乳オリゴ糖による炎症の阻害

乳オリゴ糖または乳オリゴ糖を含む複合糖質の投与を含む、被験体において炎症を阻害する方法が開示される。本発明の1つの局面は、その必要のある被験体に、1つまたはそれ以上の乳由来オリゴ糖またはそのオリゴ糖を含む1つまたはそれ以上の複合糖質を含む、有効な量の組成物を投与することによって炎症を阻害する方法を特徴とする。乳由来のオリゴ糖は、オリゴ糖の非還元末端に位置する第1の糖単位(すなわち、フコース、ガラクトース、マンノース、またはシアル酸)、および第1の糖単位に直接連結した第2の糖単位(すなわち、ガラクトース、グルコース、マンノース、またはN−アセチルグルコサミン)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2009年6月6日に出願された、米国仮出願第61/223,145号(この内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
人乳中の様々な成分、例えば乳免疫グロブリン、白血球、オリゴ糖、および複合糖質は、乳児を感染性疾患から保護する。従って人乳は、天然の有効な「栄養補助食品(neutriceutical)」、すなわち免疫学的利点を伝えるモデル食品であると考えられる。
【0003】
人乳はまた、乳児において炎症性腸疾患を発症するリスクを低減することが見出された。この抗炎症活性は、人乳中の白血球、サイトカイン、および抗酸化剤に起因していた。非特許文献1を参照のこと。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Buescher、Adv Exp Med Biol.(2001)501:207−22
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、人乳中のオリゴ糖が炎症を阻害するという予期せぬ発見に基づく。
【0006】
よって、本発明の1つの局面は、その必要のある被験体に、1つまたはそれ以上の乳由来オリゴ糖またはそのオリゴ糖を含む1つまたはそれ以上の複合糖質を含む、有効な量の組成物を投与することによって炎症を阻害する方法を特徴とする。乳由来のオリゴ糖は、オリゴ糖の非還元末端に位置する第1の糖単位(すなわち、フコース、ガラクトース、マンノース、またはシアル酸)、および第1の糖単位に直接連結した第2の糖単位(すなわち、ガラクトース、グルコース、マンノース、またはN−アセチルグルコサミン)を含む。1つの例において、そのオリゴ糖は、1つの非還元末端および1つの還元末端を有する直鎖状分子である。別の例において、それは複数の非還元末端および1つの還元末端を有する分岐分子である。そのオリゴ糖が2つの非還元末端を有する場合、1つの非還元末端の糖単位はフコースであり得、そして他方の非還元末端においてそれはフコース、ガラクトース、またはシアル酸であり得る、またはあるいは、1つの非還元末端の糖単位はシアル酸であり、そして他方の非還元末端においてそれはガラクトースまたはシアル酸である。還元末端の糖単位は、グルコースまたはN−アセチルグルコサミンであり得る。
【0007】
上記で記載した方法において使用される複合糖質は、脂質、ペプチド、ポリペプチド、または炭水化物に結合体化した、1つまたはそれ以上の同様に上記で記載した乳由来オリゴ糖を含み得る。
【0008】
本発明の別の局面は、乳から単離されたオリゴ糖で炎症を阻害する方法を特徴とし、それはヒト、ウシ科の動物(例えばウシ、ヤギ、またはヒツジ)、または別の哺乳類(例えばウマまたはラクダ)由来であり得る。そのオリゴ糖を、従来の方法による単離の前に、まず乳から脂肪およびタンパク質を除去することによって調製し得る。1つの例において、脂肪およびタンパク質の除去後、その乳をカーボンカラム(carbon column)に入れ、そしてカラムに吸着したオリゴ糖をアルコール溶液(例えば50%エタノール水溶液)で溶出する。
【0009】
本発明の方法を、消化管の疾患のような、炎症性疾患に罹患する、またはそれを発症するリスクのある被験体、例えばヒト、または非ヒト哺乳類に適用し得る。例は、食道炎、胃腸炎、大腸炎、胆管炎、虫垂炎、炎症性腸疾患(すなわち、潰瘍性大腸炎、壊死性腸炎、およびクローン病)、または過敏性腸症候群を含む。
【0010】
炎症を阻害するために、および炎症性疾患を治療するための医薬を製造するために、1つまたはそれ以上の乳由来オリゴ糖、またはそのオリゴ糖を含む1つまたはそれ以上の複合糖質を使用することも、本発明の範囲内である。
【0011】
本発明の1つまたはそれ以上の実施態様の詳細を、下記の説明において述べる。本発明の他の特徴または利点が、以下の図面および実施例の詳細な説明から、およびまた添付の請求から明らかである。
【0012】
まず図面を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、人乳オリゴ糖が、T84腸細胞によるTNF−α誘導IL−8産生を阻害することを示す図である。
【図2】図2は、人乳オリゴ糖が、ヒト腸管粘膜によるTNF−α誘導単球走化性タンパク質−1産生を阻害することを示す図である。
【図3】図3は、フラジェリン(flagelin)、ポリイノシン−ポリシチジン酸二本鎖RNA、またはIL−1βが、未熟なヒト腸管粘膜の器官培養におけるIL−8産生を誘導し、そして人乳オリゴ糖がこの誘導IL−8産生を阻害することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1つまたはそれ以上の乳由来オリゴ糖、またはそのオリゴ糖を含む1つまたはそれ以上の複合糖質で炎症を阻害する方法が、本明細書中で開示される。
【0015】
乳由来オリゴ糖、すなわち少なくとも3つの糖単位を有するものは、乳で見出される天然に存在するオリゴ糖、その天然に存在するオリゴ糖の断片、またはその天然の対応物と比較して修飾された(例えば硫酸化、アセチル化、またはリン酸化)糖単位を含むその改変体のいずれかである。このオリゴ糖は、非還元末端モチーフSを含み、ここでSはフコース、ガラクトース、マンノース、またはシアル酸(N−アセチルまたはN−グリコリル)であり、そしてSはガラクトース、グルコース、マンノース、またはN−アセチルグルコサミンである。Sはαまたはβグリコシド結合によってSに連結する。Sがフコースである場合、SおよびSの間のグリコシド結合は、好ましくはα1,2、α1,3、またはα1,4結合である。それがシアル酸である場合、そのグリコシド結合は、好ましくはα2,3またはα2,6結合である。
【0016】
乳由来オリゴ糖およびそのようなオリゴ糖を含む複合糖質(glycolconjugates)は、当該分野で周知である。例えば、米国特許出願第61/168,674およびWO2005/055944を参照のこと。以下の表は、人乳に天然に存在する代表的なオリゴ糖を列挙する:
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
【表3】

【0020】
【表4】

本明細書中で記載された乳由来オリゴ糖を、従来の方法によって調製し得る、例えば化学的に合成、乳から精製、または微生物において産生し得る。WO2005/055944を参照のこと。下記は、乳からオリゴ糖を単離する例である。まず乳を遠心分離によって脱脂して脱脂乳を産生する。次いでその脱脂乳をアセトン(例えば50%水性アセトン)およびエタノール(例えば67%水性エタノール)のような有機溶媒と混合して、乳タンパク質を沈殿させる。遠心分離して、上清を回収し、そしてクロマトグラフィーにかける。オリゴ糖を含む画分を回収およびプールする。もし必要なら、そのように調製したオリゴ糖を、従来の方法、例えば透析または凍結乾燥によって濃縮し得る。
【0021】
乳オリゴ糖をまた、脱脂乳を30,000MWCO限外ろ過膜に通し、透析物を回収し、その透析物を500MWCO限外ろ過膜に通し、そして乳オリゴ糖を含む残余分を回収することによって、脱脂乳から単離し得る。
【0022】
1つまたはそれ以上の乳由来オリゴ糖を含む、本明細書中で記載された複合糖質を、オリゴ糖をバックボーン分子(例えば炭水化物、脂質、核酸、またはペプチド)に直接、またはリンカーによって結合体化することによって、化学的に合成し得る。本明細書中で使用される場合、「複合糖質」は、バックボーン部分に結合した糖部分を含む複合体を指す。その糖およびバックボーン部分は、共有結合または非共有結合によって、または封入(entrapment)(例えば、他方における1つの部分、もしくは他方の中の1つの部分に、または第3の部分における実体、もしくは第3の部分の中の実体のいずれかまたは両方に)のような他の形式の結合によって結合し得る。本明細書中で記載される複合糖質は、1つの型の乳由来オリゴ糖(すなわち、1つのバックボーン分子に結合した、1つまたはそれ以上のコピーの乳由来オリゴ糖)を含み得る。あるいは、その複合糖質は、複数の型の乳由来オリゴ糖を含む。1つの例において、その乳由来オリゴ糖(例えばラクト−N−フコペンタオースI、2−フコシルラクトース、ラクト−N−ジフコヘキサオースI、ラクトジフコテトラオース、またはそのアセチル化改変体)は、その還元末端糖単位によって、脂質、タンパク質、核酸、または多糖類に共有結合している。好ましくは、その還元末端糖単位は、N−アセチルグルコサミンである。
【0023】
上記で記載された複合糖質を作成するために適当なペプチドバックボーンは、複数のグリコシル化部位(例えばアスパラギン、リシン、セリン、またはスレオニン残基)および低いアレルゲン性の可能性を有するものを含む。例は、アミラーゼ、胆汁酸塩−刺激リパーゼ、カゼイン、葉酸結合タンパク質、グロブリン、グルテン、ハプトコリン、ラクトアルブミン、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、リポプロテイン、リパーゼ、リゾチーム、ムチン、卵白アルブミン、および血清アルブミンを含むがこれに限らない。
【0024】
典型的には、乳由来オリゴ糖を、O−結合によってセリンまたはスレオニン残基に、またはN−結合によってアスパラギン残基に共有結合し得る。これらの結合を形成するために、そのオリゴ糖の還元末端の糖単位は、好ましくはアセチル化糖単位、例えばN−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、およびN−アセチルマンノサミンである。オリゴ糖を、標準的な方法を用いてペプチド(例えばタンパク質)に結合し得る。例えば、McBroomら、Complex Carbohydrates、PartB、28:212−219、1972;Yarivら、Biochem J.85:383−388、1962;Rosenfeldら、Carbohydr.Res.46:155−158、1976;およびPazur、Adv.Carbohydr.Chem.Biochem.39:405−447、1981を参照のこと。
【0025】
1つの例において、乳由来オリゴ糖を、リンカーによってバックボーン分子に結合する。代表的なリンカーが、WO2005/055944において記載される。そのオリゴ糖を、酵素的反応、例えば糖転移酵素反応によってリンカーに結合し得る。フコシル基転移酵素、ガラクトース転移酵素、グルコース転移酵素、マンノース転移酵素、ガラクトサミン転移酵素、シアル酸転移酵素、およびN−アセチルグルコサミン転移酵素を含む多くの糖転移酵素を使用して、本明細書中で記載された複合糖質を作成し得る。これらの糖転移酵素についてのさらなる詳細は、米国特許第6,291,219;6,270,987;6,238,894;6,204,431;6,143,868;6,087,143;6,054,309;6,027,928;6,025,174;6,025,173;5,955,282;5,945,322;5,922,540;5,892,070;5,876,714;5,874,261;5,871,983;5,861,293;5,859,334;5,858,752;5,856,159;および5,545,553号において見出し得る。
【0026】
あるいは、本明細書中で記載された複合糖質を、従来の方法によって、例えば限外ろ過膜を通すことによって、非極性溶媒における沈殿によって、または混合できない溶媒の間の分割によって、乳から精製し得る。
【0027】
1つまたはそれ以上の上記で記載された乳オリゴ糖または複合糖質を、薬学的に受容可能な担体と混合して薬学的組成物を形成し得る。薬学的組成物中の担体は、処方の活性成分と適合性である(および好ましくはそれを安定化し得る)、および治療する被験体にとって有害ではないという意味において、「受容可能」でなければならない。例えば、オリゴ糖/複合糖質とより溶解性の複合体を形成するシクロデキストリンのような可溶化剤、またはさらなる可溶化剤を、オリゴ糖/複合糖質の送達のために医薬品担体として利用し得る。他の担体の例は、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびD&C Yellow#10を含む。
【0028】
あるいは、そのオリゴ糖/複合糖質をまた、食品業界において周知の方法に従って、食品産物または栄養補助食品として処方し得る。1つの例において、それらは人工栄養乳の成分である。
【0029】
そのオリゴ糖および複合糖質は、炎症の阻害および炎症関連疾患(すなわち炎症性疾患)の治療において有効である。炎症は、傷害または感染に反応した、生きた組織の反応(例えば、熱、発赤、腫脹、または疼痛)である。局所または全身性の、急性または慢性炎症によって特徴付けられる、代表的な炎症関連疾患は、炎症性網膜症(例えば糖尿病性網膜症)、皮膚病(例えば皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹、壊死性血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、好酸球性筋炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、および好酸球性筋膜炎)、過敏性肺疾患(例えば過敏性間質性肺炎、好酸球性肺炎、遅延型過敏症、間質性肺疾患またはILD、特発性肺線維症、および関節リウマチに関連するILD)、喘息、およびアレルギー性鼻炎を含む。上記で列挙した炎症性疾患を治療することに加えて、本発明の方法は、食道炎(すなわち食道潰瘍のような食道の炎症)、胃腸炎(すなわち胃炎、十二指腸潰瘍、回腸炎、または腸炎のような、胃および腸管の粘膜の炎症)、大腸炎(すなわち、憩室炎のような大腸の炎症)、胆管炎(すなわち胆管の炎症)、および虫垂炎(すなわち虫垂の炎症)を含む消化管の炎症性疾患の治療において特に有効である。消化管の炎症性疾患はまた、炎症性腸疾患(例えばクローン病および潰瘍性大腸炎)および過敏性腸症候群を含む。
【0030】
本明細書中で使用される「治療する」と言う用語は、炎症性疾患、炎症性疾患の症状、または炎症性疾患の素因を有する被験体に、その疾患、疾患の症状、または疾患の素因を治療する(cure)、治癒する、軽減する、やわらげる、変化させる、治療する(remedy)、寛解させる、改善する、または影響を与える目的で、1つまたはそれ以上の活性薬剤を含む組成物を適用または投与することを指す。
【0031】
本発明の方法を実施するために、有効な量の上記で記載した薬学的組成物を、経口で、非経口で、吸入スプレーによって、局所的に、直腸内に、鼻腔内に、頬側に、膣内に、または埋め込んだリザーバーによって、被験体(例えばヒト乳児または高齢者)に投与し得る。本明細書中で使用される「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内、および頭蓋内注射または注入技術を含む。本明細書中で使用される「有効な量」は、単独で、または1つまたはそれ以上の他の活性薬剤と組み合わせて、被験体に治療的効果を与えるために必要な各活性薬剤の量を指す。当業者によって認識されるように、投与経路、賦形剤の使用、および他の活性薬剤との同時使用に依存して、有効な量は変動する。
【0032】
滅菌注射用組成物、例えば滅菌注射用水性または油性懸濁液を、適当な分散剤または湿潤剤(Tween80のような)および懸濁剤を用いて、当該分野で公知の技術に従って処方し得る。滅菌注射用調製物はまた、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液のような、無毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液であり得る。採用し得る受容可能なビヒクルおよび溶媒は、マンニトール、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液を含む。それに加えて、滅菌固定油を、溶媒または懸濁媒体として従来法で採用する(例えば合成モノ−またはジグリセリド)。オレイン酸のような脂肪酸およびそのグリセリド誘導体が、特にそのポリオキシエチル化バージョンにおいて、オリーブ油またはヒマシ油のような、天然の薬学的に受容可能な油と同様、注射溶液の調製において有用である。これらの油性溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、またはカルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤を含み得る。TweenまたはSpanのような他の通常使用される界面活性剤、あるいは薬学的に受容可能な固体、液体、または他の剤形の製造において通常使用される他の同様な乳化剤、または生物学的利用能増強剤(bioavailability enhancer)も、処方の目的のために使用し得る。
【0033】
経口投与のための組成物は、カプセル、錠剤、エマルション、および水性懸濁液、分散、および溶液を含むがこれに限らない、あらゆる経口で受容可能な剤形であり得る。経口使用のための錠剤の場合、通常使用される担体は、ラクトースおよびコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤も典型的に加えられる。カプセル形式における経口投与のために有用な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液またはエマルションを経口で投与する場合、活性成分を、乳化剤または懸濁剤と組み合わせて油相に懸濁または溶解し得る。もし望ましいなら、一定の甘味料、香料、または着色剤を加え得る。鼻腔内エアロゾルまたは吸入組成物を、医薬品処方の分野において周知である技術に従って調製し得る。
【0034】
適当なインビトロおよびインビボアッセイを使用して、特定の乳オリゴ糖または様々な乳オリゴ糖の組み合わせの抗炎症活性を予備的に評価し得る。例えば、そのオリゴ糖を、炎症促進性サイトカイン(例えばIL−1、IL−6、TNF−アルファ、GM−CSF、IL−8、およびIL−12)の分泌を阻害する能力に関して、インビトロで試験し得る。抗炎症活性を、動物モデル(例えばマウスモデル)においてさらに確認し得る。その結果に基づいて、適当な投与量範囲および投与経路も決定し得る。
【0035】
さらなる精緻化無しに、当業者は、上記の記載に基づいて、本発明を最も完全な程度まで利用し得ると考えられる。従って、以下の特定の実施例は、いかなる方法においても全く開示の残りの制限としてではなく、単なる説明として解釈される。本明細書中で引用される全ての出版物は、参考文献に組み込まれる。
【実施例】
【0036】
腸管の炎症を阻害するための人乳オリゴ糖の使用
人乳オリゴ糖の調製
Chaturvediら、Anal.Biochem.251(1):89−97、1997において記載された方法に従って、人乳からオリゴ糖画分を単離した。簡単には、プールした人乳をまず脱脂し、そして次いでエタノールを加えてタンパク質を沈殿させた。できた溶液を、オリゴ糖を吸着するカーボンカラムにかけた。そのカラムを5%エタノールで洗浄し、そして吸着したオリゴ糖を、60%エタノールで溶出して、人乳オリゴ糖(「HMOS」)を含む画分を産生した。
【0037】
HMOSはTNF−処理T84細胞において、IL−8の分泌を阻害する
新生児の上皮の炎症を研究するために日常的に使用されるT84細胞を、24穴Falcon器官培養皿において、37℃において95%Oおよび5%COで、FBS(5%)、Hepes緩衝剤、NaOH、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補充したDMEM/F12培地中で培養した。これらの細胞を、(i)ネガティブコントロールとして生理食塩水、(ii)ポジティブコントロールとしてTNF−α(10ng/mL)、(iii)HMOS(5g/L)、および(iv)TNF−α(10ng/mL)およびHMOS(5g/L)で処理した。16時間後、各培養上清中のIL−8の濃度を、ELISAによって測定した。そうして得られた結果を、細胞数に対して標準化した(すなわち、対応する細胞培養の全細胞タンパク質含有量によって割る)。
【0038】
図1に示すように、TNF誘導IL−8産生は、HMOS処理T84細胞において有意に低減され、HMOSが抗炎症活性を示したことを示す。
【0039】
HMOSはヒト腸管粘膜において、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)の分泌を阻害する
14週流産児からのヒト小腸腸管粘膜サンプルを、24穴Falcon器官培養皿において、FBS(5%)、グルコース(5g/L)、トリシン緩衝剤(20mM、pH7.4)、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン(0.5μg/L)、酢酸β−レチニル(1mg/L)、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補充したCMRL1066培地と、5%CO中で、37℃でインキュベートした。その粘膜サンプルを、(i)ネガティブコントロールとして生理食塩水、(ii)ポジティブコントロールとしてTNF−α(10ng/mL)、(iii)HMOS(5g/L)、および(iv)TNF−α(10ng/mL)およびHMOS(5g/L)で処理した。16時間後、炎症促進性ケモカインであるMCP−1の濃度を、各培養上清においてELISAによって測定した。そのように得た結果を、上記で記載したように細胞数に対して正規化した。
【0040】
示した、この研究から得られたデータは、TNF−αの存在下で、ヒト腸管粘膜は、炎症の尺度である高レベルのMCP−1を分泌し、およびこのTNF−α誘導MCP−1産生は、HMOSによって減弱したことを示す。図2を参照のこと。
【0041】
未熟ヒト腸管粘膜の器官培養におけるIL−8分泌の阻害
22週流産児からのヒト小腸腸管サンプルを、24穴プレートで、上記で記載した修飾CMRL培地と、5%COにおいて37℃でインキュベートした。そのサンプルを、5mg/mLのHMOSの非存在下または存在下で18時間、IL−1β(10ng/mL)、フラジェリン(1mg/mL)、ポリイノシン−ポリシチジン酸2本鎖RNA(PIC;10ng/mL)、またはPBS(ネガティブ(netative)コントロールとして)で処理した。培養上清中のIL−8分泌のレベルを、ELISAキット(R&D Systems)を用いて二連で測定し、versa maxプレートリーダー(Molecular Devices、CA、USA)で450nmにおいて検出した。各OD450の値を、対応する器官培養の全タンパク質量に対して標準化した。
【0042】
フラジェリン(Flagelin)、ポリイノシン−ポリシチジン酸2本鎖RNA、およびIL−1βは全て、IL−8の分泌によって明らかであるように、炎症促進性の反応を誘導した。図3を参照のこと。この炎症促進性の反応は、HMOSによって有意に減弱された。
【0043】
合わせると、上記で示した結果は、乳オリゴ糖は炎症の阻害に有効であることを示す。
【0044】
他の実施態様
本明細書中で開示された全ての特徴を、あらゆる組み合わせで組み合わせ得る。本明細書中で開示された各特徴を、同じ、等価の、または同様の目的のための代替の特徴によって置換し得る。従って、他に明確に述べなければ、開示された各特徴は、一般的な一連の等価または同様の特徴の単なる例である。
【0045】
上記の説明から、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確認し得る、そしてその意図および範囲から離れることなく、様々な使用および条件にそれを適合させるために、本発明の様々な変化および修飾を行い得る。従って、他の実施態様も請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症を阻害する方法であって、該方法は、炎症の阻害を必要とする被験体に、少なくとも1つの乳由来のオリゴ糖、または該オリゴ糖を含む複合糖質を含む、有効量の組成物を投与する工程を包含し、該オリゴ糖は、第1の糖単位および第2の糖単位を含み、ここで、第1の非還元末端に位置する該第1の糖単位は、フコース、ガラクトース、マンノースまたはシアル酸であり、かつ該第1の糖単位に連結した該第2の糖単位はガラクトース、グルコース、マンノースまたはN−アセチルグルコサミンである、方法。
【請求項2】
前記第1の糖単位がフコースである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オリゴ糖が、2’−フコシルラクトース、ラクト−N−フコペンタオースI、または前記還元末端がグルコースの代わりにN−アセチルグルコサミンであること以外は該オリゴ糖と同一である、その改変体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴ糖が、第2の非還元末端を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の非還元末端における前記糖単位がフコースである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記オリゴ糖が、ラクト−N−ジフコヘキサオースI、ラクトジフコテトラオース、または前記還元末端がグルコースの代わりにN−アセチルグルコサミンであること以外は該オリゴ糖と同一である、その改変体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の非還元末端における前記糖単位がガラクトースである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記オリゴ糖が、ラクト−N−フコペンタオースII、3’−フコシルラクトース、ラクト−N−フコペンタオースIII、または前記還元末端がグルコースの代わりにN−アセチルグルコサミンであること以外は該オリゴ糖と同一である、その改変体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の非還元末端における前記糖単位がシアル酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記オリゴ糖が、3’−シアリル−3−フコシルラクトース、ジシアロモノフコシルラクト−N−ネオヘキサオース、モノフコシルモノシアリルラクト−N−オクタオース、シアリルラクト−N−フコヘキサオースII、ジシアリルラクト−N−フコペントースII、モノフコシルジシアリルラクト−N−テトラオース、または前記還元末端がグルコースの代わりにN−アセチルグルコサミンであること以外は該オリゴ糖と同一である、その改変体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の糖単位がシアル酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記オリゴ糖が、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、シアリルラクト−N−ネオテトラオースc、シアリルラクト−N−テトラオースa、または前記還元末端がグルコースの代わりにN−アセチルグルコサミンであること以外は該オリゴ糖と同一である、その改変体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記オリゴ糖が第2の非還元末端を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の非還元末端における前記糖単位がガラクトースである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記オリゴ糖が、モノシアリルラクト−N−ヘキサオース、モノシアリルラクト−N−ネオヘキサオースI、モノシアリルラクト−N−ネオヘキサオースII、シアリルラクト−N−テトラオースb、または前記還元末端がグルコースの代わりにN−アセチルグルコサミンであること以外は該オリゴ糖と同一である、その改変体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の非還元末端における前記糖単位がシアル酸である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記オリゴ糖が、ジシアリルラクト−N−ヘキサオースI、ジシアリルラクト−N−ネオヘキサオース、ジシアリルラクト−N−テトラオース、ジシアリルラクト−N−ヘキサオースII、ジシアリルラクト−N−ヘキサオースI、または前記還元末端がグルコースの代わりにN−アセチルグルコサミンであること以外は該オリゴ糖と同一である、その改変体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複合糖質において、前記オリゴ糖が、炭水化物、脂質またはペプチドと結合体化している、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記被験体が、消化管の炎症性疾患に罹患しているか、またはそのリスクを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記消化管の炎症性疾患が、食道炎、胃腸炎、大腸炎、胆管炎および虫垂炎からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記消化管の炎症性疾患が、潰瘍性大腸炎、クローン病または過敏性腸症候群である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体がヒト乳児である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
炎症を阻害する方法であって、該方法は、炎症の阻害を必要とする被験体に、乳から単離されたオリゴ糖を含む、有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項24】
前記乳が人乳である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記乳が、ウシ科の動物の乳、ウマの乳またはラクダの乳である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ウシ科の動物の乳が、ウシの乳、ヤギの乳またはヒツジの乳である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記オリゴ糖が、以下:
乳を提供する工程、
前記乳から脂肪およびタンパク質を除去する工程、ならびに
該脂肪および該タンパク質を除去した後に、該乳からオリゴ糖を単離する工程
を含むプロセスによって調製される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記単離する工程が、前記乳をカーボンカラムに入れ、アルコール溶液で該カラムから前記オリゴ糖を溶出することによって実行される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記乳が人乳である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記乳が、ウシ科の動物の乳、ウマの乳またはラクダの乳である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記ウシ科の動物の乳が、ウシの乳、ヤギの乳またはヒツジの乳である、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−532195(P2012−532195A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519618(P2012−519618)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/040895
【国際公開番号】WO2011/005681
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(500469235)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (40)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【出願人】(510059893)インスティテュート ナシオナル デ シエンシアス メディカス イ ニュートリシオン (2)
【Fターム(参考)】