説明

乳に由来する抗原特異的抗体、それらの調製の方法及び使用方法

本発明は、乳を収集する前に抗体により免疫化されていない非ヒト哺乳動物からの乳から抗原特異的抗体を得る為の手段及び方法に関する。非ヒト哺乳動物由来の抗原特異的抗体は、個体の腸管の粘膜側を通過すると発見された。本発明は、抗原特異的非ヒト哺乳動物抗体による疾患の処置の為の新規な手段及び方法を提供する。さらに、反芻動物の該抗原特異的抗体を含む経口投与のための調製物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体の分野に関する。特に、本発明は、乳に由来する抗原特異的抗体、それらの調製の方法及び使用方法に関する。たとえば、そのような使用方法は例えば、乳幼児栄養、診断的及び医療的な使用を伴う。
【背景技術】
【0002】
乳製品食品を提供することによりヒトの免疫を増強するいくつかの方法がある。母乳及びウシの乳は、広い範囲の潜在的な、病原性の微生物、ウィルス及び他の抗原に特異的である抗体を含む。これらの抗体は、該母親がすでにさらされた感染性因子に対する有効な免疫応答をまだ開始することができない該乳幼児を防御する。IgAはヒトの乳中の主な抗体であるが、IgGはウシの乳中に見られる主な抗体アイソタイプである。ヒトの乳中の該IgAは一般に、腸においてその効果を発揮すると知られている一方で、該母親は、出生の前に胎盤を経由して赤ちゃんへIgGを移す。大抵の反芻動物、ブタ及びげっ歯類は、乳中に存在するIgGの一部を、腸上皮を越えて血中へと能動的に輸送する。すなわち、これらの動物はまた、新生仔におけるこれらの抗体の実際の機能がヒトの乳中の抗体と比較して追加的な特性を有するとはいえ、ヒトのように、乳を分泌する雌の乳中にも、特に出生後の最初の乳(初乳)中にも抗体を有する。
【0003】
反芻動物は、抗体を含む乳を産生するので、該乳またはその抗体調製物が、母乳の機能を補う又は置換するための、ヒトにおける使用のために考慮される。該乳中の抗原特異的抗体の収集を可能とするために、反芻動物は典型的に、抗体が望まれる特定の抗原により免疫化される。該抗原は典型的には、ヒトの病原体であり、例えば腸の微生物又はウィルスであり、そしてこれらの免疫された動物の乳中の抗体が収集される。該収集された抗体は、該抗体を摂取する個体の腸内で、該ヒトの病原体に結合しそして、該ヒトの病原体を中和し又は別の方法では損なうことが意図される。
【0004】
乳とは別に、初乳は、ウシ抗体を分離するための他の源である。ウシの初乳は、子ウシを出産する直前及び直後に雌ウシにより産生される最初の乳である。初乳は、非常に高い水準のウシ抗体、最大で50〜100mg/ml(対して通常の乳については約1mg/ml)、を含む。IgGは、ウシの初乳中に及び乳中における主要な抗体アイソタイプである。上記言及されたように、初乳中のイムノグロブリンは、子ウシにより血液中に吸収されて、それらを感染に対して防御する。初乳中の抗体水準は、通常の乳中におけるよりも約50〜100倍高い。この理由の故に、過剰免疫された雌ウシの初乳が、下痢を治療し及び防ぐ為のウシ抗体の源として、下痢症状に対する有意な効果を示す研究の多くの研究において用いられてきた。(Clin infect dis 1998 26:1324−9 成体; Acta pediatr. 1995 84:996−1001 乳幼児; Acta paediatr. 2001 90 1373−8 1〜12歳の子供; J.Pediatr.Gastroenterol Nutr 1999 29:452−6)。これらの研究のいくつかは、Indian J. Pediatr. 2005 72:849−52において再調査されている。
【0005】
下痢を防ぐ/処置することにおける使用に加えて、初乳は、アスリートによりサプリメントとしても用いられる(eur.J.Nutrition 2003 42:228−232及びInt.J.Sport Ntr.Excerc Metab 2006 16:47−64.J.Appl Physiol 2006 93:732−39)。
【0006】
他の研究(JT van Dissel et al J.Med.Microbiol 2005 54−197−205)において、Clostridium difficileにより免疫されたウシの40%ホエータンパク質濃厚物が、C.difficile下痢の再発を防ぐために用いられた−結果は予備的であるが、MucoMilkに起因する有害事象は認められない(Scand J.Gastroenterol 2000 35:711−8; N.Engl J Med 1988 318:1240−3)。
【0007】
これらのデータは、少なくともこれらの研究において、雌ウシからの初乳が高い抗体水準を有すること及び成体及び乳幼児におけるこれらの抗体の経口投与が有害な影響を伴わないものであることを示し、食品における雌ウシ抗体の使用が安全であることを示す。
【0008】
欧州特許第0152270号明細書の実施例4及び実施例5は、ヒトにおけるウシ乳の摂取及び精製されたIgGの注入の後に、血清病を生じないことを示す。IgGの注入の前に乳を飲むウサギは、抗ウシIgG抗体を産生しない。これらの実施例はやはり、安全であり且つ経口的である、ウシIgGに対する免疫寛容誘導を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、反芻動物の乳に由来する抗体が、ヒトの腸内の粘膜バリアを通過し、そして、その血流側に存在する抗原に対して結合することができ及び作用することができることが発見された。すなわち、抗体は、該腸の上皮内張りを横切り、そして腸上皮細胞の基底側(basolateral side)に存在する。理論にとらわれることなく、反芻動物の乳に由来する抗体は、ヒトの腸細胞上のIgレセプターに結合し、そして、腸粘膜の腸側から血流側へ輸送される。どの場合でも、腸上皮細胞の頂端側に与えられた抗体は、内張りを通って、基底側へと通過する。すなわち、本発明は、腸上皮細胞の頂端側に抗体を投与することを通じて、腸上皮細胞の基底側に該抗体を与える方法を提供する。好ましい実施態様において、該上皮細胞を超える輸送は、その頂端側にプレバイオティック炭水化物を備えることによりさらに増強される。プレバイオティック(prebiotic)炭水化物は、Gibson及びRoberfroidら(1995,J.Nutr.125:1402−1412)において記載されるような難消化性炭水化物(non-digestible carbohydrate)(オリゴ糖及び多糖)である。該プレバイオティック成分は好ましくはラクト−N−テタオース(lacto-N-tetaose)、ラクト−N−フコ−ペンタオース、ラクツロース(LOS)、ラクトスクロース、ラフィノース、ガラクトオリゴ糖(GOS)、フルクトオリゴ糖(FOS)、大豆多糖類に由来するオリゴ糖、マンノースに基づくオリゴ糖、アラビノ−オリゴ糖、キシロ−オリゴ糖、イソマルト−オリゴ糖、グルカン、シアリルオリゴ糖及びフコオリゴ糖である。該プレバイオティックはさらに、グルコース、ガラクトース、キシロース、マルトース、スクロース、フコース、アラビノース、グルコサミン、マンノース、ラクトース、デンプン、キシラン、ヘミセルロース、イヌリン、又はそれらの混合物から作られるオリゴ糖である。大抵の反芻動物、ブタ及びげっ歯類は、腸上皮を横切ってIgGを輸送するための特異的な新生仔レセプターを有する。このレセプターはFcRNと名付けられ、出生直後に発現され及び離乳の時までに下方制御される新生仔Fcレセプターである。ヒトは、腸上皮にFcrNを構造的に発現し(Immunology 92:69−74)及び上皮細胞を超えるヒトIgGの二方向性のFcRN依存性輸送がヒトにおいて示された(J.Clin Invest 1999 104:903−911)。FcRNはヒトにおいて骨髄系細胞にも発現される(J.Immunol. 2001 166:3266−76)。
【0010】
pIgRは、多量体Igレセプターである。このレセプターは、二量体IgA及び五量体IgMを形成するために必要とされるj鎖に結合する。このレセプターは、それ故に、IgA及びIgMの両方を輸送すると考えられる。最近の出版物は、腸の内腔から組織への抗原複合化IgAの輸送も起こりうることを示唆した(J.Gen Virol 2005 86:2747−51)。CD23(低い親和性のIgEレセプター)も、腸上皮に発現され、そして動物モデルにおける食物アレルゲンの内部移行(internalization)において役割を果たすと示された(gastroenterology 2006 131:47−58; J.Clin Invest.2000:106:879−886)。
【0011】
それ故に、本発明は、反芻動物の抗原特異的抗体の、個体の腸管の粘膜側(すなわち上皮の基底側)への送達の為の方法であって、反芻動物の該抗原特異的抗体を含む、経口投与の為の調製物を用意すること及び該個体に該調製物を経口的に投与することを含む上記方法を提供する。与えられた反芻動物抗体は、該腸上皮を横切り、そして、腸粘膜に入ることができ、そして次に血流に入ることができ、そしてそれが特異的な抗原と相互作用することができる。
【0012】
腸上皮を横切ることにおける使用の為の反芻動物抗体は、該抗体が特異的である抗原について以前に免疫されていない反芻動物から得られることができる。代わりに、該反芻動物抗体は、該抗体が特異的である抗原により以前に免疫された反芻動物から得られることができる。反芻動物抗体はヒトの胃腸管における分解に対し比較的抵抗性であるが、経口投与の為の該調製物が、該抗原特異的抗体を含む送達ビヒクルを含むことが好ましく、ここで該送達ビヒクルは該ビヒクルからの該抗体の、標的とされた腸内放出を可能とする。封入された又は包まれた物質の、腸管における特異的な放出を許す種々の送達ビヒクルが当技術分野において知られている。該ビヒクルが、小腸における放出を許すことが好ましい。好ましくは、該調製物は、該抗体の摂取及び/又は機能性にとって有利である腸内局所的pHを維持し及び/又は達成するためのバッファーをさらに含む。好ましくは該バッファーは、小腸内で約6〜8のpHを達成するために設定される。好ましい実施態様において、該抗体は、乳を分泌する反芻動物の乳から得られる。該反芻動物の乳は、例えば血清と比較したときに、IgGの大きな部分を含む。IgGは、ヒトの腸の粘膜を横切って輸送される反芻動物抗体サブタイプの一つである。該抗体は、粘膜を通過するので、それらは胃腸管の内側の向こうで作用することができる。一つの実施態様において、反芻動物抗体は、アレルギー抗原に特異的である。この方法において、該アレルゲンは、腸により摂取されると、腸の粘膜の血流側(すなわち上皮の基底側)に及び好ましくは該血流側上に留められ、それにより少なくとも、該抗原に特異的なヒトIgEと、該抗原への結合について競合する。さらに好ましい実施態様において、該抗原特異的抗体は、食物アレルギー関連抗原、好ましくは大豆、ヘーゼルナッツ、卵又はリンゴからの食物アレルギー関連抗原に特異的である。特に好ましい実施態様において、該アレルギー抗原は、アレルギー関連ピーナッツ抗原である。他の実施態様において、該アレルゲンは、草花粉(grass pollen)アレルゲン、木花粉(tree pollen)アレルゲン、チリダニ(house dust mite)アレルゲン、ネコアレルゲン、カビアレルゲン若しくは菌アレルゲン又は刺咬昆虫の毒の群から選ばれるがこれに限定されない吸入アレルゲン又は毒アレルゲンである。該吸入アレルゲン及び毒アレルゲンは、呼吸器管を介して又はハナバチ若しくはカリバチなどの昆虫の針を介してヒトの体に入ることができる。
【0013】
他の好ましい実施態様において、該個体は、自己免疫疾患又はあるいは過度に活発な免疫系を患っている。この実施態様において、該反芻動物の該抗原特異的抗体が、該個体の免疫細胞により産生される炎症促進性サイトカイン又は刺激性シグナル因子に特異的であることが好ましく、そしてそれは、該自己免疫疾患又はあるいは該過度に活発な免疫系の症状の維持及び/又は重症度に寄与する。すなわち、好ましくは、本発明の抗体は、免疫細胞により排出される因子に特異的である。特に好ましい実施態様において、本発明の反芻動物抗体は、ヒトTNF−α又はヒトIL−23抗体に特異的である。さらに他の実施態様において、該抗体は、処置されるべき該個体の免疫細胞、上皮細胞、上皮内細胞、抗原提示細胞又はM細胞、好ましくはT細胞、B細胞又は樹状細胞に特異的である。好ましい実施態様において、該個体は、炎症性腸疾患を患っている。さらに好ましい実施態様において、本発明の該反芻動物抗体は、該自己免疫疾患に関連する微生物の抗原に特異的である。
【0014】
ヒトは、いずれの年齢であってよい。しかしながら、該ヒト個体が、少なくとも1歳齢であることが好ましい。好ましくは、該個体は少なくとも2歳齢である。好ましくは、該個体は少なくとも6歳齢である。他の好ましい実施態様において、該個体は少なくとも16歳齢である。本発明のなお他の局面において、該個体は、(典型的には固形の食物が食事に含まれるときに)、0〜24月齢、好ましくは0〜12月齢、より好ましくは6〜24月齢である。0〜6月の個体の胃腸管は、まだ完全に発達されておらず、そして、成体と比較して、腸上皮細胞の基底側への該抗体の通過をより容易に許す。加えて、抗体は、0〜24月齢の個体の胃腸管において、より長い半減期を有する。好ましい実施態様において、該抗体は、IgG、IgAのタイプ又はそれらの組み合わせである。好ましくは、該抗体は、該IgGタイプであり、又は該抗原に特異的なIgG及びIgAの両方を含む組成である。本発明の方法は好ましくは、該個体の胃腸管を介して、血流へと該反芻動物抗体を送達する為に用いられる。特に好ましい実施態様において、該血流送達は、該抗体を肺へ送達する為に用いられる。この実施態様において、該抗体は、ウィルスの病原体若しくはバクテリアの病原体の抗原又はアレルギーの抗原に特異的であることが好ましい。この実施態様において、該抗体は、アレルギーに関連した草花粉抗原若しくは木花粉抗原、又は、ヒトにおいてアレルギー反応を引き起こす任意の他の吸入抗原に特異的であることが好ましい。他の好ましい実施態様において、該抗体は、肺への指向性(tropism)を有する微生物又はウィルスに特異的であることが好ましい。好ましくは、該微生物は、Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、Haemophilus influenzae、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Moraxella catarrhalis、Chlamydia pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae及びLegionella pneumophilaを含む。好ましいウィルス特異的抗体は、インフルエンザウィルスのメンバー、好ましくはインフルエンザウィルスA又はインフルエンザウィルスB、呼吸器合胞体ウィルスのメンバー又はアデノウィルスのメンバーに対して向けられる。
【0015】
すなわち、本発明は、非反芻動物における病気の全身的な処置の為の医薬の調製の為に、反芻動物の抗原特異的抗体を使用する方法を提供する。好ましくは、該非反芻動物はヒトである。好ましくは該医薬は経口投与のためのものである。
【0016】
本発明の抗体の特別な利点は、それがポリクローナル抗体であることである。これは、より強固な抗原結合性を許す。これはさらに、本発明の抗体を備えられた個体間での、減少された変動を許す。
【0017】
本発明のさらなる局面において、抗原を以前に免疫されていない非ヒト哺乳動物からの乳が、該抗原と特異的に反応できることが分かった。これは我々に、該非ヒト哺乳動物が該抗原について免疫化されていないという事実にも関わらず、該抗原と特異的に結合する抗体を、該乳が含むことを示唆した。本発明において、この局面は、大量の乳が処理されるところの工業的設定において利用される。この局面において、すなわち、本発明は、乳から抗原特異的抗体を得る為の方法であって、該乳を収集する前に該抗原により免疫化されていない哺乳動物から該乳が得られることを特徴とする上記方法を提供する。抗原についての免疫化により、該抗原と典型的にはアジュバントとを含む組成物を、哺乳動物における該抗原、該アジュバント又はそれらの組み合わせに対する免疫応答を得る意図を有する該哺乳動物に投与することが意味される。該投与は、該組成物の該成分と該哺乳動物の免疫細胞との強い接触の簡便化を伴う。そのような投与は、典型的には、皮膚層を破ることにより、該哺乳動物の内側に該組成物を置くことを伴う。投与の他の手段が存在し、そして用いられうる。例えば該哺乳動物の食物(の一部)としての抗原の経口投与は、しばしば、該抗原についての該哺乳動物における寛容性の誘発(induction of tolerance)を伴い、及びそれ故に、本発明における免疫化であると考えられない。好ましい実施態様において、該方法は、乳を分泌する哺乳動物から乳を回収すること及び該乳から該抗体を収集することを含む。好ましくは、同じ種の少なくとも2の個体の哺乳動物の乳が、該抗体を収集する前に、プール(pool)される。このようにして、低含量の抗体も、十分な量で収集されうる。この目的にとって、好ましくは同じ種の、少なくとも10、より好ましくは少なくとも100の個体の哺乳動物の乳から抗体を収集することが好ましい。好ましい実施態様において、該哺乳動物は反芻動物である。好ましくは、該哺乳動物は雌ウシであり、好ましくはウシ属(the genus BOS)のメンバーである。ウシ属のうち、市販で利用される種が好ましい。好ましくは、該反芻動物は、ガヤル(Gayal)種、Bos frontalis種(家畜ガウル)、Bos mutus種(ヤク)又はBos taurus(家畜のウシ)である。他の好ましい実施態様において、該反芻動物は、ヤギ又はヒツジであり、好ましくはヤギ亜科のメンバーである。この亜科のうち、Ovis属又はCapra属のメンバーが好ましい。該Ovis属のうち、Ovis aries種(家畜のヒツジ)が好ましい。Capra属のうち、Capra aegagrus hircus種(家畜化されたヤギ)が好ましい。他の好ましい実施態様において、該反芻動物は、ラクダ、ロバ、バッファロー、ウマ又はラマである。免疫化されていない反芻動物からの乳は、種々さまざまな抗原に特異的な抗体を含む。好ましい調製物は、Escherichia属のメンバー、好ましくはEcherichia coli、Salmonella属のメンバー、好ましくはSalmonella typhimurium、Campylobacter属のメンバー、好ましくはCampylobacter jejuni、Helicobacter属のメンバー、好ましくはHelicobacter pilori、Bordotella属のメンバー、好ましくはBordotella pertussis、Clostridium属のメンバー、Shigella属のメンバー、Streptococcus属のメンバー、好ましくはStreptococcus pneumoniae、Staphylococcus属のメンバー、好ましくはStaphylococcus aureus、Haemophilus属のメンバー、好ましくはHaemophilus influenzae、Pseudomonas属のメンバー、好ましくはPseudomonas aeruginosa、Moraxella属のメンバー、好ましくはMoraxella catarrhalis、Chlamydia属のメンバー、好ましくはChlamydia pneumoniae、Mycoplasma属のメンバー、好ましくはMycoplasma pneumoniae又はLegionella属のメンバー、好ましくはLegionella pneumophilaに対して向けられた抗体を含む。好ましいウィルス特異的抗体は、influenza属のメンバー、好ましくはインフルエンザウィルスA又はインフルエンザウィルスB、呼吸器合胞体ウィルスのメンバー、ロタウィルスのメンバー、novovirusのメンバー、エンテロウィルスのメンバー、サイトメガロウィルスのメンバー又はアデノウィルスのメンバーに対して向けられる。
【0018】
乳はいくつかの成分、特に脂肪、油、非抗体タンパク質及び炭水化物を含むので、該抗体を収集する前に、該乳を処理工程にかけることが好ましい。抗体の収集にとって適当な出発調製物は生乳である。バクテリアの対数的な死滅を達成するために熱により処理(殺菌(pasteurization)といわれる処理)された乳もまた用いられうる。乳についての沸点より上の温度で、カゼインミセルは不可逆的に凝集(又は「凝乳」)するであろう故に、殺菌は典型的には、沸騰より低い温度を用いる。今日用いられる殺菌の2つの主な種類がある:高温/短時間(HTST)処理及び賞味期限延長(Extended Shelf Life:ESL)処理。HTST処理において、乳は、熱い水により外側で加熱された金属プレートの間を又はパイプを通って進められ、そして71.7℃(161°F)に、15〜20秒間、加熱される。ESL乳は、微生物ろ過工程及び、HTSTより低い温度を有する。「殺菌された」と単にラベルされた乳は、通常は、HTST方法により処理されている。乳はまた、増加された圧力と一緒に、71.7℃よりも低い温度で殺菌されうる。これは、バクテリアの対数的死滅において、より低い圧力でのより高い温度と同等に効果的である。
【0019】
乳を処理する工程は好ましくは、分離工程を含む。好ましい分離工程は、該乳が(部分的に)脂肪について枯渇させられるところの工程を含む。すなわち、抗体の収集のための他の好ましい出発調製物は、脂肪枯渇工程を受けた乳を含む。好ましい実施態様において、該分離工程は、少なくとも2つの部分に該乳を分離することを含み、そして、そのうちの少なくとも1つがタンパク質に富む部分である。バッチ処理された乳からの抗体の収集が可能である、しかしながら、該処理工程が、(半)連続的な処理の一部であることが好ましい。特に好ましい実施態様において、ホエー画分が該乳から調製され、そして該抗体が該ホエーから収集される。すなわち、好ましい実施態様において、抗体の収集の為の出発調製物はホエーを含む。さらに他の実施態様において、抗体の収集の為の出発調製物は、発酵した乳を含む。出発点は、本明細書上記で示されたとおりでありうるが、そこから製造される再構成された濃厚物又は乾燥粉末からでもよい。該哺乳動物は、言及されたように、それが該抗原について前に免疫化されていないという基準に基づき、選択される。好ましい実施態様において、該哺乳動物は、該乳の収集についてのさらなる基準に基づき選択される。このさらなる基準は、任意の基準であってよく、例えば、泌乳サイクルにおける時であってよい。好ましい実施態様において、該哺乳動物は、それが通常の乳(すなわち出生直後の乳(初乳とも言われる)でない)を産生していることの基準に基づき選択される。さらに好ましい実施態様において、該さらなる基準は、該乳の抗体含有量、収集された乳における抗体特異性、該哺乳動物による食物摂取の種類若しくは食物サプリメント摂取の種類、該哺乳動物の病原体の抗原についてのワクチン接種、又は、2又はそれより多い該基準の組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】初乳、乳及びホエーからのウシIgG(左のパネル)及びIgA(右のパネル)抗体の、Salmonella typhymurium(上のパネル)及びEscherichia coli(下のパネル)からの連続的に希釈されたLPSへの結合性を示すグラフである。値は、450nmの波長で測定されたODとして表される。
【図2】初乳からのウシのIgG及びIgA抗体の、連続的に希釈されたアレルゲン(チリダニ類、カバノキ花粉、及び草の花粉のアレルゲン)への結合性を示すグラフである。値は、450nmの波長で測定されたODとして表される。
【図3】初乳中のIgG及びIgAの経上皮輸送(上のパネル)及びTEER及びFE4輸送に対するpH勾配にわたる輸送実験の効果を示すグラフである。誤差バーは、ELISA測定の標準偏差を示す。上のパネル中の水平線は、初乳が添加されなかった対照培養物中において測定されたIgG及びIgAの量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましい実施態様において、該抗体はIgG抗体、IgA抗体、IgG抗体又はIgM抗体である。好ましくは、該抗体は、該乳から得られる、抗体に富む画分から収集される。好ましくは、該方法は、該抗体に富む画分に存在する他のタンパク質と比較したときに、IgG、IgAまたはそれらの組み合わせの水準を増大する為の工程をさらに含む。好ましくは、β−ラクトグロブリンの量は、少なくとも50%だけ減少される。これは、例えば、β−ラクトグロブリンの特異的な加水分解により、又はサイズ分離による若しくはβ−ラクトグロブリンに特異的な抗体を用いた除去によるβ−ラクトグロブリンの除去により、達成されうる。すなわち好ましくは、本発明の抗体を収集するための方法はさらに、該抗体に富む画分中のβ−ラクトグロブリンの量を減少するための工程を含む。本発明の方法は好ましくは、該抗原特異的抗体に富む抗体画分を得るための親和性精製工程をさらに含む。同じ種の種々の哺乳動物の大きなコレクションからの抗原特異的抗体を収集する可能性を有することは、それぞれの個体の乳の試料中の該抗体のありうる低い普及(prevalence)にもかかわらず、親和性精製された抗原特異的抗体のかなりの量の親和性精製を許す。
【0022】
本発明に従う抗原特異的抗体を収集するための方法により得られる抗原特異的抗体がさらに提供される。好ましくは、該抗体はポリクローナル抗体である。この実施態様において、該抗原特異的抗体は、免疫化された非ヒト哺乳動物から又は免疫化されていない非ヒト哺乳動物から得られうる。さらに好ましい実施態様において、該抗原は、アレルギー抗原、ウィルス抗原、バクテリア抗原又はそれらの組み合わせである。
【0023】
本発明の文脈における語「抗原」は、ヒトの抗原、ヒトに感染でき且つ病気を引き起こすことができる病原体、ヒトがアレルギー性になりうるアレルゲン、又はそれらの組み合わせである。すなわち、本発明の文脈における哺乳動物の免疫化は、ヒトの抗原、ヒトに感染でき且つ病気を引き起こすことができる病原体、ヒトがアレルギー性になりうるアレルゲン、又はそれらの組み合わせによる該哺乳動物の免疫化を意味する。それ故に、該哺乳動物における病気を処置し又は防ぐための、該哺乳動物の病原体の抗原についての該哺乳動物のワクチン接種は、本発明の文脈において免疫化と考えられない。
【0024】
本発明はさらに、本発明の非ヒト哺乳動物抗原特異的抗体を含む組成物を提供する。好ましくは、該抗原特異的抗体は、該組成物中に1%未満の合計量の抗体を含む。より好ましくは、該抗原特異的抗体は、該組成物中に0.1%未満の合計量の抗体を含む。好ましい実施態様において、少なくとも15%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも80%の抗体がIgG、IgA又はそれらの組み合わせである。好ましくは、該組成物は、IgAを越えてIgGに富む。本発明の他の好ましい実施態様において、該組成物は、IgGを越えてIgAに富む。
【0025】
本発明はさらに、本発明の非ヒト哺乳動物の抗体を含む組成物を提供し、ここで該組成物は該組成物中のタンパク質の合計量の0.001〜30%である量で抗体を含む。好ましくは、該抗体は、該組成物中に、タンパク質の合計量の0.1〜30%の量で存在する。好ましくは、該抗体は、タンパク質の合計量の約5〜30%、より好ましくは10〜30%、より好ましくは約20〜30%の量で存在する。好ましい実施態様において、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%の抗体がIgG、IgA又はそれらの組み合わせである。好ましくは、該組成物は、IgAを越えてIgGに富む。本発明の他の好ましい実施態様において、該組成物は、IgGを越えてIgAに富む。
【0026】
本発明はさらに、本発明に従う非ヒト哺乳動物抗原特異的抗体又は本発明に従う組成物を含む医薬組成物を提供する。なお、さらに、医薬の調製の為の、本発明に従う非ヒト哺乳動物の抗原特異的抗体、又は本発明に従う組成物、の使用方法が提供される。好ましい実施態様において、経口投与のための医薬の調製のための、本発明に従う非ヒト哺乳動物抗原特異的抗体又は本発明に従う組成物の使用方法が提供される。
【0027】
さらなる局面において、本発明は、本発明に従う非ヒト哺乳動物の抗原特異的抗体、又は本発明に従う組成物、を含む経口投与のための調製物を提供する。好ましい実施態様において、該調製物は、該抗体又は組成物を含む送達ビヒクルを含む。該送達ビヒクルは好ましくは、該ビヒクルからの該抗体の、標的とされた腸内放出を可能にする。
【0028】
さらに他の局面において、本発明は、本明細書上記で言及されたとおりの、本発明に従う調製物を含む、新生児又は乳幼児用の処方物(formula)を提供する。本発明に従う非ヒト哺乳動物抗原特異的抗体又は本発明に従う組成物を含む新生児又は乳幼児用の処方物も提供される。また、新生児又は乳幼児用の処方物が提供され、ここで該処方物のタンパク質含有量の0.001〜5%が、本発明に従う非ヒト哺乳動物の抗原特異的抗体であり、好ましくは該処方物は含む、該処方物のタンパク質含有量の少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも5%が、本発明に従う非ヒト哺乳動物抗原特異的抗体タンパク質である。好ましくは、本発明の非ヒト哺乳動物抗体は、タンパク質の合計量の約1〜30%、より好ましくは10〜30%、より好ましくは約20〜30%の量で存在する。該処方物のタンパク質含有量の好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%が、該非ヒト哺乳動物の抗体タンパク質である。好ましくは、該処方物のタンパク質含有量の約5〜10%が抗体タンパク質である。より好ましくは、該処方物のタンパク質含有量の約10〜30%が抗体タンパク質である。
【0029】
さらに他の実施態様において、本明細書上記で示された新生児又は乳幼児用の処方物が提供され、ここで該処方物のタンパク質含有量の少なくとも0.001、より好ましくは少なくとも0.01、より好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも5%が、抗原特異的抗体タンパク質である。好ましくは、該処方物のタンパク質含有量の約0.01〜5%が、本発明に従う非ヒト哺乳動物抗原特異的抗体タンパク質である。すなわち、該処方物のタンパク質含有量の約0.001〜5%が、本発明に従う抗原特異的抗体、又は本発明に従う組成物、から成る。
【0030】
本発明はさらに、本発明の抗体及び/又は本発明の組成物を含む、非ヒト哺乳動物又はヒトのための食物サプリメント又は食物を提供する。この実施態様において、該抗原特異的抗体は、免疫化された非ヒト哺乳動物または免疫されていない非ヒト哺乳動物から得られうる。
【0031】
免疫化された又は免疫化されていない非ヒト哺乳動物からの抗体は好ましくは、アレルゲン抗原、ヒトの成長因子、ヒトの抗原、呼吸器のウィルス、呼吸器のバクテリア、寄生生物、又は他の関連のある病気に関する抗原に特異的である。好ましい実施態様において、該抗体は、免疫化された非ヒト哺乳動物から得られる。
【0032】
本発明のウシ抗体及び/又は非ヒト哺乳動物抗体は、食品製品又は栄養補助物、飲料、カプセル又はカプセル化された抗体含有調製物として、経口的に投与されうる。免疫化されていない若しくは免疫化されたウシ及び/又は非ヒト哺乳動物からのウシ抗体及び/又は非ヒト哺乳動物抗体は、筋肉注射、静脈内投与などの他の経路を通じて又は直腸又は膣を通じても投与されうる。
【0033】
経口的に送達されるウシ抗体調製物及び/又は非ヒト哺乳動物抗体調製物は、水状の溶液、乳、ヨーグルトのような流体で処方されてよく、又は凍結乾燥したタンパク質調製物として処方されてよく、又は胃において該抗体を保護する為にカプセル化されうる。好ましくは、そのような抗体は、乳幼児用の処方物又は、ヒトの消費を意図された乳製品に添加される。本発明の他の好ましい実施態様において、該抗体は、キャリアと一緒に、プロバイオティックバクテリア(probiotic bacteria)と一緒に、又はプレバイオティック(prebiotic)(例えばガラクトオリゴ糖)と一緒に、カプセル化される。
【0034】
本発明に従う非ヒト哺乳動物抗原特異的抗体又は本発明に従う組成物を含む栄養補助物がさらに提供される。該栄養補助物は、経口の消費にとって適当である任意の形態をとる。好ましくは、該栄養補助物は、カプセル、カプセル化されたタンパク質、又は液状の溶液である。該栄養補助物は、進行している疾患の症状を予防し、処置し、又は少なくとも部分的に緩和することが意図される。好ましくは、該疾患は、食物アレルギー(食物アレルゲン特異的抗体:ピーナッツ、大豆、ヘーゼルナッツ、卵、リンゴなど)、炎症性腸疾患(TNF−α又はIL−23特異的抗体)、花粉アレルギー(草花粉及び木花粉特異的抗体、好ましくはカバノキ花粉特異的抗体)、他の吸入アレルギー(チリダニ類、ネコ、菌類など)、又は毒アレルギーである。すなわち、好ましい実施態様において、本発明の方法を用いて調製される抗体調製物は、食物アレルゲン抗原(好ましくはピーナッツ、大豆、ヘーゼルナッツ、卵、リンゴなどのアレルギー抗原)に特異的な抗体、又は炎症性腸疾患抗原に特異的な抗体(好ましくはTNF−α又はIL−23特異的抗体)、又は花粉アレルギー抗原に特異的な抗体(草花粉又は木花粉に特異的な抗体、好ましくはカバノキ花粉に特異的な抗体)、又は他の吸入アレルギー抗原(チリダニ類、ネコ、菌類など)に特異的な抗体に特異的な抗体、又は毒アレルギー抗原に特異的な抗体を含む。
【0035】
実施例
【実施例1】
【0036】
ヒトの上皮へのバクテリアの接着に対する、免疫化されていない雌ウシからの乳由来抗体の効果
【0037】
ヒト小腸上皮細胞株Caco−2並びにヒトのムチン産生性大腸上皮細胞株HT29−MTXが、Transwellのプレート中で培養され、そして、15〜21日の培養期間の間、単層へと分化することが許される。単層の完全性は、接着アッセイにおける使用の前に、経上皮電気抵抗(TEER)を測定することにより、毎週測定される。放射能標識されたバクテリア(2つの病原性バクテリア:腸病原性のEscherichia coli及びSalmonella typhymurium、並びにプロバイオティック株としてLactobacillus casei)が、一定時間、予め定められた範囲の微生物対上皮細胞(例えば10:1、100:1及び500:1)で、上皮細胞とインキュベートされ、そして、結合しなかった微生物が洗い流される。接着バクテリアは、d.p.m.(壊変毎分)計数により定量される。該実験は、ウシ抗体調製物の存在下又は不在下(464μg/ml及び46.4μg/mlのIgGに相当する)で実施される。該バクテリアのCaco−2及びHT29−MTXへの接着は、抗体調製物により減少される。
【実施例2】
【0038】
乳由来抗体調製物中に存在する病原体特異的抗体水準
【0039】
E.coli特異的抗体、Salmonella特異的抗体及びClostridium特異的抗体を測定するためのサンドウィッチELISAが、ウシ抗体を含有する調製物中のバクテリア特異的IgG、IgM及びIgAの量を定量する為に用いられる。96ウェルELISAプレートが、100μLのPBS中の熱で殺されたバクテリア(E.coli、Salmonella、Clostridium)により被覆される。該プレートは、加湿された環境下において4℃で一晩インキュベートされる。該プレートは、ウェル当たり200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05%Tween−20)により3回洗浄され、そして、ウェル当たり200μlのブロックバッファー(=洗浄バッファー+1%ゼラチン)により、加湿された環境下において37℃で1時間、ブロックされる。このインキュベーション後、該プレートが、ウェル当たり200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween−20)により3回洗浄され、そしてブロックバッファー中に希釈されたウシ抗体含有試料の100μL/ウェルが添加される。
【0040】
加湿された環境下における37℃での1時間のインキュベーション後、プレートは、ウェル当たり200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、そして100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000希釈されたIgG−HRP(AbD Serotec、cat# AAI21P)が、バクテリア特異的IgGを検出するためにウェルごとに添加される。IgAの検出のために、100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000へ希釈された抗ウシIgA−HRP(AbD Sertec、cat# AAI20P)が、及び、ウシIgMの検出のために、100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000へと希釈された抗ウシIgM−HRP(AbD Serotec、cat# AAI19P)が用いられる。
【0041】
該プレートが、加湿された環境下において37℃で1時間インキュベートされ、ウェル当たり200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、PBSによる4回目の洗浄が続き、そして、100μLのTMB基質バッファーが、該ウェルの夫々に添加される(両方ともBiosource Int.からのCat# 45.014.01及び45.011.03の10mLの基質バッファー中の100μLのTMB)。
【0042】
着色反応が1MのHSOの100μL/ウェルの添加により停止され、そして該プレートが450nmの波長で読まれる。これらのデータは、免疫化されていないものからのウシ抗体の調製物中のバクテリア特異的ウシ抗体の存在を実証する。
【実施例3】
【0043】
乳由来抗体調製物中のアレルゲン特異的IgG、IgA又はIgM抗体
【0044】
草アレルゲン特異的抗体を測定するためのサンドウィッチELISAが、ウシ抗体を含有する調製物中の草アレルゲン特異的なIgG、IgM及びIgAの量を定量する為に、用いられる。96ウェルELISAプレートが、100μLの、PBS中の草花粉アレルゲン抽出物(いくつかの温帯の草の混合物、ALK−Abello、Horsholm、デンマーク)により被覆される。該プレートが、加湿された環境において4℃で一晩インキュベートされる。該プレートは、ウェルごとに200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05%Tween−20)により3回洗浄され、そして、ウェルごとに200μLのブロックバッファー(=洗浄バッファー+1%ゼラチン)により、加湿された環境において37℃で1時間ブロックされる。このインキュベーションに続いて、該プレートは、ウェル当たり200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05%Tween−20)により3回洗浄され、そしてブロックバッファー中に希釈されたウシ抗体含有試料の100μL/ウェルが添加される。加湿された環境における37℃での1時間インキュベーション後、該プレートは、ウェルごとに200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、そして100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000希釈された抗ウシIgG−HRP(AbD Serotec、cat# AAI21P)が、草花粉特異的IgGを検出するために、ウェルごとに添加される。IgAの検出のために、100μlの、ブロックバッファー中に1:50,000へ希釈された抗ウシIgA−HRP(AbD Serotec、cat# AAI20P)が、そしてウシIgMの検出のために、100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000へと希釈された抗ウシIgM−HRP(AbD Serotec、cat# AAI19P)が用いられる。
【0045】
該プレートは、加湿された環境において37℃で1時間インキュベートされ、ウェルごとに200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、PBSによる4回目の洗浄が続き、そして、100μLのTMB基質(両方ともBiosource Int.からのcat# 45.014.01及び45.011.03の10mL基質バッファー中の100μLのTMB)がウェルの夫々に添加される。
【0046】
着色反応が、1MのHSOの100μL/ウェルの添加により停止され、そして、該プレートが450nmの波長で読まれる。草アレルゲン特異的ウシIgG、IgA及びIgMの存在が、すなわち、免疫化されていない雌ウシからのウシ抗体の調製物中に実証され、草を食べることが反芻動物におけるアレルゲン特異的抗体応答を誘発することを示す。これは、潜在的な食物アレルゲンを反芻動物に給餌することが、該反芻動物にワクチン接種することの必要無く、乳中における(食物)アレルゲン特異的抗体応答を誘発する為の方法でありうることを示す。
【実施例4】
【0047】
草アレルゲンに特異的なウシ乳由来IgG抗体は、CD23(低親和性IgEレセプター)へのIgE−アレルゲン複合体の結合を防ぎ、及び、好塩基球ヒスタミン放出を防ぐ。
【0048】
アレルゲン抽出物が、これらのアレルゲンに特異的なヒトIgE抗体と予備複合体化されたとき、これらの複合体は、低親和性IgEレセプター(B細胞、単球及び樹状細胞上に発現される)に結合でき及び好塩基球及び肥満細胞上に存在する高親和性IgEレセプターに結合できる。これは、今度は、Th2細胞への非常に効率的なアレルゲン提示をもたらし、長期のアレルギー応答をもたらし、並びに、好塩基球及び肥満細胞の脱顆粒をもたらす。IgEと異なるクラスのアレルゲン特異的ブロッキング抗体、好ましくはIgG抗体を導入することにより、この抗原提示並びに、好塩基球及び肥満細胞からの炎症性メディエーターの放出を防ぐことが可能である。
【0049】
CD23へ結合する草花粉アレルゲン−IgE複合体が、以下の方法を通じて調査される。草花粉アレルゲン特異的IgG抗体を含むウシ抗体調製物の不在又は存在下における、草花粉アレルゲン抽出物(いくつかの温帯の草の混合物、ALK−Abello、Horsholm、デンマーク)の連続的な希釈が、4mlのFACSチューブ中にFACSバッファー(PBS、0.1% BSA、0.05% NaN)の20μlの量で調製される。37℃での30分のインキュベーション後、草花粉アレルゲン特異的IgEを含む30μlの患者の血清が添加され、そして、該血清及びアレルゲンが、加湿された環境下で37℃で1時間、アレルゲン−IgE複合体を形成することが許される。このインキュベーション後、高水準のCD23(低親和性IgEレセプター)を発現する、50,000のEBV形質転換されたB細胞が添加され、そして該細胞が4℃で1時間インキュベートされ、IgE−アレルゲン複合体がCD23へと結合することを許す。このインキュベーション期間後、該細胞が、4mLのFACSバッファーにより洗浄され、そして、1,500RPMで5分間遠心される。洗浄後、IgEに対するFITC複合体化抗体(ヤギ抗ヒトポリクローナル抗体;Kirkegaard & Perry Laboratories)の50μlが、該FITC標識化抗IgE抗血清の非特異的な結合を防ぐ為に5%正常ヤギ血清の存在下で、該細胞に添加される。該チューブは、4℃で半時間インキュベートされ、細胞が、4mLのFACSバッファーにより洗浄され、そして、1,500RPMで5分間遠心される。200μLのFACSバッファーが、チューブごとに添加され、そして、該チューブが、FACSCaliburフローサイトメーターにより直接に測定される。10,000のイベントが記録される。
【0050】
すなわち、EBV形質転換されたB細胞株上に発現されるCD23への草アレルゲン特異的IgEの結合性が、限定された量の草アレルゲンの存在下において示される。この結合性は、草花粉アレルゲン特異的IgG抗体を含むウシ乳由来調製物を添加することにより減少される。同様に、草花粉アレルギー患者からのヒト抹消血好塩基球からのヒスタミン放出実験において、該好塩基球によるヒスタミン放出が、草花粉アレルゲン特異的IgG抗体を含むウシ乳由来調製物の存在下において抑制されることが実証される。この実験において、ヒト抹消血単核細胞(PBMC)が、密度遠心により草花粉アレルギー患者からのヘパリン処理された血液から分離される。該PBMCは集められ、そして、草花粉アレルゲン特異的IgG抗体を含むウシ乳由来調製物と一緒に又は当該ウシ乳由来調製物無しで37℃で30分間、予備インキュベートされた一連の希釈の草花粉アレルゲンとインキュベートされる。該PBMCは37℃で30分間インキュベートされ、その後、その上清が、放出されたヒスタミンの量を市販のヒスタミン測定キットを用いて測定するために除去される。この方法において、ヒト好塩基球によるヒスタミンの放出が、ウシの草花粉アレルゲン特異的IgG抗体の存在により減少されることが実証される。
【実施例5】
【0051】
ヒト腸上皮細胞株Caco−2の単層を超えるウシIgG(及びIgM、IgA)の輸送
【0052】
ヒト小腸上皮細胞株Caco−2がTranswellプレート中で培養され、そして、15〜21日の培養期間の間、単層へと分化することが許される。単層の完全性(integrity)は、輸送アッセイにおける使用の前に経上皮電気抵抗(TEER)を測定することにより、週ごとに測定される。ウシ抗体の輸送を測定するために、ウシ抗体を含む調製物(実施例1を参照されたい)が該Caco−2単層に添加され、そして、試料が、ウシ抗体の該輸送を測定するために、いくつかの時点でとられる。この実験は、傍細胞輸送のインデューサー(カプリン酸ナトリウム)又は経細胞輸送のインヒビター(アクチノマイシンDによる該細胞の8時間予備処理)の存在下又は不在下において実施される。加えて、FITC標識されたデキストランが、小分子の傍細胞輸送を可視化するために、追加の対照として、全てのウェルにおいて用いられる。該Caco−2単層を横切って輸送された抗体水準が、前の実施例において記載されたELISAと同様の、全IgG、IgM及びIgA抗体の測定のために開発されたサンドウィッチELISAにより測定される。手短に言うと、96ウェルELISAプレートが、PBS中の100μLの、PBS中に1:800希釈されたヒツジ抗ウシIgG(IgG捕捉抗体として、Bethyl Cat# A10−118A−8)、ウェルごとに100μLの、PBS中の希釈されたヒツジ抗ウシIgA(IgA捕捉抗体−Bethyl Cat# A10−121A−8)、又はウェルごとに100μLの、PBS中に希釈されたヒツジ抗ウシIgM(IgM捕捉抗体−Bethyl cat# A10−101A−8)により被覆される。該プレートが、加湿された環境下で4℃で一晩インキュベートされる。このインキュベーションに続き、該プレートが、ウェルごとに200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween−20)により3回洗浄され、そして、加湿された環境下で37℃で1時間、ウェルごとに200μLのブロックバッファー(=洗浄バッファー+1%ゼラチン)によりブロックされる。該プレートが、ウェルごとに200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween−20)により3回洗浄され、そしてブロックバッファー中に希釈されたウシ抗体含有試料の100μL/ウェルが添加される。
【0053】
加湿された環境下における37℃での1時間のインキュベーション後、該プレートが、ウェルごとに200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、そして100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000希釈された抗ウシIgG−HRP(AbD Serotec、cat# AAI21P)が、ウシIgGの存在を検出するために、ウェル毎に添加される。IgAの検出の為に、100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000へ希釈された抗ウシIgA−HRP(AbD Serotec、cat# AAI20P)が、及びウシIgMの検出のために、100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000へ希釈された抗ウシIgM−HRP(AbD Serotec、cat# AAI19P)が、用いられる。該プレートが、加湿された環境下で37℃で1時間インキュベートされ、ウェルごとに200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、PBSによる4回目の洗浄が続き、そして100μLのTMB基質(いずれもBiosource Int.からの、Cat# 45.014.01及び45.011.03の、10mL基質バッファー中の100μLのTMB)がウェルの夫々に添加される。該試料中に存在するウシ抗体の総量が、ウシIgG、IgA及びIgMを含む標準的ウシ血清(Bethyl Cat#RS10−103)の標準曲線に対して定量される。
【0054】
すなわち、Caco−2単層を超えるウシ抗体の輸送が実証される。加えて、アクチノマイシン−Dによる該細胞の予備処理による該輸送の減少、及びカプリン酸ナトリウム(傍細胞輸送のインデューサー)の添加による輸送の増大は、ウシ抗体が、ヒト腸上皮を超えて能動的に(actively)輸送されることを示す。
【実施例6】
【0055】
食物アレルゲン特異的ウシIgG抗体は、食物アレルゲンの摂取の際のアレルギー反応を防ぐことができる。
【0056】
雌ウシが、ピーナッツタンパク質抽出物により、十分に高いピーナッツ特異的抗体水準が該ウシからの乳中に検出されるまで、免疫化される。乳が集められ、もし可能ならば該乳を加熱することなく、チーズ製造後のホエーから又は該乳から直接に抗体が分離され及び精製される。ピーナッツアレルギー患者が選択され、2つの集団に分けられる。両方の集団が二重盲検(ピーナッツ感受性についての閾値水準を決定する為の、プラシーボにより制御された食物誘発(placebo controlled food challenge))を受ける。この誘発につづき、1つの集団がピーナツにより免疫化された雌ウシからの抗体調製物を含む食事に置かれ、そして対照集団が、対照のウシ抗体調製物を含む食事を与えられる(免疫されていない雌ウシ)。該食事についての3週間から3ヶ月の期間の後、全ての患者が第二の二重盲検(それらのピーナッツの閾値を決定する為の、プラシーボにより制御された食物誘発)を受ける。両方の時点で、血液試料が、ウシ抗体の量(ピーナッツ特異的抗体及び総ウシ抗体の水準の両方)を決定する為に収集される。これらの抗体の水準は、草花粉アレルゲン抽出物の代わりにピーナッツアレルゲン抽出物がELISAプレートの表面上に被覆されることの修正を伴う、実施例6に記載されたELISA(総抗体水準のため)及び実施例3に記載されたELISAを用いて検出される。
【0057】
この研究の結果は、ピーナッツアレルゲン特異的ウシ抗体の摂取が、ピーナッツアレルギーの患者が耐えられる、ピーナッツアレルゲンの量を増加させることを示し、そしてウシアレルゲン特異的抗体の経口送達がアレルギー患者におけるアレルギー反応を減少する為のよい方法でありうることを示唆する。加えて、該研究は、抗原特異的ウシ抗体(この場合はピーナッツ特異的抗体)が、食物アレルギー患者の血中へ取り込まれることを実証し、ウシの抗原特異的抗体を、ヒトの個体へと全身的に送達することが可能であることを示唆する。
【実施例7】
【0058】
乳由来抗体調製物中に存在する病原体特異的抗体水準
【0059】
ELISAが、初乳(20mg/mlで溶解された)、乳及びホエー(全て免疫化されていない雌ウシから)中のバクテリア特異的IgG及びIgAの存在を検出する為に用いられた。96ウェルELISAプレートが、PBS中に希釈された、E.coli又はSalmonella typhimuriumからの10μg/mlの市販入手可能なLPSの100μlを夫々のウェルに添加することにより被覆された。該プレートは、加湿された環境下において、4℃で一晩インキュベートされた。該プレートはウェルごとに200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween−20)により3回洗浄され、そして、ウェルごとに200μLのブロックバッファー(=洗浄バッファー+1%ゼラチン)により、加湿された環境下において37℃で1時間ブロックされた。このインキュベーション後、該プレートは、ウェルごとに200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween−20)により3回洗浄され、そしてブロックバッファー中に希釈された、連続的に希釈されたウシイムノグロブリン含有試料の100μL/ウェルが添加された。加湿された環境下における37℃での1時間のインキュベーション後、該プレートが、ウェルごとに200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、そして100μLの、ブロックバッファー中に1:20,000希釈された抗ウシIgG−HRP(AbD Serotec、cat# AAI21P)が、バクテリア特異的IgGを検出する為にウェルごとに添加された。IgAの検出のために、100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000へと希釈された抗ウシIgA−HRP(AbD Serotec、cat# AAI20P)が用いられた。
【0060】
該プレートが、加湿された環境下で37℃で1時間インキュベートされ、ウェルごとに200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、PBSによる4回目の洗浄が続き、そして100μLのTMB基質(両方ともBiosource Int.からのCat# 45.014.01及び45.011.03の10mLの基質バッファー中の100μLのTMB)が、ウェルの夫々に添加された。
【0061】
着色反応が、1MのHSOの100μL/ウェルの添加により停止され、そして該プレートが450nmの波長で読まれた。
【0062】
図1に示されるとおり、初乳は、Escherichia coli及びSalmonella typhimuriumからのLPSと特異的に反応するIgA及びIgGイムノグロブリンを含む。これらのLPS特異的イムノグロブリンは、より低い濃度であるが、乳及びホエー中にも検出される。これらのデータは、免疫化されていない雌ウシからの初乳、乳及びホエー中のバクテリア特異的ウシ抗体の存在を実証する。
【実施例8】
【0063】
乳由来抗体調製物中に存在するアレルゲン特異的抗体水準
【0064】
ELISAが、免疫化されていない雌ウシからの初乳中のアレルゲン特異的IgG及びIgAの存在を決定する為に用いられた。96ウェルELISAプレートが、PBS中に希釈された、チリダニ類Dermatophagoides pteronyssinus(Dp)、カバノキ花粉(Betula verrucosa)又は草花粉(全てALK Abello、Horsholm、デンマーク、から)からのアレルゲンタンパク質抽出物の連続的な希釈物により被覆された。該プレートが、加湿された環境下で4℃で一晩インキュベートされた。該プレートが、ウェルごとに200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05%のTween−20)により3回洗浄され、そしてウェルごとに200μLのブロックバッファー(=洗浄バッファー+1%ゼラチン)により、加湿された環境下で37℃で1時間ブロックされた。このインキュベーションの後、該プレートは、ウェルごとに200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween−20)により3回洗浄され、そしてブロックバッファー中に希釈されたウシイムノグロブリン含有試料の100μL/ウェルが添加される。加湿された環境下における37℃での1時間のインキュベーション後、該プレートはウェルごとに200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、そして100μLの、ブロックバッファー中に1:20,000希釈された抗ウシIgG−HRP(AbD Serotec、cat# AAI21P)が、バクテリア特異的IgGを検出する為に、ウェル毎に添加された。IgAの検出のために、100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000へと希釈された抗ウシIgA−HRP(AbD Serotec、cat# AAI20P)が用いられた。
【0065】
該プレートは、加湿された環境下で37℃で1時間インキュベートされ、ウェルごとに200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、PBSによる4回目の洗浄が続き、そして100μLのTMB基質(両方ともBiosource Int.からのCat# 45.014.01及び45.011.03の10mLの基質バッファー中の100μLのTMB)がウェルの夫々に添加された。
【0066】
着色反応が、1MのH2SO4の100μL/ウェルの添加により停止され、そして該プレートが450nmの波長で読まれた。
【0067】
図2に示されるとおり、初乳は、チリダニ類のアレルゲン、カバノキ花粉のアレルゲン、及び草花粉のアレルゲンと特異的に反応するIgAイムノグロブリン並びにIgGイムノグロブリンを含む。これらのデータは、免疫化されていない雌ウシからの初乳中のアレルゲン特異的ウシ抗体の存在を実証する。
【実施例9】
【0068】
ヒト腸上皮細胞株Caco−2の単層を超えるウシIgG及びIgAの輸送
【0069】
ヒト小腸上皮細胞株Caco−2が、Transwellプレート中で培養され、そして、15〜21日の培養期間の間、単層へと分化することが許された。単層の完全性が、輸送アッセイにおける使用の前に経上皮電気抵抗(TEER)を測定することにより、週毎に測定された。実験は、TEERが、少なくとも500ohm/cmの値に達した後に実施された。ウシイムノグロブリンの輸送を測定するために、ウシイムノグロブリンを含むウシ初乳が、pH6.0、6.5及びpH7を有する10mM MESバッファー中に20mg/mlの濃度(2.4mg/mlのIgG及び0.15mg/mlのIgAに相当するw/v)へと希釈され、そして、Caco−2単層の頂端側に添加された。該Caco−2細胞の基底側でのpHは7.4であり、すなわち、該ヒト腸内において発生するようにpH勾配を形成した。加えて、小分子の傍細胞輸送を可視化するために、該培地に頂端側で全てのウェルにおいて対照として、FITC標識化デキストラン(FD4、0.01mg/ml)が添加されて、測定された輸送が漏出性の単層の結果であることを排除した。TEERが、4時間のインキュベーション期間の後に再度測定され、そして、ウシイムノグロブリンの輸送及びFD4の漏出を測定する為に、基底側で試料がとられた。Caco−2単層を横切って輸送されたイムノグロブリン水準は、全部のウシIgG及びIgAの測定のために開発されたサンドウィッチELISAにより測定された。手短に言うと、96ウェルELISAプレートが、100μLの、PBS中の、PBS中に1:800希釈されたヒツジ抗ウシIgG(IgG捕捉イムノグロブリンとして−Bethyl Cat# A10−118A−8)、ウェルごとに100μLの、PBS中に希釈されたヒツジ抗ウシIgA(IgA捕捉イムノグロブリン−Bethyl Cat# A10−121A−8)、又はウェルごとに100μLの、PBS中に希釈されたヒツジ抗ウシIgM(IgM捕捉イムノグロブリン−Bethyl cat# A10−101A−8)により被覆された。該プレートは、加湿された環境下で4℃で一晩インキュベートされた。このインキュベーションに続き、該プレートが、ウェルごとに200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween−20)により3回洗浄され、そしてウェルごとに200μLのブロックバッファー(=洗浄バッファー+1%ゼラチン;DIFCO CAT# 214340)により、加湿された環境下で、37℃で1時間ブロックされた。該プレートは、ウェルごとに200μlの洗浄バッファー(PBS+0.05%Tween−20)により3回洗浄され、そしてブロックバッファー中に希釈されたウシイムノグロブリン含有試料の100μL/ウェルが添加された。
【0070】
加湿された環境下における37℃での1時間のインキュベーション後、該プレートが、ウェルごとに200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、そして100μLの、ブロックバッファー中に1:20,000希釈された抗ウシIgG−HRP(AbD Serotec、cat# AAI21P)が、ウシIgGの存在を検出するために、ウェル毎に添加された。IgAの検出のために、100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000へ希釈された抗ウシIgA−HRP(AbD Sertec、cat# AAI20P)が、及びウシIgMの検出のために、100μLの、ブロックバッファー中に1:50,000へと希釈された抗ウシIgM−HRP(AbD Serotec、cat# AAI19P)が用いられた。該プレートは、加湿された環境下で37℃で1時間インキュベートされ、ウェル当たり200μlの洗浄バッファーにより3回洗浄され、PBSによる4回目の洗浄が続き、そして100μLのTMB基質(両方ともBiosource Int.からのCat# 45.014.01及び45.011.03の10mLの基質バッファー中の100μLのTMB)がウェルの夫々に添加された。着色反応が1MのHSOの100μL/ウェルの添加により停止され、そして該プレートが450nmの波長で読まれた。試料中に存在するウシIgG、IgA及びIgMイムノグロブリンの合計量が、ウシIgG、IgA及びIgMを含む標準的ウシ血清(Bethyl Cat# RS10−103)の標準曲線に対して定量された。
【0071】
図3は、IgA及びIgGの両方が、特に6.5のpHで、頂端側から基底側へと輸送されることを示す。輸送されたIgG及びIgAの量は比較的低いが、基底側へと傍細胞的に輸送された、FITC標識化されたデキストランを測定することにより並びにTEERを測定することにより検出されるとおり、上皮における漏出は初乳の添加により誘発されず、ウシIgA及びIgGが、ヒト腸上皮を超えて能動的に輸送されうることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳から抗原特異的抗体を得る為の方法であって、該乳を収集する前に該抗原により免疫化されていない非ヒト哺乳動物から該乳が得られることを特徴とする上記方法。
【請求項2】
乳を分泌する哺乳動物から乳を収集すること及び該乳から該抗体を収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
同じ種の少なくとも10の個体の哺乳動物の乳が、該抗体を収集する前にプールされる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該乳が、該抗体を収集する前に、処理工程に付される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該乳処理工程が、分離工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該分離工程が、少なくとも2つの部分に該乳を分離することを含み、且つそのうちの少なくとも1つがタンパク質に富む部分である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該処理工程が、(半)連続的処理の一部である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ホエー画分が該乳から調製され、そして該抗体が該ホエーから収集される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該反芻動物が、該乳の収集についてのさらなる基準に基づき選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該さらなる基準が、該乳の抗体含有量、収集された乳中の抗体特異性、該哺乳動物による食物又は食物サプリメント摂取、該哺乳動物の病原体の抗原についてのワクチン接種又は該基準の2以上の組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該哺乳動物が反芻動物である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該反芻動物が、雌ウシ、ヤギ又はヒツジである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該抗体が、IgG、IgA、IgG又はIgM抗体である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
該抗原がアレルギー抗原、ウィルス抗原、バクテリア抗原、又はそれらの組み合わせである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
抗体に富む画分が、該乳から収集される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
IgG、IgA又はそれらの組み合わせを特異的に収集する工程をさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
該抗原特異的抗体に富む抗体画分を得るための親和性精製工程をさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法により得られる抗原特異的抗体、好ましくはポリクローナル抗原特異的抗体。
【請求項19】
請求項18に記載の抗体を含む組成物であって、該抗原特異的抗体が、該組成物中の抗体の総量の0.1%未満を構成する上記組成物。
【請求項20】
該抗体の少なくとも15%が、IgG、IgA又はそれらの組み合わせである、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
IgGに富む、請求項19又は請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
請求項18に記載の抗体又は請求項19〜21のいずれか1項に記載の組成物を含む、医薬組成物。
【請求項23】
医薬の調製のために、請求項18に記載の抗体又は請求項19〜21のいずれか1項に記載の組成物を使用する方法。
【請求項24】
経口投与のための医薬の調製のために、請求項18に記載の抗体又は請求項19〜21のいずれか1項に記載の組成物を使用する方法。
【請求項25】
請求項18に記載の抗体又は請求項19〜21のいずれか1項に記載の組成物を含む、経口投与の為の調製物。
【請求項26】
該抗体又は組成物を含む送達ビヒクルを含む、請求項25に記載の調製物。
【請求項27】
該送達ビヒクルが、該ビヒクルからの該抗体の、標的とされた腸内放出を可能とする、請求項26に記載の調製物。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれか1項に記載の調製物を含む、新生児又は乳幼児用の処方物。
【請求項29】
請求項18に記載の抗体又は請求項19〜21のいずれか1項に記載の組成物を含む、新生児又は乳幼児用の処方物。
【請求項30】
該処方物のタンパク質含有量の少なくとも0.1%が、抗体タンパク質である、新生児又は乳幼児用の処方物。
【請求項31】
該処方物のタンパク質含有量の少なくとも0.1%が、請求項18に記載の抗体又は請求項19〜21のいずれか1項に記載の組成物からなる、請求項30に記載の新生児又は乳幼児用の処方物。
【請求項32】
反芻動物の抗体、好ましくは反芻動物の抗原特異的抗体を、個体の腸管の粘膜側に送達する方法であって、反芻動物の該抗体を含む経口投与のための調製物を用意すること及び該調製物を該個体に経口的に投与することを含む上記方法。
【請求項33】
経口投与のための該調製物が、好ましくは該抗原特異的抗体を含む送達ビヒクルを含み、該送達ビヒクルが、該ビヒクルからの該抗体の、標的とされた腸内放出を可能とする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
該抗体が、乳を分泌する反芻動物の乳から得られる、請求項32又は請求項33に記載の方法。
【請求項35】
該抗体が、アレルギー抗原に特異的である、請求項32〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
該個体が、自己免疫疾患又は他の過度に活発な免疫系を患う、請求項32〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
該個体が、炎症性腸疾患を患う、請求項32〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
該抗体が、該自己免疫疾患に関連する微生物の抗原に特異的である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
該抗体が、免疫細胞により排出される因子に特異的である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
該抗体が、抗TNF−α抗体または抗IL−23抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
該個体が少なくとも1歳齢である、請求項32〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
該個体が少なくとも2歳齢である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
該抗体が、タイプIgG、IgA又はそれらの組み合わせである、請求項32〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
該抗体が、胃腸管を通じて血流へ送達される、請求項32〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
該抗体を肺に送達するための、請求項32〜36及び38〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
該抗体が、ウィルス病原体若しくはバクテリア病原体の抗原又はアレルギーの抗原に特異的である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
該抗体が、アレルギーに関連する草花粉抗原若しくは木花粉抗原、又はヒトにおいてアレルギー反応を引き起こす他の吸入アレルゲンに特異的である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
該抗体が、肺についての向性を有する微生物又はウィルスに特異的である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
該抗体が、 Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、Haemophilus influenzae、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Moraxella catarrhalis、Chlamydia pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae、Legionella pneumophila、インフルエンザウィルスA、インフルエンザウィルスB、呼吸器合胞体ウィルス又はアデノウィルスに特異的である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
非反芻動物における疾患の全身的処置の為の医薬の調製の為に、反芻動物の抗原特異的抗体を使用する方法。
【請求項51】
該非反芻動物がヒトである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
該医薬が、経口投与のためのものである、請求項50又は請求項51に記載の方法。
【請求項53】
プレバイオティックをさらに含む、請求項18〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項54】
腸上皮細胞の頂端側から基底側への該抗体の輸送を増強するために、請求項53に記載の組成物を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−532318(P2010−532318A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503999(P2010−503999)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050214
【国際公開番号】WO2008/127105
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(507058203)フリーズランド ブランズ ビー.ブイ. (12)
【Fターム(参考)】