説明

乳化組成物の調製方法

【課題】皮膚の閉塞性を向上させ、皮膚からの水分蒸散を低減するために十分な量のワセリンを含有しながらも使用感に優れ、皮膚に十分な水分を与えることができ、かつ持続的で良好な保湿性を有し、さらに低刺激性と保存安定性とを兼ね備えた乳化組成物を提供すること、および、ダニ忌避作用を有する乳化組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する乳化組成物であって、該ワセリン(A)の含有量が前記乳化組成物100重量%に対して10〜30重量%であり、前記乳化組成物の内相の、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が800nm以下である乳化組成物の調製方法であって、(A)ワセリン10〜30重量%、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する混合物を乳化する工程を有することを特徴とする乳化組成物の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワセリン、グリセリン、レシチン、水及び水溶性高分子を含有する、保湿性、使用感、及び保存安定性に優れた乳化組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の乾燥に起因する症状の治療、予防又は改善において、従来、皮膚の閉塞性を向上させ、皮膚からの水分蒸散を低減するために、ワセリンが基剤として使用されてきた。しかしながら、ワセリンは水を含有できないため、皮膚への水分の供給ができず、さらに、ワセリンは半固形状であるので、乾燥症状を示す皮膚に広範囲に塗布しづらく、塗布後のべたつき感が顕著であるため、使用感の点でも問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、ワセリンを含有する基剤として、乳剤、クリーム等の乳化組成物も使用されている。このような乳化組成物の製造においては、界面活性剤の使用が必須であるが、汎用されている界面活性剤には皮膚刺激性を示すものが少なくない。さらに、十分な皮膚の閉塞性と皮膚からの水分蒸散の低下効果を得るには、ワセリンの配合量を増やす必要があるが、それに伴って乳化に必要な界面活性剤の量が増加する。
【0004】
乾燥症状を示す皮膚は、そのバリア機能が低下し、外からの刺激等に対して敏感な状態にある。このような皮膚が敏感な状態の消費者の使用に供するには、乳化組成物(基剤)の皮膚刺激性を低減する必要がある。そのためには、皮膚刺激性が低い界面活性剤を用いるか、或いは界面活性剤の使用量を低減することが有効であると考えられる。しかしながら、皮膚刺激性が低い界面活性剤は乳化力の弱いものが多いため安定な乳化系が得られないことが多く、また界面活性剤の使用量を低減した場合にも、同様に乳化安定性の低下といった問題が生じていた。
【0005】
以上のような問題を解決するために、種々検討が行われている。例えば、特許文献1には、高配合量のワセリン、グリセリン、皮膚刺激性の低いレシチンなどの界面活性剤、ポリカルボキシポリビニルなどのゲル化剤とを使用して得られる乳化組成物が開示されている。特許文献1の発明では、当該乳化組成物の乳化安定性を高めるために、カオリン、タルク、炭酸カルシウムなどの不活性鉱物粉末を使用している。しかしながら、これらの添加によっても乳化安定性は十分ではなく、さらに粉末を添加することによりザラツキ等が生じ使用感の面からも改善が望まれる。
【0006】
また、特許文献2及び3にも、高配合量のワセリン、グリセリン、皮膚刺激性の低いレシチンなどの界面活性剤とを使用して得られる乳化組成物が開示されている。特許文献2の乳化組成物に関しては、特許文献3にも記載されているように過酷な条件下での保存安定性に問題がある。特許文献3の乳化組成物に関しては、界面活性剤としてさらにベタイン類を配合することにより保存安定性を高めているが、特許文献4に記載されているように、ベタイン類を配合し、その配合量を増やすとべたつき感が生じるため、使用感の面からは望ましくない。
【0007】
ところで、皮膚の乾燥に起因する症状の治療、予防又は改善において、グリセリン等の多価アルコールは、優れた保湿性を示すので、保湿剤として汎用されている。しかしながら、特許文献5には、これら多価アルコールは、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の原因となるダニ類(例、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウダニ)などを誘引する作用を有することが開示されている。これらのダニ類は、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の原因となり、その症状を悪化させるのみならず、皮膚の乾燥を引き起こす一因であるこ
とも示唆されている。従って、これらのダニ類を忌避する性質を有する乳化組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平02−31834号公報
【特許文献2】特開2001−72581号公報
【特許文献3】特開2003−95956号公報
【特許文献4】特開平08−133947号公報
【特許文献5】特開平09−176006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、皮膚の閉塞性を向上させ、皮膚からの水分蒸散を低減するために十分な量のワセリンを含有しながらも使用感に優れ、皮膚に十分な水分を与えることができ、かつ持続的で良好な保湿性を有し、さらに低刺激性と保存安定性とを兼ね備えた乳化組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明はダニ忌避作用を有する乳化組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、皮膚刺激性の低い界面活性剤としての(B)レシチンと、(A)10〜30重量%のワセリン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子を含有する組成物であって、前記乳化組成物の内相の、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が800nm以下であることを特徴とする乳化組成物が、皮膚からの水分蒸散を低減するために十分な量のワセリンを含有しながらも使用感に優れ、皮膚に十分な水分を与えることができ、かつ持続的で良好な保湿性を有し、さらに低刺激性と保存安定性とを兼ね備えていることを見出し、さらに当該乳化組成物が、ダニ誘引作用を有するグリセリンを含有しながらも、ダニ忌避作用を有することも見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は以下の乳化組成物の調製方法を提供する。
【0012】
[1](A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子を含有する混合物を乳化する工程を有することを特徴とする、
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子を含有し、かつ内相の平均粒径が5000nm以下である乳化組成物の調製方法。
【0013】
[2](A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子の一部を乳化し、得られた乳化物に残りの成分を混合する工程を有することを特徴とする、
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子を含有し、かつ内相の平均粒径が5000nm以下である乳化組成物の調製方法。
【0014】
[3](A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、及び(C)グリセリン、並びに(D)水の一部を乳化し、得られた乳化物に、(D)水の残部及び(E)水溶性高分子を混合する工程を有することを特徴とする、
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、
及び(E)水溶性高分子を含有し、かつ内相の平均粒径が5000nm以下である乳化組成物の調製方法。
【0015】
[4](A)ワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する乳化組成物であって、該ワセリン(A)の含有量が前記乳化組成物100重量%に対して10〜30重量%であり、前記乳化組成物の内相の、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が800nm以下である乳化組成物の調製方法であって、
(A)ワセリン10〜30重量%、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する混合物を乳化する工程を有することを特徴とする、[1]に記載の乳化組成物の調製方法。
【0016】
[5](A)ワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する乳化組成物であって、該ワセリン(A)の含有量が前記乳化組成物100重量%に対して10〜30重量%であり、前記乳化組成物の内相の、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が800nm以下である乳化組成物の調製方法であって、
(A)ワセリン10〜30重量%、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子の一部を乳化し、得られた乳化物に残りの成分を混合する工程を有することを特徴とする、[2]に記載の乳化組成物の調製方法。
【0017】
[6](A)ワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する乳化組成物であって、該ワセリン(A)の含有量が前記乳化組成物100重量%に対して10〜30重量%であり、前記乳化組成物の内相の、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が800nm以下である乳化組成物の調製方法であって、
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、及び(C)グリセリン、並びに(D)水の一部を乳化し、得られた乳化物に、(D)水の残部及び(E)水溶性高分子を混合する工程を有することを特徴とする、[3]に記載の乳化組成物の調製方法。
【0018】
[7]前記乳化を、マイクロフルイダイザー、超音波乳化機または高圧乳化機により行うことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の乳化組成物の調製方法。
【0019】
さらに本発明は、以下の乳化組成物等も提供する。
【0020】
<1>(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子を含有し、かつ内相の平均粒径が5000nm以下である乳化組成物。
【0021】
<2>(A)ワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する乳化組成物であって、該ワセリン(A)の含有量が前記乳化組成物100重量%に対して10〜30重量%であり、前記乳化組成物の内相の、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が800nm以下であることを特徴とする上記<1>に記載の乳化組成物。
【0022】
<3>前記水溶性高分子(E)が、セルロース系高分子、ビニル系高分子、アクリル酸系高分子、植物系高分子、微生物系高分子、リン脂質極性基を有する高分子及びムコ多糖類からなる群より選択される少なくとも一種の高分子であることを特徴とする上記<1>または<2>に記載の乳化組成物。
【0023】
<4>前記グリセリン(C)の含有量が、前記乳化組成物100重量%に対して10〜20重量%であることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載の乳化組成物。
【0024】
<5>さらに、非ステロイド性抗炎症剤、ビタミン類、美白剤、抗シワ剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、ステロイド剤、育毛剤、痩身剤、局所麻酔剤、鎮痒剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、角質軟化剤、保湿剤、収斂剤、抗酸化剤、発毛抑制剤、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤からなる群より選択される少なくとも1種の有効成分を含有することを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれかに記載の乳化組成物。
【0025】
<6>さらに、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド剤、局所麻酔剤、鎮痒剤及び保湿剤からなる群より選択される少なくとも1種の有効成分を含有することを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれかに記載の乳化組成物。
【0026】
<7>皮膚の乾燥に起因する症状、及び/又は皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患の治療、予防又は改善に使用されることを特徴とする上記<1>〜<6>のいずれかに記載の乳化組成物。
【0027】
<8>上記<1>〜<7>のいずれかに記載の乳化組成物の有効量を皮膚に適用することを含む、皮膚の乾燥に起因する症状、及び/又は皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患の治療、予防又は改善方法。
【0028】
<9>皮膚の乾燥に起因する症状、及び/又は皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患の治療、予防又は改善用の医薬又は化粧料を製造するための上記<1>〜<7>のいずれかに記載の乳化組成物の使用。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、皮膚からの水分蒸散を低減するために十分な量のワセリンを含有しながらも使用感に優れ、皮膚に十分な水分を与えることができ、かつ持続的で良好な保湿性を有し、低刺激性と保存安定性とを兼ね備えており、さらにダニ誘引作用を有するグリセリンを含有しながらも、ダニ忌避作用を有する新規な乳化組成物が提供される。
【0030】
本発明の乳化組成物は、保湿性に優れるので、皮膚の乾燥に起因する症状、及び/又は皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患の治療、予防又は改善のための組成物等として有用である。さらに、本発明の乳化組成物は、ダニ忌避作用も有するので、ダニが原因となるアレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎等の症状の治療、予防又は改善のための組成物としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例2及び比較例5の乳化組成物をガラス板に塗布した際の顕微鏡写真である(上:実施例2、下:比較例5)。
【図2】試験例5の角層水分量の測定結果を示す図である。図2において横軸は経過時間(分)を、縦軸は電気伝導度(μS)を示す。また図2の5つの折れ線グラフのうち、ひし形のマーカーがついたものは実施例1を、正方形のマーカーがついたものは実施例2を、三角のマーカーがついたものは実施例3を、バツのマーカーがついたものは比較例1を、アスタリスクのマーカーがついたものは比較例3示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書中において使用される用語は、特に他に言及しない限り、本発明の属する技術分野で通常用いられる意味で用いられていることが理解されるべきである。
【0033】
本発明の乳化組成物は、(A)ワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する乳化組成物であって、該ワセリン(A)の含有量が前記乳化組成物100重量%に対して10〜30重量%であり、前記乳化組成物の内相の、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が800nm以下であることを特徴としている。以下、これら各構成要素について説明する。
【0034】
[(A)ワセリン]
本発明に用いるワセリン(A)は、炭化水素類の混合物を精製して得られる半固形状のものであり、医薬品、医薬部外品、化粧品で通常用いられているものであれば特に制限されず用いることができる。
【0035】
本発明においては、黄色ワセリン、白色ワセリンのいずれを用いてもよいが、低刺激性等の観点から、不純物含量が低い白色ワセリンが好ましい。
【0036】
本発明におけるワセリンの配合量は、乳化組成物全体(100重量%)に対して、10〜30重量%であり、好ましくは12〜27重量%、特に好ましくは15〜25重量%である。本発明におけるワセリンの配合量が10重量%未満では、後述の試験例に示すように閉塞性(水分蒸散量の低減性)が劣り、30重量%を超えると後述の試験例に示すように使用感に劣るばかりか、期待した閉塞性(水分蒸散量の低減性)も得られず好ましくない。
【0037】
さらに、本発明におけるワセリン(A)の配合量は、本発明の乳化組成物の乳化安定性及び使用感の観点から、水(D)100重量%に対して13〜75重量%であることが好ましく、16〜45重量%であることがより好ましい。
【0038】
[(B)レシチン]
本発明に用いるレシチン(B)は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールなどのリン脂質と、トリグリセリド、脂肪酸、植物油からの炭水化物などの成分との混合物である。その組成と物理的性質は、起源、精製度合い、化学処理等により大きく異なるが、医薬品、医薬部外品、化粧品で通常用いられているものであれば特に制限されず用いることができる。
【0039】
また本発明に用いるレシチン(B)は、動植物由来の天然レシチン(例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン等)であってもよいし、天然レシチンを化学処理して得られたレシチンや、天然レシチンをアセトン等の溶剤で精製することにより、ホスファチジルコリンの含有量を高めたレシチンであってもよい。なお、本発明に用いるレシチン(B)中のホスファチジルコリンの含有量は特に制限されない。
【0040】
天然レシチンを化学処理して得られたレシチンとしては、例えば、水素添加処理により得られた水素添加レシチン(例えば、完全水素添加レシチンや部分水素添加レシチン)、水酸化処理により得られた水酸化レシチン等が挙げられる。さらに、本発明に用いるレシチン(B)は、前記天然レシチンや化学処理レシチンのリゾ体であってもよい。ただし、リゾ体は酸化され易いため、リゾ体を使用すると本発明の乳化組成物の保存安定性が低下し、刺激性が生じる可能性があるので、レシチンはリゾ体でないものが好ましい。
【0041】
これらのレシチン(B)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
本発明に用いるレシチン(B)の具体例としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、精製大豆レシチン、精製卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン、卵黄リゾホスファチジルコリ
ン、大豆リゾリン脂質などが挙げられる。
【0043】
本発明におけるレシチン(B)の配合量は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、乳化組成物全体に対して、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、特に好ましくは1.2〜2重量%である。0.1重量%未満では乳化が困難となる傾向があり、5重量%を超えると臭いや着色が生じることがある。
【0044】
さらに、本発明におけるレシチン(B)の配合量は、本発明の乳化組成物の乳化安定性及び使用感の観点から、ワセリン(A)100重量%に対して5〜30重量%であることが好ましく、10〜20重量%であることがより好ましい。
【0045】
さらに、本発明におけるレシチン(B)の配合量は、乳化安定性及び使用感の観点から、水(D)100重量%に対して0.1〜13重量%であることが好ましく、0.7〜5重量%であることがより好ましい。
【0046】
[(C)グリセリン]
本発明に用いるグリセリン(C)は、医薬品、医薬部外品、化粧品で通常用いられているものであれば特に制限されず用いることができる。
【0047】
本発明におけるグリセリン(C)の配合量は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限されないが、乳化組成物全体に対して、通常1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。1重量%未満では保湿効果が不十分である場合があり、30重量%を超えるとべたつき感が高まる傾向にある。
【0048】
さらに、本発明におけるグリセリン(C)の配合量は、本発明の乳化組成物の保湿効果の観点から、ワセリン(A)100重量%に対して20〜200重量%であることが好ましく、30〜150重量%であることがより好ましい。
【0049】
さらに、本発明におけるグリセリン(C)の配合量は、本発明の乳化組成物の保湿効果の観点から、水(D)100重量%に対して1.3〜75重量%であることが好ましく、6.7〜42重量%であることがより好ましい。
【0050】
[(D)水]
本発明の乳化組成物は、水(D)を含有する。本発明における水(D)の配合量は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、乳化組成物全体に対して、通常40〜75重量%、好ましくは60〜75重量%、特に好ましくは60〜70重量%である。
【0051】
さらに、本発明における水(D)の配合量は、本発明の乳化組成物の乳化安定性及び使用感の観点から、ワセリン(A)100重量%に対して250〜550重量%であることが好ましく、400〜500重量%であることがより好ましい。
【0052】
[(E)水溶性高分子]
本発明に用いる水溶性高分子(E)は、医薬品、医薬部外品、化粧品で通常用いられているものであれば特に制限されず用いることができる。
【0053】
水溶性高分子(E)は本発明の乳化組成物の塗布性を高め、またダニの忌避性を高める。
【0054】
また、水溶性高分子(E)は塩の形態であってもよい。水溶性高分子の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカ
リ土類金属塩;等が挙げられる。
【0055】
本発明に用いる水溶性高分子(E)の具体例としては、
メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系高分子;
ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、N−アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム・ビニルピロリドン共重合体等のビニル系高分子;
ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、アクリル酸・メタクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、Pemulen(登録商標)等)等のアクリル酸系高分子;
アラビアガム、トラガントガム、ガラクタン、グアーガム、ペクチン、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の植物系高分子;
キサンタンガム、デキストラン、プルラン等の微生物系高分子;
コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム等のムコ多糖類;
MPCポリマー(例えば、LIPIDURE(登録商標)等)等のリン脂質極性基を有する高分子;
等が挙げられる。これらの水溶性高分子(E)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0056】
本発明に用いる水溶性高分子(E)としては、
ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、N−アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム・ビニルピロリドン共重合体;
ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、アクリル酸・メタクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、Pemulen(登録商標)等);
アラビアガム、トラガントガム、ガラクタン、グアーガム、ペクチン、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム;
キサンタンガム、デキストラン、プルラン;
コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム;
が好ましく、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、Pemulen(登録商標)等)、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0057】
本発明における水溶性高分子(E)の配合量は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、乳化組成物全体に対して、通常0.0001〜5重量%、好ましくは0.001〜3重量%、より好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%である。
【0058】
さらに、本発明における水溶性高分子(E)の配合量は、本発明の乳化組成物の乳化安定性及び使用感の観点から、ワセリン(A)100重量%に対して0.1〜10重量%であることが好ましく、1〜7重量%であることがより好ましく、2〜4重量%であることが特に好ましい。
【0059】
さらに、本発明における水溶性高分子(E)の配合量は、本発明の乳化組成物の乳化安
定性及び使用感の観点から、水(D)100重量%に対して0.00013〜12.5重量%であることが好ましく、0.0013〜5重量%であることがより好ましい。
【0060】
本発明の乳化組成物には、該組成物に所望の効果を持たせるため、さらに有効成分を配合することができる。本発明において有効成分とは、薬理活性成分や生理活性成分など皮膚に対して有用な効果を有する成分で、特に制限されないが、例えば、非ステロイド性抗炎症剤、ビタミン類、美白剤、抗シワ剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、ステロイド剤、育毛剤、痩身剤、局所麻酔剤、鎮痒剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、角質軟化剤、保湿剤、収斂剤、抗酸化剤、発毛抑制剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等が挙げられる。これらの成分は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
具体的には次の成分が例示できる。
【0062】
非ステロイド性抗炎症剤:カンゾウ抽出物、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等のグリチルリチン酸誘導体;グリチルレチン酸又はその誘導体;アラントイン又はその誘導体;インドメタシン;イブプロフェン;イブプロフェンピコノール;ブフェキサマク;フルフェナム酸ブチル;ベンダザック;ピロキシカム;ケトプロフェン;フェルビナク;サリチル酸メチル又はサリチル酸グリコール等のサリチル酸誘導体;メントール;カンフルなど。
【0063】
ビタミン類:レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、ビタミンA脂肪酸エステル、d−δ−トコフェリルレチノエート、α−トコフェリルレチノエート、β−トコフェリルレチノエート等のビタミンA類;
β−カロチン、α−カロチン、γ−カロチン、δ−カロチン、リコピン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、エキネノン等のプロビタミンA類;
α−トコフェロール、β−トコフェロール、δ−トコフェロール、酢酸トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム等のビタミンE類;
リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5'−リン酸エステ
ルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル等のビタミンB2類;
ニコチン酸メチル、ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどのニコチン酸類;
アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ジパルミチン酸L−アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム塩、アスコルビン酸リン酸ナトリウム塩、アスコルビン酸グルコシドなどのビタミンC類;
メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどのビタミンD類;
フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類;
γ−オリザノール、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類;
塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5'−リン酸ピリドキサー
ル、塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類;
シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン等のビタミン
B12類;
葉酸、プテロイルグルタミン酸等の葉酸類;
パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D−パンテテイン、D−パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類;
ビオチン、ビオシチン等のビオチン類;
カルニチン、フェルラ酸、α−リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子など。
【0064】
美白剤:プラセンタ;アルブチン;システイン;エラグ酸;コウジ酸;フィチン酸;ルシノール;ハイドロキノン;イリス(アイリス)、アーモンド、アロエ、イチョウ、ウーロン茶、エイジツ、オウゴン、オウレン、オトギリソウ、オドリコソウ、海藻、カッコン、カミツレ、カンゾウ、クチナシ、クジン、コムギ、コメ、コメハイガ、オリザノール、コメヌカ、シソ、シャクヤク、センキュウ、ソウハクヒ、ダイズ、茶、テルミナリア、トウキ、トウキンセンカ、ハマメリス、ベニバナ、ボタンピ、ヨクイニン、エノキ、カキ(Diospyros kaki)、チョウジ等の植物に由来する成分、エキス及び精油など。
【0065】
抗シワ剤:コエンザイムQ6〜10等のユビキノン、カイネチン、グリコール酸、アルジリン、アシル化グルコサミン、コラーゲン、アロエエキス、海藻エキス、マロニエエキス、ローズマリーエキス、ヤグルマソウエキスなど。
【0066】
消炎鎮痛剤:インドメタシン、フェルビナク、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン又はその誘導体、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル、ベンダザック、ピロキシカム、ケトプロフェンなど。
【0067】
抗真菌剤:塩酸テルビナフィン、硝酸スルコナゾール、クロトリマゾール、硝酸イソコナゾール、硝酸クロコナゾール、硝酸ミコナゾール、硝酸エコナゾール、硝酸オキシコナゾール、ビホナゾール、チオコナゾール、ケトコナゾール、トルナフタート、トルシクラート、リラナフタート、シクロピロクスオラミン、エキサラミド、シッカニン、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛、ピロールニトリン、塩酸ブテナフィン、塩酸アモロルフィン、塩酸ネチコナゾールなど。
【0068】
ステロイド剤:吉草酸酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、酪酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、酪酸クロベタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、プロピオン酸ベクロメタゾン、ピバル酸フルメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、アムシノニド、ハルシノニド、ジフルプレドナートなど。
【0069】
育毛剤:プロシアニジン、グリチルリチン酸ジカリウム、塩化カプロニウム、セファランチン、メントール、ヒノキチオール、L−ヒドロキシプロリン、アセチルヒドロキシプロリン、フコイダン、トウガラシチンキ、セファランチン、スエルチアニン、シンホングギニシン、フラボノステロイド、ミノキシジル、FGF−10、エンメイソウ抽出物(エキス)、センブリ抽出物(エキス)、ミツイシコンブ抽出物(エキス)、アマチャズル抽出物(エキス)、オトギリソウ抽出物(エキス)、ゲンチアナ抽出物(エキス)、セージ抽出物(エキス)、ペパーミント抽出物(エキス)、ホップ抽出物(エキス)、ヨクイニン抽出物(エキス)、柿葉抽出物(エキス)、ジオウ抽出物(エキス)、ニンジン抽出物(エキス)、ボダイジュ抽出物(エキス)、ボタンピ抽出物(エキス)など。
【0070】
痩身剤:カフェイン、アミノフィリン、テオフィリン、オクストリフィリン、ダイフィリン、ジイソブチルアミノベンゾイルオキシプロピルテオフィリン、テオブロミン、ジプロフィリン、プロキシフィリン、ペントキシフィリンなどのキサンチン類;カプサイシンなど。
【0071】
局所麻酔剤:リドカイン、塩酸リドカイン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、アミノ安息香酸エチル、ユーカリ油、オイゲノール、カンフル、ハッカ油、テレピン油など。
【0072】
鎮痒剤:クロタミトン、クロルフェニラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸、ノニル酸ワニリルアミド、メキタジン、カンフル、チモール、オイゲノール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、コンフリーエキス、シソエキスなど。
【0073】
抗菌剤:イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、トリクロサン、トリクロロカルバニリドなど。
【0074】
抗ウイルス剤:アシクロビル、ペンシクロビルなど。
【0075】
角質軟化剤:エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、炭酸プロピレン、ヘキシルドデカノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエタノールアミン、ジイソプロピルアジペート、エチルラウリレート、ラノリン、脂肪酸ジアルキロールアミド、尿素、イオウ、レゾルシン、フィチン酸、乳酸、乳酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど。
【0076】
保湿剤:ポリエチレングリコール、ジグリセリントレハロース、ヘパリン類似物質、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサンなどの高分子化合物;グリシン、アスパラギン酸、アルギニン等のアミノ酸、乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の天然保湿因子;カミツレエキス、アロエエキス、アロエベラエキス、ハマメリスエキス、ローズマリーエキス、タイムエキス、チャエキス、シソエキスなどの植物抽出エキス;セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6I、セラミド6II、セラミド7等のセラミド類、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルデカナミド、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミドなど。
【0077】
収斂剤:クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、アルミニウムフェノールスルホン酸、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アルミニウムクロロヒドロオキシドなど。
【0078】
抗酸化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(以下、エデト酸ナトリウムとも言う)、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウムなど。
【0079】
発毛抑制剤:イソフラボン、ヒオウギエキス、ドクダミエキス、イリス根エキス、パパイン酵素など。
【0080】
紫外線吸収剤:パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−[4−(ジエチルアミ
ノ)−2−ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、2,4,6−トリス[4−(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]−1,3,5−トリアジン、ジメトキシベンジリデンオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、2,4−ビス−[[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ]−フェニル]−6−(4−メトキシ
フェニル)−1,3,5−トリアジンなど。
【0081】
紫外線散乱剤:酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸チタン、ケイ酸亜鉛、無水ケイ酸、ケイ酸セリウム等の無機化合物や、それらの無機化合物をマイカやタルク等の無機粉体で被覆したり、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂粉体に複合化したもの、さらにシリコン油や脂肪酸アルミニウム塩等で処理したものなど。
【0082】
上記成分の中でも、本発明の乳化組成物を皮膚疾患の治療、予防又は改善に用いる点から、本発明の乳化組成物に非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド剤、局所麻酔剤、鎮痒剤及び保湿剤からなる群より選択される少なくとも1種の有効成分を配合することが好ましい。
【0083】
上記成分の中でも、皮膚からの水分蒸散を低減させることが肝要なアトピー性皮膚炎へ適用するという観点からは、その治療に頻繁に使用されるステロイド剤を本発明の乳化組成物に配合することが好ましい。
【0084】
ステロイド剤の中では、安全性の面からアンテドラッグステロイドとして一般に知られている吉草酸酢酸プレドニゾロンが特に好ましい。
【0085】
また、同様に皮膚からの水分蒸散を低減させることが肝要な乾皮症へ適用するという観点からは、保湿剤としてその治療に使用されるヘパリン類似物質や尿素を本発明の乳化組成物に配合することが好ましい。
【0086】
これらの中でもヘパリン類似物質は、前述のアトピー性皮膚炎の治療にも頻繁に用いられることから特に好ましい。
【0087】
また、乾燥による炎症の予防という観点から、汎用されている非ステロイド性抗炎症剤の配合が好ましい。
【0088】
これらの中でも、安全性の面から一般に広く使われているメントール、カンフル、グリチルリチン酸二カリウム、アラントインの配合が特に好ましい。
【0089】
また、乾燥による痒みの治療薬を考えた場合、痒みを抑えるために鎮痒剤として使われるクロタミトンやジフェンヒドラミンやその塩の配合が好ましい。
【0090】
これらの中でも、一般的によく使われているクロタミトンの配合が特に好ましい。
【0091】
本発明の乳化組成物には、保存安定性や粘度等の品質を損なわず、また本発明の効果を損なわない量的及び質的範囲内で、必要に応じて医薬品、医薬部外品または化粧品分野において一般的に用いられる各種の成分、例えば基剤、保存剤、pH調整剤、安定化剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、分散剤、香料等や、レシチンを除く低刺激性の界面活性剤を配合することができる。なお、これらの成分は1種単独で、または2種以上を任意に組み合わせて配合することができる。またこれらの成分の配合量は、本発明の効果を奏すれば特に制限されないが、望ましくは薬学上許容される上限配合量を限度に適宜選択される。
【0092】
前記基剤としては、
パラフィン、オゾケライト、セレシン、ハードファット、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン(合成・植物性)、αーオレフィンオリゴマー、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、ポリエチレン末等の炭化水素;
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪酸;
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル(トリオクタノイン)等のトリ脂肪酸グリセリド;高重合メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル、架橋型メチルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキル変性シリコーン等の重合型シリコーン;
エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジアセタート、ヘキシレングリコールジアセタート、及び2−メチル−2−プロペン−1,1−ジオールジアセタート等のグリコールアセタート;
トリエチレングリコールジバレラート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチラート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート等のグリコールエステル;
エチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、プロピレングリコールモノアクリラート、2,2−ジメチル−トリメチレングリコールジアクリラート、及び1,3−ブチレングリコールジアクリラート等のグリコールアクリラート;
エチレングリコールジニトラート、ジエチレングリコールジニトラート、トリエチレングリコールジニトラート、及びプロピレングリコールジニトラート等のグリコールジニトラート;
2,2′−[1,4−フェニレンジオキシ]ジエタノール、ジオキサン、ブチレングリコールアジピン酸ポリエステル等のエーテル化合物;
エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;
セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、デシルテトラデカノール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール;
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール(グリセリンを除く);ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル;マクロゴール;
ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、トリ2−エチルヘキシル酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等のエステル類;
ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;
オリーブ油等の植物油などが挙げられる。
【0093】
前記保存剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0094】
前記pH調整剤としては、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸などの無機酸;乳酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、コハク酸ナトリウム、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、プロピオン酸、酢酸、アスパラギン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、グルタミン酸、アミノエチルスルホン酸などの有機酸;グルコノラクトン;酢酸アンモニウム;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの無機塩基;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、リジンなどの有機塩基などが挙げられる。
【0095】
前記レシチンを除く低刺激性の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ステアリン酸ポリオキシル等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ステアリン酸マクロゴール;ラノリンアルコールなどが挙げられる。
【0096】
本発明の乳化組成物は、上記(A)〜(E)の各成分を特定の割合で含有し、その優れたバランスと、以下に説明する、その内相の平均粒径が特定の範囲内にあることとにより、皮膚からの水分蒸散を低減するために十分な量のワセリンを含有しながらも使用感に優れ、皮膚に十分な水分を与えることができ、かつ持続的で良好な保湿性を有し、低刺激性と保存安定性とを兼ね備えており、さらにダニ誘引作用を有するグリセリンを含有しながらも、ダニ忌避作用を有するという効果を達成している。
【0097】
上記の効果を達成する観点から、本発明の乳化組成物において、好ましい上記(A)〜(E)成分の配合量は、乳化組成物全体(100重量%)に対してワセリン(A)が10〜30重量%、レシチン(B)が0.1〜5重量%、グリセリン(C)が1〜30重量%、水(D)が40〜75重量%、水溶性高分子(E)が0.0001〜5重量%であり、より好ましい上記(A)〜(E)成分の配合量は、乳化組成物全体(100重量%)に対してワセリン(A)が12〜27重量%、レシチン(B)が0.5〜3重量%、グリセリン(C)が5〜25重量%、水(D)が60〜75重量%、水溶性高分子(E)が0.01〜3重量%であり、特に好ましい上記(A)〜(E)成分の配合量は、乳化組成物全体(100重量%)に対してワセリン(A)が15〜25重量%、レシチン(B)が1.2〜2重量%、グリセリン(C)が10〜20重量%、水(D)が60〜70重量%、水溶性高分子(E)が0.01〜1重量%である。
【0098】
[平均粒径]
本発明の乳化組成物は、その内相の、Mie理論に基づいて測定した平均粒径が5000nm以下であり、好ましくは2000nm以下、特に好ましくは1000nm以下である。また平均粒径の下限は特に制限されないが、通常50nm、好ましくは100nm、特に好ましくは200nmである。
【0099】
平均粒径が5000nmより大きい場合は、後述の試験例で示すように本発明の乳化組成物の安定性、使用感及び保湿性の観点から好ましくない。また、前記内相の平均粒径が50nm未満の乳化組成物を得るには、多くのエネルギーが必要となり、また乳化するために乳化力は高いが刺激性が高い界面活性剤を使用する必要が生じることがあり、経済性及び刺激性低減の観点から好ましくない場合がある。
【0100】
なお、前記Mie理論に基づいて測定することができる平均粒径は、正確には前記ワセリン(A)と、前記レシチン(B)と、前記グリセリン(C)と、前記水(D)とにより構成される乳化組成物の内相の平均粒径である。
【0101】
乳化組成物はエマルションであり、本明細書においてエマルションとは、相互に混合しない2つの液体の一方が小滴となって、他方の液体中に分散したものである。また乳化組成物の内相とは、前記小滴を指す。
【0102】
上記平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(例えば、HORIBA LA−920)を用いてバッチ式測定法により測定された散乱光データからMie理論により粒度分布を自動計算させることによって得たメジアン径を意味する。メジアン径は頻度分布が累積50%に相当する粒子径である。
【0103】
また、上記のようにMie理論に基づいた測定では前記(A)、(B)、(C)、(D)成分から構成される乳化組成物に水溶性高分子(E)を加えた、本発明の乳化組成物の内相の平均粒径を測定することはできないが、動的光散乱法による動的光散乱理論に基づいた測定によれば可能である。前記Mie理論では散乱光の強度分布を観測・解析することにより粒度分布を計算するが、動的光散乱理論では散乱光の干渉による強度分布の揺らぎを観測・解析することにより粒度分布を計算する。
【0104】
この動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した本発明の乳化組成物の内相の平均粒径は、800nm以下であり、好ましくは700nm以下、特に好ましくは500nm以下である。平均粒径が800nmを超えると、乳化組成物の使用感と安定性が低下してくる。また平均粒径の下限は特に制限されないが、通常10nm、好ましくは50nm、より好ましくは100nm、特に好ましくは150nmである。本発明の乳化組成
物は前記の(A)、(B)、(C)、(D)成分からなる乳化組成物と同様にエマルションであり、「乳化組成物の内相」とは、相互に混合しない2つの液体の一方が小滴となって、他方の液体中に分散したものの小滴を指す。
【0105】
この場合の乳化組成物の内相の平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(例えば大塚電子 FPAR−1000)を用いてバッチ式測定法により測定された散乱光データから動的光散乱理論により粒度分布を自動計算させることによって得たメジアン径を意味する。メジアン径は頻度分布が累積50%に相当する粒子径である。
【0106】
[乳化組成物の調製方法]
本発明の乳化組成物の調製方法は特に制限されないが、たとえば本発明の乳化組成物を構成する(A)〜(E)成分、並びに所望により有効成分や基剤等の各種成分の混合物を乳化処理することにより、本発明の乳化組成物が得られる。
【0107】
乳化処理の方法としては、本発明の乳化組成物を構成する(A)〜(E)成分、並びに所望により有効成分や基剤等の各種成分の混合物を、ホモミキサーよりも強力なエネルギーをかけられる乳化機(例えば、マイクロフルイダイザー、超音波乳化機、高圧乳化機(高圧ホモジナイザー)など)などを用い、強力なエネルギーで乳化処理する方法等が挙げられる。
【0108】
当該乳化処理により、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が上記の範囲を満たす本発明の乳化組成物が得られる。
【0109】
なお、本発明の乳化組成物を構成する(A)〜(E)成分と、有効成分や基剤等の各種成分との全量を乳化処理してもよいし、場合によっては、乳化組成物の含有成分のうち一
部のみを乳化処理した後に、残りの成分をさらに配合することも可能である。全量を乳化処理するか、一部のみを乳化処理した後に残りの成分を配合するかは、配合する原料により適宜選択すればよい。
【0110】
このようにして得られる乳化組成物は水中油型及び油中水型のいずれにもなりうるが、水中油型であることが好ましい。一般的に水(D)の配合量が乳化組成物100重量%に対して40重量%以上の時には水中油型となる傾向がある。
【0111】
[乳化組成物の性状・用途等]
本発明の乳化組成物は、種々の形態に調製することができる。例えば、クリーム、乳液、ゲル乳液などの形態が挙げられる。なかでも、広範囲に塗布しやすいことから、本発明の実施形態としては乳液が好ましい。
【0112】
本発明の乳化組成物の25℃における粘度は、特に制限されないが、通常500〜30000mPa・sである。本発明の乳化組成物の25℃における粘度は、好ましくは800〜10000mPa・s、より好ましくは900〜7000mPa・s、特に好ましくは1000〜5000mPa・sである。
【0113】
粘度が30000mPa・sより大きい場合は、使用感、例えば皮膚上での塗り延ばしやすさ(塗布しやすさ)やべたつき感の点で劣る場合がある。また、粘度が500mPa・s未満の場合は、保存安定性が劣る場合がある。
【0114】
本明細書において粘度とは、乳化組成物をガラス製50mlネジ口瓶に入れ、BL型粘度計(東機産業株式会社製)を使用して、その粘度に最適のローター及び回転速度を選択して測定して得られた値である。
【0115】
測定方法をより詳細に説明すると、乳化組成物の粘度が500mPa・s以上4500mPa・s未満である場合、M2ローターで25℃、回転速度6rpm、1分経過後に測定した場合の値をいう。乳化組成物の粘度が4500mPa・s以上18000mPa・s未満である場合、M3ローターで25℃、回転速度6rpm、1分経過後に測定した場合の値をいう。乳化組成物の粘度が18000mPa・s〜30000mPa・sである場合、M4ローターで25℃、回転速度12rpm、1分経過後に測定した場合の値をいう。
【0116】
また、粘度測定において乳化組成物のすべりや測定上限を超えるなどのために粘度が測定不能となった場合は、硬度が1000g以下のものは、次の測定方法で測定した値を粘度とする。乳化組成物の硬度測定は、乳化組成物をプラスチック製50gジャーに入れ、レオメーターでT.Speed(UP)2cm/minおよびφ20(圧縮弾性)アダプターの条件で測定した場合のアダプター底面の1cm進入時までの最高値をいう。
【0117】
本発明の乳化組成物の外皮への適用量や用法は特に制限されず、該組成物は通常、一日数回、適量を皮膚等の外皮に塗布するなどして用いることができる。
【0118】
本発明の乳化組成物は、様々な症状の治療、予防又は改善用の組成物として用いることができる。
【0119】
本発明の乳化組成物の用途としては、例えば、皮膚の乾燥に起因する症状、及び/又は皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患の治療、予防又は改善のための使用が挙げられる。
【0120】
皮膚の乾燥に起因する症状の具体例としては、皮膚表面の落屑、粉ふき、けばだち、か
さつき、ひび、あかぎれ、ひじ・ひざ・かかと・くるぶし等の角化、顔の小じわ、皮膚柔軟性の低下、手指のあれ、痒み、乾燥肌(ドライスキン)、敏感肌、皮膚のかぶれ、紅斑、アトピー肌、肌荒れ等がある。
【0121】
これらの症状を示す具体的な疾患としては、乾皮症、老人性乾皮症、尋常性鱗癬(鮫肌)、小児乾燥性皮膚、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、皮脂減少性湿疹、敏感肌、季節性乾皮症、水性掻痒症、主婦湿疹が挙げられる。
【0122】
一般に、乾燥症状を示す皮膚はバリア機能が低下している。本発明の乳化組成物は、優れた保湿性を有するので、皮膚にうるおいを与えて、皮膚の乾燥症状の治療、予防又は改善にも有用である。またそれに伴って本発明の乳化組成物は皮膚のバリア機能を高め得る。このため、本発明の乳化組成物は、肌を整える;肌のキメを整える;皮膚を健やかに保つ;皮膚を保護する;等の効果も奏する。
【0123】
本発明の乳化組成物は、さらにダニ忌避作用も有するので、ダニによる皮膚感染症である疥癬を始め、ダニの刺咬が直接の原因となる皮膚のかゆみ、発赤、湿疹などの治療、予防又は改善に有効である。
【0124】
アトピー性皮膚炎の患者はステロイドなどで治療しても、その症状は緩解と増悪を繰り返すことが知られている。この原因の一つとしてアトピー性皮膚炎の患者の多くがダニに対するアレルギーを有していることがある。またアトピー性皮膚炎以外でもダニがアレルゲンとなる皮膚疾患は多く、アレルゲンであるダニとの接触を断つことがこれらの疾患・症状の治療上極めて重要である。本発明の乳化組成物は、ダニ忌避作用も有するので、ダニとの接触が症状悪化の要因となる上記皮膚の乾燥に起因する症状等の治療、予防又は改善のための組成物としても有用である。
【0125】
また、以上説明した本発明の乳化組成物は、皮膚の乾燥に起因する症状、及び/又は皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患の治療、予防又は改善用の医薬又は化粧料の製造に使用することができる。
【実施例】
【0126】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明の範囲を限定するものではない。なお、配合量は特に単位の記載のないものについては、すべて重量%を表す。
【0127】
以下の実施例・比較例の乳化組成物について、以下の二種類の平均粒径の測定および粘度の測定は、以下の通り行った。
【0128】
<ワセリンと、レシチンと、グリセリンと、水とにより構成される乳化組成物の内相の平均粒径>
測定装置として、HORIBA LA−920を使用し、バッチ式測定法にて行った。
【0129】
高圧乳化処理後のサンプルを精製水で10倍希釈(重量比)した。この希釈したサンプルを精製水で満たされたガラスセル(約10ml)に数滴滴下し、撹拌した。サンプルに632.8nm He−Neレーザーを当て、その散乱光を測定した。測定された散乱光データからMie理論により粒度分布を自動計算させることによって平均粒径(メジアン径)を得た。なお、精製水、外環境共に約25℃で測定した。
【0130】
<ワセリンと、レシチンと、グリセリンと、水と水溶性高分子とにより構成される乳化組成物の内相の平均粒径>
測定装置として、FPAR−1000を使用し、バッチ式測定法にて行った。
【0131】
高圧乳化処理後のサンプルを精製水で10倍希釈(重量比)した。この希釈したサンプルをガラスバイアルに約5ml入れ、撹拌した。バイアルをセルにセットし、サンプルに波長650.0nmの半導体レーザーを当て、その散乱光を測定した。測定された散乱光データから動的光散乱理論により粒度分布を自動計算させることによって平均粒径(メジアン径)を得た。なお、精製水、外環境共に約25℃で測定した。
【0132】
<粘度の測定>
測定装置として、BL型粘度計(東機産業株式会社製)を使用した。
【0133】
乳化組成物をガラス製50mlネジ口瓶に入れ、その粘度に最適のローター及び回転速度を選択して、25℃、1分経過後に粘度を測定した。
【0134】
ローター及び回転速度は、乳化組成物の粘度が500mPa・s以上4500mPa・s未満である場合は、M2ローター、回転速度6rpm;乳化組成物の粘度が4500mPa・s以上18000mPa・s未満である場合は、M3ローター、回転速度6rpm、とした。
【0135】
実施例1〜3
ワセリン及びレシチンを混合し、加熱溶解し、得られた混合物の温度を75〜80℃とした。一方、水の一部及びグリセリンを混合し、得られた混合物を、75〜80℃に加熱した後、前記ワセリン及びレシチンの混合物に加えて、ホモミキサーにて予備混合した。得られた混合物を、温度を75〜80℃に保ったまま、500barの圧力で高圧ホモジナイザー処理を行って乳化し、冷却した。これに、水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合することにより、表1に示す組成の実施例1〜3の乳化組成物を得た。
【0136】
また、水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合する前の乳化組成物の内相の平均粒径の測定(Mie理論に基づいた測定)、および水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合した後の乳化組成物の内相の平均粒径の測定(動的光散乱法による動的光散乱理論に基づいた測定)を行った。これらの結果も表1にあわせて示す。
【0137】
【表1】

【0138】
水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合する前後において、乳化組成物の内相の平均粒径に変化はないものと推測されたが、そのことを電子顕微鏡写真による平均粒径の測定により確認した。
【0139】
電子顕微鏡写真による平均粒径の測定は、以下のようにして行った。実施例2の乳化組成物について、水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合する前後において、乳化組成物の電子顕微鏡写真を撮影し、任意の50個を選択して(重なっていないもの)、その粒
径を測定することによって得たメジアン径を平均粒径とした。結果を下記表2に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
Mie理論に基づく測定では水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合する前の乳化組成物の平均粒径を測定しており、動的光散乱法による動的光散乱理論に基づく測定では、水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合した後の乳化組成物の平均粒径を測定している。上記の電子顕微鏡写真による平均粒径の測定により、水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合する前後において乳化組成物の平均粒径が変化しないことを確認した。さらに、これら二つの測定法(Mie理論に基づく測定および動的光散乱法による動的光散乱理論に基づく測定)では測定数値が大きく異なるが、この結果は異なった測定理論に基づいていることに起因する。
【0142】
また、実施例1の乳化組成物の粘度は920mPa・s、実施例2では1080mPa・s、実施例3では1120mPa・sであった。
【0143】
比較例1〜5
比較例1及び2の乳化組成物を、各成分の配合割合を下記表3に示すように変更する以外は実施例1〜3と同様にして製造した。
【0144】
比較例3の乳化組成物は、グリセリンを加えず、各成分の配合割合を下記表3に示すように変更する以外は実施例1〜3と同様にして、比較例4の乳化組成物は、キサンタンガムを加えず、各成分の配合割合を下記表3に示すように変更する以外は実施例1〜3と同様にして、それぞれ製造した。
【0145】
比較例5の乳化組成物は、以下のようにして製造した。ワセリン及びレシチンを混合し、加熱溶解し、得られた混合物の温度を75〜80℃とした。一方、水の一部及びグリセリンを混合し、得られた混合物を、75〜80℃に加熱した後、前記ワセリン及びレシチンの混合物に加えて、ホモミキサーにて乳化し、冷却した。これに、水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合することにより乳化組成物を製造した。
【0146】
比較例1〜5の乳化組成物の組成及び平均粒径を表3に示す。比較例1〜3及び5の乳化組成物については、水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合する前の乳化組成物の内相の平均粒径の測定(Mie理論に基づいた測定)および水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合した後の乳化組成物の平均粒径の測定(動的光散乱法による動的光散乱理論に基づいた測定)を行った。比較例4の乳化組成物については、乳化組成物の内相の平均粒径の測定を、Mie理論に基づいた測定及び動的光散乱法による動的光散乱理論に基づいた測定により行った。
【0147】
【表3】

【0148】
水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合する前後において、実施例2と同様に、比較例1〜3および5の乳化組成物の内相の平均粒径に変化はないものと推測される。
【0149】
また、比較例1の乳化組成物の粘度は785mPa・s、比較例2では12600mPa・s、比較例3では1020mPa・sであった。
【0150】
試験例1 保湿性評価(水分蒸散量)
50mlのねじ口ビンに水(10ml)を入れ、前記ビンを人工皮革(商品名:サプラーレPBZ13001、出光テクノファイン(株))で被い、水分蒸散モニター(AS−TW2、アサヒバイオメッド社製)を用いて水分蒸散量(乳化組成物塗布前の単位面積、単位時間当たりの蒸発量)を測定した。その後、人工皮革上に実施例1〜3並びに比較例1、2及び5のいずれかの乳化組成物(8mg)を塗布し、室温にて20時間放置後、水分蒸散モニター(AS−TW2、アサヒバイオメッド社製)を用いて水分蒸散量(塗布20時間後)を測定した。20時間放置したのは、塗布後すぐに測定すると、乳化組成物自体からの水分蒸散量も測定値に入ってしまうからである。
【0151】
実施例1〜3並びに比較例1、2及び5の乳化組成物の水分蒸散抑制率(%)を表4に示す。なお、水分蒸散抑制率は以下の式に基づき計算した。
水分蒸散抑制率(%)=(1−(塗布20時間後の水分蒸散量/塗布前の水分蒸散量))*100
【0152】
【表4】

【0153】
一般的に、ワセリンは皮膚の閉塞性を高め、それにより皮膚からの水分蒸散量を下げる効果を示すことが知られている。ワセリン自体が有するこの効果については、ワセリン含有量の低い比較例1と比較して、より多くのワセリンを含有する実施例1〜3の水分蒸散抑制率が高いという結果と一致する。しかし、さらにワセリン含有量を高めた比較例2では、実施例1〜3と比較して、逆に水分蒸散抑制率の低下が認められた。これは、単にワセリン含有量を高めることにより水分蒸散を抑制できるものではないこと、そして本発明の乳化組成物におけるワセリンの含有量が特定の範囲内にある場合に特に顕著な水分蒸散抑制効果が発揮されることを示している。
【0154】
また、同一組成の乳化組成物である実施例2と比較例5との試験結果の比較から、その乳化組成物の内相の平均粒径を小さくすることにより、水分蒸散抑制効果が向上することが明らかとなった。
【0155】
試験例2 乳化安定性評価
20mlの透明なねじ口ビンに実施例1〜3及び比較例1〜5の乳化組成物を約15g入れ、60℃にて2日間保存し、目視にて透明な分離相の有無を確認した。分離相が確認されなかったものをA、透明な分離相が確認されたものをBとして、表5に示す。
【0156】
【表5】

【0157】
実施例1〜3、比較例2〜4はいずれも分離相が確認されなかった。しかしながら、実施例1〜3と比較してワセリン含有量の低い比較例1では分離相が確認され、乳化安定性に劣ることが明らかとなった。また、同一組成の乳化組成物である実施例2と比較例5との試験結果の比較から、その乳化組成物の内相の平均粒径を小さくすることにより、乳化安定性が向上することも明らかとなった。
【0158】
試験例3 使用感の評価
10名のモニターに実施例1〜3並びに比較例1〜5の乳化組成物を腕に塗布してもらい、「べたつき」、「のび」、「テカリ」、「しっとり感」の各項目について、「満足」、「普通」、「不満足」の3段階で評価してもらった。
【0159】
評価結果を、満足+普通が8名以上をA、満足+普通が6名〜7名をB、不満足が5名以上をCとして表6に示す。
【0160】
【表6】

【0161】
実施例1〜3は全ての項目において評価がAであったのに対し、比較例1〜5は全ての項目において評価がAであるものはなかった。
【0162】
特に、ワセリン含有量が低い比較例1では、「テカリ」及び「しっとり感」の評価が低く、またワセリン含有量が高い比較例2では、「べたつき」及び「のび」の評価が低かった。水溶性高分子を含有しない比較例4では「しっとり感」の評価が低く、水溶性高分子を添加することにより、しっとり感が付与されることが認められた。また、グリセリンを含有しない比較例3、及び乳化組成物の内相の平均粒径が大きい比較例5においても、実施例1〜3と比較して「しっとり感」の評価が劣っていた。
【0163】
また、実施例1〜3の乳化組成物はいずれも刺激性が認められなかった。
【0164】
また、実施例2及び比較例5の乳化組成物をガラス板に塗布した際の顕微鏡写真を図1に示す。
【0165】
図1に示すとおり、本発明の乳化組成物は、その内相の平均粒径の大きな比較例5の乳化組成物と比較して均一に塗布できることが認められた。
【0166】
試験例4 ダニ忌避性評価
この試験例では、下記表7に示す乳化組成物を使用した。
【0167】
【表7】

【0168】
実施例4の乳化組成物は、各成分の配合割合を表7に示すように変更する以外は実施例1〜3と同様にして、比較例6の乳化組成物はキサンタンガムを加えず、各成分の配合割合を表7に示すように変更する以外は実施例1〜3と同様にして製造した。比較例7の乳化組成物は、各成分の配合割合を表7に示すように変更する以外は比較例5と同様にして製造した。
【0169】
また、実施例4及び比較例7の乳化組成物については、残部に溶解させたキサンタンガ
ムを混合する前の乳化組成物の内相の平均粒径の測定(Mie理論に基づいた測定)および水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合した後の乳化組成物の平均粒径の測定(動的光散乱法による動的光散乱理論に基づいた測定)を行った。比較例6の乳化組成物については、乳化組成物の内相の平均粒径の測定を、Mie理論に基づいた測定及び動的光散乱法による動的光散乱理論に基づいた測定により行った。結果は上記表7に示されている。
【0170】
水の残部に溶解させたキサンタンガムを混合する前後において、実施例2と同様に、実施例4および比較例7の乳化組成物の内相の平均粒径に変化はないものと推測される。
【0171】
また、実施例4の乳化組成物の粘度は6120mPa・sであった。
【0172】
表7に示す各乳化組成物(20mg)を均一に塗布した直径4cmの円形ろ紙を、内径4cmのガラスシャーレの内部底面に敷き、ろ紙の中心にダニ飼育培地(50mg;小動物飼育用粉末試料MF(オリエント酵母(株)製)と局方乾燥酵母(アサヒビール(株)製)の1:1混合物)を置いた。直径9cmのガラスシャーレ内部底面に、ヤケヒョウヒダニ(約10000個体)を含むダニ培地を均一に広げ、底面中央に前述の乳化組成物を入れた直径4cmのシャーレを設置した。このシャーレを食品保存用シール容器(内容量8.5L)に置き、シール容器内底面部に飽和食塩水を入れ、湿度を約75%RHに調整した。
【0173】
以上のようにして作成した試験装置を25℃の遮光した恒温室に保管し、24時間経過後にダニ飼育培地及びろ紙上に移動した供試ダニの確認を行った。試験は全てn=3で行い、乳化組成物無塗布の直径4cmの円形ろ紙での試験結果をコントロールとした。ダニ飼育培地からは飽和食塩水浮遊法により供試ダニを取り出し、ろ紙上に移動した供試ダニからは洗い出し法により供試ダニを取り出し、それぞれ実体顕微鏡下で計数した。ろ紙上に移動した供試ダニの移動数、ダニ忌避率を表8に示す。なお、ダニ忌避率(%)は以下の式に基づき計算した。
ダニ忌避率(%)=(コントロールのダニ移動数−ダニ移動数)/コントロールのダニ移動数*100
【0174】
【表8】

【0175】
以上の結果より、本発明の乳化組成物である実施例4は、同一組成であって内相の平均粒径の大きい比較例7、水溶性高分子を添加していない比較例6よりも、高いダニ忌避効果を有することが認められた。
【0176】
試験例5 保湿性評価(角層水分量)
3名のモニターの前腕内側の4か所に2cm×2cmの印をつけ試験部位とし、各試験部位に実施例1〜3、比較例1および3のいずれかの乳化組成物を約8mg塗布した。塗布前、塗布5分後、30分後、60分後の角層水分量を、Skicon-200(中心電極直径2mm、荷重10g、IBS社製)を用いて測定した。測定したのは角層の電気伝導度である
が、水は導電性があるので、水分量と電気伝導度は正の相関がある。
【0177】
塗布後の電気伝導度の塗布前の電気伝導度に対する比(塗布後の電気伝導度/塗布前の電気伝導度)が6未満をB、6以上をAとして評価した。結果を表9および図2に示す。
【0178】
【表9】

【0179】
図2から明らかなように、水の配合量が多い実施例1および2では角層水分量が多く、しかもその水分が60分保持されている。一方実施例3の乳化組成物は水の配合量が少ないため、実施例1および2ほどは角層水分量が多くはない。これに対して、実施例1の乳化組成物よりも水が多く配合されている比較例1の乳化組成物は、水の配合量が多いにもかかわらず、角層水分量が実施例3よりも少ない。これは、比較例1の乳化組成物におけるワセリンの配合量が少ないことが原因の一つであると考えられる。
【0180】
また比較例3の乳化組成物にはグリセリンが配合されていないため、角層水分量が非常に少なくなっている。
【0181】
次に、以下の表10〜13に処方例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0182】
【表10】

【0183】
【表11】

【0184】
【表12】

【0185】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子を含有する混合物を乳化する工程を有することを特徴とする、
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子を含有し、かつ内相の平均粒径が5000nm以下である乳化組成物の調製方法。
【請求項2】
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子の一部を乳化し、得られた乳化物に残りの成分を混合する工程を有することを特徴とする、
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子を含有し、かつ内相の平均粒径が5000nm以下である乳化組成物の調製方法。
【請求項3】
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、及び(C)グリセリン、並びに(D)水の一部を乳化し、得られた乳化物に、(D)水の残部及び(E)水溶性高分子を混合する工程を有することを特徴とする、
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水、及び(E)水溶性高分子を含有し、かつ内相の平均粒径が5000nm以下である乳化組成物の調製方法。
【請求項4】
(A)ワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する乳化組成物であって、該ワセリン(A)の含有量が前記乳化組成物100重量%に対して10〜30重量%であり、前記乳化組成物の内相の、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が800nm以下である乳化組成物の調製方法であって、
(A)ワセリン10〜30重量%、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する混合物を乳化する工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の乳化組成物の調製方法。
【請求項5】
(A)ワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する乳化組成物であって、該ワセリン(A)の含有量が前記乳化組成物100重量%に対して10〜30重量%であり、前記乳化組成物の内相の、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が800nm以下である乳化組成物の調製方法であって、
(A)ワセリン10〜30重量%、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子の一部を乳化し、得られた乳化物に残りの成分を混合する工程を有することを特徴とする、請求項2に記載の乳化組成物の調製方法。
【請求項6】
(A)ワセリン、(B)レシチン、(C)グリセリン、(D)水及び(E)水溶性高分子を含有する乳化組成物であって、該ワセリン(A)の含有量が前記乳化組成物100重量%に対して10〜30重量%であり、前記乳化組成物の内相の、動的光散乱法により動的光散乱理論に基づいて測定した平均粒径が800nm以下である乳化組成物の調製方法であって、
(A)10〜30重量%のワセリン、(B)レシチン、及び(C)グリセリン、並びに(D)水の一部を乳化し、得られた乳化物に、(D)水の残部及び(E)水溶性高分子を混合する工程を有することを特徴とする、請求項3に記載の乳化組成物の調製方法。
【請求項7】
前記乳化を、マイクロフルイダイザー、超音波乳化機または高圧乳化機により行うこと
を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の乳化組成物の調製方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−256377(P2009−256377A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182706(P2009−182706)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【分割の表示】特願2008−555553(P2008−555553)の分割
【原出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】