説明

乳化剤

【課題】化粧料等を乳化させるための、修飾ヒアルロン酸を含有する乳化剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含む修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有し、ヒアルロン酸1構成単位に含まれる前記グリセリン骨格含有基の数が0.05以上である乳化剤。−O−CH−CHOH−CH−OR・・・(1)(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化剤に関する。より具体的には、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する乳化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、その高い保湿効果により、化粧料の成分として広く利用されている。化粧料の基材には、油脂が用いられるが、水性原料を含有するクリームや乳液などの化粧料は、界面活性剤を使用し、油脂および水性原料を乳化して製造される。
【0003】
界面活性剤を使用しなくとも長期にわたり油浮き等のない安定な乳化組成物として、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンと、アセチル化ヒアルロン酸と、油性成分と、水とを含有することを特徴とする乳化組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−12124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒアルロン酸は乳化作用を有さないため、ヒアルロン酸を配合して上記クリームや乳液などの化粧料を製造するためには、界面活性剤を使用する必要があった。
【0006】
特許文献1に記載のアセチル化ヒアルロン酸も、それ自体は油脂に対する良好な乳化作用を持たず、アセチル化ヒアルロン酸を化粧料又は食品、特に化粧料の乳化剤としてそのまま使用するには問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、優れた乳化作用を有するヒアルロン酸を、化粧料等の乳化剤として提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乳化剤は、一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を有効成分として含む、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する。
−O−CH−CHOH−CH−OR ・・・(1)
(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)
【0009】
本発明において、「修飾ヒアルロン酸および/またはその塩」とは、少なくとも一部に有機基が導入されているヒアルロン酸および/またはその塩のことをいい、ヒアルロン酸および/またはその塩とは異なる構造を有する。また、本発明において「有機基」とは、炭素原子を有する基のことをいう。
【0010】
また、本発明において、「グリセリン骨格」とは、−O−CH−CHOH−CH−O−で表される構成単位のことをいう。グリセリン骨格という名称は、このグリセリン骨格がグリセリン(HO−CH−CHOH−CH−OH)の一部を構成するものであることに由来する。
【0011】
本発明における油脂とは、化粧料に基材として含まれる油性原料のことをいい、例えば、界面活性剤、エモリエント剤、シリコーン油、パラフィンワックス等が挙げられる。また、化粧料に微量に含まれるトコフェロール、カロテノイド等の油性原料も本発明における油脂に含む。
【0012】
本発明に使用する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、乳化力に優れている点で、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数が0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.1〜0.5であることがより好ましい。このヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数を修飾率(N)ともいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明の乳化剤は、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含む、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有することにより、優れた乳化作用を有するため、化粧料等の乳化剤として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(a)は、調製例1で得られた修飾ヒアルロン酸のH−NMRスペクトル(観測周波数400MHz、内部標準物質:DSS(0ppm)、溶媒:重水)を示す図である。 図1(b)は、比較対照として、原料(グリセリン骨格含有基を有さない)のヒアルロン酸(キユーピー株式会社製、平均分子量8000)のH−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。
【0016】
≪修飾ヒアルロン酸および/またはその塩≫
<構造>
(グリセリン骨格含有基)
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、下記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基(以下、単に「グリセリン骨格含有基」ともいう。)を含む。
−O−CH−CHOH−CH−OR ・・・(1)
(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)
【0017】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、グリセリン骨格含有基に含まれる、水酸基を構成しない酸素原子の1つに一般式(1)におけるRが結合し、グリセリン骨格含有基に含まれる水酸基は二級水酸基であり、グリセリン骨格含有基に含まれる、水酸基を構成しない酸素原子の他の1つがヒアルロン酸および/またはその塩を構成する炭素原子に結合している。
【0018】
一般式(1)において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基(ミリスチル基)、n−ヘキサデシル基(パルミチル基)、n−オクタデシル基(ステアリル基)、n−イコシル基が挙げられる。
【0019】
また、一般式(1)において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基が挙げられる。
【0020】
このうち、乳化力に優れている点で、一般式(1)において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基の炭素原子数が6〜20であることが好ましく、8〜18であることがより好ましく、10〜16であることが最も好ましい。この場合、R1で表される基はアルキル基であることが好ましい。
【0021】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基の炭素原子数が6未満である場合、乳化力が十分でない場合があり、一方、Rで表される直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基の炭素原子数が20を超える場合は、水溶性が低い場合がある。
【0022】
(ヒアルロン酸構成単位)
本発明において、「ヒアルロン酸」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの2糖からなる構成単位を1以上有する多糖類をいう。また、「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、食品または薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0023】
ヒアルロン酸は、基本的にはβ−D−グルクロン酸の1位とβ−D−N−アセチル−グルコサミンの3位とが結合した2糖単位を少なくとも1個含む2糖以上のものでかつβ−D−グルクロン酸とβ−D−N−アセチル−グルコサミンとから基本的に構成され、2糖単位が複数個結合したものであり、またこの誘導体、例えば、アシル基等の加水分解性保護基を有したもの等も使用し得る。その糖は不飽和糖であってもよく、不飽和糖としては、非還元末端糖、通常、グルクロン酸の4,5位炭素間が不飽和のもの等が挙げられる。
【0024】
本発明に使用する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、乳化力に優れている点で、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数が0.05以上であることが好ましく、0.1〜0.5であることがより好ましい。ここで、「ヒアルロン酸の1構成単位」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる1構成単位を意味する。
【0025】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数が0.05未満である場合、疎水性が十分でないため、乳化作用が不十分な場合がある。一方、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数が0.5を超える場合、水溶性が低い場合がある。
【0026】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数は、H−NMRスペクトル解析によって同定することができる。
【0027】
すなわち、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のH−NMRスペクトルにおいて、ヒアルロン酸の1構成単位を構成するN−アセチルグルコサミンの−NHC(=O)CH(N−アセチル基)のメチル基(−CH)のプロトンを示すピークの積分値に対する、グリセリン骨格含有基中のRに含まれるメチレン基(−CH−)のプロトンを示すピークの積分値の比を算出することにより、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩における、ヒアルロン酸の1構成単位に含まれるグリセリン骨格含有基の数を同定することができる。
【0028】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩では、グリセリン骨格含有基がヒアルロン酸骨格を構成する炭素原子の少なくとも1つに結合していることができる。本発明において、「ヒアルロン酸骨格を構成する炭素原子」とは、ヒアルロン酸を構成するグルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンに含まれる炭素原子をいう。例えば、原料ヒアルロン酸および/またはその塩に含まれるカルボキシル基および水酸基のうち少なくとも1つに後述する化合物1または化合物2を反応させて、グリセリン骨格含有基を導入することにより、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を得ることができる。
【0029】
なお、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、グリセリン骨格含有基が、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩に結合していることは、例えば、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のH−NMRスペクトルと、原料であるヒアルロン酸および/またはその塩のH−NMRスペクトルとの比較において、修飾ヒアルロン酸のグリセリン骨格含有基中のメチレン基(−CH−)のプロトンを示すピークによって確認することができる。
【0030】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩において、グリセリン骨格含有基は例えば、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を構成する4位の炭素原子(C−4)および6位の炭素原子(C−6)、ならびに、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を構成するグルクロン酸の2位の炭素原子(C−2)、3位の炭素原子(C−3)、および5位の炭素原子(C−5)に結合するカルボニル基から選ばれる少なくとも1つに結合することができる。より具体的には、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は以下の一般式(2)で表される化合物であることができる。
【0031】
【化1】

・・・(2)
(式中、R〜Rは独立して、水酸基または上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を表し(ただし、R〜Rがいずれも水酸基を表す場合を除く。))
【0032】
なお、上記一般式(2)において、2位の炭素原子(C−2)に結合するN−アセチルグルコサミンの窒素原子に結合している水素原子が、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基で置換されていてもよい。
【0033】
また、上記一般式(2)で表される化合物において、乳化力に優れている点で、nは1〜50であることが好ましく、1〜25であることがより好ましい。
【0034】
(動粘度)
本発明において、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の水溶液の動粘度は、ウベローデ粘度計(柴田科学器械工業株式会社製)を用いて測定することができる。この際、流下秒数が200〜1000秒になるような係数のウベローデ粘度計を選択する。また、測定は30℃の恒温水槽中で行い、温度変化のないようにする。
【0035】
ウベローデ粘度計により測定された前記水溶液の流下秒数と、ウベローデ粘度計の係数との積により、動粘度(単位:mm/s)を求めることができる。
【0036】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の1%水溶液の動粘度は、乳化力に優れている点で50mm/s以下であることが好ましく、0.1〜10mm/sであることがより好ましく、0.5〜3mm/sであることがさらに好ましい。
【0037】
(分子量)
本発明において、ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は、以下の方法にて測定された値である。
【0038】
即ち、約0.05gのヒアルロン酸および/またはその塩(本品)を精密に量り、0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液に溶かし、正確に100mLとした溶液およびこの溶液8mL、12mL並びに16mLを正確に量り、それぞれに0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液を加えて正確に20mLとした溶液を試料溶液とする。この試料溶液および0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液につき、日本薬局方(第十五改正)一般試験法の粘度測定法(第1法 毛細管粘度計法)により30.0±0.1℃で比粘度を測定し(式A)、各濃度における還元粘度を算出する(式B)。還元粘度を縦軸に、本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。ここで求められた極限粘度をLaurentの式(式C)に代入し、平均分子量を算出する(T.C. Laurent,M.Ryan,A.Pietruszkiewicz,:B.B.A., 42,476−485(1960))。
【0039】
(式A)
比粘度 = {試料溶液の所要流下秒数)/(0.2mol/L塩化ナトリウム溶液の所要流下秒数)}−1
【0040】
(式B)
還元粘度(dL/g)= 比粘度/(本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL))
【0041】
(式C)
極限粘度(dL/g)=3.6×10−40.78
M:平均分子量
【0042】
<修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法>
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、例えば、ヒアルロン酸および/またはその塩を下記一般式(3)で表される化合物(本明細書において「化合物1」ともいう。)と反応させる工程によって得られる。あるいは、ヒアルロン酸および/またはその塩を下記一般式(4)で表される化合物(本明細書において「化合物2」ともいう。)と反応させることによって、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/または塩を調製してもよい。なお、反応性を高めるために、原料のヒアルロン酸および/またはその塩(以下「原料ヒアルロン酸および/またはその塩」という。)をアルキルアンモニウム塩に置換した後に、化合物1または化合物2と反応させることが好ましい。
【0043】
【化2】

・・・(3)
(式中、R1は直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)
【0044】
一般式(3)においてRで表される基としては、上記一般式(1)においてRで表される基として例示したものが挙げられる。
【0045】
【化3】

・・・(4)
(式中、Rは上記一般式(2)におけるRと同義であり、Xはハロゲン原子を示す。)
【0046】
一般式(4)においてXで表されるハロゲン原子としては例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0047】
(原料)
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造に使用される原料ヒアルロン酸および/またはその塩は、動物等の生体組織(例えば鶏冠、さい帯、皮膚、関節液など)から抽出されたものでもよく、または、微生物、動物細胞もしくは植物細胞を培養して得られたもの(例えばストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法)、化学的または酵素的に合成されたものなどを使用することができる。
【0048】
原料ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は通常、親水性および適度な疎水性を両立できる点で、400〜100万であることが好ましく、1000〜30万であることがより好ましく、2000〜5万であることがさらに好ましい。
【0049】
原料ヒアルロン酸および/またはその塩としては、粗抽出物および精製物のいずれを用いてもよいが、精製物、具体的には、ヒアルロン酸および/またはその塩の純度が90%(質量比)以上のものが好ましい。純度が90%未満の原料ヒアルロン酸および/またはその塩を原料として用いた場合、ヒアルロン酸および/またはその塩と、前記化合物1または化合物2との反応が阻害される場合があるため好ましくない。
【0050】
(アルキルアンモニウム塩への変換)
原料ヒアルロン酸および/またはその塩をヒアルロン酸のアルキルアンモニウム塩に変換する場合、例えば、原料ヒアルロン酸および/またはその塩に化合物(以下「化合物3」ともいう。)を反応させることにより、ヒアルロン酸の第四級アルキルアンモニウム塩を得ることができる。このような化合物3としては、例えば、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の炭素原子数2〜18の水酸化第四級アルキルアンモニウムが挙げられる。すなわち、ヒアルロン酸の第四級アルキルアンモニウム塩は例えば、炭素原子数2〜18の第四級アルキルアンモニウム塩であることが好ましい。第四級アルキルアンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩が挙げられる。
【0051】
(アルキルアンモニウム塩と化合物1または化合物2との反応)
ヒアルロン酸の第四級アルキルアンモニウム塩と化合物1または化合物2との反応は、有機溶媒中で行うことができる。ここで、反応温度は通常0〜200℃であり、反応時間は通常0.1〜48時間である。上記反応で使用する有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルミアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン等が挙げられ、これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0052】
化合物1は単独で、または二種以上を組み合わせて使用してもよい。化合物1の具体例としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、ミリスチルグリシジルエーテル、パルミチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアルケニルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0053】
また、化合物2は単独で、または二種以上を組み合わせて使用してもよい。化合物2の具体例としては、例えば、メチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、エチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、プロピル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ブチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、オクチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、デシル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ドデシル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、トリデシル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ミリスチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、パルミチル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、ステアリル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエーテル、アリル3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエー
テルが挙げられる。
【0054】
(精製)
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法においては、ヒアルロン酸および/またはその塩を化合物1と反応させる工程の後、ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方を反応液に添加する工程をさらに含むことができる。
【0055】
反応液中のナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方の濃度は、5〜20%であることが好ましい。ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方の濃度が5%未満では、次の沈殿物を得る工程で沈殿ができない恐れがある。20%を超えると、次の沈殿物を得る工程で、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩と一緒にナトリウム塩またはカリウム塩が沈殿してしまう恐れがある。
【0056】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法においては、ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方を反応液に添加する工程の後に、反応液にアルコールを添加して、沈殿物を得る工程をさらに含むことができる。また、アルコールとしては例えば、メタノール、エタノールが挙げられ、エタノールが好ましい。ここで、沈殿物は、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩である。すなわち、反応液にアルコールを添加して、沈殿物(修飾ヒアルロン酸および/またはその塩)を得ることにより、残存する試薬と分離して、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を得ることができる。
【0057】
沈殿物を得た後、必要に応じて、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が溶解しにくい溶媒(例えば、含水アルコール)で沈殿物を洗浄してもよい。その後、沈殿物を乾燥することにより、精製された修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を得ることができる。
【0058】
上述の沈殿物を得る工程は複数回繰り返して行ってもよい。
【0059】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法において、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の動粘度が低い場合(例えば動粘度が10mm/sである場合)、上述した方法では反応液にアルコールを添加しても沈殿物が得られない場合がある。この場合、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法は、ナトリウム塩およびカリウム塩またはいずれか一方を反応液に添加する工程の後に、反応液のpHを3以下に調整する工程と、pH3以下の反応液に水溶性有機溶媒を添加して、懸濁液を得る工程と、懸濁液をpH3.5〜8に調整して、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を沈殿させる工程とをさらに含むことができる。これらの工程を行うことにより、動粘度が低い場合であっても、高純度の修飾ヒアルロン酸および/または
その塩を高い回収率にて得ることができる。
【0060】
本発明において、「懸濁液」とは、固体の微粒子が液体中に分散している混合物である。例えば、懸濁液では、液中に固体が分散していて液が濁っている状態であってもよいし、懸濁相と上澄み相とに分離していてもよい。後の工程において修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が沈殿しやすい点で、懸濁液は懸濁相と上澄み相とに分離していることが好ましい。
【0061】
懸濁液を得る工程において、水溶性有機溶媒は、溶液が懸濁液へと変化するのに少なくとも必要な量が添加されればよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を挙げることができ、これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。このうち、エタノールが好ましい。
【0062】
水溶性有機溶媒の添加量は、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含む溶液1質量部に対して、1質量部以上、好ましくは2〜50質量部、より好ましくは5〜20質量部である。この場合、水溶性有機溶媒の添加量が修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含む溶液1質量部に対して1質量部未満であると、懸濁が生じ難くなる。
【0063】
また、懸濁液を得る工程において、水溶性有機溶媒を添加する前の溶液はpH3以下であり、好ましくはpH0.5〜2.5、より好ましくはpH1〜2である。水溶性有機溶媒を添加する前の溶液のpHが3を超えると、水溶性有機溶媒を加えても懸濁が生じにくく、後の工程で溶液のpHを3.5〜8に調整しても、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が沈殿しにくい。また、水溶性有機溶媒を添加する前の溶液のpHが低すぎると、後の工程で溶液のpHを3.5〜8に調整する際に多量の塩が生成するため、好ましくない場合がある。
【0064】
修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を沈殿させる工程において、懸濁液をpH3.5〜8に調整して、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を沈殿させる。この場合、懸濁液のpHが3.5〜8の範囲を外れると、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩が沈殿するのが困難になる。また、より高い回収率を達成できる点で、懸濁液をpH4〜7に調整するのが好ましく、pH4〜6に調整するのがより好ましい。
【0065】
≪乳化剤≫
本発明の実施形態に係る乳化剤は、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有することから、上記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩をそのまま乳化剤として用いるのが好ましいが、精製水等の溶媒、デキストリン等の賦形剤あるいは他の皮膚化粧料の原料を添加してもよい。
【0066】
本実施形態に係る乳化剤に含有される修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、エタノールばかりでなく、多価アルコールや油脂に対する溶解性に優れている。このため、油性原料を含む化粧料に配合する場合、分離または析出が生じることなく混合することができ、良好な乳化作用を示す。したがって、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する乳化剤は、修飾されていない通常のヒアルロン酸と比較して、油性原料および水性原料を含む化粧料に好適に使用できる。また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する乳化剤は、水に対する溶解性に優れているため、例えば水を含有する種々の製品に使用できる。
【0067】
(作用効果)
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する乳化剤は上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含むことにより、親水性および疎水性の両立を図ることができるため、良好な乳化作用を発揮できる。
【0068】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩では、グリセリン骨格含有基中のRによって疎水性がもたらされ、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩に含まれる水酸基(グリセリン骨格含有基中の水酸基を含む)および/またはカルボキシル基によって親水性がもたらされると推察される。
【0069】
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する乳化剤は上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含むことにより、水溶性に優れているため、例えば水を含有する種々の製品に添加して使用することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する乳化剤は、多価アルコール及び油脂に対する溶解性に優れているため、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を例えば水分含有量の低い製品に配合した場合、その製品への溶解性に優れており、透明性が高い製品を得ることができる。
【0071】
≪用途≫
本発明の実施形態に係る乳化剤の用途は、特に限定するものではないが、化粧品、医薬部外品、医薬品などに幅広く使用することができ、具体的には、乳液、クリーム、化粧水、モイスチャーゲルなどに使用することができる。
【0072】
上記用途における本実施形態に係る乳化剤の配合量は、必要とする乳化力が得られれば特に限定するものではないが、0.001〜5質量%が好ましく、0.005〜1%がより好ましい。含有量が0.001質量%未満では、満足な乳化力が得られない場合がある。含有量が5質量%を超えると、粘度が高くなりすぎ皮膚全体に伸ばしにくくなる恐れがある。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施形態に係る実施例1〜5、比較例1〜5、試験例1〜7について説明する。
【0074】
<乳化剤としての修飾ヒアルロン酸の調製>
(実施例1)
1Lビーカーにヒアルロン酸(分子量8000、キユーピー株式会社製)5.0gを水500mLに溶解させ、さらに40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を攪拌しながら加えて、pHを7.2に調整した。pH調整後、凍結乾燥させ、ヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩を10.2g得た。30mLサンプル瓶に得られたヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩1.0g、C12〜13アルキルグリシジルエーテル(反応試薬)(四日市合成株式会社製)2.0g、およびジメチルホルミアミド(DMF)10mLを入れ、攪拌しながら80℃水浴上で8時間反応させた。反応終了後、12.5%塩化ナトリウム水溶液を10mL加え、8%塩酸にてpH1.0に調整した。次いで、エタノール50mLを撹拌しながらゆっくり加え、ヒアルロン酸を沈殿させた。次いで、25%
水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整し、沈殿物をろ過にて回収し、80%エタノール50mLで3回洗浄した。得られた沈殿物を60℃で真空乾燥させて、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含む、修飾率0.05の修飾ヒアルロン酸(乳化剤)を0.48g得た。また、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸の動粘度は1.2mm/sであった。
【0075】
実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸のH−NMRスペクトル(観測周波数400MHz、内部標準物質:DSS(0ppm)、溶媒:重水)を図1(a)に示す。一方、比較対照として、原料(グリセリン骨格含有基を有さない)のヒアルロン酸(キユーピー株式会社製、平均分子量8000)のH−NMRスペクトル(観測周波数400MHz、内部標準物質:DSS(0ppm)、溶媒:重水)を図1(b)に示す。図1(a)のH−NMRスペクトルにおいて、1.3ppm付近に存在するピークは、修飾ヒアルロン酸のグリセリン骨格含有基中のメチレン基(−CH−)のプロトンを示すピークであると推察される。
【0076】
(実施例2)
実施例1において試薬との反応温度および反応時間を変更して、修飾率0.1の修飾ヒアルロン酸(乳化剤)を得た。
(実施例3)
実施例1において試薬との反応温度および反応時間を変更して、修飾率0.2の修飾ヒアルロン酸(乳化剤)を得た。
(実施例4)
実施例1において試薬との反応温度および反応時間を変更して、修飾率0.4の修飾ヒアルロン酸(乳化剤)を得た。
(実施例5)
実施例1においてC12〜13アルキルグリジジルエーテルをC16アルキルグリシジルエーテルに置き換え、反応温度および反応時間を変更して、修飾率0.05の修飾ヒアルロン酸(乳化剤)を得た。
(比較例1)
無修飾のヒアルロン酸(分子量8000、キユーピー株式会社製)を乳化剤とした。
【0077】
<乳化性試験>
(試験例1)大豆油での乳化性試験
精製水28.5gを撹拌しながら、実施例1〜5、比較例1の乳化剤0.5gを添加し、溶解した。これを70℃まで加温した後、70℃まで加温した大豆油(大豆サラダ油、日清オイリオグループ社製)21gと混合し、ヒスコトロン(マイクロテック・ニチオン社製)で7,000rpm×5分間撹拌した。その後、25mLを目盛り付き容試験管に取り、室温まで放冷し、24時間後の分離状態を確認した。
【0078】
乳化性の評価は、分離した油相の有無を確認するとともに、分離した水相の量を試験管の目盛りにて確認した。また、分離した水相の量を下記の式に代入し、水相分離量を算出した。
水相分離量(%)=(分離水相量÷配合中の全水相量)×100
乳化性の評価結果を表1に示した。
【0079】
【表1】

油相分離の評価基準(表1、2、3に適用)
○:油相分離なし
×:油相分離あり
水相分離の評価基準(表1、2、3に適用)
◎:水相分離量が10%未満
○:水相分離量が10〜50%
△:水相分離量が50%以上
×:完全に分離
総合評価の評価基準(表1、2、3に適用)
○:油相分離の評価が○、かつ、水相分離の評価が○または◎
△:油相分離または水相分離の評価のいずれかが△
×:油相分離または水相分離の評価のいずれかが×
【0080】
表1から、本願発明(実施例1〜5)の修飾ヒアルロン酸を含有する乳化剤は、上記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を有するため、乳化性が優れていることがわかる。中でも、ヒアルロン酸1構成単位に含まれる前記グリセリン骨格含有基の数すなわち修飾率(N)が0.1以上である修飾ヒアルロン酸を含有する乳化剤(実施例2〜4)は、乳化性がより優れていた。これに対して、無修飾の比較例1の乳化剤は、乳化性が劣っていることがわかる。
【0081】
<他の乳化剤(界面活性剤)との比較>
(比較例2)
化粧料で乳化剤として汎用されているポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を乳化剤とした。
(比較例3)
化粧料で乳化剤として汎用されているミリスチン酸ポリグリセリル−10を乳化剤とした。
(比較例4)
300mL容のガラス製三角コルベンに20mLの市販の特級酢酸及び80m
Lの無水酢酸を入れ、6gのバイオヒアロ12(分子量約120万のヒアルロン酸、資生堂(株)製)の微細粉末を攪拌しながら少しずつ加えた。続いて、4mLの濃硫酸をゆっくり加え、室温で1時間攪拌してアセチル化反応を行わせた。3L容のガラス製ビーカーに、あらかじめ2Lの精製水を入れておき、攪拌しながら上記反応液を糸状になるようにゆっくり加えた。生じたアセチル化ヒアルロン酸の沈殿を分取し、沈殿はさらに2Lの精製水で2回同様に洗浄した。上記沈殿を1L容のガラス製ビーカーに移し、80%(V/V)アセトン水溶液250mL及び 50%乳酸ナトリウム水溶液9gを加え、攪拌しながら沈殿を完全に溶解させた。続いて、アセトン400mLをゆっくり加え、アセチル化ヒアルロン酸のゲル状沈殿を再沈殿させた。上記沈殿を分取した後、ホモジナイザーを併用しエタノール100mLを用いて10000rpmの速度で10分間の洗浄を2回行なった。次に、減圧濾過により沈殿を分取した後、減圧乾燥して得られたアセチル化ヒアルロン酸の白色粉末を乳化剤とした。
【0082】
(試験例2)
本試験例では、本発明の修飾ヒアルロン酸と、化粧料で汎用されている乳化剤および乳化性を示すことが知られているアセチル化ヒアルロン酸との乳化性の比較を行うため、実施例2、比較例2〜4の乳化剤について、試験例1と同様の方法で乳化性の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0083】
【表2】

【0084】
<大豆油以外の油脂に対する乳化性>
(試験例3)
本試験例では、本発明の修飾ヒアルロン酸を含有する乳化剤の、化粧料で汎用される油脂に対する乳化性の評価を行うため、試験例1において、実施例2の修飾ヒアルロン酸(修飾率0.10)を含有する乳化剤を用い、大豆油を表3に示す所要HLBの異なる油脂に変更した以外は、試験例1と同様の方法で乳化性の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0085】
【表3】

【0086】
<化粧料の調製>
(試験例4)
試験例4では、表4に記す処方にて、実施例1で得られた修飾ヒアルロン酸(修飾率0.05)を含有する乳化剤を配合した乳液を調製した。すなわち、修飾ヒアルロン酸を含むB1相を混合し、70℃で加熱して溶解させた。また、A1相を混合し、70℃で加熱して溶解させた。次に、70℃に保温したA1相をホモミキサーにて撹拌しながらC1相を添加し、次いでB1相を添加した後、5
分間保持した。次に、撹拌しながら、D1相を添加後、E1相を添加し、5分間保持した。その後、脱気、冷却を行い、乳液を製した。得られた乳液は、水相および油相の分離は見られず、滑らかな感触であった。
【0087】
【表4】

【0088】
(試験例5)
試験例5では、表5に記す処方にて、実施例2で得られた修飾ヒアルロン酸(修飾率0.10)を含有する乳化剤を配合したエモリエントクリームを調製した。すなわち、修飾ヒアルロン酸を含むC2相を混合し、70℃で加熱して溶解させた。また、A2相を混合し、70℃で加熱して溶解させた。次に、70℃に保温したA2相をホモミキサーにて撹拌しながらB2相を添加し、次いでC2相を添加後、5分間保持した。その後、脱気、冷却を行い、エモリエントクリームを製した。得られたエモリエントクリームは、水相および油相の分離は見られず、滑らかな感触であった。
【0089】
【表5】

【0090】
(試験例6)
試験例6では、表6に記す処方にて、実施例3で得られた修飾ヒアルロン酸(修飾率0.20)を含有する乳化剤を配合したモイスチャーゲルを調製した。すなわち、修飾ヒアルロン酸を含むA3相を混合して溶解させた。また、B3相を混合し、60℃で加熱して溶解させた。次いで、先に調製したA3相を撹拌しながらB3相を添加し5分間保持した。その後、C3相を添加し、5分間保持した後、冷却を行い、モイスチャーゲルを調製した。得られたモイスチャーゲルは、水相および油相の分離は見られず、滑らかな感触であった。
【0091】
【表6】

【0092】
(試験例7)
試験例7では、表7に記す処方にて、実施例2で得られた修飾ヒアルロン酸(修飾率0.10)を含有する乳化剤を配合した半透明マイクロエマルション化粧水を調製した。すなわち、修飾ヒアルロン酸を含むB4相を混合し、溶解させる。また、A4相を混合し、溶解させる。次に、A4相をアンカー撹拌しながらB4相を添加し、5分間保持し、半透明マイクロエマルション化粧水を製した。得られた半透明マイクロエマルション化粧水は、水相および油相の分離は見られず、滑らかな感触であった。
【0093】
【表7】

【0094】
本発明の実施形態から以下のことが明らかとなった。
(A)ヒアルロン酸1構成単位に含まれる、グリセリン骨格含有基の数すなわち修飾率が0.05以上の修飾ヒアルロン酸を含有する乳化剤は、油脂に対して良好な乳化性を示す。
(B)ヒアルロン酸1構成単位に含まれる、グリセリン骨格含有基の数すなわち修飾率が0.05以上の修飾ヒアルロン酸を含有する乳化剤を含む化粧料は、水相および油相の分離は見られず、滑らかな感触を示すことが確認された。
【0095】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが、当業者には明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるグリセリン骨格含有基を含む、修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する乳化剤。
−O−CH−CHOH−CH−OR ・・・(1)
(式中、Rは直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表す。)
【請求項2】
ヒアルロン酸1構成単位に含まれる前記グリセリン骨格含有基の数が0.05以上である、請求項1に記載の乳化剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−241007(P2012−241007A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116384(P2011−116384)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】