乱用の可能性が低いPEG化オピオイド
本発明は、薬物乱用の可能性が低い水溶性オリゴマーに共有結合したオピオイドアゴニストおよびそれらの使用を提供する。本発明の化合物は、オピオイドアゴニスト単独と比べて改変された薬物動態プロファイルを有するが、所定の代替的送達処方に関連するオピオイドアゴニストの回収および乱用の可能性を作り出す物理的タンパリングの危険性には供されない。本発明の化合物および薬学的に許容できる賦形剤もしくはキャリアを含んでなる、組成物もまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月16日に出願された米国仮特許出願第61/192,247号明細書および2009年9月11日に出願された米国特許出願第12/558,395号明細書(それらの開示内容は、本明細書においてそれらの全体が参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
とりわけ、本発明は、水溶性オリゴマーに共有結合したオピオイドアゴニスト(即ち、オピオイドアゴニストオリゴマーコンジュゲート)に関し(、コンジュゲートは、他の特徴および利点の中でも、薬物乱用の可能性が低い)、そしてその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
モルヒネのようなオピオイドアゴニストは、痛みを患う患者を治療するために使用されてきた。オピオイドアゴニストは、オピオイド受容体との相互作用を介して、それらの鎮痛効果および他の薬理効果を及ぼし、オピオイド受容体には、主に次の3つのクラスが存在する:ミュー(μ)受容体、カッパκ(κ)受容体、およびデルタ(δ)受容体。臨床的に使用されるオピオイドアゴニストの多くは、μ受容体に対して比較的選択的であるが、オピオイドアゴニストは、典型的に、他のオピオイド受容体において(特に、増加した濃度で)アゴニスト活性を有する。
【0004】
オピオイドは、アセチルコリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、セロトニン、およびサブスタンスPのような神経伝達物質の放出を選択的に阻害することによって、少なくとも部分的に、それらの効果を及ぼす。
【0005】
薬理学的に、オピオイドアゴニストは、痛みの管理において用いられる重要なクラスの薬剤を代表する。しかし、鎮痛において現在使用されているオピオイドは、かなりの常習性があるため、実際の治療におけるそれらの使用は複雑であり、制限される。オピオイドの乱用から生じる医学的、社会的および金銭的な問題は、医師が慢性疼痛に使用するためにオピオイドを処方する可能性に重大な制約を課す。
【0006】
典型的なオピオイドは、迅速に血液脳関門(BBB)を通過し、そしてオピオイドの乱用によって経験する「陶酔感」に関連するピーク濃度に迅速に到達する。一定の低い濃度でオピオイドを脳に送達する変更された薬物動態プロファイルを介し、オピオイドアゴニストの依存能の根拠となる従来の送達様式の濃度ピークを回避して、常習性の低減を達成できることを示す証拠が存在する。非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5。これに関する開発の取り組みは、経口投与される遅延放出錠剤および経皮パッチのような代替的ストラテジーに主に集中している。これらは、循環中に一定の低い濃度の薬物を供給することを目的とするが、それらは、破砕または分割によって物理的に粉砕することが可能であり、薬物にアクセスし、次いで循環中に直接注入して、常習性行動のための所望される薬物動態プロファイルを得ることが可能であるという事実によって複雑である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Balster and Schuster,J Exp Anal Behav 20:119−129(1973)
【非特許文献2】Panlilio and Schindler,Psychopharmacology 150:61−66(2000)
【非特許文献3】Winger et al.,J Pharmacol Exp Ther 301:690−697(2002)
【非特許文献4】Ko et al.,J Pharmacol Exp Ther 301:698−704
【非特許文献5】Abreu et al.,Psychopharmacologia 154:76−84(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、鎮痛において使用される現在利用可能なオピオイドより低い常習性および同時に認められる低い乱用可能性を伴うオピオイドアゴニストが、当該技術分野において必要とされている。特に、薬物の直接注入が常習性の「恍惚感」の根拠となる即時中枢神経系透過を提供しないように、分子自体を変更し、そして血液脳関門の透過を緩徐にするオピオイドアゴニストへの改変が必要とされている。本発明は、それらの鎮痛特性を保持するが、薬物乱用の可能性が低い、水溶性オリゴマーに共有結合したオピオイドアゴニストを提供することによって、このおよび他の必要性に取り組もうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、一態様では、本明細書において、式OP−X−POLYの化合物が提供され、ここで、OPはオピオイド化合物であり、Xはリンカーであり、そしてPOLYは小さな水溶性オリゴマーである。
【0010】
関連の実施形態では、式OP−X−POLY(ここで、OP、XおよびPOLYは、上記で定義したとおりである)の化合物および薬学的に許容できる賦形剤またはキャリアを含んでなる組成物が提供される。
【0011】
もう1つの態様では、式OP−X−POLYの化合物の有効量を投与する工程を含んでなる、オピオイド療法を必要とする患者を治療する方法が提供される。
【0012】
なおもう1つの態様では、化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイド化合物の乱用の可能性を低減する方法が提供される。
【0013】
さらなる態様では、オピオイドアゴニストを小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイドアゴニストの常習性を低減する方法が提供される。
【0014】
もう1つの態様では、オピオイド化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイド化合物の血液脳関門を横断する速度を低減するが、実質的に排除しない方法が提供される。
【0015】
なおもう1つの態様では、放出可能な水溶性のオリゴマー性部分への共有結合を介して可逆的に結合したμ、κ、またはδオピオイドアゴニストを含んでなるプロドラッグであって、ここで、患者に投与される所与のモル量の前記プロドラッグは、哺乳動物の中枢神経系において、μ、κ、またはδオピオイドアゴニストがプロドラッグの部分として投与されなかった場合の等モル量のμ、κ、またはδオピオイドアゴニストの蓄積速度およびCmaxより小さい蓄積速度およびCmaxを示す、プロドラッグが提供される。
【0016】
本発明のこれらのならびに他の目的、態様、実施形態および特徴については、以下の詳細な説明と併せて読むことにより、明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例8においてより詳述するように、様々なPEGオリゴ−ナルブフィンコンジュゲートの脳:血漿比を示すグラフである。プロットは、PEGコンジュゲーションより、ナルブフィンの脳:血漿比の低減が生じることを実証する。
【図2】図2は、実施例13において詳述するように、本研究群におけるマウスの合計数、nあたりのライジングパーセント対マウスにおける内蔵痛の低減または防止の程度を評価するための鎮痛アッセイにおいて投与されたmPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの用量を示すグラフである。モルヒネをコントロールとして使用し;非コンジュゲート親分子、硫酸モルヒネもまた投与して、さらなる対照ポイントを提供した。次のコンジュゲート系列:mPEG2−7,9−O−モルヒネに属するコンジュゲートを評価した。
【図3】図3は、実施例13において詳述するように、本研究群におけるマウスの合計数、nあたりのライジングパーセント対マウスにおける内蔵痛の低減または防止の程度を評価するための鎮痛アッセイにおいて投与されたmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの用量を示すグラフである。モルヒネをコントロールとして使用し;非コンジュゲート親分子、オキシコドンもまた投与して、さらなる対照ポイントを提供した。次のコンジュゲート系列:mPEG1−4,6,7,,9−O−ヒドロキシコドンに属するコンジュゲートを評価した。
【図4】図4は、実施例13において詳述するように、本研究群におけるマウスの合計数、nあたりのライジングパーセント対マウスにおける内蔵痛の低減または防止の程度を評価するための鎮痛アッセイにおいて投与されたmPEGn−O−コデインコンジュゲートの用量を示すグラフである。モルヒネをコントロールとして使用し;非コンジュゲート親分子、コデインもまた投与して、さらなる対照ポイントを提供した。次のコンジュゲート系列:mPEG3−7,,9−O−コデインに属するコンジュゲートを評価した。
【図5】図5〜7は、実施例14において詳述するように、マウスにおけるホットプレート潜時鎮痛アッセイの結果を示すプロットである。具体的には、図は、秒単位の潜時(後肢を舐めるまでの時間)対化合物の用量を示すグラフに対応する。図5は、mPEG1−5−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートならびに非コンジュゲート親分子の結果を提供する。データのポイントに存在するアスタリスクは、ANOVA/Dunnettによるp<0.05対生理食塩水を示す。
【図6】図5〜7は、実施例14において詳述するように、マウスにおけるホットプレート潜時鎮痛アッセイの結果を示すプロットである。具体的には、図は、秒単位の潜時(後肢を舐めるまでの時間)対化合物の用量を示すグラフに対応する。図6は、mPEG1−5−O−モルヒネコンジュゲート、また非コンジュゲート親分子の結果を提供する。データのポイントに存在するアスタリスクは、ANOVA/Dunnettによるp<0.05対生理食塩水を示す。
【図7】図5〜7は、実施例14において詳述するように、マウスにおけるホットプレート潜時鎮痛アッセイの結果を示すプロットである。具体的には、図は、秒単位の潜時(後肢を舐めるまでの時間)対化合物の用量を示すグラフに対応する。図7は、mPEG2−5,9−O−コデインコンジュゲートならびに親分子の結果を提供する。データのポイントに存在するアスタリスクは、ANOVA/Dunnettによるp<0.05対生理食塩水を示す。
【図8】図8は、実施例16に記載のように、ラットへの1.0mg/kg静脈内投与後の化合物、オキシコドン(mPEG0−オキシコドン)、mPEG1−O−ヒドロキシコドン、mPEG2−O−ヒドロキシコドン、mPEG3−O−ヒドロキシコドン、mPEG4−O−ヒドロキシコドン、mPEG5−O−ヒドロキシコドン、mPEG6−O−ヒドロキシコドン、mPEG7−O−ヒドロキシコドン、およびmPEG9−O−ヒドロキシコドンの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図9】図9は、実施例16に記載のように、ラットへの5.0mg/kg経口投与後の化合物、オキシコドン(mPEG0−オキシコドン)、mPEG1−O−ヒドロキシコドン、mPEG2−O−ヒドロキシコドン、mPEG3−O−ヒドロキシコドン、mPEG4−O−ヒドロキシコドン、mPEG5−O−ヒドロキシコドン、mPEG6−O−ヒドロキシコドン、mPEG7−O−ヒドロキシコドン、およびmPEG9−O−ヒドロキシコドンの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図10】図10は、実施例17において詳述するように、ラットへの1.0mg/kg静脈内投与後の化合物、モルヒネ(mPEG0−モルヒネ)、およびmPEG1−7,9−O−モルヒネコンジュゲートの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図11】図11は、実施例17に記載のように、ラットへの5.0mg/kg経口投与後の化合物、モルヒネ(mPEG0−モルヒネ)、およびmPEG1−7,9−O−モルヒネコンジュゲートの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図12】図12は、実施例18において詳述するように、ラットへの1.0mg/kg静脈内投与後の化合物、コデイン(mPEG0−コデイン)、およびmPEG1−7,9−O−コデインコンジュゲートの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図13】図13は、実施例18に記載のように、ラットへの5.0mg/kg経口投与後の化合物、コデイン(mPEG0−コデイン)、およびmPEG1−7,9−O−コデインコンジュゲートの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図14A】図14Aは、実施例21に記載のように、ラットへのIV投与後のそれぞれ、様々なオリゴマー性mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデインおよびmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳:血漿比を例示する。アテノロールの脳:血漿比を、比較のための基準として各図に示す。
【図14B】図14Bは、実施例21に記載のように、ラットへのIV投与後のそれぞれ、様々なオリゴマー性mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデインおよびmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳:血漿比を例示する。アテノロールの脳:血漿比を、比較のための基準として各図に示す。
【図14C】図14Cは、実施例21に記載のように、ラットへのIV投与後のそれぞれ、様々なオリゴマー性mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデインおよびmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳:血漿比を例示する。アテノロールの脳:血漿比を、比較のための基準として各図に示す。
【図15−1】図15A〜Hは、実施例22に記載のように、ラットへのIV投与後の経時的なモルヒネならびに様々なmPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの脳および血漿濃度を例示する。図15A(モルヒネ、n=0)。図15B(モルヒネ、n=1)。図15C(モルヒネ、n=2)。図15D(モルヒネ、n=3)。
【図15−2】図15A〜Hは、実施例22に記載のように、ラットへのIV投与後の経時的なモルヒネならびに様々なmPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの脳および血漿濃度を例示する。図15E(モルヒネ、n=4)。図15F(モルヒネ、n=5)。図15G(モルヒネ、n=6)。図15H(モルヒネ、n=7)。
【図16】図16A〜Hは、実施例22に記載のように、ラットへのIV投与後の経時的なコデインならびに様々なmPEGn−O−コデインコンジュゲートの脳および血漿濃度を例示する。図16A(コデイン、n=0)。図16B(コデイン、n=1)。図16C(コデイン、n=2)。図16D(コデイン、n=3)。図16E(コデイン、n=4)。図16F(コデイン、n=5)。図16G(コデイン、n=6)。図16H(コデイン、n=7)。
【図17−1】図17A〜Hは、実施例22に記載のように、ラットへのIV投与後の経時的なオキシコドンならびに様々なmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳および血漿濃度を例示する。図17A(オキシコドン、n=0)。図17B(オキシコドン、n=1)。図17C(オキシコドン、n=2)。図17D(オキシコドン、n=3)。
【図17−2】図17A〜Hは、実施例22に記載のように、ラットへのIV投与後の経時的なオキシコドンならびに様々なmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳および血漿濃度を例示する。図17E(オキシコドン、n=4)。図17F(オキシコドン、n=5)。図17G(オキシコドン、n=6)。図17H(オキシコドン、n=7)。
【図18A】図18A〜Cは、実施例3において詳述するように、コントロール化合物、アンチピリンおよび非コンジュゲートオピオイドと比較した所定の例示的なPEGオリゴ−オピオイドコンジュゲートの脳透過(Kin値)の速度を例示する。具体的には、図18Aは、コントロール化合物、モルヒネならびにアンチピリンと比較したmPEGn−O−モルヒネコンジュゲート(ここで、n=1、2、3、および7)の結果を例示する。
【図18B】図18A〜Cは、実施例3において詳述するように、コントロール化合物、アンチピリンおよび非コンジュゲートオピオイドと比較した所定の例示的なPEGオリゴ−オピオイドコンジュゲートの脳透過(Kin値)の速度を例示する。具体的には、図18Bは、コントロール化合物、コデインならびにアンチピリンと比較したmPEGn−O−コデインコンジュゲート(ここで、n=2、3、および7)の結果を例示する。
【図18C】図18A〜Cは、実施例3において詳述するように、コントロール化合物、アンチピリンおよび非コンジュゲートオピオイドと比較した所定の例示的なPEGオリゴ−オピオイドコンジュゲートの脳透過(Kin値)の速度を例示する。具体的には、図18Cは、コントロール化合物、オキシコドンならびにアンチピリンと比較したmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲート(ここで、n=1、2、3、および7)の結果を例示する。
【図19】図19は、実施例3において詳述するように、脳透過、Kin対mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデイン、およびmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートのPEGオリゴマーサイズの比を例示するグラフを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数形にも言及する。
【0019】
本発明の説明および請求の範囲において、以下の用語が下記の定義に従って使用される。
【0020】
用語「オピオイド化合物」および「オピオイドアゴニスト」は、本明細書において広範に使用され、典型的に、約1000ダルトン未満(および典型的に500ダルトン未満)の分子量を有し、そしてμ、δおよび/またはκアゴニストとしていくつかの程度の活性を有する有機、無機あるいは有機金属化合物を指す。オピオイドアゴニストは、オリゴペプチドおよび約1500未満の分子量を有する他の生体分子を包含する。
【0021】
用語「スペーサー部分」、「連結」および「リンカー」は、場合により、ポリマーセグメントおよびオピオイド化合物の末端またはオピオイド化合物の求電子部もしくは求核部のような相互接続部分を連結するために使用される原子あるいは原子のコレクションを指すために、本明細書において使用される。スペーサー部分は、加水分解的に安定であってもよく、または生理学的に加水分解可能もしくは酵素的に分解可能な連結を含んでもよい。文脈が明らかに他を指示しない限り、スペーサー部分は、場合により、化合物の任意の2つのエレメント間に存在する(例えば、スペーサー部分を介して、直接または間接的に結合され得るオピオイド化合物および水溶性オリゴマーを含んでなる提供されたコンジュゲート)。
【0022】
「水溶性オリゴマー」は、室温で水において少なくとも35(重量)%可溶性、好ましくは、70(重量)%を超える、およびより好ましくは、95(重量)%可溶性であるオリゴマーを示す。典型的に、「水溶性」オリゴマーの非ろ過水性調製物では、ろ過後に同じ溶液を透過する光の量のうちの少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも95%が透過する。しかし、水溶性オリゴマーが、水において少なくとも95(重量)%可溶性であるか、または水に完全に可溶性であることが、最も好適である。「非ペプチド性」であることに関して、オリゴマーが35(重量)%未満のアミノ酸残基を有する場合、それは非ペプチド性である。
【0023】
用語「モノマー」、「モノマーサブユニット」および「モノマー単位」は、本明細書において同義的に使用され、そしてポリマーまたはオリゴマーの基本構造単位の1つを指す。ホモオリゴマーの場合、単一の反復構造単位がオリゴマーを形成する。コオリゴマーの場合、2つ以上の構造単位が、あるパターンかまたは無作為のいずれかで反復して、オリゴマーを形成する。本発明に関連して使用される好適なオリゴマーは、ホモオリゴマーである。水溶性オリゴマーは、典型的に、連続的に結合して、モノマーの鎖を形成する1つ以上のモノマーを含んでなる。オリゴマーは、単一のモノマータイプ(即ち、ホモオリゴマー性である)または2つもしくは3つのモノマータイプ(即ち、コオリゴマー性である)から形成することができる。
【0024】
「オリゴマー」は、約2〜約の50モノマー、好ましくは、約2〜約30のモノマーを所有する分子である。オリゴマーの構成は変動し得る。本発明に使用するための具体的なオリゴマーとして、線状、分岐、またはフォーク状のような多様なジオメトリーを有するものが挙げられ、下記において、より詳細に説明する。
【0025】
本明細書において使用する「PEG」または「ポリエチレングリコール」は、任意の水溶性のポリ(エチレンオキシド)を包含することを意味する。他に示さない限り、「PEGオリゴマー」(また、オリゴエチレングリコールとも呼ばれる)は、実質的にすべての(およびより好ましくは、すべての)モノマーサブユニットがエチレンオキシドサブユニットであるものである。しかし、オリゴマーは、例えば、コンジュゲーションのための別個の末端キャッピング部分または官能基を含有してもよい。典型的に、本発明に使用するためのPEGオリゴマーは、次の2つの構造のうちの1つを含んでなる:「−(CH2CH2O)n−」または「−(CH2CH2O)n−1CH2CH2−」であって、例えば、合成変換中に末端の酸素が置き換えられているかどうかに依存する。PEGオリゴマーでは、「n」値は、約2〜50、好ましくは、約2〜約30で変動し、そして、全体的なPEGの末端機および構成も変動し得る。PEGが、例えば、オピオイド化合物に連結するための官能基、Aをさらに含んでなる場合、官能基は、PEGオリゴマーに共有結合する場合、(i)酸素−酸素結合(−O−O−、過酸化連結)の形成も、または(ii)窒素−酸素結合(N−O、O−N)の形成も生じない。
【0026】
「末端キャッピング基」は、一般的に、PEGオリゴマーの末端の酸素に結合した非反応性炭素含有基である。例示的な末端キャッピング基は、C1−5アルキル基、例えば、メチル、エチルおよびベンジル)、ならびにアリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロなどを含んでなる。本発明の目的のために、好適なキャッピング基は、メチルまたはエチルのような比較的低い分子量を有する。末端キャッピング基はまた、検出可能な標識を含んでなり得る。そのような標識として、蛍光物質(fluorescer)、化学発光物質(chemiluminescer)、酵素標識において使用される部分、比色標識(colorimetric label)(例えば、染料)、金属イオン、および放射性部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
オリゴマーのジオメトリーまたは全体的構造に関して、「分岐」は、分岐点から延在する別個の「アーム」を表す2つ以上のポリマーを有するオリゴマーを指す。
【0028】
オリゴマーのジオメトリーまたは全体的構造に関して、「フォーク状」は、分岐点から延在する(典型的に、1個以上の原子を介して)2つ以上の官能基を有するオリゴマーを指す。
【0029】
「分岐点」は、オリゴマーが、線状構造から1つ以上のさらなるアームへ分岐またはフォーク構造を形成する1個以上の原子を含んでなる分岐点を指す。
【0030】
用語「反応性」または「活性化された」は、有機合成の従来の条件下で容易にまたは実際的な速度で反応する官能基を指す。これは、反応しないか、あるいは反応するためには強力な触媒または実際的ではない反応条件が必要であるかのいずれかである基(即ち、「非反応性」もしくは「不活な」基)とは対照的である。
【0031】
反応混合物中の分子に存在する官能基に関して、「容易に反応しない」は、基が、反応混合物において所望される反応を生じるのに有効である条件下で主にインタクトの状態を保つことを指す。
【0032】
「保護基」は、所定の反応条件下で分子中の特定の化学的な反応性官能基の反応を防止または阻止する部分である。保護基は、保護される化学反応性基のタイプならびに用いようとする反応条件および分子におけるさらなる反応性基または保護基の存在に依存して変動する。保護することができる官能基として、例えば、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。カルボン酸については、代表的な保護基として、エステル(例えば、p−メトキシベンジルエステル)、アミドおよびヒドラジドが挙げられ;アミノ基については、カルバメート(例えば、tert−ブトキシカルボニル)およびアミドが挙げられ;ヒドロキシル基については、エーテルおよびエステルが挙げられ;チオール基については、チオエーテルおよびチオエステルが挙げられ;カルボニル基については、アセタールおよびケタールなどが挙げられる。そのような保護基は、当業者に周知であり、そして例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999、および本明細書において引用した参考文献に記載されている。
【0033】
「保護された形態」の官能基は、保護基を有する官能基を指す。本明細書において使用する用語「官能基」またはその任意の類義語は、その保護された形態を包含する。
【0034】
「生理学的に切断可能な」結合は、加水分解可能な結合または酵素的に分解可能な連結である。「加水分解可能な」または「分解可能な」結合は、通常の生理学的条件下で水と反応する(即ち、加水分解される)比較的変化を起こし易い結合である。通常の生理学的条件下で水中で結合が加水分解する傾向は、2個の中心原子を接続する一般的なタイプの連結だけではなく、これらの中心原子に結合する置換基にも依存する。そのような結合は、一般的に、当業者であれば認識することができる。適切な加水分解可能な不安定または弱い連結として、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、オリゴヌクレオチド、チオエステル、およびカルボネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
「酵素的に分解可能な連結」は、通常の生理学的条件下で1つ以上の酵素による分解に供される連結を意味する。
【0036】
例えば、水溶性オリゴマーに可逆的に結合したオピオイド化合物に関して、「可逆的に結合した」は、本明細書に記載の生理学的に切断可能なまたは分解可能な(酵素的に含む)連結を含むリンカーを介して共有結合したオピオイド化合物を指し、ここで、(例えば、加水分解による)分解時に、オピオイド化合物が遊離する。このようにして遊離したオピオイド化合物は、典型的に、改変されていないオピオイド化合物に対応するか、または若干変更されていてもよく、例えば、例えば、典型的に、オピオイド化合物に直に隣接しない水溶性オリゴマーリンカーの切断から生じる約8個の原子の短い有機タグを所有する。好ましくは、改変されていないオピオイド化合物が遊離する。
【0037】
「安定な」連結または結合は、水中で実質的に安定である、即ち、通常の生理学的条件下、任意の適切な程度で、長期間にわたって、加水分解を受けない化学部分または結合、典型的には、共有結合を指す。加水分解に安定な連結の例として次のものが挙げられるが、これらに限定されない:(例えば、脂肪族鎖における)炭素−炭素結合、エーテル、アミド、ウレタン、アミンなど。一般的に、安定な連結は、通常の生理学的条件下で1日あたり約1〜2%未満の加水分解の速度を示す連結である。代表的な化学結合の加水分解速度については、ほとんどの標準的な化学の教科書において見出すことができる。
【0038】
所与の組成のオリゴマーの一貫性について説明する場合、「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼすべてまたは完全に、例えば、95%以上、より好ましくは、97%以上、なおより好ましくは、98%以上、さらにより好ましくは、99%以上、なおより好ましくは、99.9%以上を意味し、99.99%以上が、いくつかの所与の量のうちで最も好適である。
【0039】
「単分散」は、オリゴマー組成物を指し、ここで、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーが、良好に限定された単一の分子量および限定された数のモノマーを有し、クロマトグラフィーまたは質量分析によって決定される。単分散オリゴマー組成物は、ある程度純粋であり、即ち、いくらかの異なる数のモノマー(即ち、3つ以上の異なるオリゴマーサイズを有するオリゴマー組成物)ではなく、単一かつ限定可能な数のモノマーを有する分子を実質的に含んでなる。単分散オリゴマー組成物は、1.0005未満のMW/Mn値、およびより好ましくは、1.0000のMW/Mn値を所有する。拡大解釈すると、単分散コンジュゲートからなる組成物は、組成物中のすべてのコンジュゲートの実質的にすべてのオリゴマーが、分布しておらず、(整数として)単一かつ限定された数のモノマーを有し、そしてオリゴマーがオピオイドアゴニストの残基に結合しなかった場合、1.0005のMW/Mn値、およびより好ましくは、1.0000のMW/Mn値を所有することを意味する。しかし、単分散コンジュゲートからなる組成物として、溶媒、試薬、賦形剤などのような1つ以上の非コンジュゲート物質を挙げることができる。
【0040】
オリゴマー組成物に関して、「二峰性」は、オリゴマー組成物を指し、ここで、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーは、分布ではなく、(整数として)2つの限定可能なかつ異なる数のモノマーのうちの1つを有し、そして多くの画分対分子量としてプロットした場合、その分子量の分布は、2つの個別の同定可能なピークとして出現する。好ましくは、本明細書に記載の二峰性オリゴマー組成物について、各ピークは、一般的に、その平均について対称であるが、2つのピークのサイズは異なっていてもよい。理想的には、二峰性分布における各ピークの多分散指数、Mw/Mnは、1.01以下、より好ましくは、1.001以下、およびさらにより好ましくは、1.0005以下、および最も好ましくは、1.0000のMW/Mn値である。拡大解釈すると、二峰性コンジュゲートからなる組成物は、組成物中のすべてのコンジュゲートの実質的にすべてのオリゴマーが、大きな分布ではなく、(整数として)2つの限定可能なかつ異なる数のモノマーのうちの1つを有し、そしてオリゴマーがオピオイドアゴニストの残基に結合しなかった場合、1.01以下のMW/Mn値、より好ましくは、1.001以下、およびさらにより好ましくは、1.0005以下、および最も好ましくは、1.0000のMW/Mn値を所有することを意味する。しかし、二峰性コンジュゲートからなる組成物として、溶媒、試薬、賦形剤などのような1つ以上の非コンジュゲート物質を挙げることができる。
【0041】
「生体膜」は、典型的に、少なくともいくつかの外来性の実体もしくはそうでなければ所望されない材料に対する関門として役立つ分化した細胞または組織から作製される任意の膜である。本明細書において使用する「生体膜」として、例えば、次のものを含む生理学的保護関門に関連するそれらの膜が挙げられる:血液脳関門(BBB);血液脳脊髄液関門;血液胎盤関門;血液乳関門;血液精巣関門;および膣粘膜、尿道粘膜、肛門粘膜、頬粘膜、舌下粘膜、直腸粘膜などを含む粘膜関門。ある文脈において、用語「生体膜」は、中間の胃腸間(例えば、胃および小腸)に関連する膜を含まない。例えば、場合によっては、本発明の化合物の血液脳関門を横切る能力が限定されることを所望してもよく、なお、同じ化合物が中間の胃腸管を横切ることを所望してもよい。
【0042】
本明細書において使用する「生体膜横断速度」は、生体膜(例えば、血液脳関門に関連する膜)を横断する化合物の能力の尺度を提供する。多様な方法を使用して、あらゆる所与の生体膜を横断する分子の輸送を評価することができる。あらゆる所与の生物学的関門(例えば、血液脳脊髄液関門、血液胎盤関門、血液乳関門、腸関門など)に関連する生体膜横断速度を評価する方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書および/または関連文献に記載されており、ならびに/あるいは当業者によって決定することができる。
【0043】
「アルキル」は、典型的に、約1〜20個の原子の長さの炭化水素鎖を指す。そのような炭化水素鎖は、飽和されていることが好ましいが、必ずしもそうである必要はなく、また、分岐鎖であってもよく、または直鎖であってもよいが、典型的に直鎖が好ましい。例示的なアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、3−メチルペンチルなどが挙げられる。本明細書において使用する「アルキル」は、3個以上の炭素原子に言及する場合、シクロアルキルを含む。「アルケニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を伴う2〜20個の炭素原子のアルキルである。
【0044】
用語「置換アルキル」または「置換Cq−rアルキル」(ここで、qおよびrは、アルキル基に含有される炭素原子の範囲を同定する整数である)は、1つ、2つもしくは3つのハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C1−7アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチルなど)、C1−7アルコキシ、C1−7アシルオキシ、C3−7ヘテロ環、アミノ、フェノキシ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシ、アシル、シアノによって置換された上記のアルキル基を示す。置換アルキル基は、同じまたは異なる置換基で1回、2回もしくは3回置換され得る。
【0045】
「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基を指し、そしてメチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルによって例示されるように、直鎖であってもよく、または分岐鎖であってもよい。「低級アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する2〜6個の炭素原子の低級アルキル基である。
【0046】
「非干渉置換基」は、分子中に存在する場合、典型的に、分子内に含有される他の官能基と非反応性である基である。
【0047】
「アルコキシ」は、−O−R基を指し、ここで、Rは、アルキルまたは置換アルキル、好ましくは、C1−C20アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ベンジルなど)、好ましくは、C1−C7である。
【0048】
「薬学的に許容できる賦形剤」または「薬学的に許容できるキャリア」は、成分を含まない組成物より優れた利点(例えば、患者への投与にさらに適切である)を有し、そして患者に対して顕著な有害な毒性学的影響を生じないことが認識される組成物を提供するために、本発明の組成物に含めることができる成分を指す。
【0049】
用語「アリール」は、14個までの炭素原子を有する芳香族基を意味する。アリール基として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニルなどが挙げられる。「置換フェニル」および「置換アリール」は、それぞれ、ハロ(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(例えば、C1−6アルキル)、アルコキシ(例えば、C1−6アルコキシ)、ベンジルオキシ、カルボキシ、アリールなどから選択される1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ(例えば、1−2、1−3もしくは1−4置換基)によって置換されたフェニル基およびアリール基を示す。
【0050】
「芳香族含有部分」は、少なくともアリール、および場合により1個以上の原子含有する原子のコレクションである。適切な芳香族含有部分については、本明細書において説明する。
【0051】
簡潔のため、化学的部分は、全体を通して、一価の化学的部分(例えば、アルキル、アリールなど)として定義され、そしてそのように称される。それにもかかわらず、そのような用語はまた、当業者に明らかである適切な構造的環境下で、対応する多価の部分を伝えることにも使用される。例えば、「アルキル」部分は、一般的に、一価のラジカル(例えば、CH3−CH2−)を指す一方、所定の環境では、二価の連結部分は、「アルキル」であり得、その場合、当業者は、そのアルキルが、用語「アルキレン」に等価である二価のラジカル(例えば、−CH2−CH2−)であることを理解するであろう。(同様に、二価の部分が必要であり、そして「アリール」と述べられる環境では、当業者は、用語「アリール」が、対応する二価の部分、アリーレンを指すと理解するであろう)。すべての原子は、結合形成のためのそれらの正常な原子価数(即ち、炭素では4、Nでは3、Oでは2、およびSの酸化状態に依存して、Sでは2、4、もしくは6)を有すると理解される。
【0052】
「薬理学的有効量」、「生理学的有効量」、および「治療有効量」は、本明細書において同義的に使用され、血流中あるいは標的組織中において、閾値レベルの有効因子および/またはコンジュゲートを提供するのに必要な組成物中に存在する水溶性オリゴマー−オピオイド化合物コンジュゲートの量を意味する。正確な量は、多数の因子、例えば、組成物の特定の有効因子、成分および物理特性、意図される患者集団、患者の考慮事項などに依存し、そして本明細書において提供する情報、および関連文献において利用可能な情報に基づいて、当業者が容易に決定することができる。
【0053】
「二官能性」オリゴマーは、典型的に、その末端において、2つの官能基がその中に含有されるオリゴマーである。官能基が同じである場合、オリゴマーは、ホモ二官能性と呼ばれる。官能基が異なる場合、オリゴマーは、ヘテロ二官能性と呼ばれる。
【0054】
本明細書に記載の塩基性反応物質または酸性反応物質は、中性で荷電したもの、およびその任意の対応する塩形態を含む。
【0055】
用語「患者」は、必ずしもその必要はないが典型的に、水溶性オリゴマー−オピオイド化合物コンジュゲートの形態で、本明細書に記載のコンジュゲートの投与によって、予防または治療することができる病態を患っている、またはその傾向がある、生物体を指し、ヒトおよび動物の両方を含む。
【0056】
「随意的」または「場合により」は、後に説明する状況が生じてもよいが、必ずしもその必要があるわけではなく、そのため、その説明には、状況が生じる場合と、それが生じない場合とが含まれることを意味する。
【0057】
文脈が明らかに他を指示しない限り、用語「約」が数値の前にある場合、数値は、上述の数値およびまた上述の数値の±10%を意味するものと理解される。
【0058】
水溶性オリゴマーオピオイドコンジュゲート
上記のように、本開示物は、(とりわけ)以下の式の化合物に関する:
OP−X−POLY
ここで、OPはオピオイド化合物であり、Xはリンカーであり、そしてPOLYは小さな水溶性オリゴマーである。主題コンジュゲートの調製および特徴付けにおいて、本発明者らは、オピオイド化合物を小さな水溶性オリゴマーで誘導体化することによって、オピオイド化合物の脳への送達の速度が低減することを発見した。オピオイドアゴニスト分子自体の共有結合修飾に基づいて、本明細書に記載のコンジュゲートは、先行技術の乱用防止オピオイドアゴニスト処方物より改善されている。即ち、小さな水−オリゴマー(small water−oligomers)とコンジュゲートされたオピオイド化合物は、変更された薬物動態プロファイルを有するが、経皮パッチのような所定の代替的送達処方に関連する即効性オピオイド化合物の回収および乱用の可能性を作り出す物理的タンパリングの危険性には供されない。
オピオイド
【0059】
従って、OPは、ミュー(μ)、カッパ(κ)、またはデルタ(δ)オピオイド受容体と相互作用する任意の化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む、任意のオピオイド化合物であり得る。一実施形態では、オピオイドは、ミュー(μ)オピオイド受容体に対して選択的である。もう1つの実施形態では、オピオイドは、カッパ(κ)オピオイド受容体に対して選択的である。さらなる実施形態では、オピオイドは、デルタ(δ)オピオイド受容体に対して選択的である。使用に適切なオピオイドは、天然に存在する分子、半合成分子または合成分子であり得る。
【0060】
使用することができるオピオイド化合物として、アセトルフィン、アセチルジヒドロコデイン、アセチルジヒドロコデイノン、アセチルモルヒノン、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ビファリン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、酪酸ジオキサフェチル、ジピパノン、ダイノルフィン(ダイノルフィンAおよびダイノルフィンBを含む)、エンドルフィン(β−エンドルフィンおよびα/β−ネオエンドルフィンを含む)、エンケファリン(Met−エンケファリンおよびLeu−エンケファリンを含む)、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、フェンタニルおよび誘導体、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナンシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナノルフィン、ナルブフィン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェノドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、ならびにトラマドールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
所定の実施形態では、オピオイドアゴニストは、ヒドロコドン、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシコドン、コデイン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、オキシモルホン、ブプレノルフィン、フェンタニル、ジピパノン、ヘロイン、トラマドール、ナルブフィン、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、ブトルファノール、およびレボルファノールからなる群から選択される
【0062】
他の実施形態では、オピオイドアゴニストは、フェンタニル、ヒドロモルホン、メタドン、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、およびオキシモルホンからなる群から選択される。
【0063】
オピオイドアゴニスト活性を有する他のいずれのオピオイド化合物もまた、使用してもよい。所与の化合物(化合物がコンジュゲート形態であるかどうかにかかわらない)が、オピオイド受容体に対してアゴニストとして作用できるかどうかを決定するためのアッセイについては、本明細書に記載されており、そして当該技術分野において公知である。
【0064】
場合によっては、オピオイドアゴニストは、商業的供給源から入手することができる。加えて、オピオイドアゴニストは、合成有機化学の標準的な技術を使用して、合成することができる。オピオイドアゴニストを調製するための合成アプローチについては、参考文献ならびに例えば、米国特許第2,628,962号明細書、同第2,654,756号明細書、同第2,649,454号明細書、および同第2,806,033号明細書に記載されている。
【0065】
これら(および他の)オピオイドアゴニストのそれぞれは、(直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって)水溶性オリゴマーに共有結合させることができる。
【0066】
本発明において有用なオピオイド化合物は、一般的に、約1500Da(ダルトン)未満、およびなおより典型的には、約1000Da未満の分子量を有する。オピオイド化合物の例示的分子量として、約950Da未満;約900Da未満;約850Da未満;約800Da未満;約750Da未満;約700Da未満;約650Da未満;約600Da未満;約550Da未満;約500Da未満;約450Da未満;約400Da未満;約350Da未満;および約300Da未満の分子量が挙げられる。
【0067】
本発明において使用されるオピオイド化合物は、キラルの場合、ラセミ混合物、もしくは光学活性形態、例えば、単一の光学活性エナンチオマーであってもよく、または任意の組み合わせもしくは比率のエナンチオマー(即ち、スケールミック混合物)であってもよい。加えて、オピオイド化合物は、1つ以上の幾何異性体を所有してもよい。幾何異性体に関して、組成物は、単一の幾何異性体、または2つ以上の幾何異性体の混合物を含んでなり得る。本発明に使用するためのオピオイド化合物は、その慣習的な活性形態であり得るか、またはある程度の改変を所有してもよい。例えば、オピオイド化合物は、水溶性オリゴマーの共有結合の前もしくは後に、それに結合させたターゲティング剤、タグ、またはトランスポーターを有してもよい。あるいは、オピオイド化合物は、リン脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンもしくは「DSPE」、ジパルミトイルジホスファチジルエタノールアミンもしくは「DPPE」など)または小さな脂肪酸のようなそれに結合させた親油性部分を所有してもよい。しかし、場合によっては、オピオイド化合物は、親油性部分への結合を含まないことが好ましい。
【0068】
水溶性オリゴマーに結合するためのオピオイドアゴニストは、オリゴマーへの共有結合に適切な遊離のヒドロキシル、カルボキシル、チオ、アミノ基など(即ち、「ハンドル」)を所有する。加えて、オピオイドアゴニストは、反応基の導入によって、好ましくは、その既存の官能基の1つを、オリゴマーとオピオイド化合物との間の安定な共有結合の形成に適切な官能基へ変換することによって、改変することができる。
【0069】
水溶性オリゴマー
従って、各オリゴマーは、次のものからなる群から選択される3つまでの異なるモノマータイプからなる:アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド;オレフィン性アルコール、例えば、ビニルアルコール、1−プロペノールまたは2−プロペノール;ビニルピロリドン;ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはヒドロキシアルキルメタクリレートであって、ここで、アルキルは、好ましくは、メチルである;α−ヒドロキシ酸、例えば、乳酸またはグリコール酸;ホスファゼン、オキサゾリン、アミノ酸、炭水化物、例えば、単糖類、糖類またはマンニトール;およびN−アクリロイルモルホリン。好適なモノマータイプとして、アルキレンオキシド、オレフィン性アルコール、ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはメタクリレート、N−アクリロイルモルホリン、およびα−ヒドロキシ酸が挙げられる。好ましくは、各オリゴマーは、独立して、この基から選択される2つのモノマータイプのコオリゴマーであるか、または、より好ましくは、この基から選択される1つのモノマータイプのホモオリゴマーである。
【0070】
コオリゴマーにおける2つのモノマータイプは、同じモノマータイプ、例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのような2つのアルキレンオキシドであってもよい。好ましくは、オリゴマーは、エチレンオキシドのホモオリゴマーである。通常、必ずしも必要ではないが、オピオイド化合物に共有結合していないオリゴマーの末端(または複数の末端)は、キャッピングされて非反応性にされる。あるいは、末端は、反応基を含んでもよい。末端が反応基である場合、反応基は、最終的なオリゴマーの形成条件下で、もしくはオリゴマーのオピオイド化合物への共有結合中に非反応性になるように、または必要に応じて、保護されるように、選択される。1つの一般的な末端官能基は、特に、オリゴエチレンオキシドに対して、ヒドロキシルまたは−OHである。
【0071】
水溶性オリゴマー(例えば、本明細書において提供される構造における「POLY」)は、異なる多くのジオメトリーのいずれかを有することができる。例えば、それは、線状、分岐状、またはフォーク状であり得る。最も典型的に、水溶性オリゴマーは、線状であるか、または分岐しており、例えば、1つの分岐点を有する。本明細書における考察の多くが、例示的なオリゴマーとしてポリ(エチレンオキシド)に集中しているが、本明細書に示す考察および構造は、上記の水溶性オリゴマーのいずれをも包含するように容易に拡張することができる。
【0072】
リンカー部分を除く水溶性オリゴマーの分子量は、一般的に、比較的低い。例えば、水溶性オリゴマーの分子量は、典型的に、約2200ダルトン未満であり、そしてより典型的には、約1500ダルトン以下である。所定の他の実施形態では、水溶性オリゴマーの分子量は、800ダルトン未満であってもよい。
【0073】
所定の実施形態では、水溶性オリゴマーの分子量の例示的値として、約500ダルトン以下、または約420ダルトン以下、または約370ダルトン以下、または約370ダルトン以下、または約325ダルトン以下、約280ダルトン以下、約235ダルトン以下、または約200ダルトン以下、約175ダルトン以下、または約150ダルトン以下、または約135ダルトン以下、約90ダルトン以下、または約60ダルトン以下、またはなお約45ダルトン以下が挙げられる。
【0074】
他の実施形態では、リンカー部分を除く水溶性オリゴマーの分子量の例示的値として:約1500ダルトン未満;約1450ダルトン未満;約1400ダルトン未満;約1350ダルトン未満;約1300ダルトン未満;約1250ダルトン未満;約1200ダルトン未満;約1150ダルトン未満;約1100ダルトン未満;約1050ダルトン未満;約1000ダルトン未満;約950ダルトン未満;約900ダルトン未満;約850ダルトン未満;約800ダルトン未満;約750ダルトン未満;約700ダルトン未満;約650ダルトン未満;約600ダルトン未満;約550ダルトン未満;約500ダルトン未満;約450ダルトン未満;約400ダルトン未満;および約350ダルトン未満が挙げられる;但し、各場合とも約250ダルトンを超える。
【0075】
所定の他の実施形態では、オピオイドは、オリゴマーに結合するのではなく、水溶性ポリマー、即ち、50を超える反復サブユニットを有する部分に共有結合する。例えば、リンカー部分を除く水溶性ポリマーの分子量は、約80,000ダルトン未満;約70,000ダルトン未満;約60,000ダルトン未満;約50,000ダルトン未満;約40,000ダルトン未満;約30,000ダルトン未満;約20,000ダルトン未満;約10,000ダルトン未満;約8,000ダルトン未満;約6,000ダルトン未満;約4,000ダルトン未満;約3,000ダルトン未満;および約2,000ダルトン未満であってもよい;但し、各場合とも約250ダルトンを超える。
【0076】
所定の実施形態では、水溶性オリゴマー(リンカーを除く)の分子量の例示的な範囲として:約45〜約225ダルトン;約45〜約175ダルトン;約45〜約135ダルトン;約45〜約90ダルトン;約90〜約225ダルトン;約90〜約175ダルトン;約90〜約135ダルトン;約135〜225ダルトン未満;および約175〜約225ダルトンが挙げられる。
【0077】
他の代替実施形態では、水溶性オリゴマー(リンカーを除く)の分子量の例示的な範囲として:約250〜約1500ダルトン;約250〜約1200ダルトン;約250〜約800ダルトン;約250〜約500ダルトン;約250〜約400ダルトン;約250〜約500ダルトン;約250〜約1000ダルトン;および約250〜約500ダルトンが挙げられる。
【0078】
水溶性ポリマー結合オピオイドに関連する他の実施形態では、水溶性ポリマー(リンカーを除く)の分子量の例示的な範囲として:約2,000〜約80,000ダルトン;約2,000〜約70,000ダルトン;約2,000〜約60,000ダルトン;約2,000〜約50,000ダルトン;約2,000〜約40,000ダルトン;約2,000〜約30,000ダルトン;約2,000〜約20,000ダルトン;約2,000〜約10,000ダルトン;約2,000〜約8,000ダルトン;約2,000〜約6,000ダルトン;約2,000〜約4,000ダルトン;約2,000〜約3,000ダルトン;約10,000〜約80,000ダルトン;約10,000〜約60,000ダルトン;約10,000〜約40,000ダルトン;約30,000〜約80,000ダルトン;約30,000〜約60,000ダルトン;約40,000〜約80,000ダルトン;および約60,000〜約80,000ダルトンが挙げられる。
【0079】
水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、約1〜約1825の間(1および1825を包含する)であってもよく、この範囲内のすべての整数値を含む。
【0080】
好ましくは、いくつかの実施形態では、水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、次の包含範囲のうちの1つ以上に当てはまる:1〜5の間(即ち、1、2、3、4、および5から選択される);1〜4の間(即ち、1、2、3、または4であり得る);1〜3の間(即ち、1、2、または3から選択される);1〜2の間(即ち、1または2であり得る);2〜5の間(即ち、2、3、4、および5から選択され得る);2〜4の間(即ち、2、3、および4から選択される);2〜3の間(即ち、2または3のいずれかである);3〜5の間(即ち、3、4または5のいずれかである);3〜4の間(即ち、3または4である);ならびに4〜5の間(即ち、4または5である)。特定の場合において、オリゴマー中の連続するモノマーの数(および対応するコンジュゲート)は、1、2、3、4、または5から選択される。それ故、例えば、水溶性オリゴマーがCH3−(OCH2CH2)n−を含む場合、「n」は、整数であり、1、2、3、4、または5であり得る。
【0081】
好ましくは、他の実施形態では、水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、次の包含範囲のうちの1つ以上に当てはまる:6〜30の間(即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30から選択される);6〜25の間(即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25から選択される);6〜20の間(即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択される);6〜15の間(6、7、8、9、10、11、12、13、14、15から選択される);6〜10の間(即ち、6、7、8、9、および10から選択される);10〜25の間(即ち、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25から選択される);ならびに15〜20の間(即ち、15、16、17、18、19、および20から選択される)。ある場合において、オリゴマー中の連続するモノマーの数(および対応するコンジュゲート)は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25のうちの1つである。それ故、例えば、水溶性オリゴマーがCH3−(OCH2CH2)n−を含む場合、「n」は、整数であり、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25であり得る。
【0082】
所定の他の実施形態では、水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、次の包含範囲のうちの1つ以上に当てはまる:35〜1825の間;100〜1800の間;200〜1600の間;400〜1400の間;600〜1200の間;800〜1000の間;35〜1000の間;35〜600の間;35〜400の間;35〜200の間;35〜100の間;1000〜1825の間;1200〜1825の間;1400〜1825の間;および1600〜1825の間。
【0083】
水溶性オリゴマーが1、2、3、4、または5のモノマーを有する場合、これらの値は、それぞれ、約75、119、163、207、および251ダルトンの分子量を有するメトキシ末端キャップ化オリゴ(エチレンオキシド)に対応する。オリゴマーが6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のモノマーを有する場合、これらの値は、それぞれ、約295、339、383、427、471、515、559、603、647、および691ダルトンの分子量を有するメトキシ末端キャップ化オリゴ(エチレンオキシド)に対応する。
【0084】
(オピオイドアゴニスト上へオリゴマーを効果的に「成長させる」ために、1つ以上のモノマーを段階的に付加することとは対照的に)水溶性オリゴマーが、オピオイドアゴニストに結合させる場合、水溶性オリゴマーの活性型を含有する組成物は、単分散されることが好ましい。しかし、それらの場合では、二峰性の組成物を用いる場合、組成物は、モノマーの上記の数のうちのいずれか2つを中心とする二峰性分布を所有する。理想的には、二峰性分布の各ピークの多分散指数、Mw/Mnは、1.01以下であり、およびさらにより好ましくは、1.001以下であり、およびさらにより好ましくは、1.0005以下である。最も好ましくは、各ピークは、1.0000のMW/Mn値を所有する。例えば、二峰性リゴマーは、モノマーサブユニットの次の例示的な組み合わせのいずれか1つを有してもよい:1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8、1−9、1−10など;2−3、2−4、2−5、2−6、2−7、2−8、2−9、2−10など;3−4、3−5、3−6、3−7、3−8、3−9、3−10など;4−5、4−6、4−7、4−8、4−9、4−10など;5−6、5−7、5−8、5−9、5−10など;6−7、6−8、6−9、6−10など;7−8、7−9、7−10など;および8−9、8−10など。
【0085】
場合によっては、水溶性オリゴマーの活性型を含有する組成物は、三峰性またはなお四峰性でもあり、先に記載のようなある範囲のモノマー単位を所有する。オリゴマーの良好に定義された混合物を所有するオリゴマー組成物(即ち、二峰性、三峰性、四峰性などである)は、オリゴマーの所望のプロファイル(モノマーの数だけが異なる2つのオリゴマーの混合物は二峰性であり;モノマーの数だけが異なる3つのオリゴマーの混合物は三峰性であり;モノマーの数だけが異なる4つのオリゴマーの混合物は四峰性である)を得るように、精製された単分散オリゴマーを混合することによって調製することができるか、あるいは、所望および定義された分子量範囲のオリゴマーの混合物を得るように、「センターカット」を回収することによって、多分散オリゴマーのカラムクロマトグラフィーから得ることができる。
【0086】
水溶性オリゴマーは、好ましくは、単分子または単分散である組成物から得るのが好ましい。即ち、組成物中のオリゴマーは、分子量の分布ではなく、同じ別個の分子量値を所有する。いくつかの単分散オリゴマーは、Sigma−Aldrichから入手可能なもののように、商業的供給源から購入することができるか、あるいは、Sigma−Aldrichのような市販の出発物質から直接調製することができる。水溶性オリゴマーは、Chen and Baker,J.Org.Chem.6870−6873(1999)、国際公開第02/098949号パンフレット、および米国特許出願公開第2005/0136031号明細書に記載されているように調製することができる。
【0087】
スペーサー/リンカー部分
存在する場合、スペーサー部分(これを介して、水溶性オリゴマーはオピオイドアゴニストに結合される)は、単結合、酸素原子もしくは硫黄原子のような単一の原子、2個の原子、または多くの原子であってもよい。特に、「X」は、OPとPOLYとの間の共有結合を表してもよく、あるいは、それは、OPおよび/またはPOLY単独上には存在しない化学部分を表してもよい。スペーサー部分は、必ずしもその必要はないが、典型的に、事実上線状である。所定の実施形態では、スペーサー部分、「X」は、好ましくは、加水分解的に安定であり、そして好ましくはまた、酵素的に安定である。他の実施形態では、スペーサー部分、「X」は、好ましくは、生理学的に切断可能であり、即ち、加水分解的に切断可能であるかまたは酵素的に分解可能である。好ましくは、スペーサー部分「X」は、約12個未満の原子、および好ましくは、約10個未満の原子、およびさらにより好ましくは、約8個未満の原子、およびさらにより好ましくは、約5個未満の原子の鎖長を有するものであり、ここで、長さは、置換基を数に入れない、単一鎖内の原子の数を意味する。例えば、このRオリゴマー−NH−(C=O)−NH−R’OPのような尿素連結は、3個の原子(−NH−C(O)−NH−)の鎖長を有するものと見なされる。選択された実施形態では、スペーサー部分の連結は、さらなるスペーサー基を含まない。
【0088】
場合によっては、スペーサー部分「X」は、エーテル、アミド、ウレタン、アミン、チオエーテル、尿素、または炭素−炭素結合を含んでなる。官能基は、典型的に、連結を形成するために使用される。以下にさらに説明するように、スペーサー部分はまた、それほど好ましくはないが、スペーサー基を含んでなる(またはそれに隣接するか、もしくは側面にある)こともある。
【0089】
より具体的には、選択された実施形態では、スペーサー部分、Xは、次のもののいずれであってもよい:「−」(即ち、共有結合、安定であっても、または分解性であってもよく、オピオイドアゴニストの残基と水溶性オリゴマーとの間にある)、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−CH2−C(O)O−、−CH2−OC(O)−、−C(O)O−CH2−、−OC(O)−CH2−、C(O)−NH、NH−C(O)−NH、O−C(O)−NH、−C(S)−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−O−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−、−C(O)−NH−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−、−NH−C(O)−CH2−、−CH2−NH−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−、−NH−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2、−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2、−C(O)−NH−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−、−O−C(O)−NH−CH2−、−O−C(O)−NH−CH2−CH2−、−NH−CH2−、−NH−CH2−CH2−、−CH2−NH−CH2−、−CH2−CH2−NH−CH2−、−C(O)−CH2−、−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−、二価のシクロアルキル基、−N(R6)−、ここで、R6は、H、またはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリールおよび置換アリールからなる群から選択される有機ラジカルである。
【0090】
しかし、本発明の目的のために、一群の原子は、それがオリゴマーセグメントに直接隣接している場合、スペーサー部分とはみなされず、そしてその一群の原子は、その群がオリゴマー鎖の単なる伸長を表すように、オリゴマーのモノマーと同じとされる。
【0091】
コンジュゲーション
水溶性オリゴマーとオピオイド化合物との間の連結「X」は、典型的に、オリゴマーの末端上の官能基(またはオピオイドアゴニスト上でオリゴマーを「成長させる」ことが所望される場合、1つ以上のモノマー)と、オピオイドアゴニスト内の対応する官能基との反応によって形成される。例えば、オリゴマー上のアミノ基を、アミド連結を生成するように、オピオイド化合物上のカルボン酸もしくは活性化カルボン酸誘導体と反応させてもよく、またはその逆でもよい。あるいは、オリゴマー上のアミンとオピオイド化合物上の活性化カルボネート(例えば、スクシンイミジルもしくはベンゾトリアジルカルボネート)、またはその逆の反応は、カルバメート連結を形成する。オリゴマー上のアミンとオピオイド化合物上のイソシアネート(R−N=C=O)、またはその逆の反応は、尿素連結(R−NH−(C=O)−NH−R’)を形成する。さらに、オリゴマー上のアルコール(アルコキシド)基と、オピオイド化合物内のハロゲン化アルキル、もしくはハライド基、またはその逆の反応は、エーテル連結を形成する。なおもう1つの結合アプローチでは、アルデヒド機能を有するオピオイド化合物を、還元的アミノ化によってオリゴマーアミノ基に結合させ、オリゴマーとオピオイド化合物との間の第二級アミン連結の形成を生じさせる。
【0092】
特に好適な水溶性オリゴマーは、アルデヒド官能基を有するオリゴマーである。これに関して、オリゴマーは、次の構造を有する:CH3O−(CH2−CH2−O)n−(CH2)p−C(O)H[式中、(n)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10のうちの1つであり、そして(p)は、1、2、3、4、5、6および7のうちの1つである]。好適な(n)値として、1、2、3、4、7、8、9、および10が挙げられ、そして好適な(p)値として、2、3および4が挙げられる。加えて、−C(O)H部分に対する炭素原子αは、場合により、アルキルで置換することができる。
【0093】
典型的に、官能基を有さない水溶性オリゴマーの末端は、キャッピングされて、非反応性にされる。オリゴマーがコンジュゲートの形成を目的とする以外に、末端にさらなる官能基を含む場合、その基は、連結「X」の形成条件下で非反応性であるか、または連結「X」の形成中に保護されるように、選択される。
【0094】
上記のように、水溶性オリゴマーは、コンジュゲーションの前に、少なくとも1つの官能基を含む。官能基は、典型的に、オピオイド化合物内に含有されるか、もしくはオピオイド化合物に導入される反応基に依存して、オピオイド化合物への共有結合のための求電子または求核基を含んでなる。オリゴマーまたはオピオイド化合物のいずれかに存在し得る求核基の例として、ヒドロキシル、アミン、ヒドラジン(−NHNH2)、ヒドラジド(−C(O)NHNH2)、およびチオールが挙げられる。好適な求核剤として、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、およびチオール、好ましくは、アミンが挙げられる。オリゴマーへの共有結合のためのほとんどのオピオイド化合物は、遊離のヒドロキシル、アミノ、チオ、アルデヒド、ケトン、またはカルボキシル基を所有する。
【0095】
オリゴマーまたはオピオイド化合物のいずれかに存在し得る求電子官能基の例として、カルボン酸、カルボキシルエステル、特に、イミドエステル、オルトエステル、カルボネート、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、エポキシ、スルホネート、チオスルホネート、シラン、アルコキシシラン、およびハロシランが挙げられる。これらの基のさらなる具体例として、スクシンイミジルエステルまたはカルボネート、イミダゾイルエステルまたはカルボネート、ベンゾトリアゾールエステルまたはカルボネート、ビニルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルピリジン、ピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、およびトレシレート(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)が挙げられる。
【0096】
また、チオン、チオン水和物、チオケタール、2−チアゾリジンなどのようなこれらの基のうちのいくらかの硫黄アナログ、ならびに上記の部分のいずれかの水和物または保護された誘導体(例えば、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール、チオアセタール)も挙げられる。
【0097】
カルボン酸の「活性化誘導体」は、一般的に、非誘導体化カルボン酸より極めて容易に求核剤と反応するカルボン酸誘導体を指す。活性化カルボン酸として、例えば、酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)、無水物、カルボネートおよびエステルが挙げられる。そのようなエステルとして、一般形が−(CO)O−N[(CO)−]2であるイミドエステル;例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルまたはN−ヒドロキシフタルイミジルエステルが挙げられる。また、イミダゾリルエステルおよびベンゾトリアゾールエステルもまた好適である。共同所有の米国特許第5,672,662号明細書に記載の活性化プロピオン酸またはブタン酸エステルが特に好適である。これらは、−(CH2)2−3C(=O)O−Qの形態の基を含み、ここで、Qは、好ましくは、N−スクシンイミド、N−スルホスクシンイミド、N−フタルイミド、N−グルタルイミド、N−テトラヒドロフタルイミド、N−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、ベンゾトリアゾール、7−アザベンゾトリアゾール、およびイミダゾールから選択される。
【0098】
他の好適な求電子基として、スクシンイミジルカルボネート、マレイミド、ベンゾトリアゾールカルボネート、グリシジルエーテル、イミダゾイルカルボネート、p−ニトロフェニルカルボネート、アクリレート、トレシレート、アルデヒド、およびオルトピリジルジスルフィドが挙げられる。
【0099】
これらの求電子基は、求核剤、例えば、ヒドロキシ、チオ、またはアミノ基との反応に供されて、さまざまな結合型を生成する。求電子官能基のいくらかは、チオールのような求核基を添加して、例えば、チオエーテル結合を形成することができる求電子二重結合を含む。これらの基として、マレイミド、ビニルスルホン、ビニルピリジン、アクリレート、メタクリレート、およびアクリルアミドが挙げられる。他の基は、求核剤によって置き換えることができる脱離基を含んでなり、これらには、クロロエチルスルホン、ピリジルジスルフィド(切断可能なS−S結合を含む)、ヨードアセトアミド、メシレート、トシレート、チオスルホネート、およびトレシレートが含まれる。エポキシドは、求核剤による開環によって反応して、例えば、エーテルまたはアミン結合を形成する。オリゴマーおよびオピオイド化合物上に上記のような相補的な反応基に関与する反応を利用して、本発明のコンジュゲートを調製する。
【0100】
本発明の所定の実施形態では、加水分解的に安定な連結を形成し易い反応が好ましい。例えば、オルトエステル、スクシンイミジルエステル、イミダゾリルエステル、およびベンゾトリアゾールエステルを含むカルボン酸およびその活性化誘導体は、上記のタイプの求核剤と反応して、それぞれ、エステル、チオエステル、およびアミドを形成するが、それらのうちアミドが最も加水分解的に安定である。スクシンイミジル、イミダゾリル、およびベンゾトリアゾールカルボネートを含むカルボネートは、アミノ基と反応して、カルバメートを形成する。イソシアネート(R−N=C=O)は、ヒドロキシルまたはアミノ基と反応して、それぞれ、カルバメート(RNH−C(O)−OR’)または尿素(RNH−C(O)−NHR’)連結を形成する。アルデヒド、ケトン、グリオキサール、ジオン、およびそれらの水和物またはアルコール付加物(即ち、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、およびケタール)は、好ましくは、アミンと反応し、続いて、得られるイミンを還元して、所望であれば、アミン連結を提供する(還元的アミノ化)。
【0101】
本発明の他の実施形態では、生理学的に切断可能な連結を形成し易い反応が好ましい。放出可能な連結は、必ずしもその必要はないが、オピオイド化合物に結合した水溶性オリゴマー(および/または任意のスペーサー部分もしくはリンカー)のいずれのフラグメントも放出することなく、インビボで(およびいくつかの場合、インビトロで)オピオイド化合物から脱離される水溶性オリゴマー(および任意のスペーサー部分)を生じ得る。例示的な放出可能な連結として、炭酸塩、カルボン酸エステル、リン酸エステル、チオールエステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、所定のカルバミン酸塩、およびオルトエステルが挙げられる。そのような連結は、当該技術分において一般に用いられるカップリング方法を使用するオピオイド化合物および/またはポリマー性試薬の反応によって、容易に形成することができる。加水分解可能な連結は、しばしば、適切に活性化されたオリゴマーと、オピオイド化合物内に含有される改変されていない官能基との反応によって、容易に形成される。
【0102】
場合によっては、オピオイドアゴニストは、コンジュゲーションに適した官能基を有していなくてもよい。この場合、「本来の」オピオイドアゴニストが所望される官能基を有するように、それを改変することが可能である。例えば、オピオイドアゴニストはアミド基を有するが、アミン基が所望される場合、Hofmann転位、Curtius転位(一旦、アミドがアジドに変換される)またはLossen転位(一旦、アミドがヒドロキサミドに変換され、続いて、トリエン(tolyene)−2−塩化スルホニル/塩基により処理される)によって、アミド基をアミン基に改変することが可能である。
【0103】
カルボキシル基を有するオピオイドアゴニスト(ここで、カルボキシル基を有するオピオイドアゴニストは、アミノ末端化オリゴマー性エチレングリコールに結合される)のコンジュゲートを調製して、オピオイドアゴニストをオリゴマーに共有結合させるアミド基を有するコンジュゲートを提供することが可能である。これは、例えば、無水の有機溶媒中で(ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは「DCC」のような)カップリング試薬の存在下で、カルボキシル基を有するオピオイドアゴニストを、アミノ末端化オリゴマー性エチレングリコールに結合させることによって、実施することができる。
【0104】
さらに、ヒドロキシル基を有するオピオイドアゴニスト(ここで、ヒドロキシル基を有するオピオイドアゴニストは、オリゴマー性エチレングリコールハロゲン化物に結合される)のコンジュゲートを調製して、エーテル(−O−)連結オピオイド化合物コンジュゲートをもたらすことが可能である。これは、例えば、水素化ナトリウムを使用して、ヒドロキシル基を脱プロトン化し、続いて、ハライド末端化オリゴマー性エチレングリコールと反応させることによって、実施することができる。
【0105】
もう1つの実施例では、最初にケトン基を還元して、対応するヒドロキシル基を形成することによって、ケトン基を有するオピオイドアゴニストのコンジュゲートを調製することが可能である。その後、その段階でヒドロキシル基を有するオピオイドアゴニストを、本明細書に記載のように結合させることができる。
【0106】
なお別の場合、アミン基を有するオピオイドアゴニストのコンジュゲートを調整することが可能である。1つのアプローチでは、アミン基を有するオピオイドアゴニストおよびアルデヒドを有するオリゴマーを、適切な緩衝液に溶解し、その後、適切な還元剤(例えば、NaCNBH3)を添加する。還元後、結果として、アミン基含有オピオイドアゴニストのアミン基とアルデヒドを有するオリゴマーのカルボニル炭素との間に、アミン連結が形成される。
【0107】
アミン基を有するオピオイドアゴニストのコンジュゲートを調製するためのもう1つのアプローチでは、典型的に、カップリング試薬(例えば、DCC)の存在下で、カルボン酸を有するオリゴマーとアミン基を有するオピオイドアゴニストとが組み合わされる。結果として、アミン基含有オピオイドアゴニストのアミン基とカルボン酸を有するオリゴマーのカルボニルとの間に、アミド連結が形成される。
【0108】
血液脳関門横断
本発明の所定の実施形態では、Xは、好ましくは、安定なリンカーである。本発明に従って、安定な連結を介して、所定のオピオイド化合物が、小さな水溶性オリゴマーに結合した一方、血液脳関門を横断する能力を保持し、これは、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、低減したBBB横断速度で認められることが見出された。特定の理論に束縛されるつもりはないが、BBB膜横断速度の低減は、非コンジュゲートオピオイド化合物に対する分子の固有のBBB透過特性における変化の一次関数であると考えられる。さらに、任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、そのようなオピオイドコンジュゲートは、BBBの緩徐な横断のため、低い常習性を所有し、非コンジュゲートオピオイドアゴニストおよび根本的な依存性陶酔に関連する迅速なピーク濃度が回避されることが推定される。さらに、本発明の化合物は、インビボでのオピオイドの変更された組織分布または末梢のオピオイド受容体における活性の低減のため、非コンジュゲートオピオイドと比べて、改善された副作用プロファイルを示し得る。
【0109】
それ故、本発明のこれらの実施形態に従って、コンジュゲートがBBBを横断することが可能であれば、オピオイド化合物、リンカー、および水溶性オリゴマーのいずれの組み合わせを使用してもよい。好ましくは、コンジュゲートは、非コンジュゲートオピオイドアゴニストと比べて、低減した速度でBBBを横断する。好適な実施態様では、水溶性オリゴマーはPEG部分である。典型的に、PEG部分は、1〜3(即ち、1、2、または3)個のポリエチレングリコール単位からなる小さなモノマー性PEGである。他の実施形態では、PEG部分は、4または5個のポリエチレングリコール単位であってもよい。
【0110】
血液脳関門(「BBB」)に関して、この関門は、薬物の血液から脳への輸送を制限する。この関門は、タイトジャンクションによって接続される独特の内皮細胞の連続層からなる。BBBの全表面積の95%超を含んでなる脳毛細血管は、ほとんどの溶質および薬物の中枢神経系への主要な進入経路である。
【0111】
当業者によって理解されるように、分子サイズ、親油性、およびPgP相互作用は、所与の分子の固有のBBB透過特性に影響を及ぼす主要なパラメータに属する。即ち、これらの因子は、組み合わせて採用する場合、所与の分子がBBBを介して通過するかどうか、そしてそうである場合、どれだけの速度で通過するかを制御する。
【0112】
BBB内の小さなポアサイズのため、分子サイズは、所与の分子がBBBを通過するかどうかの決定に重要な役割を果たす。極めて大きな分子、例えば、5,000ダルトンの分子量を有する分子は、BBBを横断せず、小さな分子の方が、BBBを透過する可能性が高い。しかし、他の因子もまた、BBB横断において役割を果たす。アンチピリンおよびアテノロールは、両方とも、小分子薬物であり;アンチピリンは容易にBBBを通過するが、アテノロールの通過は、極めて制限されるか、または効果的には存在していない。アンチピリンは、高BBB透過の産業的標準であり;アテノロールは、BBBの低透過の産業的標準である。例えば、Summerfield et al.,J Pharmacol Exp Ther322:205−213(2007)を参照のこと。従って、本発明に従えば、Xが安定なリンカーである場合、1〜3個のポリエチレングリコール単位を有するオピオイドコンジュゲートは、一般的に、BBBを横断すると予想され得る。所定の環境では、固有のBBB透過特性が全体として適切である場合、4または5個のポリエチレングリコール単位を有する特定のオピオイドコンジュゲートもまた、BBBを横断し得る。
【0113】
親油性もまた、BBB透過の因子である。親油性は、logP(分配係数)または場合によっては、logD(分布係数)として表現することができる。所与の分子のlogP(またはlogD)については、当業者が容易に評価することができる。logPの値は、負の数(より親水性の分子)であっても、または正の数(より疎水性の分子)であってもよい。logPについて言及する場合、本明細書において使用する「より負」は、logPの尺度上で、正から負のlogPの方向に移動すること(例えば、2.0のlogPは4.0のlogP「より負」であり、−2.0のlogPは−1.0のlogP「より負」である)。負のlogPを有する分子(親水性分子)は、一般的に、BBBを透過しない。所定の実施形態では、本発明のオピオイドコンジュゲートは、約0〜約4.0の間のlogPを有する。好ましくは、本発明のオピオイドコンジュゲートは、約1.0〜約3.5の間のlogPを有する。所定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、約4.0、約3.5、約3.0、約2.5、約2.0、約1.5、約1.0、約0.5、もしくは約0のlogPを有するか、またはそれらは、約0〜約3.5、約0〜約3.0、約0〜約2.0、約0〜約1.0、約1.0〜約4.0、約1.0〜約3.0、約1.0〜約2.0、約2.0〜約4.0、約2.0〜約3.5、約2.0〜約3.0、約3.0〜約4.0、もしくは約3.0〜約3.5の範囲のlogPを有してもよい。
【0114】
BBBに対する透過性はまた、P−糖タンパク質、またはPgP、BBBにおいて高度に発現されるATP依存的流出トランスポーターに依存する。当業者は、インビトロ方法を使用して、化合物がPgPの基質であるかどうかを容易に決定することができる。インビトロでPgPの基質である化合物は、おそらく、インビボでBBBを透過しない。対照的に、インビトロで評価されるように、PgPの不良な基質は、化合物が、本明細書において考察され、そして当業者に公知である他の基準を満たせば、一般的に、BBBのインビボでの透過性を示す。例えば、Tsuji,NeuroRx 2:54−62(2005)およびRubin and Staddon,Annu.Rev.Neurosci.22:11−28(1999)を参照のこと。
【0115】
所定の実施形態では、水溶性オリゴマーを、オピオイドコンジュゲートの所望される薬物動態プロファイルに従って選択してもよい。言い換えれば、オピオイド化合物の水溶性オリゴマーへのコンジュゲーションにより、BBB膜横断速度の低減が生じるが、しかし、低減速度は、使用するオリゴマーのサイズに依存して変動し得る。一般的に、BBB横断速度の低減を最小にすることを所望する場合、より小さなオリゴマーを使用してもよく;BBB横断速度のより広範な低減を所望する場合、より大きなオリゴマーを使用してもよい。所定の実施形態では、異なる2つ以上のオピオイドコンジュゲートの組み合わせを同時に投与してもよく、ここで、各コンジュゲートは、異なるサイズの水溶性オリゴマー部分を有し、そしてここで、各コンジュゲートのBBB横断の速度は、異なるオリゴマーサイズのため、異なる。この様式では、オピオイド化合物のBBB横断の速度および期間は、多様な薬物動態プロファイルを伴う複数のコンジュゲートの同時投与を介して、特異的に制御することができる。
【0116】
血液脳関門横断脳の程度が容易に分からない化合物については、インサイチュでのラット脳灌流(「RBP」)モデルのような適切な動物モデルを使用して、そのような能力を決定することができる。簡単に説明すると、RBP技術は、頸動脈のカニューレ挿入と、それに続く、制御された条件下での化合物溶液による灌流と、それに続く、脈管空間に残留する化合物を取り出すための洗浄段階とに関与する。(そのような分析は、例えば、Absorption Systems,Exton,PAのような契約研究機関で行うことができる)。より具体的には、RBPモデルにおいて、カニューレを左頸動脈に配置し、そして側枝を結紮する。分析物を含有する生理緩衝液(典型的には、5マイクロモル濃度レベルであるが、必ずしもこれに限らない)を、シングルパス灌流実験において約10mL/分の流速で灌流する。30秒後、灌流を停止し、そしてさらに30秒間、化合物を含まない緩衝液で脳脈管内容物を洗い流す。次いで、脳組織を取り出し、そしてタンデム質量分析検出(LC/MS/MS)による液体クロマトグラフを介して、化合物濃度を分析する。あるいは、血液脳関門透過性は、分子における極性原子(通常、酸素、窒素および結合水素)の表面の寄与の合計として定義される、化合物の分子極性表面積(「PSA」)の計算に基づいて、推定することができる。PSAは、血液脳関門輸送のような化合物輸送特性との相関関係があることが示されている。化合物のPSAを決定するための方法は、例えば、Ertl,P.,et al.,J.Med.Chem.2000,43,3714−3717;およびKelder,J.,et al.,Pharm.Res.1999,16,1514−1519において見出すことができる。
【0117】
それらの実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、オピオイドコンジュゲートの分子量は、好ましくは、2000ダルトン未満、およびより好ましくは、1000ダルトン未満である。他の実施形態では、コンジュゲートの分子量は、950ダルトン未満、900ダルトン未満、850ダルトン未満、800ダルトン未満、750ダルトン未満、700ダルトン未満、650ダルトン未満、600ダルトン未満、550ダルトン未満、500ダルトン未満、450ダルトン未満、または400ダルトン未満である。
【0118】
所定の実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、X−POLY(即ち、存在する場合、リンカーと組み合わされた水溶性オリゴマー)の分子量は、好ましくは、2000ダルトン未満である。いくつかの実施形態では、オピオイドコンジュゲートの分子量は、好ましくは、1000ダルトン未満である。他の実施形態では、コンジュゲートの分子量は、950ダルトン未満、900ダルトン未満、850ダルトン未満、800ダルトン未満、750ダルトン未満、700ダルトン未満、650ダルトン未満、600ダルトン未満、550ダルトン未満、500ダルトン未満、450ダルトン未満、400ダルトン未満、350ダルトン未満、300ダルトン未満、250ダルトン未満、200ダルトン未満、150ダルトン未満、100ダルトン未満、または50ダルトン未満である。
【0119】
Xが安定なリンカーである場合、コンジュゲート(即ち、OP−X−POLY)は、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物(即ち、OP)ほど疎水性ではない。言い換えれば、コンジュゲートのlogPは、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のlogPより負である。一実施形態では、コンジュゲートのlogPは、非コンジュゲートオピオイド化合物のlogPより約0.5単位負である。他の実施形態では、コンジュゲートのlogPは、非コンジュゲートオピオイド化合物より約4.0単位負、約3.5単位負、約3.0単位負、約2.5単位負、約2.0単位負、約1.5単位負、約1.0単位負、約0.9単位負、約0.8単位負、約0.7単位負、約0.6単位負、約0.4単位負、約0.3単位負、約0.2単位負または約0.1単位負である。所定の実施形態では、コンジュゲートのlogPは、非コンジュゲートオピオイド化合物より約0.1単位〜約4.0単位負、約0.1単位〜約3.5単位負、約0.1単位〜約3.0単位負、約0.1単位〜約2.5単位負、約0.1単位〜約2.0単位負、約0.1単位〜約1.5単位負、約0.1単位〜約1.0単位負、約0.1単位〜約0.5単位負、約0.5単位〜約4.0単位負、約0.5単位〜約3.5単位負、約0.5単位〜約3.0単位負、約0.5単位〜約2.5単位負、約0.5単位〜約2.0単位負、約0.5単位〜約1.5単位負、約0.5単位〜約1.0単位負、約1.0単位〜約4.0単位負、約1.0単位〜約3.5単位負、約1.0単位〜約3.0単位負、約1.0単位〜約2.5単位負、約1.0単位〜約2.0単位負、約1.0単位〜約1.5単位負、約1.5単位〜約4.0単位負、約1.5単位〜約3.5単位負、約1.5単位〜約3.0単位負、約1.5単位〜約2.5単位負、約1.5単位〜約2.0単位負、約2.0単位〜約4.0単位負、約2.0単位〜約3.5単位負、約2.0単位〜約3.0単位負、約2.0単位〜約2.5単位負、約2.5単位〜約4.0単位負、約2.5単位〜約3.5単位負、約2.5単位〜約3.0単位負、約3.0単位〜約4.0単位負、約3.0単位〜約3.5単位負、または約3.5単位〜約4.0単位負である。いくつかの特定の実施形態では、コンジュゲートのlogPは、非コンジュゲートオピオイド化合物のlogPとおなじであるか、またはそれより正である。
【0120】
受容体結合性および他の特徴
Xが安定なリンカーである場合、本発明のコンジュゲートは、好ましくは、その標的受容体に対する適切な親和性、拡大解釈すると、脳内での適切な濃度および有効性を保持する。好ましくは、水溶性オリゴマーは、コンジュゲートしたオピオイドが、少なくとも部分的に、非コンジュゲートオピオイド化合物が結合する受容体と同じ受容体に結合するような様式で、オピオイドにコンジュゲートされる。オピオイドアゴニストまたはオピオイドアゴニストと水溶性オリゴマーとのコンジュゲートのいずれが、μ、κ、またはδオピオイド受容体アゴニストのような活性を有するかを決定するために、例えば、そのような化合物を試験することが可能である。例えば、組み換えヒトμ、κ、またはδオピオイド受容体を異種発現するCHO細胞における放射性リガンド結合アッセイを使用することができる。簡単に説明すると、細胞を24ウェルプレートにプレート化し、そしてアッセイ緩衝液で洗浄する。競合結合アッセイは、適切な濃度の放射性リガンドの存在下で、漸増濃度のオピオイドコンジュゲートと共にインキュベートした全付着細胞上で行われる。[3H]ナロキソン、[3H]ジプレノルフィンおよび[3H]DPDPEを、それぞれ、μ、κおよびδ受容体の競合放射性リガンドとして使用する。インキュベーション後、細胞を洗浄し、NaOHで可溶化し、そしてシンチレーションカウンターを使用して、結合放射能を測定する。
【0121】
所定の実施形態では、本発明のコンジュゲートのKi値は、0.1〜900nMの範囲内、好ましくは、0.1〜300nMの範囲内、およびより好ましくは、0.1〜50nMの範囲内に当てはまる。好適な実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、OPのその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物(即ち、OP−X−POLYのOP)の親和性の消失が認められず、そしていくつかの実施形態では、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性は、OPのその標的受容体に対する親和性より大きくあり得る。好適な実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、コンジュゲートしたオピオイド化合物(即ち、OP−X−POLYのOP)の親和性は、OPのその標的受容体の親和性と比べて、低減が最小限であり、そしていくつかの場合、なお、親和性の増加を示してもよく、または親和性の変化が認められなくてもよい。好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の約2倍未満の消失が認められる。所定の実施形態では、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の約5倍未満の消失、約10倍未満の消失、約20倍未満の消失、約30倍未満の消失、約40倍未満の消失、約50倍未満の消失、約60倍未満の消失、約70倍未満の消失、約80倍未満の消失、約90倍未満の消失、または約100倍未満の消失が認められる。
【0122】
Xが安定なリンカーである所定の他の実施形態では、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の低減は、20%未満である。いくつかの実施形態では、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性における低減は、10%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、または95%未満である。
【0123】
Xが安定なリンカーである所定の実施形態では、コンジュゲートのBBB横断速度、または透過性は、OP単独の横断速度より小さい。好ましくは、横断の速度は、OP単独の速度の少なくとも約50%未満である。所定の他の実施形態では、OP単独の横断の速度と比べて、コンジュゲートのBBB横断速度において少なくとも約10%の低減、少なくとも約15%の低減、少なくとも約20%の低減、少なくとも約25%の低減、少なくとも約30%の低減、少なくとも約35%の低減、少なくとも約40%の低減、少なくとも約45%の低減、少なくとも約55%の低減、少なくとも約60%の低減、少なくとも約65%の低減、少なくとも約70%の低減、少なくとも約75%の低減、少なくとも約80%の低減、少なくとも約85%の低減、少なくとも約90%の低減、少なくとも約95%の低減、または少なくとも約99%の低減が認められる。他の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、OP単独の横断の速度と比べて、コンジュゲートのBBB横断速度における10〜99%の低減、10〜50%の低減、50〜99%の低減、50〜60%の低減、60〜70%の低減、70〜80%の低減、80〜90%の低減、または90〜99%の低減を示し得る。
【0124】
本発明のコンジュゲートは、Xが安定なリンカーである場合、OP単独の横断の速度と比べて、BBB横断速度において1〜100倍の低減を示し得る。所定の実施形態では、非コンジュゲートオピオイド化合物のBBB横断速度と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物のBBB横断速度における少なくとも約2倍の消失、少なくとも約5倍の消失、少なくとも約10倍の消失、少なくとも約20倍の消失、少なくとも約30倍の消失、少なくとも約40倍の消失、少なくとも約50倍の消失、少なくとも約60倍の消失、少なくとも約70倍の消失、少なくとも約80倍の消失、少なくとも約90倍の消失、または少なくとも約100倍の消失が認められ得る。
【0125】
本発明のコンジュゲートのBBB横断の速度はまた、Xが安定なリンカーである場合、アンチピリン(高透過性の標準)および/またはアテノロール(低透過性の標準)のBBB横断速度と比べて、検討してもよい。アンチピリンおよび/またはアテノロールのBBB横断速度と比べた本発明のコンジュゲートのBBB横断速度については、同じ条件下の同じアッセイにおいて速度を評価したことが示されることが当業者によって理解されよう。それ故、所定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、アンチピリンのBBB横断速度と比べて、BBB横断速度の少なくとも約2倍小さい、少なくとも約5倍小さい、少なくとも約10倍小さい、少なくとも約20倍小さい、少なくとも約30倍小さい、少なくとも約40倍小さい、少なくとも約50倍小さい、少なくとも約60倍小さい、少なくとも約70倍小さい、少なくとも約80倍小さい、少なくとも約90倍小さい、または少なくとも約100倍小さい速度を示し得る。他の実施形態では、本発明のコンジュゲート、本発明のコンジュゲートは、アテノロールのBBB横断速度と比べて、BBB横断速度の少なくとも約2倍を超える、少なくとも約5倍を超える、少なくとも約10倍を超える、少なくとも約20倍を超える、少なくとも約30倍を超える、少なくとも約40倍を超える、少なくとも約50倍を超える、少なくとも約60倍を超える、少なくとも約70倍を超える、少なくとも約80倍を超える、少なくとも約90倍を超える、または少なくとも約100倍を超える速度を示し得る。
【0126】
Xが安定なリンカーである場合、コンジュゲート(即ち、OP−X−POLY)は、非コンジュゲートオピオイド化合物(即ち、OP)と比べて、オピオイドアゴニスト生体活性のすべてまたはいくつかを保持し得る。好ましくは、コンジュゲートは、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、すべてのオピオイドアゴニスト生体活性を保持するか、またはいくつかの環境において、非コンジュゲートオピオイド化合物よりなお活性である。好ましくは、本発明のコンジュゲートは、非コンジュゲートオピオイド化合物比べて、生体活性における約2倍未満の低減、約5倍未満の低減、約10倍未満の低減、約20倍未満の低減、約30倍未満の低減、約40倍未満の低減、約50倍未満の低減、約60倍未満の低減、約70倍未満の低減、約80倍未満の低減、約90倍未満の低減、または約100倍未満の低減を示す。いくつかの実施形態では、コンジュゲートしたオピオイド化合物は、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、オピオイドアゴニスト生体活性の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を保持する。
【0127】
本明細書において列挙した値は、例示であり、限定されないこと、ならびにオピオイドアゴニストと水溶性オリゴマーとの所定のコンジュゲートは、本明細書において列挙した範囲以外に当てはまってもよく、なお、本発明の趣旨および範囲内にとどまることが、当業者によって理解されよう。コンジュゲートは、当業者にとって日常的な実験により調製および試験することができる。特に、安定な連結を介して水溶性オリゴマーに結合したオピオイドアゴニストは、上記のように、血液脳関門の透過について試験することができる。それ故、当業者は、コンジュゲートがBBBを横断することが可能であるかどうかを容易に確かめることができる。
【0128】
本発明のこれらの実施形態のコンジュゲートのすべての範囲について説明してきたと考えられるが、最適な大きさのオリゴマーについては、以下の通りに決定することができる。
【0129】
まず、単分散または二峰性水溶性オリゴマーから得られたオリゴマーを、安定な連結を介して、オピオイドアゴニストにコンジュゲートする。次に、インビトロでの活性の保持を分析する。次いで、コンジュゲートが血液脳関門を横断する能力を、適切なモデルを使用して決定し、そして改変されていない親オピオイド化合物の能力と比較する。結果が良好である場合、即ち、例えば、横断の速度が適切な程度まで低減する場合、コンジュゲートの生体活性について、さらに評価する。好ましくは、本発明の化合物は、親オピオイド化合物と比べて、有意な程度の生体活性を維持する、即ち、親オピオイド化合物の生体活性の約30%を超えて維持するか、またはさらにより好ましくは、親オピオイド化合物の生体活性の約50%を超えて維持する。好ましくは、オピオイドアゴニストは、経口で生物学的に利用可能である。
【0130】
同じモノマータイプであるが、異なる数のサブユニットを有するオリゴマーを使用して、上記の工程を1回以上反復し、そして結果を比較する。
【0131】
次いで、血液脳関門を横断する能力が、非コンジュゲートオピオイドアゴニストと比較して適切に低減する各コンジュゲートについて、その経口バイオアベイラビリティを評価する。これらの結果に基づき、即ち、多様なサイズのオリゴマーのコンジュゲートと、オピオイドアゴニスト内の所与の位置または局在における所与のオピオイドアゴニストとの比較に基づき、生体膜横断の適切な低下、経口バイオアベイラビリティ、および生体活性の間の最適な均衡を有するコンジュゲートの提供において最も有効なオリゴマーのサイズを決定することが可能である。オリゴマーのサイズが小さいため、そのようなスクリーニングが可能であり、そして得られるコンジュゲートの特性を有効に整えることが可能である。オリゴマーのサイズを少しずつ、漸進的に変化させ、そして実験計画を利用することによって、生体膜横断速度の低下、生体活性、および経口バイオアベイラビリティの良好な均衡を有するコンジュゲートを効果的に同定することができる。場合によっては、本明細書に記載のオリゴマーの結合は、オピオイドアゴニストの経口バイオアベイラビリティを実際に増加するのに有効である。
【0132】
例えば、日常的な実験を使用する当業者は、最初に、異なる重量および官能基を伴う一連のオリゴマーを調製し、次いで、患者にコンジュゲートを投与し、そして定期的に血液および/または尿採取を行うことにより必要なクリアランスプロファイルを入手することによって、経口バイオアベイラビリティを改善するのに最も適切な分子サイズおよび連結を決定することができる。一旦、試験した各コンジュゲートの一連のクリアランスプロファイルが得られたら、適切なコンジュゲートを同定することができる。
【0133】
また、動物モデル(げっ歯類およびイヌ)を使用して、経口薬物輸送を研究することができる。加えて、非インビボ方法として、げっ歯類反転腸切除組織およびCaco−2細胞単層組織−培養モデルが挙げられる。これらのモデルは、経口薬物バイオアベイラビリティを推定するのに有用である。
【0134】
本発明の所定の他の実施形態では、Xは、好ましくは、生理学的に切断可能なリンカーである。本発明に従って、切断可能な連結を介して小さな水溶性オリゴマーに結合した所定のオピオイド化合物は、それらのコンジュゲート形態ではBBB横断することができず、従って、水溶性オリゴマーからのオピオイド化合物の生理学的切断が緩徐であるため、正味のBBB膜横断速度が低減することが示されることが見出された。特に、Xを、非コンジュゲートオピオイド化合物の所望される薬物動態プロファイルに従って選択してもよい。言い換えれば、オピオイド化合物の水溶性オリゴマーへのコンジュゲーションにより、BBB膜横断速度の低減が生じるが、しかし、低減速度は、使用するリンカーに依存して変動し得る。BBB横断速度の低減を最小限にすることを所望する場合、Xは、迅速に分解されたリンカーであってもよく、BBB横断速度の広範な低減を所望する場合、Xは、より緩徐に分解されたリンカーであってもよい。所定の実施形態では、異なる2つ以上のオピオイドコンジュゲートの組み合わせを同時に投与してもよく、ここで、各コンジュゲートは、異なるリンカーXを有し、そしてここで、各Xの分解の速度が異なる。言い換えれば、各異なるコンジュゲートについて、オピオイド化合物は、異なる速度で水溶性オリゴマーから切断され、異なる正味のBBB膜横断速度が生じる。オピオイド結合の2つ以上の部位を有する多官能性水溶性オリゴマーの使用を介して、類似の効果を達成することもでき、各オピオイドは、多様な分解速度を有するリンカーを介して水溶性オリゴマーに連結されている。この様式では、オピオイド化合物のBBB横断の速度および期間は、多様な薬物動態プロファイルを伴う複数のコンジュゲートの同時投与を介して、特異的に制御することができる。
【0135】
任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、そのようなオピオイドコンジュゲートは、BBBの正味の緩徐な横断のため(コンジュゲートの投与後の生理学的切断が緩徐であるため)、低い常習性を所有し、非コンジュゲートオピオイドアゴニストおよび根本的な依存性陶酔に関連する迅速なピーク濃度が回避されることが推定される。さらに、任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、緩徐な切断速度のために、末梢を循環する非コンジュゲートオピオイドの濃度が、一般的に、極めて低くなるように、本発明のオピオイドコンジュゲートは、血漿中を循環し、そして使用する特異的に切断可能なリンカー(ならびに酵素的に分解可能なリンカーでは、酵素濃度および親和性)に依存する速度で、インビボで切断されると考えられる。一旦、切断が生じると、非コンジュゲートオピオイドは、脳に移動して、BBBを横断し得る;切断を介する非コンジュゲートオピオイドの緩徐な放出により、非コンジュゲートオピオイドの脳への正味の緩徐な送達が生じる。さらに、本発明の化合物は、インビボでのオピオイドの変更された組織分布および末梢での変更された受容体相互作用のため、非コンジュゲートオピオイドと比べて、改善された副作用プロファイルを示す。
【0136】
さらに、本発明のこれらの実施形態に従って、コンジュゲートがBBBを横断することができないか、またはコンジュゲートのごく小さな機能、好ましくは、投与されたコンジュゲートの5%未満がBBBを横断することが可能であるならば、オピオイド化合物、リンカー、および水溶性オリゴマーのいずれの組み合わせを使用してもよい。好ましくは、コンジュゲートは、BBBを横断することができない。より好ましくは、分子のオピオイド部分は、コンジュゲートの生理学的切断のため、非コンジュゲートオピオイドアゴニストと比べて、正味の低減した速度で、BBBを横断する。好適な実施態様では、水溶性オリゴマーはPEG部分である。これらの実施形態の一部では、PEG部分は、少なくとも6個のポリエチレングリコール単位、好ましくは、6〜35個のポリエチレングリコール単位からなる小さなモノマー性PEGである。場合によっては、PEG部分は、6〜1825個のポリエチレングリコール単位であってもよい。
【0137】
Xが生理学的に切断可能なリンカーである場合、コンジュゲート(即ち、OP−X−POLY)生体活性であっても、または生体活性でなくてもよい。好ましくは、コンジュゲートは、生体活性ではない。それにもかかわらず、投与後にコンジュゲートからオピオイド化合物が放出されるため、インビボでそれを必要とする哺乳動物被験体に投与する場合、そのようなコンジュゲートは有効である。好ましくは、本発明のコンジュゲートは、非コンジュゲートオピオイド化合物比べて、生体活性における約10倍を超える低減、約20倍を超える低減、約30倍を超える低減、約40倍を超える低減、約50倍を超える低減、約60倍を超える低減、約70倍を超える低減、約80倍を超える低減、約90倍を超える低減、約95倍を超える低減、約97倍を超える低減、または約100倍を超える低減を示す。いくつかの実施形態では、コンジュゲートしたオピオイド化合物は、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、オピオイドアゴニスト生体活性の1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満または90%未満を保持する。
【0138】
Xが生理学的に切断可能なリンカーである他の実施形態では、OP−X−POLYのOP標的受容体に対する親和性は、OPのその標的受容体に対する親和性と比べて、実質的に低減している。好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の少なくとも約2倍の消失が認められる。所定の実施形態では、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の少なくとも約5倍の消失、少なくとも約10倍の消失、少なくとも約20倍の消失、少なくとも約30倍の消失、少なくとも約40倍の消失、少なくとも約50倍の消失、少なくとも約60倍の消失、少なくとも約70倍の消失、少なくとも約80倍の消失、少なくとも約90倍の消失、または少なくとも約100倍の消失が認められる。
【0139】
Xが生理学的に切断可能なリンカーである所定の他の実施形態では、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の低減は、少なくとも20%である。いくつかの実施形態では、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性における低減は、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%である。
【0140】
先に記載のように、Xが生理学的に切断可能なリンカーである所定の実施形態では、コンジュゲートは生体活性ではない。そのようなコンジュゲートはプロドラッグを代表し、ここで、投与される化合物は、非活性であり、そして生理学的プロセスを介する投与後に活性にされる。それ故、所定の実施形態では、本発明は、放出可能な部分への共有結合を介して可逆的に結合したオピオイドアゴニストを含んでなるプロドラッグを提供し、ここで、患者に投与される所与のモル量のプロドラッグは、哺乳動物の中枢神経系において、オピオイドアゴニストがプロドラッグの部分として投与されなかった場合の等モル量のオピオイドアゴニストの蓄積速度およびCmaxより小さい蓄積速度およびCmaxを示す。放出可能な部分は、水溶性オリゴマー、好ましくは、ポリエチレングリコールオリゴマーであってもよい。アゴニストは、μ、κ、またはδオピオイドアゴニストであってもよい。
【0141】
本発明の所定の他の実施形態では、Xは、好ましくは、生理学的に切断可能なリンカーであり、そしてPOLYは、1〜5(即ち、1、2、3、4、または5)個のポリエチレングリコール単位、好ましくは、1〜3(即ち、1、2、または3)個のポリエチレングリコール単位からなる小さなモノマー性PEGである。そのような化合物は、血液脳関門を横断するのに十分小さいが、但しこれは、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、低減した膜横断速度で認められ、そしてそれ自体は、先に考察されたように、低い常習性を所有する。好ましくは、Xは、リンカーの切断、およびBBBの横断後のオピオイド化合物の放出を提供するように、選択される。あるいは、リンカーの切断は、BBBの横断の前、および後に生じ得;この様式では、オピオイド化合物のBBB横断の速度および期間を特異的に制御することができる。
【0142】
医薬組成物
さらなる実施形態では、本発明は、本明細書において開示するOP−X−POLY化合物、および薬学的に許容できる賦形剤またはキャリアを含んでなる組成物を提供する。一般的に、コンジュゲート自体は、固体形態(例えば、沈殿物)となり、固体または液体のいずれかの形態となり得る適切な医薬品賦形剤と組み合わせることができる。
【0143】
例示的な賦形剤として、炭水化物、無機塩、抗微生物剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝液、酸、塩基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
炭水化物、例えば、糖、誘導体化糖、例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーが、賦形剤として存在し得る。具体的な炭水化物賦形剤として、例えば:単糖類、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース;二糖類、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース;多糖類、例えば、ラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン;およびアルジトール類、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールが挙げられる。
【0145】
賦形剤としてはまた、無機塩または緩衝液、例えば、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせを挙げることもできる。
【0146】
調製物はまた、微生物の増殖を防止または抑止するための抗微生物剤を含んでもよい。本発明に適切な抗微生物剤の非制限的例として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0147】
製剤中には、抗酸化剤を存在させることもできる。抗酸化剤は、酸化を防止するために使用され、それによって、コンジュゲート、または製剤の他の成分の劣化を防止する。本発明に使用するのに適切な抗酸化剤として、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、プロピルガレート、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0148】
界面活性剤が、賦形剤として存在してもよい。例示的な界面活性剤として:ポリソルベート、例えば、「Tween20」および「Tween80」ならびにプルロニック、例えば、F68およびF88(両方とも、BASF,Mount Olive,New Jerseyから入手可能である);ソルビタンエステル;脂質、例えば、リン脂質、例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(但し、好ましくは、リポソーム形態ではない)、脂肪酸および脂肪エステル;ステロイド、例えば、コレステロール;ならびにキレート剤、例えば、EDTA、亜鉛および他のそのような適切なカチオンが挙げられる。
【0149】
薬学的に許容できる酸または塩基が、製剤中に賦形剤として存在してもよい。使用することができる酸の非制限的例として、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。適切な塩基の例として、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
組成物中のコンジュゲートの量は、多くの因子に依存して変動するが、最適には、組成物が単位用量容器内に貯蔵される場合、治療有効用量である。治療有効用量は、どの量が臨床的に所望されるエンドポイントを生じるかを決定するために、漸増量のコンジュゲートを反復投与することによって、実験的に決定することができる。
【0151】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性および組成物の特定の必要性に依存して、変動する。典型的に、任意の個々の賦形剤の最適な量は、日常的な実験を介して、即ち、(少量から多量の範囲の)賦形剤の種々の量を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメータを調べ、次いで、重大な有害作用を伴わずに最適な性能が達成される範囲を決定することによって、決定される。
【0152】
しかし、一般的に、賦形剤は、約1%〜約99重量%、好ましくは、約5%〜98重量%、より好ましくは、約15〜95重量%の賦形剤の量で存在し、30重量%未満の濃度が最も好ましい。
【0153】
他の賦形剤および医薬組成物に関する一般的教示内容と共に、これらの上記の医薬品賦形剤については、“Remington:The Science & Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams & Williams,(1995)、the“Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)、およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0154】
医薬組成物には、取り得る形態がいくらでもあり、本発明は、これに関して限定されない。例示的な製剤は、最も好ましくは、経口投与に適切な形態、例えば、錠剤、カプレット、カプセル、ゲルキャップ、トローチ、分散体、懸濁液、溶液、エリキシル、シロップ、ロゼンジ、経皮パッチ、スプレー、坐剤、および粉末である。
【0155】
経口用の剤形は、経口的に活性であるコンジュゲートに好適であり、そして錠剤、カプレット、カプセル、ゲルキャップ、懸濁液、溶液、エリキシル、およびシロップが挙げられ、そしてまた、場合により、カプセル化される複数の顆粒、ビーズ、粉末またはペレットを含んでなり得る。そのような剤形は、医薬製剤の分野において公知であり、そして関連する文書に記載されている従来の方法を使用して、調製される。
【0156】
錠剤およびカプレットは、例えば、標準的な錠剤処理手順および装置を使用して、製造することができる。本明細書に記載のコンジュゲートを含有する錠剤またはカプレットを調製する場合、直接圧縮および造粒技術が好適である。コンジュゲートに加えて、錠剤およびカプレットは、一般的に、不活性の薬学的に許容できるキャリア材料、例えば、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、着色剤などを含有する。結合剤は、粘着の性質を錠剤に付与し、それ故、錠剤がそのままの状態を保持することを確実にするために使用される。適切な結合剤材料として、デンプン(トウモロコシデンプンおよびアルファ化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロースおよびラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、蝋、ならびに天然および合成のガム、例えば、アカシアアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含む)、ならびにVeegumが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤は、錠剤製造を容易にし、粉末の流動を促進し、そして圧力が軽減された場合の粒子のキャッピング(即ち、粒子破砕)を防止するために使用される。有用な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸である。崩壊剤は、錠剤の崩壊を容易にするために使用され、そして一般的に、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ガム、または架橋ポリマーである。充填剤として、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および結晶セルロースのような材料、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールのような可溶性材料が挙げられる。安定剤、当該技術分野において公知であり、例えば、酸化的反応を含む薬物分解反応を阻害または妨害するために使用される。
【0157】
カプセルはまた、好適な経口用剤形でもあり、その場合、コンジュゲート含有組成物は、液体またはゲル(例えば、ゲルキャップの場合)あるいは固体(顆粒、ビーズ、粉末もしくはペレットのような粒状物を含む)の形態でカプセル化することができる。適切なカプセルとして、ハードおよびソフトカプセルが挙げられ、そして一般的に、ゼラチン、デンプン、またはセルロース材料から作製される。ツーピースハードゼラチンカプセルは、好ましくは、ゼラチンの帯などで封止される。
【0158】
実質的に可能形態の非経口処方物(典型的に、粉末またはケーキの形態であり得る凍結乾燥または沈殿物として)、ならびに典型的に、液体であり、そして乾燥形態の非経口処方物を再構成する工程を必要とする注射用に調製された処方物が挙げられる。注射前に固体組成物を再構成するのに適切な希釈剤の例として、注射用静菌水、水中5%デキストロース、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0159】
場合によって、非経口投与を目的とした組成物は、非水溶液、懸濁液、またはエマルジョンの形態をとることができ、典型的に、それぞれ無菌的である。非水溶媒またはビヒクルの例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびコーン油のような植物油、ゼラチン、ならびに注射可能なオレイン酸エチルのような有機エステルがある。
【0160】
本明細書に記載の非経口処方物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤のような補助剤を含有することができる。処方物は、滅菌剤、細菌を保持するフィルターを介するろ過、照射、または加熱を組み入れることによって、滅菌される。
【0161】
コンジュゲートはまた、従来の経皮パッチまたは他の経皮送達システムを使用して、皮膚を介して投与することもでき、ここで、コンジュゲートは、皮膚に固定される薬物送達デバイスとして役立つ積層構造内に含有される。そのような構造では、コンジュゲートは、上部支持層の下側にある層、または「貯蔵器」に含有される。積層構造は、単一の貯蔵器を含有することができるか、または複数の貯蔵器を含有することができる。
【0162】
コンジュゲートはまた、直腸投与のための坐剤に処方することができる。坐剤に関して、コンジュゲートは、コカバター(カカオ脂)、ポリエチレングリコール、グリセリンゼラチン、脂肪酸、およびそれらの組み合わせのような(例えば、室温では固体のままであるが、体温では軟化、融解または溶解する賦形剤)坐剤基剤材料と混合される。坐剤は、例えば、次の工程を実施する(必ずしも示された順序ではない)ことによって、調製することができる:坐剤基剤材料を融解させて、融解物を形成する工程;コンジュゲートを(坐剤基剤材料の融解前または後のいずれかに)組み入れる工程;融解物を鋳型に注ぐ工程;融解物を冷却して(例えば、融解物を含有する鋳型を室温環境に置く)、それによって、坐剤を形成する工程;および鋳型から坐剤を取り出す工程。
【0163】
投与
本発明はまた、本明細書において提供されるコンジュゲートを、コンジュゲートによる治療に応答する病態を患う患者に投与するための方法を提供する。方法は、一般的に、経口的に、治療有効量のコンジュゲート(好ましくは、製剤の一部として提供される)を投与する工程を含んでなる。また、肺、鼻、口内、直腸、舌下、経皮、および非経口のような他の投与様式も考慮される。本明細書において使用する用語「非経口」は、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、髄腔内、および筋肉内注射、ならびに点滴注射を含む。
【0164】
非経口投与が利用される場合、約500〜30Kダルトンの範囲の分子量を伴う(例えば、約500、1000、2000、2500、3000、5000、7500、10000、15000、20000、25000、30000以上もの分子量を有する)先に記載のものより若干大きいオリゴマー(例えば、ポリマー)を用いることが必要であり得る。
【0165】
投与方法を使用して、特定のコンジュゲートの投与によって、治すかまたは予防することができる任意の病態を治療してもよい。当業者は、どう病態を特定の複合体が効果的に治療することができるかを理解している。投与しようとする実際の用量は、被験体の年齢、重量、および全般的状態、ならびに治療される病態の重症度、医療従事者の判断、および投与されるコンジュゲートに基づいて変動する。治療有効量は、当業者に公知であり、ならびに/あるいは関連する参考文書および文献に記載されている。一般的に、治療有効量は、約0.001mg〜1000mg範囲にあり、好ましくは、0.01mg/日〜750mg/日の用量、およびより好ましくは、0.10mg/日〜500mg/日の用量にある。
【0166】
任意の所与のコンジュゲート(さらに、好ましくは、製剤の部分として提供される)の単位用量は、臨床家の判断、患者の要求などに依存する多様な投薬スケジュールで投与することができる。特定の投薬スケジュールは、当業者に公知であり、または日常的方法を使用して、実験的に決定することができる。例示的な投薬スケジュールとして、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一旦、臨床的なエンドポイントが達成されると、組成物の投薬は停止される。
【0167】
本発明のコンジュゲートを投与する1つの利点は、オピオイドアゴニストの脳への送達速度の低減を達成し、それ故、非コンジュゲートオピオイドアゴニストおよび根本的な依存性陶酔に関連する迅速なピーク濃度が回避される。さらに、オピオイドアゴニスト分子の共有結合修飾に基づいて、本発明のコンジュゲートは、インビボで、低減したBBB横断速度を提供することが意図される所定の代替的送達に関連する迅速に作用するオピオイド化合物の回収および乱用の可能性を作り出す物理的タンパリングの危険性に供されない。従って、本発明の化合物は、低い依存性、抗乱用特性を所有する。コンジュゲートの所望される薬物動態特性は、オリゴマー分子のサイズ、連結、およびオピオイド化合物への共有結合の位置を選択することによって、モジュレートしてもよい。当業者は、本明細書の教示内容に基づいて、オリゴマーの理想的な分子サイズを決定することができる。
【0168】
使用
それ故、本発明は、本明細書において上記で開示した式OP−X−POLYを有する化合物の有効量を投与する工程を含んでなる、オピオイド療法を必要とする患者を治療する方法を提供する。好ましくは、本発明は、化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイド化合物の乱用の可能性を低減する方法をさらに提供する。好ましくは、コンジュゲートは、本明細書に記載の式OP−X−POLYのものである。
【0169】
さらなる実施形態では、本発明は、オピオイドアゴニストを小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイドアゴニストの常習性を低減する方法を提供する。好ましくは、コンジュゲートは、本明細書に記載の式OP−X−POLYのものである。
【0170】
もう1つの実施形態では、オピオイド化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイド化合物の血液脳関門を横断する速度を低減するが、実質的に排除しない方法が提供される。好ましくは、コンジュゲートは、本明細書に記載の式OP−X−POLYのものである。
【0171】
本発明について、ある種の好適かつ特定の実施形態と共同して説明してきたが、上記の説明ならびに以下の実施例は、例示することを意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点、および変更は、本発明に関係する当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0172】
別途明記しない限り、添付の実施例において言及したすべての化学試薬は、市販のものである。PEG−mersの調製については、例えば、米国特許出願公開第2005/0136031号明細書に記載されている。
【0173】
実施例1
logP値の決定
Log PおよびLog Dは、より高いまたはさらなる正の値が、さらに疎水性の化合物を表すが、より低いまたはさらなる負の値がさらに親水性の化合物を表すような、化合物の親油性の測定値を提供する。試験化合物のLogP(オクタノール:イソプロパノール/水分配係数)を、Sirius GLpKa装置(Sirius Analytical Instruments,Ltd,East Sussex,UK)による電位差滴定法を使用して、測定する。DMSO中0.1M試験化合物溶液の50μLのアリコートを、滴定バイアルに置く。アッセイは、25℃で行う。計量した容積のオクタノールをサンプルに自動的に添加し、その後、装置は、計量した容積のイソプロパノール水を添加する。0.5MのHClを自動的に添加することによって、溶液のpHを2に調整する。12のpH値に到達するまで、0.5MのKOHの滴定を、自動的に実施する。第2および第3の滴定を実施するために、さらなるオクタノール容積を、滴定バイアルに自動的に送達する。3回の滴定のデータの組を、RefinementProにおいて組み合わせて、Multisetを作成する。様々なpH値におけるLog(D)を、ソフトウェアによって自動的に計算する。
【0174】
LogPおよびLogD値を、膜を横切る能力のようなその親油性に関連する分子の特性を推定または評価するのに使用する。
【0175】
実施例2
PgPの輸送アッセイ
P−糖タンパク質、PgPは、身体の様々な細胞において発現され、そして血液脳関門で高度に発現される流出トランスポーターである。PgPの基質である分子は、PgPが発現される組織への乏しい透過またはそれらの組織からの流出を示す。
【0176】
PgPの正味の輸送への寄与は、PgPを過剰発現するMDCKII細胞(MDR−MDCKII)において測定される。輸送研究のために、経上皮測定によって測定される緊密な単層が形成されるまで、MDR−MDCKIIおよびMDCKII細胞を、透過性のインサート上で増殖させる(3〜4日間)。Krebs緩衝液中の試験化合物を、10μMでMDCKII細胞の頂部側または基底側に添加し、そして37℃でインキュベートする。化合物の輸送を、次の2つの方向で測定する:親細胞およびMDRを過剰発現する細胞の両方における頂部−基底側(A−B)および基底側−頂部(B−A)。0、30、60、90、120および180分の時間に、頂部および基底側コンパートメントからアリコートを取り出す。サンプルを、LC−MS/MSによって、試験化合物について分析する。フラックスを、累積濃度対時間ポイントの直線部分の勾配として計算する。みかけの透過性を、Papp=Flux/C0.Aとして計算し、ここで、C0は、使用した試験化合物の初期濃度(10μM)であり、そしてAは、インサートの表面積である。流出比は、Papp(B−A)/Papp(A−B)の比として計算する。MDCKII−MDRI細胞における流出対親MDCKII細胞における流出の比が2を超える、即ち、流出比(MDCKII−MDRI)/流出比(MDCKII細胞)≧2である場合、PgP仲介流出機構の関与が示される。
【0177】
PgP相互作用のデータは、膜を横切る、もしくはPgPが高度に発現されるCNSのようなコンパートメントに進入する能力のようなPgPに関連する分子の特性を推定または評価するのに使用される。
【0178】
実施例3
インサイチュでのラット脳灌流
インサイチュでの灌流実験は、血液脳関門のモデルを横切る化合物の相対的透過性を測定する。オピオイドのラット脳へのインサイチュでの灌流を、Summerfield et al.,J Pharmacol Exp Ther322:205−213(2007)に記載のように実施する。
【0179】
成獣雄性Sprague Dawleyラットを研究に使用する。ラットを麻酔し、そして灌流のために、左総頚動脈に、外科的にカニューレ挿入する。試験化合物を、Krebs Ringer灌流緩衝液(pH7.4)中5〜50μMの濃度で灌流する。アテノロールおよびアンチピリンを、それぞれ、低および中等度の透過性マーカーとして含める。30秒間の灌流の終了時に、脳を取り出し、左脳半球を摘出し、そしてホモジナイズする。試験化合物を抽出し、そしてLC−MS/MSを使用して分析する。試験化合物の脳透過性を以下の通りに計算する:
P=Kin/S、
ここで、Pは、cm/sでの透過性であり、Kinは一方向伝達定数(ml/min/gram)であり、そしてSは、脳脈管空間の管腔領域である。
【0180】
インサイチュでの脳灌流実験において決定される相対的透過性は、化合物が、末梢から中枢神経系に進入する速度に関する情報を提供する。それは、水溶性オリゴマーとのコンジュケーションが、所与のオピオイド化合物のBBBの透過を遅延させる程度を特徴付け、そして比較するために使用される。
【0181】
所定の例示的なオリゴマー性PEG−オピオイドの脳透過の速度を決定するために、以下の実験を行った:
【0182】
脳透過能モルヒネ、コデイン、オキシドン(oxydone)およびそれらのそれぞれのPEGコンジュゲートを、雄性Sprague−Dawleyラットにおいて、インサイチュ脳灌流モデルを使用して、評価した。コンジュゲートの合成については、実施例10、11および12において説明する。ラットを麻酔し、そしてカニューレを左頸動脈にインプラントした。動脈分枝を結紮し、そして脳灌流前に心臓からの供給を中断した。灌流は、単一時間−ポイント法を使用して実施した。各動物を、試験化合物(10μM)およびコントロール化合物(5μMアンチピリンおよび50μMアテノロール)で同時灌流した。KrebのRinger緩衝液中の化合物を、左外頚動脈を介して、30秒間、輸注ポンプによって、動物に輸注した。30秒間の灌流後、灌流を停止し、そして頭骨から脳を直ちに取り出した。脳を半分に縦断した。各左半球を冷却したチューブに置き、ドライアイス上で冷凍し、そして分析するまで、−60℃〜−80℃で冷凍貯蔵した。
【0183】
生体分析のために、各左脳半球を融解し、秤量し、そして20%メタノール中の音波処理によってホモジナイズした。試験およびコントロール化合物の濃度を、プレバリデートされた分析方法を使用するLC−MS/MS分析によって決定した。
【0184】
試験およびコントロール化合物の脳透過の結果を、単一−ポイント灌流アッセイのための以下の式を使用する一方向脳伝達定数Kin(mL/g/min)として示す:
Kin=[Cbr/Cpf]/t、ここで:
Cbr/Cpfは、みかけの脳分布容積(mL/脳組織のg)である。
Cbrは、脳組織中の薬物の濃度(1gの脳組織あたりの薬物のpmol)である。
Cpfは、灌流液中の薬物濃度(pmol/灌流物のmL)である。
tは、正味の灌流時間(分)である。
【0185】
脳濃度値からの毛細管空間に含有される薬物を排除するために、アテノロールのみかけの脳分布容積を、各動物における薬物値から差し引いた。アテノロールの脳分布容積を補正した後、試験化合物の濃度が負の値であった場合、Kin値をゼロとして報告する。
【0186】
灌流後、アテノロール(脳に透過しない化合物)によって表される脈管空間は、20μL/脳組織のgを超えなかった。これらの結果は、灌流中に保存された血液脳関門特性を示す。モルヒネ、コデインおよびオキシコドンのKin値を、図18A〜Cおよび図19に示す。親モルヒネ、コデインおよびオキシコドン化合物のKin値は、アンチピリン(高い脳透過能を所有するポジティブコントロール)のKin値の約14%、40%および60%であった。PEGコンジュゲーションにより、コデインおよびオキシコドンコンジュゲートの脳進入速度のさらなるサイズ依存的低減が生じた。PEG−7コデインおよびPEG−7−オキシコドンの脳進入速度は、それらのそれぞれの親化合物の<1%であった。しかし、PEG−1、PEG−2モルヒネのKin値は、親モルヒネより大きく、そしてPEG−3−モルヒネの場合、親と等価であった。PEG−7−モルヒネのKin値は、親モルヒネのKin値より有意に(<4%)低かった。
【0187】
実施例4
細胞全体におけるオピオイド受容体結合アッセイ
受容体結合親和性を、化合物の固有の生体活性の測定値として使用する。オピオイドコンジュゲート(またはオピオイド単独)の受容体結合親和性を、組み換えヒトμ、δまたはκオピオイド受容体を異種発現するCHO細胞における放射性リガンド結合アッセイを使用して、測定する。細胞を、24ウェルプレートにおいて、0.2〜0.3×10−6個の細胞/ウェルの密度でプレート化し、そして50mMのTris.HClおよび5mMのMgCl2(pH7.4)を含有するアッセイ緩衝液で洗浄する。競合結合アッセイは、適切な濃度の放射性リガンドの存在下で、漸増濃度のオピオイドコンジュゲートと共にインキュベートした全付着細胞上で行われる。0.5nMの[3H]ナロキソン、0.5nMの[3H]ジプレノルフィンおよび0.5nMの[3H]DPDPEを、それぞれ、μ、κおよびδ受容体の競合放射性リガンドとして使用する。インキュベーションを、各濃度で3回測定ウェルを使用して、2時間、室温で行う。インキュベーションの終了時に、細胞を50mMのTris HCl(pH8.0)で洗浄し、NaOHで可溶化し、そしてシンチレーションカウンターを使用して、結合放射能を測定する。
【0188】
特異的結合を、50〜100×過剰の冷リガンドの存在下で、cpm結合を差し引くことによって決定する。結合データアッセイを、GraphPad Prism4.0を使用して分析し、そして用量−応答曲線からの非線形回帰によって、IC50を求める。Ki値を、次のように、飽和等温性由来のKd値を使用するCheng Prusoff式を使用して、計算する:Ki=IC50/(1+[リガンド]/Kd)。
【0189】
Ki値を、化合物の結合親和性の指標として使用し、そして他のオピオイドアゴニストの結合親和性と比較してもよい。それはまた、有効性のマーカーとして使用され、そして所与の化合物が有効な鎮痛を提供する可能性の評価を可能にする。
【0190】
実施例5
細胞全体におけるcAMP測定
フォルスコリン刺激cAMP生成の阻害を、オピオイドのインビトロ生体活性の測定として使用する。組み換えヒトμ、δまたはκオピオイド受容体のいずれか1つを異種発現するCHO細胞を、24ウェルプレートに、0.2〜0.3×10−6個の細胞/ウェルで置き、そして、PBS+1mMのIBMX(イソブチルメチルキサンチン)で洗浄する。3回測定ウェル中の細胞を、漸増濃度のオピオイドコンジュゲートと共にインキュベートし、続いて、10分間後、10μMフォルスコリンを添加する。フォルスコリンと共に10分間のインキュベーション後、細胞を溶解し、そして細胞中のcAMPを、市販の競合イムノアッセイキット(Catchpoint(登録商標)−Molecular Devices)を使用して、測定する。蛍光シグナルをcAMPの標準曲線に対して計算し、そしてデータを、cAMPのモル/106個の細胞として表す。IC50値を、各オピオイドコンジュゲートについて、非線形回帰(Graph Pad Prism)を使用する用量−応答曲線の分析によって計算し、ここで、「用量」は、使用したオピオイドコンジュゲートの濃度である。
【0191】
cAMPアッセイは、オピオイド化合物が、受容体結合時に機能的応答を誘導する能力の測定を提供するために使用され、そして化合物の鎮痛能のさらなる表示を提供する。それはまた、相対的有効性についての他のオピオイドとの比較を可能にする。
【0192】
実施例6
鎮痛のラットモデル
ホットプレートの引き込みアッセイを、オピオイドのインビトロ生体活性の測定として使用する。この実験は、熱刺激からの引き込みの潜時を、試験化合物の投与後に測定する標準的なホットプレート引き込みアッセイを使用する。化合物を動物に投与し、そして30分後、熱刺激を後肢に与える。モルヒネの存在下での後肢引き込みの潜時を、十分な鎮痛の測定として使用する一方、生理食塩水の存在下での潜時を、鎮痛のネガティブコントロールとして使用する。試験化合物のアゴニスト効果を、ネガティブコントロール(生理食塩水)と比較して、引き込むまでの時間を測定することによって、評価する。
【0193】
実施例7
依存能のサルモデル
オピオイド化合物および本発明のオピオイドコンジュゲートの依存能は、当該技術分野において公知のリスザルモデルの使用を介して、評価してもよい。Bergman and Paronis,Mol Interventions,6:273−83(2006)。
【0194】
実施例8
PEG−ナルブフィンコンジュゲートのインビボでの脳透過
PEG−ナルブフィンコンジュゲートが血液脳関門(BBB)を横断し、そしてCNSに進入する能力を、ラットにおける脳:血漿比を使用して、測定した。簡単に説明すると、ラットに、25mg/kgのナルブフィン、PEG−ナルブフィンコンジュゲートまたはアテノロールを静脈内注入した。注入の1時間後、動物を屠殺し、そして血漿および脳を回収し、そして直ちに凍結した。組織および血漿の抽出後、脳および血漿中の化合物の濃度を、LC−MS/MSを使用して測定した。脳:血漿比を、脳および血漿において測定された濃度の比として計算した。BBBを横断しないアテノロールを、脳組織の脈管濃度の測定値として使用した。
【0195】
図1は、PEG−ナルブフィンコンジュゲートの脳:血漿濃度の比を示す。ナルブフィンの脳:血漿比は、2.86:1であり、血漿コンパートメントと比較して、脳中のナルブフィンのほぼ3倍を超える濃度を示す。PEG−ナルブフィンコンジュゲートの脳:血漿比がより低いことによって証明されるように、PEGコンジュゲーションは、ナルブフィンのCNSへの進入を有意に低減した。3個のPEG単位とのコンジュゲーションは、脳:血漿比を0.23:1に低減し、脳中の6O−mPEG3−ナルブフィンの濃度が、血漿中濃度の約4倍未満であったことを示した。それらの脳:血漿比は、脈管マーカー、アテノロールとは有意には異ならなかったため、6−O−mPEG6−ナルブフィンおよび6−O−mPEG9−ナルブフィン(それぞれ、6個のPEG単位および9個のPEG単位)は、CNSから有意に排除された。
【0196】
【表1】
実施例9
mPEGn−OMs(mPEGn−O−メシレート)の調製
【0197】
40mLガラスバイアル中に、HO−CH2CH2OCH2CH2−OH(1.2ml、10mmol)およびDIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン、5.2ml、30mmol、3eq)を混合し、得られた均一な無色の混合物を、0℃まで冷却し、そしてMsCl(1.55ml、20mmol、2eq)を、シリンジを介して緩徐に、4分間、激しく撹拌しながら添加した。添加時に得られた2相混合物:底部の黄色固体および澄明な上清。氷浴を取り出し、そして反応物を、室温まで、1晩、加温した。この時点で、それを水に溶解し、CHCl3(3×50mL)で抽出し、0.1MのHCl/塩水混合物2×50mLで洗浄し、続いて、塩水50mLで洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過して、黄色液体を得、そしてエバポレートして、褐色のオイル(2.14g)を得た。1H NMRにより、生成物の正体を確認する3.3(1H NMR δ3.1(s,3H),3.3(s,3H),3.5−3.55(m,2H),3.6−3.65(m,2H),3.7−3.75(m,2H),4.3−4.35(m,2H)ppm)。
【0198】
他のすべてのPEGn−OMs(n=3、4、5、6、7および9)を、類似の様式で作製し、そして最終化合物を得、各場合とも、褐色のオイルとして単離した。質量分析およびプロトンNMRデータ(示さず)により、所望されるOMs PEG化生成物の形成を確認した。
【0199】
実施例10
mPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの調製
【化1】
【0200】
以下に、市販のモルヒネ硫酸塩水和物を使用する遊離塩基の調製について説明する (一般的手順)。
【0201】
Spectrum由来の硫酸モルヒネ(USP)(510mg)を水(70ml)に溶解した。次いで、K2CO3水溶液を使用して、溶液をpH10まで塩基性にして、白色の懸濁液を得た。白色の懸濁液にDCM(ジクロロメタン、50ml)を添加したが、固体を溶解することはできなかった。1MのHClで混合物を酸性にして、2相の澄明な溶液を得た。有機相を分離し、そして上記と同じK2CO3の溶液を使用して、水相を注意深くpH9.30にした(pHメーターでモニターした)。再度、白色の懸濁液が得られた。不均一な混合物を、DCM(5×25ml)で抽出し、そして不溶性の白色固体が、有機層および水層の両方に混入していた。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、そしてロータリーエバポレーターにより、160mgのモルヒネ遊離塩基(56%回収率)を得た。MeOHを使用して、フィルターケーキからさらなる生成物は回収されなかったが、EtOAcによる2×50mlの抽出によって、水相から別の100mgを回収して、260mg(68%)の合わせた収量を得た。
【0202】
モルヒネ遊離塩基のMEM保護
モルヒネの遊離塩基を保護基β−メトキシエトキシメチルエステル(「MEM」)で保護するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す:
【化2】
【0203】
遊離塩基モルヒネ(160mg、0.56mmol)を、20mlのアセトン/トルエン(2/1混合物)に溶解した。得られた溶液にK2CO3(209mg、1.51mmol、2.7eq)を添加し、続いて、MEMCl(96μl、0.84mmol、1.5eq)を添加し、そして得られた不均一な混合物を、1晩、室温で撹拌した。室温で5時間後、LC−MSにより、反応は完了したと思われた。モルヒネ遊離塩基の標準的な6分間の勾配稼働条件(標準で6分間、Onyx Monolyth C18カラム、50×4.6mm、水、0.1%TFA中0〜100%アセトニトリル、0.1%TFA、1.5ml/分;検出:UV254,ELSD,MS;UV254検出器に対して保持時間を表し、ELSDは約0.09分間の遅延を有し、そしてMSはUVに対して約0.04分間の遅延を有する)下での保持時間は、1.09分間;生成物の保持時間は1.54分間(標準で6分間)、主な不純物は1.79分間であった。反応混合物をエバポレートして乾燥させ、水に溶解し、EtOAcで抽出し(3×、合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そしてロータリーエバポレーターで処理して)、無色のオイルとして160mg(77%)の所望する生成物を得た。生成物の純度を、UV254により約80%と見積もった。
硫酸モルヒネの直接的なMEM保護(一般的手順)
【0204】
硫酸モルヒネを保護基β−メトキシエトキシメチルエステル(「MEM」)で保護するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。以下のスキームには、明らかには示されていないが、モルヒネは、実際には、モルヒネ硫酸塩水和物、モルヒネ.0.5H2SO4.2.5H2Oである。
【化3】
【0205】
10mlの2:1アセトン:トルエン溶媒混合物中103mgのモルヒネ硫酸水和物(0.26mmol)の懸濁液に、135mg(1mmol、3.7eq)のK2CO3を添加し、そして懸濁液を、室温で25分間、撹拌した。得られた懸濁液に、60μl(0.52mmol)のMEMClを添加し、そして混合物を室温で反応させた。1時間後(38%の名目上の変換、1.69分および2.28分においてさらなるピーク)、3時間後(40%の名目上の変換、1.72分においてさらなるピーク(M+1=493.2))、4時間半後(56%の名目上の変換、1.73分においてさらなるピーク)、および23時間後(>99%の名目上の変換、1.79分においてさらなるピーク−UV254における高さより約23%の生成物ピーク)に、サンプル採取を行った;その後、反応をMeOHでクエンチし、エバポレートし、EtOAcで抽出して、160mgの澄明なオイルを得た。
【0206】
同じ反応を、100mlの溶媒混合物中2g(5.3mmol)のモルヒネ硫酸水和物、2.2g(16mmol、3eq)のK2CO3、1.2ml(10.5mmol、2eq)のMEMClで開始して、反復した。2時間後(61%の名目上の変換、1.72分において余分なピーク(M+1=492.8))、1日後(80%の名目上の変換、1.73分において余分なピーク)、3日後(85%の名目上の変換、ごく小さな不純物、12分間の勾配稼働)、および6日後(91%変換)にサンプル採取を行った;その後、反応をクエンチし、エバポレートし、EtOAcで抽出し、40gカラム、DCM:MeOH0〜30%移動相を使用するcombi−flash上で精製した。3つのピーク(2つではない)が同定され、ここで、中央のピークを回収した、1.15g(58%収率)の淡黄色のオイル、UV254純度は約87%。
【0207】
MEM−保護モルヒネコンジュゲートを提供するためのMEM−保護モルヒネのコンジュゲーション
MEM−保護モルヒネと水溶性オリゴマーとをコンジュゲートしてMEM−保護モルヒネPEG−オリゴマーコンジュゲートを提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
【化4】
【0208】
トルエン/DMFの溶液(2:1混合物、合計で10容積)に、MEM−モルヒネ遊離塩基をチャージし、続いて、NaH(4〜6eq)をチャージし、次いで、予め調製したPEGnOMs(1.2〜1.4eq.)をチャージした。反応混合物を55〜75℃にまで加熱し、そして反応の完了がLC−MS分析によって確認されるまで(PEG鎖長に依存して、12〜40時間)、撹拌した。反応混合物を、メタノール(5容積)でクエンチし、そして反応混合物を減圧下でエバポレートして、乾燥させた。残渣をメタノール(3容積)に再溶解し、そしてCombiflashシステム(0〜40%MeOH/DCM)を使用して、クロマトグラフィーを行った。大量の生成物を含有する画分を回収し、合わせ、そしてエバポレートして乾燥させた。次いで、この材料をRP−HPLCによって精製して、黄色〜橙色のオイルとして生成物を得た。
モルヒネコンジュゲートを提供するためのMEM−保護モルヒネコンジュゲートの脱保護
【0209】
MEM−保護モルヒネコンジュゲートを脱保護して、モルヒネコンジュゲートを提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
【化5】
【0210】
DCM(8容積)に懸濁させたMEM−保護モルヒネコンジュゲートTFA塩の溶液に、6容積のジエチルエーテル中2MのHClをチャージした。反応混合物を、室温で2時間、撹拌し、次いで、低圧下でエバポレートして乾燥させた。オイル状の残渣をMeOH(8容積)に溶解し、ガラスウールを介してろ過し、次いで、低圧下でエバポレートして、粘稠な橙色〜黄色のオイルを定量的収量で得た。この方法によって作製された化合物として、次のものが挙げられる:α−6−mPEG3−O−モルヒネ(化合物A、n=3)217mgのHCl塩、純度97%(UV254では95%;ELSDでは98%);α−6−mPEG4−O−モルヒネ(化合物A、n=4)275mgのHCl塩、純度98%(UV254では97%;ELSDでは98%);α−6−mPEG5−O−モルヒネ(化合物A、n=5)177mgのHCl塩、純度95%(UV254では93%;ELSDでは98%);α−6−mPEG6−O−モルヒネ(化合物A、n=6)310mgのHCl塩、純度98%(UV254では98%;ELSDでは99%);α−6−mPEG7−O−モルヒネ(化合物A、n=7)541mgのHCl塩、純度96%(UV254では93%;ELSDでは99%);およびα−6−mPEG−O9−モルヒネ(化合物A、n=9)466mgのHCl塩、純度98%(UV254では97%;ELSDでは99%)。さらに、単一のPEGモノマーが結合したモルヒネコンジュゲート、α−6−mPEG1−O−モルヒネ(化合物A、n=1)、124mgのHCl塩、純度97%(UV254では純度95%;ELSDでは98%)、ならびにα−6−mPEG2−O−モルヒネ(化合物A、n=2)、485mgのHCl塩、純度97%(UV254では純度95%;ELSDでは98%)も同様に調製した。
【0211】
実施例11
mPEGn−O−コデインコンジュゲートの調製
【化6】
【0212】
コデインと水溶性オリゴマー(代表的なオリゴマーとしてmPEG3OMsを使用する)の活性化スルホン酸エステルとをコンジュゲートして、コデインコンジュゲートを提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
【化7】
【0213】
コデイン(30mg、0.1mmol)をトルエン/DMF(75:1)溶媒混合物に溶解し、続いて、HO−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OMs(44ml、2eq)およびNaH(鉱油中60%懸濁液、24mg、6eq)を添加した。得られた均一な黄色溶液を、45℃にまで加熱した。1時間後、反応は、11%の変換(2.71分において余分なピーク、12分間稼働)を示し、18時間後、反応は、7%の変換(3.30分において余分なピーク、12分間稼働)を示し、そして24時間後、反応は、24%の変換(複数の余分なピーク、1.11分および2.79分において最も高い2つのピーク)を示した。この時点で、さらなる16mgのNaHを添加し、そして加熱を6時間継続し、その後、さらなる16mgのNaHを添加し、続いて、66時間、加熱を継続した。その後、出発物質は残留せず、そして分析により、多くの余分なピークが示されたが、最も高い2つのピークは2.79分および3分に対応する(生成物のピークは、少なくとも7つのピークのうち2番目に高いピークである)。
【0214】
10×スケールを使用して、この合成を反復し、ここで、30mlの溶媒混合物を使用した。18時間後、分析により、71%の名目上の変換が示され、UVにおいてさらなるピークを伴った(3.17分において1つの高いピークおよび多くの小さなピーク;ここで、所望されるピークは、UVでの3.43分に対応する)。その後、80mg(2mmol)のNaHを添加し、続いて、加熱を継続した。3時間後、分析により、85%の名目上の変換が示された(いくらかの余分なピーク、3.17分において主要なピーク)。反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出して(3×、合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そしてロータリーエバポレーターで処理した)、黄色のオイルを得た(LC−MSにおいて出発物質(sm)は認められない、ELSDでは純度90%、UVでは純度50%−3.2分において主要な不純物)。粗生成物をDCMに溶解し、230〜400メッシュSiO2を充填した小さなカートリッジに適用し、乾燥し、溶媒A=DCMおよび溶媒B=MeOH、Bの勾配0〜30%を伴う4gのプレパックカラムカートリッジを介するCombi−flash上で溶出させた。分析により、対称性が不良な2つのピークが示された:小さな先行するピークおよびテールを伴うより大きなピーク。LC−MSを使用して、純粋な生成物を含有することが同定されていない画分を分析した。任意の生成物(tt番号22〜30)を含有する合わせた画分から、溶媒エバポレーション後、150mg(34%収率)の不純な生成物が得られた(UV254では3.35分においてLC−MS純粋であって、ここで、約25%は、12分間の稼働のうち主要な不純物3.11分、3.92分、4.32分、5.61分を示した)。15〜60%B、70分間、10ml/分に対応する勾配を用いるHPLC(溶媒A=水、0.1%TFA;溶媒B=アセトニトリル、0.1%TFA)による第2の精製では、隣接するピークからの分離が不良であった。2つの画分のみが不純物を含まず、そして21mgのTFA塩(純度>95%、4.7%収率)を生じた。所望される生成物を含有する画分の前および後のさらなる3つの画分(合計でさらなる6つの画分)を合わせて、TFA塩として70mgの純度約50%の生成物を得た。
【0215】
この同じアプローチを使用して、エチレンオキシド単位の数(n=4、5、6、7、および9)が異なる他のコンジュゲートを、上記のこれらのNaH条件を使用して、作製した。
【0216】
コデイン−オリゴマーコンジュゲートTFA塩のコデイン−オリゴマーHCl塩への変換
コデイン−オリゴマーTFA塩をコデイン−オリゴマーHCl塩に変換するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
【化8】
【0217】
DCM(8容積)に懸濁させたコデイン−オリゴマーコンジュゲートTFA塩の溶液に、6容積のジエチルエーテル中2MのHClをチャージした。反応混合物を、室温で2時間、撹拌し、次いで、低圧下でエバポレートして乾燥させた。オイル状の残渣をMeOH(8容積)に溶解し、ガラスウールを介してろ過し、次いで、低圧下でエバポレートして、粘稠な橙色〜黄色のオイルを定量的収量で得た。一般的手順に従って、次の化合物を合成した:α−6−mPEG3−O−コデイン(化合物B、n=3)HCl塩の235mg、純度98%;α−6−mPEG4−O−コデイン(化合物B、n=4)HCl塩の524mg、純度98%;α−6−mPEG5−O−コデイン(化合物B、n=5)HCl塩の185mg、純度98%+HCl塩の119mg、純度97%、α−6−mPEG6−O−コデイン(化合物B、n=6)HCl塩の214mg、純度97%;α−6−mPEG7−O−コデイン(化合物B、n=7)HCl塩の182mg、純度98%;α−6−mPEG9−O−コデイン(化合物B、n=9)HCl塩の221mg、純度97%;α−6−mPEG1−O−コデイン(化合物B、n=1)HCl塩の63mg、純度90%;およびα−6−mPEG2−O−コデイン(化合物B、n=2)HCl塩の178mg、純度90%。
【0218】
実施例12
mPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの調製
【化9】
【0219】
ヒドロキシコドンと水溶性オリゴマー(代表的なオリゴマーとして「mPEGnOMs」を使用する)の活性化スルホン酸エステルとをコンジュゲートして、ヒドロキシコドンコンジュゲートを提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
【化10】
【0220】
オキシコドンのα−6−ヒドロキシコドンへの還元
−20℃で冷却した窒素下乾燥THF中オキシコドン遊離塩基の溶液に、水素化トリ−sec−ブチルホウ素カリウムの1.0MのTHF溶液を15分間、添加した。溶液を、−20℃、窒素下で1.5時間、撹拌し、次いで、水(10mL)を緩徐に添加した。反応混合物を、さらに10分間、−20℃で撹拌し、次いで、室温まで加温した。すべての溶媒を、低圧下で取り出し、そしてCH2Cl2を残留する残渣に添加した。CH2Cl2相を0.1NのHCl/NaCl水溶液で抽出し、そして合わせた0.1NのHCl溶液抽出物をCH2Cl2で洗浄し、次いで、Na2CO3を添加して、pH=8に調整した。溶液をCH2Cl2で抽出した。CH2Cl2抽出物を、無水Na2SO4上で乾燥させた。低圧下で溶媒を取り出した後、所望するα−6−HO−3−ヒドロキシコドンが得られた。
【0221】
mPEGnOMsのα−6−ヒドロキシコドンへのコンジュゲーション:トルエン/DMFの溶液(2:1混合物、合計で10容積)に、ヒドロキシコドン(先の段落において記載のように調製した)をチャージし、続いて、NaH(4eq)、次いで、mPEGnOMs(1.3e.)をチャージした。反応混合物を60〜80℃にまで加熱し、そして反応の完了がLC−MS分析によって確認されるまで(PEG鎖長に依存して、12〜40時間)、撹拌した。反応混合物を、メタノール(5容積)でクエンチし、そして反応混合物を減圧下でエバポレートして、乾燥させた。残渣をメタノール(3容積)に再溶解し、そしてCombiflash(0〜40%MeOH/DCM)を使用して、クロマトグラフィーを行った。大量の生成物を含有する画分を回収し、合わせ、そしてエバポレートして乾燥させた。次いで、この材料をRP−HPLCによって精製して、黄色〜橙色のオイルとして最終生成物を得た。
ヒドロキシコドンコンジュゲートTFA塩のヒドロキシコドンコンジュゲートHCl塩への変換
【0222】
DCM(8容積)に懸濁させたヒドロキシコドンコンジュゲートTFA塩の溶液に、6容積のジエチルエーテル中2MのHClをチャージした。反応混合物を、室温で2時間、撹拌し、次いで、低圧下でエバポレートして乾燥させた。オイル状の残渣をMeOH(8容積)に溶解し、ガラスウールを介してろ過し、次いで、低圧下でエバポレートして、粘稠な橙色〜黄色のオイルを定量的収量で得た。一般的手順に従って、次の化合物を合成した:α−6−mPEG3−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG3−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=3)HCl塩の242mg、純度96%;α−6−mPEG4−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG4−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=4)HCl塩の776mg、純度94%;α−6−mPEG5−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG5−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=5)HCl塩の172mg、純度93%;α−6−mPEG6−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG6−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=6)HCl塩の557mg、純度98%;α−6−mPEG7−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG7−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=7)HCl塩の695mg、純度94%;およびα−6−mPEG9−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG9−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=9)HCl塩の435mg、純度95%。次の化合物、α−6−mPEG1−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG1−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=1)HCl塩の431mg、純度99%;およびα−6−mPEG2−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG2−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=2)454mg HCl塩、純度98%も同様に調製した。
【0223】
実施例13
インビボ鎮痛アッセイ:フェニルキノンライジング
鎮痛アッセイを使用して、次のコンジュゲート系列:mPEG2−7,9−O−モルヒネ、mPEG3−7,9−O−コデイン、およびmPEG1−4,6,7,9−O−ヒドロキシコドンに属する例示的PEG−オリゴマー−オピオイドアゴニストコンジュゲートが、マウスにおける内蔵痛の低減および/または防止に有効であるかどうかを決定した。
【0224】
アッセイでは、CD−1雄性マウス(1グループあたり5〜8匹のマウス)を利用したが、各マウスは、研究日において約0.020〜0.030kgであった。マウスを、標準的なプロトコルに従って処置した。フェニルキノン(PQ)溶液の投与の30分前に(IV、SC、IPまたは経口で)、水溶性非ペプチド性オリゴマーの共有結合を有さない化合物(即ち、非PEGオリゴマー−改変親分子)、水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合した化合物を含んでなる対応するバージョン(即ち、コンジュゲート)、またはコントロール溶液の単回「前処置」用量をマウスに投与した。各動物に、腹部の収縮、胴体のねじれおよびひねり、背部の反り返りおよび後肢の伸展を含み得る「ライジング」を誘発する刺激薬(フェニルキノン、PQ)のIP注入を行った。各動物に、PQ(1mg/kgのPQ、0.1mL/10gの体重)のIP注入を行った。注入後、動物を、それらの観察隔離域に戻し、そしてそれらの挙動を観察した。「前処置」後の35〜45分間の間に、収縮を計数した。動物の使用は1回であった。各試験した物品は、0.1〜100mg/kg(n=5〜10匹の動物/用量)の範囲で投与した。
【0225】
結果を、図2(mPEG2−7,9−O−モルヒネおよびコントロール)、図3(mPEG1−4,6,7,9−O−ヒドロキシコドンおよびコントロール)、ならびに図4(mPEG3−7,9−O−コデインおよびコントロール)に示す。ED50値を、以下の表2および3に示す。
【0226】
【表2】
【0227】
【表3】
【0228】
実施例14
インビボ鎮痛アッセイ:ホットプレート潜時アッセイ
ホットプレート潜時鎮痛アッセイを使用して、次のコンジュゲート系列:mPEG1−5−O−モルヒネ、mPEG1−5−O−ヒドロキシコドン、およびmPEG2−5,9−O−コデインに属する例示的PEG−オリゴマー−オピオイドアゴニストコンジュゲートが、マウスにおける内蔵痛の低減および/または防止に有効であるかどうかを決定した。
【0229】
アッセイでは、CD−1雄性マウス(1グループあたり10匹のマウス)を利用したが、各マウスは、研究日において約0.028〜0.031kgであった。マウスを、標準的なプロトコルに従って処置した。ホットプレート試験の30分前に(SCで)、水溶性非ペプチド性オリゴマーの共有結合を有さない化合物(非改変親分子)、水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合した化合物を含んでなる対応するバージョン(即ち、コンジュゲート)、またはコントロール溶液の単回「前処置」用量をマウスに投与した。ホットプレートの温度を55±1℃に設定し、実験の開始前に、表面温度計でキャリブレーションした。「前処置」の30分後、各マウスを、ホットプレート上に置き、そして後肢を舐めるまでの潜時は、0.1秒の精度で記録した。30秒内に舐めなかった場合、マウスを取り出した。ホットプレート試験の直後、温度プローブを直腸に17mm挿入し、そして計器が安定したとき(約10秒間)に、体温を0.1℃の精度で読み取った。動物の使用は1回であった。各試験した物品は、0.3〜30mg/kg(n=5〜10匹の動物/用量)の範囲で投与した。
【0230】
結果を、図5(ヒドロキシコドン系列)、図6(モルヒネ系列)および図7(コデイン)に示す。プロットは、潜時(秒単位で後肢を舐めるまでの時間)対mg/kgで投与した化合物の用量を例示する。
【0231】
実施例15
雄性Sprague−Dawleyラットにおける静脈内(IV)および経口(PO)投与後のPEGオリゴ−オピオイド化合物の薬物動態学−研究設計
経静脈および頸動脈カテーテル(JVC/CAC)を貯留している175匹の成獣雄性Sprague−Dawleyラット(Charles River Labs,Hollister,CA)を研究に利用した。3匹のラット/グループであった。すべての動物を、1晩、絶食させた。投与前に、ラットを秤量し、尾部およびケージカードを、同定のために標識し、そして用量を計算した。麻酔薬を封入し、そして3.0〜5.0%イソフルランで維持した。JVCおよびCACを外側に配置し、HEP/生理食塩水(10IU/mLのHEP/mLの生理食塩水)をフラッシュし、差し込み接続し、そして頸静脈および頸動脈を同定するために標識を付した。前投与サンプルを、JVCから回収した。すべての動物を麻酔から回復させ、そして前投与サンプルを処理した場合、静脈内グループの動物には、適切な試験物品を含有する1mLのシリンジを使用し、JVCを介して静脈内(IV)に投与し、カテーテルの死容積を0.9%生理食塩水でフラッシュして、動物が正確な用量を受容することを確実にし、そして経口グループの動物には、経口的に強制投与して、処置した。
【0232】
単回のIV投与後、血液サンプルを、0(上記のように回収した前投与)、2、10、30、60、90、120、および240分時に回収し、そして経口投与後、血液サンプルを、頸動脈カテーテルを介して0(上記のように回収した前投与)、15、30、60、120、240および480分時に回収し、そしてプロトコルにおいて述べたように、処理した。最後の回収ポイント後、動物を屠殺した。
【0233】
LC−MS/MS法を使用して、血漿サンプルの生体分析の解析を行った。
【0234】
薬物動態解析:WinNonlin(Version5.2,Mountain View,CA−94014)を使用して、PK分析を実施した。表の作成およびPK分析を行う前に、LLOQ未満の血漿中濃度を、ゼロに置き換えた。各動物の血漿濃度−時間プロファイルを使用して、以下のPKパラメータを確立した:
C0:「ゼロ」時間の外挿濃度
Cmax:最大(ピ−ク)濃度
AUCall:ゼロから最終濃度値の時間までの濃度−時間下面積
T1/2(Z):最終消失半減期
AUCinf:ゼロから無限時間の濃度−時間下面積
Tmax:投与後最大またはピ−ク濃度に到達するまでの時間
CL:全身クリアランス
Vz:終末相に基づく分布容積
Vss:定常期における分布容積
MRTlast:観察可能な最終濃度までの平均滞留時間
F:バイオアベイラビリティ
【0235】
化合物の平均用量−正規化AUCallのデータを使用して、経口バイオアベイラビリティを確立したが、ここで、IVまたはPOグループのうちの一方は、<n=3/グループで報告されたデータのみを伴う。
実施例16
mPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートのIVおよびPO薬物動態学
【0236】
上記の実施例15に記載のように、Sprague−Dawleyラットにおいて、薬物動態研究を行った。投与された化合物は、mPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲート(ここで、n=1、2、3、4、5、6、7、および9)ならびに親化合物、オキシコドンであった。目的は、静脈内および経口的に投与された親化合物およびそのさまざまなオリゴマーコンジュゲートの両方の薬物動態学を決定することであった。
【0237】
オキシコドン、mPEG0−オキシコドン、mPEG1−O−ヒドロキシコドン、mPEG2−O−ヒドロキシコドン、mPEG3−O−ヒドロキシコドン、mPEG4−O−ヒドロキシコドン、mPEG5−O−ヒドロキシコドン、mPEG6−O−ヒドロキシコドン、mPEG7−O−ヒドロキシコドン、およびmPEG9−O−ヒドロキシコドンのIV(1mg/kg)およびPO(5mg/kg)送達後の血漿PKパラメータの概要を、以下の表、表4および5に示す。
【0238】
IV投与について観察されたデータ(表4)に基づいて、mPEG9−O−ヒドロキシコドンは、親オキシコドンが投与された後に観察される対応する平均t1/2値の3倍の平均t1/2値を伴うより高い血漿濃度を達成するようであった。
【0239】
図8は、上記のようにIV投与されたmPEGn−O−ヒドロキシコドン化合物、ならびに1.0mg/kgの濃度で投与された場合のオキシコドン自体の平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【0240】
経口投与について観察されたデータ(表5)に基づいて、mPEG5−O−ヒドロキシコドン、mPEG6−O−ヒドロキシコドン、およびmPEG7−O−ヒドロキシコドンは、親分子、オキシコドンと比較して、血漿中においてより高い平均暴露(約3〜8倍)を達成するようであった。
【0241】
図9は、上記のmPEGn−O−ヒドロキシコドン化合物、ならびに5.0mg/kgの濃度で経口投与された場合のオキシコドンの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【0242】
【表4】
【0243】
【表5】
【0244】
結果をまとめると、多様なオリゴマー性PEG長(PEG1〜PEG9)を伴うPEG化ヒドロキシコドンを静脈内に投与すると、オキシコドンと比較して、様々な血漿濃度および暴露が生じた。鎖長3、5、7および9を伴うPEGは、より高い平均暴露(AUC)を示した一方、PEG6は、比較可能な平均暴露(AUC)を示し、そして鎖長1、2または4を伴うPEGは、僅かに低い平均暴露(AUC)を示した。5を超えるPEG長を有する化合物は、PEG長の増加に伴い、より低いクリアランス、定常状態においてより高い分布容積、消失半減期値の増加の傾向を示した。
【0245】
多様なオリゴマー性PEG長(PEG1〜PEG9)を伴うPEG化ヒドロキシコドンを経口投与すると、PEG1およびPEG3に共有結合したヒドロキシコドンを例外として、血漿暴露における改善が生じた。経口バイオアベイラビリティは、mPEG6に共有結合したヒドロキシコドンが最も高く、55.3%であり、続いて、mPEG5−ヒドロキシコドンおよびmPEG7−ヒドロキシコドンが、それぞれ、37.6%および28.1%であった。消失半減期値は、PEG長の増加と共に増加する傾向を示した。
実施例17
mPEGn−O−モルヒネコンジュゲートのIVおよびPO薬物動態学
【0246】
上記の実施例15に記載のように、Sprague−Dawleyラットにおいて、薬物動態研究を行った。投与された化合物は、mPEGn−O−モルヒネコンジュゲート(ここで、n=1、2、3、4、5、6、7、および9)ならびに親化合物、モルヒネであった。目的は、静脈内および経口的に投与された親化合物およびそのさまざまなオリゴマーコンジュゲートの両方の薬物動態学を決定することであった。
【0247】
モルヒネ、mPEG1−O−モルヒネ、mPEG2−O−モルヒネ、mPEG3−O−モルヒネ、mPEG4−O−モルヒネ、mPEG5−O−モルヒネ、mPEG6−O−モルヒネ、mPEG7−O−モルヒネ、mPEG9−O−モルヒネのIV(1mg/kg)およびPO(5mg/kg)経路後の血漿PKパラメータの概要を、それぞれ、表6および表7に示す。
【0248】
静注グループについては:図10は、ラットへの1.0mg/kg静脈内投与後の上記のmPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。mPEG2−O−モルヒネの血漿プロファイルと一致しない1つの外れ値のデータが各動物において存在するようであり、これについては、PK分析から除外した。
【0249】
観察されたデータ(表6)に基づいて、mPEG9−O−モルヒネは、親モルヒネが投与された後に観察される対応するt1/2値の4倍の平均t1/2値を伴うより高い血漿濃度を達成するようであった。
【0250】
【表6】
【0251】
経口グループについては、図11は、ラットへの経口投与(5.0mg/kg)後の上記のmPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【0252】
観察されたデータ(表7)に基づいて、mPEG4−O−モルヒネは、親分子、モルヒネと比較して、試験したコンジュゲートの中でも最も高い血漿濃度を達成するようであった。
【0253】
【表7】
【0254】
要約すると、IVデータについて、多様なPEG長(PEG1〜PEG9)を伴うオリゴマー性PEG化モルヒネを投与すると、モルヒネ自体と比較して、より高い血漿濃度および暴露(AUC)を生じた。5以上のPEG長の増加に伴い、平均AUCの明らかな増加傾向が認められ、PEG9−モルヒネでは、非コンジュゲートモルヒネと比較して、平均AUCが10倍を超えた。平均半減期および平均滞留時間もまた、PEG長の増加に伴って増加した。より低い平均クリアランス値は、観察されるより高い平均AUC値と一致した。
【0255】
定常状態について見積もられる平均分布容積は、単一のPEGの導入に伴って、直ちに5倍低減し、そしてPEG長5における一定値に到達した。全体的に、PEG化は、消失t1/2を増加し、そしてモルヒネの組織分布を低下するようであった。
【0256】
経口データに基づいて、多様なPEG長(PEG1〜PEG9)を伴うPEG化モルヒネコンジュゲートを投与すると、モルヒネと比較して、経口バイオアベイラビリティの低減を生じた。バイオアベイラビリティの低減は、これらのPEG−コンジュゲートの代謝成分ではなく、吸収成分に関連するようであった。PEG−コンジュゲートのうち、PEG長4を伴うコンジュゲートは、最大のF値(22.1%)を示した一方、より短いまたはより長いPEG長を伴うコンジュゲートは、吸収を消失する明白な傾向を示した。
【0257】
本研究では、モルヒネF%値は、7.5mg/kgにおいて、15%の文献値より3倍高かった。(J.Pharmacokinet.Biopharm.1978,6:505−19)。このより高い暴露の理由は明らかではない。
【0258】
実施例18
mPEGn−O−コデインコンジュゲートのIVおよびPO薬物動態学
上記の実施例15に記載のように、Sprague−Dawleyラットにおいて、薬物動態研究を行った。投与された化合物は、mPEGn−O−コデインコンジュゲート(ここで、n=1、2、3、4、5、6、7、および9)ならびに親化合物、コデイン(n=0)であった。目的は、静脈内および経口的に投与された親化合物、即ち、コデインおよびそのさまざまなオリゴマーコンジュゲートの両方の薬物動態学を決定することであった。
【0259】
コデイン、mPEG1−O−コデイン、mPEG2−O−コデイン、mPEG3−O−コデイン、mPEG4−O−コデイン、mPEG5−O−コデイン、mPEG6−O−コデイン、mPEG7−O−コデイン、mPEG9−O−コデインのIV(1mg/kg)およびPO(5mg/kg)経路後の血漿PKパラメータの概要を、それぞれ、表8および表9に示す。
【0260】
IVグループについては:図12は、親分子、コデイン、ならびに静脈内投与後の上記のPEGn−O−コデインコンジュゲートの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【0261】
観察されたデータ(表8)に基づいて、mPEG6−O−コデインは、親分子、コデインが投与された後に観察される対応するt1/2値の約2.5倍の平均t1/2値を伴う試験されたコンジュゲートのなかでも、より高い血漿濃度を達成するようであった。
【0262】
【表8】
【0263】
経口グループについては、図13は、ラットへの経口投与(5.0mg/kg)後の親分子、コデイン対mPEGn−コデインコンジュゲートの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【0264】
観察されたデータ(表9)に基づいて、PEG−6化合物、mPEG6−コデインは、親分子、コデインとして試験したコンジュゲートの中でも最も高い血漿濃度(平均AUCallより52倍高い)を達成するようであった。
【0265】
【表9】
【0266】
要約すると、IVデータについて、多様なオリゴマー性PEG長(PEG1〜PEG9)を伴うコデインのPEG化は、暴露(平均AUC)をごく僅かにしか改善せず、そしてPEG−6コンジュゲートでは、中等度の改善(約4倍)が観察された。このPEG−コンジュゲートでは、クリアランスおよび分布容積の両方とも、4倍低減した。PEG長7および9を伴うコンジュゲートは、より長い平均t1/2値を示したが、しかし、平均クリアランスおよび平均分布容積(Vss)は、PEG7−およびPEG9−コデインコンジュゲートの両方において低減した。
【0267】
経口データについては、コデインの経口バイオアベイラビリティは極めて低い(F=0.52%)。経口バイオアベイラビリティは、2以上のPEG長の増加に伴って増加するようであり、PEG長6を伴うコデインコンジュゲートが32%のバイオアベイラビリティを有して最大に到達し、それ以降は低減する。一般に、平均t1/2および平均残滞留値は、PEG長と共に増加する。試験したすべての化合物の中で、ピーク濃度に到達するまでの時間(Tmax=15分間)に差異は認められなかったことから、吸収は迅速であり、そして吸収速度は変更しなかったことが示唆される。
実施例19
【0268】
mPEGn−O−オピオイドコンジュゲートのオピオイド受容体へのインビボでの結合
様々なPEG−オピオイドコンジュゲート(mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデイン、およびmPEGn−O−ヒドロキシコドン)の結合親和性を、実施例4に記載の様式と類似に様式で、クローニングされたヒトμ、κまたはδオピオイド受容体を異種発現するCHO細胞から調製される膜調製物において、インビトロで測定した。シンチレーション近接アッセイ(SPA)を使用して、放射性リガンドの置換を測定した。
【0269】
簡単に説明すると、連続希釈した試験化合物を、96ウェルプレート中に置いて、これにSPAビーズ、膜および放射性リガンドを添加する。各オピオイド受容体サブタイプのアッセイ条件を、以下の表10に示す。プレートを、8時間〜1晩、室温でインキュベートし、1000rpmでスピンして、SPAビーズをペレット化し、そしてTopCount(登録商標)マイクロプレートScintillationカウンターを使用して、放射能を測定した。試験化合物の各濃度における特異的結合を、過剰の冷リガンドの存在下で測定した非特異的結合を差し引くことによって、計算した。IC50値は、特異的結合対濃度曲線の非線形回帰によって入手し、そして膜調製物の各ロットについて実験的に予め決定されたKd値を使用して、Ki値を計算した。
【0270】
【表10】
【0271】
モルヒネ、コデインおよびヒドロキシコドンのオリゴマー性PEGコンジュゲートの結合親和性を表11に示す。全体として、すべてのコンジュゲートは、親分子の既知の薬理学と一致して、μ−オピオイド受容体への測定可能な結合を示した。所与のPEGサイズでは、μ−オピオイド結合親和性の順位は、PEG−モルヒネ>PEG−ヒドロキシコドン>PEG−コデインであった。PEGサイズを増加させると、非コンジュゲート親分子と比較して、すべてのPEGコンジュゲートのμオピオイド受容体に対する結合親和性が漸進的に低減した。しかし、PEG−モルヒネコンジュゲートはなお、高い結合親和性を保持し、親モルヒネの結合親和性の15×以内であった。PEG−ヒドロキシコドンのμオピオイド結合親和性は、PEG−モルヒネコンジュゲートの20〜50倍低かった。コデインおよびそのPEGコンジュゲートは、極めて低い親和性でμオピオイド受容体に結合した。PEG−モルヒネコンジュゲートはまた、κおよびδオピオイド受容体に結合した;選択制の順位はμ>κ>δであった。コデインおよびヒドロキシコドンコンジュゲートのκおよびδオピオイド受容体に対する結合親和性は、μ−オピオイド受容体に対する結合親和性より有意に低い。
【0272】
【表11】
【0273】
N/Aは、試験した化合物の最大濃度で、結合の50%阻害が達成されなかったため、Ki値を計算することができなかったことを示す。
【0274】
実施例20
cAMP形成を阻害するmPEGn−O−オピオイドコンジュゲートのインビトロでの有効性
様々なPEG−オピオイドコンジュゲートの有効性を、実施例5に記載の様式と類似の様式で、受容体活性化後のcAMP形成を阻害するそれらの能力を測定することによって、阻害した。研究は、クローニングされたヒトμ、κまたはδオピオイド受容体を異種発現するCHO細胞において行った。cAMPは、競合イムノアッセイ原理に基づくcAMP HiRange均一時間分解蛍光アッセイ(HTRF Assay)(Cisbio、カタログ番号62AM6PEC)を使用して測定した。
【0275】
簡単に説明すると、0.5mMイソブチル−メチルキサンチン(IBMX)を含有する緩衝液において、μ、κまたはδオピオイド受容体のいずれかを発現する細胞の懸濁液を調製した。細胞を、多様な濃度のPEG−オピオイドコンジュゲートおよび3μMフォルスコリンと共に30分間、室温でインキュベートした。cAMPを、製造者の指示により2段階アッセイプロトコルに従って検出し、そして時間分解蛍光を、次の設定によって測定した:励起波長330nm;発光波長620nmおよび665nm;ダイクロイックミラー380nm。665nm/620nm比を、DeltaF%として表し、そして試験化合物に関連するデータを、フォルスコリンを伴わないウェルにおける平均最大応答の百分率として表す。各化合物のEC50値を、濃度対最大応答のシグモイド用量−応答プロットから計算した。化合物が系において完全なアゴニストとして挙動しているかまたは部分的なアゴニストとして挙動しているかどうかを決定するために、化合物の試験された最も高い濃度における最大応答を、既知の完全なアゴニストのものと比較した。
【0276】
細胞全体におけるcAMP形成の阻害に対するEC50値を表12に示す。モルヒネ、コデインおよびヒドロキシコドンのオリゴマー性PEGコンジュゲートは、多様な有効性を伴うにもかかわらず、μオピオイド受容体に対する完全なアゴニストであった。モルヒネおよびそのコンジュゲートは、試験した3つの系列のオピオイドのうち最も強力であった一方、PEGヒドロキシコドンおよびPEGコデインコンジュゲートは、有意に低い有効性を示した。PEGサイズの増加に伴って、PEG−モルヒネコンジュゲートの有効性における漸進的な低減が観察されたが、しかし、コンジュゲートは、親の40×以内のμ−アゴニストの有効性を保持した。μオピオイド受容体に対する効果とは対照的に、モルヒネおよびPEG−モルヒネコンジュゲートは、κオピオイド受容体に対して弱い部分的アゴニストとして挙動し、可能な最大応答の47〜87%を生じた。試験した濃度範囲(500μMまで)では、完全な用量−応答曲線を作成することができなかったため、κおよびδオピオイド受容体におけるコデインおよびヒドロキシコドンコンジュゲートのEC50値を計算することができなかった。
【0277】
全体的に、受容体結合性および機能的活性の結果は、PEG−オピオイドが、インビトロでμアゴニストであることを示す。
【0278】
【表12】
【0279】
実施例21
mPEGn−O−オピオイドコンジュゲートの脳:血漿比
オリゴマー性mPEG−O−モルヒネ、mPEG−O−コデインおよびmPEG−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートが血液脳関門(BBB)を横切り、そしてCNS(中枢神経系)に進入する能力は、IV投与後にラットの脳:血漿比を測定することによって、評価した。
【0280】
簡単に説明すると、3匹からなるラットのグループに、5mg/kgの各モルヒネ、mPEGn−O−モルヒネコンジュゲート、コデインおよびm−PEGn−O−コデインコンジュゲートを静脈内(i.v)注入した。PEG−2,3および4−オキシコドンコンジュゲートを、10mg/kg i.v.で投与し、そしてオキシコドンおよび他のPEGサイズのオキシコドンコンジュゲートを、1mg/kg(i.v)で投与した。オキシコドンコンジュゲートの用量は、脳組織において有意な濃度の検出が可能であるように調整した。BBBを横断しないアテノロールを、脳組織の脈管混入の測定値として使用し、そしてラットの個別のグループに、10mg/kgの濃度で投与した。注入の1時間後、動物を屠殺し、そして血漿および脳を回収し、そして直ちに凍結した。組織および血漿の抽出後、脳および血漿中の化合物の濃度を、LC−MS/MSを使用して測定した。脳:血漿比を、脳および血漿において測定された濃度の比として計算した。
結果を図16A〜Cに示す。
【0281】
図14A、16B、および16Cは、それぞれ、様々なオリゴマー性mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデイン、およびPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳:血漿比を示す。アテノロールの脳:血漿比を、比較のための基準を提供するために各図に示す。PEG−コンジュゲーションでは、それらのそれぞれの非コンジュゲート親分子(ヒドロキシコドンの場合、親分子はオキシコドンである)と比較して、すべてのコンジュゲートの脳:血漿比が低減した。PEG−1−モルヒネのみが、その親、モルヒネより高い脳:血漿比を示した。
【0282】
実施例22
様々な例示的mPEGn−O−オピオイドコンジュゲートの脳および血漿濃度の時間経過
IV投与後の脳および血漿における経時的な様々なオリゴマー性PEG−オピオイドコンジュゲートの濃度を決定するための実験を行った。
【0283】
使用した実験方法論および濃度は、実施例21に記載の単一の時間ポイント実験に使用したものと同じであったが、但し、脳および血漿は、異なる時間ポイントで回収した。
【0284】
すべてのPEG−ヒドロキシコドンコンジュゲートを10mg/kg ivで投与した一方、オキシコドン親を、1mg/kg ivで投与した。投与した様々なPEG−オピオイドコンジュゲートの脳および血漿濃度対時間のデータを、図15A〜H(モルヒネ系列)、図16A〜H(コデイン系列)、図17A〜H(オキシコドン/ヒドロキシコドン系列)に示す。
【0285】
データは、最も早い時間ポイント、即ち、注入の10分後におけるすべての親分子およびオリゴマー性PEG−コンジュゲートの脳濃度が最大に増加したことを実証している。PEGコンジュゲーションでは、脳濃度の有意な低減が生じ、そしてより大きなPEGコンジュゲート(≧PEG−4)では、脳濃度は、比較的低く保持し、そして経時的に安定する。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月16日に出願された米国仮特許出願第61/192,247号明細書および2009年9月11日に出願された米国特許出願第12/558,395号明細書(それらの開示内容は、本明細書においてそれらの全体が参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
とりわけ、本発明は、水溶性オリゴマーに共有結合したオピオイドアゴニスト(即ち、オピオイドアゴニストオリゴマーコンジュゲート)に関し(、コンジュゲートは、他の特徴および利点の中でも、薬物乱用の可能性が低い)、そしてその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
モルヒネのようなオピオイドアゴニストは、痛みを患う患者を治療するために使用されてきた。オピオイドアゴニストは、オピオイド受容体との相互作用を介して、それらの鎮痛効果および他の薬理効果を及ぼし、オピオイド受容体には、主に次の3つのクラスが存在する:ミュー(μ)受容体、カッパκ(κ)受容体、およびデルタ(δ)受容体。臨床的に使用されるオピオイドアゴニストの多くは、μ受容体に対して比較的選択的であるが、オピオイドアゴニストは、典型的に、他のオピオイド受容体において(特に、増加した濃度で)アゴニスト活性を有する。
【0004】
オピオイドは、アセチルコリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、セロトニン、およびサブスタンスPのような神経伝達物質の放出を選択的に阻害することによって、少なくとも部分的に、それらの効果を及ぼす。
【0005】
薬理学的に、オピオイドアゴニストは、痛みの管理において用いられる重要なクラスの薬剤を代表する。しかし、鎮痛において現在使用されているオピオイドは、かなりの常習性があるため、実際の治療におけるそれらの使用は複雑であり、制限される。オピオイドの乱用から生じる医学的、社会的および金銭的な問題は、医師が慢性疼痛に使用するためにオピオイドを処方する可能性に重大な制約を課す。
【0006】
典型的なオピオイドは、迅速に血液脳関門(BBB)を通過し、そしてオピオイドの乱用によって経験する「陶酔感」に関連するピーク濃度に迅速に到達する。一定の低い濃度でオピオイドを脳に送達する変更された薬物動態プロファイルを介し、オピオイドアゴニストの依存能の根拠となる従来の送達様式の濃度ピークを回避して、常習性の低減を達成できることを示す証拠が存在する。非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5。これに関する開発の取り組みは、経口投与される遅延放出錠剤および経皮パッチのような代替的ストラテジーに主に集中している。これらは、循環中に一定の低い濃度の薬物を供給することを目的とするが、それらは、破砕または分割によって物理的に粉砕することが可能であり、薬物にアクセスし、次いで循環中に直接注入して、常習性行動のための所望される薬物動態プロファイルを得ることが可能であるという事実によって複雑である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Balster and Schuster,J Exp Anal Behav 20:119−129(1973)
【非特許文献2】Panlilio and Schindler,Psychopharmacology 150:61−66(2000)
【非特許文献3】Winger et al.,J Pharmacol Exp Ther 301:690−697(2002)
【非特許文献4】Ko et al.,J Pharmacol Exp Ther 301:698−704
【非特許文献5】Abreu et al.,Psychopharmacologia 154:76−84(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、鎮痛において使用される現在利用可能なオピオイドより低い常習性および同時に認められる低い乱用可能性を伴うオピオイドアゴニストが、当該技術分野において必要とされている。特に、薬物の直接注入が常習性の「恍惚感」の根拠となる即時中枢神経系透過を提供しないように、分子自体を変更し、そして血液脳関門の透過を緩徐にするオピオイドアゴニストへの改変が必要とされている。本発明は、それらの鎮痛特性を保持するが、薬物乱用の可能性が低い、水溶性オリゴマーに共有結合したオピオイドアゴニストを提供することによって、このおよび他の必要性に取り組もうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、一態様では、本明細書において、式OP−X−POLYの化合物が提供され、ここで、OPはオピオイド化合物であり、Xはリンカーであり、そしてPOLYは小さな水溶性オリゴマーである。
【0010】
関連の実施形態では、式OP−X−POLY(ここで、OP、XおよびPOLYは、上記で定義したとおりである)の化合物および薬学的に許容できる賦形剤またはキャリアを含んでなる組成物が提供される。
【0011】
もう1つの態様では、式OP−X−POLYの化合物の有効量を投与する工程を含んでなる、オピオイド療法を必要とする患者を治療する方法が提供される。
【0012】
なおもう1つの態様では、化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイド化合物の乱用の可能性を低減する方法が提供される。
【0013】
さらなる態様では、オピオイドアゴニストを小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイドアゴニストの常習性を低減する方法が提供される。
【0014】
もう1つの態様では、オピオイド化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイド化合物の血液脳関門を横断する速度を低減するが、実質的に排除しない方法が提供される。
【0015】
なおもう1つの態様では、放出可能な水溶性のオリゴマー性部分への共有結合を介して可逆的に結合したμ、κ、またはδオピオイドアゴニストを含んでなるプロドラッグであって、ここで、患者に投与される所与のモル量の前記プロドラッグは、哺乳動物の中枢神経系において、μ、κ、またはδオピオイドアゴニストがプロドラッグの部分として投与されなかった場合の等モル量のμ、κ、またはδオピオイドアゴニストの蓄積速度およびCmaxより小さい蓄積速度およびCmaxを示す、プロドラッグが提供される。
【0016】
本発明のこれらのならびに他の目的、態様、実施形態および特徴については、以下の詳細な説明と併せて読むことにより、明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例8においてより詳述するように、様々なPEGオリゴ−ナルブフィンコンジュゲートの脳:血漿比を示すグラフである。プロットは、PEGコンジュゲーションより、ナルブフィンの脳:血漿比の低減が生じることを実証する。
【図2】図2は、実施例13において詳述するように、本研究群におけるマウスの合計数、nあたりのライジングパーセント対マウスにおける内蔵痛の低減または防止の程度を評価するための鎮痛アッセイにおいて投与されたmPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの用量を示すグラフである。モルヒネをコントロールとして使用し;非コンジュゲート親分子、硫酸モルヒネもまた投与して、さらなる対照ポイントを提供した。次のコンジュゲート系列:mPEG2−7,9−O−モルヒネに属するコンジュゲートを評価した。
【図3】図3は、実施例13において詳述するように、本研究群におけるマウスの合計数、nあたりのライジングパーセント対マウスにおける内蔵痛の低減または防止の程度を評価するための鎮痛アッセイにおいて投与されたmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの用量を示すグラフである。モルヒネをコントロールとして使用し;非コンジュゲート親分子、オキシコドンもまた投与して、さらなる対照ポイントを提供した。次のコンジュゲート系列:mPEG1−4,6,7,,9−O−ヒドロキシコドンに属するコンジュゲートを評価した。
【図4】図4は、実施例13において詳述するように、本研究群におけるマウスの合計数、nあたりのライジングパーセント対マウスにおける内蔵痛の低減または防止の程度を評価するための鎮痛アッセイにおいて投与されたmPEGn−O−コデインコンジュゲートの用量を示すグラフである。モルヒネをコントロールとして使用し;非コンジュゲート親分子、コデインもまた投与して、さらなる対照ポイントを提供した。次のコンジュゲート系列:mPEG3−7,,9−O−コデインに属するコンジュゲートを評価した。
【図5】図5〜7は、実施例14において詳述するように、マウスにおけるホットプレート潜時鎮痛アッセイの結果を示すプロットである。具体的には、図は、秒単位の潜時(後肢を舐めるまでの時間)対化合物の用量を示すグラフに対応する。図5は、mPEG1−5−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートならびに非コンジュゲート親分子の結果を提供する。データのポイントに存在するアスタリスクは、ANOVA/Dunnettによるp<0.05対生理食塩水を示す。
【図6】図5〜7は、実施例14において詳述するように、マウスにおけるホットプレート潜時鎮痛アッセイの結果を示すプロットである。具体的には、図は、秒単位の潜時(後肢を舐めるまでの時間)対化合物の用量を示すグラフに対応する。図6は、mPEG1−5−O−モルヒネコンジュゲート、また非コンジュゲート親分子の結果を提供する。データのポイントに存在するアスタリスクは、ANOVA/Dunnettによるp<0.05対生理食塩水を示す。
【図7】図5〜7は、実施例14において詳述するように、マウスにおけるホットプレート潜時鎮痛アッセイの結果を示すプロットである。具体的には、図は、秒単位の潜時(後肢を舐めるまでの時間)対化合物の用量を示すグラフに対応する。図7は、mPEG2−5,9−O−コデインコンジュゲートならびに親分子の結果を提供する。データのポイントに存在するアスタリスクは、ANOVA/Dunnettによるp<0.05対生理食塩水を示す。
【図8】図8は、実施例16に記載のように、ラットへの1.0mg/kg静脈内投与後の化合物、オキシコドン(mPEG0−オキシコドン)、mPEG1−O−ヒドロキシコドン、mPEG2−O−ヒドロキシコドン、mPEG3−O−ヒドロキシコドン、mPEG4−O−ヒドロキシコドン、mPEG5−O−ヒドロキシコドン、mPEG6−O−ヒドロキシコドン、mPEG7−O−ヒドロキシコドン、およびmPEG9−O−ヒドロキシコドンの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図9】図9は、実施例16に記載のように、ラットへの5.0mg/kg経口投与後の化合物、オキシコドン(mPEG0−オキシコドン)、mPEG1−O−ヒドロキシコドン、mPEG2−O−ヒドロキシコドン、mPEG3−O−ヒドロキシコドン、mPEG4−O−ヒドロキシコドン、mPEG5−O−ヒドロキシコドン、mPEG6−O−ヒドロキシコドン、mPEG7−O−ヒドロキシコドン、およびmPEG9−O−ヒドロキシコドンの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図10】図10は、実施例17において詳述するように、ラットへの1.0mg/kg静脈内投与後の化合物、モルヒネ(mPEG0−モルヒネ)、およびmPEG1−7,9−O−モルヒネコンジュゲートの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図11】図11は、実施例17に記載のように、ラットへの5.0mg/kg経口投与後の化合物、モルヒネ(mPEG0−モルヒネ)、およびmPEG1−7,9−O−モルヒネコンジュゲートの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図12】図12は、実施例18において詳述するように、ラットへの1.0mg/kg静脈内投与後の化合物、コデイン(mPEG0−コデイン)、およびmPEG1−7,9−O−コデインコンジュゲートの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図13】図13は、実施例18に記載のように、ラットへの5.0mg/kg経口投与後の化合物、コデイン(mPEG0−コデイン)、およびmPEG1−7,9−O−コデインコンジュゲートの平均(+SD)血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【図14A】図14Aは、実施例21に記載のように、ラットへのIV投与後のそれぞれ、様々なオリゴマー性mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデインおよびmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳:血漿比を例示する。アテノロールの脳:血漿比を、比較のための基準として各図に示す。
【図14B】図14Bは、実施例21に記載のように、ラットへのIV投与後のそれぞれ、様々なオリゴマー性mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデインおよびmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳:血漿比を例示する。アテノロールの脳:血漿比を、比較のための基準として各図に示す。
【図14C】図14Cは、実施例21に記載のように、ラットへのIV投与後のそれぞれ、様々なオリゴマー性mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデインおよびmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳:血漿比を例示する。アテノロールの脳:血漿比を、比較のための基準として各図に示す。
【図15−1】図15A〜Hは、実施例22に記載のように、ラットへのIV投与後の経時的なモルヒネならびに様々なmPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの脳および血漿濃度を例示する。図15A(モルヒネ、n=0)。図15B(モルヒネ、n=1)。図15C(モルヒネ、n=2)。図15D(モルヒネ、n=3)。
【図15−2】図15A〜Hは、実施例22に記載のように、ラットへのIV投与後の経時的なモルヒネならびに様々なmPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの脳および血漿濃度を例示する。図15E(モルヒネ、n=4)。図15F(モルヒネ、n=5)。図15G(モルヒネ、n=6)。図15H(モルヒネ、n=7)。
【図16】図16A〜Hは、実施例22に記載のように、ラットへのIV投与後の経時的なコデインならびに様々なmPEGn−O−コデインコンジュゲートの脳および血漿濃度を例示する。図16A(コデイン、n=0)。図16B(コデイン、n=1)。図16C(コデイン、n=2)。図16D(コデイン、n=3)。図16E(コデイン、n=4)。図16F(コデイン、n=5)。図16G(コデイン、n=6)。図16H(コデイン、n=7)。
【図17−1】図17A〜Hは、実施例22に記載のように、ラットへのIV投与後の経時的なオキシコドンならびに様々なmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳および血漿濃度を例示する。図17A(オキシコドン、n=0)。図17B(オキシコドン、n=1)。図17C(オキシコドン、n=2)。図17D(オキシコドン、n=3)。
【図17−2】図17A〜Hは、実施例22に記載のように、ラットへのIV投与後の経時的なオキシコドンならびに様々なmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳および血漿濃度を例示する。図17E(オキシコドン、n=4)。図17F(オキシコドン、n=5)。図17G(オキシコドン、n=6)。図17H(オキシコドン、n=7)。
【図18A】図18A〜Cは、実施例3において詳述するように、コントロール化合物、アンチピリンおよび非コンジュゲートオピオイドと比較した所定の例示的なPEGオリゴ−オピオイドコンジュゲートの脳透過(Kin値)の速度を例示する。具体的には、図18Aは、コントロール化合物、モルヒネならびにアンチピリンと比較したmPEGn−O−モルヒネコンジュゲート(ここで、n=1、2、3、および7)の結果を例示する。
【図18B】図18A〜Cは、実施例3において詳述するように、コントロール化合物、アンチピリンおよび非コンジュゲートオピオイドと比較した所定の例示的なPEGオリゴ−オピオイドコンジュゲートの脳透過(Kin値)の速度を例示する。具体的には、図18Bは、コントロール化合物、コデインならびにアンチピリンと比較したmPEGn−O−コデインコンジュゲート(ここで、n=2、3、および7)の結果を例示する。
【図18C】図18A〜Cは、実施例3において詳述するように、コントロール化合物、アンチピリンおよび非コンジュゲートオピオイドと比較した所定の例示的なPEGオリゴ−オピオイドコンジュゲートの脳透過(Kin値)の速度を例示する。具体的には、図18Cは、コントロール化合物、オキシコドンならびにアンチピリンと比較したmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲート(ここで、n=1、2、3、および7)の結果を例示する。
【図19】図19は、実施例3において詳述するように、脳透過、Kin対mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデイン、およびmPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートのPEGオリゴマーサイズの比を例示するグラフを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数形にも言及する。
【0019】
本発明の説明および請求の範囲において、以下の用語が下記の定義に従って使用される。
【0020】
用語「オピオイド化合物」および「オピオイドアゴニスト」は、本明細書において広範に使用され、典型的に、約1000ダルトン未満(および典型的に500ダルトン未満)の分子量を有し、そしてμ、δおよび/またはκアゴニストとしていくつかの程度の活性を有する有機、無機あるいは有機金属化合物を指す。オピオイドアゴニストは、オリゴペプチドおよび約1500未満の分子量を有する他の生体分子を包含する。
【0021】
用語「スペーサー部分」、「連結」および「リンカー」は、場合により、ポリマーセグメントおよびオピオイド化合物の末端またはオピオイド化合物の求電子部もしくは求核部のような相互接続部分を連結するために使用される原子あるいは原子のコレクションを指すために、本明細書において使用される。スペーサー部分は、加水分解的に安定であってもよく、または生理学的に加水分解可能もしくは酵素的に分解可能な連結を含んでもよい。文脈が明らかに他を指示しない限り、スペーサー部分は、場合により、化合物の任意の2つのエレメント間に存在する(例えば、スペーサー部分を介して、直接または間接的に結合され得るオピオイド化合物および水溶性オリゴマーを含んでなる提供されたコンジュゲート)。
【0022】
「水溶性オリゴマー」は、室温で水において少なくとも35(重量)%可溶性、好ましくは、70(重量)%を超える、およびより好ましくは、95(重量)%可溶性であるオリゴマーを示す。典型的に、「水溶性」オリゴマーの非ろ過水性調製物では、ろ過後に同じ溶液を透過する光の量のうちの少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも95%が透過する。しかし、水溶性オリゴマーが、水において少なくとも95(重量)%可溶性であるか、または水に完全に可溶性であることが、最も好適である。「非ペプチド性」であることに関して、オリゴマーが35(重量)%未満のアミノ酸残基を有する場合、それは非ペプチド性である。
【0023】
用語「モノマー」、「モノマーサブユニット」および「モノマー単位」は、本明細書において同義的に使用され、そしてポリマーまたはオリゴマーの基本構造単位の1つを指す。ホモオリゴマーの場合、単一の反復構造単位がオリゴマーを形成する。コオリゴマーの場合、2つ以上の構造単位が、あるパターンかまたは無作為のいずれかで反復して、オリゴマーを形成する。本発明に関連して使用される好適なオリゴマーは、ホモオリゴマーである。水溶性オリゴマーは、典型的に、連続的に結合して、モノマーの鎖を形成する1つ以上のモノマーを含んでなる。オリゴマーは、単一のモノマータイプ(即ち、ホモオリゴマー性である)または2つもしくは3つのモノマータイプ(即ち、コオリゴマー性である)から形成することができる。
【0024】
「オリゴマー」は、約2〜約の50モノマー、好ましくは、約2〜約30のモノマーを所有する分子である。オリゴマーの構成は変動し得る。本発明に使用するための具体的なオリゴマーとして、線状、分岐、またはフォーク状のような多様なジオメトリーを有するものが挙げられ、下記において、より詳細に説明する。
【0025】
本明細書において使用する「PEG」または「ポリエチレングリコール」は、任意の水溶性のポリ(エチレンオキシド)を包含することを意味する。他に示さない限り、「PEGオリゴマー」(また、オリゴエチレングリコールとも呼ばれる)は、実質的にすべての(およびより好ましくは、すべての)モノマーサブユニットがエチレンオキシドサブユニットであるものである。しかし、オリゴマーは、例えば、コンジュゲーションのための別個の末端キャッピング部分または官能基を含有してもよい。典型的に、本発明に使用するためのPEGオリゴマーは、次の2つの構造のうちの1つを含んでなる:「−(CH2CH2O)n−」または「−(CH2CH2O)n−1CH2CH2−」であって、例えば、合成変換中に末端の酸素が置き換えられているかどうかに依存する。PEGオリゴマーでは、「n」値は、約2〜50、好ましくは、約2〜約30で変動し、そして、全体的なPEGの末端機および構成も変動し得る。PEGが、例えば、オピオイド化合物に連結するための官能基、Aをさらに含んでなる場合、官能基は、PEGオリゴマーに共有結合する場合、(i)酸素−酸素結合(−O−O−、過酸化連結)の形成も、または(ii)窒素−酸素結合(N−O、O−N)の形成も生じない。
【0026】
「末端キャッピング基」は、一般的に、PEGオリゴマーの末端の酸素に結合した非反応性炭素含有基である。例示的な末端キャッピング基は、C1−5アルキル基、例えば、メチル、エチルおよびベンジル)、ならびにアリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロなどを含んでなる。本発明の目的のために、好適なキャッピング基は、メチルまたはエチルのような比較的低い分子量を有する。末端キャッピング基はまた、検出可能な標識を含んでなり得る。そのような標識として、蛍光物質(fluorescer)、化学発光物質(chemiluminescer)、酵素標識において使用される部分、比色標識(colorimetric label)(例えば、染料)、金属イオン、および放射性部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
オリゴマーのジオメトリーまたは全体的構造に関して、「分岐」は、分岐点から延在する別個の「アーム」を表す2つ以上のポリマーを有するオリゴマーを指す。
【0028】
オリゴマーのジオメトリーまたは全体的構造に関して、「フォーク状」は、分岐点から延在する(典型的に、1個以上の原子を介して)2つ以上の官能基を有するオリゴマーを指す。
【0029】
「分岐点」は、オリゴマーが、線状構造から1つ以上のさらなるアームへ分岐またはフォーク構造を形成する1個以上の原子を含んでなる分岐点を指す。
【0030】
用語「反応性」または「活性化された」は、有機合成の従来の条件下で容易にまたは実際的な速度で反応する官能基を指す。これは、反応しないか、あるいは反応するためには強力な触媒または実際的ではない反応条件が必要であるかのいずれかである基(即ち、「非反応性」もしくは「不活な」基)とは対照的である。
【0031】
反応混合物中の分子に存在する官能基に関して、「容易に反応しない」は、基が、反応混合物において所望される反応を生じるのに有効である条件下で主にインタクトの状態を保つことを指す。
【0032】
「保護基」は、所定の反応条件下で分子中の特定の化学的な反応性官能基の反応を防止または阻止する部分である。保護基は、保護される化学反応性基のタイプならびに用いようとする反応条件および分子におけるさらなる反応性基または保護基の存在に依存して変動する。保護することができる官能基として、例えば、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。カルボン酸については、代表的な保護基として、エステル(例えば、p−メトキシベンジルエステル)、アミドおよびヒドラジドが挙げられ;アミノ基については、カルバメート(例えば、tert−ブトキシカルボニル)およびアミドが挙げられ;ヒドロキシル基については、エーテルおよびエステルが挙げられ;チオール基については、チオエーテルおよびチオエステルが挙げられ;カルボニル基については、アセタールおよびケタールなどが挙げられる。そのような保護基は、当業者に周知であり、そして例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999、および本明細書において引用した参考文献に記載されている。
【0033】
「保護された形態」の官能基は、保護基を有する官能基を指す。本明細書において使用する用語「官能基」またはその任意の類義語は、その保護された形態を包含する。
【0034】
「生理学的に切断可能な」結合は、加水分解可能な結合または酵素的に分解可能な連結である。「加水分解可能な」または「分解可能な」結合は、通常の生理学的条件下で水と反応する(即ち、加水分解される)比較的変化を起こし易い結合である。通常の生理学的条件下で水中で結合が加水分解する傾向は、2個の中心原子を接続する一般的なタイプの連結だけではなく、これらの中心原子に結合する置換基にも依存する。そのような結合は、一般的に、当業者であれば認識することができる。適切な加水分解可能な不安定または弱い連結として、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、オリゴヌクレオチド、チオエステル、およびカルボネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
「酵素的に分解可能な連結」は、通常の生理学的条件下で1つ以上の酵素による分解に供される連結を意味する。
【0036】
例えば、水溶性オリゴマーに可逆的に結合したオピオイド化合物に関して、「可逆的に結合した」は、本明細書に記載の生理学的に切断可能なまたは分解可能な(酵素的に含む)連結を含むリンカーを介して共有結合したオピオイド化合物を指し、ここで、(例えば、加水分解による)分解時に、オピオイド化合物が遊離する。このようにして遊離したオピオイド化合物は、典型的に、改変されていないオピオイド化合物に対応するか、または若干変更されていてもよく、例えば、例えば、典型的に、オピオイド化合物に直に隣接しない水溶性オリゴマーリンカーの切断から生じる約8個の原子の短い有機タグを所有する。好ましくは、改変されていないオピオイド化合物が遊離する。
【0037】
「安定な」連結または結合は、水中で実質的に安定である、即ち、通常の生理学的条件下、任意の適切な程度で、長期間にわたって、加水分解を受けない化学部分または結合、典型的には、共有結合を指す。加水分解に安定な連結の例として次のものが挙げられるが、これらに限定されない:(例えば、脂肪族鎖における)炭素−炭素結合、エーテル、アミド、ウレタン、アミンなど。一般的に、安定な連結は、通常の生理学的条件下で1日あたり約1〜2%未満の加水分解の速度を示す連結である。代表的な化学結合の加水分解速度については、ほとんどの標準的な化学の教科書において見出すことができる。
【0038】
所与の組成のオリゴマーの一貫性について説明する場合、「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼすべてまたは完全に、例えば、95%以上、より好ましくは、97%以上、なおより好ましくは、98%以上、さらにより好ましくは、99%以上、なおより好ましくは、99.9%以上を意味し、99.99%以上が、いくつかの所与の量のうちで最も好適である。
【0039】
「単分散」は、オリゴマー組成物を指し、ここで、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーが、良好に限定された単一の分子量および限定された数のモノマーを有し、クロマトグラフィーまたは質量分析によって決定される。単分散オリゴマー組成物は、ある程度純粋であり、即ち、いくらかの異なる数のモノマー(即ち、3つ以上の異なるオリゴマーサイズを有するオリゴマー組成物)ではなく、単一かつ限定可能な数のモノマーを有する分子を実質的に含んでなる。単分散オリゴマー組成物は、1.0005未満のMW/Mn値、およびより好ましくは、1.0000のMW/Mn値を所有する。拡大解釈すると、単分散コンジュゲートからなる組成物は、組成物中のすべてのコンジュゲートの実質的にすべてのオリゴマーが、分布しておらず、(整数として)単一かつ限定された数のモノマーを有し、そしてオリゴマーがオピオイドアゴニストの残基に結合しなかった場合、1.0005のMW/Mn値、およびより好ましくは、1.0000のMW/Mn値を所有することを意味する。しかし、単分散コンジュゲートからなる組成物として、溶媒、試薬、賦形剤などのような1つ以上の非コンジュゲート物質を挙げることができる。
【0040】
オリゴマー組成物に関して、「二峰性」は、オリゴマー組成物を指し、ここで、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーは、分布ではなく、(整数として)2つの限定可能なかつ異なる数のモノマーのうちの1つを有し、そして多くの画分対分子量としてプロットした場合、その分子量の分布は、2つの個別の同定可能なピークとして出現する。好ましくは、本明細書に記載の二峰性オリゴマー組成物について、各ピークは、一般的に、その平均について対称であるが、2つのピークのサイズは異なっていてもよい。理想的には、二峰性分布における各ピークの多分散指数、Mw/Mnは、1.01以下、より好ましくは、1.001以下、およびさらにより好ましくは、1.0005以下、および最も好ましくは、1.0000のMW/Mn値である。拡大解釈すると、二峰性コンジュゲートからなる組成物は、組成物中のすべてのコンジュゲートの実質的にすべてのオリゴマーが、大きな分布ではなく、(整数として)2つの限定可能なかつ異なる数のモノマーのうちの1つを有し、そしてオリゴマーがオピオイドアゴニストの残基に結合しなかった場合、1.01以下のMW/Mn値、より好ましくは、1.001以下、およびさらにより好ましくは、1.0005以下、および最も好ましくは、1.0000のMW/Mn値を所有することを意味する。しかし、二峰性コンジュゲートからなる組成物として、溶媒、試薬、賦形剤などのような1つ以上の非コンジュゲート物質を挙げることができる。
【0041】
「生体膜」は、典型的に、少なくともいくつかの外来性の実体もしくはそうでなければ所望されない材料に対する関門として役立つ分化した細胞または組織から作製される任意の膜である。本明細書において使用する「生体膜」として、例えば、次のものを含む生理学的保護関門に関連するそれらの膜が挙げられる:血液脳関門(BBB);血液脳脊髄液関門;血液胎盤関門;血液乳関門;血液精巣関門;および膣粘膜、尿道粘膜、肛門粘膜、頬粘膜、舌下粘膜、直腸粘膜などを含む粘膜関門。ある文脈において、用語「生体膜」は、中間の胃腸間(例えば、胃および小腸)に関連する膜を含まない。例えば、場合によっては、本発明の化合物の血液脳関門を横切る能力が限定されることを所望してもよく、なお、同じ化合物が中間の胃腸管を横切ることを所望してもよい。
【0042】
本明細書において使用する「生体膜横断速度」は、生体膜(例えば、血液脳関門に関連する膜)を横断する化合物の能力の尺度を提供する。多様な方法を使用して、あらゆる所与の生体膜を横断する分子の輸送を評価することができる。あらゆる所与の生物学的関門(例えば、血液脳脊髄液関門、血液胎盤関門、血液乳関門、腸関門など)に関連する生体膜横断速度を評価する方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書および/または関連文献に記載されており、ならびに/あるいは当業者によって決定することができる。
【0043】
「アルキル」は、典型的に、約1〜20個の原子の長さの炭化水素鎖を指す。そのような炭化水素鎖は、飽和されていることが好ましいが、必ずしもそうである必要はなく、また、分岐鎖であってもよく、または直鎖であってもよいが、典型的に直鎖が好ましい。例示的なアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、3−メチルペンチルなどが挙げられる。本明細書において使用する「アルキル」は、3個以上の炭素原子に言及する場合、シクロアルキルを含む。「アルケニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を伴う2〜20個の炭素原子のアルキルである。
【0044】
用語「置換アルキル」または「置換Cq−rアルキル」(ここで、qおよびrは、アルキル基に含有される炭素原子の範囲を同定する整数である)は、1つ、2つもしくは3つのハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C1−7アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチルなど)、C1−7アルコキシ、C1−7アシルオキシ、C3−7ヘテロ環、アミノ、フェノキシ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシ、アシル、シアノによって置換された上記のアルキル基を示す。置換アルキル基は、同じまたは異なる置換基で1回、2回もしくは3回置換され得る。
【0045】
「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基を指し、そしてメチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルによって例示されるように、直鎖であってもよく、または分岐鎖であってもよい。「低級アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する2〜6個の炭素原子の低級アルキル基である。
【0046】
「非干渉置換基」は、分子中に存在する場合、典型的に、分子内に含有される他の官能基と非反応性である基である。
【0047】
「アルコキシ」は、−O−R基を指し、ここで、Rは、アルキルまたは置換アルキル、好ましくは、C1−C20アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ベンジルなど)、好ましくは、C1−C7である。
【0048】
「薬学的に許容できる賦形剤」または「薬学的に許容できるキャリア」は、成分を含まない組成物より優れた利点(例えば、患者への投与にさらに適切である)を有し、そして患者に対して顕著な有害な毒性学的影響を生じないことが認識される組成物を提供するために、本発明の組成物に含めることができる成分を指す。
【0049】
用語「アリール」は、14個までの炭素原子を有する芳香族基を意味する。アリール基として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニルなどが挙げられる。「置換フェニル」および「置換アリール」は、それぞれ、ハロ(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(例えば、C1−6アルキル)、アルコキシ(例えば、C1−6アルコキシ)、ベンジルオキシ、カルボキシ、アリールなどから選択される1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ(例えば、1−2、1−3もしくは1−4置換基)によって置換されたフェニル基およびアリール基を示す。
【0050】
「芳香族含有部分」は、少なくともアリール、および場合により1個以上の原子含有する原子のコレクションである。適切な芳香族含有部分については、本明細書において説明する。
【0051】
簡潔のため、化学的部分は、全体を通して、一価の化学的部分(例えば、アルキル、アリールなど)として定義され、そしてそのように称される。それにもかかわらず、そのような用語はまた、当業者に明らかである適切な構造的環境下で、対応する多価の部分を伝えることにも使用される。例えば、「アルキル」部分は、一般的に、一価のラジカル(例えば、CH3−CH2−)を指す一方、所定の環境では、二価の連結部分は、「アルキル」であり得、その場合、当業者は、そのアルキルが、用語「アルキレン」に等価である二価のラジカル(例えば、−CH2−CH2−)であることを理解するであろう。(同様に、二価の部分が必要であり、そして「アリール」と述べられる環境では、当業者は、用語「アリール」が、対応する二価の部分、アリーレンを指すと理解するであろう)。すべての原子は、結合形成のためのそれらの正常な原子価数(即ち、炭素では4、Nでは3、Oでは2、およびSの酸化状態に依存して、Sでは2、4、もしくは6)を有すると理解される。
【0052】
「薬理学的有効量」、「生理学的有効量」、および「治療有効量」は、本明細書において同義的に使用され、血流中あるいは標的組織中において、閾値レベルの有効因子および/またはコンジュゲートを提供するのに必要な組成物中に存在する水溶性オリゴマー−オピオイド化合物コンジュゲートの量を意味する。正確な量は、多数の因子、例えば、組成物の特定の有効因子、成分および物理特性、意図される患者集団、患者の考慮事項などに依存し、そして本明細書において提供する情報、および関連文献において利用可能な情報に基づいて、当業者が容易に決定することができる。
【0053】
「二官能性」オリゴマーは、典型的に、その末端において、2つの官能基がその中に含有されるオリゴマーである。官能基が同じである場合、オリゴマーは、ホモ二官能性と呼ばれる。官能基が異なる場合、オリゴマーは、ヘテロ二官能性と呼ばれる。
【0054】
本明細書に記載の塩基性反応物質または酸性反応物質は、中性で荷電したもの、およびその任意の対応する塩形態を含む。
【0055】
用語「患者」は、必ずしもその必要はないが典型的に、水溶性オリゴマー−オピオイド化合物コンジュゲートの形態で、本明細書に記載のコンジュゲートの投与によって、予防または治療することができる病態を患っている、またはその傾向がある、生物体を指し、ヒトおよび動物の両方を含む。
【0056】
「随意的」または「場合により」は、後に説明する状況が生じてもよいが、必ずしもその必要があるわけではなく、そのため、その説明には、状況が生じる場合と、それが生じない場合とが含まれることを意味する。
【0057】
文脈が明らかに他を指示しない限り、用語「約」が数値の前にある場合、数値は、上述の数値およびまた上述の数値の±10%を意味するものと理解される。
【0058】
水溶性オリゴマーオピオイドコンジュゲート
上記のように、本開示物は、(とりわけ)以下の式の化合物に関する:
OP−X−POLY
ここで、OPはオピオイド化合物であり、Xはリンカーであり、そしてPOLYは小さな水溶性オリゴマーである。主題コンジュゲートの調製および特徴付けにおいて、本発明者らは、オピオイド化合物を小さな水溶性オリゴマーで誘導体化することによって、オピオイド化合物の脳への送達の速度が低減することを発見した。オピオイドアゴニスト分子自体の共有結合修飾に基づいて、本明細書に記載のコンジュゲートは、先行技術の乱用防止オピオイドアゴニスト処方物より改善されている。即ち、小さな水−オリゴマー(small water−oligomers)とコンジュゲートされたオピオイド化合物は、変更された薬物動態プロファイルを有するが、経皮パッチのような所定の代替的送達処方に関連する即効性オピオイド化合物の回収および乱用の可能性を作り出す物理的タンパリングの危険性には供されない。
オピオイド
【0059】
従って、OPは、ミュー(μ)、カッパ(κ)、またはデルタ(δ)オピオイド受容体と相互作用する任意の化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む、任意のオピオイド化合物であり得る。一実施形態では、オピオイドは、ミュー(μ)オピオイド受容体に対して選択的である。もう1つの実施形態では、オピオイドは、カッパ(κ)オピオイド受容体に対して選択的である。さらなる実施形態では、オピオイドは、デルタ(δ)オピオイド受容体に対して選択的である。使用に適切なオピオイドは、天然に存在する分子、半合成分子または合成分子であり得る。
【0060】
使用することができるオピオイド化合物として、アセトルフィン、アセチルジヒドロコデイン、アセチルジヒドロコデイノン、アセチルモルヒノン、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ビファリン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、酪酸ジオキサフェチル、ジピパノン、ダイノルフィン(ダイノルフィンAおよびダイノルフィンBを含む)、エンドルフィン(β−エンドルフィンおよびα/β−ネオエンドルフィンを含む)、エンケファリン(Met−エンケファリンおよびLeu−エンケファリンを含む)、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、フェンタニルおよび誘導体、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナンシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナノルフィン、ナルブフィン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェノドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、ならびにトラマドールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
所定の実施形態では、オピオイドアゴニストは、ヒドロコドン、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシコドン、コデイン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、オキシモルホン、ブプレノルフィン、フェンタニル、ジピパノン、ヘロイン、トラマドール、ナルブフィン、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、ブトルファノール、およびレボルファノールからなる群から選択される
【0062】
他の実施形態では、オピオイドアゴニストは、フェンタニル、ヒドロモルホン、メタドン、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、およびオキシモルホンからなる群から選択される。
【0063】
オピオイドアゴニスト活性を有する他のいずれのオピオイド化合物もまた、使用してもよい。所与の化合物(化合物がコンジュゲート形態であるかどうかにかかわらない)が、オピオイド受容体に対してアゴニストとして作用できるかどうかを決定するためのアッセイについては、本明細書に記載されており、そして当該技術分野において公知である。
【0064】
場合によっては、オピオイドアゴニストは、商業的供給源から入手することができる。加えて、オピオイドアゴニストは、合成有機化学の標準的な技術を使用して、合成することができる。オピオイドアゴニストを調製するための合成アプローチについては、参考文献ならびに例えば、米国特許第2,628,962号明細書、同第2,654,756号明細書、同第2,649,454号明細書、および同第2,806,033号明細書に記載されている。
【0065】
これら(および他の)オピオイドアゴニストのそれぞれは、(直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって)水溶性オリゴマーに共有結合させることができる。
【0066】
本発明において有用なオピオイド化合物は、一般的に、約1500Da(ダルトン)未満、およびなおより典型的には、約1000Da未満の分子量を有する。オピオイド化合物の例示的分子量として、約950Da未満;約900Da未満;約850Da未満;約800Da未満;約750Da未満;約700Da未満;約650Da未満;約600Da未満;約550Da未満;約500Da未満;約450Da未満;約400Da未満;約350Da未満;および約300Da未満の分子量が挙げられる。
【0067】
本発明において使用されるオピオイド化合物は、キラルの場合、ラセミ混合物、もしくは光学活性形態、例えば、単一の光学活性エナンチオマーであってもよく、または任意の組み合わせもしくは比率のエナンチオマー(即ち、スケールミック混合物)であってもよい。加えて、オピオイド化合物は、1つ以上の幾何異性体を所有してもよい。幾何異性体に関して、組成物は、単一の幾何異性体、または2つ以上の幾何異性体の混合物を含んでなり得る。本発明に使用するためのオピオイド化合物は、その慣習的な活性形態であり得るか、またはある程度の改変を所有してもよい。例えば、オピオイド化合物は、水溶性オリゴマーの共有結合の前もしくは後に、それに結合させたターゲティング剤、タグ、またはトランスポーターを有してもよい。あるいは、オピオイド化合物は、リン脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンもしくは「DSPE」、ジパルミトイルジホスファチジルエタノールアミンもしくは「DPPE」など)または小さな脂肪酸のようなそれに結合させた親油性部分を所有してもよい。しかし、場合によっては、オピオイド化合物は、親油性部分への結合を含まないことが好ましい。
【0068】
水溶性オリゴマーに結合するためのオピオイドアゴニストは、オリゴマーへの共有結合に適切な遊離のヒドロキシル、カルボキシル、チオ、アミノ基など(即ち、「ハンドル」)を所有する。加えて、オピオイドアゴニストは、反応基の導入によって、好ましくは、その既存の官能基の1つを、オリゴマーとオピオイド化合物との間の安定な共有結合の形成に適切な官能基へ変換することによって、改変することができる。
【0069】
水溶性オリゴマー
従って、各オリゴマーは、次のものからなる群から選択される3つまでの異なるモノマータイプからなる:アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド;オレフィン性アルコール、例えば、ビニルアルコール、1−プロペノールまたは2−プロペノール;ビニルピロリドン;ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはヒドロキシアルキルメタクリレートであって、ここで、アルキルは、好ましくは、メチルである;α−ヒドロキシ酸、例えば、乳酸またはグリコール酸;ホスファゼン、オキサゾリン、アミノ酸、炭水化物、例えば、単糖類、糖類またはマンニトール;およびN−アクリロイルモルホリン。好適なモノマータイプとして、アルキレンオキシド、オレフィン性アルコール、ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはメタクリレート、N−アクリロイルモルホリン、およびα−ヒドロキシ酸が挙げられる。好ましくは、各オリゴマーは、独立して、この基から選択される2つのモノマータイプのコオリゴマーであるか、または、より好ましくは、この基から選択される1つのモノマータイプのホモオリゴマーである。
【0070】
コオリゴマーにおける2つのモノマータイプは、同じモノマータイプ、例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのような2つのアルキレンオキシドであってもよい。好ましくは、オリゴマーは、エチレンオキシドのホモオリゴマーである。通常、必ずしも必要ではないが、オピオイド化合物に共有結合していないオリゴマーの末端(または複数の末端)は、キャッピングされて非反応性にされる。あるいは、末端は、反応基を含んでもよい。末端が反応基である場合、反応基は、最終的なオリゴマーの形成条件下で、もしくはオリゴマーのオピオイド化合物への共有結合中に非反応性になるように、または必要に応じて、保護されるように、選択される。1つの一般的な末端官能基は、特に、オリゴエチレンオキシドに対して、ヒドロキシルまたは−OHである。
【0071】
水溶性オリゴマー(例えば、本明細書において提供される構造における「POLY」)は、異なる多くのジオメトリーのいずれかを有することができる。例えば、それは、線状、分岐状、またはフォーク状であり得る。最も典型的に、水溶性オリゴマーは、線状であるか、または分岐しており、例えば、1つの分岐点を有する。本明細書における考察の多くが、例示的なオリゴマーとしてポリ(エチレンオキシド)に集中しているが、本明細書に示す考察および構造は、上記の水溶性オリゴマーのいずれをも包含するように容易に拡張することができる。
【0072】
リンカー部分を除く水溶性オリゴマーの分子量は、一般的に、比較的低い。例えば、水溶性オリゴマーの分子量は、典型的に、約2200ダルトン未満であり、そしてより典型的には、約1500ダルトン以下である。所定の他の実施形態では、水溶性オリゴマーの分子量は、800ダルトン未満であってもよい。
【0073】
所定の実施形態では、水溶性オリゴマーの分子量の例示的値として、約500ダルトン以下、または約420ダルトン以下、または約370ダルトン以下、または約370ダルトン以下、または約325ダルトン以下、約280ダルトン以下、約235ダルトン以下、または約200ダルトン以下、約175ダルトン以下、または約150ダルトン以下、または約135ダルトン以下、約90ダルトン以下、または約60ダルトン以下、またはなお約45ダルトン以下が挙げられる。
【0074】
他の実施形態では、リンカー部分を除く水溶性オリゴマーの分子量の例示的値として:約1500ダルトン未満;約1450ダルトン未満;約1400ダルトン未満;約1350ダルトン未満;約1300ダルトン未満;約1250ダルトン未満;約1200ダルトン未満;約1150ダルトン未満;約1100ダルトン未満;約1050ダルトン未満;約1000ダルトン未満;約950ダルトン未満;約900ダルトン未満;約850ダルトン未満;約800ダルトン未満;約750ダルトン未満;約700ダルトン未満;約650ダルトン未満;約600ダルトン未満;約550ダルトン未満;約500ダルトン未満;約450ダルトン未満;約400ダルトン未満;および約350ダルトン未満が挙げられる;但し、各場合とも約250ダルトンを超える。
【0075】
所定の他の実施形態では、オピオイドは、オリゴマーに結合するのではなく、水溶性ポリマー、即ち、50を超える反復サブユニットを有する部分に共有結合する。例えば、リンカー部分を除く水溶性ポリマーの分子量は、約80,000ダルトン未満;約70,000ダルトン未満;約60,000ダルトン未満;約50,000ダルトン未満;約40,000ダルトン未満;約30,000ダルトン未満;約20,000ダルトン未満;約10,000ダルトン未満;約8,000ダルトン未満;約6,000ダルトン未満;約4,000ダルトン未満;約3,000ダルトン未満;および約2,000ダルトン未満であってもよい;但し、各場合とも約250ダルトンを超える。
【0076】
所定の実施形態では、水溶性オリゴマー(リンカーを除く)の分子量の例示的な範囲として:約45〜約225ダルトン;約45〜約175ダルトン;約45〜約135ダルトン;約45〜約90ダルトン;約90〜約225ダルトン;約90〜約175ダルトン;約90〜約135ダルトン;約135〜225ダルトン未満;および約175〜約225ダルトンが挙げられる。
【0077】
他の代替実施形態では、水溶性オリゴマー(リンカーを除く)の分子量の例示的な範囲として:約250〜約1500ダルトン;約250〜約1200ダルトン;約250〜約800ダルトン;約250〜約500ダルトン;約250〜約400ダルトン;約250〜約500ダルトン;約250〜約1000ダルトン;および約250〜約500ダルトンが挙げられる。
【0078】
水溶性ポリマー結合オピオイドに関連する他の実施形態では、水溶性ポリマー(リンカーを除く)の分子量の例示的な範囲として:約2,000〜約80,000ダルトン;約2,000〜約70,000ダルトン;約2,000〜約60,000ダルトン;約2,000〜約50,000ダルトン;約2,000〜約40,000ダルトン;約2,000〜約30,000ダルトン;約2,000〜約20,000ダルトン;約2,000〜約10,000ダルトン;約2,000〜約8,000ダルトン;約2,000〜約6,000ダルトン;約2,000〜約4,000ダルトン;約2,000〜約3,000ダルトン;約10,000〜約80,000ダルトン;約10,000〜約60,000ダルトン;約10,000〜約40,000ダルトン;約30,000〜約80,000ダルトン;約30,000〜約60,000ダルトン;約40,000〜約80,000ダルトン;および約60,000〜約80,000ダルトンが挙げられる。
【0079】
水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、約1〜約1825の間(1および1825を包含する)であってもよく、この範囲内のすべての整数値を含む。
【0080】
好ましくは、いくつかの実施形態では、水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、次の包含範囲のうちの1つ以上に当てはまる:1〜5の間(即ち、1、2、3、4、および5から選択される);1〜4の間(即ち、1、2、3、または4であり得る);1〜3の間(即ち、1、2、または3から選択される);1〜2の間(即ち、1または2であり得る);2〜5の間(即ち、2、3、4、および5から選択され得る);2〜4の間(即ち、2、3、および4から選択される);2〜3の間(即ち、2または3のいずれかである);3〜5の間(即ち、3、4または5のいずれかである);3〜4の間(即ち、3または4である);ならびに4〜5の間(即ち、4または5である)。特定の場合において、オリゴマー中の連続するモノマーの数(および対応するコンジュゲート)は、1、2、3、4、または5から選択される。それ故、例えば、水溶性オリゴマーがCH3−(OCH2CH2)n−を含む場合、「n」は、整数であり、1、2、3、4、または5であり得る。
【0081】
好ましくは、他の実施形態では、水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、次の包含範囲のうちの1つ以上に当てはまる:6〜30の間(即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30から選択される);6〜25の間(即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25から選択される);6〜20の間(即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択される);6〜15の間(6、7、8、9、10、11、12、13、14、15から選択される);6〜10の間(即ち、6、7、8、9、および10から選択される);10〜25の間(即ち、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25から選択される);ならびに15〜20の間(即ち、15、16、17、18、19、および20から選択される)。ある場合において、オリゴマー中の連続するモノマーの数(および対応するコンジュゲート)は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25のうちの1つである。それ故、例えば、水溶性オリゴマーがCH3−(OCH2CH2)n−を含む場合、「n」は、整数であり、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25であり得る。
【0082】
所定の他の実施形態では、水溶性オリゴマー中のモノマーの数は、次の包含範囲のうちの1つ以上に当てはまる:35〜1825の間;100〜1800の間;200〜1600の間;400〜1400の間;600〜1200の間;800〜1000の間;35〜1000の間;35〜600の間;35〜400の間;35〜200の間;35〜100の間;1000〜1825の間;1200〜1825の間;1400〜1825の間;および1600〜1825の間。
【0083】
水溶性オリゴマーが1、2、3、4、または5のモノマーを有する場合、これらの値は、それぞれ、約75、119、163、207、および251ダルトンの分子量を有するメトキシ末端キャップ化オリゴ(エチレンオキシド)に対応する。オリゴマーが6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のモノマーを有する場合、これらの値は、それぞれ、約295、339、383、427、471、515、559、603、647、および691ダルトンの分子量を有するメトキシ末端キャップ化オリゴ(エチレンオキシド)に対応する。
【0084】
(オピオイドアゴニスト上へオリゴマーを効果的に「成長させる」ために、1つ以上のモノマーを段階的に付加することとは対照的に)水溶性オリゴマーが、オピオイドアゴニストに結合させる場合、水溶性オリゴマーの活性型を含有する組成物は、単分散されることが好ましい。しかし、それらの場合では、二峰性の組成物を用いる場合、組成物は、モノマーの上記の数のうちのいずれか2つを中心とする二峰性分布を所有する。理想的には、二峰性分布の各ピークの多分散指数、Mw/Mnは、1.01以下であり、およびさらにより好ましくは、1.001以下であり、およびさらにより好ましくは、1.0005以下である。最も好ましくは、各ピークは、1.0000のMW/Mn値を所有する。例えば、二峰性リゴマーは、モノマーサブユニットの次の例示的な組み合わせのいずれか1つを有してもよい:1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8、1−9、1−10など;2−3、2−4、2−5、2−6、2−7、2−8、2−9、2−10など;3−4、3−5、3−6、3−7、3−8、3−9、3−10など;4−5、4−6、4−7、4−8、4−9、4−10など;5−6、5−7、5−8、5−9、5−10など;6−7、6−8、6−9、6−10など;7−8、7−9、7−10など;および8−9、8−10など。
【0085】
場合によっては、水溶性オリゴマーの活性型を含有する組成物は、三峰性またはなお四峰性でもあり、先に記載のようなある範囲のモノマー単位を所有する。オリゴマーの良好に定義された混合物を所有するオリゴマー組成物(即ち、二峰性、三峰性、四峰性などである)は、オリゴマーの所望のプロファイル(モノマーの数だけが異なる2つのオリゴマーの混合物は二峰性であり;モノマーの数だけが異なる3つのオリゴマーの混合物は三峰性であり;モノマーの数だけが異なる4つのオリゴマーの混合物は四峰性である)を得るように、精製された単分散オリゴマーを混合することによって調製することができるか、あるいは、所望および定義された分子量範囲のオリゴマーの混合物を得るように、「センターカット」を回収することによって、多分散オリゴマーのカラムクロマトグラフィーから得ることができる。
【0086】
水溶性オリゴマーは、好ましくは、単分子または単分散である組成物から得るのが好ましい。即ち、組成物中のオリゴマーは、分子量の分布ではなく、同じ別個の分子量値を所有する。いくつかの単分散オリゴマーは、Sigma−Aldrichから入手可能なもののように、商業的供給源から購入することができるか、あるいは、Sigma−Aldrichのような市販の出発物質から直接調製することができる。水溶性オリゴマーは、Chen and Baker,J.Org.Chem.6870−6873(1999)、国際公開第02/098949号パンフレット、および米国特許出願公開第2005/0136031号明細書に記載されているように調製することができる。
【0087】
スペーサー/リンカー部分
存在する場合、スペーサー部分(これを介して、水溶性オリゴマーはオピオイドアゴニストに結合される)は、単結合、酸素原子もしくは硫黄原子のような単一の原子、2個の原子、または多くの原子であってもよい。特に、「X」は、OPとPOLYとの間の共有結合を表してもよく、あるいは、それは、OPおよび/またはPOLY単独上には存在しない化学部分を表してもよい。スペーサー部分は、必ずしもその必要はないが、典型的に、事実上線状である。所定の実施形態では、スペーサー部分、「X」は、好ましくは、加水分解的に安定であり、そして好ましくはまた、酵素的に安定である。他の実施形態では、スペーサー部分、「X」は、好ましくは、生理学的に切断可能であり、即ち、加水分解的に切断可能であるかまたは酵素的に分解可能である。好ましくは、スペーサー部分「X」は、約12個未満の原子、および好ましくは、約10個未満の原子、およびさらにより好ましくは、約8個未満の原子、およびさらにより好ましくは、約5個未満の原子の鎖長を有するものであり、ここで、長さは、置換基を数に入れない、単一鎖内の原子の数を意味する。例えば、このRオリゴマー−NH−(C=O)−NH−R’OPのような尿素連結は、3個の原子(−NH−C(O)−NH−)の鎖長を有するものと見なされる。選択された実施形態では、スペーサー部分の連結は、さらなるスペーサー基を含まない。
【0088】
場合によっては、スペーサー部分「X」は、エーテル、アミド、ウレタン、アミン、チオエーテル、尿素、または炭素−炭素結合を含んでなる。官能基は、典型的に、連結を形成するために使用される。以下にさらに説明するように、スペーサー部分はまた、それほど好ましくはないが、スペーサー基を含んでなる(またはそれに隣接するか、もしくは側面にある)こともある。
【0089】
より具体的には、選択された実施形態では、スペーサー部分、Xは、次のもののいずれであってもよい:「−」(即ち、共有結合、安定であっても、または分解性であってもよく、オピオイドアゴニストの残基と水溶性オリゴマーとの間にある)、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−CH2−C(O)O−、−CH2−OC(O)−、−C(O)O−CH2−、−OC(O)−CH2−、C(O)−NH、NH−C(O)−NH、O−C(O)−NH、−C(S)−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−O−CH2−、−CH2−O−、−O−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−、−C(O)−NH−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−、−NH−C(O)−CH2−、−CH2−NH−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−、−NH−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2、−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−CH2、−C(O)−NH−CH2−、−C(O)−NH−CH2−CH2−、−O−C(O)−NH−CH2−、−O−C(O)−NH−CH2−CH2−、−NH−CH2−、−NH−CH2−CH2−、−CH2−NH−CH2−、−CH2−CH2−NH−CH2−、−C(O)−CH2−、−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−CH2−CH2−、−CH2−CH2−C(O)−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−、−CH2−CH2−CH2−C(O)−NH−CH2−CH2−NH−C(O)−CH2−、二価のシクロアルキル基、−N(R6)−、ここで、R6は、H、またはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリールおよび置換アリールからなる群から選択される有機ラジカルである。
【0090】
しかし、本発明の目的のために、一群の原子は、それがオリゴマーセグメントに直接隣接している場合、スペーサー部分とはみなされず、そしてその一群の原子は、その群がオリゴマー鎖の単なる伸長を表すように、オリゴマーのモノマーと同じとされる。
【0091】
コンジュゲーション
水溶性オリゴマーとオピオイド化合物との間の連結「X」は、典型的に、オリゴマーの末端上の官能基(またはオピオイドアゴニスト上でオリゴマーを「成長させる」ことが所望される場合、1つ以上のモノマー)と、オピオイドアゴニスト内の対応する官能基との反応によって形成される。例えば、オリゴマー上のアミノ基を、アミド連結を生成するように、オピオイド化合物上のカルボン酸もしくは活性化カルボン酸誘導体と反応させてもよく、またはその逆でもよい。あるいは、オリゴマー上のアミンとオピオイド化合物上の活性化カルボネート(例えば、スクシンイミジルもしくはベンゾトリアジルカルボネート)、またはその逆の反応は、カルバメート連結を形成する。オリゴマー上のアミンとオピオイド化合物上のイソシアネート(R−N=C=O)、またはその逆の反応は、尿素連結(R−NH−(C=O)−NH−R’)を形成する。さらに、オリゴマー上のアルコール(アルコキシド)基と、オピオイド化合物内のハロゲン化アルキル、もしくはハライド基、またはその逆の反応は、エーテル連結を形成する。なおもう1つの結合アプローチでは、アルデヒド機能を有するオピオイド化合物を、還元的アミノ化によってオリゴマーアミノ基に結合させ、オリゴマーとオピオイド化合物との間の第二級アミン連結の形成を生じさせる。
【0092】
特に好適な水溶性オリゴマーは、アルデヒド官能基を有するオリゴマーである。これに関して、オリゴマーは、次の構造を有する:CH3O−(CH2−CH2−O)n−(CH2)p−C(O)H[式中、(n)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10のうちの1つであり、そして(p)は、1、2、3、4、5、6および7のうちの1つである]。好適な(n)値として、1、2、3、4、7、8、9、および10が挙げられ、そして好適な(p)値として、2、3および4が挙げられる。加えて、−C(O)H部分に対する炭素原子αは、場合により、アルキルで置換することができる。
【0093】
典型的に、官能基を有さない水溶性オリゴマーの末端は、キャッピングされて、非反応性にされる。オリゴマーがコンジュゲートの形成を目的とする以外に、末端にさらなる官能基を含む場合、その基は、連結「X」の形成条件下で非反応性であるか、または連結「X」の形成中に保護されるように、選択される。
【0094】
上記のように、水溶性オリゴマーは、コンジュゲーションの前に、少なくとも1つの官能基を含む。官能基は、典型的に、オピオイド化合物内に含有されるか、もしくはオピオイド化合物に導入される反応基に依存して、オピオイド化合物への共有結合のための求電子または求核基を含んでなる。オリゴマーまたはオピオイド化合物のいずれかに存在し得る求核基の例として、ヒドロキシル、アミン、ヒドラジン(−NHNH2)、ヒドラジド(−C(O)NHNH2)、およびチオールが挙げられる。好適な求核剤として、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、およびチオール、好ましくは、アミンが挙げられる。オリゴマーへの共有結合のためのほとんどのオピオイド化合物は、遊離のヒドロキシル、アミノ、チオ、アルデヒド、ケトン、またはカルボキシル基を所有する。
【0095】
オリゴマーまたはオピオイド化合物のいずれかに存在し得る求電子官能基の例として、カルボン酸、カルボキシルエステル、特に、イミドエステル、オルトエステル、カルボネート、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、エポキシ、スルホネート、チオスルホネート、シラン、アルコキシシラン、およびハロシランが挙げられる。これらの基のさらなる具体例として、スクシンイミジルエステルまたはカルボネート、イミダゾイルエステルまたはカルボネート、ベンゾトリアゾールエステルまたはカルボネート、ビニルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルピリジン、ピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、およびトレシレート(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)が挙げられる。
【0096】
また、チオン、チオン水和物、チオケタール、2−チアゾリジンなどのようなこれらの基のうちのいくらかの硫黄アナログ、ならびに上記の部分のいずれかの水和物または保護された誘導体(例えば、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール、チオアセタール)も挙げられる。
【0097】
カルボン酸の「活性化誘導体」は、一般的に、非誘導体化カルボン酸より極めて容易に求核剤と反応するカルボン酸誘導体を指す。活性化カルボン酸として、例えば、酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)、無水物、カルボネートおよびエステルが挙げられる。そのようなエステルとして、一般形が−(CO)O−N[(CO)−]2であるイミドエステル;例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルまたはN−ヒドロキシフタルイミジルエステルが挙げられる。また、イミダゾリルエステルおよびベンゾトリアゾールエステルもまた好適である。共同所有の米国特許第5,672,662号明細書に記載の活性化プロピオン酸またはブタン酸エステルが特に好適である。これらは、−(CH2)2−3C(=O)O−Qの形態の基を含み、ここで、Qは、好ましくは、N−スクシンイミド、N−スルホスクシンイミド、N−フタルイミド、N−グルタルイミド、N−テトラヒドロフタルイミド、N−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、ベンゾトリアゾール、7−アザベンゾトリアゾール、およびイミダゾールから選択される。
【0098】
他の好適な求電子基として、スクシンイミジルカルボネート、マレイミド、ベンゾトリアゾールカルボネート、グリシジルエーテル、イミダゾイルカルボネート、p−ニトロフェニルカルボネート、アクリレート、トレシレート、アルデヒド、およびオルトピリジルジスルフィドが挙げられる。
【0099】
これらの求電子基は、求核剤、例えば、ヒドロキシ、チオ、またはアミノ基との反応に供されて、さまざまな結合型を生成する。求電子官能基のいくらかは、チオールのような求核基を添加して、例えば、チオエーテル結合を形成することができる求電子二重結合を含む。これらの基として、マレイミド、ビニルスルホン、ビニルピリジン、アクリレート、メタクリレート、およびアクリルアミドが挙げられる。他の基は、求核剤によって置き換えることができる脱離基を含んでなり、これらには、クロロエチルスルホン、ピリジルジスルフィド(切断可能なS−S結合を含む)、ヨードアセトアミド、メシレート、トシレート、チオスルホネート、およびトレシレートが含まれる。エポキシドは、求核剤による開環によって反応して、例えば、エーテルまたはアミン結合を形成する。オリゴマーおよびオピオイド化合物上に上記のような相補的な反応基に関与する反応を利用して、本発明のコンジュゲートを調製する。
【0100】
本発明の所定の実施形態では、加水分解的に安定な連結を形成し易い反応が好ましい。例えば、オルトエステル、スクシンイミジルエステル、イミダゾリルエステル、およびベンゾトリアゾールエステルを含むカルボン酸およびその活性化誘導体は、上記のタイプの求核剤と反応して、それぞれ、エステル、チオエステル、およびアミドを形成するが、それらのうちアミドが最も加水分解的に安定である。スクシンイミジル、イミダゾリル、およびベンゾトリアゾールカルボネートを含むカルボネートは、アミノ基と反応して、カルバメートを形成する。イソシアネート(R−N=C=O)は、ヒドロキシルまたはアミノ基と反応して、それぞれ、カルバメート(RNH−C(O)−OR’)または尿素(RNH−C(O)−NHR’)連結を形成する。アルデヒド、ケトン、グリオキサール、ジオン、およびそれらの水和物またはアルコール付加物(即ち、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、およびケタール)は、好ましくは、アミンと反応し、続いて、得られるイミンを還元して、所望であれば、アミン連結を提供する(還元的アミノ化)。
【0101】
本発明の他の実施形態では、生理学的に切断可能な連結を形成し易い反応が好ましい。放出可能な連結は、必ずしもその必要はないが、オピオイド化合物に結合した水溶性オリゴマー(および/または任意のスペーサー部分もしくはリンカー)のいずれのフラグメントも放出することなく、インビボで(およびいくつかの場合、インビトロで)オピオイド化合物から脱離される水溶性オリゴマー(および任意のスペーサー部分)を生じ得る。例示的な放出可能な連結として、炭酸塩、カルボン酸エステル、リン酸エステル、チオールエステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、所定のカルバミン酸塩、およびオルトエステルが挙げられる。そのような連結は、当該技術分において一般に用いられるカップリング方法を使用するオピオイド化合物および/またはポリマー性試薬の反応によって、容易に形成することができる。加水分解可能な連結は、しばしば、適切に活性化されたオリゴマーと、オピオイド化合物内に含有される改変されていない官能基との反応によって、容易に形成される。
【0102】
場合によっては、オピオイドアゴニストは、コンジュゲーションに適した官能基を有していなくてもよい。この場合、「本来の」オピオイドアゴニストが所望される官能基を有するように、それを改変することが可能である。例えば、オピオイドアゴニストはアミド基を有するが、アミン基が所望される場合、Hofmann転位、Curtius転位(一旦、アミドがアジドに変換される)またはLossen転位(一旦、アミドがヒドロキサミドに変換され、続いて、トリエン(tolyene)−2−塩化スルホニル/塩基により処理される)によって、アミド基をアミン基に改変することが可能である。
【0103】
カルボキシル基を有するオピオイドアゴニスト(ここで、カルボキシル基を有するオピオイドアゴニストは、アミノ末端化オリゴマー性エチレングリコールに結合される)のコンジュゲートを調製して、オピオイドアゴニストをオリゴマーに共有結合させるアミド基を有するコンジュゲートを提供することが可能である。これは、例えば、無水の有機溶媒中で(ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは「DCC」のような)カップリング試薬の存在下で、カルボキシル基を有するオピオイドアゴニストを、アミノ末端化オリゴマー性エチレングリコールに結合させることによって、実施することができる。
【0104】
さらに、ヒドロキシル基を有するオピオイドアゴニスト(ここで、ヒドロキシル基を有するオピオイドアゴニストは、オリゴマー性エチレングリコールハロゲン化物に結合される)のコンジュゲートを調製して、エーテル(−O−)連結オピオイド化合物コンジュゲートをもたらすことが可能である。これは、例えば、水素化ナトリウムを使用して、ヒドロキシル基を脱プロトン化し、続いて、ハライド末端化オリゴマー性エチレングリコールと反応させることによって、実施することができる。
【0105】
もう1つの実施例では、最初にケトン基を還元して、対応するヒドロキシル基を形成することによって、ケトン基を有するオピオイドアゴニストのコンジュゲートを調製することが可能である。その後、その段階でヒドロキシル基を有するオピオイドアゴニストを、本明細書に記載のように結合させることができる。
【0106】
なお別の場合、アミン基を有するオピオイドアゴニストのコンジュゲートを調整することが可能である。1つのアプローチでは、アミン基を有するオピオイドアゴニストおよびアルデヒドを有するオリゴマーを、適切な緩衝液に溶解し、その後、適切な還元剤(例えば、NaCNBH3)を添加する。還元後、結果として、アミン基含有オピオイドアゴニストのアミン基とアルデヒドを有するオリゴマーのカルボニル炭素との間に、アミン連結が形成される。
【0107】
アミン基を有するオピオイドアゴニストのコンジュゲートを調製するためのもう1つのアプローチでは、典型的に、カップリング試薬(例えば、DCC)の存在下で、カルボン酸を有するオリゴマーとアミン基を有するオピオイドアゴニストとが組み合わされる。結果として、アミン基含有オピオイドアゴニストのアミン基とカルボン酸を有するオリゴマーのカルボニルとの間に、アミド連結が形成される。
【0108】
血液脳関門横断
本発明の所定の実施形態では、Xは、好ましくは、安定なリンカーである。本発明に従って、安定な連結を介して、所定のオピオイド化合物が、小さな水溶性オリゴマーに結合した一方、血液脳関門を横断する能力を保持し、これは、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、低減したBBB横断速度で認められることが見出された。特定の理論に束縛されるつもりはないが、BBB膜横断速度の低減は、非コンジュゲートオピオイド化合物に対する分子の固有のBBB透過特性における変化の一次関数であると考えられる。さらに、任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、そのようなオピオイドコンジュゲートは、BBBの緩徐な横断のため、低い常習性を所有し、非コンジュゲートオピオイドアゴニストおよび根本的な依存性陶酔に関連する迅速なピーク濃度が回避されることが推定される。さらに、本発明の化合物は、インビボでのオピオイドの変更された組織分布または末梢のオピオイド受容体における活性の低減のため、非コンジュゲートオピオイドと比べて、改善された副作用プロファイルを示し得る。
【0109】
それ故、本発明のこれらの実施形態に従って、コンジュゲートがBBBを横断することが可能であれば、オピオイド化合物、リンカー、および水溶性オリゴマーのいずれの組み合わせを使用してもよい。好ましくは、コンジュゲートは、非コンジュゲートオピオイドアゴニストと比べて、低減した速度でBBBを横断する。好適な実施態様では、水溶性オリゴマーはPEG部分である。典型的に、PEG部分は、1〜3(即ち、1、2、または3)個のポリエチレングリコール単位からなる小さなモノマー性PEGである。他の実施形態では、PEG部分は、4または5個のポリエチレングリコール単位であってもよい。
【0110】
血液脳関門(「BBB」)に関して、この関門は、薬物の血液から脳への輸送を制限する。この関門は、タイトジャンクションによって接続される独特の内皮細胞の連続層からなる。BBBの全表面積の95%超を含んでなる脳毛細血管は、ほとんどの溶質および薬物の中枢神経系への主要な進入経路である。
【0111】
当業者によって理解されるように、分子サイズ、親油性、およびPgP相互作用は、所与の分子の固有のBBB透過特性に影響を及ぼす主要なパラメータに属する。即ち、これらの因子は、組み合わせて採用する場合、所与の分子がBBBを介して通過するかどうか、そしてそうである場合、どれだけの速度で通過するかを制御する。
【0112】
BBB内の小さなポアサイズのため、分子サイズは、所与の分子がBBBを通過するかどうかの決定に重要な役割を果たす。極めて大きな分子、例えば、5,000ダルトンの分子量を有する分子は、BBBを横断せず、小さな分子の方が、BBBを透過する可能性が高い。しかし、他の因子もまた、BBB横断において役割を果たす。アンチピリンおよびアテノロールは、両方とも、小分子薬物であり;アンチピリンは容易にBBBを通過するが、アテノロールの通過は、極めて制限されるか、または効果的には存在していない。アンチピリンは、高BBB透過の産業的標準であり;アテノロールは、BBBの低透過の産業的標準である。例えば、Summerfield et al.,J Pharmacol Exp Ther322:205−213(2007)を参照のこと。従って、本発明に従えば、Xが安定なリンカーである場合、1〜3個のポリエチレングリコール単位を有するオピオイドコンジュゲートは、一般的に、BBBを横断すると予想され得る。所定の環境では、固有のBBB透過特性が全体として適切である場合、4または5個のポリエチレングリコール単位を有する特定のオピオイドコンジュゲートもまた、BBBを横断し得る。
【0113】
親油性もまた、BBB透過の因子である。親油性は、logP(分配係数)または場合によっては、logD(分布係数)として表現することができる。所与の分子のlogP(またはlogD)については、当業者が容易に評価することができる。logPの値は、負の数(より親水性の分子)であっても、または正の数(より疎水性の分子)であってもよい。logPについて言及する場合、本明細書において使用する「より負」は、logPの尺度上で、正から負のlogPの方向に移動すること(例えば、2.0のlogPは4.0のlogP「より負」であり、−2.0のlogPは−1.0のlogP「より負」である)。負のlogPを有する分子(親水性分子)は、一般的に、BBBを透過しない。所定の実施形態では、本発明のオピオイドコンジュゲートは、約0〜約4.0の間のlogPを有する。好ましくは、本発明のオピオイドコンジュゲートは、約1.0〜約3.5の間のlogPを有する。所定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、約4.0、約3.5、約3.0、約2.5、約2.0、約1.5、約1.0、約0.5、もしくは約0のlogPを有するか、またはそれらは、約0〜約3.5、約0〜約3.0、約0〜約2.0、約0〜約1.0、約1.0〜約4.0、約1.0〜約3.0、約1.0〜約2.0、約2.0〜約4.0、約2.0〜約3.5、約2.0〜約3.0、約3.0〜約4.0、もしくは約3.0〜約3.5の範囲のlogPを有してもよい。
【0114】
BBBに対する透過性はまた、P−糖タンパク質、またはPgP、BBBにおいて高度に発現されるATP依存的流出トランスポーターに依存する。当業者は、インビトロ方法を使用して、化合物がPgPの基質であるかどうかを容易に決定することができる。インビトロでPgPの基質である化合物は、おそらく、インビボでBBBを透過しない。対照的に、インビトロで評価されるように、PgPの不良な基質は、化合物が、本明細書において考察され、そして当業者に公知である他の基準を満たせば、一般的に、BBBのインビボでの透過性を示す。例えば、Tsuji,NeuroRx 2:54−62(2005)およびRubin and Staddon,Annu.Rev.Neurosci.22:11−28(1999)を参照のこと。
【0115】
所定の実施形態では、水溶性オリゴマーを、オピオイドコンジュゲートの所望される薬物動態プロファイルに従って選択してもよい。言い換えれば、オピオイド化合物の水溶性オリゴマーへのコンジュゲーションにより、BBB膜横断速度の低減が生じるが、しかし、低減速度は、使用するオリゴマーのサイズに依存して変動し得る。一般的に、BBB横断速度の低減を最小にすることを所望する場合、より小さなオリゴマーを使用してもよく;BBB横断速度のより広範な低減を所望する場合、より大きなオリゴマーを使用してもよい。所定の実施形態では、異なる2つ以上のオピオイドコンジュゲートの組み合わせを同時に投与してもよく、ここで、各コンジュゲートは、異なるサイズの水溶性オリゴマー部分を有し、そしてここで、各コンジュゲートのBBB横断の速度は、異なるオリゴマーサイズのため、異なる。この様式では、オピオイド化合物のBBB横断の速度および期間は、多様な薬物動態プロファイルを伴う複数のコンジュゲートの同時投与を介して、特異的に制御することができる。
【0116】
血液脳関門横断脳の程度が容易に分からない化合物については、インサイチュでのラット脳灌流(「RBP」)モデルのような適切な動物モデルを使用して、そのような能力を決定することができる。簡単に説明すると、RBP技術は、頸動脈のカニューレ挿入と、それに続く、制御された条件下での化合物溶液による灌流と、それに続く、脈管空間に残留する化合物を取り出すための洗浄段階とに関与する。(そのような分析は、例えば、Absorption Systems,Exton,PAのような契約研究機関で行うことができる)。より具体的には、RBPモデルにおいて、カニューレを左頸動脈に配置し、そして側枝を結紮する。分析物を含有する生理緩衝液(典型的には、5マイクロモル濃度レベルであるが、必ずしもこれに限らない)を、シングルパス灌流実験において約10mL/分の流速で灌流する。30秒後、灌流を停止し、そしてさらに30秒間、化合物を含まない緩衝液で脳脈管内容物を洗い流す。次いで、脳組織を取り出し、そしてタンデム質量分析検出(LC/MS/MS)による液体クロマトグラフを介して、化合物濃度を分析する。あるいは、血液脳関門透過性は、分子における極性原子(通常、酸素、窒素および結合水素)の表面の寄与の合計として定義される、化合物の分子極性表面積(「PSA」)の計算に基づいて、推定することができる。PSAは、血液脳関門輸送のような化合物輸送特性との相関関係があることが示されている。化合物のPSAを決定するための方法は、例えば、Ertl,P.,et al.,J.Med.Chem.2000,43,3714−3717;およびKelder,J.,et al.,Pharm.Res.1999,16,1514−1519において見出すことができる。
【0117】
それらの実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、オピオイドコンジュゲートの分子量は、好ましくは、2000ダルトン未満、およびより好ましくは、1000ダルトン未満である。他の実施形態では、コンジュゲートの分子量は、950ダルトン未満、900ダルトン未満、850ダルトン未満、800ダルトン未満、750ダルトン未満、700ダルトン未満、650ダルトン未満、600ダルトン未満、550ダルトン未満、500ダルトン未満、450ダルトン未満、または400ダルトン未満である。
【0118】
所定の実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、X−POLY(即ち、存在する場合、リンカーと組み合わされた水溶性オリゴマー)の分子量は、好ましくは、2000ダルトン未満である。いくつかの実施形態では、オピオイドコンジュゲートの分子量は、好ましくは、1000ダルトン未満である。他の実施形態では、コンジュゲートの分子量は、950ダルトン未満、900ダルトン未満、850ダルトン未満、800ダルトン未満、750ダルトン未満、700ダルトン未満、650ダルトン未満、600ダルトン未満、550ダルトン未満、500ダルトン未満、450ダルトン未満、400ダルトン未満、350ダルトン未満、300ダルトン未満、250ダルトン未満、200ダルトン未満、150ダルトン未満、100ダルトン未満、または50ダルトン未満である。
【0119】
Xが安定なリンカーである場合、コンジュゲート(即ち、OP−X−POLY)は、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物(即ち、OP)ほど疎水性ではない。言い換えれば、コンジュゲートのlogPは、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のlogPより負である。一実施形態では、コンジュゲートのlogPは、非コンジュゲートオピオイド化合物のlogPより約0.5単位負である。他の実施形態では、コンジュゲートのlogPは、非コンジュゲートオピオイド化合物より約4.0単位負、約3.5単位負、約3.0単位負、約2.5単位負、約2.0単位負、約1.5単位負、約1.0単位負、約0.9単位負、約0.8単位負、約0.7単位負、約0.6単位負、約0.4単位負、約0.3単位負、約0.2単位負または約0.1単位負である。所定の実施形態では、コンジュゲートのlogPは、非コンジュゲートオピオイド化合物より約0.1単位〜約4.0単位負、約0.1単位〜約3.5単位負、約0.1単位〜約3.0単位負、約0.1単位〜約2.5単位負、約0.1単位〜約2.0単位負、約0.1単位〜約1.5単位負、約0.1単位〜約1.0単位負、約0.1単位〜約0.5単位負、約0.5単位〜約4.0単位負、約0.5単位〜約3.5単位負、約0.5単位〜約3.0単位負、約0.5単位〜約2.5単位負、約0.5単位〜約2.0単位負、約0.5単位〜約1.5単位負、約0.5単位〜約1.0単位負、約1.0単位〜約4.0単位負、約1.0単位〜約3.5単位負、約1.0単位〜約3.0単位負、約1.0単位〜約2.5単位負、約1.0単位〜約2.0単位負、約1.0単位〜約1.5単位負、約1.5単位〜約4.0単位負、約1.5単位〜約3.5単位負、約1.5単位〜約3.0単位負、約1.5単位〜約2.5単位負、約1.5単位〜約2.0単位負、約2.0単位〜約4.0単位負、約2.0単位〜約3.5単位負、約2.0単位〜約3.0単位負、約2.0単位〜約2.5単位負、約2.5単位〜約4.0単位負、約2.5単位〜約3.5単位負、約2.5単位〜約3.0単位負、約3.0単位〜約4.0単位負、約3.0単位〜約3.5単位負、または約3.5単位〜約4.0単位負である。いくつかの特定の実施形態では、コンジュゲートのlogPは、非コンジュゲートオピオイド化合物のlogPとおなじであるか、またはそれより正である。
【0120】
受容体結合性および他の特徴
Xが安定なリンカーである場合、本発明のコンジュゲートは、好ましくは、その標的受容体に対する適切な親和性、拡大解釈すると、脳内での適切な濃度および有効性を保持する。好ましくは、水溶性オリゴマーは、コンジュゲートしたオピオイドが、少なくとも部分的に、非コンジュゲートオピオイド化合物が結合する受容体と同じ受容体に結合するような様式で、オピオイドにコンジュゲートされる。オピオイドアゴニストまたはオピオイドアゴニストと水溶性オリゴマーとのコンジュゲートのいずれが、μ、κ、またはδオピオイド受容体アゴニストのような活性を有するかを決定するために、例えば、そのような化合物を試験することが可能である。例えば、組み換えヒトμ、κ、またはδオピオイド受容体を異種発現するCHO細胞における放射性リガンド結合アッセイを使用することができる。簡単に説明すると、細胞を24ウェルプレートにプレート化し、そしてアッセイ緩衝液で洗浄する。競合結合アッセイは、適切な濃度の放射性リガンドの存在下で、漸増濃度のオピオイドコンジュゲートと共にインキュベートした全付着細胞上で行われる。[3H]ナロキソン、[3H]ジプレノルフィンおよび[3H]DPDPEを、それぞれ、μ、κおよびδ受容体の競合放射性リガンドとして使用する。インキュベーション後、細胞を洗浄し、NaOHで可溶化し、そしてシンチレーションカウンターを使用して、結合放射能を測定する。
【0121】
所定の実施形態では、本発明のコンジュゲートのKi値は、0.1〜900nMの範囲内、好ましくは、0.1〜300nMの範囲内、およびより好ましくは、0.1〜50nMの範囲内に当てはまる。好適な実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、OPのその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物(即ち、OP−X−POLYのOP)の親和性の消失が認められず、そしていくつかの実施形態では、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性は、OPのその標的受容体に対する親和性より大きくあり得る。好適な実施形態では、Xが安定なリンカーである場合、コンジュゲートしたオピオイド化合物(即ち、OP−X−POLYのOP)の親和性は、OPのその標的受容体の親和性と比べて、低減が最小限であり、そしていくつかの場合、なお、親和性の増加を示してもよく、または親和性の変化が認められなくてもよい。好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の約2倍未満の消失が認められる。所定の実施形態では、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の約5倍未満の消失、約10倍未満の消失、約20倍未満の消失、約30倍未満の消失、約40倍未満の消失、約50倍未満の消失、約60倍未満の消失、約70倍未満の消失、約80倍未満の消失、約90倍未満の消失、または約100倍未満の消失が認められる。
【0122】
Xが安定なリンカーである所定の他の実施形態では、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の低減は、20%未満である。いくつかの実施形態では、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性における低減は、10%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、または95%未満である。
【0123】
Xが安定なリンカーである所定の実施形態では、コンジュゲートのBBB横断速度、または透過性は、OP単独の横断速度より小さい。好ましくは、横断の速度は、OP単独の速度の少なくとも約50%未満である。所定の他の実施形態では、OP単独の横断の速度と比べて、コンジュゲートのBBB横断速度において少なくとも約10%の低減、少なくとも約15%の低減、少なくとも約20%の低減、少なくとも約25%の低減、少なくとも約30%の低減、少なくとも約35%の低減、少なくとも約40%の低減、少なくとも約45%の低減、少なくとも約55%の低減、少なくとも約60%の低減、少なくとも約65%の低減、少なくとも約70%の低減、少なくとも約75%の低減、少なくとも約80%の低減、少なくとも約85%の低減、少なくとも約90%の低減、少なくとも約95%の低減、または少なくとも約99%の低減が認められる。他の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、OP単独の横断の速度と比べて、コンジュゲートのBBB横断速度における10〜99%の低減、10〜50%の低減、50〜99%の低減、50〜60%の低減、60〜70%の低減、70〜80%の低減、80〜90%の低減、または90〜99%の低減を示し得る。
【0124】
本発明のコンジュゲートは、Xが安定なリンカーである場合、OP単独の横断の速度と比べて、BBB横断速度において1〜100倍の低減を示し得る。所定の実施形態では、非コンジュゲートオピオイド化合物のBBB横断速度と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物のBBB横断速度における少なくとも約2倍の消失、少なくとも約5倍の消失、少なくとも約10倍の消失、少なくとも約20倍の消失、少なくとも約30倍の消失、少なくとも約40倍の消失、少なくとも約50倍の消失、少なくとも約60倍の消失、少なくとも約70倍の消失、少なくとも約80倍の消失、少なくとも約90倍の消失、または少なくとも約100倍の消失が認められ得る。
【0125】
本発明のコンジュゲートのBBB横断の速度はまた、Xが安定なリンカーである場合、アンチピリン(高透過性の標準)および/またはアテノロール(低透過性の標準)のBBB横断速度と比べて、検討してもよい。アンチピリンおよび/またはアテノロールのBBB横断速度と比べた本発明のコンジュゲートのBBB横断速度については、同じ条件下の同じアッセイにおいて速度を評価したことが示されることが当業者によって理解されよう。それ故、所定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、アンチピリンのBBB横断速度と比べて、BBB横断速度の少なくとも約2倍小さい、少なくとも約5倍小さい、少なくとも約10倍小さい、少なくとも約20倍小さい、少なくとも約30倍小さい、少なくとも約40倍小さい、少なくとも約50倍小さい、少なくとも約60倍小さい、少なくとも約70倍小さい、少なくとも約80倍小さい、少なくとも約90倍小さい、または少なくとも約100倍小さい速度を示し得る。他の実施形態では、本発明のコンジュゲート、本発明のコンジュゲートは、アテノロールのBBB横断速度と比べて、BBB横断速度の少なくとも約2倍を超える、少なくとも約5倍を超える、少なくとも約10倍を超える、少なくとも約20倍を超える、少なくとも約30倍を超える、少なくとも約40倍を超える、少なくとも約50倍を超える、少なくとも約60倍を超える、少なくとも約70倍を超える、少なくとも約80倍を超える、少なくとも約90倍を超える、または少なくとも約100倍を超える速度を示し得る。
【0126】
Xが安定なリンカーである場合、コンジュゲート(即ち、OP−X−POLY)は、非コンジュゲートオピオイド化合物(即ち、OP)と比べて、オピオイドアゴニスト生体活性のすべてまたはいくつかを保持し得る。好ましくは、コンジュゲートは、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、すべてのオピオイドアゴニスト生体活性を保持するか、またはいくつかの環境において、非コンジュゲートオピオイド化合物よりなお活性である。好ましくは、本発明のコンジュゲートは、非コンジュゲートオピオイド化合物比べて、生体活性における約2倍未満の低減、約5倍未満の低減、約10倍未満の低減、約20倍未満の低減、約30倍未満の低減、約40倍未満の低減、約50倍未満の低減、約60倍未満の低減、約70倍未満の低減、約80倍未満の低減、約90倍未満の低減、または約100倍未満の低減を示す。いくつかの実施形態では、コンジュゲートしたオピオイド化合物は、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、オピオイドアゴニスト生体活性の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を保持する。
【0127】
本明細書において列挙した値は、例示であり、限定されないこと、ならびにオピオイドアゴニストと水溶性オリゴマーとの所定のコンジュゲートは、本明細書において列挙した範囲以外に当てはまってもよく、なお、本発明の趣旨および範囲内にとどまることが、当業者によって理解されよう。コンジュゲートは、当業者にとって日常的な実験により調製および試験することができる。特に、安定な連結を介して水溶性オリゴマーに結合したオピオイドアゴニストは、上記のように、血液脳関門の透過について試験することができる。それ故、当業者は、コンジュゲートがBBBを横断することが可能であるかどうかを容易に確かめることができる。
【0128】
本発明のこれらの実施形態のコンジュゲートのすべての範囲について説明してきたと考えられるが、最適な大きさのオリゴマーについては、以下の通りに決定することができる。
【0129】
まず、単分散または二峰性水溶性オリゴマーから得られたオリゴマーを、安定な連結を介して、オピオイドアゴニストにコンジュゲートする。次に、インビトロでの活性の保持を分析する。次いで、コンジュゲートが血液脳関門を横断する能力を、適切なモデルを使用して決定し、そして改変されていない親オピオイド化合物の能力と比較する。結果が良好である場合、即ち、例えば、横断の速度が適切な程度まで低減する場合、コンジュゲートの生体活性について、さらに評価する。好ましくは、本発明の化合物は、親オピオイド化合物と比べて、有意な程度の生体活性を維持する、即ち、親オピオイド化合物の生体活性の約30%を超えて維持するか、またはさらにより好ましくは、親オピオイド化合物の生体活性の約50%を超えて維持する。好ましくは、オピオイドアゴニストは、経口で生物学的に利用可能である。
【0130】
同じモノマータイプであるが、異なる数のサブユニットを有するオリゴマーを使用して、上記の工程を1回以上反復し、そして結果を比較する。
【0131】
次いで、血液脳関門を横断する能力が、非コンジュゲートオピオイドアゴニストと比較して適切に低減する各コンジュゲートについて、その経口バイオアベイラビリティを評価する。これらの結果に基づき、即ち、多様なサイズのオリゴマーのコンジュゲートと、オピオイドアゴニスト内の所与の位置または局在における所与のオピオイドアゴニストとの比較に基づき、生体膜横断の適切な低下、経口バイオアベイラビリティ、および生体活性の間の最適な均衡を有するコンジュゲートの提供において最も有効なオリゴマーのサイズを決定することが可能である。オリゴマーのサイズが小さいため、そのようなスクリーニングが可能であり、そして得られるコンジュゲートの特性を有効に整えることが可能である。オリゴマーのサイズを少しずつ、漸進的に変化させ、そして実験計画を利用することによって、生体膜横断速度の低下、生体活性、および経口バイオアベイラビリティの良好な均衡を有するコンジュゲートを効果的に同定することができる。場合によっては、本明細書に記載のオリゴマーの結合は、オピオイドアゴニストの経口バイオアベイラビリティを実際に増加するのに有効である。
【0132】
例えば、日常的な実験を使用する当業者は、最初に、異なる重量および官能基を伴う一連のオリゴマーを調製し、次いで、患者にコンジュゲートを投与し、そして定期的に血液および/または尿採取を行うことにより必要なクリアランスプロファイルを入手することによって、経口バイオアベイラビリティを改善するのに最も適切な分子サイズおよび連結を決定することができる。一旦、試験した各コンジュゲートの一連のクリアランスプロファイルが得られたら、適切なコンジュゲートを同定することができる。
【0133】
また、動物モデル(げっ歯類およびイヌ)を使用して、経口薬物輸送を研究することができる。加えて、非インビボ方法として、げっ歯類反転腸切除組織およびCaco−2細胞単層組織−培養モデルが挙げられる。これらのモデルは、経口薬物バイオアベイラビリティを推定するのに有用である。
【0134】
本発明の所定の他の実施形態では、Xは、好ましくは、生理学的に切断可能なリンカーである。本発明に従って、切断可能な連結を介して小さな水溶性オリゴマーに結合した所定のオピオイド化合物は、それらのコンジュゲート形態ではBBB横断することができず、従って、水溶性オリゴマーからのオピオイド化合物の生理学的切断が緩徐であるため、正味のBBB膜横断速度が低減することが示されることが見出された。特に、Xを、非コンジュゲートオピオイド化合物の所望される薬物動態プロファイルに従って選択してもよい。言い換えれば、オピオイド化合物の水溶性オリゴマーへのコンジュゲーションにより、BBB膜横断速度の低減が生じるが、しかし、低減速度は、使用するリンカーに依存して変動し得る。BBB横断速度の低減を最小限にすることを所望する場合、Xは、迅速に分解されたリンカーであってもよく、BBB横断速度の広範な低減を所望する場合、Xは、より緩徐に分解されたリンカーであってもよい。所定の実施形態では、異なる2つ以上のオピオイドコンジュゲートの組み合わせを同時に投与してもよく、ここで、各コンジュゲートは、異なるリンカーXを有し、そしてここで、各Xの分解の速度が異なる。言い換えれば、各異なるコンジュゲートについて、オピオイド化合物は、異なる速度で水溶性オリゴマーから切断され、異なる正味のBBB膜横断速度が生じる。オピオイド結合の2つ以上の部位を有する多官能性水溶性オリゴマーの使用を介して、類似の効果を達成することもでき、各オピオイドは、多様な分解速度を有するリンカーを介して水溶性オリゴマーに連結されている。この様式では、オピオイド化合物のBBB横断の速度および期間は、多様な薬物動態プロファイルを伴う複数のコンジュゲートの同時投与を介して、特異的に制御することができる。
【0135】
任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、そのようなオピオイドコンジュゲートは、BBBの正味の緩徐な横断のため(コンジュゲートの投与後の生理学的切断が緩徐であるため)、低い常習性を所有し、非コンジュゲートオピオイドアゴニストおよび根本的な依存性陶酔に関連する迅速なピーク濃度が回避されることが推定される。さらに、任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、緩徐な切断速度のために、末梢を循環する非コンジュゲートオピオイドの濃度が、一般的に、極めて低くなるように、本発明のオピオイドコンジュゲートは、血漿中を循環し、そして使用する特異的に切断可能なリンカー(ならびに酵素的に分解可能なリンカーでは、酵素濃度および親和性)に依存する速度で、インビボで切断されると考えられる。一旦、切断が生じると、非コンジュゲートオピオイドは、脳に移動して、BBBを横断し得る;切断を介する非コンジュゲートオピオイドの緩徐な放出により、非コンジュゲートオピオイドの脳への正味の緩徐な送達が生じる。さらに、本発明の化合物は、インビボでのオピオイドの変更された組織分布および末梢での変更された受容体相互作用のため、非コンジュゲートオピオイドと比べて、改善された副作用プロファイルを示す。
【0136】
さらに、本発明のこれらの実施形態に従って、コンジュゲートがBBBを横断することができないか、またはコンジュゲートのごく小さな機能、好ましくは、投与されたコンジュゲートの5%未満がBBBを横断することが可能であるならば、オピオイド化合物、リンカー、および水溶性オリゴマーのいずれの組み合わせを使用してもよい。好ましくは、コンジュゲートは、BBBを横断することができない。より好ましくは、分子のオピオイド部分は、コンジュゲートの生理学的切断のため、非コンジュゲートオピオイドアゴニストと比べて、正味の低減した速度で、BBBを横断する。好適な実施態様では、水溶性オリゴマーはPEG部分である。これらの実施形態の一部では、PEG部分は、少なくとも6個のポリエチレングリコール単位、好ましくは、6〜35個のポリエチレングリコール単位からなる小さなモノマー性PEGである。場合によっては、PEG部分は、6〜1825個のポリエチレングリコール単位であってもよい。
【0137】
Xが生理学的に切断可能なリンカーである場合、コンジュゲート(即ち、OP−X−POLY)生体活性であっても、または生体活性でなくてもよい。好ましくは、コンジュゲートは、生体活性ではない。それにもかかわらず、投与後にコンジュゲートからオピオイド化合物が放出されるため、インビボでそれを必要とする哺乳動物被験体に投与する場合、そのようなコンジュゲートは有効である。好ましくは、本発明のコンジュゲートは、非コンジュゲートオピオイド化合物比べて、生体活性における約10倍を超える低減、約20倍を超える低減、約30倍を超える低減、約40倍を超える低減、約50倍を超える低減、約60倍を超える低減、約70倍を超える低減、約80倍を超える低減、約90倍を超える低減、約95倍を超える低減、約97倍を超える低減、または約100倍を超える低減を示す。いくつかの実施形態では、コンジュゲートしたオピオイド化合物は、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、オピオイドアゴニスト生体活性の1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満または90%未満を保持する。
【0138】
Xが生理学的に切断可能なリンカーである他の実施形態では、OP−X−POLYのOP標的受容体に対する親和性は、OPのその標的受容体に対する親和性と比べて、実質的に低減している。好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の少なくとも約2倍の消失が認められる。所定の実施形態では、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の少なくとも約5倍の消失、少なくとも約10倍の消失、少なくとも約20倍の消失、少なくとも約30倍の消失、少なくとも約40倍の消失、少なくとも約50倍の消失、少なくとも約60倍の消失、少なくとも約70倍の消失、少なくとも約80倍の消失、少なくとも約90倍の消失、または少なくとも約100倍の消失が認められる。
【0139】
Xが生理学的に切断可能なリンカーである所定の他の実施形態では、好ましくは、非コンジュゲートオピオイド化合物のその標的受容体に対する親和性と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性の低減は、少なくとも20%である。いくつかの実施形態では、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、コンジュゲートしたオピオイド化合物の親和性における低減は、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%である。
【0140】
先に記載のように、Xが生理学的に切断可能なリンカーである所定の実施形態では、コンジュゲートは生体活性ではない。そのようなコンジュゲートはプロドラッグを代表し、ここで、投与される化合物は、非活性であり、そして生理学的プロセスを介する投与後に活性にされる。それ故、所定の実施形態では、本発明は、放出可能な部分への共有結合を介して可逆的に結合したオピオイドアゴニストを含んでなるプロドラッグを提供し、ここで、患者に投与される所与のモル量のプロドラッグは、哺乳動物の中枢神経系において、オピオイドアゴニストがプロドラッグの部分として投与されなかった場合の等モル量のオピオイドアゴニストの蓄積速度およびCmaxより小さい蓄積速度およびCmaxを示す。放出可能な部分は、水溶性オリゴマー、好ましくは、ポリエチレングリコールオリゴマーであってもよい。アゴニストは、μ、κ、またはδオピオイドアゴニストであってもよい。
【0141】
本発明の所定の他の実施形態では、Xは、好ましくは、生理学的に切断可能なリンカーであり、そしてPOLYは、1〜5(即ち、1、2、3、4、または5)個のポリエチレングリコール単位、好ましくは、1〜3(即ち、1、2、または3)個のポリエチレングリコール単位からなる小さなモノマー性PEGである。そのような化合物は、血液脳関門を横断するのに十分小さいが、但しこれは、非コンジュゲートオピオイド化合物と比べて、低減した膜横断速度で認められ、そしてそれ自体は、先に考察されたように、低い常習性を所有する。好ましくは、Xは、リンカーの切断、およびBBBの横断後のオピオイド化合物の放出を提供するように、選択される。あるいは、リンカーの切断は、BBBの横断の前、および後に生じ得;この様式では、オピオイド化合物のBBB横断の速度および期間を特異的に制御することができる。
【0142】
医薬組成物
さらなる実施形態では、本発明は、本明細書において開示するOP−X−POLY化合物、および薬学的に許容できる賦形剤またはキャリアを含んでなる組成物を提供する。一般的に、コンジュゲート自体は、固体形態(例えば、沈殿物)となり、固体または液体のいずれかの形態となり得る適切な医薬品賦形剤と組み合わせることができる。
【0143】
例示的な賦形剤として、炭水化物、無機塩、抗微生物剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝液、酸、塩基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
炭水化物、例えば、糖、誘導体化糖、例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーが、賦形剤として存在し得る。具体的な炭水化物賦形剤として、例えば:単糖類、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース;二糖類、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース;多糖類、例えば、ラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン;およびアルジトール類、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールが挙げられる。
【0145】
賦形剤としてはまた、無機塩または緩衝液、例えば、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせを挙げることもできる。
【0146】
調製物はまた、微生物の増殖を防止または抑止するための抗微生物剤を含んでもよい。本発明に適切な抗微生物剤の非制限的例として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0147】
製剤中には、抗酸化剤を存在させることもできる。抗酸化剤は、酸化を防止するために使用され、それによって、コンジュゲート、または製剤の他の成分の劣化を防止する。本発明に使用するのに適切な抗酸化剤として、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、プロピルガレート、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0148】
界面活性剤が、賦形剤として存在してもよい。例示的な界面活性剤として:ポリソルベート、例えば、「Tween20」および「Tween80」ならびにプルロニック、例えば、F68およびF88(両方とも、BASF,Mount Olive,New Jerseyから入手可能である);ソルビタンエステル;脂質、例えば、リン脂質、例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(但し、好ましくは、リポソーム形態ではない)、脂肪酸および脂肪エステル;ステロイド、例えば、コレステロール;ならびにキレート剤、例えば、EDTA、亜鉛および他のそのような適切なカチオンが挙げられる。
【0149】
薬学的に許容できる酸または塩基が、製剤中に賦形剤として存在してもよい。使用することができる酸の非制限的例として、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。適切な塩基の例として、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
組成物中のコンジュゲートの量は、多くの因子に依存して変動するが、最適には、組成物が単位用量容器内に貯蔵される場合、治療有効用量である。治療有効用量は、どの量が臨床的に所望されるエンドポイントを生じるかを決定するために、漸増量のコンジュゲートを反復投与することによって、実験的に決定することができる。
【0151】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性および組成物の特定の必要性に依存して、変動する。典型的に、任意の個々の賦形剤の最適な量は、日常的な実験を介して、即ち、(少量から多量の範囲の)賦形剤の種々の量を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメータを調べ、次いで、重大な有害作用を伴わずに最適な性能が達成される範囲を決定することによって、決定される。
【0152】
しかし、一般的に、賦形剤は、約1%〜約99重量%、好ましくは、約5%〜98重量%、より好ましくは、約15〜95重量%の賦形剤の量で存在し、30重量%未満の濃度が最も好ましい。
【0153】
他の賦形剤および医薬組成物に関する一般的教示内容と共に、これらの上記の医薬品賦形剤については、“Remington:The Science & Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams & Williams,(1995)、the“Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)、およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0154】
医薬組成物には、取り得る形態がいくらでもあり、本発明は、これに関して限定されない。例示的な製剤は、最も好ましくは、経口投与に適切な形態、例えば、錠剤、カプレット、カプセル、ゲルキャップ、トローチ、分散体、懸濁液、溶液、エリキシル、シロップ、ロゼンジ、経皮パッチ、スプレー、坐剤、および粉末である。
【0155】
経口用の剤形は、経口的に活性であるコンジュゲートに好適であり、そして錠剤、カプレット、カプセル、ゲルキャップ、懸濁液、溶液、エリキシル、およびシロップが挙げられ、そしてまた、場合により、カプセル化される複数の顆粒、ビーズ、粉末またはペレットを含んでなり得る。そのような剤形は、医薬製剤の分野において公知であり、そして関連する文書に記載されている従来の方法を使用して、調製される。
【0156】
錠剤およびカプレットは、例えば、標準的な錠剤処理手順および装置を使用して、製造することができる。本明細書に記載のコンジュゲートを含有する錠剤またはカプレットを調製する場合、直接圧縮および造粒技術が好適である。コンジュゲートに加えて、錠剤およびカプレットは、一般的に、不活性の薬学的に許容できるキャリア材料、例えば、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、着色剤などを含有する。結合剤は、粘着の性質を錠剤に付与し、それ故、錠剤がそのままの状態を保持することを確実にするために使用される。適切な結合剤材料として、デンプン(トウモロコシデンプンおよびアルファ化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロースおよびラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、蝋、ならびに天然および合成のガム、例えば、アカシアアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含む)、ならびにVeegumが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤は、錠剤製造を容易にし、粉末の流動を促進し、そして圧力が軽減された場合の粒子のキャッピング(即ち、粒子破砕)を防止するために使用される。有用な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸である。崩壊剤は、錠剤の崩壊を容易にするために使用され、そして一般的に、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ガム、または架橋ポリマーである。充填剤として、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および結晶セルロースのような材料、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールのような可溶性材料が挙げられる。安定剤、当該技術分野において公知であり、例えば、酸化的反応を含む薬物分解反応を阻害または妨害するために使用される。
【0157】
カプセルはまた、好適な経口用剤形でもあり、その場合、コンジュゲート含有組成物は、液体またはゲル(例えば、ゲルキャップの場合)あるいは固体(顆粒、ビーズ、粉末もしくはペレットのような粒状物を含む)の形態でカプセル化することができる。適切なカプセルとして、ハードおよびソフトカプセルが挙げられ、そして一般的に、ゼラチン、デンプン、またはセルロース材料から作製される。ツーピースハードゼラチンカプセルは、好ましくは、ゼラチンの帯などで封止される。
【0158】
実質的に可能形態の非経口処方物(典型的に、粉末またはケーキの形態であり得る凍結乾燥または沈殿物として)、ならびに典型的に、液体であり、そして乾燥形態の非経口処方物を再構成する工程を必要とする注射用に調製された処方物が挙げられる。注射前に固体組成物を再構成するのに適切な希釈剤の例として、注射用静菌水、水中5%デキストロース、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0159】
場合によって、非経口投与を目的とした組成物は、非水溶液、懸濁液、またはエマルジョンの形態をとることができ、典型的に、それぞれ無菌的である。非水溶媒またはビヒクルの例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびコーン油のような植物油、ゼラチン、ならびに注射可能なオレイン酸エチルのような有機エステルがある。
【0160】
本明細書に記載の非経口処方物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤のような補助剤を含有することができる。処方物は、滅菌剤、細菌を保持するフィルターを介するろ過、照射、または加熱を組み入れることによって、滅菌される。
【0161】
コンジュゲートはまた、従来の経皮パッチまたは他の経皮送達システムを使用して、皮膚を介して投与することもでき、ここで、コンジュゲートは、皮膚に固定される薬物送達デバイスとして役立つ積層構造内に含有される。そのような構造では、コンジュゲートは、上部支持層の下側にある層、または「貯蔵器」に含有される。積層構造は、単一の貯蔵器を含有することができるか、または複数の貯蔵器を含有することができる。
【0162】
コンジュゲートはまた、直腸投与のための坐剤に処方することができる。坐剤に関して、コンジュゲートは、コカバター(カカオ脂)、ポリエチレングリコール、グリセリンゼラチン、脂肪酸、およびそれらの組み合わせのような(例えば、室温では固体のままであるが、体温では軟化、融解または溶解する賦形剤)坐剤基剤材料と混合される。坐剤は、例えば、次の工程を実施する(必ずしも示された順序ではない)ことによって、調製することができる:坐剤基剤材料を融解させて、融解物を形成する工程;コンジュゲートを(坐剤基剤材料の融解前または後のいずれかに)組み入れる工程;融解物を鋳型に注ぐ工程;融解物を冷却して(例えば、融解物を含有する鋳型を室温環境に置く)、それによって、坐剤を形成する工程;および鋳型から坐剤を取り出す工程。
【0163】
投与
本発明はまた、本明細書において提供されるコンジュゲートを、コンジュゲートによる治療に応答する病態を患う患者に投与するための方法を提供する。方法は、一般的に、経口的に、治療有効量のコンジュゲート(好ましくは、製剤の一部として提供される)を投与する工程を含んでなる。また、肺、鼻、口内、直腸、舌下、経皮、および非経口のような他の投与様式も考慮される。本明細書において使用する用語「非経口」は、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、髄腔内、および筋肉内注射、ならびに点滴注射を含む。
【0164】
非経口投与が利用される場合、約500〜30Kダルトンの範囲の分子量を伴う(例えば、約500、1000、2000、2500、3000、5000、7500、10000、15000、20000、25000、30000以上もの分子量を有する)先に記載のものより若干大きいオリゴマー(例えば、ポリマー)を用いることが必要であり得る。
【0165】
投与方法を使用して、特定のコンジュゲートの投与によって、治すかまたは予防することができる任意の病態を治療してもよい。当業者は、どう病態を特定の複合体が効果的に治療することができるかを理解している。投与しようとする実際の用量は、被験体の年齢、重量、および全般的状態、ならびに治療される病態の重症度、医療従事者の判断、および投与されるコンジュゲートに基づいて変動する。治療有効量は、当業者に公知であり、ならびに/あるいは関連する参考文書および文献に記載されている。一般的に、治療有効量は、約0.001mg〜1000mg範囲にあり、好ましくは、0.01mg/日〜750mg/日の用量、およびより好ましくは、0.10mg/日〜500mg/日の用量にある。
【0166】
任意の所与のコンジュゲート(さらに、好ましくは、製剤の部分として提供される)の単位用量は、臨床家の判断、患者の要求などに依存する多様な投薬スケジュールで投与することができる。特定の投薬スケジュールは、当業者に公知であり、または日常的方法を使用して、実験的に決定することができる。例示的な投薬スケジュールとして、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一旦、臨床的なエンドポイントが達成されると、組成物の投薬は停止される。
【0167】
本発明のコンジュゲートを投与する1つの利点は、オピオイドアゴニストの脳への送達速度の低減を達成し、それ故、非コンジュゲートオピオイドアゴニストおよび根本的な依存性陶酔に関連する迅速なピーク濃度が回避される。さらに、オピオイドアゴニスト分子の共有結合修飾に基づいて、本発明のコンジュゲートは、インビボで、低減したBBB横断速度を提供することが意図される所定の代替的送達に関連する迅速に作用するオピオイド化合物の回収および乱用の可能性を作り出す物理的タンパリングの危険性に供されない。従って、本発明の化合物は、低い依存性、抗乱用特性を所有する。コンジュゲートの所望される薬物動態特性は、オリゴマー分子のサイズ、連結、およびオピオイド化合物への共有結合の位置を選択することによって、モジュレートしてもよい。当業者は、本明細書の教示内容に基づいて、オリゴマーの理想的な分子サイズを決定することができる。
【0168】
使用
それ故、本発明は、本明細書において上記で開示した式OP−X−POLYを有する化合物の有効量を投与する工程を含んでなる、オピオイド療法を必要とする患者を治療する方法を提供する。好ましくは、本発明は、化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイド化合物の乱用の可能性を低減する方法をさらに提供する。好ましくは、コンジュゲートは、本明細書に記載の式OP−X−POLYのものである。
【0169】
さらなる実施形態では、本発明は、オピオイドアゴニストを小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイドアゴニストの常習性を低減する方法を提供する。好ましくは、コンジュゲートは、本明細書に記載の式OP−X−POLYのものである。
【0170】
もう1つの実施形態では、オピオイド化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイド化合物の血液脳関門を横断する速度を低減するが、実質的に排除しない方法が提供される。好ましくは、コンジュゲートは、本明細書に記載の式OP−X−POLYのものである。
【0171】
本発明について、ある種の好適かつ特定の実施形態と共同して説明してきたが、上記の説明ならびに以下の実施例は、例示することを意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点、および変更は、本発明に関係する当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0172】
別途明記しない限り、添付の実施例において言及したすべての化学試薬は、市販のものである。PEG−mersの調製については、例えば、米国特許出願公開第2005/0136031号明細書に記載されている。
【0173】
実施例1
logP値の決定
Log PおよびLog Dは、より高いまたはさらなる正の値が、さらに疎水性の化合物を表すが、より低いまたはさらなる負の値がさらに親水性の化合物を表すような、化合物の親油性の測定値を提供する。試験化合物のLogP(オクタノール:イソプロパノール/水分配係数)を、Sirius GLpKa装置(Sirius Analytical Instruments,Ltd,East Sussex,UK)による電位差滴定法を使用して、測定する。DMSO中0.1M試験化合物溶液の50μLのアリコートを、滴定バイアルに置く。アッセイは、25℃で行う。計量した容積のオクタノールをサンプルに自動的に添加し、その後、装置は、計量した容積のイソプロパノール水を添加する。0.5MのHClを自動的に添加することによって、溶液のpHを2に調整する。12のpH値に到達するまで、0.5MのKOHの滴定を、自動的に実施する。第2および第3の滴定を実施するために、さらなるオクタノール容積を、滴定バイアルに自動的に送達する。3回の滴定のデータの組を、RefinementProにおいて組み合わせて、Multisetを作成する。様々なpH値におけるLog(D)を、ソフトウェアによって自動的に計算する。
【0174】
LogPおよびLogD値を、膜を横切る能力のようなその親油性に関連する分子の特性を推定または評価するのに使用する。
【0175】
実施例2
PgPの輸送アッセイ
P−糖タンパク質、PgPは、身体の様々な細胞において発現され、そして血液脳関門で高度に発現される流出トランスポーターである。PgPの基質である分子は、PgPが発現される組織への乏しい透過またはそれらの組織からの流出を示す。
【0176】
PgPの正味の輸送への寄与は、PgPを過剰発現するMDCKII細胞(MDR−MDCKII)において測定される。輸送研究のために、経上皮測定によって測定される緊密な単層が形成されるまで、MDR−MDCKIIおよびMDCKII細胞を、透過性のインサート上で増殖させる(3〜4日間)。Krebs緩衝液中の試験化合物を、10μMでMDCKII細胞の頂部側または基底側に添加し、そして37℃でインキュベートする。化合物の輸送を、次の2つの方向で測定する:親細胞およびMDRを過剰発現する細胞の両方における頂部−基底側(A−B)および基底側−頂部(B−A)。0、30、60、90、120および180分の時間に、頂部および基底側コンパートメントからアリコートを取り出す。サンプルを、LC−MS/MSによって、試験化合物について分析する。フラックスを、累積濃度対時間ポイントの直線部分の勾配として計算する。みかけの透過性を、Papp=Flux/C0.Aとして計算し、ここで、C0は、使用した試験化合物の初期濃度(10μM)であり、そしてAは、インサートの表面積である。流出比は、Papp(B−A)/Papp(A−B)の比として計算する。MDCKII−MDRI細胞における流出対親MDCKII細胞における流出の比が2を超える、即ち、流出比(MDCKII−MDRI)/流出比(MDCKII細胞)≧2である場合、PgP仲介流出機構の関与が示される。
【0177】
PgP相互作用のデータは、膜を横切る、もしくはPgPが高度に発現されるCNSのようなコンパートメントに進入する能力のようなPgPに関連する分子の特性を推定または評価するのに使用される。
【0178】
実施例3
インサイチュでのラット脳灌流
インサイチュでの灌流実験は、血液脳関門のモデルを横切る化合物の相対的透過性を測定する。オピオイドのラット脳へのインサイチュでの灌流を、Summerfield et al.,J Pharmacol Exp Ther322:205−213(2007)に記載のように実施する。
【0179】
成獣雄性Sprague Dawleyラットを研究に使用する。ラットを麻酔し、そして灌流のために、左総頚動脈に、外科的にカニューレ挿入する。試験化合物を、Krebs Ringer灌流緩衝液(pH7.4)中5〜50μMの濃度で灌流する。アテノロールおよびアンチピリンを、それぞれ、低および中等度の透過性マーカーとして含める。30秒間の灌流の終了時に、脳を取り出し、左脳半球を摘出し、そしてホモジナイズする。試験化合物を抽出し、そしてLC−MS/MSを使用して分析する。試験化合物の脳透過性を以下の通りに計算する:
P=Kin/S、
ここで、Pは、cm/sでの透過性であり、Kinは一方向伝達定数(ml/min/gram)であり、そしてSは、脳脈管空間の管腔領域である。
【0180】
インサイチュでの脳灌流実験において決定される相対的透過性は、化合物が、末梢から中枢神経系に進入する速度に関する情報を提供する。それは、水溶性オリゴマーとのコンジュケーションが、所与のオピオイド化合物のBBBの透過を遅延させる程度を特徴付け、そして比較するために使用される。
【0181】
所定の例示的なオリゴマー性PEG−オピオイドの脳透過の速度を決定するために、以下の実験を行った:
【0182】
脳透過能モルヒネ、コデイン、オキシドン(oxydone)およびそれらのそれぞれのPEGコンジュゲートを、雄性Sprague−Dawleyラットにおいて、インサイチュ脳灌流モデルを使用して、評価した。コンジュゲートの合成については、実施例10、11および12において説明する。ラットを麻酔し、そしてカニューレを左頸動脈にインプラントした。動脈分枝を結紮し、そして脳灌流前に心臓からの供給を中断した。灌流は、単一時間−ポイント法を使用して実施した。各動物を、試験化合物(10μM)およびコントロール化合物(5μMアンチピリンおよび50μMアテノロール)で同時灌流した。KrebのRinger緩衝液中の化合物を、左外頚動脈を介して、30秒間、輸注ポンプによって、動物に輸注した。30秒間の灌流後、灌流を停止し、そして頭骨から脳を直ちに取り出した。脳を半分に縦断した。各左半球を冷却したチューブに置き、ドライアイス上で冷凍し、そして分析するまで、−60℃〜−80℃で冷凍貯蔵した。
【0183】
生体分析のために、各左脳半球を融解し、秤量し、そして20%メタノール中の音波処理によってホモジナイズした。試験およびコントロール化合物の濃度を、プレバリデートされた分析方法を使用するLC−MS/MS分析によって決定した。
【0184】
試験およびコントロール化合物の脳透過の結果を、単一−ポイント灌流アッセイのための以下の式を使用する一方向脳伝達定数Kin(mL/g/min)として示す:
Kin=[Cbr/Cpf]/t、ここで:
Cbr/Cpfは、みかけの脳分布容積(mL/脳組織のg)である。
Cbrは、脳組織中の薬物の濃度(1gの脳組織あたりの薬物のpmol)である。
Cpfは、灌流液中の薬物濃度(pmol/灌流物のmL)である。
tは、正味の灌流時間(分)である。
【0185】
脳濃度値からの毛細管空間に含有される薬物を排除するために、アテノロールのみかけの脳分布容積を、各動物における薬物値から差し引いた。アテノロールの脳分布容積を補正した後、試験化合物の濃度が負の値であった場合、Kin値をゼロとして報告する。
【0186】
灌流後、アテノロール(脳に透過しない化合物)によって表される脈管空間は、20μL/脳組織のgを超えなかった。これらの結果は、灌流中に保存された血液脳関門特性を示す。モルヒネ、コデインおよびオキシコドンのKin値を、図18A〜Cおよび図19に示す。親モルヒネ、コデインおよびオキシコドン化合物のKin値は、アンチピリン(高い脳透過能を所有するポジティブコントロール)のKin値の約14%、40%および60%であった。PEGコンジュゲーションにより、コデインおよびオキシコドンコンジュゲートの脳進入速度のさらなるサイズ依存的低減が生じた。PEG−7コデインおよびPEG−7−オキシコドンの脳進入速度は、それらのそれぞれの親化合物の<1%であった。しかし、PEG−1、PEG−2モルヒネのKin値は、親モルヒネより大きく、そしてPEG−3−モルヒネの場合、親と等価であった。PEG−7−モルヒネのKin値は、親モルヒネのKin値より有意に(<4%)低かった。
【0187】
実施例4
細胞全体におけるオピオイド受容体結合アッセイ
受容体結合親和性を、化合物の固有の生体活性の測定値として使用する。オピオイドコンジュゲート(またはオピオイド単独)の受容体結合親和性を、組み換えヒトμ、δまたはκオピオイド受容体を異種発現するCHO細胞における放射性リガンド結合アッセイを使用して、測定する。細胞を、24ウェルプレートにおいて、0.2〜0.3×10−6個の細胞/ウェルの密度でプレート化し、そして50mMのTris.HClおよび5mMのMgCl2(pH7.4)を含有するアッセイ緩衝液で洗浄する。競合結合アッセイは、適切な濃度の放射性リガンドの存在下で、漸増濃度のオピオイドコンジュゲートと共にインキュベートした全付着細胞上で行われる。0.5nMの[3H]ナロキソン、0.5nMの[3H]ジプレノルフィンおよび0.5nMの[3H]DPDPEを、それぞれ、μ、κおよびδ受容体の競合放射性リガンドとして使用する。インキュベーションを、各濃度で3回測定ウェルを使用して、2時間、室温で行う。インキュベーションの終了時に、細胞を50mMのTris HCl(pH8.0)で洗浄し、NaOHで可溶化し、そしてシンチレーションカウンターを使用して、結合放射能を測定する。
【0188】
特異的結合を、50〜100×過剰の冷リガンドの存在下で、cpm結合を差し引くことによって決定する。結合データアッセイを、GraphPad Prism4.0を使用して分析し、そして用量−応答曲線からの非線形回帰によって、IC50を求める。Ki値を、次のように、飽和等温性由来のKd値を使用するCheng Prusoff式を使用して、計算する:Ki=IC50/(1+[リガンド]/Kd)。
【0189】
Ki値を、化合物の結合親和性の指標として使用し、そして他のオピオイドアゴニストの結合親和性と比較してもよい。それはまた、有効性のマーカーとして使用され、そして所与の化合物が有効な鎮痛を提供する可能性の評価を可能にする。
【0190】
実施例5
細胞全体におけるcAMP測定
フォルスコリン刺激cAMP生成の阻害を、オピオイドのインビトロ生体活性の測定として使用する。組み換えヒトμ、δまたはκオピオイド受容体のいずれか1つを異種発現するCHO細胞を、24ウェルプレートに、0.2〜0.3×10−6個の細胞/ウェルで置き、そして、PBS+1mMのIBMX(イソブチルメチルキサンチン)で洗浄する。3回測定ウェル中の細胞を、漸増濃度のオピオイドコンジュゲートと共にインキュベートし、続いて、10分間後、10μMフォルスコリンを添加する。フォルスコリンと共に10分間のインキュベーション後、細胞を溶解し、そして細胞中のcAMPを、市販の競合イムノアッセイキット(Catchpoint(登録商標)−Molecular Devices)を使用して、測定する。蛍光シグナルをcAMPの標準曲線に対して計算し、そしてデータを、cAMPのモル/106個の細胞として表す。IC50値を、各オピオイドコンジュゲートについて、非線形回帰(Graph Pad Prism)を使用する用量−応答曲線の分析によって計算し、ここで、「用量」は、使用したオピオイドコンジュゲートの濃度である。
【0191】
cAMPアッセイは、オピオイド化合物が、受容体結合時に機能的応答を誘導する能力の測定を提供するために使用され、そして化合物の鎮痛能のさらなる表示を提供する。それはまた、相対的有効性についての他のオピオイドとの比較を可能にする。
【0192】
実施例6
鎮痛のラットモデル
ホットプレートの引き込みアッセイを、オピオイドのインビトロ生体活性の測定として使用する。この実験は、熱刺激からの引き込みの潜時を、試験化合物の投与後に測定する標準的なホットプレート引き込みアッセイを使用する。化合物を動物に投与し、そして30分後、熱刺激を後肢に与える。モルヒネの存在下での後肢引き込みの潜時を、十分な鎮痛の測定として使用する一方、生理食塩水の存在下での潜時を、鎮痛のネガティブコントロールとして使用する。試験化合物のアゴニスト効果を、ネガティブコントロール(生理食塩水)と比較して、引き込むまでの時間を測定することによって、評価する。
【0193】
実施例7
依存能のサルモデル
オピオイド化合物および本発明のオピオイドコンジュゲートの依存能は、当該技術分野において公知のリスザルモデルの使用を介して、評価してもよい。Bergman and Paronis,Mol Interventions,6:273−83(2006)。
【0194】
実施例8
PEG−ナルブフィンコンジュゲートのインビボでの脳透過
PEG−ナルブフィンコンジュゲートが血液脳関門(BBB)を横断し、そしてCNSに進入する能力を、ラットにおける脳:血漿比を使用して、測定した。簡単に説明すると、ラットに、25mg/kgのナルブフィン、PEG−ナルブフィンコンジュゲートまたはアテノロールを静脈内注入した。注入の1時間後、動物を屠殺し、そして血漿および脳を回収し、そして直ちに凍結した。組織および血漿の抽出後、脳および血漿中の化合物の濃度を、LC−MS/MSを使用して測定した。脳:血漿比を、脳および血漿において測定された濃度の比として計算した。BBBを横断しないアテノロールを、脳組織の脈管濃度の測定値として使用した。
【0195】
図1は、PEG−ナルブフィンコンジュゲートの脳:血漿濃度の比を示す。ナルブフィンの脳:血漿比は、2.86:1であり、血漿コンパートメントと比較して、脳中のナルブフィンのほぼ3倍を超える濃度を示す。PEG−ナルブフィンコンジュゲートの脳:血漿比がより低いことによって証明されるように、PEGコンジュゲーションは、ナルブフィンのCNSへの進入を有意に低減した。3個のPEG単位とのコンジュゲーションは、脳:血漿比を0.23:1に低減し、脳中の6O−mPEG3−ナルブフィンの濃度が、血漿中濃度の約4倍未満であったことを示した。それらの脳:血漿比は、脈管マーカー、アテノロールとは有意には異ならなかったため、6−O−mPEG6−ナルブフィンおよび6−O−mPEG9−ナルブフィン(それぞれ、6個のPEG単位および9個のPEG単位)は、CNSから有意に排除された。
【0196】
【表1】
実施例9
mPEGn−OMs(mPEGn−O−メシレート)の調製
【0197】
40mLガラスバイアル中に、HO−CH2CH2OCH2CH2−OH(1.2ml、10mmol)およびDIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン、5.2ml、30mmol、3eq)を混合し、得られた均一な無色の混合物を、0℃まで冷却し、そしてMsCl(1.55ml、20mmol、2eq)を、シリンジを介して緩徐に、4分間、激しく撹拌しながら添加した。添加時に得られた2相混合物:底部の黄色固体および澄明な上清。氷浴を取り出し、そして反応物を、室温まで、1晩、加温した。この時点で、それを水に溶解し、CHCl3(3×50mL)で抽出し、0.1MのHCl/塩水混合物2×50mLで洗浄し、続いて、塩水50mLで洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過して、黄色液体を得、そしてエバポレートして、褐色のオイル(2.14g)を得た。1H NMRにより、生成物の正体を確認する3.3(1H NMR δ3.1(s,3H),3.3(s,3H),3.5−3.55(m,2H),3.6−3.65(m,2H),3.7−3.75(m,2H),4.3−4.35(m,2H)ppm)。
【0198】
他のすべてのPEGn−OMs(n=3、4、5、6、7および9)を、類似の様式で作製し、そして最終化合物を得、各場合とも、褐色のオイルとして単離した。質量分析およびプロトンNMRデータ(示さず)により、所望されるOMs PEG化生成物の形成を確認した。
【0199】
実施例10
mPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの調製
【化1】
【0200】
以下に、市販のモルヒネ硫酸塩水和物を使用する遊離塩基の調製について説明する (一般的手順)。
【0201】
Spectrum由来の硫酸モルヒネ(USP)(510mg)を水(70ml)に溶解した。次いで、K2CO3水溶液を使用して、溶液をpH10まで塩基性にして、白色の懸濁液を得た。白色の懸濁液にDCM(ジクロロメタン、50ml)を添加したが、固体を溶解することはできなかった。1MのHClで混合物を酸性にして、2相の澄明な溶液を得た。有機相を分離し、そして上記と同じK2CO3の溶液を使用して、水相を注意深くpH9.30にした(pHメーターでモニターした)。再度、白色の懸濁液が得られた。不均一な混合物を、DCM(5×25ml)で抽出し、そして不溶性の白色固体が、有機層および水層の両方に混入していた。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、そしてロータリーエバポレーターにより、160mgのモルヒネ遊離塩基(56%回収率)を得た。MeOHを使用して、フィルターケーキからさらなる生成物は回収されなかったが、EtOAcによる2×50mlの抽出によって、水相から別の100mgを回収して、260mg(68%)の合わせた収量を得た。
【0202】
モルヒネ遊離塩基のMEM保護
モルヒネの遊離塩基を保護基β−メトキシエトキシメチルエステル(「MEM」)で保護するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す:
【化2】
【0203】
遊離塩基モルヒネ(160mg、0.56mmol)を、20mlのアセトン/トルエン(2/1混合物)に溶解した。得られた溶液にK2CO3(209mg、1.51mmol、2.7eq)を添加し、続いて、MEMCl(96μl、0.84mmol、1.5eq)を添加し、そして得られた不均一な混合物を、1晩、室温で撹拌した。室温で5時間後、LC−MSにより、反応は完了したと思われた。モルヒネ遊離塩基の標準的な6分間の勾配稼働条件(標準で6分間、Onyx Monolyth C18カラム、50×4.6mm、水、0.1%TFA中0〜100%アセトニトリル、0.1%TFA、1.5ml/分;検出:UV254,ELSD,MS;UV254検出器に対して保持時間を表し、ELSDは約0.09分間の遅延を有し、そしてMSはUVに対して約0.04分間の遅延を有する)下での保持時間は、1.09分間;生成物の保持時間は1.54分間(標準で6分間)、主な不純物は1.79分間であった。反応混合物をエバポレートして乾燥させ、水に溶解し、EtOAcで抽出し(3×、合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そしてロータリーエバポレーターで処理して)、無色のオイルとして160mg(77%)の所望する生成物を得た。生成物の純度を、UV254により約80%と見積もった。
硫酸モルヒネの直接的なMEM保護(一般的手順)
【0204】
硫酸モルヒネを保護基β−メトキシエトキシメチルエステル(「MEM」)で保護するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。以下のスキームには、明らかには示されていないが、モルヒネは、実際には、モルヒネ硫酸塩水和物、モルヒネ.0.5H2SO4.2.5H2Oである。
【化3】
【0205】
10mlの2:1アセトン:トルエン溶媒混合物中103mgのモルヒネ硫酸水和物(0.26mmol)の懸濁液に、135mg(1mmol、3.7eq)のK2CO3を添加し、そして懸濁液を、室温で25分間、撹拌した。得られた懸濁液に、60μl(0.52mmol)のMEMClを添加し、そして混合物を室温で反応させた。1時間後(38%の名目上の変換、1.69分および2.28分においてさらなるピーク)、3時間後(40%の名目上の変換、1.72分においてさらなるピーク(M+1=493.2))、4時間半後(56%の名目上の変換、1.73分においてさらなるピーク)、および23時間後(>99%の名目上の変換、1.79分においてさらなるピーク−UV254における高さより約23%の生成物ピーク)に、サンプル採取を行った;その後、反応をMeOHでクエンチし、エバポレートし、EtOAcで抽出して、160mgの澄明なオイルを得た。
【0206】
同じ反応を、100mlの溶媒混合物中2g(5.3mmol)のモルヒネ硫酸水和物、2.2g(16mmol、3eq)のK2CO3、1.2ml(10.5mmol、2eq)のMEMClで開始して、反復した。2時間後(61%の名目上の変換、1.72分において余分なピーク(M+1=492.8))、1日後(80%の名目上の変換、1.73分において余分なピーク)、3日後(85%の名目上の変換、ごく小さな不純物、12分間の勾配稼働)、および6日後(91%変換)にサンプル採取を行った;その後、反応をクエンチし、エバポレートし、EtOAcで抽出し、40gカラム、DCM:MeOH0〜30%移動相を使用するcombi−flash上で精製した。3つのピーク(2つではない)が同定され、ここで、中央のピークを回収した、1.15g(58%収率)の淡黄色のオイル、UV254純度は約87%。
【0207】
MEM−保護モルヒネコンジュゲートを提供するためのMEM−保護モルヒネのコンジュゲーション
MEM−保護モルヒネと水溶性オリゴマーとをコンジュゲートしてMEM−保護モルヒネPEG−オリゴマーコンジュゲートを提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
【化4】
【0208】
トルエン/DMFの溶液(2:1混合物、合計で10容積)に、MEM−モルヒネ遊離塩基をチャージし、続いて、NaH(4〜6eq)をチャージし、次いで、予め調製したPEGnOMs(1.2〜1.4eq.)をチャージした。反応混合物を55〜75℃にまで加熱し、そして反応の完了がLC−MS分析によって確認されるまで(PEG鎖長に依存して、12〜40時間)、撹拌した。反応混合物を、メタノール(5容積)でクエンチし、そして反応混合物を減圧下でエバポレートして、乾燥させた。残渣をメタノール(3容積)に再溶解し、そしてCombiflashシステム(0〜40%MeOH/DCM)を使用して、クロマトグラフィーを行った。大量の生成物を含有する画分を回収し、合わせ、そしてエバポレートして乾燥させた。次いで、この材料をRP−HPLCによって精製して、黄色〜橙色のオイルとして生成物を得た。
モルヒネコンジュゲートを提供するためのMEM−保護モルヒネコンジュゲートの脱保護
【0209】
MEM−保護モルヒネコンジュゲートを脱保護して、モルヒネコンジュゲートを提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
【化5】
【0210】
DCM(8容積)に懸濁させたMEM−保護モルヒネコンジュゲートTFA塩の溶液に、6容積のジエチルエーテル中2MのHClをチャージした。反応混合物を、室温で2時間、撹拌し、次いで、低圧下でエバポレートして乾燥させた。オイル状の残渣をMeOH(8容積)に溶解し、ガラスウールを介してろ過し、次いで、低圧下でエバポレートして、粘稠な橙色〜黄色のオイルを定量的収量で得た。この方法によって作製された化合物として、次のものが挙げられる:α−6−mPEG3−O−モルヒネ(化合物A、n=3)217mgのHCl塩、純度97%(UV254では95%;ELSDでは98%);α−6−mPEG4−O−モルヒネ(化合物A、n=4)275mgのHCl塩、純度98%(UV254では97%;ELSDでは98%);α−6−mPEG5−O−モルヒネ(化合物A、n=5)177mgのHCl塩、純度95%(UV254では93%;ELSDでは98%);α−6−mPEG6−O−モルヒネ(化合物A、n=6)310mgのHCl塩、純度98%(UV254では98%;ELSDでは99%);α−6−mPEG7−O−モルヒネ(化合物A、n=7)541mgのHCl塩、純度96%(UV254では93%;ELSDでは99%);およびα−6−mPEG−O9−モルヒネ(化合物A、n=9)466mgのHCl塩、純度98%(UV254では97%;ELSDでは99%)。さらに、単一のPEGモノマーが結合したモルヒネコンジュゲート、α−6−mPEG1−O−モルヒネ(化合物A、n=1)、124mgのHCl塩、純度97%(UV254では純度95%;ELSDでは98%)、ならびにα−6−mPEG2−O−モルヒネ(化合物A、n=2)、485mgのHCl塩、純度97%(UV254では純度95%;ELSDでは98%)も同様に調製した。
【0211】
実施例11
mPEGn−O−コデインコンジュゲートの調製
【化6】
【0212】
コデインと水溶性オリゴマー(代表的なオリゴマーとしてmPEG3OMsを使用する)の活性化スルホン酸エステルとをコンジュゲートして、コデインコンジュゲートを提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
【化7】
【0213】
コデイン(30mg、0.1mmol)をトルエン/DMF(75:1)溶媒混合物に溶解し、続いて、HO−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OMs(44ml、2eq)およびNaH(鉱油中60%懸濁液、24mg、6eq)を添加した。得られた均一な黄色溶液を、45℃にまで加熱した。1時間後、反応は、11%の変換(2.71分において余分なピーク、12分間稼働)を示し、18時間後、反応は、7%の変換(3.30分において余分なピーク、12分間稼働)を示し、そして24時間後、反応は、24%の変換(複数の余分なピーク、1.11分および2.79分において最も高い2つのピーク)を示した。この時点で、さらなる16mgのNaHを添加し、そして加熱を6時間継続し、その後、さらなる16mgのNaHを添加し、続いて、66時間、加熱を継続した。その後、出発物質は残留せず、そして分析により、多くの余分なピークが示されたが、最も高い2つのピークは2.79分および3分に対応する(生成物のピークは、少なくとも7つのピークのうち2番目に高いピークである)。
【0214】
10×スケールを使用して、この合成を反復し、ここで、30mlの溶媒混合物を使用した。18時間後、分析により、71%の名目上の変換が示され、UVにおいてさらなるピークを伴った(3.17分において1つの高いピークおよび多くの小さなピーク;ここで、所望されるピークは、UVでの3.43分に対応する)。その後、80mg(2mmol)のNaHを添加し、続いて、加熱を継続した。3時間後、分析により、85%の名目上の変換が示された(いくらかの余分なピーク、3.17分において主要なピーク)。反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出して(3×、合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そしてロータリーエバポレーターで処理した)、黄色のオイルを得た(LC−MSにおいて出発物質(sm)は認められない、ELSDでは純度90%、UVでは純度50%−3.2分において主要な不純物)。粗生成物をDCMに溶解し、230〜400メッシュSiO2を充填した小さなカートリッジに適用し、乾燥し、溶媒A=DCMおよび溶媒B=MeOH、Bの勾配0〜30%を伴う4gのプレパックカラムカートリッジを介するCombi−flash上で溶出させた。分析により、対称性が不良な2つのピークが示された:小さな先行するピークおよびテールを伴うより大きなピーク。LC−MSを使用して、純粋な生成物を含有することが同定されていない画分を分析した。任意の生成物(tt番号22〜30)を含有する合わせた画分から、溶媒エバポレーション後、150mg(34%収率)の不純な生成物が得られた(UV254では3.35分においてLC−MS純粋であって、ここで、約25%は、12分間の稼働のうち主要な不純物3.11分、3.92分、4.32分、5.61分を示した)。15〜60%B、70分間、10ml/分に対応する勾配を用いるHPLC(溶媒A=水、0.1%TFA;溶媒B=アセトニトリル、0.1%TFA)による第2の精製では、隣接するピークからの分離が不良であった。2つの画分のみが不純物を含まず、そして21mgのTFA塩(純度>95%、4.7%収率)を生じた。所望される生成物を含有する画分の前および後のさらなる3つの画分(合計でさらなる6つの画分)を合わせて、TFA塩として70mgの純度約50%の生成物を得た。
【0215】
この同じアプローチを使用して、エチレンオキシド単位の数(n=4、5、6、7、および9)が異なる他のコンジュゲートを、上記のこれらのNaH条件を使用して、作製した。
【0216】
コデイン−オリゴマーコンジュゲートTFA塩のコデイン−オリゴマーHCl塩への変換
コデイン−オリゴマーTFA塩をコデイン−オリゴマーHCl塩に変換するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
【化8】
【0217】
DCM(8容積)に懸濁させたコデイン−オリゴマーコンジュゲートTFA塩の溶液に、6容積のジエチルエーテル中2MのHClをチャージした。反応混合物を、室温で2時間、撹拌し、次いで、低圧下でエバポレートして乾燥させた。オイル状の残渣をMeOH(8容積)に溶解し、ガラスウールを介してろ過し、次いで、低圧下でエバポレートして、粘稠な橙色〜黄色のオイルを定量的収量で得た。一般的手順に従って、次の化合物を合成した:α−6−mPEG3−O−コデイン(化合物B、n=3)HCl塩の235mg、純度98%;α−6−mPEG4−O−コデイン(化合物B、n=4)HCl塩の524mg、純度98%;α−6−mPEG5−O−コデイン(化合物B、n=5)HCl塩の185mg、純度98%+HCl塩の119mg、純度97%、α−6−mPEG6−O−コデイン(化合物B、n=6)HCl塩の214mg、純度97%;α−6−mPEG7−O−コデイン(化合物B、n=7)HCl塩の182mg、純度98%;α−6−mPEG9−O−コデイン(化合物B、n=9)HCl塩の221mg、純度97%;α−6−mPEG1−O−コデイン(化合物B、n=1)HCl塩の63mg、純度90%;およびα−6−mPEG2−O−コデイン(化合物B、n=2)HCl塩の178mg、純度90%。
【0218】
実施例12
mPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの調製
【化9】
【0219】
ヒドロキシコドンと水溶性オリゴマー(代表的なオリゴマーとして「mPEGnOMs」を使用する)の活性化スルホン酸エステルとをコンジュゲートして、ヒドロキシコドンコンジュゲートを提供するための一般的アプローチを、以下にスキームで示す。
【化10】
【0220】
オキシコドンのα−6−ヒドロキシコドンへの還元
−20℃で冷却した窒素下乾燥THF中オキシコドン遊離塩基の溶液に、水素化トリ−sec−ブチルホウ素カリウムの1.0MのTHF溶液を15分間、添加した。溶液を、−20℃、窒素下で1.5時間、撹拌し、次いで、水(10mL)を緩徐に添加した。反応混合物を、さらに10分間、−20℃で撹拌し、次いで、室温まで加温した。すべての溶媒を、低圧下で取り出し、そしてCH2Cl2を残留する残渣に添加した。CH2Cl2相を0.1NのHCl/NaCl水溶液で抽出し、そして合わせた0.1NのHCl溶液抽出物をCH2Cl2で洗浄し、次いで、Na2CO3を添加して、pH=8に調整した。溶液をCH2Cl2で抽出した。CH2Cl2抽出物を、無水Na2SO4上で乾燥させた。低圧下で溶媒を取り出した後、所望するα−6−HO−3−ヒドロキシコドンが得られた。
【0221】
mPEGnOMsのα−6−ヒドロキシコドンへのコンジュゲーション:トルエン/DMFの溶液(2:1混合物、合計で10容積)に、ヒドロキシコドン(先の段落において記載のように調製した)をチャージし、続いて、NaH(4eq)、次いで、mPEGnOMs(1.3e.)をチャージした。反応混合物を60〜80℃にまで加熱し、そして反応の完了がLC−MS分析によって確認されるまで(PEG鎖長に依存して、12〜40時間)、撹拌した。反応混合物を、メタノール(5容積)でクエンチし、そして反応混合物を減圧下でエバポレートして、乾燥させた。残渣をメタノール(3容積)に再溶解し、そしてCombiflash(0〜40%MeOH/DCM)を使用して、クロマトグラフィーを行った。大量の生成物を含有する画分を回収し、合わせ、そしてエバポレートして乾燥させた。次いで、この材料をRP−HPLCによって精製して、黄色〜橙色のオイルとして最終生成物を得た。
ヒドロキシコドンコンジュゲートTFA塩のヒドロキシコドンコンジュゲートHCl塩への変換
【0222】
DCM(8容積)に懸濁させたヒドロキシコドンコンジュゲートTFA塩の溶液に、6容積のジエチルエーテル中2MのHClをチャージした。反応混合物を、室温で2時間、撹拌し、次いで、低圧下でエバポレートして乾燥させた。オイル状の残渣をMeOH(8容積)に溶解し、ガラスウールを介してろ過し、次いで、低圧下でエバポレートして、粘稠な橙色〜黄色のオイルを定量的収量で得た。一般的手順に従って、次の化合物を合成した:α−6−mPEG3−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG3−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=3)HCl塩の242mg、純度96%;α−6−mPEG4−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG4−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=4)HCl塩の776mg、純度94%;α−6−mPEG5−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG5−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=5)HCl塩の172mg、純度93%;α−6−mPEG6−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG6−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=6)HCl塩の557mg、純度98%;α−6−mPEG7−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG7−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=7)HCl塩の695mg、純度94%;およびα−6−mPEG9−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG9−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=9)HCl塩の435mg、純度95%。次の化合物、α−6−mPEG1−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG1−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=1)HCl塩の431mg、純度99%;およびα−6−mPEG2−O−オキシコドン(akaα−6−mPEG2−O−ヒドロキシコドン)(化合物C、n=2)454mg HCl塩、純度98%も同様に調製した。
【0223】
実施例13
インビボ鎮痛アッセイ:フェニルキノンライジング
鎮痛アッセイを使用して、次のコンジュゲート系列:mPEG2−7,9−O−モルヒネ、mPEG3−7,9−O−コデイン、およびmPEG1−4,6,7,9−O−ヒドロキシコドンに属する例示的PEG−オリゴマー−オピオイドアゴニストコンジュゲートが、マウスにおける内蔵痛の低減および/または防止に有効であるかどうかを決定した。
【0224】
アッセイでは、CD−1雄性マウス(1グループあたり5〜8匹のマウス)を利用したが、各マウスは、研究日において約0.020〜0.030kgであった。マウスを、標準的なプロトコルに従って処置した。フェニルキノン(PQ)溶液の投与の30分前に(IV、SC、IPまたは経口で)、水溶性非ペプチド性オリゴマーの共有結合を有さない化合物(即ち、非PEGオリゴマー−改変親分子)、水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合した化合物を含んでなる対応するバージョン(即ち、コンジュゲート)、またはコントロール溶液の単回「前処置」用量をマウスに投与した。各動物に、腹部の収縮、胴体のねじれおよびひねり、背部の反り返りおよび後肢の伸展を含み得る「ライジング」を誘発する刺激薬(フェニルキノン、PQ)のIP注入を行った。各動物に、PQ(1mg/kgのPQ、0.1mL/10gの体重)のIP注入を行った。注入後、動物を、それらの観察隔離域に戻し、そしてそれらの挙動を観察した。「前処置」後の35〜45分間の間に、収縮を計数した。動物の使用は1回であった。各試験した物品は、0.1〜100mg/kg(n=5〜10匹の動物/用量)の範囲で投与した。
【0225】
結果を、図2(mPEG2−7,9−O−モルヒネおよびコントロール)、図3(mPEG1−4,6,7,9−O−ヒドロキシコドンおよびコントロール)、ならびに図4(mPEG3−7,9−O−コデインおよびコントロール)に示す。ED50値を、以下の表2および3に示す。
【0226】
【表2】
【0227】
【表3】
【0228】
実施例14
インビボ鎮痛アッセイ:ホットプレート潜時アッセイ
ホットプレート潜時鎮痛アッセイを使用して、次のコンジュゲート系列:mPEG1−5−O−モルヒネ、mPEG1−5−O−ヒドロキシコドン、およびmPEG2−5,9−O−コデインに属する例示的PEG−オリゴマー−オピオイドアゴニストコンジュゲートが、マウスにおける内蔵痛の低減および/または防止に有効であるかどうかを決定した。
【0229】
アッセイでは、CD−1雄性マウス(1グループあたり10匹のマウス)を利用したが、各マウスは、研究日において約0.028〜0.031kgであった。マウスを、標準的なプロトコルに従って処置した。ホットプレート試験の30分前に(SCで)、水溶性非ペプチド性オリゴマーの共有結合を有さない化合物(非改変親分子)、水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合した化合物を含んでなる対応するバージョン(即ち、コンジュゲート)、またはコントロール溶液の単回「前処置」用量をマウスに投与した。ホットプレートの温度を55±1℃に設定し、実験の開始前に、表面温度計でキャリブレーションした。「前処置」の30分後、各マウスを、ホットプレート上に置き、そして後肢を舐めるまでの潜時は、0.1秒の精度で記録した。30秒内に舐めなかった場合、マウスを取り出した。ホットプレート試験の直後、温度プローブを直腸に17mm挿入し、そして計器が安定したとき(約10秒間)に、体温を0.1℃の精度で読み取った。動物の使用は1回であった。各試験した物品は、0.3〜30mg/kg(n=5〜10匹の動物/用量)の範囲で投与した。
【0230】
結果を、図5(ヒドロキシコドン系列)、図6(モルヒネ系列)および図7(コデイン)に示す。プロットは、潜時(秒単位で後肢を舐めるまでの時間)対mg/kgで投与した化合物の用量を例示する。
【0231】
実施例15
雄性Sprague−Dawleyラットにおける静脈内(IV)および経口(PO)投与後のPEGオリゴ−オピオイド化合物の薬物動態学−研究設計
経静脈および頸動脈カテーテル(JVC/CAC)を貯留している175匹の成獣雄性Sprague−Dawleyラット(Charles River Labs,Hollister,CA)を研究に利用した。3匹のラット/グループであった。すべての動物を、1晩、絶食させた。投与前に、ラットを秤量し、尾部およびケージカードを、同定のために標識し、そして用量を計算した。麻酔薬を封入し、そして3.0〜5.0%イソフルランで維持した。JVCおよびCACを外側に配置し、HEP/生理食塩水(10IU/mLのHEP/mLの生理食塩水)をフラッシュし、差し込み接続し、そして頸静脈および頸動脈を同定するために標識を付した。前投与サンプルを、JVCから回収した。すべての動物を麻酔から回復させ、そして前投与サンプルを処理した場合、静脈内グループの動物には、適切な試験物品を含有する1mLのシリンジを使用し、JVCを介して静脈内(IV)に投与し、カテーテルの死容積を0.9%生理食塩水でフラッシュして、動物が正確な用量を受容することを確実にし、そして経口グループの動物には、経口的に強制投与して、処置した。
【0232】
単回のIV投与後、血液サンプルを、0(上記のように回収した前投与)、2、10、30、60、90、120、および240分時に回収し、そして経口投与後、血液サンプルを、頸動脈カテーテルを介して0(上記のように回収した前投与)、15、30、60、120、240および480分時に回収し、そしてプロトコルにおいて述べたように、処理した。最後の回収ポイント後、動物を屠殺した。
【0233】
LC−MS/MS法を使用して、血漿サンプルの生体分析の解析を行った。
【0234】
薬物動態解析:WinNonlin(Version5.2,Mountain View,CA−94014)を使用して、PK分析を実施した。表の作成およびPK分析を行う前に、LLOQ未満の血漿中濃度を、ゼロに置き換えた。各動物の血漿濃度−時間プロファイルを使用して、以下のPKパラメータを確立した:
C0:「ゼロ」時間の外挿濃度
Cmax:最大(ピ−ク)濃度
AUCall:ゼロから最終濃度値の時間までの濃度−時間下面積
T1/2(Z):最終消失半減期
AUCinf:ゼロから無限時間の濃度−時間下面積
Tmax:投与後最大またはピ−ク濃度に到達するまでの時間
CL:全身クリアランス
Vz:終末相に基づく分布容積
Vss:定常期における分布容積
MRTlast:観察可能な最終濃度までの平均滞留時間
F:バイオアベイラビリティ
【0235】
化合物の平均用量−正規化AUCallのデータを使用して、経口バイオアベイラビリティを確立したが、ここで、IVまたはPOグループのうちの一方は、<n=3/グループで報告されたデータのみを伴う。
実施例16
mPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートのIVおよびPO薬物動態学
【0236】
上記の実施例15に記載のように、Sprague−Dawleyラットにおいて、薬物動態研究を行った。投与された化合物は、mPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲート(ここで、n=1、2、3、4、5、6、7、および9)ならびに親化合物、オキシコドンであった。目的は、静脈内および経口的に投与された親化合物およびそのさまざまなオリゴマーコンジュゲートの両方の薬物動態学を決定することであった。
【0237】
オキシコドン、mPEG0−オキシコドン、mPEG1−O−ヒドロキシコドン、mPEG2−O−ヒドロキシコドン、mPEG3−O−ヒドロキシコドン、mPEG4−O−ヒドロキシコドン、mPEG5−O−ヒドロキシコドン、mPEG6−O−ヒドロキシコドン、mPEG7−O−ヒドロキシコドン、およびmPEG9−O−ヒドロキシコドンのIV(1mg/kg)およびPO(5mg/kg)送達後の血漿PKパラメータの概要を、以下の表、表4および5に示す。
【0238】
IV投与について観察されたデータ(表4)に基づいて、mPEG9−O−ヒドロキシコドンは、親オキシコドンが投与された後に観察される対応する平均t1/2値の3倍の平均t1/2値を伴うより高い血漿濃度を達成するようであった。
【0239】
図8は、上記のようにIV投与されたmPEGn−O−ヒドロキシコドン化合物、ならびに1.0mg/kgの濃度で投与された場合のオキシコドン自体の平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【0240】
経口投与について観察されたデータ(表5)に基づいて、mPEG5−O−ヒドロキシコドン、mPEG6−O−ヒドロキシコドン、およびmPEG7−O−ヒドロキシコドンは、親分子、オキシコドンと比較して、血漿中においてより高い平均暴露(約3〜8倍)を達成するようであった。
【0241】
図9は、上記のmPEGn−O−ヒドロキシコドン化合物、ならびに5.0mg/kgの濃度で経口投与された場合のオキシコドンの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【0242】
【表4】
【0243】
【表5】
【0244】
結果をまとめると、多様なオリゴマー性PEG長(PEG1〜PEG9)を伴うPEG化ヒドロキシコドンを静脈内に投与すると、オキシコドンと比較して、様々な血漿濃度および暴露が生じた。鎖長3、5、7および9を伴うPEGは、より高い平均暴露(AUC)を示した一方、PEG6は、比較可能な平均暴露(AUC)を示し、そして鎖長1、2または4を伴うPEGは、僅かに低い平均暴露(AUC)を示した。5を超えるPEG長を有する化合物は、PEG長の増加に伴い、より低いクリアランス、定常状態においてより高い分布容積、消失半減期値の増加の傾向を示した。
【0245】
多様なオリゴマー性PEG長(PEG1〜PEG9)を伴うPEG化ヒドロキシコドンを経口投与すると、PEG1およびPEG3に共有結合したヒドロキシコドンを例外として、血漿暴露における改善が生じた。経口バイオアベイラビリティは、mPEG6に共有結合したヒドロキシコドンが最も高く、55.3%であり、続いて、mPEG5−ヒドロキシコドンおよびmPEG7−ヒドロキシコドンが、それぞれ、37.6%および28.1%であった。消失半減期値は、PEG長の増加と共に増加する傾向を示した。
実施例17
mPEGn−O−モルヒネコンジュゲートのIVおよびPO薬物動態学
【0246】
上記の実施例15に記載のように、Sprague−Dawleyラットにおいて、薬物動態研究を行った。投与された化合物は、mPEGn−O−モルヒネコンジュゲート(ここで、n=1、2、3、4、5、6、7、および9)ならびに親化合物、モルヒネであった。目的は、静脈内および経口的に投与された親化合物およびそのさまざまなオリゴマーコンジュゲートの両方の薬物動態学を決定することであった。
【0247】
モルヒネ、mPEG1−O−モルヒネ、mPEG2−O−モルヒネ、mPEG3−O−モルヒネ、mPEG4−O−モルヒネ、mPEG5−O−モルヒネ、mPEG6−O−モルヒネ、mPEG7−O−モルヒネ、mPEG9−O−モルヒネのIV(1mg/kg)およびPO(5mg/kg)経路後の血漿PKパラメータの概要を、それぞれ、表6および表7に示す。
【0248】
静注グループについては:図10は、ラットへの1.0mg/kg静脈内投与後の上記のmPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。mPEG2−O−モルヒネの血漿プロファイルと一致しない1つの外れ値のデータが各動物において存在するようであり、これについては、PK分析から除外した。
【0249】
観察されたデータ(表6)に基づいて、mPEG9−O−モルヒネは、親モルヒネが投与された後に観察される対応するt1/2値の4倍の平均t1/2値を伴うより高い血漿濃度を達成するようであった。
【0250】
【表6】
【0251】
経口グループについては、図11は、ラットへの経口投与(5.0mg/kg)後の上記のmPEGn−O−モルヒネコンジュゲートの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【0252】
観察されたデータ(表7)に基づいて、mPEG4−O−モルヒネは、親分子、モルヒネと比較して、試験したコンジュゲートの中でも最も高い血漿濃度を達成するようであった。
【0253】
【表7】
【0254】
要約すると、IVデータについて、多様なPEG長(PEG1〜PEG9)を伴うオリゴマー性PEG化モルヒネを投与すると、モルヒネ自体と比較して、より高い血漿濃度および暴露(AUC)を生じた。5以上のPEG長の増加に伴い、平均AUCの明らかな増加傾向が認められ、PEG9−モルヒネでは、非コンジュゲートモルヒネと比較して、平均AUCが10倍を超えた。平均半減期および平均滞留時間もまた、PEG長の増加に伴って増加した。より低い平均クリアランス値は、観察されるより高い平均AUC値と一致した。
【0255】
定常状態について見積もられる平均分布容積は、単一のPEGの導入に伴って、直ちに5倍低減し、そしてPEG長5における一定値に到達した。全体的に、PEG化は、消失t1/2を増加し、そしてモルヒネの組織分布を低下するようであった。
【0256】
経口データに基づいて、多様なPEG長(PEG1〜PEG9)を伴うPEG化モルヒネコンジュゲートを投与すると、モルヒネと比較して、経口バイオアベイラビリティの低減を生じた。バイオアベイラビリティの低減は、これらのPEG−コンジュゲートの代謝成分ではなく、吸収成分に関連するようであった。PEG−コンジュゲートのうち、PEG長4を伴うコンジュゲートは、最大のF値(22.1%)を示した一方、より短いまたはより長いPEG長を伴うコンジュゲートは、吸収を消失する明白な傾向を示した。
【0257】
本研究では、モルヒネF%値は、7.5mg/kgにおいて、15%の文献値より3倍高かった。(J.Pharmacokinet.Biopharm.1978,6:505−19)。このより高い暴露の理由は明らかではない。
【0258】
実施例18
mPEGn−O−コデインコンジュゲートのIVおよびPO薬物動態学
上記の実施例15に記載のように、Sprague−Dawleyラットにおいて、薬物動態研究を行った。投与された化合物は、mPEGn−O−コデインコンジュゲート(ここで、n=1、2、3、4、5、6、7、および9)ならびに親化合物、コデイン(n=0)であった。目的は、静脈内および経口的に投与された親化合物、即ち、コデインおよびそのさまざまなオリゴマーコンジュゲートの両方の薬物動態学を決定することであった。
【0259】
コデイン、mPEG1−O−コデイン、mPEG2−O−コデイン、mPEG3−O−コデイン、mPEG4−O−コデイン、mPEG5−O−コデイン、mPEG6−O−コデイン、mPEG7−O−コデイン、mPEG9−O−コデインのIV(1mg/kg)およびPO(5mg/kg)経路後の血漿PKパラメータの概要を、それぞれ、表8および表9に示す。
【0260】
IVグループについては:図12は、親分子、コデイン、ならびに静脈内投与後の上記のPEGn−O−コデインコンジュゲートの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【0261】
観察されたデータ(表8)に基づいて、mPEG6−O−コデインは、親分子、コデインが投与された後に観察される対応するt1/2値の約2.5倍の平均t1/2値を伴う試験されたコンジュゲートのなかでも、より高い血漿濃度を達成するようであった。
【0262】
【表8】
【0263】
経口グループについては、図13は、ラットへの経口投与(5.0mg/kg)後の親分子、コデイン対mPEGn−コデインコンジュゲートの平均血漿濃度−時間プロファイルを示す。
【0264】
観察されたデータ(表9)に基づいて、PEG−6化合物、mPEG6−コデインは、親分子、コデインとして試験したコンジュゲートの中でも最も高い血漿濃度(平均AUCallより52倍高い)を達成するようであった。
【0265】
【表9】
【0266】
要約すると、IVデータについて、多様なオリゴマー性PEG長(PEG1〜PEG9)を伴うコデインのPEG化は、暴露(平均AUC)をごく僅かにしか改善せず、そしてPEG−6コンジュゲートでは、中等度の改善(約4倍)が観察された。このPEG−コンジュゲートでは、クリアランスおよび分布容積の両方とも、4倍低減した。PEG長7および9を伴うコンジュゲートは、より長い平均t1/2値を示したが、しかし、平均クリアランスおよび平均分布容積(Vss)は、PEG7−およびPEG9−コデインコンジュゲートの両方において低減した。
【0267】
経口データについては、コデインの経口バイオアベイラビリティは極めて低い(F=0.52%)。経口バイオアベイラビリティは、2以上のPEG長の増加に伴って増加するようであり、PEG長6を伴うコデインコンジュゲートが32%のバイオアベイラビリティを有して最大に到達し、それ以降は低減する。一般に、平均t1/2および平均残滞留値は、PEG長と共に増加する。試験したすべての化合物の中で、ピーク濃度に到達するまでの時間(Tmax=15分間)に差異は認められなかったことから、吸収は迅速であり、そして吸収速度は変更しなかったことが示唆される。
実施例19
【0268】
mPEGn−O−オピオイドコンジュゲートのオピオイド受容体へのインビボでの結合
様々なPEG−オピオイドコンジュゲート(mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデイン、およびmPEGn−O−ヒドロキシコドン)の結合親和性を、実施例4に記載の様式と類似に様式で、クローニングされたヒトμ、κまたはδオピオイド受容体を異種発現するCHO細胞から調製される膜調製物において、インビトロで測定した。シンチレーション近接アッセイ(SPA)を使用して、放射性リガンドの置換を測定した。
【0269】
簡単に説明すると、連続希釈した試験化合物を、96ウェルプレート中に置いて、これにSPAビーズ、膜および放射性リガンドを添加する。各オピオイド受容体サブタイプのアッセイ条件を、以下の表10に示す。プレートを、8時間〜1晩、室温でインキュベートし、1000rpmでスピンして、SPAビーズをペレット化し、そしてTopCount(登録商標)マイクロプレートScintillationカウンターを使用して、放射能を測定した。試験化合物の各濃度における特異的結合を、過剰の冷リガンドの存在下で測定した非特異的結合を差し引くことによって、計算した。IC50値は、特異的結合対濃度曲線の非線形回帰によって入手し、そして膜調製物の各ロットについて実験的に予め決定されたKd値を使用して、Ki値を計算した。
【0270】
【表10】
【0271】
モルヒネ、コデインおよびヒドロキシコドンのオリゴマー性PEGコンジュゲートの結合親和性を表11に示す。全体として、すべてのコンジュゲートは、親分子の既知の薬理学と一致して、μ−オピオイド受容体への測定可能な結合を示した。所与のPEGサイズでは、μ−オピオイド結合親和性の順位は、PEG−モルヒネ>PEG−ヒドロキシコドン>PEG−コデインであった。PEGサイズを増加させると、非コンジュゲート親分子と比較して、すべてのPEGコンジュゲートのμオピオイド受容体に対する結合親和性が漸進的に低減した。しかし、PEG−モルヒネコンジュゲートはなお、高い結合親和性を保持し、親モルヒネの結合親和性の15×以内であった。PEG−ヒドロキシコドンのμオピオイド結合親和性は、PEG−モルヒネコンジュゲートの20〜50倍低かった。コデインおよびそのPEGコンジュゲートは、極めて低い親和性でμオピオイド受容体に結合した。PEG−モルヒネコンジュゲートはまた、κおよびδオピオイド受容体に結合した;選択制の順位はμ>κ>δであった。コデインおよびヒドロキシコドンコンジュゲートのκおよびδオピオイド受容体に対する結合親和性は、μ−オピオイド受容体に対する結合親和性より有意に低い。
【0272】
【表11】
【0273】
N/Aは、試験した化合物の最大濃度で、結合の50%阻害が達成されなかったため、Ki値を計算することができなかったことを示す。
【0274】
実施例20
cAMP形成を阻害するmPEGn−O−オピオイドコンジュゲートのインビトロでの有効性
様々なPEG−オピオイドコンジュゲートの有効性を、実施例5に記載の様式と類似の様式で、受容体活性化後のcAMP形成を阻害するそれらの能力を測定することによって、阻害した。研究は、クローニングされたヒトμ、κまたはδオピオイド受容体を異種発現するCHO細胞において行った。cAMPは、競合イムノアッセイ原理に基づくcAMP HiRange均一時間分解蛍光アッセイ(HTRF Assay)(Cisbio、カタログ番号62AM6PEC)を使用して測定した。
【0275】
簡単に説明すると、0.5mMイソブチル−メチルキサンチン(IBMX)を含有する緩衝液において、μ、κまたはδオピオイド受容体のいずれかを発現する細胞の懸濁液を調製した。細胞を、多様な濃度のPEG−オピオイドコンジュゲートおよび3μMフォルスコリンと共に30分間、室温でインキュベートした。cAMPを、製造者の指示により2段階アッセイプロトコルに従って検出し、そして時間分解蛍光を、次の設定によって測定した:励起波長330nm;発光波長620nmおよび665nm;ダイクロイックミラー380nm。665nm/620nm比を、DeltaF%として表し、そして試験化合物に関連するデータを、フォルスコリンを伴わないウェルにおける平均最大応答の百分率として表す。各化合物のEC50値を、濃度対最大応答のシグモイド用量−応答プロットから計算した。化合物が系において完全なアゴニストとして挙動しているかまたは部分的なアゴニストとして挙動しているかどうかを決定するために、化合物の試験された最も高い濃度における最大応答を、既知の完全なアゴニストのものと比較した。
【0276】
細胞全体におけるcAMP形成の阻害に対するEC50値を表12に示す。モルヒネ、コデインおよびヒドロキシコドンのオリゴマー性PEGコンジュゲートは、多様な有効性を伴うにもかかわらず、μオピオイド受容体に対する完全なアゴニストであった。モルヒネおよびそのコンジュゲートは、試験した3つの系列のオピオイドのうち最も強力であった一方、PEGヒドロキシコドンおよびPEGコデインコンジュゲートは、有意に低い有効性を示した。PEGサイズの増加に伴って、PEG−モルヒネコンジュゲートの有効性における漸進的な低減が観察されたが、しかし、コンジュゲートは、親の40×以内のμ−アゴニストの有効性を保持した。μオピオイド受容体に対する効果とは対照的に、モルヒネおよびPEG−モルヒネコンジュゲートは、κオピオイド受容体に対して弱い部分的アゴニストとして挙動し、可能な最大応答の47〜87%を生じた。試験した濃度範囲(500μMまで)では、完全な用量−応答曲線を作成することができなかったため、κおよびδオピオイド受容体におけるコデインおよびヒドロキシコドンコンジュゲートのEC50値を計算することができなかった。
【0277】
全体的に、受容体結合性および機能的活性の結果は、PEG−オピオイドが、インビトロでμアゴニストであることを示す。
【0278】
【表12】
【0279】
実施例21
mPEGn−O−オピオイドコンジュゲートの脳:血漿比
オリゴマー性mPEG−O−モルヒネ、mPEG−O−コデインおよびmPEG−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートが血液脳関門(BBB)を横切り、そしてCNS(中枢神経系)に進入する能力は、IV投与後にラットの脳:血漿比を測定することによって、評価した。
【0280】
簡単に説明すると、3匹からなるラットのグループに、5mg/kgの各モルヒネ、mPEGn−O−モルヒネコンジュゲート、コデインおよびm−PEGn−O−コデインコンジュゲートを静脈内(i.v)注入した。PEG−2,3および4−オキシコドンコンジュゲートを、10mg/kg i.v.で投与し、そしてオキシコドンおよび他のPEGサイズのオキシコドンコンジュゲートを、1mg/kg(i.v)で投与した。オキシコドンコンジュゲートの用量は、脳組織において有意な濃度の検出が可能であるように調整した。BBBを横断しないアテノロールを、脳組織の脈管混入の測定値として使用し、そしてラットの個別のグループに、10mg/kgの濃度で投与した。注入の1時間後、動物を屠殺し、そして血漿および脳を回収し、そして直ちに凍結した。組織および血漿の抽出後、脳および血漿中の化合物の濃度を、LC−MS/MSを使用して測定した。脳:血漿比を、脳および血漿において測定された濃度の比として計算した。
結果を図16A〜Cに示す。
【0281】
図14A、16B、および16Cは、それぞれ、様々なオリゴマー性mPEGn−O−モルヒネ、mPEGn−O−コデイン、およびPEGn−O−ヒドロキシコドンコンジュゲートの脳:血漿比を示す。アテノロールの脳:血漿比を、比較のための基準を提供するために各図に示す。PEG−コンジュゲーションでは、それらのそれぞれの非コンジュゲート親分子(ヒドロキシコドンの場合、親分子はオキシコドンである)と比較して、すべてのコンジュゲートの脳:血漿比が低減した。PEG−1−モルヒネのみが、その親、モルヒネより高い脳:血漿比を示した。
【0282】
実施例22
様々な例示的mPEGn−O−オピオイドコンジュゲートの脳および血漿濃度の時間経過
IV投与後の脳および血漿における経時的な様々なオリゴマー性PEG−オピオイドコンジュゲートの濃度を決定するための実験を行った。
【0283】
使用した実験方法論および濃度は、実施例21に記載の単一の時間ポイント実験に使用したものと同じであったが、但し、脳および血漿は、異なる時間ポイントで回収した。
【0284】
すべてのPEG−ヒドロキシコドンコンジュゲートを10mg/kg ivで投与した一方、オキシコドン親を、1mg/kg ivで投与した。投与した様々なPEG−オピオイドコンジュゲートの脳および血漿濃度対時間のデータを、図15A〜H(モルヒネ系列)、図16A〜H(コデイン系列)、図17A〜H(オキシコドン/ヒドロキシコドン系列)に示す。
【0285】
データは、最も早い時間ポイント、即ち、注入の10分後におけるすべての親分子およびオリゴマー性PEG−コンジュゲートの脳濃度が最大に増加したことを実証している。PEGコンジュゲーションでは、脳濃度の有意な低減が生じ、そしてより大きなPEGコンジュゲート(≧PEG−4)では、脳濃度は、比較的低く保持し、そして経時的に安定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
OP−X−POLY
ここで、OPはオピオイド化合物であり、Xはリンカーであり、そしてPOLYは小さな水溶性オリゴマーである、
の化合物。
【請求項2】
OPは、フェンタニル、ヒドロモルホン、メタドン、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、およびオキシモルホンからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xは安定なリンカーである、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
POLYは小さなPEG部分である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記PEG部分は、1〜5個のエチレングリコールサブユニットからなる、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記PEG部分は、1〜3個のエチレングリコールサブユニットからなる、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
約1.0〜約3.5のlogPを有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、OPのlogPより約0.5単位負のlogPを有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
OP−X−POLYは、OPがその非コンジュゲート形態で結合するのと同じ標的受容体であるOP標的受容体に結合する、請求項3に記載の化合物。
【請求項10】
OPのその標的受容体に対する親和性と比べて、OP−X−POLYの前記OP標的受容体に対する親和性の約10倍未満の消失を示す、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
OP−X−POLYの前記OP標的受容体に対する親和性における前記低減は、OPのその標的受容体に対する前記親和性と比べて20%以下である、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPの生体活性と比べて少なくとも10%の生体活性を保持する、請求項3に記載の化合物。
【請求項13】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPの生体活性と比べて少なくとも50%の生体活性を保持する、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPの生体活性と比べて、生体活性における約10倍未満の低減を示す、請求項3に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物の分子量は1000ダルトン未満である、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
X−POLYの分子量は1000ダルトン未満である、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
OP単独の血液脳関門横断の速度より血液脳関門横断速度が小さい、請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
OP単独の前記速度より血液脳関門横断速度が少なくとも50%小さい、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
OP単独の前記速度より血液脳関門横断速度が少なくとも75%小さい、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
OP単独の前記血液脳関門横断速度より血液脳関門横断速度が少なくとも10倍小さい、請求項3に記載の化合物。
【請求項21】
Xは生理学的に切断可能なリンカーである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項22】
POLY分は、少なくとも6個のポリエチレングリコールサブユニットからなる小さなPEG部分である、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPと比べて、生体活性における約10倍を超える低減を示す、請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPの生体活性の5%未満の生体活性を保持する、請求項21に記載の化合物。
【請求項25】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPの生体活性の2%未満の生体活性を保持する、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
非コンジュゲートOPの同じOP標的受容体に対する親和性と比べて、その標的受容体に対する親和性の少なくとも約10倍の消失を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容できる賦形剤もしくはキャリアを含んでなる、組成物。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物の有効量を投与する工程を含んでなる、オピオイド療法を必要とする患者を治療する方法。
【請求項29】
オピオイド化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートして、請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物を形成する工程を含んでなる、オピオイド化合物の乱用の可能性を低減する方法。
【請求項30】
オピオイドアゴニストを小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートして、請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物を形成する工程を含んでなる、オピオイドアゴニストの常習性を低減する方法。
【請求項31】
オピオイド化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイド化合物の血液脳関門を横断する速度を低減するが、実質的に排除しない方法。
【請求項32】
放出可能な部分への共有結合を介して可逆的に結合したμ、κ、またはδオピオイドアゴニストを含んでなるプロドラッグであって、ここで、患者に投与される所与のモル量の前記プロドラッグは、哺乳動物の中枢神経系において、μ、κ、またはδオピオイドアゴニストがプロドラッグの部分として投与されなかった場合の等モル量のμ、κ、またはδオピオイドアゴニストの蓄積速度およびCmaxより小さい蓄積速度およびCmaxを示す、プロドラッグ。
【請求項33】
オピオイド療法を必要とする患者を治療するための請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項34】
前記オピオイド化合物、OPの前記乱用の可能性を低減するための医薬品の製造のための請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項35】
所与のモル量のプロドラッグが投与された哺乳動物の中枢神経系において、非プロドラッグ形態で哺乳動物に投与される場合の等モル量のμ、κ、またはδオピオイドアゴニストの蓄積速度およびCmaxより小さい蓄積速度およびCmaxを達成するための、放出可能な部分への共有結合を介して可逆的に結合したμ、κ、またはδオピオイドアゴニストを含んでなるプロドラッグの使用。
【請求項1】
式:
OP−X−POLY
ここで、OPはオピオイド化合物であり、Xはリンカーであり、そしてPOLYは小さな水溶性オリゴマーである、
の化合物。
【請求項2】
OPは、フェンタニル、ヒドロモルホン、メタドン、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、およびオキシモルホンからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xは安定なリンカーである、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
POLYは小さなPEG部分である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記PEG部分は、1〜5個のエチレングリコールサブユニットからなる、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記PEG部分は、1〜3個のエチレングリコールサブユニットからなる、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
約1.0〜約3.5のlogPを有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、OPのlogPより約0.5単位負のlogPを有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
OP−X−POLYは、OPがその非コンジュゲート形態で結合するのと同じ標的受容体であるOP標的受容体に結合する、請求項3に記載の化合物。
【請求項10】
OPのその標的受容体に対する親和性と比べて、OP−X−POLYの前記OP標的受容体に対する親和性の約10倍未満の消失を示す、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
OP−X−POLYの前記OP標的受容体に対する親和性における前記低減は、OPのその標的受容体に対する前記親和性と比べて20%以下である、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPの生体活性と比べて少なくとも10%の生体活性を保持する、請求項3に記載の化合物。
【請求項13】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPの生体活性と比べて少なくとも50%の生体活性を保持する、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPの生体活性と比べて、生体活性における約10倍未満の低減を示す、請求項3に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物の分子量は1000ダルトン未満である、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
X−POLYの分子量は1000ダルトン未満である、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
OP単独の血液脳関門横断の速度より血液脳関門横断速度が小さい、請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
OP単独の前記速度より血液脳関門横断速度が少なくとも50%小さい、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
OP単独の前記速度より血液脳関門横断速度が少なくとも75%小さい、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
OP単独の前記血液脳関門横断速度より血液脳関門横断速度が少なくとも10倍小さい、請求項3に記載の化合物。
【請求項21】
Xは生理学的に切断可能なリンカーである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項22】
POLY分は、少なくとも6個のポリエチレングリコールサブユニットからなる小さなPEG部分である、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPと比べて、生体活性における約10倍を超える低減を示す、請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPの生体活性の5%未満の生体活性を保持する、請求項21に記載の化合物。
【請求項25】
OP−X−POLYは、非コンジュゲートOPの生体活性の2%未満の生体活性を保持する、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
非コンジュゲートOPの同じOP標的受容体に対する親和性と比べて、その標的受容体に対する親和性の少なくとも約10倍の消失を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容できる賦形剤もしくはキャリアを含んでなる、組成物。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物の有効量を投与する工程を含んでなる、オピオイド療法を必要とする患者を治療する方法。
【請求項29】
オピオイド化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートして、請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物を形成する工程を含んでなる、オピオイド化合物の乱用の可能性を低減する方法。
【請求項30】
オピオイドアゴニストを小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートして、請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物を形成する工程を含んでなる、オピオイドアゴニストの常習性を低減する方法。
【請求項31】
オピオイド化合物を小さな水溶性オリゴマーにコンジュゲートする工程を含んでなる、オピオイド化合物の血液脳関門を横断する速度を低減するが、実質的に排除しない方法。
【請求項32】
放出可能な部分への共有結合を介して可逆的に結合したμ、κ、またはδオピオイドアゴニストを含んでなるプロドラッグであって、ここで、患者に投与される所与のモル量の前記プロドラッグは、哺乳動物の中枢神経系において、μ、κ、またはδオピオイドアゴニストがプロドラッグの部分として投与されなかった場合の等モル量のμ、κ、またはδオピオイドアゴニストの蓄積速度およびCmaxより小さい蓄積速度およびCmaxを示す、プロドラッグ。
【請求項33】
オピオイド療法を必要とする患者を治療するための請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項34】
前記オピオイド化合物、OPの前記乱用の可能性を低減するための医薬品の製造のための請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項35】
所与のモル量のプロドラッグが投与された哺乳動物の中枢神経系において、非プロドラッグ形態で哺乳動物に投与される場合の等モル量のμ、κ、またはδオピオイドアゴニストの蓄積速度およびCmaxより小さい蓄積速度およびCmaxを達成するための、放出可能な部分への共有結合を介して可逆的に結合したμ、κ、またはδオピオイドアゴニストを含んでなるプロドラッグの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15−1】
【図15−2】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15−1】
【図15−2】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【公表番号】特表2012−502904(P2012−502904A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526872(P2011−526872)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/005174
【国際公開番号】WO2010/033195
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/005174
【国際公開番号】WO2010/033195
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]