説明

乳タンパク質の皮膚科学的な使用

本発明は、挫瘡を治療するための方法であって、ラクトフェリンを含有し、好ましくはさらに特異的な乳漿タンパク質を含有する乳漿タンパク質画分の有効量を、挫瘡に悩む患者に経口的に投与することを含んでなる方法を提供する。前記ラクトフェリンは、好ましくは天然のウシラクトフェリンであり、前記乳漿タンパク質画分は、1日に患者当り10mg〜2gのラクトフェリンのレベルで投与される。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、挫瘡の治療のための分画された乳タンパク質の使用に関する。
【0002】
挫瘡
尋常性挫瘡は、容易に認識できる皮膚科学的な疾患である。それは、最も一般的な皮膚疾患の1つであり、思春期において罹患率はほぼ100%に達する。小さな非炎症性の挫瘡病変にはほとんど困らないが、よりひどい炎症性の結節状の挫瘡を有する人においては、痛み、社会的なきまりの悪さ、ならびに身体的および心理的な瘢痕が生活を変化させ得る。
【0003】
尋常性挫瘡において観察される最も初期の微視的な病変は、微小面皰(コメド)である。この病変は、毛嚢脂腺部位(毛包および皮脂腺からなる)の管の濾胞性のつまりにより特徴づけられる。皮脂は、毛嚢脂腺部位において産生され、いくらかはケラチンプラグの下にさらなるケラチン様物質と共に閉じ込められ、濾胞の拡大を引き起こす。微小面皰の段階において、濾胞上皮過剰増殖(角質増殖)、濾胞性のつまり、ならびに皮脂腺の機能亢進が目立つ。
【0004】
微小面皰は、他の挫瘡病変の前駆体である:病変が増大するにつれて、臨床上明白になり、非炎症性の閉鎖面皰または開放面皰になる(それぞれ白色面皰または黒色面皰)。(微小)面皰が挫瘡プロピオニバクテリウム細菌で満たされる場合、走化性および炎症誘発性の細胞壁ならびに生物学的副産物を分泌する。結果として、炎症性の細胞が濾胞を囲み、濾胞壁を通して分散し、濾胞壁を破壊する酵素を産生する。それにより、丘疹、膿疱、および結節状の嚢胞性の病変のような、より大きく且つ多くの場合炎症性の病変を引き起こす。遺伝的素因、ストレス、食事のような他の因子は、挫瘡の発達および重症度に影響を及ぼし得る。
【0005】
現在の治療
局所的および全身性の治療は、今日の挫瘡治療に対する2つの主要な治療戦略を形成する。病変の重症度に依存して、単一または組み合わせた治療が適用される。一般的に、局所的および全身性の治療は、角質増殖および濾胞性のつまりの阻害、皮脂生成の減少、細菌の負荷および炎症性の反応の減少を目的とする。
【0006】
局所的な治療の主な戦略(ゲル、クリーム、および溶液製剤)は、局所的なレチノイドおよび局所的な抗生物質を含んでなる。全身性または経口的な治療は、主に、中程度から重症の炎症性挫瘡が形成されている患者に対して使用される。男性に対しても女性に対しても、これらの治療には経口的な抗生物質および経口的なレチノイドが含まれる。経口避妊薬が含まれるモルモン治療は、成人および青年期の女性の両方において、ほとんどのタイプの挫瘡に対して場合によっては使用される。
【0007】
しかしながら、上述した治療を使用した場合、レチノイドを使用した場合の皮膚の乾燥、赤み、および炎症から、抗生物質を使用した場合の抗生物質耐性の増大、ならびに経口避妊薬を使用した場合の体重増加および血栓症まで、さまざまな多くの有害な副作用が表れる。後者は、男性の患者には適さないことは自明である。
【0008】
先行技術
US 2004/0214750は、ウシラクトフェリンおよび植物由来の成分を含有する局所的な抗挫瘡クリームについて開示しており、10週間の投与の後、挫瘡が改善したことを示す。また、この局所的なクリームとヒマワリ油中におけるラクトフェリンを含有する経口製剤との組み合わせ投与は、皮膚の状態を有意に改善することが結果として報告されている。ラクトフェリンの起源および本質は開示されておらず、用量についても開示されていない。この文書は、局所的な治療の重要性について強調しており、経口投与のみの場合については示されていない。
【0009】
WO 98/44940は、ラクトフェリンを投与することによりインターロイキン1βの活性を阻害する方法が開示されている。関節炎、喘息、副鼻腔炎、鼻炎、および気管支炎のような、広範な種々のアレルゲンに誘導される状態について言及されており、皮膚炎、乾癬、UV-誘導性の炎症、おむつかぶれ、およびしわが含まれる。「活性成分」の好ましい経口的な用量レベルは、1日に、体重kg当り50mg〜500mgであり、成人1日当り約3〜40gに対応する。皮膚に関連する障害に対して、局所的な製剤のみが考えられている。実験は、ラクトフェリンが腫瘍壊死因子αの合成における阻害効果を有することを示し、アレルゲン誘導性の障害に対する活性を支持すると報告されているが、ラクトフェリンが挫瘡のような皮膚障害に対する活性を有するという実験的な証拠はない。
【0010】
JP-A 7-300425は、病原性の細菌(例えば大腸菌)および齲蝕原性の菌類の付着を阻止するための、ラクトフェリンを含有する飲料および他の組成物について述べている。皮膚の炎症およびにきびを予防するためのローションについても述べている。
【0011】
天然または天然様の薬剤を用いた、改善された効果を有する挫瘡の治療方法を提供することが本発明の目的である。
【発明の説明】
【0012】
本発明によると、ラクトフェリンを含んでなる乳漿タンパク質画分を含有する経口的な組成物を投与することにより、挫瘡が効果的に治療され得るということを見出した。付加的な局所治療は不要であり、むしろ望ましくない。それ故、本発明は、挫瘡を治療する方法であって、ラクトフェリンを含んでなる乳漿タンパク質画分の有効量を挫瘡に悩む患者に経口投与することを含んでなる方法に関する。
【0013】
本発明の方法において使用されるラクトフェリンは、好ましくは天然ウシラクトフェリンである。ウシラクトフェリンは、80kDaの鉄結合糖タンパク質であり、一般に通常のフローラと接触する外分泌中に存在する:乳汁、涙、鼻水、気管支粘液、胃腸液、頚膣部の粘液、精液、および唾液。ウシラクトフェリンの通常の原料は、初乳、乳汁、または乳漿である。特に都合のいい原料は、ラクトフェリンに富んだ乳漿タンパク質画分であり、50〜98重量%のラクトフェリンを含有し、より好ましくは60〜95%のラクトフェリンを含有し、残りは他の乳漿タンパク質またはペプチドである。95%または98%より高いレベルも使用されるが、付加的な利点は見られず、一方でコストが高くなる。特別な実施形態において、前記画分のラクトフェリン含量は75〜90重量%であるか、あるいは90〜98重量%である。この側面において、乳汁のカゼインに由来するタンパク質およびGMP(グリコマクロペプチド)としてのペプチドおよびプロテオースペプトンも、乳漿タンパク質と呼ばれる。他の乳漿タンパク質は塩基性、すなわち酸性イオン交換樹脂から溶出され、等電点がpH 6以上であり、特に7以上であることが好ましい。他の乳漿タンパク質が10kD〜60kDの分子量を有することも好ましい。
【0014】
好ましくは、前記乳漿タンパク質または乳漿ペプチドは、以下の群から選択されるN末端配列を含んでなる:
- Ile-Gln-Arg-Pro-Pro-Lys-Ile-Gln-Val-Tyr
- Xaa-Pro-Val-Thr-[AspまたはArg]-Glu-Asn-Thr-Pro-Ile
(Xaaは、いずれのアミノ酸であってよく、特にGly、Ala、Arg、Met、Val、Phe、またはThrである)
- Xab-Lys-Glu-Thr-Asn-Tyr-Pro-Asn-Lys-Gly
(Xabは、Ser、Gly、またはAspである)。
【0015】
上記配列において、1または2の個々のアミノ酸残基は他のアミノ酸残基に交換されてよいこと、さらに、N末端は1または2の付加的なアミノ酸残基を提供してよいことに注意すべきである。
【0016】
好ましくは、乳漿タンパク質画分は5重量%未満の免疫グロブリン、特に2重量%未満の免疫グロブリンを含有する。さらに、前記画分はラクトペルオキシダーゼが低い、すなわち10重量%未満、特に4重量%未満であることが好ましい。好ましくは、ラクトペルオキシダーゼとラクトフェリンとの重量比は0.4以下であり、特に0.01〜0.2である。
【0017】
乳漿タンパク質画分のラクトフェリンは、純粋なラクトフェリンに基づいて50〜400ppmの鉄(Fe3+)を含み、より好ましくは75〜300ppmであり、最も好ましくは100〜200ppmである。乳漿タンパク質画分自体の鉄含量は、乳漿タンパク質重量の好ましくは40〜350ppm、より好ましくは60〜250ppm、最も好ましくは80〜180ppmである。ラクトフェリンは、好ましくは天然、すなわち本質的に非変性である。
【0018】
ラクトフェリン含有画分は、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、超ろ過等、およびそれらの組み合わせを用いて乳漿タンパク質を分画することにより得られる。前記方法は、一般的に乳製品から開始され、例えば微細ろ過または遠心分離により、通常は最初に脱脂される。前記方法は、さらに、酸性イオン交換樹脂上に負荷すること、洗浄すること、塩基性画分を溶出すること、濃縮すること、塩基性画分を脱塩すること、および乾燥すること(例えば噴霧乾燥)を含んでよい。
【0019】
乳製品の原料は、ヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ラマ、ヤク、バッファロー、ウマ等であってよい。前記乳製品は、乳、濃縮された乳、脱ラクトース乳、低温殺菌された乳、加温された(thermize)乳;乳漿、脱脂した乳漿、チーズ乳漿、カゼイン乳漿、乳酸乳漿、濃縮された乳漿、脱ラクトース乳漿、超ろ過またはナノろ過された乳漿、WPC(乳漿タンパク質濃縮物)、および完全なカゼイン以外のほとんどまたは全ての乳タンパク質を含有する他の乳画分であってよい。
【0020】
前記イオン交換樹脂は、強酸型(硫酸型)または弱酸型(カルボン酸型)であってよい。後者が好ましい。好ましくは、例えばポリメタクリレートに基づいたマクロ孔質、合成ポリマーである。典型的な型には、ミツビシ(イタリア)からのセパビーズ(Sepabeads) FP-SPおよびRohm & Haas (USA)からのアンバーライト(Amberlite) IRC 50が含まれる。
【0021】
天然ウシラクトフェリンが活性薬剤として使用される乳漿タンパク質画分の好ましい成分であるにもかかわらず、その一部(例えば50重量%以下もしくはそれ以上)または全部は、他の哺乳動物(ヒトおよび他の霊長類、ウマ、ヤギ、ラクダ等)に由来するラクトフェリン、動物または植物中で産生される組換えラクトフェリン(ヒト、ウシ等)、切断されたラクトフェリン、ラクトフェリン誘導ペプチド(ラクトフェリシン、ラクトフェランピン等)、出願中のPCT/EP2004/001849に記載されているような酸処理されたラクトフェリン、およびWO 0072874に記載されている固定されたラクトフェリンのような、他のラクトフェリンにより置換されてよい。ラクトフェリンは、特に、ラクトフェリンを含有する液体(乳漿、乳、初乳)の成分またはラクトフェリンおよびEP 869 134 A1に記載されているような乳に由来する成長因子を含んでなる組成物であってよい。
【0022】
ラクトフェリンおよび他の乳漿タンパク質は、それ自体または他の活性成分もしくは支持成分と組み合わせて使用されてよい。使用される付加的な成分の非限定的な例は、哺乳類に由来する生理活性なタンパク質(ラクトペルオキシダーゼ等)、糖タンパク質、酵素、炭水化物、多糖類(例えば、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラゲナン、へパリン)、脂肪酸、ペプチド、アミノ酸、成長因子、リゾチーム、ヒスタチン(histatin)、シスタチン、カゼイン、カゼインホスホペプチド(CPP)、例えば、グルタミン、システイン、グリシン、アルギニン、トリプトファン等の1以上の特定の(条件的な)必須アミノ酸に富んだペプチドもしくはペプチド混合物等;降圧性のペプチド、レチノイド、ビタミン、およびホルモン;非動物性の化合物、すなわち、植物、組み換え体、化学的または他の起源、抗生物質、繊維、プロバイオティクス(probiotics)、プレバイオティクス(prebiotics)、レチノイド、ビタミン、ホルモン、バクテリオシン、乳酸、およびハーブである。
【0023】
ラクトフェリン含有タンパク質画分は、経口的な医薬組成物または栄養性組成物に対して通常の方法で配合されてよい。投与される組成物が栄養性組成物である場合、食品サプリメント、バー、飲料、ヨーグルト、菓子、ガム等としてであってよい。そのような食品は、少なくとも1の炭水化物およびカゼインのような乳漿でないタンパク質を、任意に、脂質、繊維、ビタミン、ミネラル、およびフレーバー剤、甘味料、安定剤等の任意の添加剤のようなさらなる食品成分と一緒に含有する。好ましくは、ラクトフェリン含有乳漿タンパク質画分と炭水化物および/または乳漿でないタンパク質との重量比は、1:4〜1:100、より好ましくは1:9〜1:49である。
【0024】
前記組成物が医薬組成物である場合、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、シロップ、カプセル、溶液、ゲル、ロゼンジ等であってよく、水、デンプン、デンプン誘導体(例えばナトリウムデンプングリコラート)またはデンプン画分、微結晶性セルロースまたはセルロース誘導体、ペクチン、他の多糖類、ラクトース、他の糖のような通常の賦形剤が含まれる。消化管を避けた口腔粘膜を介した吸収がさらなる利点であると考えられるので、錠剤、特に咀嚼錠は、本発明の医薬組成物の好ましい実施形態を構成する。咀嚼錠は、好ましくは柔らかく、好ましくは単位当り少なくとも750mgの全量である。錠剤において、(還元)糖の量は相対的に低い(例えば、乾燥錠剤物質の25重量%未満、特に10重量%未満)こと、賦形剤は、例えば、組成物の少なくとも50重量%、または少なくとも70重量%の非還元糖、多糖類、および糖アルコールから選択されることが好ましい。固体の剤形は、腸溶コーティングで被覆されてもよい。直腸、鼻腔、または非経口的な経路のような他の全身性の投与経路は適切であるが、好ましい投与経路は経口である。
【0025】
用量レベルは、年齢、身体的および栄養的な状態、挫瘡の重症度のような種々の個別の因子に依存し、それは専門家または医師により評価される。典型的な用量レベルは、一日に患者当り、ラクトフェリンを含んでなる乳漿タンパク質画分を10mg〜2g、好ましくは20mg〜1.2gである。効果的な治療のために、一日当り少なくとも40mg、好ましくは少なくとも60mg、さらに80mgの用量が好ましく、例えば、一日に患者当り40〜800mg、または600mg以下のラクトフェリンである。体重の点から、前記用量レベルは一般的に、一日にkg当り0.1〜50mgのラクトフェリンであり、好ましくは0.25〜25mgであり、より好ましくは0.5〜15mg/kg.日であり、さらに1〜10mg/kg.日である。
【0026】
一日量は、単一投与単位で投与されるか、または好ましくは、例えば一日に2〜4回のように一日に複数回投与されてよい。それ故、単一投与単位(例えば錠剤)が日々使用される場合、前記投与単位は単位当り少なくとも10mg、好ましくは40mgのラクトフェリンを含有する。一日当り2投与単位である場合、前記投与単位は、単位当り少なくとも10mg、好ましくは少なくとも20mg、より好ましくは少なくとも30mgを含有する。より頻繁な一日の投与を用いる場合、単位当りのラクトフェリンの量は、同様に、一日量全体が好ましくは少なくとも40mg、好ましくは少なくとも80mgになるようにされる。
【0027】
治療は、例えば1週間〜6ヶ月、または必要な場合はより長く、数日から数ヶ月の範囲の期間続けられてよい。用量レベルは治療期間にわたって一定に維持できる。あるいは、好都合に、前記治療は最初の1〜6週間は相対的に高い用量、例えば上述したレベル〜その2倍のレベルで開始され、その後の第2の期間、例えば4週〜1年間またはさらに長い期間は、例えば上述した半分のレベルの相対的に低い用量で投与されてよい。前記治療は、挫瘡に悩んでいる患者または挫瘡を生じやすい患者に対して使用される。重篤な挫瘡を治療せず、今後さらに増大する傾向がある場合、前記治療は、挫瘡のさらなる拡大を阻害する手段として使用することができる。抗挫瘡治療は、月経期に使用することも適している。
【0028】
本発明は、ラクトフェリン含有組成物にも関し、さらに、上述したように全タンパク質に基づいて2〜25重量%の10〜60kDの分子量を有する塩基性タンパク質を含有する。本発明はさらに、少なくとも10mgまたはより高い量のラクトフェリンを含有する、投与方法に依存する上述した経口投与単位に関する(単一または複数の一日投与)。投与単位は、医薬組成物(例えば錠剤)または上述したような栄養性組成物であってよい。
【実施例】
【0029】
例I:ラクトフェリンを含有する乳漿タンパク質画分の調製
チェダー(Cheddar)乳漿を20分間60℃に加温し、逆浸透法を用いて3〜5倍に濃縮した。濃縮ステップは、最大温度30℃、pH 6.2で行った。濃縮された乳漿を、タイプアンバーライト(Amberlite) IRC-50の酸イオン交換樹脂を負荷したカラムを通過させた。カラムの負荷は、1時間当り6〜8総容積、1サイクル当り20総容積未満で行った。これらの状況下で、イオン交換樹脂リットル当り約2g以下のラクトフェリンが結合する。続いて、樹脂を少なくとも4総容積の水で洗浄した後、0.5 M NaCl未満の塩溶液で洗浄した。望ましい画分を、1Mあるいはそれ以上のNaClを用いて溶出した。溶出緩衝液中に緩衝液を含むことは必要ではない。溶出された画分を脱塩し、当該分野において既知の超ろ過/ダイアフィルトレーションを用いて濃縮した。次に、濃縮物を微細ろ過し、噴霧乾燥した。生成物の分析は、PAGEゲル電気泳動(20%アクリルアミド)およびPVFD膜上でゲルをウエスタンブロットすることにより行った。続いて、主要なバンドをカットし、自動化された配列のエドマン分解法を適用し、ペプチドまたはタンパク質の最初の10のN末端アミノ酸を決定した。
【0030】
例II:例Iで得られた組成物を含有する錠剤
以下の成分は、50mgのラクトフェリンを含有する錠剤を製造するために使用した。
【表1】

【0031】
錠剤の調製:
ステアリン酸マグネシウム以外の全ての成分を10分間混合した。その後、ステアリン酸マグネシウムを加え、3分間続けて混合した。サイズ5/8の咀嚼錠が直接圧縮により作られた。
【0032】
例III:挫瘡の制御における乳漿タンパク質画分の効果のインビトロ試験
44人のティーンエイジャーが試験に登録した(23人の男性と21人の女性、平均年齢15.3歳(13〜19歳の範囲))。被験者はラクトフェリンを含有するウシ乳漿タンパク質画分を含んでなる4つの咀嚼錠(例Iに従って調製した)を、一日当り251mgの乳漿タンパク質画分(一日当り200mgのラクトフェリン)の量で、連続して12週間、朝に2錠、夜に2錠服用した。被験者は前面の写真を撮り、皮膚科医により調べられた。被験者のデータを、治療が開始される前である1週、ならびに2週、4週、8週、および12週に集めた。試験は12週間計画され、写真は8週を通して評価され、ティーンエイジャーを12週にインタビューした。黒色面皰(開放面皰)および非黒色面皰(白色面皰(閉鎖面皰)、丘疹、膿疱、および結節性の病変が含まれる)の数を、額、左頬、右頬、下あご、および鼻についてカウントした。各週、各被験者について、顔の領域の黒色面皰および非黒色面皰の和を算出した。結果を以下の表1に示す。これらの経時的な違いは全て、高度に有意であった(全ての場合でP<0.001)。
【0033】
12週のインタビューにおいて、12.80%のティーンエイジャーが改善、すなわち挫瘡の減少を報告し、治療を続けることを望んだ。90%を超える十代の被験者は、挫瘡に悩む他のヒトに治療を推薦した。さらに、ティーンエイジャーは、付加的な有利な効果も報告した。彼らは健康を感じ、病気が少なくなるか全くしなかった(ラクトフェリンを摂取しなかった家族または友人と比較して)。
【表2】

【0034】
ティーンエイジャーによる試験から得られたデータは、経口的に投与されたウシラクトフェリンが尋常性挫瘡を実際に減少させることができることを示した。回帰モデルを使用した場合、ある時間にわたる変化が性別または年齢により影響を受けることの証拠は見られなかった。これは、全体を通して13〜19歳の被験者の場合、男性も女性も同様の長期的なパターンに従うことを示す。有害な副作用は報告されなかった。研究集団の大多数は、乳漿タンパク質画分の摂取の有益な効果を証言した。彼らは挫瘡の減少に気づき、気分がよく、健康に感じ、錠剤の摂取を続けることを決定した。
【0035】
全体的に見て、試験結果は、ラクトフェリンを含んでなる天然の牛乳由来の生理活性な乳漿組成物の摂取を、尋常性挫瘡を予防および治療するための新しい戦略として位置づけるための信頼できる基礎を形成する。現在の全身性および局所的な治療(抗生物質、レチノイド、および他の化合物に基づく)と比較して、ラクトフェリン/乳清組成物を補うことは、副作用を伴わず、不変の基礎に基づいて使用することができる。
【0036】
例IV:挫瘡における異なる投与形態のラクトフェリンのインビトロ試験
咀嚼錠AおよびB(錠剤当りそれぞれ6.25および25mgのラクトフェリンを含有する)は、以下の表に示す通りの量(錠剤当たりのmg量)を用いて調製した。錠剤は、例Iに記載したように調製した。
【表3】

【0037】
局所的なクリームCは、以下の成分から調製した(g量)。
【表4】

【0038】
相1を混合し、75℃まで加温した。混合物を撹拌しながらゆっくりと冷却した。相2を50℃で加えた。得られる混合物を30gのチューブに分け、g当り14.2mgのラクトフェリンを含んでいた。
【0039】
以下の基準を満たす12〜19歳の40人の男性および女性の被験者を、3つの群に分けた:
-軽度〜中程度の挫瘡であること;
-挫瘡の治療に対する経口的な処方薬またはOTC薬を現在服用していないこと;
-顔の皮膚症状に伴い慢性疾患を有していないこと;
-試験の前1ヶ月以内に抗生物質を用いた治療をしていないこと;
-妊娠中、授乳中でない、または妊娠の可能性がないこと;
-牛乳または乳製品に対する既知のアレルギーを有していないこと。
【0040】
群1(N=14;男性9、女性5;平均年齢15.0歳;平均挫瘡期間3.9年):被験者は、ラクトフェエリン含有錠Aを、朝2錠、夜2錠の勧められた服用法で、6週間、一日当り25mgのラクトフェリンに対応する量を摂取した。
【0041】
群2(N=14;男性7、女性7;平均年齢15.1歳;平均挫瘡期間3.8年):被験者は、ラクトフェエリン含有錠Aを、朝2錠、夜2錠の勧められた服用法で、6週間、一日当り100mgのラクトフェリンに対応する量を摂取した。
【0042】
群3(N=12;男性6、女性6;平均年齢15.2歳;平均挫瘡期間3.6年):被験者は、ラクトフェエリン含有錠Aを、朝2錠、夜2錠の勧められた服用法で、一日当り25mgのラクトフェリンに対応する量を摂取し、加えて、局所的なラクトフェリンクリームCを一日当り2.45mlで局所的に適用した。
【0043】
T=0において、被験者の前面の写真を撮り、独立した皮膚科医が評価し、顔における炎症性がある領域および斑点のある領域についてよく調べた。被験者は、使用に対する指示に従って錠剤または錠剤およびクリームを適用し、炎症およびそう痒感を含む試験の間の彼らの経験を実証するためのアンケートを行った。
【0044】
2、4、および6週において、被験者の写真を撮り、再びよく調べ、彼らの完成したアンケートを回収した。
【0045】
考えられる季節的な影響のため、相対的な結果のみ評価した。結果を以下の表2および3に示す。
【表5】

【表6】

【0046】
結果は、一日当り25mgのラクトフェリンを用いた経口的な治療は、全体的な明確な効果はなく、閉鎖面皰に対して適度な好ましい効果が得られたことを示す(季節的な影響は考慮に入れない)。一日当り35mgのラクトフェリンを用いた付加的な局所治療は、効果を改善せず、特に開放面皰およびそう痒感に対しては実際に逆効果でもあった。しかしながら、一日当り100mgのラクトフェリンを用いた経口的な治療は、特に非炎症性の症状(開放面皰および閉鎖面皰)において、強く改善された効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挫瘡の治療に対する経口的な組成物を調製するための、ラクトフェリンを含んでなる乳漿タンパク質画分の使用。
【請求項2】
前記乳漿タンパク質画分が50〜98重量%のラクトフェリンを含有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記乳漿タンパク質画分が、10kD〜60kDの分子量を有する塩基性タンパク質またはペプチドをさらに含有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記乳漿タンパク質画分が、1日に患者当り40mg〜2gのラクトフェリンの用量レベルで投与される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記乳漿タンパク質画分が、1日に患者当り60〜800mgの用量レベルで投与される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記乳漿タンパク質画分が錠剤として投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記乳漿タンパク質画分が、少なくとも炭水化物および/または乳漿でないタンパク質を含有する食品または飲料として投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
挫瘡を治療するための方法であって、ラクトフェリンを含有する乳漿タンパク質画分の有効量を挫瘡に悩む患者に対して経口的に投与することを含んでなる方法。
【請求項9】
少なくとも10mgのラクトフェリンを含有する経口的な投与単位。
【請求項10】
少なくとも20mgのラクトフェリンを含有する、請求項9に記載の経口的な投与単位。
【請求項11】
錠剤である、請求項9または10に記載の経口的な投与単位。
【請求項12】
少なくとも50重量%の非還元糖、多糖類、および/または糖アルコールを含有する、請求項11に記載の経口的な投与単位。
【請求項13】
少なくとも炭水化物および/または乳漿でないタンパク質を含有し、且つ50〜98重量%のラクトフェリンを含有する乳漿タンパク質画分を含有し、且つラクトフェリン含有乳漿タンパク質画分と炭水化物および/または乳漿でないタンパク質との重量比が1:4〜1:100である、請求項9または10に記載の経口的な投与単位。

【公表番号】特表2008−533134(P2008−533134A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501828(P2008−501828)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【国際出願番号】PCT/NL2006/050055
【国際公開番号】WO2006/098625
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(506276262)キャンピナ・ネダーランド・ホールディング・ビー.ブイ. (8)
【Fターム(参考)】