説明

乳化型毛髪化粧料組成物、縮毛矯正用第2剤、縮毛矯正用剤および毛髪の処理方法

【課題】 低温での保存安定性に優れた乳化型毛髪化粧料組成物、該乳化型毛髪化粧料組成物により構成される縮毛矯正用第2剤、該縮毛矯正用第2剤により構成される縮毛矯正用剤、および前記乳化型毛髪化粧料組成物を用いた毛髪の処理方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩、(C)ポリエチレングリコール(D)過酸化水素、および(E)水が配合され、pHが2〜5であることを特徴とする乳化型毛髪化粧料組成物である。本発明の毛髪の処理方法は、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物を塗布した毛髪を洗い流し、その後前記毛髪にヘアコンディショナーを塗布する工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温での保存安定性に優れた乳化型毛髪化粧料組成物、該組成物により構成される縮毛矯正用第2剤、該縮毛矯正用第2剤により構成される縮毛矯正用剤、および前記乳化型毛髪化粧料組成物を用いた毛髪の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸化剤と共に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、および前記エステル以外のリン酸エステルが配合された縮毛矯正用第2剤で構成される縮毛矯正用剤が開示されている。
【0003】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、および前記エステル以外のリン酸エステルは、酸化剤を含めた縮毛矯正用第2剤の毛髪への浸透性を高めることができるため、特許文献1に開示の縮毛矯正用第2剤によれば、酸化剤の有する作用をより有効に引き出すことができ、縮毛を良好に矯正することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−298822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、縮毛矯正用第2剤や、パーマネントウェーブ用の第2剤などは、乳化物の形態を取ることが多く、そのため、各種界面活性剤が配合される。特許文献1に開示の縮毛矯正用第2剤では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、および前記エステル以外のリン酸エステルが、乳化剤としても作用するため、乳化物の形態を取ることができる。
【0006】
縮毛矯正用第2剤やパーマネントウェーブ用第2剤のように酸化剤として過酸化水素を配合する毛髪化粧料においては、過酸化水素を安定に保持するために、pHを低く調整することが一般的である。ところが、乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、および前記エステル以外のリン酸エステルを使用することで乳化物の形態を取りつつ、低pHとした毛髪化粧料では、例えば、凍結する程度の低温下で保存し、その後解凍すると、乳化状態が損なわれて、内部の成分が凝集・析出することがある。
【0007】
前記のような毛髪化粧料は、メーカーから出荷された後、複数の業者を通じて流通する可能性があり、その間に、毛髪化粧料が凍結する程度の低温下で保存されることもある。そのため、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、および前記エステル以外のリン酸エステルを乳化剤としても使用し、かつ過酸化水素を配合するなどして、そのpHを低く設定する必要のある毛髪化粧料においては、低温での保存安定性の面で改善の余地がある。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温での保存安定性に優れた乳化型毛髪化粧料組成物、該乳化型毛髪化粧料組成物により構成される縮毛矯正用第2剤、該縮毛矯正用第2剤により構成される縮毛矯正用剤、および前記乳化型毛髪化粧料組成物を用いた毛髪の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成し得た本発明の乳化型毛髪化粧料組成物は、少なくとも、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩、(C)ポリエチレングリコール(D)過酸化水素、および(E)水が配合されたものであり、pHが2〜5であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の縮毛矯正用第2剤は、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物により構成されることを特徴とするものである。
【0011】
更に、本発明の縮毛矯正用剤は、少なくとも還元剤が配合された縮毛矯正用第1剤と、本発明の縮毛矯正用第2剤とで構成されることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の毛髪の処理方法は、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物を塗布した毛髪を洗い流し、その後前記毛髪にヘアコンディショナーを塗布する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温での保存安定性に優れた乳化型毛髪化粧料組成物、該乳化型毛髪化粧料組成物により構成される縮毛矯正用第2剤、該縮毛矯正用第2剤により構成される縮毛矯正用剤、および前記乳化型毛髪化粧料組成物を用いた毛髪の処理方法を提供することができる。すなわち、本発明の縮毛矯正用第2剤は、低温での保存安定性が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の乳化型毛髪化粧料組成物における(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、および(B)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステル[以下、「(A)成分以外のリン酸エステル」という場合がある]は、酸化剤である過酸化水素を含めた乳化型毛髪化粧料組成物の毛髪への浸透性を高めて、酸化剤の作用をより有効に引き出す作用を有する成分である。
【0015】
(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩において、エチレンオキシドの付加モル数は特に限定されず、乳化型毛髪化粧料組成物の乳化状態の安定性を考慮して選択すればよい。(A)成分の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(4)デシルエーテルリン酸(前記の括弧内の数値は、オキシエチレンユニットの付加モル数を意味している)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウムなど)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ジエタノールアミン(ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ジエタノールアミンなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸トリエタノールアミン(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸トリエタノールアミンなど)などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの中でも、乳化力がより強く、また、塗布した毛髪への乳化型毛髪化粧料組成物の浸透性がより良好となり、更に処理後の毛髪の感触もより良好となることから、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸がより好ましい。
【0016】
(B)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩としては、例えば、リン酸ジメチル、リン酸セチル、リン酸ジセチル、リン酸トリオレイル、リン酸トリステアリル、またはこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの中でも、塗布した毛髪への乳化型毛髪化粧料組成物の浸透性がより良好となり、また、処理後の毛髪の感触もより良好となることから、リン酸ジセチルがより好ましい
【0017】
(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩と、(B)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩との、乳化型毛髪化粧料組成物中の配合量は、例えば、その乳化状態に応じて適宜調整すればよいが、それらの使用による作用をより有効に発揮させる観点から、(A)成分と(B)成分との合計で、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。なお、乳化型毛髪化粧料組成物中の(A)成分および(B)成分の量が多すぎると、乳化型毛髪化粧料組成物で処理した毛髪の感触が低下する傾向にあることから、それらの配合量は、(A)成分と(B)成分との合計で、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
また、(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩の乳化型毛髪化粧料組成物中の配合量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であって、好ましくは15質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。更に、(B)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩の乳化型毛髪化粧料組成物中の配合量は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であって、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0019】
(C)成分であるポリエチレングリコールは、乳化型毛髪化粧料組成物の乳化状態を保ち、その低温での保存安定性を高める作用を有している。
【0020】
ポリエチレングリコールとしては特に制限はなく、各種の重合度のものが使用可能であり、具体的には、例えば表示名称で、PEG−4、PEG−6、PEG−8、PEG−12、PEG−20、PEG−32、PEG−40、PEG−75、PEG−150、PEG−400、PEG−2M、PEG−5M、PEG−7M、PEG−9M、PEG−14M、PEG−23Mなどのものが挙げられる。
【0021】
ポリエチレングリコールは、25℃において、低重合度のものは液状であり、重合度が高くなると固体またはペースト状になるが、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物においては、処理後の毛髪の感触がより良好になることから、25℃において固体またはペースト状のものが好ましい。なお、ポリエチレングリコールは、重合度によって平均分子量が異なるため、例えば、数平均分子量が1000以上の場合には、25℃において固体またはペースト状になることから、数平均分子量が1000以上のものが好ましい。また、ポリエチレングリコールの数平均分子量は、20000以下であることが好ましい。なお、ここでいうポリエチレングリコールの数平均分子量は、例えば、ポリエチレングリコールの水酸基価から求めることができる。
【0022】
乳化型毛髪化粧料組成物における(C)成分であるポリエチレングリコールの配合量は、その作用をより有効に発揮させる観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料組成物中のポリエチレングリコールの量が多すぎると、処理後の毛髪の感触が低下する虞があることから、その配合量は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
なお、乳化型毛髪化粧料組成物においては、(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、(B)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩、および(C)成分であるポリエチレングリコールの合計量を100質量%としたとき、(C)成分であるポリエチレングリコールの配合量が、10〜40質量%であることが好ましく[すなわち、(A)成分と(B)成分との合計量が、60〜90質量%であることが好ましく]、この場合には、本発明の効果がより顕著に奏される。
【0024】
(D)成分の高級アルコールとしては、炭素数が12〜22のアルコール、具体的には、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノールなどが挙げられ、これらを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
これらの高級アルコールは、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物を乳化物とするための油性成分として配合されるが、乳化型毛髪化粧料組成物の粘度調整剤としても機能する。よって、乳化型毛髪化粧料組成物における(D)成分である高級アルコールの配合量は、例えば、乳化型毛髪化粧料組成物に求められる粘度に応じて調節すればよいが、具体的には、好ましくは0.1質量以上、より好ましくは0.5質量%以上であって、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0026】
(E)成分の過酸化水素は、酸化剤として作用するものである。なお、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物は、乳化物としての形態を取り、かつ過酸化水素が配合される毛髪化粧料、例えば、縮毛矯正用第2剤、パーマネントウェーブ用第2剤、染毛用第2剤、毛髪脱色剤などに適用できる。よって、乳化型毛髪化粧料組成物における過酸化水素の配合量は、乳化型毛髪化粧料組成物の用途に応じて適宜調節すればよい。一般には、過酸化水素の配合量を、縮毛矯正用第2剤やパーマネントウェーブ用第2剤の場合には1〜2.5質量%、染毛用第2剤の場合には2〜6質量%、毛髪脱色剤の場合には2〜6質量%とする。
【0027】
なお、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物は、前記の通り(E)成分として過酸化水素を配合するものであることから、過酸化水素が水素と酸素に分解することを防止するために、pHを酸性域に設定する。具体的には、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物は、そのpHが、2以上、好ましくは2.5以上であって、5以下、好ましくは4.5以下である。
【0028】
乳化型毛髪化粧料組成物のpHを前記のように調整する場合、必要に応じてpH調整剤を使用することができる。pH調整剤としては、化粧料に一般に利用されている各種の無機酸や有機酸を用いることができる。具体的には、例えば、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸;クエン酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、レブリン酸、シュウ酸、マレイン酸などの有機酸;が挙げられる。また、過酸化水素の安定剤としての機能を有するヒドロキシエタンジホスホン酸(後述する)もpH調整剤として使用できる。
【0029】
更に、前記の酸とその塩とを組み合わせて使用し、緩衝能を持たせることで、より安定したpH域の組成物になるため、乳化型毛髪化粧料組成物中の過酸化水素の安定性を更に向上させることができる。
【0030】
また、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物では、(E)成分である過酸化水素の安定性を高めるために、ヒドロキシエタンジホスホン酸およびその塩、尿素、フェナセチン、スズ酸ナトリウム、サリチル酸およびその塩などの安定剤を配合することも好ましい。乳化型毛髪化粧料組成物中の前記安定剤の配合量は、過酸化水素濃度や各種配合成分に応じて適宜調節すればよいが、例えば、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であって、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0031】
本発明の乳化型毛髪化粧料組成物は乳化物であり、(E)成分である水を主たる分散媒とする。なお、分散媒には、水のみを使用してもよく、必要に応じて、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール(炭素数が6以下のアルコール)などの有機溶媒を、分散媒全量中5質量%以下程度の量で水と併用してもよい。また、乳化型毛髪化粧料組成物における分散媒の配合量は、例えば、60〜98質量%であることが好ましい。
【0032】
本発明の乳化型毛髪化粧料組成物は、クリーム状、ローション状、ゲル状などの形態とすることができる。
【0033】
本発明の乳化型毛髪化粧料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に配合されている各種成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、動物油や植物油などの油脂、ロウ、炭化水素、脂肪酸、ポリエチレングリコールを除く多価アルコール、エーテル、エステル、アニオン界面活性剤[(A)成分および(B)成分を除く]、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、水溶性高分子、植物海藻エキス、アミノ酸およびその誘導体、タンパク質およびその誘導体、ビタミンおよびその誘導体、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料などが挙げられ、このような成分の中から、乳化型毛髪化粧料組成物の用途に応じて必要とされる成分や好ましい成分を、適宜選択して配合することができる。
【0034】
前記の通り、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物は、乳化物であり、かつ過酸化水素を必須成分とする各種の毛髪化粧料、具体的には、縮毛矯正用第2剤、パーマネントウェーブ用第2剤、染毛用第2剤、毛髪脱色剤などに適用できる。
【0035】
本発明の乳化型毛髪化粧料組成物により構成される縮毛矯正用第2剤と、縮毛矯正用第1剤とで、縮毛矯正用剤を構成できる。この場合の縮毛矯正用第1剤には、従来公知の縮毛矯正用第1剤、すなわち、少なくとも還元剤が配合された縮毛矯正用第1剤が適用できる。
【0036】
縮毛矯正用第1剤の還元剤としては、毛髪中のタンパク質であるケラチンを還元する能力のあるものであれば特に制限はなく、例えば、チオグリコール酸やその誘導体およびそれらの塩(アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩など)、システインやその誘導体およびそれらの塩(塩酸塩など)、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩など、メルカプト基を有する種々の還元剤が挙げられる。これらの還元剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
縮毛矯正用第1剤における還元剤の配合量は、要求される還元力に応じて適宜調整すればよいが、チオグリコール酸換算値で、例えば、1〜14質量%であることが好ましい。なお、ここでいう縮毛矯正用第1剤における還元剤の配合量に係る「チオグリコール酸換算値」は、パーマネント・ウェーブ工業組合から発行されている「パーマネント・ウェーブ用剤製造(輸入)承認基準」の「[別添]パーマネント・ウェーブ用剤品質規格」の「1.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とするコールド二溶式パーマネント・ウェーブ溶剤」における「(1)第1剤」に記載の「(ウ)酸性煮沸後の還元性物質」に定められている手法によって求められる「酸性煮沸後の還元性物質の含有率(チオグリコール酸として)(%)」である。
【0038】
また、縮毛矯正用第1剤には通常アルカリ剤も使用される。このアルカリ剤としては、アルカリ能を有するものであれば特に制限はなく、例えば、アンモニア、アミン類、中性塩タイプのアルカリ剤、塩基性アミノ酸などが挙げられる。アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどが挙げられる。また、中性塩タイプのアルカリ剤としては、例えば、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素アンモニウムなどが挙げられる。塩基性アミノ酸としては、例えば、リジン、アルギニンが挙げられる。これらのアルカリ剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。
【0039】
縮毛矯正用第1剤におけるアルカリ剤の配合量は、処理対象である毛髪に求められる膨潤度に応じて適宜調整すればよいが、通常、0.01〜20質量%であることが好ましい。
【0040】
更に、縮毛矯正用第1剤には、反応調整剤としてジチオジグリコール酸類[ジチオジグリコール酸や、ジチオジグリコール酸の塩(ジアンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)]のが通常配合される。縮毛矯正用第1剤におけるジチオジグリコール酸類の配合量は、0.1〜4質量%であることが好ましい。
【0041】
また、縮毛矯正用第1剤には、前記の各種成分の他にも、必要に応じて、通常の毛髪化粧料に配合されている各種成分を配合することができる。このような成分としては、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物の必須成分(過酸化水素を除く)や配合可能な成分として先に例示した各種成分が挙げられる。
【0042】
縮毛矯正用第1剤も水を主たる分散媒とする。なお、分散媒には、水のみを使用してもよく、必要に応じて、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール(炭素数が6以下のアルコール)などの有機溶媒を、分散媒全量中5質量%以下程度の量で水と併用してもよい。また、縮毛矯正用第1剤における分散媒の配合量は、例えば、40〜98質量%であることが好ましい。
【0043】
また、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物をパーマネントウェーブ用第2剤とし、これをパーマネントウェーブ用第1剤と組み合わせてパーマネントウェーブ用剤を構成することもできる。この場合のパーマネントウェーブ用第1剤には、従来公知のパーマネントウェーブ用第1剤、すなわち、少なくとも還元剤が配合されたパーマネントウェーブ用第1剤が適用できる。
【0044】
更に、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物を染毛用第2剤とし、これを染毛用第1剤と組み合わせて酸化型染毛剤を構成することもできる。この場合の染毛用第1剤には、従来公知の酸化型染毛剤に係る染毛用第1剤、すなわち、染料または染料中間体(酸化染料中間体など)、およびアルカリ剤などが配合されてなる染毛用第1剤が適用できる。
【0045】
また、本発明の乳化型毛髪化粧料組成物は、使用直前にアルカリ剤などを配合する形式の毛髪脱色剤にも適用できる。この場合のアルカリ剤には、従来公知の毛髪脱色剤に使用されているアルカリ剤が適用できる。
【0046】
本発明の乳化型毛髪化粧料組成物を用いて毛髪を処理する場合、必要に応じて前処理(縮毛矯正用第1剤、パーマネントウェーブ用第1剤による処理など)を施した毛髪に、乳化型毛髪化粧料組成物をそのまま、または乳化型毛髪化粧料組成物に他の成分(酸化型染毛剤に係る染毛用第1剤や、毛髪脱色剤とする場合のアルカリ剤など)を配合して塗布し、適切な時間放置した後に、前記毛髪を水で洗い流す工程を有する処理方法が適用できる。水洗後の毛髪は適宜乾燥して仕上げればよい。
【0047】
また、前記の処理方法においては、乳化型毛髪化粧料組成物をそのまま、または乳化型毛髪化粧料組成物に他の成分を配合して塗布した毛髪を、水で洗い流した後に、前記毛髪にヘアコンディショナーを塗布する工程を有していることが好ましい。ヘアコンディショナーには、通常、カチオン性界面活性剤やカチオン性のポリマー、油性成分および水が少なくとも配合されており、このような成分と乳化型化粧料組成物中の必須成分とが相乗的に作用して、処理後の毛髪の感触をより良好にすることができる。なお、ヘアコンディショナーを塗布した毛髪は、必要に応じて水洗し、乾燥して仕上げればよい。
【0048】
なお、前記ヘアコンディショナーについては特に制限はなく、従来公知のヘアコンディショナーを使用することができる。ヘアコンディショナーに係るカチオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩およびその第4級アンモニウム塩、環式第4級アンモニウム塩が挙げられる。脂肪族アミン塩としては、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドなどのアミドアミン塩が挙げられる。脂肪族アミン塩の第4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化アルキル(28)トリメチルアンモニウム、塩化ジPOE(2)オレイルメチルアンモニウム、塩化ジPOEステアリルメチルアンモニウム、塩化POE(1)POP(25)ジメチルメチルアンモニウム、塩化POPメチルジエチルアンモニウムなどのモノアルキル4級アンモニウム塩;塩化ジアルキル(12〜15)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(12〜18)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(14〜18)ジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウムなどのジアルキル型4級アンモニウム塩;塩化トリPOE(5)ステアリルアンモニウムなどのトリアルキル型4級アンモニウム塩;塩化ベンザルコニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルジメチル(メチルベンジル)アンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどのベンザルコニウム型アンモニウム;などが挙げられる。なお、前記例示の各化合物における「アルキル」の後の括弧内の数値はアルキル基の炭素数を意味し、また、「POE」はポリオキシエチレンの略で、その後の括弧内の数値はポリオキシエチレンユニットの付加モル数を意味し、「POP」はポリオキシプロピレンの略で、その後の括弧内の数値はポリオキシプロピレンユニットの付加モル数を意味している。
【0049】
また、前記ヘアコンディショナーに係るカチオン性ポリマーとしては、例えば、4級化セルロース(塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなど)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガム、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含有する高分子(塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体など)、アクリル酸・アクリルアミド・メタクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、カチオン化澱粉、カチオン化ポリペプタイド、アミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0050】
更に、前記ヘアコンディショナーに係る油性成分としては、高級アルコール、エステル、動物油や植物油などの油脂、炭化水素、脂肪酸などが挙げられる。例えば、高級アルコールとしては、乳化型毛髪化粧料組成物に係る高級アルコールとして例示した各種化合物が挙げられる。
【0051】
また、ヘアコンディショナーは、カチオン性界面活性剤やカチオン性ポリマー、油性成分以外にも、化粧料に通常配合される各種成分が配合されていてもよい。なお、ヘアコンディショナーにおける分散媒である水の配合量は、例えば、30〜99質量%であることが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。なお、以下の実施例などにおいて、「%」は「質量%」を意味している。また、乳化型毛髪化粧料組成物の配合量としては、全体で100%となるように各成分の配合量を%で示し、後記の各表中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0053】
なお、実施例および比較例で使用した原材料は、以下の通りである。
(1)クローダジャパン社製「クロダホス CS 20Acid(商品名)」:ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸[(A)成分]を40%、リン酸ジセチル[(B)成分]を20%、セテアリルアルコール(セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物)を40%含有。
(2)中部キレスト社製「キレスビットD(商品名)」:ヒドロキシエタンジホスホン酸を37%含有。
(3)三洋化成社製「PEG−1000(商品名)」:ポリエチレングリコール(数平均分子量1000)。
(4)三洋化成社製「PEG−200(商品名)」:ポリエチレングリコール(数平均分子量200)。
【0054】
実施例1〜4および比較例1〜2
表1に示す処方で、実施例1〜4および比較例1〜2の乳化型毛髪化粧料組成物を調製した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1における精製水の欄の「計100とする」とは、乳化型毛髪化粧料組成物を構成する精製水以外の各成分の合計量に、精製水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。また、リン酸の欄の「適量」とは、乳化型毛髪化粧料組成物のpHが3となる量を意味している。
【0057】
<保存安定性評価>
実施例1〜4および比較例1〜2の乳化型毛髪化粧料組成物をスクリュー管に充填した。これらのスクリュー管を−10℃の恒温槽中に1週間保存した後、常温中に取り出して乳化型化粧料組成物を解凍する一連の操作を1サイクルとし、これを3サイクル繰り返した後に、解凍した乳化型毛髪化粧料組成物について、分離や内部の成分の凝集といった外観上の変化の有無を目視により確認した。評価に際しては、製品の品質管理を行う専門者5名が、以下の評価基準に従って点数付けを行い、全員の評価点を合計した。前記の評価結果を表2に示す。
保存安定性に優れている ・・・+2。
保存安定性の基準はクリアしている ・・・+1。
保存安定性において改善が必要である ・・・ 0。
【0058】
【表2】

【0059】
表2から明らかなように、実施例1〜4の乳化型毛髪化粧料組成物は、比較例1〜2の乳化型毛髪化粧料組成物よりも点数が高く、低温での保存安定性が良好である。
【0060】
<処理後の毛髪の感触評価>
実施例1〜4の乳化型毛髪化粧料組成物を縮毛矯正用第2剤として構成した縮毛矯正用剤によって処理した毛髪の感触を評価した。
【0061】
[評価用毛束の作製]
同一人物の健康毛から採取した毛束(長さ20.0cm、重さ0.5g)を8束準備し、これらの毛束を10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥させた。
【0062】
[縮毛矯正処理(1)]
前記の毛束4束を用い、それぞれに、縮毛矯正用第1剤[ミルボン社製「リシオラルーチェH(商品名)」の第1剤]5gを塗布し、ストレート形状を保つようにコーミングをし、20分間放置した。その後、前記の各毛束を水洗し、実施例1〜4の乳化型毛髪化粧料組成物(縮毛矯正用第2剤)5gを塗布し、5分間放置した。その後、前記の各毛束を水洗し、続いて、ヘアコンディショナー[ミルボン社製「アウフェトリートメントB(商品名)」]3gを各毛束に塗布し、水洗した後に乾燥させて仕上げた。
【0063】
[縮毛矯正処理(2)]
ヘアコンディショナーの塗布およびその後の水洗を省略した以外は、前記の縮毛矯正処理(1)と同じ処理を各毛束に施した。
【0064】
前記の縮毛矯正処理(1)および(2)による処理後の各毛束の感触について、専門のパネラー20名により官能評価を行った。評価に際しては、縮毛矯正処理を施していない毛束を基準として下記の評価基準に従って点数付けを行い、全員の点数を合計した。前記の評価結果を表3に示す。
感触が優れている ・・・+2。
感触がよい ・・・+1。
感触が変わらない ・・・ 0。
感触が低下している ・・・−1。
【0065】
【表3】

【0066】
表3から明らかなように、実施例1〜4の乳化型毛髪化粧料組成物を縮毛矯正用第2剤として構成した縮毛矯正用剤により処理した毛髪は、ヘアコンディショナーによる処理工程のない処理方法で処理した場合[縮毛矯正処理(2)]であっても、処理後の毛髪の感触をある程度良好にできるが、ヘアコンディショナーによる処理工程も有する処理方法で処理した場合[縮毛矯正処理(1)]には、処理後の毛髪の感触を更に高めることができる。これは、乳化型毛髪化粧料組成物(縮毛矯正用第2剤)中の(A)成分および(B)成分と、ヘアコンディショナー中のカチオン性の成分(カチオン性界面活性剤やカチオン性ポリマー)とが相乗的に作用しているためであると考えられる。
【0067】
なお、実施例1〜4の乳化型毛髪化粧料組成物を縮毛矯正用第2剤として構成した縮毛矯正用剤を用いることで、縮毛矯正処理(1)の場合、縮毛矯正処理(2)の場合のいずれにおいても、毛束を良好にストレート形状に矯正することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩、
(C)ポリエチレングリコール
(D)過酸化水素、および
(E)水
が配合され、pHが2〜5であることを特徴とする乳化型毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩、および(C)ポリエチレングリコールの合計量を100質量%としたとき、(C)ポリエチレングリコールの配合量が、10〜40質量%である請求項1に記載の乳化型毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
(C)ポリエチレングリコールが、25℃で固体またはペースト状である請求項1または2に記載の乳化型毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の乳化型毛髪化粧料組成物により構成されることを特徴とする縮毛矯正用第2剤。
【請求項5】
少なくとも還元剤が配合された縮毛矯正用第1剤と、請求項4に記載の縮毛矯正用第2剤とで構成されることを特徴とする縮毛矯正用剤。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の乳化型毛髪化粧料組成物を用いた毛髪の処理方法であって、
前記乳化型毛髪化粧料組成物を塗布した毛髪を洗い流し、その後前記毛髪にヘアコンディショナーを塗布する工程を有することを特徴とする毛髪の処理方法。

【公開番号】特開2009−126795(P2009−126795A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301110(P2007−301110)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】