説明

乳化型化粧料

【課題】本発明は、乳化剤を用いて乳化させた乳化型化粧料、特にシリコーンを含む油剤を乳化させた油中水型乳化化粧料について、その乳化安定性を向上させた乳化型化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】乳化剤を用いて乳化した乳化型化粧料において、一方の面Aと他方の面Bのそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上ある板状アクリル系重合体板状粒子からなる親疎水異方性板状粒子を配合した乳化型化粧料である。シリコーン油を含む油剤をシリコーン系界面活性剤で乳化させてなる乳化型化粧料の乳化安定性向上に適する。親疎水異方性板状粒子は、一方の表面に親水性基が配列し、他方の表面に疎水性基が配列したアクリル系共重合体或いはアクリル系共重合体混合物の板状粒子などである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化安定性を高めた乳化型化粧料に関する。更に詳しくは、親疎水異方性板状粒子を配合して乳化安定性を高めた乳化型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化化粧料は、主に、水中油型化粧料と油中水型化粧料に分類できる。これらの乳化化粧料は、水を含有するため、油性化粧料に比べ、肌に塗布した場合、さっぱり感を与え、さらに油性感が少ない。また、外観は液状やクリーム状のものが多く、肌上でののびが良く、ムラのない均一な仕上がりが得られやすいなどの特性を有する。特に油中水型化粧料は、水中油型化粧料に比べ、油相が連続相であるため、皮膚表面上に水分透過性の低い油膜を残し、長時間にわたって肌を乾燥から保護するとともに、水と接触しても再乳化を起こすことが少なく化粧崩れが起こりにくい。
【0003】
しかしながら、従来の油中水型化粧料は、安定化のために水分量を制限したりすることが多く、その結果べたつき感や油性感が強く感じられた。この問題を解決するためにシリコーン油やポリエーテル・アルキル変性シリコーンを含有する油中水型乳化化粧料が提案されている(特許文献1)が、この化粧料も、のびの改善を目的として乳液状の油中水型乳化化粧料とした場合、経時安定性が十分とは言い難い。この経時安定性を改善する方法として、デキストリン脂肪酸エステルやフラクトオリゴ糖脂肪酸エステルを配合する方法が知られている(特許文献2、特許文献3)
【0004】
また、粒子の表面を他の微細粒子で被覆するなどして多機能を付与した複合粒子が種々提案されており、近年は、一つの粒子に異方性を持たせた異方性粒子が提案されている。例えば、高分子粒子の片側表面と他方の片側表面とが異なる性能(例えば、親水性と疎水性、正電荷と負電荷)を有する粒径0.01〜10000μmの表面異方性高分子粒子が提案されている(特許文献4)。また、シリコーン樹脂粉末、アクリル樹脂粉末、ポリエチレン樹脂粉末、ナイロン樹脂粉末などの基粉末の粒子表面が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛などの親水性物質によって、局所において緻密に被覆されている異方性粒子が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−36620号公報
【特許文献2】特開平4−312512号公報
【特許文献3】特開2002−193729号公報
【特許文献4】特許第3567269号公報
【特許文献5】特開2007−302823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、乳化剤を用いて乳化させた乳化型化粧料について、その乳化安定性を向上させた乳化型化粧料を提供することを目的とする。特に、シリコーン油を含む油剤を乳化させた乳化型化粧料について、その乳化安定性を向上させた乳化型化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、乳化剤を用いて乳化させた乳化型化粧料に、親疎水性異方板状粒子を配合することによって、その乳化安定性を向上できることを知見し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、乳化剤を用いて乳化した乳化型化粧料において、一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上ある板状アクリル系重合体粒子からなる親疎水異方性板状粒子を配合したことを特徴とする乳化型化粧料である。本発明は、特に、シリコーン油を含む油剤を乳化剤で乳化させてなる乳化型化粧料、更にはシリコーン油を含む油剤を、シリコーン系界面活性剤を用いて乳化させてなる乳化型化粧料の乳化安定性の向上に適する。
【0009】
また、上記の親疎水異方性板状粒子のアクリル系重合体は、親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体であってもよい。このアクリル系共重合体は、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、下記一般式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1は水素またはメチル基を示し、Xは、炭素数2〜5の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、nは1〜200の数を示す)
で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとのアクリル系共重合体が好ましい。
【0012】
また、上記のアクリル系重合体は、親水性基を有するアクリル系共重合体と、疎水性基を有するアクリル系共重合体との混合物であってもよい。この親水性基を有するアクリル系共重合体は、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルとビニルピロリドン又はポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体が好ましく、また、疎水性基を有するアクリル系共重合体は、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと前記一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとの共重合体である疎水性基を有するアクリル系共重合体が好ましい。
【0013】
上記の親疎水異方性板状粒子は、その一方の面がアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した球状粒子で形成された凹凸面であってもよい。すなわち、形状異方性板状粒子であってもよい。この場合、アクリル系重合体は、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと前記一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとの共重合体が好ましく、球状粒子はシリカ粒子が親疎水異方性の点で好ましい。また、本発明の乳化型化粧料は、油中水乳化型化粧料が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
乳化剤を用いて乳化させた乳化型化粧料に、本発明の親疎水異方性板状粒子を配合することにより、この乳化型化粧料の経時安定性など乳化安定性を向上させることができる。すなわち、本発明の親疎水異方性板状粒子を配合した乳化型化粧料は、親疎水異方性板状粒子を配合しない乳化型化粧料に比し、乳化安定性がよい。本発明は、油中水型化粧料の乳化安定性向上に適する。また、特に、シリコーン油を含む油剤を乳化させた乳化型化粧料、更には、シリコーン油を含む油剤をシリコーン系界面活性剤で乳化させた乳化型化粧料の乳化安定性を高めるのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明で用いる親疎水異方性板状粒子の一例の外形を示す斜視図である。
【図2】本発明で用いる、球状粒子を有する親疎水異方性板状粒子の一例の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で言う、親疎水異方性板状粒子とは、一つの板状粒子について、その一方の面と他方の面とが親水性、疎水性を異にする板状粒子をいう。図1は、本発明で用いる異方性板状粒子の一例の外形を示す斜視図である。1はアクリル系重合体からなる親疎水異方性板状粒子である。そして、本発明で用いる親疎水異方性板状粒子は、該板状粒子の一方の面であるA面と、他方の面であるB面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上ある。通常、一方の面のA面が親水性であれば、その反対面のB面は疎水性にするが、両面共に親水性、或いは疎水性でもよい。例えば、板状粒子の両面が疎水性であっても、その一方の面の疎水性が他方の面の疎水性より著しく強く、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上あるものも本発明の親疎水異方性板状粒子である。接触角は、接触角測定装置(Dropmaster DM500 協和界面科学株式会社製)、液滴法(θ/2法)を用いて、精製水2.0μLをサンプル面に滴下した後、1.0秒後の接触角を測定した値である。
【0017】
本発明で用いる親疎水異方性板状粒子はアクリル系重合体からなっている。本発明で用いるアクリル系重合体は、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルから選ばれた単量体の単独重合体又はこれら共重合体、或はその他の単量体との共重合体が好ましく用いられる。これらの重合体は、薄膜を製造しやすく、したがって板状粒子を製造しやすい利点がある。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アククリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、メタクリル酸アルキルエステルとしてはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル2−エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの単独重合体又は共重合体が用いられる。
【0018】
本発明で用いるアクリル系重合体は、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと、親水性基を有するビニル単量体及び/又は疎水性基を有するビニル単量体との共重合体である。そして、アクリル系重合体として、メタクリル酸メチル単位を50質量%以上含有するメタクリル樹脂を用いると、透明性、展延性、付着性等に優れた板状粒子が得られやすい。なお、メタクリル酸メチル単位を75質量%〜99質量%と、アクリル酸アルキル類単位を1質量%〜25質量%含むメタクリル樹脂は、透明性に特に優れ、また有機溶剤に溶解しやすいので好ましい。また、このメタクリル樹脂の平均重合度が約600以上で1300以下であると、重合体溶液の溶液粘度が低く、そのため厚さの薄い薄膜、ひいては厚さの薄い板状粒子が得られやすい。
【0019】
本発明で用いる親疎水異方性板状粒子は、たとえば、(1)親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体からなり、一方の表面に該アクリル系共重合体中の親水性基が配列し、他方の表面に該アクリル系共重合体中の疎水性基が配列した板状粒子である。また、(2)親水性基を有するアクリル系共重合体と、疎水性基を有するアクリル系共重合体との混合物からなり、一方の表面に混合物中の親水性基が配列し、他方の表面に混合物中の疎水性基が配列した板状粒子である。また(3)一方の面が親水性基又は疎水性基を有するアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した疎水性又は親水性の球状粒子の凹凸面である板状粒子である。そして、これらの板状粒子の一方の面と他方の面とのそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上になるようにする。
【0020】
前記(1)の親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体からなる親疎水異方性板状粒子の場合、このアクリル系共重合体としては、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと親水性を有する単量体と疎水性基を有する単量体との共重合体が用いられる。そして、親水性を有する単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコールメチルアクリレート、ビニルピロリドンなどが挙げられる。また、疎水性基を有する単量体としては、例えば前記の一般式(1)で示されるようなジメチルポリシロキサンマクロモノマーなどのビニル基を有するシリコーン化合物が挙げられる。具体例としては、メタクリル酸メチル98モル%、アクリル酸メチル1モル%、ポリエチレングリコールメチルアクリレート1モル%の組成の共重合体が挙げられる。また、疎水性が著しく強い基と疎水性が弱い基を有する例として、メタクリル酸メチル98モル%、アクリル酸メチル1モル%、前記の一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマー1モル%の組成の共重合体が挙げられる。
【0021】
前記(2)の親水性基を有するアクリル系共重合体と、疎水性基を有するアクリル系共重合体との混合物からなる親疎水異方性板状粒子の場合、親水性基を有するアクリル系共重合体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコールメチルアクリレート、ビニルピロリドンなどの親水性を有する単量体とアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルの共重合体である。また、疎水性基を有するアクリル系共重合体としては、例えば前記の一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーなどのビニル基を有するシリコーン化合物などの疎水性基を有する単量体とアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルの共重合体である。
【0022】
前記(3)の一方の面が親水性基又は疎水性基を有するアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した疎水性又は親水性の球状粒子の凹凸面である親疎水異方性板状粒子の場合、アクリル系重合体としては、例えば、上記の(2)で述べた親水性基を有するアクリル系共重合体又は疎水性基を有するアクリル系共重合体が用いられる。また、球状粒子は、例えばシリカ粒子、シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子などが用いられ、これらより一種又は二種以上を適宜用いる。親水性の球状粒子としては球状シリカ粒子が好ましい。また、球状粒子を親水化処理あるいは疎水化処理して適用することも可能である。球状粒子は、平均粒子径1.0〜10.0μmのものが好ましい。なお、本発明において、平均粒子径の測定は、レーザー型乾式粒度分布測定装置(セイシン企業社製 PRO7000S)を用いた。
【0023】
アクリル系重合体として、前記一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーを共重合した重合体を用いると、このアクリル系重合体は疎水性が増大する。また、球状粒子としてシリカ粒子を用いると、球状粒子で形成された凹凸面の親水性が大きくなる。そのため、アクリル系重合体で形成された平滑面と、球状粒子で形成された凹凸面の両者の接触角の角度差が15度以上の異方性板状粒子を得ることができる。この際、シリカ粒子は粒子径の大きい平均粒子径2〜5μmのものが、親水性が大きくなり好ましい。
【0024】
図2は、本発明で用いる親疎水異方性板状粒子の一例の断面の模式図である。2は疎水性基を有するアクリル系重合体である。3は親水性球状粒子である。親疎水異方性板状粒子の一方の面aは疎水性基を有するアクリル系重合体2で形成された平滑面である。他方の面bは、疎水性基を有するアクリル系重合体2から突出した親水性球状粒子3で形成された凹凸面である。したがって、この親疎水異方性板状粒子は、形状において異方性を有する、いわゆる形状異方性板状粒子でもある。この平滑面aの平滑度は、凹凸差が50nm以下(表面形状粗さ測定:非接触型三次元光干渉式表面粗さ測定装置WYKO NT-1100を用い、測定モードPSI、測定範囲50倍(0.09×0.12mm)の条件にて測定)が好ましい。また、凹凸面bは、アクリル系重合体表面とそこから突出した球状粒子との凹凸差で表わした場合、0.8μm以上の凹凸差が好ましい。この凹凸差は、球状粒子の粒径で異なり、実験によれば、粒子径最小範囲が1.0μmの球状粒子を用いた場合、その凹凸差は、球状粒子の一部がアクリル系重合体表面に埋没し固着しているため、1.0μmよりは小さくなる。
【0025】
本発明で用いる親疎水異方性板状粒子の大きさは、平均粒子径10〜70μmが好ましいが、具体的には、使用目的によって決められる。化粧料に配合する場合、好ましくは10.0〜50.0μm、より好ましくは10.0〜30.0μmである。また、そのアスペクト比(平均粒子径/平均厚み)は1〜140である。
【0026】
本発明で用いる親疎水異方性板状粒子は、一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上あるという親水性、疎水性に関し異方性を有する。すなわち、この親疎水異方性板状粒子は、一方の面が親水性であり、他方の面が疎水性である。本発明で用いる親疎水異方性板状粒子は、このように板状粒子の表裏で親疎水異方性を示すため、界面活性を有し、粉体乳化剤として用いられ、ピッカリングエマルションの生成に用いることができる。このピッカリングエマルションは、水/油/親疎水異方性板状粒子の3成分系で構成され、親疎水異方性板状粒子が界面活性剤としての役割を果たす。O/W型、W/O型の乳化物を調製することが可能である。得られるエマルションは、20〜80μmである。
【0027】
本発明では、親疎水異方性板状粒子を、上記のピッカリングエマルションの生成に用いるもの、すなわち乳化剤として用いるものではなく、調製された乳化型化粧料の乳化安定性の向上ために用いるものである。例えば、乳化型化粧料(特にW/O型)に、平均粒子径が20〜80μmの親疎水異方性板状粒子を配合した場合、乳化滴が約1〜2μmの乳化液が形成される。このように、形成された乳化滴が親疎水異方性板状粒子の平均粒子径より小さいことから、親疎水異方性板状粒子は乳化滴の界面に配向していないことが分かる(これは、上記のピッカリングエマルションとは異なる。)。しかしながら、親疎水異方性板状粒子を配合した乳化型化粧料は、粘度が上昇し、乳化安定性の向上がなされている。この粘度上昇は、粉体の体積効果よりも優位に働いており、異方性粉体特有の現象と考えられる。本発明は、特に、シリコーン油を含む油剤を乳化させた乳化型化粧料、更には、シリコーン油を含む油剤をシリコーン系界面活性剤で乳化させた乳化型化粧料の乳化安定性の向上に有効である。
【0028】
次に、本発明で用いる親疎水異方性板状粒子の製造方法について説明する。前述した(1)親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体からなり、一方の表面に該アクリル系共重合体中の親水性基が配列し、他方の表面に該アクリル系共重合体中の疎水性基が配列した親疎水異方性板状粒子、及び前述した(2)親水性基を有するアクリル系共重合体と、疎水性基を有するアクリル系共重合体との混合物からなり、一方の表面に混合物中の親水性基が配列し、他方の表面に混合物中の疎水性基が配列した親疎水異方性板状粒子の場合は、それぞれのアクリル系共重合体或いはアクリル系共重合体混合物を溶剤に溶解し、該溶液を前記溶剤と混和しない液体表面上に展開して薄膜を形成させ、次いで、該薄膜を取り出し、その後該薄膜から溶剤を除去し、粉砕することにより製造できる。また、前述した(3)一方の面が親水性基又は疎水性基を有するアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した疎水性又は親水性の球状粒子の凹凸面である親疎水異方性板状粒子の場合は、親水性基又は疎水性基を有するアクリル系重合体を溶剤に溶解し、これに球状粒子を添加して分散溶液を調製し、該分散溶液を前記溶剤と混和しない液体表面上に展開して薄膜を形成させ、次いで、該薄膜を取り出し、その後該薄膜から溶剤を除去し、粉砕することにより製造できる。球状粒子の添加量は、アクリル系重合体溶液の5〜30質量%である。上記の「溶剤と混和しない液体」は、溶剤の溶解度が50質量%以下である液体(液体に対する溶剤の溶解度が50質量%以下)が好ましく用いられる。
【0029】
これらの製造方法において、アクリル系重合体の溶解に用いる有機溶剤は、炭素数2〜8のケトン類又はエステル類の溶剤、例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。これらは、2種類以上を混合して、水との相溶性を調整した混合溶剤にして用いることができる。アクリル系重合体溶液は、例えばポリマー濃度が5〜30質量%となるようにアクリル系重合体を有機溶剤に溶解することで製造できる。このアクリル系重合体溶液は約5〜50パスカルセコンド(Pa・S)(約50〜500センチポイズ)の溶液粘度(20℃)を有することが好ましい。
【0030】
このアクリル系重合体溶液を、常温の液体(溶剤と混和しない液体)の液層の液面上に膜状に展開させ、揮発や液体への移行により脱溶剤して、液層の上にアクリル系重合体の薄膜を形成させる。アクリル系重合体溶液を液面上に膜状に展開させるのは、液体の液面上に、アクリル系重合体溶液を滴下し、浮上展開させることにより、容易に行える。薄膜の厚さ、ひいては板状粒子の厚さは、液層の液面に滴下する重合体溶液の量、粘度などによって調整する。アクリル系重合体の量が、液層の液面1m2当たり0.1g〜50gとなるように重合体溶液を液層の上に展開させると、約0.1μm〜50μmの厚さを有する薄膜、ひいては板状粒子が得られる。
【0031】
上記の液層に用いる液体は、溶剤と混和しない液体で、水、炭素数1〜4のアルコール(メタノール、エタノール等)、或いはアルコール類と水とを混合した水溶液が挙げられる。取り扱い易さ、コスト、薄膜の製造し易さ等の点から、水を70質量%以上、好ましくは90質量%以上含むものが好ましい。また、水溶性の無機塩類を水に溶解した無機塩類水溶液は、比重を1以上に調整し易いので、液層として用いると薄膜を製造し易い。無機塩類の例は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等である。無機塩類は、水100質量部に対して、約5〜50質量部の割合で用いることができる。液層の温度は、0℃から30℃の範囲であることが好ましい。特に10℃から25℃の範囲が薄膜の形成性も良く、また作業性も良いので好ましい。
【0032】
次いで、液層上に形成された薄膜を採取する。採取した薄膜は、減圧濾過等により、水等の液体を除去し、乾燥し、粉砕機により粉砕して微粉末(板状粒子の集合体)を得る。上記粉砕機は、ボールミル、衝撃微粉砕機、ジェット粉砕機などが用いられる。粉砕方法としては、約−30℃以下、好ましくは約−70℃以下の沸点を有する液化気体等の冷却剤により薄膜を冷却しながら薄膜を破砕する冷凍粉砕が好ましい。薄膜を粉砕して得た板状粒子の表面形状は、薄膜の表面形状と同様である。
【0033】
本発明は、油剤と水とを乳化剤を用いて乳化した乳化型化粧料に適用できる。上記の油剤としては、通常使用されている動物油、植物油、合成油等の起源、及び固形油、半固形油、液体油、揮発製油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が挙げられる。本発明は、シリコーン油を含む乳化型化粧料に有用である。シリコーン油としてはジメチルポリシロキサン、環状シリコーン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、高級脂肪酸変性オルガノポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、トリメチルシロキシシリケート等が挙げられる。
【0034】
また、上記の乳化剤としては、化粧料の製造に使用される種々の界面活性剤(乳化剤)が使用できる。例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;モノイソステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットヘキサステアレート(6.E.O)、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート(6.E.O)、ポリオキシエチレンモノステアレート(1.E.O)、ポリオキシエチレンモノステアレート(2.E.O)、ポリオキシエチレンモノステアレート(4.E.O)、ポリオキシエチレンモノオレエート(2.E.O)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(2.E.O)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(2.E.O)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(4.E.O)等ポリオキシエチレン系などである。シリコーン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリグリセリン変性オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。具体的には、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF−6038)、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF−6028)、POEメチルシロキサン・POPオレイルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(KF−6026)、PEG−3ジメチコン(KF−6015)、シリコーン分岐型ラウリル・トリグリセリン共変性シリコーン(KF−6105)(いずれも信越化学工業社製)などである。
【0035】
本発明の乳化型化粧料は、次の方法で調製する。すなわち、例えば、油中水型乳化型化粧料の場合、外相(連続相)となる油剤に親疎水異方性板状粒子及び乳化剤を加え、内相となる水相を分散する方法、また親疎水異方性板状粒子を水相に分散し、次いで、該水相に乳化剤を加えた油剤を添加して、連続相を油相とする方法などがある。具体的には、例えば、外相(連続相)となる油相に親疎水異方性板状粒子及びシリコーン系界面活性剤を加え、内相となる水相を分散する方法や、親疎水異方性板状粒子を水相に分散し、次いで、該水相にシリコーン系界面活性剤を加えたシリコーン油含有油相を添加して、連続相を油相とする方法で乳化型化粧料を得る。
【0036】
以下に、本発明で用いる親疎水異方性板状粒子の製造実施例と、この親疎水異方性板状粒子を配合した実施例を示す。なお、両面の接触角の角度差を得るための接触角は次のようにして測定した。すなわち、作成された薄膜について表裏が分かるように採取し、測定サンプルとした。測定は、接触角測定装置(Dropmaster DM500 協和界面科学株式会社製)、液滴法(θ/2法)を用いて、精製水2.0μLを各面に滴下した後、1.0秒後の接触角を測定した。測定は各面に対して5回行い、その平均値を面の接触角とした。そして、両面の接触角の差を算出した。これは親疎水異方性差の指標となる。
〔製造実施例1〕
【0037】
500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル39.2g、アクリル酸メチル0.35g、シリコーンマクロモノマー(RES−422 信越化学工業社製)8.0g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、アクリル系共重合体(1)を32.5g得た。得られたアクリル系共重合体(1)のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は40000であり、またメタクリル酸メチル98モル%とアクリル酸メチル1モル%とシリコーンマクロモノマー1モル%の共重合組成であった。
【0038】
このアクリル系共重合体(1)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解し、この溶液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下して展開させ、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系共重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。この薄膜は、上側の空気と接した面も、下側の水に接した面も平滑であった。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより本発明の板状粒子を得た。得られた板状粒子の平均粒径は40μm、平均厚みは3.0μmであった。また、この板状粒子の両面の接触角の角度差は16.3度であった。
〔製造実施例2〕
【0039】
(a)500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル37.6g、アクリル酸メチル0.35g、1−ビニル−2−ピロリドン2.22g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、アクリル系共重合体(2)を20.0g得た。得られたアクリル系共重合体(2)は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が80000であり、またメタクリル酸メチル94モル%とアクリル酸メチル1モル%と1−ビニル−2−ピロリドン5モル%の共重合組成であった。
【0040】
(b)500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル38.4g、アクリル酸メチル0.35g、シリコーンマクロモノマー(RES−422 信越化学工業社製)24.0g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、アクリル系共重合体(3)を35.0g得た。得られたアクリル系共重合体共重合体(3)は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が50000であり、またメタクリル酸メチル96モル%とメタクリル酸メチル1モル%とシリコーンマクロモノマー3モル%の共重合組成であった。
【0041】
(c)上記で得られたアクリル系重合体(2)及びアクリル系重合体(3)を1:1の質量%の比率で、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下し、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより実施例2の板状粒子を得た。得られた板状粒子の平均粒径は30μm、平均厚みは3.0μmであった。この板状粒子の両面の接触角の角度差は17.5度であった。
〔製造実施例3〕
【0042】
製造実施例1で得られたアクリル系共重合体(1)及び実施例2で得られたアクリル系共重合体(2)を1:1の質量%の比率で、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下し、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状粒子を得た。得られた板状粒子の平均粒径は40μm、平均厚みは3.5μmであった。また、この板状粒子の両面の接触角の角度差は26度であった。
〔製造実施例4〕
【0043】
(a)500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル39.2g、アクリル酸メチル0.35g、PEGメタクリレート(ブレンマーPE−350 日本油脂社製)1.75g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、アクリル系共重合体(4)を30.0g得た。得られたアクリル系共重合体(4)は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が90000であり、またメタクリル酸メチル98モル%とメタクリル酸メチル1モル%とPEGメタクリレート1モル%の共重合組成であった。
【0044】
(b)製造実施例1で得られたアクリル系共重合体(1)及び上記のアクリル系共重合体(4)を1:1の質量%の比率で、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下し、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状粒子を得た。得られた板状粒子の平均粒径は30μm、平均厚みは3.0μmであった。また、この板状粒子の両面の接触角の角度差は28.8度であった。
〔製造実施例5〕
【0045】
(a)500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル39.6g、アクリル酸メチル0.35g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、共重合体30.0gを得た。得られたアクリル系共重合体(5)は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が100000であり、メタクリル酸メチル99モル%とアクリル酸メチル1モル%の共重合組成のアクリル系重合体であった。
【0046】
(b)上記で得たアクリル系共重合体(5)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、アクリル系共重合体に対して20質量%となるように粒子径0.5−3.0μm(粒度分布70%以上)の親水性シリカ粉末(ゴットボールE2−824C 鈴木油脂工業社製)を添加して分散液を調製した。さらに、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下して展開させ、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系共重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。この薄膜は、上側の空気と接した面は平滑であり、下側の水に接した面はシリカ粒子で形成された凹凸を有していた。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより本発明の板状粒子を得た。得られた板状粒子の平均粒径は40μm、平均厚みは2μmであった。また、この板状粒子の両面の接触角の角度差は16.6度であった。
〔製造実施例6〕
【0047】
製造実施例1で得られたアクリル系重合体(1)を酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解後、アクリル系重合体に対して20質量%となるように粒子径2.0−5.0μm(粒度分布70%以上)の親水性シリカ粉末(ゴットボールD11−796C 鈴木油脂工業社製)を添加して分散液を調製した。さらに、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下して展開させ、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。この薄膜は、上側の空気と接した面は平滑であり、下側の水に接した面はシリカ粒子で形成された凹凸を有していた。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより本発明の板状粒子を得た。得られた板状粒子の平均粒径は40μm、平均厚みは3.0μmであった。また、この板状粒子の両面の接触角の角度差は39.6度であった。
〔製造比較例1〕
【0048】
製造実施例5で得たアクリル系共重合体(5)を、酢酸エチルに10%溶液となるように均一に溶解後、重合体に対して20質量%となるように粒子径2.0−5.0μm(粒度分布70%以上)の親水性シリカ粉末(ゴットボールD11−796C 鈴木油脂工業社製)を添加して分散液を調製した。さらに、この分散液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下して展開させ、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。この薄膜は、上側の空気と接した面は平滑であり、下側の水に接した面はシリカ粒子で形成された凹凸を有していた。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより本発明の板状粒子を得た。得られた板状粒子の平均粒径は40μm、平均厚みは3μmであった。また、この板状粒子の両面の接触角の角度差は13.7度であった。
〔製造比較例2〕
【0049】
製造実施例5で得たアクリル系共重合体(5)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解し、その後、製造実施例1と同様にして薄膜を作り、脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより板状粒子を得た。得られた板状粒子の平均粒径は40μm、平均厚みは2.0μmであった。また、この板状粒子の両面の接触角の角度差は2.2度であった。
〔実施例1〜6及び比較例1〜4〕
【0050】
下記表1に示す組成の低粘度W/Oファンデーションを調製し、その初期粘度、経時粘度、乳化安定性について下記方法より測定、評価した。得られた結果を表1に併せて示す。
【0051】
【表1】

【0052】
(製造方法:実施例1〜5及び比較例1〜3)
A.成分1〜9をデスパーにて均一に混合する。
B.成分10〜12を均一に混合する。
C.AにBを徐々に添加し、分散乳化する。
D.Cを脱泡し、容器に充填する。
(製造方法:実施例6及び比較例4)
A.成分1〜9をデスパーにて均一に混合する。
B.成分10〜12を均一に混合する。
C.BにAを徐々に添加し、転相乳化する。
D.Cを脱泡し、容器に充填する。
【0053】
(乳化安定性の評価)
調製された各乳化物を50℃の恒温槽に保管し、1カ月後の乳化状態を光学顕微鏡及び、目視観察にて分離状態を確認した。分離状態の評価は次のとおりである。
◎:粒子径がわずかに大きくなるが、分離は見られない。
×:粒子径が著しく大きくなり、分離が見られる。
通常、ポリオキシアルキレン変性シリコーン活性剤を用いたW/O乳化は、分散乳化工程をとり、転相乳化では安定な乳化物が調製できない。しかしながら、本発明の異方性粒子を乳化時に添加した場合、転相乳化で安定な乳化物を調製できる。
〔実施例7〕
【0054】
(成分) (質量%)
1.シリコーン処理酸化チタン(注3) 10.0
2.シリコーン処理赤酸化鉄(注3) 0.5
3.シリコーン処理黄酸化鉄(注3) 2.0
4.シリコーン処理黒酸化鉄(注3) 0.2
5.タルク 1.0
6.レシチン 0.2
7.ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注1) 1.0
8.ジメチルポリシロキサン 2.0
9.トリ2−エチルへキサン酸グリセリル 2.0
10.デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
11.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0
12.リンゴ酸ジイソステアリル 1.0
13.ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注1) 1.0
14.精製水 残量
15.実施例1の異方性板状粒子 1.0
16.アルコール 7.0
17.塩化ナトリウム 0.7
18.香料 0.1
(注3)メチルハイドロジェンポリシロキサン3%処理
【0055】
(製造方法)
A.成分1〜9を3本ローラーにて3回処理する。
B.成分10〜13を均一に混合する。
C.成分14〜17を均一に混合する。
D.BにCを徐々に添加し、分散乳化する。
E.DにA、成分18を添加し、均一に混合する。
F.Eを脱泡し、充填する。
得られたW/O型リキッドファンデーションは、肌に塗布する際のスライド性、柔らかな感触、肌への密着性に優れ、経時における化粧膜の色くすみのなさ、透明感の持続性等の化粧効果が高く、さらに乳化安定性が良好であった。
〔実施例8〕
【0056】
(成分) (質量%)
1.シリコーン処理酸化チタン(注3) 10.0
2.シリコーン処理赤酸化鉄(注3) 0.5
3.シリコーン処理黄酸化鉄(注3) 2.0
4.シリコーン処理黒酸化鉄(注3) 0.2
5.タルク 1.0
6.レシチン 0.2
7.ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注1) 1.0
8.ジメチルポリシロキサン 2.0
9.トリ2−エチルへキサン酸グリセリル 2.0
10.デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
11.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0
12.リンゴ酸ジイソステアリル 1.0
13.PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注4) 1.0
14.精製水 残量
15.実施例1の異方性板状粒子 1.0
16.アルコール 7.0
17.塩化ナトリウム 0.7
18.香料 0.1
(注4)KF−6028(信越化学工業社製)
【0057】
(製造方法)
A.成分1〜9を3本ローラーにて3回処理する。
B.成分10〜13を均一に混合する。
C.成分14〜17を均一に混合する。
D.BにCを徐々に添加し、分散乳化する。
E.DにA、成分18を添加し、均一に混合する。
F.Eを脱泡し、充填する。
得られたW/O型リキッドファンデーションは、肌に塗布する際のスライド性、柔らかな感触、肌への密着性に優れ、経時における化粧膜の色ぐすみのなさ、透明感の持続性等の化粧効果が高く、さらに乳化安定性が優れていた。
〔実施例9〕
【0058】
(成分) (質量%)
1.実施例1の異方性板状粒子 5.0
2.ポリオキシエチレンメチルシロキサン・ポリオキプロピレンオレイル
メチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(注2) 2.0
3.PEG−3ジメチコン(注5) 1.0
4.ジメチルポリシロキサン 20.0
5.精製水 残量
6.1,3−ブチレングリコール 15.0
7.シリコーン処理赤酸化鉄(注3) 1.0
8.シリコーン処理黄酸化鉄(注3) 1.5
9.シリコーン処理黒酸化鉄(注3) 0.5
10.シリコーン処理酸化チタン(注3) 10.0
11.水添レシチン 0.2
12.2−エチルへキサン酸グリセリル 20.0
13.香料 0.1
(注5)KF−6015(信越化学工業社製)
【0059】
(製造方法)
A:1〜6をデスパーにて均一に分散した。
B:7〜12をローラーにて均一分散した。
C:BにAを徐々に加え乳化した。
D:Cに13を加え、脱泡後、容器に充填した。
得られたW/O型リキッドファンデーションは、肌に塗布する際のスライド性、柔らかな感触、肌への密着性に優れ、経時における化粧膜の色くすみのなさ、透明感の持続性等の化粧効果が高く、さらに乳化安定性が良好であった。
〔実施例10〕
【0060】
(成分) (質量%)
1.実施例1の異方性板状粒子 5.0
2.ポリオキシエチレンメチルシロキサン・ポリオキプロピレンオレイル
メチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(注2) 2.0
3.シリコーン分岐型ラウリル・トリグリセリン
共変性シリコーン(注6) 1.0
4.ジメチルポリシロキサン 20.0
5.精製水 残量
6.1,3−ブチレングリコール 15.0
7.シリコーン処理赤酸化鉄(注3) 1.0
8.シリコーン処理黄酸化鉄(注3) 1.5
9.シリコーン処理黒酸化鉄(注3) 0.5
10.シリコーン処理酸化チタン(注3) 10.0
11.水添レシチン 0.2
12.2−エチルへキサン酸グリセリル 20.0
13.香料 0.1
(注6)KF−6105(信越化学工業社製)
【0061】
(製造方法)
A:1〜6をデスパーにて均一に分散した。
B:7〜12をローラーにて均一分散した。
C:BにAを徐々に加え乳化した。
D:Cに13を加え、脱泡後、容器に充填した。
得られたW/O型リキッドファンデーションは、肌に塗布する際のスライド性、柔らかな感触、肌への密着性に優れ、経時における化粧膜の色ぐすみのなさ、透明感の持続性等の化粧効果が高く、さらに乳化安定性が優れていた。
〔実施例11〕
【0062】
(成分) (質量%)
1.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 0.5
2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
3.1,3−ブチレングリコール 10.0
4.シリコーン処理酸化チタン(注3) 10.0
5.シリコーン処理ベンガラ(注3) 0.4
6.シリコーン処理黄酸化鉄(注3) 2.0
7.シリコーン処理黒酸化鉄(注3) 0.1
8.シリコーン処理タルク(注3) 5.0
9.カルボキシビニルポリマー 0.3
10.トリエタノールアミン 2.0
11.精製水 残量
12.エタノール 2.0
13.ステアリン酸 1.0
14.ベヘニルアルコール 0.5
15.流動パラフィン 1.0
16.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
17.パラメトキシケイ皮酸2−エチルへキシル 2.0
18.ワセリン 0.5
20.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
21.実施例1の異方性板状粒子 1.0
22.香料 0.1
【0063】
(製造方法)
A:成分1〜8をローラーにて均一に分散する。
B:成分9〜12を均一に混合する。
C:BにAを添加し、均一に混合する。
D:成分13〜20を80℃にて混合溶解する。
E:CにDを80℃にて添加し、乳化する。
F:Eを冷却し、成分21、22を添加混合し、O/W型ファンデーションを得た。
得られたO/W型リキッドファンデーションは、肌に塗布する際のスライド性、柔らかな感触、肌への密着性に優れ、経時における化粧膜の色ぐすみのなさ、透明感の持続性等の化粧効果が高く、さらに乳化安定性が良好であった。
【符号の説明】
【0064】
1 異方性板状粒子、2 アクリル系重合体、3 球状粒子、A 親水性面、B 疎水性面、a アクリル系重合体で形成された平滑面、b 球状粒子で形成された凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤を用いて乳化した乳化型化粧料において、一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上ある板状アクリル系重合体板状粒子からなる親疎水異方性板状粒子を配合したことを特徴とする乳化型化粧料。
【請求項2】
乳化型化粧料が、シリコーン油を含む油剤を乳化剤で乳化させてなる乳化型化粧料である請求項1記載の乳化型化粧料。
【請求項3】
乳化剤が、シリコーン系界面活性剤である請求項1又は2記載の乳化型化粧料。
【請求項4】
親疎水異方性板状粒子が、親水性基と疎水性基とを有するアクリル系共重合体の板状粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の乳化型化粧料。
【請求項5】
親疎水異方性板状粒子が、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、下記一般式(1):
【化1】

(式中、R1は水素またはメチル基を示し、Xは、炭素数2〜5の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、nは1〜200の数を示す)
で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとのアクリル系共重合体の板状粒子である請求項4記載の乳化型化粧料。
【請求項6】
親疎水異方性板状粒子が、親水性基を有するビニル単量体を共重合成分とするアクリル系共重合体と、疎水性基を有するビニル単量体を共重合成分とするアクリル系共重合体との混合物の板状粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の乳化型化粧料。
【請求項7】
親疎水異方性板状粒子が、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルとビニルピロリドン又はポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体と、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと下記一般式(1):
【化2】

(式中、R1は水素またはメチル基を示し、Xは、炭素数2〜5の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、nは1〜200の数を示す)
で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとの共重合体の混合物の板状粒子である請求項6記載の乳化型化粧料。
【請求項8】
親疎水異方性板状粒子が、その一方の面がアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した球状粒子で形成された凹凸面である板状粒子からなる請求項1〜3のいずれかに記載の乳化型化粧料。
【請求項9】
親疎水異方性板状粒子が、その一方の面がメタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルの重合体で形成された平滑面であり、他方の面が前記の重合体から突出したシリカ球状粒子で形成された凹凸面である板状粒子からなる請求項8記載の乳化型化粧料。
【請求項10】
親疎水異方性板状粒子が、その一方の面がメタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと下記一般式(1):
【化3】

(式中、R1は水素またはメチル基を示し、Xは、炭素数2〜5の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜5の炭化水素基を示し、nは1〜200の数を示す)
で示されるジメチルポリシロキサンマクロモノマーとの共重合体であり、他方の面が前記の重合体から突出したシリカ球状粒子で形成された凹凸面である板状粒子からなる請求項8記載の乳化型化粧料。
【請求項11】
油中水乳化型である請求項1〜10のいずれかに記載の乳化型化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−285422(P2010−285422A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109070(P2010−109070)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】