説明

乳化組成物及びその製造方法並びにそれを用いた化粧料

【課題】ポリオキシエチレン付加型の界面活性剤を実質的に含有せず、しかも高級脂肪酸の含有量を系の安定性を損なうことなく低減し、低刺激性・安全性に優れ且つ使用感が良好な乳化組成物を提供する。
【解決手段】 (A)アルギン酸、ヒアルロン酸、及びキサンタンガムからなる群から選択される1種以上の高分子多糖類の塩;0.1〜0.5質量%、(B)グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール及びマルチトールからなる群から選択される1種以上の多価アルコール類;5〜15質量%、(C)高級脂肪酸類;0.01〜0.5質量%、及び(D)グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、及びそれらの誘導体並びに塩からなる群から選ばれる一種以上;0.5〜1質量%を配合して乳化組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料、皮膚外用剤等の基材として有用な乳化組成物に関する。詳しくは、本発明は、高級脂肪酸の含有割合を低く抑え、且つポリオキシエチレン付加型の界面活性剤を実質的に含有しない、低刺激性及び安定性に優れた乳化組成物及びその製造方法並びにそれを用いた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化組成物は、水相を連続相としてその中に油滴が分散した形態、或いは、油性成分を連続相としてその中に水滴が分散した形態等のように、水性成分と油性成分が共存する準安定系であり、その中に油性成分も水性成分も含有させることができること、及び、経皮的に吸収されやすい特性を有することなどから、化粧料剤形として、或いは皮膚外用剤剤形として、広く使用されている。
【0003】
このような乳化剤形を具現化するためには、通常、脂肪酸石鹸、非イオン型界面活性剤、硫酸エステル型アニオン界面活性剤、リン酸エステル型アニオン界面活性剤などの、界面活性剤を使用しなければならない。
【0004】
しかしながら、近年においては、かかる界面活性剤の使用については、皮膚刺激性への影響や、加水分解によるホルマリン等の発生などの問題が懸念されている。特に現代は、敏感肌をもつ人の割合が増加する傾向にあり、皮膚外用剤の安全性、特に皮膚への低刺激性に対する要望は強い。このような観点から、界面活性剤の使用量を減ずることが、化粧料、皮膚外用医薬などの皮膚外用剤の製剤化の上で重要な課題となっている。
【0005】
このような状況を背景に、実質的に界面活性剤を用いない乳化方法が、これまでにも種々考案されている。例えば、両親媒性ポリマーを利用する方法(特許文献1参照)、水膨潤性粘土鉱物とアクリルアミド系のポリマーを利用する方法(特許文献2参照)、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを利用する方法(特許文献3参照)、カゼインなどの水溶性高分子と糖鎖を有するポリマーを利用する方法などが挙げられる。しかしながら、これらはいずれもポリマーを利用するものであり、ポリマーの利用には一方で残存モノマーの問題が存在する。
【0006】
したがって、従来から知られている化粧料用の原料を用いつつ界面活性剤を極力減量し、あるいは界面活性剤を使用せずに、乳化剤形を具現化する技術の開発が望まれている。このような状況を反映し、鋭意研究が重ねられた結果、1)多価アルコール5〜20重量%と、2)高級アルコール1〜5重量%と、3)脂肪酸1〜5重量%と、4)水溶性高分子0.01〜5重量%を含有する乳化組成物において、前記多価アルコールの50%以上がグリセリン乃至はポリグリセリンであり、且つ前記高級アルコールと脂肪酸の重量比が2:1〜1:2である構成を取ることにより、実質的に非イオン界面活性剤を全く含有しない乳化組成物を具現化できることが見いだされた(特許文献4参照)。
【0007】
しかしながら、このものは、必須成分である高級アルコールと脂肪酸の総和に系の安定性が依存しており、このため転相に時間がかかり塗布時に白化がなかなかおさまらない、塗布時の延びが悪いなどの問題が生じ、使用感が損なわれる場合があった。
よって、系の安定性に優れ、皮膚への刺激性が低く安全性に優れ、且つ使用感が良好な乳化組成物の開発が望まれている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−012444号公報
【特許文献2】特開2002−191959号公報
【特許文献2】特開2002−029912号公報
【特許文献2】特開2004−231619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ポリオキシエチレン付加型の界面活性剤を実質的に含有せず、しかも高級脂肪酸の含有量を系の安定性を損なうことなく低減した低刺激性に優れ、且つ使用感が良好な乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アルギン酸ナトリウム塩等の特定の高分子多糖類の塩とグリセリン等の多価アルコール類と少量の高級脂肪酸との組み合わせが水に溶解しやすく良好な乳化剤を形成し、それにグリチルリチン酸ジカリウム等を併用することにより、安定な乳化組成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示す乳化組成物に関する。
(1)(A)アルギン酸、ヒアルロン酸、及びキサンタンガムからなる群から選択される1種以上の高分子多糖類の塩;0.1〜0.5質量%、(B)グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール及びマルチトールからなる群から選択される1種以上の多価アルコール類;5〜15質量%、(C)高級脂肪酸類;0.01〜0.5質量%、及び(D)グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、及びそれらの誘導体並びに塩からなる群から選ばれる一種以上;0.05〜1質量%を含有してなる乳化組成物。
【0012】
(2)さらに、(E)直鎖飽和の高級アルコールを1.5〜3質量%含有することを特徴とする、請求項1記載の乳化組成物。
(3)さらに、(F)1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール及びジプロピレングリコールからなる群から選択される1種以上のジオール類を含有し、且つ該ジオール類の含有量が前記多価アルコール類の含有量以下であることを特徴とする、請求項1又は記載の乳化組成物。
【0013】
(4)さらに、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸及び/またはその塩、並びに微粒子セルロースゲルからなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の乳化組成物。
【0014】
(5)ポリオキシエチレン付加型の界面活性剤の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の乳化組成物。
(7)請求項1〜5のいずれかに記載の乳化組成物を含有してなる化粧料。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高分子多糖類の塩とグリセリン等の三価以上の多価アルコール類と、(D)グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、及びそれらの誘導体並びに塩からなる群から選ばれる一種以上(以下、単に「グリチルレチン酸誘導体等」という場合がある)とを含む乳化組成物は、高級脂肪酸類の含有量が低くても、実質的に界面活性剤を使用することなく安定な乳化状態を保持することができる。
【0016】
本発明において安定な乳化状態を形成できる理由は必ずしも明らかではないが、アルギン酸等の高分子量多糖類の塩と三価以上の多価アルコール類とが良好な水溶性を示し、これと高級脂肪酸との反応物が優れた乳化性能を示す乳化剤を形成し、さらにグリチルリチン酸ジカリウム等のグリチルリチン酸又はグリチルレチン酸系化合物が活性助剤(補助活性剤)として働くことにより、安定な乳化組成物が形成されると考えられる。
【0017】
このような本発明の乳化組成物は界面活性剤を実質的に使用せず、しかも高級脂肪酸の使用量が低く抑えられているので、皮膚への刺激性が低く安全性が高く、しかも転相が速やかであるので白化がなく延びも良い。また、安定な乳化状態を容易に形成できることから、乳化に必要な機械力(攪拌・分散等)を小さくすることができるため、生産性が向上する。
【0018】
なお、高分子多糖類と三価以上の多価アルコール類とグリチルレチン酸誘導体等とを含有し、且つポリオキシエチレン付加型の界面活性剤を実質的に含有しない乳化組成物において、高級脂肪酸の含有量を0.5質量%以下に低減したものは知られていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
1.乳化組成物
本発明の乳化組成物は、高分子多糖類の塩(A)、多価アルコール類(B)、高級脂肪酸類(C)、及びグリチルレチン酸誘導体等(D)を必須成分として含有する。
(1)高分子多糖類の塩(A)
本発明の乳化組成物は、アルギン酸、ヒアルロン酸、及びキサンタンガムからなる群から選択される1種以上の高分子多糖類の塩(A)を0.1〜0.5質量%、好ましくは0.15〜0.25質量%含有することを特徴とする。
【0020】
本発明の乳化組成物において、かかる(A)成分はグリセリン等の特定の多価アルコール類及び水と共にゲルを形成し、このゲルの中に油性成分と水性成分を包含することにより、安定な乳化構造を形成せしめる働きをする。したがって、前記高分子多糖類塩の含有量が上記範囲より少ないとゲルが十分に形成されない場合があり、多いとゲル構造が強すぎて水性成分乃至は油性成分が包含されない場合がある。
【0021】
なお、上記高分子多糖類は化粧料や食品分野において増粘剤として一般的に使用されているが、本発明の高分子多糖類は増粘剤としての働きをするものではなく、三価以上の特定の多価アルコール類と共に、安定な乳化形態を達成するための乳化剤の役割を果たすゲルを形成させる働きをするものである。したがって、通常の増粘剤としての役割を発揮するのに必要な含有量とは全く異なり、その含有量は増粘剤としての役割を発揮し得ない少量の範囲である。
【0022】
このような作用を発揮する高分子多糖類塩は、化粧料用原料や食品用原料等として汎用され、あるいは市販されているものを適宜使用することができる。塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩類、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。これらのうちでは、アルカリ金属塩が特に好ましく、アルカリ金属塩では天然に存在するナトリウム塩が特に好ましい。
上記高分子多糖類塩は、一種のみを含有させることもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。特に好ましいものはアルギン酸ナトリウム塩である。
【0023】
(2)多価アルコール類(B)
本発明の乳化組成物は、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール及びマルチトールから選択される1種以上の多価アルコール類(B)を5〜15質量%、好ましくは7〜11質量%含有することを特徴とする。
【0024】
かかる(B)成分は前述の如く、高分子多糖類塩(A)及び水と共にゲルを形成し、このゲルの中に油性成分と水性成分を包含し、これにより乳化構造を形成せしめる働きをする。従って、前記の含有量より少ないところではゲルは形成しない場合があり、多いところではゲル構造が疎になりすぎて水性成分乃至は油性成分が包含されない場合がある。
【0025】
上記特定の多価アルコール類は、一種のみを含有させることもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。系の安定性の観点から特に好ましいものは、グリセリンである。
【0026】
(3)高級脂肪酸類(C)
本発明の乳化組成物は、高級脂肪酸類(C)を0.01〜0.5質量%、好ましくは0.1〜0.2質量%含有することを特徴とする。かかる(C)成分は、高分子多糖類塩(A)と多価アルコール類(B)と水とにより形成されるゲルと反応して、安定な乳化状態を形成させる乳化剤として働く脂肪酸石鹸を生成する。
【0027】
高級脂肪酸類の含有量が上記範囲より少ないと脂肪酸石鹸が十分に生成せず、安定な乳化組成物が得られない場合がある。一方、含有量が上記範囲より多いと、皮膚への刺激性が高く、安全性に優れた乳化組成物が得られない場合がある。本発明においては、一定量の高分子多糖類塩(A)と多価アルコール類(B)とグリチルリチン酸又はグリチルレチン酸の誘導体又は塩(D)とを組み合わせることにより、乳化状態の安定性を損なうことなく高級脂肪酸類の含有量を0.5質量%以下に低減させることができたものである。
【0028】
本発明で用いられる高級脂肪酸類としては、炭素数12〜22の脂肪酸が好ましく、具体的にはオレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等を挙げることができる。これらは一種のみを用いても、二種以上を組み合わせて含有させてもよい。これらのうちで特に好ましいものは、ベヘン酸、ステアリン酸である。
【0029】
(4)グリチルレチン酸誘導体等(D)
本発明の乳化組成物は、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、及びそれらの誘導体並びに塩からなる群から選ばれる一種以上(D)を0.05〜1質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%を含有することを特徴とする。
【0030】
かかる(D)成分は、親水性・親油性の両方を備えており、高分子多糖類塩(A)と多価アルコール類(B)と水と高級脂肪酸類(C)とから形成される脂肪酸石鹸からなる乳化剤とともに、安定な乳化組成物を形成させる活性助剤の役割を果たす。(D)成分を用いることにより、乳化状態の安定性を損なうことなく高級脂肪酸類の使用量を低減させることができ、より皮膚刺激性が低く敏感肌の人も安心して使用できる安全性の高い乳化組成物を得ることができる。
上記(D)成分の含有量が上記範囲より少ない場合は、乳化粒子が大きく不均一で不安定となり、多すぎると乳化状態が悪くまた結晶析出の原因となる。
【0031】
(D)成分の具体例としては、グリチルリチン酸及びグリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等のグリチルリチン酸の塩並びにその誘導体、グリチルレチン酸及びグリチルレチン酸ステアリル、ステアリン酸グリチルレチニル、3-サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウム等のグリチルレチン酸の塩並びにその誘導体が挙げられる。上記グリチルリチン酸、グリチルレチン酸及びそれらの誘導体並びに塩は、一種のみを含有させることもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。特に好ましいものはグリチルリチン酸ジカリウムである。
【0032】
(5)直鎖飽和の高級アルコール(E)
本発明の乳化組成物は、必要に応じて直鎖飽和の高級アルコールを1.5〜3質量%、好ましくは1.7〜2.7質量%含有させることができる。かかる(E)成分は、前記高分子多糖類塩(A)と多価アルコール類(B)とにより形成される乳化構造に包含され、その構造を補強する作用を有する。
【0033】
前記直鎖飽和の高級アルコールの含有量が上記範囲より少ないと、乳化構造を維持することができず、安定な乳化組成物が得られない場合がある。一方、上記範囲より多すぎると乳化界面が硬くゲル化を起こし不安定となる場合がある。また、前記高級アルコールの含有量の総和と、上記高級脂肪酸(C)の含有量の総和の和が4質量%以下であることが好ましい。
【0034】
前記直鎖飽和の高級アルコールとしては、具体的には、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどが好適に例示できる。これらのうちでは、炭素数16以上のものが好ましく、具体的にはセチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが特に好ましい。これらは一種のみを含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有することもできる。これらの成分は何れも化粧料などで汎用されている原料を用いることができる。
【0035】
(6)ジオール類(F)
本発明の乳化組成物には、必要に応じて1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール及びジプロピレングリコールからなる群から選択される1種以上のジオール類(F)を含有させることができる。
【0036】
ジオール類(F)は、上述したグリセリン等の三価以上の多価アルコール類(B)とは異なり、高分子多糖類塩(A)と脂肪酸(C)と水との組み合わせによる乳化剤の形成には直接関与しないと考えられるが、系の防腐性・保存安定性向上のために含有させるのが好ましい。
【0037】
ジオール類(F)の含有量は特に限定されないが、好ましくは乳化組成物全量に対し1〜10質量%、特に好ましくは3〜7質量%である。ジオール類の含有量が上記範囲より少ないと防腐性の低下と満足した使用感が得られないという欠点が生じる場合がある。一方、上記範囲より多すぎるとベタベタし使用性が悪くなるという欠点が生じる場合がある。
【0038】
また、上記三価以上の多価アルコール類(B)とジオール類(F)とを含む多価アルコール全体の形態として好ましくは、(B)成分の多価アルコール類が乳化組成物における多価アルコール全量の半量以上を占める形態である。すなわち、ジオール類の含有量総計が、前記多価アルコール類(B)の含有量総計と等しいか或いはそれ以下であることが好ましい。多価アルコール全体におけるジオール類の占める割合が前記多価アルコール類(B)より多いと、高分子量多糖類塩(A)と多価アルコール類(B)と水とから形成されるゲルが十分に形成されず、安定な乳化構造が得られない場合がある。
【0039】
(7)その他の任意成分
【0040】
本発明の乳化組成物では、上記必須成分(A)〜(D)及び必要に応じて配合される(E)(F)成分以外に、通常の乳化組成物に含有される任意成分を、本発明の効果を損なわない範囲において含有させることができる。
【0041】
そのような任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;
【0042】
イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;
【0043】
ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;
【0044】
脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類等の、ポリオキシエチレン付加型以外の界面活性剤類;
【0045】
ポリエチレングリコール等の前記多価アルコール以外の多価アルコール類;
ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;
【0046】
グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸及び/又はその塩、ポリエチレングリコール、ベントナイト、微粒子セルロースゲル等の増粘剤;
【0047】
表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類; 表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類; ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;
【0048】
パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;
【0049】
エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;
ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール,β−トコフェロール,γ−トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類;などが好ましく例示できる。
【0050】
本発明の乳化組成物に必要に応じて配合される上記増粘剤としてより好ましくは、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸及び/またはその塩、並びに微粒子セルロースゲルからなる群から選択される1種以上が挙げられる。これらのうちで特に好ましいものとしては、ナノサイズまで微細化したセルロース粒子を水に分散させた天然成分からなる透明ゲルである微粒子セルロースゲルが挙げられる。このものは、例えば商品名「ナノウォープ」(第一工業製薬(株)製)など、市販されているものを用いることができる。カルボキシビニルポリマー等の従来の増粘剤を使用する場合、混合液を中和するためにアルカリを添加する必要が生じる場合があるが、微粒子セルロースゲルを用いた場合は中和する必要がなく、系の安定化剤としても使用することができる。
【0051】
(8)乳化組成物
本発明の乳化組成物は、前記必須成分及び必要に応じて配合される任意成分及び残余として水を含有し、乳化されている組成物である。乳化形態としては、特段の限定はされないが、本発明の構成で自然に形成する水中油乳化形態が好ましい。
【0052】
また、本発明の乳化組成物は、界面活性剤、特にポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン付加型界面活性剤を実質的に含有しない。具体的には、これらのポリオキシエチレン付加型界面活性剤の総含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは全く含有しない形態が例示できる。このような形態をとることにより、かかる成分に起因する可能性のある刺激発現を抑制することができる。
【0053】
また、本発明の乳化組成物は、安定性を損ねない範囲において極力脂肪酸の含有量(さらには、高級アルコールと脂肪酸の含有量の総和)を低減したものであることから、安定性に好ましくない影響を与える因子は、例えば、1質量%以下の安定性に影響を与えない量に限るなど、なるべく量を限ることが好ましく、
【0054】
(9)乳化組成物の製造方法
本発明の乳化組成物は、上記必須成分及び任意成分を常法に従って処理することにより、製造することができる。
より好ましくは、まず水溶性の高分子多糖類の塩(A)と多価アルコール類(B)と水とを混合し(工程1)、次いでこれに油溶性の(C)高級脂肪酸類を含む油性成分を包含せしめ(工程2)、しかる後に残余の水性成分を包含せしめる(工程3)という工程を経て製造される。ここで、グリチルレチン酸誘導体等(D)として水溶性物質(グリチルリチン酸ジカリウム等)を用いる場合は、工程1において高分子多糖類の塩(A)と多価アルコール類(B)とともに水と混合する。グリチルレチン酸誘導体等(D)として油溶性物質(グリチルリチン酸ステアリル等)を用いる場合は、高級脂肪酸類(C)と予め混合した後、工程1で得られる混合物と混合するのが好ましい。
【0055】
工程1においては、高分子多糖類の塩(A)と多価アルコール類(B)と水溶性のグリチルレチン酸誘導体等(D)とを、適量の水と混合するのが望ましい。工程1における混合温度及び混合時間は特に限定されず、適宜調整することができる。混合方法は特に限定されず、液が均一になる程度に攪拌すればよい。
【0056】
工程2においては、工程1で得られる混合液に油性成分を配合する。油性成分としては、本発明の必須成分である(C)高級脂肪酸類と油溶性のグリチルレチン酸誘導体等(D)の他に、高級アルコール、スクワラン、パラフィン、シリコーン、エステル油等が挙げられる。工程2における混合温度及び混合時間は特に限定されず、適宜調整することができる。混合方法は、乳化状態を形成できる程度に攪拌すればよい。
【0057】
工程3においては、工程2で得られる混合液に残余の水性成分を配合する。水性成分としては、保湿剤、エキス(生薬、植物)キレート剤、防腐剤、バッファー、水溶性高分子等が挙げられる。工程3における混合温度及び混合時間は特に限定されず、適宜調整することができる。混合方法は特に限定されず、液が均一になる程度に攪拌すればよい。
【0058】
(10)化粧料
本発明の乳化組成物は、皮膚に外用に投与される組成物に好適に適用される。かかる組成物としては、皮膚外用医薬、化粧料(医薬部外品を含む)、皮膚外用雑貨などが好適に例示できる。これらの中で特に好ましいものは化粧料であり、中でも顔面皮膚に適用される乳液、クリーム、エッセンスなどの基礎化粧料に適用することが特に好ましい。
【実施例】
【0059】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示し、発明の内容を詳細に示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0060】
<実施例1〜6、比較例1〜3>
(1)乳化組成物の調製
表1に示す処方に従って、本発明の乳化組成物である化粧料(乳液;実施例1〜6)及び比較用乳化組成物(比較例1〜3)を作成した。すなわち、表1に示す(イ)、(ロ)、(ハ)の成分を、各々80℃で加熱、溶解・分散し、(イ)に撹拌下徐々に(ロ)を加え、しかる後に強撹拌下、このものに(ハ)を徐々に加えて乳化し、最後に(ニ)を加えて撹拌冷却して乳液を得た。
【0061】
【表1】

【0062】
(2)評価方法
白化の評価:
得られた各乳液について、使用時の白化の程度を計測、評価した。すなわち、美容師であるパネラー5名の前腕内側部を用い、前腕内側部全体を使用してサンプル0.1gを延展してもらい、延展開始より白化がおさまるまでの時間(平均時間、単位;分)を計測して評価した。評価結果を表2に示す。
【0063】
乳化状態の評価:
得られた各乳液について、乳化状態を粒度分布計(商品名「SALD−7000」;島津製作所製)で測定し、評価した。評価の基準は以下の通りである。乳化粒子が大きいほど乳化状態が悪く、乳化粒子が小さく微細粒子であるほど乳化状態がよい。評価結果を表2に示す。
1:乳化粒子が0.1μm未満(乳化状態良好)
2:乳化粒子が0.1〜1μm
3:乳化粒子が1〜10μm
4:乳化粒子が10〜100μm
5:乳化粒子が100μm超(乳化状態不良)
【0064】
安定性の評価:
得られた各乳液を40℃の保存試験に供し、2ヶ月後に水分の分離(透明相の存在)及びクリーミング(凝集)の有無を目視で観察した。水分の分離が認められるものは安定性が悪く、水分の分離が認められず均一なものは安定性が良好である。評価結果を表2に示す。
1:水分の分離とクリーミングが認められる。
2:水分の分離とややクリーミングが認められる。
3:水分の分離が認められる。
4:やや水分の分離が認められる。
5:水分の分離が認められず均一である。
【0065】
皮膚刺激性の評価:
得られた各乳液を、被験者10名(女性;平均年齢=28才)が皮膚(部位;顔面、面積;約200cm2)に塗布し、20分時間経過後に自覚される刺激(ヒリヒリ感、かゆみ等)の程度を調査し、以下の基準で評価した。評価結果を表2に示す。なお、表2中の人数は下記評価基準中の(±)又は(+)に相当する自覚症状の発生人数を表し、人数がゼロ(0)とあるのは(±)又は(+)に相当する自覚症状を訴える人がいなかったことを表す。
−:刺激を全く感じない。
±:刺激を僅かに感じる。
+:刺激を強く感じる。
【0066】
【表2】

【0067】
(3)結果
比較例1は実施例1においてグリチルレチン酸誘導体等を用いなかった実験例であるが、補助活性剤として働くグリチルレチン酸誘導体等を用いない場合は乳化状態及び安定性が悪く、乳化力が劣ることが分かる。
比較例2はアルギン酸ナトリウム(高分子多糖類塩)の含有量が多すぎ、一方ベヘン酸(高級脂肪酸)の含有量が少なすぎるため、高分子多糖類塩と高級脂肪酸類との相互作用が十分に得られず、良好な乳化状態が得られない。
比較例3はアルギン酸ナトリウム(高分子多糖類塩)とベヘン酸(高級脂肪酸)の含有量が共に多すぎる。高級脂肪酸を増量することで比較例2に比べれば乳化状態は改善されるが、皮膚刺激性が高くなり使用感が低下する。また、安定性の面からもこれらの成分を高濃度で使用することは好ましくないため、より安定で且つ皮膚刺激性の低い良好な乳化物を得るためにはグリチルレチン酸誘導体等からなる補助活性剤を用いる必要があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の乳化組成物は、ポリオキシエチレン付加型の界面活性剤を実質的に含有せず、また高級脂肪酸の含有量も低いので、皮膚刺激性が低く安全性が高い。また、従来の低刺激性乳化組成物と比べて白化がなく延びも良いため、使用感に優れている。さらに、安定な乳化状態を容易に形成できることから、乳化に必要な機械力を小さくすることができ、生産性が良好である。よって、敏感肌の人が増加する傾向にある現代社会において有用な化粧料や皮膚外用剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルギン酸、ヒアルロン酸、及びキサンタンガムからなる群から選択される1種以上の高分子多糖類の塩;0.1〜0.5質量%、(B)グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール及びマルチトールからなる群から選択される1種以上の多価アルコール類;5〜15質量%、(C)高級脂肪酸類;0.01〜0.5質量%、及び(D)グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、及びそれらの誘導体並びに塩からなる群から選ばれる一種以上;0.05〜1質量%を含有してなる乳化組成物。
【請求項2】
さらに、(E)直鎖飽和の高級アルコールを1.5〜3質量%含有することを特徴とする、請求項1記載の乳化組成物。
【請求項3】
さらに、(F)1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール及びジプロピレングリコールからなる群から選択される1種以上のジオール類を含有し、且つ該ジオール類の含有量が前記多価アルコール類の含有量以下であることを特徴とする、請求項1又は記載の乳化組成物。
【請求項4】
さらに、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸及び/またはその塩、並びに微粒子セルロースゲルからなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項5】
ポリオキシエチレン付加型の界面活性剤の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の乳化組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の乳化組成物を含有してなる化粧料。

【公開番号】特開2008−137955(P2008−137955A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326393(P2006−326393)
【出願日】平成18年12月3日(2006.12.3)
【出願人】(504401994)株式会社セプテム総研 (11)
【Fターム(参考)】