説明

乳化組成物およびそれを配合する化粧料、並びに皮膚外用剤

【課題】肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、かつ保存安定性に優れた乳化組成物を提供すること。また該乳化組成物を配合する化粧料又は皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】
(a)リン脂質、(b)リゾリン脂質、(c)ビタミンE及び/又はその誘導体、(d)オレイン酸誘導体、(e)水を含有することを特徴とする乳化組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン脂質、リゾリン脂質、ビタミンE及び/又はその誘導体、オレイン酸誘導体、水を含有する乳化組成物に関し、さらに詳細には、肌のハリ感を向上させる効果が高く、また肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、さらに保存安定性に優れた乳化組成物およびこれを利用する化粧料や皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リン脂質やリゾリン脂質は、生態関連成分として医薬品や化粧品分野では広く利用されており、特に分散剤や乳化剤、保湿剤、抗酸化剤としての利用がなされている(例えば、非特許文献1参照)。乳化組成物は、その目的に応じてさまざまな油性成分を乳化し、保湿や柔軟等、さまざまな機能付与ができる。例えば、ビタミンEを抗酸化剤として用いる技術がある(例えば、特許文献1参照)またオレイン酸誘導体は肌のハリ感を向上させる技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
一方、乳化組成物に、水溶性高分子、高級アルコール、液状油、ペースト油、固形油、粉体等を配合することでハリ感を与える技術がある。
例えば、薬剤と基材による相乗効果でハリ感を与える技術としては、水溶性高分子としてポリビニルアルコールを用いて納豆エキスと組み合わせる技術(例えば、特許文献3参照)や、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとモクツウまたはレンゲソウの抽出エキスと組み合わせる技術(例えば、特許文献4参照)がある。
また、基材のみでハリ感を与える技術としては、アルキレンオキシド重合体と水溶性多価アルコールを組み合わせた技術(例えば、特許文献5参照)や、液状油として高重合シリコーン油(例えば、特許文献6参照)、ペースト油としてワセリンとオリーブ葉エキス、乳化剤を有する混練物を用いた技術、(例えば、特許文献7参照)、高級アルコールと特定のエステル油、グリセリン脂肪酸エステル、親水性ポリエチレングリコール脂肪酸エステルを組み合わせた技術(例えば、特許文献8参照)がある。
また、ビタミンE類を安定に乳化する目的で、特定の4級アンモニウム塩とアルキル変性カルボキシビニルポリマーを用いる方法(例えば、特許文献9参照)や、ショ糖脂肪酸エステルとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、特許文献10参照)が用いられてきた。
【0004】
【非特許文献1】「機能性脂質の開発と応用」、シーエムシー社、1992年3月2日発行、p292
【特許文献1】特開2003−160463号公報
【特許文献2】特許第3729789号
【特許文献3】特許第3641366号公報
【特許文献4】特開2001−64151号公報
【特許文献5】特開2004−300099号公報
【特許文献6】特開2005−8540号公報
【特許文献7】特開2005−272341号公報
【特許文献8】特開2006−298834号公報
【特許文献9】国際公開第97/02803号パンフレット
【特許文献10】国際公開第05/034913号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4、5、8にある技術を用いた乳化組成物は、塗布直後の肌のハリ感は得られるものの持続性がなく、また、特許文献3の技術を用いた乳化組成物はべたつき感がでて感触の点において満足できるものではなかった。また、特許文献6、7の技術を用いた乳化組成物は肌へのなじみが悪く浸透感が十分ではなかった。さらに、上記特許文献8の技術を用いた乳化組成物は、肌に対する安全性が十分ではなく、上記特許文献9の技術を用いた乳化組成物は、保存安定性が十分ではなかった。
【0006】
以上のことから、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、かつ保存安定性に優れた乳化組成物の開発が望まれていた。
【0007】
本発明では、リン脂質、リゾリン脂質、ビタミンE及び/又はその誘導体、オレイン酸誘導体、水を含有することにより、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、さらに保存安定性に優れた乳化組成物を開発提供し、これを化粧料や皮膚外用剤等の外用組成物とすることが求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる実情において、本発明者は鋭意研究した結果、リン脂質、リゾリン脂質、ビタミンE及び/又はその誘導体、オレイン酸誘導体、水を含有する乳化組成物が、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、さらに保存安定性に優れることを見出し、さらに該乳化組成物を配合した化粧料や皮膚外用剤においても同様の効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(e);
(a)リン脂質
(b)リゾリン脂質
(c)ビタミンE及び/又はその誘導体
(d)オレイン酸誘導体
(e)水
を含有することを特徴とする乳化組成物に関する。
【0010】
また、前記成分(a)と前記成分(b)の配合質量比(a)/(b)が0.2〜20であることを特徴とする乳化組成物に関する。
【0011】
また、前記成分(c)と前記成分(d)の配合質量比(c)/(d)が0.1〜50であることを特徴とする乳化組成物に関する。
【0012】
また、前記成分(a)+(b)と前記成分(c)+(d)の配合質量比(a)+(b)/(c)+(d)が0.1〜10であることを特徴とする乳化組成物に関する。
【0013】
また、前記成分(d)のオレイン酸誘導体が、オレイン酸エチル、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンあることを特徴とする乳化組成物に関する。
【0014】
さらに前記乳化組成物配合することを特徴とする化粧料や皮膚外用剤に関する
【発明の効果】
【0015】
本発明の乳化組成物および該乳化組成物を配合した化粧料や皮膚外用剤は、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、かつ保存安定性に優れた品質を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の成分(a)のリン脂質は、通常の化粧料や皮膚外用剤に使用されるものであり、例えば、大豆由来リン脂質、大豆由来水素添加リン脂質、卵黄由来リン脂質、卵黄由来水素添加リン脂質等、が挙げられ、これらのリン脂質は必要に応じて一種、又は二種以上用いることができる。具体的には、日光ケミカルズ株式会社より提供されるNIKKOLレシノールS−10E、日清オイリオグループ株式会社より提供されるベイシスLS−60HR、キューピー株式会社より提供される卵黄レシチンPL−100P等の市販品を用いることができる。
【0017】
本発明の成分(a)の含有量は、特に限定されないが、0.01〜5質量%(以下、単位に「%」と略す)が好ましく、0.05〜3%がより好ましい。この範囲であれば、よりべたつくことがなく、保存安定性に優れる乳化組成物を得ることができる。
【0018】
本発明の成分(b)のリゾリン脂質は、酵素改質リン脂質の1つで、リン脂質をホスフォリパーゼA2により2番目のエステル結合が加水分解されたものである。リゾリン脂質は、2本鎖の脂肪酸を有するリン脂質とは異なり、疎水性基が脂肪酸一本であるため、HLBが高く、酸性下や高温でのエマルションの安定性が良好である。本発明の成分(b)のリゾリン脂質は、通常の化粧料や皮膚外用剤に使用されるものであれば、特に限定されず、例えば、大豆由来リゾリン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来リゾリン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質、が挙げられ、これらの一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。具体的には、日光ケミカルズ株式会社より提供されるNIKKOLレシノールLL−20、日本精化株式会社より提供されるLP70H、キューピー株式会社より提供される卵黄リゾレシチンLPC−1等の市販品を用いることができる。
【0019】
本発明の成分(b)の含有量は、特に限定されないが、0.01〜5%が好ましく、0.05〜3%がより好ましい。この範囲であれば、よりべたつくことがなく、保存安定性に優れる乳化組成物を得ることができる。
【0020】
本発明の乳化組成物において成分(a)と成分(b)の含有質量比(a)/(b)は、0.2〜20の範囲にあると、保存安定性がより良好なものとなり、0.5〜5であると、さらに好ましいものとなる。この含有質量比であれば、白濁化粧水等のように低粘度の液状の乳化組成物の場合や、ビタミンC誘導体等の電解質を配合した乳化組成物とした場合においても、保存安定性に優れたものとすることができるため好ましい。
【0021】
本発明の成分(c)のビタミンE及び/又はその誘導体は、通常の化粧料等の皮膚外用剤に使用されるものであり、例えば、ビタミンE、酢酸トコフェロール、オレイン酸トコフェロール、リノール酸トコフェロールが挙げられ、これらは必要に応じて一種、又は二種以上用いることができる。これらの中でも、優れた肌のハリ感向上効果を得るには、ビタミンEが好ましい。本発明の成分(c)のビタミンEは、脂溶性ビタミンの一種であり、メチル基の位置により、DL−α−トコフェロール、DL−β−トコフェロール、DL−γ−トコフェロール、DL−δ−トコフェロール、D−α−トコフェロール、D−β−トコフェロール、D−γ−トコフェロール、D−δ−トコフェロール8つの型がある。通常、化粧品に用いられるビタミンEはこれらの混合物である。
【0022】
本発明の成分(c)の含有量は、特に限定されないが、0.01〜3%が好ましく、0.1〜2%がより好ましい。この範囲であれば、肌への浸透感が良く、ハリ感を向上させる効果に優れる乳化組成物を得ることができる
【0023】
本発明の成分(d)のオレイン酸誘導体は、通常の化粧料や皮膚外用剤に使用されるものであり、例えば、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル等のエステル油、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノオレイン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル、ジグセリンモノオレエート、ジグリセリンジオレエート、デカグリセリンペンタオレエート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられ、これらは必要に応じて、一種又は二種以上用いることができる。これらの中でも、優れた肌のハリ感向上効果を得るには、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタンが好ましい。さらに、オレイン酸エチル、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンが特に好ましいものとして例示することができる。
【0024】
本発明の成分(d)の含有量は、特に限定されないが、0.01〜3%が好ましく、0.1〜2%がより好ましい。この範囲であれば、肌への浸透感が良く、肌のハリ感を向上させる効果に優れる乳化組成物を得ることができる
【0025】
本発明において成分(c)と成分(d)を併用することで、より肌への浸透感が良くなり、肌のハリ感を向上させる効果が高くなる。成分(c)と成分(d)の含有質量比(c)/(d)は、0.1〜50の範囲にあると、肌への浸透感が良く、肌のハリ感を向上させる効果がより良好なものとなり、0.5〜10の範囲であると、さらに好ましいものとなる。
【0026】
さらに本発明においては、成分(a)と成分(b)の含有量の合計と成分(c)と成分(d)の含有量の合計を特定の比率にすることで、より肌への浸透感が高くなり、肌のハリ感を向上させる効果が高くなり、さらには保存安定性に優れたものとなる。この含有質量比〔(a)+(b)〕/〔(c)+(d)〕は、0.1〜10の範囲にあると、肌への浸透感が良く、ハリ感を向上させる効果、保存安定性がより良好なものとなり、さらに2〜5の範囲であると、より好ましいものとなる。
【0027】
本発明の成分(e)の水は、成分(a)〜(d)の分散媒体として用いられるものであり、化粧料や皮膚外用剤に用いられるものであれば特に限定されず、例えば精製水、温泉水、深層水、又は植物等の水蒸気蒸留水等が挙げられる。イオン交換水や蒸留水等の精製水であると、金属イオン等の不純物が少ないため特に好ましい。
【0028】
本発明の成分(e)の含有量は、成分(a)〜(d)の含有量により適宜決められるが、概ね50〜99%である。
【0029】
本発明の乳化組成物の製造方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、ディスパミキサーで攪拌しながら80℃に加熱した成分(e)に、あらかじめ80℃にて成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)を溶解しておいたものを徐々に添加することで乳化し、これを徐々に室温まで冷却することで乳化組成物を得ることができる。
【0030】
また、本発明の乳化組成物料の製造方法としては、例えばマイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)で高圧処理することも可能である。高圧処理することで、低粘度の乳化組成物とすることででき、さらにみずみずしい使用感を得ることもできる。なお、ここでいう低粘度とは、25℃における粘度が10〜1000mPa・sを指すものであるが、本発明においては特にこの粘度範囲に限定されるものではない。粘度値の測定にはブルックフィールド型粘度計を用いることができ、一例として、「単一円筒型回転粘度計−ビスメトロン」(芝浦システム社製)等を用いて測定できる。
【0031】
本発明の乳化組成物およびそれを配合する化粧料又は皮膚外用剤には、本発明の効果を妨げない範囲で通常の化粧料や皮膚外用剤に配合される任意成分、すなわち、本発明の成分(c)、成分(d)以外の油剤、アルコール類、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤等を配合することができる。
【0032】
本発明の乳化組成物は、乳化組成物をそのまま本発明の化粧料や皮膚外用剤とすることも可能であり、化粧料や皮膚外用剤の製造工程中で乳化組成物を調製してもよい。また本乳化組成物を0.1〜90%の範囲で用いて、これに他の任意成分を配合して化粧料や皮膚外用剤とすることも可能である。
【0033】
本発明の化粧料の用途は、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディクリーム、日焼け止め化粧料等のスキンケア化粧料や、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、化粧用下地化粧料、白粉、コンシーラー、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料を例示することができる。またその使用法は、手や指で使用する方法、スキンケア化粧料の場合では不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【0034】
本発明の皮膚外用剤の用途は、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等法等が挙げられる。
【実施例1】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0036】
本発明品1〜17及び比較品1〜7:美容液
実施例1の美容液は、本発明品の乳化組成物をそのまま化粧料として用いた例である。
表1〜表3に示す組成および下記製法にて美容液を調製した。美容液の使用感の評価としては、専門パネルにより(1)肌への浸透感、(2)べたつき感のなさ、(3)肌のハリ感について官能評価を行った。美容液の保存安定性としては、50℃の恒温槽にて、1ヶ月放置し、外観の変化(分離、クリーミング)を目視で評価を行った。結果を併せて表1〜表3に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
(製造方法)
A:成分(1)〜(3)、(10)を80℃に加熱する。
B:成分(4)〜(9)を80℃で加熱溶解する。
C:成分(11)、(12)を80℃で加熱溶解する。
D:AにBを添加し、ディスパーミキサーにて混合攪拌する。
E:DにCを添加し、ディスパーミキサーにて混合攪拌する。
F:Eを室温まで冷却後、成分(13)を添加し、美容液を得た。
【0041】
(評価方法:使用感)
20〜40代女性パネル20名に、本発明品の美容液を使用してもらい、(1)肌への浸透感、(2)べたつき感のなさ、(3)肌のハリ感について、以下の(ロ)5段階評価基準にて官能評価し、更に全パネルの評点の平均値を(ハ)4段階判定基準を用いて判定した。
【0042】
(ロ)5段階評価基準
(評 価) :(評点)
非常に感じる : 5点
やや感じる : 4点
普通 : 3点
あまり感じない : 2点
感じない : 1点
(ハ)4段階判定基準
(全パネルの評点の平均値) :(判定)
平均点4.5以上 : ◎
平均点3.5以上4.5未満 : ○
平均点2.5以上3.5未満 : △
平均点2.5未満 : ×
【0043】
(評価方法:保存安定性)
各試料を50℃の恒温槽にて、1ヶ月放置し、外観の変化(分離、クリーミング)を目視で観察し、下記の(ハ)4段階絶対判定基準で判定した。
(ハ)4段階絶対判定基準
(変化の度合い) :(判定)
変化なし : ◎
わずかに変化あり : ○
やや変化あり : △
大きく変化あり : ×
【0044】
表1〜表3の結果から明らかなように、本発明品1〜17の美容液は、肌への浸透感がよく、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、かつ保存安定性に優れたものであった。一方、成分(a)、成分(b)の代わりにステアリン酸プロピレングリコールを含有した比較品1では、保存安定性が悪く、肌への浸透感が悪く、べたつき感を感じるものであった。成分(b)を含有しない比較品2、成分(a)を含有しない比較品3では、べたつき感のなさ、肌のハリ感、保存安定性が十分ではないものであった。成分(d)を含有しない比較品4では、肌への浸透感、べたつき感のなさ、肌のハリ感が十分ではないものであった。成分(c)を含有しない比較品5では、肌への浸透感が悪く、べたつき感のなさ、肌のハリ感が十分でないものであった。成分(c)のビタミンEの代わりにスクワランを含有した比較品6では、肌への浸透感が悪く、べたつき感のなさが十分ではなく、肌のハリ感を向上させる効果がないものであった。成分(c)のビタミンEの代わりにミツロウを含有した比較品7では、肌への浸透感が悪く、べたつき感のなさ、肌のハリ感、保存安定性が十分でないものであった。
【0045】
以下、実施例2〜実施例6は本発明品の乳化組成物を製造したものをそのまま化粧料として用いた例である。
【実施例2】
【0046】
化粧水
(成分) (%)
1.水素添加卵黄リン脂質 1.0
2.水素添加大豆リゾリン脂質 0.2
3.ビタミンE 0.3
4.オレイン酸メチル 0.1
5.ジカプリン酸プロピレングリコール 0.3
6.香料 0.02
7.ジプロピレングリコール 10.0
8.1,2−ペンタンジオール 0.5
9.防腐剤 適量
10.精製水 残量
11.エタノール 5.0
【0047】
(製造方法)
A:成分(1)〜(8)を80℃で溶解混合する。
B:成分(9)、(10)を80℃に加熱し、Aに添加し乳化する。
C:Bに成分(11)を添加し混合する。
D:Cを高圧乳化処理(*)をして、化粧水を得た。
(*)マイクロフルイダイザー使用
【0048】
実施例2の化粧水は、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、分離やクリーミングの無い保存安定性にも優れたものであった。
【実施例3】
【0049】
乳液(水中油型乳化化粧料)
(成分) (%)
1.水素添加大豆リン脂質 2.0
2.大豆リゾリン脂質 0.4
3.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 2.0
4.リノール酸トコフェロール 1.0
5.スクワラン 3.0
6.ホホバ油 2.0
7.1,3−ブチレングリコール 7.0
8.1,2−ペンタンジオール 1.0
9.グリセリン 5.0
10.アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体(*4) 0.2
11.防腐剤 適量
12.アミノメチルプロパノール 0.2
13.エデト酸二ナトリウム 0.02
14.精製水 残量
15.香料 適量
(*4)ペミュレンTR−2(NOVEON社製)
【0050】
(製造方法)
A:成分(1)〜(6)を70℃にて加熱溶解する。
B:成分(7)〜(14)を70℃にて加熱後、Aに添加し乳化する。
C:Bを室温まで冷却後する。
D:Cに成分(15)を添加し、乳液(水中油型乳化化粧料)を得た。
【0051】
実施例3の乳液(水中油型乳化化粧料)は、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、分離やクリーミングの無い保存安定性にも優れたものであった。
【実施例4】
【0052】
目元用クリーム
(成分) (%)
1.水素添大豆リン脂質 4.0
2.水素添加卵黄リゾリン脂質 0.5
3.酢酸トコフェロール 2.0
4.オレイン酸エチル 2.0
5.ワセリン 10.0
6.オレイン酸コレステロール 1.5
7.デカメチルシクロペンタシロキサン 0.5
8.ベヘニルアルコール 5.0
9.1,3−ブチレングリコール 10.0
10.1,2−ペンタンジオール 1.0
11.グリセリン 15.0
12.ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
13.防腐剤 適量
14.ステアロイルメチルタウリンナトリウム 0.5
15.精製水 残量
16.香料 0.1
【0053】
(製造方法)
A:成分(1)、(2)、(9)、(10)、(11)を80℃で加熱溶解する。
B:成分(3)〜(8)を80℃に加熱し、Aに添加し乳化する。
C:成分(12)〜(15)を80℃で加熱溶解する。
D:AにBを添加し、さらにCを添加し乳化する。
E:Dを冷却して、成分(16)を添加し目元用クリームを得た。
【0054】
実施例4の目元用クリームは、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、分離やクリーミングの無い保存安定性にも優れたものであった。
【実施例5】
【0055】
シート状マスク
(成分) (%)
1.水素添加大豆リン脂質 1.0
2.水素添加大豆リゾリン脂質 1.5
3.コレステロール 0.5
4.セラミド3 0.1
5.オレイルアルコール 0.2
6.ビタミンE 1.0
7.セスキオレイン酸ソルビタン 2.0
8.α−オレフィンオリゴマー 2.0
9.香料 0.05
10.グリセリン 5.0
11.ジプロピレングリコール 10.0
12.精製水 残量
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
14.エタノール 5.0
15.アスコルビン酸グルコシド 3.0
16.アルブチン 1.0
17.乳酸ナトリウム 2.0
18.ポリメタクロイルオキシエチルホスホコリン溶液(*5) 0.2
19.水酸化ナトリウム 0.13
(*5)LIPIDURE HM−600(日油社製)
【0056】
(製法)
A:成分(1)〜(11)を80℃で加熱溶解する。
B:成分(12)を80℃に加熱し、Aを添加し、乳化する。
C:Bを冷却後、成分(13)〜(19)を添加し、これを不織布に含浸させる。
D:Cをアルミラミネートの袋状容器に密封充填し、シート状化粧料を得た。
【0057】
実施例5のシート状化粧料は、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、分離やクリーミングの無い保存安定性にも優れたものであった。
【0058】
以下、実施例6〜11は実施例1として製造した乳化組成物を配合して化粧料とする例である。
【実施例6】
【0059】
水性アイシャドウ(分散型ゲル状)
(成分) (%)
1.エタノール 10.0
2.ジプロピレングリコール 5.0
3.グリセリン 5.0
4.カルボキシメチルセルロース 0.2
5.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(*4) 0.3
6.本発明品1の乳化組成物 50.0
7.精製水 残量
8.1,3−1,6−βグルカン 0.5
9.ポリアクリル酸ナトリウム1%水溶液(*6) 5.0
10.アクリル酸アルキル共重合体エマルション(*7) 0.2
11.トリエタノールアミン 0.3
12.1,2−ペンタンジオール 0.5
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20EO)ソルビタン 0.2
15.タルク 2.0
16.黄酸化鉄 0.02
17.シリコーン処理ベンガラ被覆雲母チタン(*8) 15.0
18.合成金雲母 5.0
19.ヒアルロン酸 0.01
20.香料 0.1
(*6)アロンビスS(日本純薬社製)
(*7)プライマルASE−60(ポリマーラテックス社製)
(*8)コロロナブライトゴールド(メルク社製)をジメチルポリシロキサン3%処理したもの
【0060】
(製造方法)
A:成分(1)〜(20)を混合する。
B:Aを容器に充填し、水性アイシャドウを得た。
実施例6の水性アイシャドウは、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、分離やクリーミングの無い保存安定性にも優れたものであった。
【実施例7】
【0061】
ファンデーション(水中油型クリーム状)
(成分) (%)
1.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(*9) 0.5
2.トリエタノールアミン 1.0
3.本発明品2の乳化組成物 10.0
4.精製水 残量
5.κ−カラギーナン 0.1
6.ポリアクリル酸ナトリウム(*10) 0.08
7.1,2−ペンタンジオール 2.0
8.フェノキシエタノール 0.5
9.ジグリセリン 3.0
10.ポリオキシエチレン(20)メチルグルコシド 5.0
11.水素添加大豆リン脂質 0.3
12.モノステアリン酸ポリエチレンングリコール(40) 0.8
13.酸化チタン 5.0
14.ベンガラ 0.05
15.黄酸化鉄 1.0
16.黒酸化鉄 0.05
17.ステアリン酸 0.9
18.モノステアリン酸グリセリン 0.3
19.ステアリルアルコール 0.4
20.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20EO)ソルビタン 0.2
21.トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20EO)ソルビタン 0.2
22.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 5.0
(*9)ペミュレンTR−1(NOVEON社製)
(*10)アロンビスAH(日本純薬社製)
【0062】
(製造方法)
A:成分(1)〜(10)を70℃で均一に混合する。
B:成分(11)〜(22)を70℃で混合する。
C:AにBを添加し乳化する。
D:Cを室温まで冷却する。
E:Dを容器に充填し、ファンデーションを得た。
【0063】
実施例7のファンデーションは、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、分離やクリーミングの無い保存安定性にも優れたものであった。
【実施例8】
【0064】
頬紅(水中油型乳液状)
(成分) (%)
1.ステアリン酸 0.9
2.ベヘニルアルコール 0.4
3.モノオレイン酸グリセリン 0.3
4.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 0.2
5.ジメチルポリシロキサン(*13) 3.0
6.本発明品5の乳化組成物 10.0
7.精製水 残量
8.1,2−ペンタンジオール 5.0
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
10.トリエタノールアミン 1.5
11.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(*9) 0.3
12.ペクチン 0.4
13.寒天 0.3
14.カルボキリビニルポリマー 0.1
15.ジェランガム 0.1
16.タルク 15.0
17.酸化チタン 5.0
18.ベンガラ 0.5
19.黄酸化鉄 1.0
20.黒酸化鉄 0.1
21.雲母チタン(*14) 1.0
22.香料 0.1
(*13)KF−96(6cs)(信越化学工業社製)
(*14)チミロンスーパーゴールド(メルク社製)
【0065】
(製造方法)
A:成分(1)〜(5)を70℃で混合する。
B:成分(6)〜(22)を70℃で混合する。
C:BにAを添加し乳化する。
D:Cを室温まで冷却する。
E;Dを容器に充填し、水性頬紅を得た。
【0066】
実施例8の頬紅は、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、分離やクリーミングの無い保存安定性にも優れたものであった。
【実施例9】
【0067】
日焼け止め料(水中油型クリーム状)
(成分) (%)
1.ステアリン酸 1.0
2.セトステアリルアルコール 0.5
3.モノイソステアリン酸グリセリン 0.5
4.テトラオレインポリオキシエチレンソルビトール 0.5
5.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 8.0
6.イソノナン酸イソトリデシル 5.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.微粒子酸化チタン 3.0
9.デカメチルシクロペンタシロキサン 6.0
10.トリイソステアリン酸ジグリセリル 1.0
11.本発明品6の乳化組成物 0.1
12.精製水 残量
13.1,2−ペンタンジオール 10.0
14.トリエタノールアミン 0.9
15.アルカリゲネス産生多糖体 0.05
16.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(*9) 2.0
17.キサンタンガム 0.03
18.香料 0.1
【0068】
(製法)
A:成分(1)〜(10)を80℃で混合する。
B:成分(11)〜(17)を80℃で混合する。
C:BにAを加えて乳化した後、成分(18)を加える。
D:Cを室温まで冷却する。
E:Dを容器に充填して日焼け止め料(水中油型クリーム状)を得た。
【0069】
実施例9の日焼け止め料は、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、分離やクリーミングの無い保存安定性にも優れたものであった。
【0070】
以下、実施例10は本発明品の乳化組成物を配合して皮膚外用剤とする例である。
【実施例10】
【0071】
軟膏:
(処方) (%)
(1)ステアリン酸 18.0
(2)セタノール 4.0
(3)イソステアリン酸 0.5
(4)dl−α−トコフェロール 0.1
(5)ジプロピレングリコール 5.0
(6)本発明品7の乳化組成物 5.0
(7)グリセリン 0.5
(8)リン酸L−アスコルビルマグネシウム 1.0
(9)トリエタノールアミン 2.0
(10)防腐剤 適量
(11)精製水 残量
【0072】
(製法)
A.成分(1)〜(6)を加熱混合し、75℃に保つ。
B.成分(7)〜(11)を加熱混合し、75℃に保つ。
C.BにAを加え混合し、均一に乳化した後、成分(6)を混合する。
D.Cを冷却後、軟膏を得た。
【0073】
実施例10の軟膏は、肌への浸透感が良く、べたつき感が少なく、肌のハリ感を向上させる効果が高く、分離やクリーミングの無い保存安定性にも優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(e);
(a)リン脂質
(b)リゾリン脂質
(c)ビタミンE及び/又はその誘導体
(d)オレイン酸誘導体
(e)水
を含有することを特徴とする乳化組成物。
【請求項2】
前記成分(a)と前記成分(b)の含有質量比(a)/(b)が0.2〜20であることを特徴とする請求項1または2記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記成分(c)と前記成分(d)の含有質量比(c)/(d)が0.1〜50であることを特徴とする請求項1または2記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記成分(a)+(b)と前記成分(c)+(d)の含有質量比〔(a)+(b)〕/〔(c)+(d)〕が0.1〜10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記成分(d)のオレイン酸誘導体が、オレイン酸エチル、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンの一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項記載の乳化組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項記載の乳化組成物を配合することを特徴とする化粧料又は皮膚外用剤。

【公開番号】特開2010−184908(P2010−184908A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31208(P2009−31208)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】