。
【0070】
Qr端子304Cは、nビットカウンタ306のカウントクロック端子306Aに接続されている。本実施の形態のnビットカウンタ306は、n=16、すなわち16ビットカウンタが適用されており、16桁のビットデータにより所定数として、65536(=216)の数を繰り返しカウントする(0〜65535)。
【0071】
nビットカウンタ306には、Cn端子群(nは1〜16)306Bが設けられており、前記カウント値は、このCn端子群306Bから出力される。
【0072】
Cn端子群306Bは、nビット加算器308のBn端子群308Bに接続されている。この結果、nビットカウンタ306でのカウント値は、nビット加算器308へ入力される。
【0073】
また、nビットカウンタ308には、桁上がり端子306Cが設けられている。この桁上がり端子306Cからは、カウント値が1周する毎(桁が1111111111111111から0000000000000000にリセットする毎)に桁上がり信号が出力される。
【0074】
この桁上がり端子306Cは、nビット乱数発生器310の不規則値出力指示端子310Aに接続されている。
【0075】
nビット乱数発生器310は、n=16、すなわち16桁のビットデータ(65536(=216))から、ランダムに数値(不規則値)が発生するようになっており、周期性はない。
【0076】
ここで、nビット乱数発生器310では、不規則値出力指示端子310Aに桁上がり信号が入力した時点の不規則値をRn端子群(nは1〜16)310Bから出力する。
【0077】
このRn端子群310Bは、前記nビット加算器308のAn端子群(nは1〜16)308Aに接続され、不規則値はnビット加算器へ入力される。
【0078】
すなわち、nビット加算器308には、nビットカウンタ306から常時カウント値が入力し(Bn端子群308B)、nビット乱数発生器310から適宜不規則値が入力する(An端子群308A)。nビット加算器308では、これらを常に加算して調整カウント値を生成する。
【0079】
言い換えれば、調整カウント値は、基のカウント値のリセット毎に不規則値が加算されるため、65536回のカウント毎に初期値が変化されるようになっている。
【0080】
nビット加算器308には、前記An端子群308Aの不規則値と、Bn端子群308Bのカウント値との加算値である調整カウント値を出力するための出力端子群Yn(nは0〜16)308Cが設けられ、それぞれ、nビットラッチ回路312のDn端子群(nは0〜16)312Aに接続されている。
【0081】
nビットラッチ回路312には、出力クロック端子312Bが設けられている。
【0082】
出力クロック端子312Bは、第2のDフリップフロップ回路314のQ端子314Aと接続されている。この第2のDフリップフロップ回路314のCLK端子314Bには、第1のDフリップフロップ回路304のQ端子304Bからの出力信号が入力されるようになっている。これは、前記第1のDフリップフロップ回路304のQr端子304Bから前記nビットカウンタ306へ送出した基準クロック信号の反転信号である。
【0083】
また、第2のDフリップフロップ回路314のD端子314Cには、図4に示す始動入賞センサ180の検出信号に基づく入賞信号180Aが入力される。
【0084】
すなわち、第2のDフリップフロップ回路314では、入賞信号がD端子314Cに入力されると、CLK端子314Bに入力している反転信号に同期してQ端子314Aから出力信号が出力されるようになっている。
【0085】
ここで、nビットラッチ回路312において、出力クロック端子312Bに、前記第2のDフリップフロップ回路314から出力信号が入力されると、この入力した時点で、Dn端子群(nは0〜16)312Aから入力されてラッチしている調整カウント値をQn端子群(nは0〜16)312Cから出力するようになっている。このQn端子群312Bは、主制御部150(図4参照)の一部を構成するCPU150Aに設定されたIn端子群(nは0〜16)150Bに入力されるようになっている。
【0086】
なお、nビットカウンタ306でのカウント処理の同期信号である基準クロック信号に対して、入賞信号の反転信号に同期させるのは、カウント値のインクリメント時に、入賞信号が重ならないようにし、調整カウント値の誤取得を防止するためである。
【0087】
上記ハードウェア構成の乱数発生装置300を用いることで、高速なカウント処理に加え、高速なカウントであっても、主制御部150におけるソフトウェアの実行に負担をかけることなく、1周毎に初期値の変更を可能としている。
【0088】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0089】
(パチンコ機10の遊技の流れ(図6のフローチャート参照))
パチンコ機10による遊技では、遊技者が発射ハンドル26を操作すると、一球づつ発射装置40(図4参照)に供給され、発射装置40によって上方へ発射される。発射された遊技球PBは、外レール102に沿って遊技盤100の遊技領域101に打ち込まれ、遊技釘123に当たり方向を変えながら遊技領域101内を落下する。そして、入賞せずに遊技領域101の下端部に至った遊技球PBはアウト口125からパチンコ機10内に回収される。
【0090】
ここで、特別図柄始動入賞口108へ入賞すると、これを始動入賞センサ180が検知して、主制御部150へ検知信号を出力する。
【0091】
主制御部150では、始動入賞センサ180からの検知信号により、始動入賞があったと判断し(ステップ350での肯定判定)、特別図柄の当選/落選の抽選(特図抽選処理)が実行される(ステップ352の抽選処理)。
【0092】
特図抽選結果は、LCD200に、演出用の特別図柄が所定のパターンで変動表示され、その変動パターンを経て停止表示される(ステップ354の図柄変動パターン演出表示制御)。
【0093】
(大当たり処理)
特別図柄抽選において、その抽選結果の報知(図柄変動パターン演出)として、大当たりとなると(ステップ356での肯定判定)、LCD200の表示領域に、例えば「444」や「777」等の予め定められた所定の大当たり図柄の組み合わせが表示されるとともに、照明演出用の表示灯20の点滅やスピーカ22L、22Rからの効果音出力などによる演出を加えて、大当たりが発生したことを遊技者に報知し、所定の大当たり処理を実行する(ステップ358)。なお、外れの場合(ステップ356の否定判定)は、通常の遊技に戻る。
【0094】
大当たり処理としては、開閉扉116の開閉動作によってアタッカー112が、例えば10カウント(入賞個数)又は最大30秒間(1回の開放時間)/最高15又は16ラウンド開放される。
【0095】
なお、アタッカー112内にVゾーンを設けた遊技仕様の場合には、1回のアタッカー112開放時にVゾーンへの入賞を果たすことで次ラウンドを継続するといった動作が行われる。
【0096】
これにより、遊技者は、発射した遊技球PBをアタッカー112へ容易に入賞させ、例えば入賞1個当たり15個の払い出しを受けるなどして、大量の賞球を獲得できるようになる。
【0097】
図7は、図6のステップ352における抽選処理の詳細を示している。
【0098】
ステップ360では、乱数発生装置300から調整カウント値を取得し、次いでステップ362では、当たり値を読出し、ステップ364へ移行して両者を比較する。
【0099】
ステップ366では、ステップ364での比較結果に基づいて、各部へのコマンドを出力し、このルーチンは終了する。
【0100】
次に、図8のタイミングチャートに従い、本実施の形態に係る乱数発生装置300における信号の流れを説明する。
【0101】
クロックパルス発振器302で20MHzのクロックを出力し、第1のDフリップフロップ回路304のCLK端子304Aへ送出して、1/2分周して基準クロック信号(10MHz)を生成する。
【0102】
これにより、クロック信号をQ端子304Bから出力すると共に、クロック信号の反転信号(基準クロック信号)をQr端子304Cから出力する。
【0103】
nビットカウンタ306では、n=16、すなわち16ビットカウンタが適用されており、16桁のビットデータにより所定数として、65536(=216)の数を繰り返しカウントしている(0000000000000000→0000000000000001→0000000000000010→0000000000000011→・・・・1111111111111110→1111111111111111→0000000000000000→0000000000000001→・・・)。カウント値はCn端子群306Bからnビット加算器308に出力される。
【0104】
nビットカウンタ306から桁上がり信号が出力されると、nビット乱数発生器310では、桁上がり信号が入力した時点の不規則値をRn端子群310Bから出力する。
【0105】
これにより、nビット加算器308には、nビットカウンタ306から常時カウント値が入力し(Bn端子群308B)、nビット乱数発生器310から適宜不規則値が入力する(An端子群308A)ため、これらを常に加算して調整カウント値を生成する。
【0106】
この結果、調整カウント値は、基のカウント値のリセット毎に不規則値が加算されるため、65536回のカウント毎に初期値が変化する。
【0107】
調整カウント値は、nビットラッチ回路312へ出力され、このnビットラッチ回路312に、始動入賞センサ180の検知信号に基づく入賞信号180Aが入力されると、入力した時点でラッチしている調整カウント値をQn端子群(nは0〜16)312Cから出力する。
【0108】
このQn端子群312Cから出力される調整カウント値が、図7のステップ360での調整値取得に相当する。
【0109】
ここで、nビットカウンタ306でのカウント処理の同期信号である基準クロック信号に対して、入賞信号の反転信号に同期させている。これは、カウント値のインクリメント時に、入賞信号が重ならないようにするための処置であり、これによって、調整カウント値の誤取得を防止することができる。
【0110】
以上説明したように、本実施の形態では、乱数(調整カウント値)をハードウェア構成の乱数発生装置300で生成するようにしたため、高速のカウント処理の下での乱数(調整カウント値)の取得となり、これだけでも不正行為を軽減することができる。しかし、本実施の形態では、このハードウェア構成の乱数発生装置300において、基のカウント値が1周する毎に不規則値を加算する構成としたため、高速カウント(ここでは、10MHz)の下での初期値変更が可能となり、さらに不正行為防止のセキュリティを強化することができる。また、初期値変更は、乱数発生装置300内で行っているため、主制御部150のソフトウェアによるプログラム処理に負担をかけることがない。
【0111】
このため、例えば、図柄変動パターン演出の演出バリエーションを低下させるといった、他の処理への悪影響もない。
【0112】
また、主制御部150のCPUへ入力する調整カウント値を16ビットとして説明したが、何らかの理由で、主制御部150のCPUへの入力ビット数に制限があった場合(例えば、8ビットまで)、前記16ビットの調整カウント値の上位8桁と、下位8桁とを分離してシリアル転送、或いは並列転送するようにしてもよい。
【0113】
さらに、本実施の形態では、取り扱うビット数(nビット)を16ビットとしたが、8ビット等他のビット数であってもよい。また、nビットカウンタ306、nビット乱数発生器310、nビット加算器308、nビットラッチ回路312のそれぞれのn値(ビット数)は必ずしも一致させる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本実施の形態に係るパチンコ機を示す正面図である。
【図2】本実施の形態に係るパチンコ機を示す斜視図である。
【図3】本実施の形態に係る遊技盤を示す正面図である。
【図4】本実施の形態に係るパチンコ機の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本実施の形態に係る乱数発生装置の概略構成図である。
【図6】本実施の形態に係る遊技機の遊技の流れを説明する制御フローチャートである。
【図7】図6のステップ352における抽選処理サブルーチンを示す制御フローチャートである。
【図8】本実施の形態に係る乱数発生装置の信号の流れを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0115】
PB 遊技球
10 パチンコ機
26 発射ハンドル
100 遊技盤
108 特別図柄始動入賞口
110 電動チューリップ
112 アタッカー
150 主制御部
150A CPU
150B In端子群
152 演出制御部
154 払出制御部
156 図柄制御部
180 始動入賞センサ
180A 入賞信号
200 液晶表示装置(表示装置)
300 乱数発生装置
302 クロックパルス発振器(クロック発生回路)
304 第1のDフリップフロップ回路(クロック発生回路)
306 nビットカウンタ(カウンタ回路)
308 nビット加算器(加算回路)
310 nビット乱数発生器(不規則値発生回路)
312 nビットラッチ回路(ラッチ回路)
314 第2のDフリップフロップ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周期の基準クロックを生成するクロック発生回路と、
前記クロック発生回路で発生したクロック周期に基づいて、所定数を限度として繰り返しカウントすると共に、前記所定数のカウント毎に桁上がり信号を発生するカウンタ回路と、
前記カウンタ回路からの桁上がり信号の入力時期に基づいて、不規則な数値を発生する不規則値発生回路と、
前記カウンタ回路からのカウント値と、前記不規則値発生回路からの不規則値とを加算することで、調整カウント値を生成する加算回路と、
所定のトリガ信号が入力された時点で、前記加算回路から出力された前記調整カウント値をラッチするラッチ回路と、
を有する乱数発生装置。
【請求項2】
前記所定周期の基準クロックが、ソフトウェア処理ではカウントできない周期であることを特徴とする請求項1記載の乱数発生装置。
【請求項3】
前記不規則値発生回路で発生可能な不規則値の総数が、前記カウンタ回路の最大カウント値の総数と同一であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乱数発生装置。
【請求項4】
前記ラッチ回路への前記トリガ信号の入力時期を、前記カウンタ回路におけるカウントのクロック周期で適用するクロック信号の反転信号に同期させることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項記載の乱数発生装置。
【請求項5】
前記請求項1〜請求項4の何れか1項記載の乱数発生装置が適用された遊技機であって、
始動信号をトリガ信号として、前記乱数発生装置から調整カウント値を取得し、この取得した調整カウント値と当たり値との比較によって当/落抽選を行ない、当該当/落抽選の結果が当選の場合に所定の大当たり処理を実行すると共に、前記大当たり処理の際に、次以降の当/落抽選に関わる条件を、演出画像を交えて表示装置に表示して報知することを特徴とする遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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