説明

乳入り低カロリー紅茶飲料

【課題】低カロリーであっても乳の濃厚感、ボディ感を損なうことがなく、優れた香味の乳入り低カロリー紅茶飲料を提供すること、及び、乳入り低カロリー紅茶飲料からなる安全性の高い中性脂肪吸収抑制剤を提供すること。
【解決手段】飲料100mLあたりのエネルギー量が25kcal以下の乳入り低カロリー紅茶飲料において、総ポリフェノール量が40〜250mg/100mLに調整され、かつ、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)が4.5以上に調整されている乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料からなる。また、本発明は、該乳入り低カロリー紅茶飲料からなる安全性の高い中性脂肪吸収抑制剤からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味豊かな乳入り低カロリー紅茶飲料、特に、低カロリーではあるが乳の濃厚感、ボディ感を付与した優れた香味の乳入り低カロリー紅茶飲料に関する。また、本発明は、乳入り低カロリー紅茶飲料からなる中性脂肪吸収抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、嗜好性の多様化から、各種飲料が容器詰め飲料として提供されている。また、昨今の健康志向の高まりにより、日常飲用する容器詰め飲料についても、低糖、低カロリー化が望まれてきている。飲料の低カロリー化のために、ショ糖やでんぷん糖などの通常用いられる糖類にかわり、糖アルコールや、アセスルファムカリウム、スクラロース等の高甘味度甘味料が使用されている。例えば、紅茶飲料においても、アスパルテームや、マルチトール、ソルビトール等のような高甘味度甘味料及び糖アルコールを用いて(特開平10−191890号公報)、スクラロースや、キシリトールのような高甘味度甘味料及び糖アルコールを用いて(特開2007−117087号公報)、低カロリーの紅茶飲料を製造する方法が開示されている。
【0003】
ところで、紅茶飲料において、乳入り紅茶飲料は、旧来よりミルクティーとして、愛用されてきた嗜好性の高い飲料である。乳(ミルク)入り紅茶飲料においても、健康志向の観点から、従来用いられていたショ糖やでんぷん糖などの糖類にかえて、糖アルコールや非糖類甘味料を用いた低カロリーの乳入り紅茶飲料が提案されている。例えば、特開平11−113493号公報には、糖アルコールとしてエリスリトール等を、非糖類甘味料として、ステビオサイド、アスパルテーム、グリチルリチンなどのジテルペン配糖体を用いた乳風味紅茶飲料が開示されている。また、特開2002−101818号公報には、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコールを用いた低カロリーの乳成分含有紅茶飲料等が開示されている。
【0004】
これら乳入り紅茶飲料においても、健康志向の観点から、低カロリーのものが開示されている。しかし、乳入り飲料において、例えば、高甘味度甘味料を使用してカロリーを下げようとすると、糖類を使用する場合に比べて、甘さの膨らみが下がるだけでなく、乳の濃厚感やボディ感までもが損なわれるため、香味品質の優れた低カロリー乳入り紅茶飲料を製造することが難しいという問題がある。したがって、乳入り紅茶飲料においては、嗜好面からの乳の味覚の保持と、健康面からの低カロリーの達成との両面からの要求を満足する乳入り紅茶飲料を開発するという課題が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−191890号公報。
【特許文献2】特開平11−113493号公報。
【特許文献3】特開2002−101818号公報。
【特許文献4】特開2007−117087号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、香味豊かな乳(ミルク)入り低カロリー紅茶飲料、特に、低カロリーであっても乳の濃厚感、ボディ感を損なうことがなく、香味設計ができる優れた香味の容器詰め等の形態で利用される乳入り低カロリー紅茶飲料を提供することにある。また、本発明の課題は、乳入り低カロリー紅茶飲料からなる安全性の高い中性脂肪吸収抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、低カロリーであっても乳の濃厚感、ボディ感を損なうことがなく、香味豊かな乳(ミルク)入り低カロリー紅茶飲料の製造について鋭意検討する中で、飲料100mLあたりのエネルギー量が25kcal以下の乳入り低カロリー紅茶飲料において、紅茶飲料の総ポリフェノール量を特定の値に調整し、かつ、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)を特定の値に調整することにより、低カロリーであっても乳の濃厚感、ボディ感を保持した乳入り低カロリー紅茶飲料を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、飲料100mLあたりのエネルギー量が25kcal以下の乳入り低カロリー紅茶飲料において、総ポリフェノール量が40〜250mg/100mLに調整され、かつ、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)が4.5以上に調整されていることを特徴とする乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料からなる。
【0009】
本発明においては、乳入り低カロリー紅茶飲料のエネルギー量が、飲料100mLあたり25kcal以下に特定されるが、その理由の1つは、低カロリーとして健康機能を訴求する飲料においては、25kcal/100mLを越えると消費者の健康的な飲料としてのイメージを損なってしまうということがある。また、エネルギーが25kcal/100mL以上であれば、ショ糖や油脂類を配合してボディ感を付与することが比較的容易なので、特に、本発明方法を用いなくても濃厚なミルクティーが調製できるということがあり、本発明におけるように、健康志向を踏まえて低カロリーであることと、しかも、嗜好の面から乳の濃厚感、ボディ感のある飲料を製造したいというニーズを両立するという課題自体も合致しないという点もある。
【0010】
本発明の乳入り低カロリー紅茶飲料のエネルギー量は、飲料100mLあたり25kcal以下に調整されるが、更に、好ましくは、20kcal以下に調整される。本発明において、乳入り低カロリー紅茶飲料のエネルギーを25kcal以下に調整するためには、通常、甘味料として用いられるショ糖等の全量又は一部を高甘味度甘味料や糖アルコール類で代替することや、甘味原料を使用しないことにより調整される。また、さらに乳原料の全量又は一部を脱脂タイプの乳原料で代替するなどの方法を用いることができる。
【0011】
本発明の乳入り低カロリー紅茶飲料におけるエネルギー量、総ポリフェノール量、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)の調整において、特に望ましい範囲として、飲料100mLあたりのエネルギー量が5〜20kcalであり、総ポリフェノール量が80〜180mg/100mLであり、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)が4.5〜22である範囲を挙げることができる。
【0012】
本発明の乳入り低カロリー紅茶飲料は、密封容器詰め飲料のような容器詰め飲料として提供することができる。また、本発明は、飲料100mLあたりのエネルギー量が25kcal以下の乳入り低カロリー紅茶飲料の製造において、飲料中の総ポリフェノール量を40〜250mg/100mLに調整し、かつ、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)を4.5以上に調整することからなる乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料の製造方法を包含する。
【0013】
更に、本発明者は、低カロリーであっても乳の濃厚感、ボディ感を損なうことがなく、香味豊かな乳入り低カロリー紅茶飲料の製造について鋭意検討する中で、本発明の乳入り低カロリー紅茶飲料が、中性脂肪吸収抑制作用により血中中性脂肪の上昇抑制効果を有することを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、本発明の乳入り低カロリー紅茶飲料を、中性脂肪吸収抑制剤として提供することを包含する。本発明の乳入り低カロリー紅茶飲料からなる中性脂肪吸収抑制剤は、安全性の高い中性脂肪吸収抑制剤を提供する。
【0014】
すなわち具体的には本発明は、[1]飲料100mLあたりのエネルギー量が25kcal以下の乳入り低カロリー紅茶飲料において、総ポリフェノール量が40〜250mg/100mLに調整され、かつ、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)が4.5以上に調整されていることを特徴とする乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料や、[2]乳入り低カロリー紅茶飲料が、高甘味度甘味料及び/又は糖アルコール類を使用したものであることを特徴とする上記[1]記載の乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料や、[3]飲料100mLあたりのエネルギー量が5〜20kcalであり、総ポリフェノール量が80〜180mg/100mLであり、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)が4.5〜22であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料からなる。
【0015】
また、本発明は、[4]飲料が、容器詰め飲料であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか記載の乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料や、[5]飲料100mLあたりのエネルギー量が25kcal以下の乳入り低カロリー紅茶飲料の製造において、飲料中の総ポリフェノール量を40〜250mg/100mLに調整し、かつ、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)を4.5以上に調整したことを特徴とする乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料の製造方法や、[6]飲料が、密封容器詰め飲料であることを特徴とする上記[5]記載の乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料の製造方法や、[7]上記[1]〜[4]のいずれか記載の乳入り低カロリー紅茶飲料からなる中性脂肪吸収抑制剤からなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、香味豊かな乳入り低カロリー紅茶飲料、特に、低カロリーであっても乳の濃厚感、ボディ感を損なうことがなく、優れた香味の容器詰め等の形態で利用される乳入り低カロリー紅茶飲料を提供する。また、本発明は、乳入り低カロリー紅茶飲料からなる安全性の高い中性脂肪吸収抑制剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施例における乳(ミルク)入り紅茶飲料の脂質エマルション単回投与試験において、血漿中の中性脂肪濃度を、トリグリセライドGテストにより測定した結果(血漿中中性脂肪の変化量)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、飲料100mLあたりのエネルギー量が25kcal以下の乳(ミルク)入り低カロリー紅茶飲料において、総ポリフェノール量が40〜250mg/100mLに調整され、かつ、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)が4.5以上に調整されていることを特徴とする乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料、及びその製造方法からなる。また、本発明は本発明の乳入り低カロリー紅茶飲料からなる中性脂肪吸収抑制剤からなる。
【0019】
本発明の乳入り低カロリー紅茶飲料の製造において、「総ポリフェノール量の測定」、「カフェイン量の測定」、及び「エネルギー量の測定」は、以下の方法による。
【0020】
<総ポリフェノール量の測定方法>
(1)乳原料を配合する前の紅茶由来の総ポリフェノール量は、日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252に記載の公定法(酒石酸鉄法)に従って求める。
(2)乳原料を配合した飲料の総ポリフェノール量はフォーリンチオカルト法((財)日本食品分析センターへの委託分析)を用いることができる。
【0021】
<カフェイン量の測定方法>
(1)乳原料を配合していない段階においては、試料溶液をメンブレンフィルター(アドバンテック(株)製、親水性PTFE、0.45μm)でろ過して、表1の条件(カフェイン量の測定におけるHPLC条件)に示す高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法にてカフェイン量を定量する。
(2)乳原料を配合した飲料については遠心式フィルター(日本ミリポア(株)製、ウルトラフリーCL、0.45μm)で濾過した後、同様の条件で定量する。
【0022】
【表1】

【0023】
<エネルギー量の測定>
エネルギー量の測定は、栄養表示基準(平成15年4月24日 厚生労働省告示第176号)別表第2の第3欄記載の方法、すなわち修正アトウォーター法で算出する。本発明で採用される乳入り紅茶飲料のエネルギー量は、飲料100mLあたり25kcal/100mL以下であるが、より好ましくは、20kcal/100mL以下である。
【0024】
<総ポリフェノール量>
本発明の乳入り紅茶飲料における総ポリフェノール量は、40〜250mg/100mLであるが、好ましくは80〜180mg/100mL、より好ましくは80〜150mg/100mLである。
【0025】
<総ポリフェノール量(A)と、カフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)の算出>
本発明の乳入り紅茶飲料について、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の測定値から算出する。本発明において、総ポリフェノール量とは、乳原料を配合する前の紅茶由来の総ポリフェノール量を酒石酸鉄法によって測定した値を用いる。カフェイン量は上記HPLC条件で求められる定量値を用いる。総ポリフェノール量(A)と、カフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)は、上記測定値をもとに算出し、本発明では4.5以上、好ましくは6以上、より好ましくは10以上である。特に上限はないが、好ましくは45以下、より好ましくは22以下である。
【0026】
[乳(ミルク)入り紅茶飲料の製造方法]
本発明の乳(ミルク)入り紅茶飲料の製造方法において、以下のとおり、「飲料のエネルギー量の調整」、「飲料の総ポリフェノール量の調整」、「総ポリフェノール量(A)と、カフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)の調整」の点を除いて、従来の「乳(ミルク)入り紅茶飲料」の製造方法と特に相違する点はない。
【0027】
(1)乳入り紅茶飲料の製造方法:配合する原料、配合方法(順番、操作)、均質化方法、殺菌方法(レトルト殺菌、UHT殺菌など)は特に限定されず、従来の方法を用いることができる。容器詰め飲料とする場合も、瓶・缶など飲料を充填する容器に特に限定はなく、従来の製品形態を適用することができる。
(2)乳入り紅茶飲料の製造に用いる紅茶抽出原料は、紅茶葉からの抽出液やその加工品類(濃縮液体エキス、粉末エキスなど)の使用など、特に限定はなく、従来、紅茶飲料の製造に用いられている紅茶抽出原料を用いることができ、また、香味設計に合せて自由に選択することができる。
(3)紅茶抽出液・紅茶エキスなどの原料となる紅茶葉の種類、抽出条件の調整、複数茶葉の併用などは、特に限定されず、香味設計に合せて自由に選択することができる。
(4)カフェイン量の調整:カフェイン量の調整は、次のような方法で行うことができる:
i)茶葉の選択・抽出法などの工夫により行う。
ii)上記だけで調整することが困難な場合は、(a)公知の脱カフェイン法による脱カフェイン処理、(b)脱カフェイン処理した紅茶エキスの使用、によりカフェイン量の調整を行うことができる。
(5)本発明において、乳(ミルク)入り紅茶飲料とは、乳原料、乳代替原料のいずれか1種または2種以上を含む紅茶飲料である。乳原料とは牛乳や各種粉乳やクリームなどであり、乳代替原料とは食品用の植物油脂や動物油脂、タンパク質類などを用いた乳代替用の組成物を指し、香味設計・エネルギーに合せていずれも使用可能である。
【0028】
本発明において、特に、好ましい乳入り紅茶飲料の態様を例示すれば:(1)エネルギー量5〜20kcal/100mL、(2)総ポリフェノール量80〜180mg/100mL、(3)総ポリフェノール量(A)/カフェイン量(B)4.5〜22の製品態様を例示することができる。
【0029】
本発明の乳入り低カロリー紅茶飲料に使用する高甘味度甘味料は、ショ糖と同量(重量)を口に含んだ際に感じる甘味がショ糖の数十倍から数千倍と高いため、少量の添加で食品に十分な甘味を付与できる物質を意味する。
【0030】
高甘味度甘味料としては、天然高甘味度甘味料であっても、合成高甘味度甘味料であってもよく、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出物、ステビア末、酵素処理ステビア、ネオテーム等が挙げられる。高甘味度甘味料は、単一成分として使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明において使用される高甘味度甘味料は、市販されているものを入手することができる。本発明において使用される高甘味度甘味料は、公知の方法に従って製造することもできる。本発明において使用される高甘味度甘味料は、目的の高甘味度甘味料を含む植物等の抽出物(例えば、ステビアであればステビア抽出物)を使用することもできる。
【0031】
本発明の乳入り低カロリー紅茶飲料に使用する糖アルコールは、糖類がもつカルボニル基を還元して得られる鎖状多価アルコールのことを指し、例えば単糖アルコールであるエリスリトール、キシリトール、ソルビトールや、二糖アルコールであるマルチトール、ラクチトール、パラチニット、イソマルチトールの他、オリゴ糖アルコールなどを挙げることができる。糖アルコールは、単一成分として使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。衛新第13号(“栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について”:「新開発食品ハンドブック」、p374−488、中央法規出版(株)、平成11年9月発行)に記載の難消化性糖質のエネルギー換算係数によれば、糖アルコールのエネルギー値は、エリスリトールが0kcal/g、キシリトール及びソルビトールが3kcal/g、マルチトール、ラクチトール、パラチニット及びイソマルチトールが2kcal/gであり、糖質の4kcal/gと比較して低い値を示す。
【0032】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
[1.紅茶抽出液、紅茶エキスの調製]
<紅茶抽出液(1)の調製例>
スリランカ産紅茶葉100gを85℃のイオン交換水3000gに入れ、6分間抽出した後、固液分離し、室温で遠心分離処理して紅茶抽出液を得た。この抽出液はイオン交換水で液量を3000gに調整した後、総ポリフェノール量、カフェイン量を測定した。総ポリフェノール量は207mg/100mL、カフェイン量は60mg/100mLであった。
【0034】
<紅茶抽出液(2)の調製例>
インド産紅茶葉100gを3000gの沸騰水浴中に入れ、10分間抽出した後、固液分離し、室温で遠心分離処理して紅茶抽出液を得た。この抽出液はイオン交換水で液量を3000gに調整した後、総ポリフェノール量、カフェイン量を測定した。総ポリフェノール量は264mg/100mL、カフェイン量は93mg/100mLであった。
【0035】
<紅茶エキスの調製例>
スリランカ産紅茶葉100gを95℃のイオン交換水1500gに投入後、時々攪拌しながら60分間抽出した。固液分離した後、濾紙(アドバンテック(株)製、No.2、110mm)で濾過して紅茶抽出液を得た。この抽出液はイオン交換水で液量を1200gに調整した後、400gを濃縮後凍結乾燥処理して、紅茶エキス(1)8.6gを得た。この紅茶エキスのカフェイン量は6.2重量%、総ポリフェノール量は25.2重量%であった。
【0036】
上記方法と同様の方法で得られた紅茶抽出液400gに活性炭(二村化学工業(株)製)6gを添加し、45℃で1時間攪拌後、濾過した。この濾液を濃縮後凍結乾燥処理して、脱カフェインタイプの紅茶エキス(2)6.2gを得た。この紅茶エキスのカフェイン量は0.5重量%、総ポリフェノール量は22.0重量%であった。
【0037】
以下の試験では、上記紅茶抽出液(1)、紅茶抽出液(2)、紅茶エキス(1)、紅茶エキス(2)を組み合わせて使用した。
【0038】
[2.測定例;総ポリフェノール量の測定]
総ポリフェノール量を測定する方法として、乳入り飲料でも測定できるフォーリンチオカルト法((財)日本食品分析センター測定)と酒石酸鉄法とを比較した結果を表2(各種配合の乳入り紅茶飲料の総ポリフェノール量)に示した。
【0039】
【表2】

【0040】
[3.試験1:紅茶抽出液と脱カフェインタイプ紅茶エキスを用いた検討:比較例1〜2、実施例1〜6]
表3(基本配合)に示す配合で定法にしたがって原料を混合し、均質化処理後にレトルト缶に熱時充填し、124℃、20分間のレトルト殺菌処理を施して比較例1〜2、実施例1〜6の乳(ミルク)入り紅茶飲料を調製した。紅茶原料は、表4に示す総ポリフェノール量になるように紅茶抽出液と紅茶エキスとを配合したものである。
【0041】
訓練されたパネリスト4名で、比較例1を基準として、脂肪感(まったりとした乳の濃厚感)とボディ感について官能評価した。評価は比較例1と比べて弱い(−3)、やや弱い(−2)、わずかに弱い(−1)、同等(0)、わずかに増強(+1)、やや増強(+2)、増強されている(+3)の7段階で評価した。調製した飲料の配合を表3、表4(紅茶原料の配合)に、成分量と官能評価結果を表5(評価結果)にまとめた。なお、比較例1、2、実施例1〜6のエネルギー量はいずれも13〜14kcal/100mLであった。実施例1〜6は、比較例1と比較すると脂肪の濃厚感とボディ感が高かった。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
[4.試験2:通常エキスと脱カフェインタイプエキスを用いた検討:比較例3、実施例7〜12]
表4の紅茶原料配合を表6(紅茶原料の配合)に替えた以外は、比較例1〜2、実施例1〜6と同様にして比較例3、実施例7〜12を調製した。成分量と官能評価結果を表7(評価結果)に示す。官能評価の基準は比較例3とした。比較例3、実施例7〜12のエネルギー量は13〜14kcal/100mLであった。実施例7〜12は、比較例3と比較すると脂肪の濃厚感とボディ感が高かった。
【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
[5.試験3:低ポリフェノール量での検討(1):比較例4、実施例13〜18]
表4の紅茶原料配合を表8(紅茶原料の配合)に替えた以外は比較例1〜2、実施例1〜6と同様にして比較例4、実施例13〜18を調製した。成分量と官能評価結果を表9(評価結果)に示す。官能評価の基準は比較例4とした。比較例4、実施例13〜18のエネルギー量は13kcal/100mLであった。実施例13〜18は、比較例4と比較すると脂肪の濃厚感とボディ感が高かった。
【0049】
【表8】

【0050】
【表9】

【0051】
[6.試験4:低ポリフェノール量での検討(2):比較例5、実施例19〜21]
表4の紅茶原料配合を表10(紅茶原料配合)に替えた以外は比較例1〜2、実施例1〜6と同様にして比較例5、実施例19〜21を調製した。成分量と官能評価結果を表11(評価結果)に示す。官能評価の基準は比較例5とした。比較例5、実施例19〜21のエネルギー量は13〜14kcal/100mLであった。実施例19〜21は、比較例5と比較すると脂肪の濃厚感とボディ感が高かった。
【0052】
【表10】

【0053】
【表11】

【0054】
[7.試験5:より低エネルギー組成での検討:比較例6〜7、実施例22〜27]
表3の基本配合を表12(基本配合)に替えた以外は比較例1〜2、実施例1〜6と同様にして比較例6、7、実施例22〜27を調製した。成分量と官能評価結果を表13(評価結果)に示す。官能評価の基準は比較例6とした。なお、比較例6、7、実施例22〜27のエネルギー量は8〜9kcal/100mLであった。実施例22〜27は、比較例6と比較すると脂肪の濃厚感とボディ感が高かった。
【0055】
【表12】

【0056】
上記のように試験5における紅茶原料の配合は表4と同様である。但し、表4.紅茶原料の配合、における比較例1、2は、比較例6、7に、実施例1乃至6は、実施例22乃至27にそれぞれ読み替えるものとする。
【0057】
【表13】

【0058】
[8.試験6:甘味料を添加しないミルク入り紅茶飲料:比較例8〜9、実施例28〜33]
表3の基本配合を表14(基本配合)に替えた以外は比較例1〜2、実施例1〜6と同様にして比較例8、9、実施例28〜33を調製した。成分量と官能評価結果を表15(評価結果)に示す。官能評価の基準は比較例8とした。比較例8、9、実施例28〜33のエネルギー量は13〜14kcal/100mLであった。実施例28〜33は、比較例8と比較すると脂肪の濃厚感とボディ感が高かった。
【0059】
【表14】

【0060】
上記のように、試験6における紅茶原料の配合は表4と同様である。但し、表4.紅茶原料の配合、における比較例1、2は、比較例8、9に、実施例1乃至6は、実施例28乃至33にそれぞれ読み替えるものとする。
【0061】
【表15】

【0062】
[9.試験7;高ポリフェノール量での検討:比較例10、実施例34〜35]
表4の紅茶原料を表16(紅茶原料の配合)に替えた以外は比較例1〜2、実施例1〜6と同様にして比較例10、実施例34、35を調製した。成分量と官能評価結果を表17(評価結果)に示す。官能評価の基準は比較例10とした。比較例10、実施例34、35のエネルギー量は15kcal/100mLであった。実施例34〜35は、比較例10と比較すると脂肪の濃厚感とボディ感が高かった。
【0063】
【表16】

【0064】
【表17】

【0065】
[10.試験8:ミルク入り紅茶飲料の脂質エマルション単回投与試験における脂質吸収抑制作用]
ラットにおける脂質エマルション吸収の測定試験は、すでに報告された方法(Int. J. Obes. Relat. Metab. Disord. 25, 1459 - 1464 (2001))にしたがって以下の通りに実施した。脂質エマルションはコーン油(6mL)、コール酸(80mg)、オレイン酸コレステリル(2g)、蒸留水(2mL)を混合し、超音波処理により調製した。12時間絶食後の8〜9週の雄性Wistarラット(日本チャールズリバー)に、対照群では上記脂質エマルションを10mL/kg体重になるように胃ゾンデを用いて経口投与した(N=6)。一方、ミルクティー投与群ではミルクティー粉末を投与量当たり4.33g/kg体重になるよう混合した脂質エマルションを投与した(N=6)。
【0066】
両群について、脂質エマルション投与前、及び投与1、2、3、4、5、7、9時間後のそれぞれに尾静脈より採血し、定法に従い血漿を調製した後、血漿中の中性脂肪濃度をトリグリセライドGテストワコー(和光純薬)により測定し、脂質エマルション投与前値を差し引いた変化量を求めた。なお、ミルクティー投与群で用いたミルクティー粉末は以下の通りに調製した。すなわち、表18(脂質エマルジョン試験用の配合)に示す原料を配合後、レトルト缶に熱時充填して124℃20分間のレトルト殺菌処理を施して容器詰め飲料を得た。このときの総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)との含有重量比([A/B])は4.8であった。この飲料1380gを凍結乾燥処理することでミルクティー粉末として49.8gを得た。
【0067】
【表18】

【0068】
結果、対照群では脂質エマルション投与直後から3〜4時間目をピークに血漿中中性脂肪の変化量の上昇が確認されたのに対し、ミルクティー投与群ではその上昇が抑制され、2、3、4、5時間では対照群の変化量に対し有意に低値を示した(図1)。
【0069】
[11.試験9:ミルク入り紅茶飲料の高温保存時の安定性]
表19(安定性試験用の配合)に示す原料を配合後、レトルト缶に熱時充填して124℃20分間のレトルト殺菌処理を施して容器詰め飲料を得た。4週間60℃恒温下で静置保存後に、静置のまま急冷、開缶して白色浮遊物の有無を確認した。各配合の成分量を表20(評価結果)に示した。
【0070】
白色浮遊物の有無は、開缶した飲料を透明プラスチック容器に優しく移した後、目視にて評価した。また、定点撮影した画像を、Adobe PhotoshopにてRGB分離し、Scion Imageによって二値化することで白色浮遊物の占有表面積(総面積、平均面積)及びその数を数値化した。その結果を表20に示した。
【0071】
【表19】

【0072】
【表20】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、香味豊かな乳入り低カロリー紅茶飲料、特に、低カロリーであっても乳の濃厚感、ボディ感を損なうことがなく、優れた香味の容器詰め等の形態で利用される乳入り低カロリー紅茶飲料を提供する。また、本発明は、乳入り低カロリー紅茶飲料からなる安全性の高い中性脂肪吸収抑制剤を提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料100mLあたりのエネルギー量が25kcal以下の乳入り低カロリー紅茶飲料において、総ポリフェノール量が40〜250mg/100mLに調整され、かつ、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)が4.5以上に調整されていることを特徴とする乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料。
【請求項2】
乳入り低カロリー紅茶飲料が、高甘味度甘味料及び/又は糖アルコール類を使用したものであることを特徴とする請求項1記載の乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料。
【請求項3】
飲料100mLあたりのエネルギー量が5〜20kcalであり、総ポリフェノール量が80〜180mg/100mLであり、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)が4.5〜22であることを特徴とする請求項1又は2記載の乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料。
【請求項4】
飲料が、容器詰め飲料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料。
【請求項5】
飲料100mLあたりのエネルギー量が25kcal以下の乳入り低カロリー紅茶飲料の製造において、飲料中の総ポリフェノール量を40〜250mg/100mLに調整し、かつ、総ポリフェノール量(A)とカフェイン量(B)の含有重量比:(A)/(B)を4.5以上に調整したことを特徴とする乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料の製造方法。
【請求項6】
飲料が、密封容器詰め飲料であることを特徴とする請求項5記載の乳の濃厚感、ボディ感を付与した乳入り低カロリー紅茶飲料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか記載の乳入り低カロリー紅茶飲料からなる中性脂肪吸収抑制剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−139155(P2012−139155A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293574(P2010−293574)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】