説明

乳化組成物

【課題】塗布膜が柔軟性及び弾性を有し、肌を均一に覆うことができ、水分保持能が高く、肌感触が滑らかで、見た目も滑らかにする乳化組成物の製造方法の提供。
【解決手段】具体例として、(A)モノベヘン酸グリセリル又はモノセチルグリセリルエーテル0.001〜10質量%、(B)セタノール又はステアリルアルコール0.001〜10質量%、(C)セラミド類0.001〜15質量%、(D)ステアロイルグルタミン酸塩、ステアロイルメチルタウリン塩又はポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸塩0.00025〜10質量%、(E)(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、ラウレス−13PGヒドロキシエチルセルロース又はステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Na 0.001〜6質量%、(F)水、を含有する乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の最外層の角層には、角層細胞とその間隙を埋める細胞間脂質が存在する。その大半は、α−ゲル構造をとっており、皮膚に対して、外部からの物質の侵入、内部からの水分蒸散を抑制すると同時に、そのもの自身が水分を保持することで、皮膚の柔軟性やなめらかな外観を保つ機能を有している。
一般に、細胞間脂質、特にセラミドの減少により、好ましくない肌状態が引き起こされることが知られており、セラミドを外用で補うことは、肌の機能低下の改善につながると考えられている。
【0003】
しかしながら、セラミドは、高融点で結晶性が高く、外用剤等に配合することが困難であるため、安定に配合することが種々検討されている。
例えば、特許文献1には、セラミド類と、グリセリンモノ脂肪酸エステル、高級アルコールを特定の割合で組み合わせた乳化組成物が、セラミドの結晶析出が抑えられ、水分を保持しやすいα−ゲル構造を形成し、保湿効果が高いことが記載されている。
また、特定の糖アルコール又は2単糖若しくは3単糖を更に組み合わせることにより、α−ゲルの水分保持能をより高めることができ、水分を長時間皮膚に残留させ、皮膚の状態を改善することも検討されている(特許文献2、特許文献3)。
【0004】
しかしながら、これらの組成物はα−ゲル構造を形成するものの、低粘度で皮膚に塗布しづらいため、保湿効果を有する皮膜が形成しても、その皮膜は脆く、均一に肌を覆うことができず、十分な水分保持能を発揮しにくいものであった。
また、皮膜が柔軟性及び弾性に欠けるため、塗布後の肌には特有のきしみ感・ざらつき感があり、良好な使用感触が得られない。更に、塗布後の見た目の滑らかさに欠け、肌の外観向上効果が得られないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−22997号公報
【特許文献2】特開2011−32265号公報
【特許文献3】特開2011−32266号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、塗布膜が柔軟性及び弾性を有し、肌を均一に覆うことができ、水分保持能が高く、肌感触が滑らかで、見た目も滑らかにすることができる乳化組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、水分保持能が高まる設計のα−ゲルに対し、特定の水溶性高分子を組み合わせることにより、高粘度で弾性的な液性が得られ、塗布膜が柔軟性及び弾性を有するため、肌を均一に覆うことができ、水分保持能を高め、肌感触が滑らかで、見た目も滑らかにすることができる乳化組成物が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(F1):
(A)次の一般式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Z1は、グリセリン、ソルビタン、ソルビトール又はショ糖残基で2個以上のヒドロキシル基を有する構造を示し、Y1は、エステル結合基又はエーテル結合基を示し、Rは、炭素数14〜22の炭化水素基を示し、nは1〜4の数を示す)
で表される化合物 0.001〜10質量%、
(B)炭素数14〜22の高級アルコール及びステロール類から選ばれる1種以上の化合物 0.001〜10質量%、
(C)一般式(2):
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基若しくはアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示し;Zはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Zがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R4はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、主鎖にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有していてもよい炭素数5〜60の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;R5は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい、総炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)で表される化合物 0.001〜15質量%、
(D)アニオン界面活性剤 0.00025〜10質量%、
(F1)水を含む水相I
を混合して乳化し、冷却する工程1の後に、
(E)アルキル変性ポリアクリル酸系ビニルポリマー及びアルキル変性多糖類系ポリマー
から選ばれる水溶性高分子 0.001〜6質量%、及び
(F2)水を含む水相IIをさらに混合する工程2
を備える乳化組成物の製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)モノベヘン酸グリセリル又はモノセチルグリセリルエーテル 0.001〜10質量%、
(B)セタノール又はステアリルアルコール 0.001〜10質量%、
(C)一般式(3)又は一般式(4)で表されるセラミド類 0.001〜15質量%、
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R11はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Z1はメチレン基又はメチン基を示し;X5、X6、及びX7は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し;X8は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Z1がメチン基のとき、X5とX6のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X8がオキソ基を形成するとき、X7は存在しない。);R12はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R13は水素原子を示すか、炭素数1〜4のアルキル基を示し;R14はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数5〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該アルキル基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、R15は、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し;X9は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;R16はヒドロキシル基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;R17は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基を示す。)
(D)ステアロイルグルタミン酸塩、ステアロイルメチルタウリン塩又はポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸塩 0.00025〜10質量%、
(E)(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、ラウレス−13PGヒドロキシエチルセルロース又はステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Na 0.001〜6質量%、
(F)水
を含有する乳化組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の乳化組成物は、高粘度で弾性的な液性が得られ、塗布膜が柔軟性及び弾性を有するため、肌を均一に覆うことができ、水分保持能が高く、肌感触が滑らかで、見た目も滑らかにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明で用いる成分(A)は、前記一般式(1)で表されるものである。
式中、Rで示される炭素数14〜22の炭化水素基としては、直鎖炭化水素基が好ましく、例えば、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の直鎖アルキル基;パルミトイル基、オレイル基等が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、ソルビトールモノ脂肪酸エステル、ソルビトールジ脂肪酸エステル、ショ糖モノ脂肪酸エステル、グリセリンモノアルキルエーテル等が挙げられる。
【0020】
成分(A)としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノアルキルエーテルが好ましい。中でも、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、モノセチルグリセリルエーテル、モノステアリルグリセリルエーテルが好ましく、更に、後述するラメラ状の皮膜の形成性、保水性が向上する観点から、モノベヘン酸グリセリル又はモノセチルグリセリルエーテルがより好ましい。
【0021】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.001〜10質量%含有され、好ましくは0.05〜7質量%、更に好ましくは、0.25〜3質量%含有される。この範囲内であれば、本発明の乳化組成物を皮膚に塗布後、乾燥過程で皮膚表面に後述する成分(B)〜(E)が構成する脂質層と水分層が交互に並ぶラメラ状皮膜を形成することができる。この結果、層間に水分を保持できるため水分保持能が高まるので好ましい。更に塗布膜の使用感触も良くなるので好ましい。
【0022】
本発明で用いる成分(B)のうち、高級アルコールは、炭素数14〜22、好ましくは炭素数16〜18のものである。例えば、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
これらのうち、セタノール、ステアリルアルコールが好ましく、更にセタノールが好ましい。
【0023】
また、成分(B)のうち、ステロール類としては、コレステロール、フィトステロールが挙げられる。フィトステロールは、β−シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール等の植物ステロールの総称であり、その組成は限定されるものではない。
【0024】
成分(B)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.001〜10質量%含有され、好ましくは0.05〜7質量%、更に好ましくは0.1〜3質量%含有される。この範囲内であれば、本発明の乳化組成物を皮膚に塗布後、乾燥過程で皮膚表面に前述の成分(A)及び、後述する成分(C)〜(E)が構成する脂質層と水分層が交互に並ぶラメラ状皮膜を形成することができる。この結果、層間に水分を保持できるため水分閉塞性が高まるので好ましい。更に塗布後の肌の外観も向上するので好ましい。
【0025】
本発明で用いる成分(C)のセラミド類は、前記一般式(2)で表わされるものである。
【0026】
式中、R1は、ヒドロキシル基、カルボニル基若しくはアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の、好ましくはヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子である。
Zはメチレン基、メチン基又は酸素原子のいずれかを示す。
【0027】
1、X2及びX3は、各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示す。X1、X2及びX3のうち0〜1個がヒドロキシル基で、残余が水素原子であるのが好ましい。Zがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方のみが水素原子であり、他方は存在しない。また、X4は水素原子かグリセリル基であるのが好ましい。
2及びR3は、水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し、好ましいR2は水素原子又はヒドロキシメチル基であり、好ましいR3は水素原子である。
【0028】
4は、ヒドロキシル基、カルボキシ基又はアミノ基が置換していてもよい、主鎖にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有していてもよい炭素数5〜60の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。好ましくは、ヒドロキシル基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜35の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基、又は該炭化水素基のω位に、ヒドロキシル基が置換してもよい炭素数8〜22の直鎖、分岐又は環状の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合又はアミド結合したものが挙げられる。結合する脂肪酸としては、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸又はリノール酸が好ましい。
【0029】
5は、水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基である。R1が水素原子、Zが酸素原子のときR5は総炭素数10〜30の炭化水素基である。また、R1が炭化水素基のときR5は総炭素数1〜8の炭化水素基である。これらのうち、水素原子あるいは、ヒドロキシル基及びヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換していてもよい総炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。ここで、ヒドロキシアルコキシ基及びアルコキシ基としては炭素数1〜7のものが好ましい。
【0030】
一般式(2)で表わされる化合物としては、次の一般式(3)又は(4)で表わされるセラミド類が好ましい。
(I)一般式(3)で表わされる化合物は、天然由来のセラミド類又は同構造の合成物であっても良い。
【0031】
【化5】

【0032】
(式中、R11はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Z1はメチレン基又はメチン基を示し;X5、X6、及びX7は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し;X8は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Z1がメチン基のとき、X5とX6のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X8がオキソ基を形成するとき、X7は存在しない。);R12はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R13は水素原子を示すか、炭素数1〜4のアルキル基を示し;R14はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数5〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該アルキル基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。)
【0033】
好ましくは、R11が炭素数7〜19、更に好ましくは炭素数13〜15の直鎖アルキル基;R14がヒドロキシル基が置換しても良い炭素数9〜27の直鎖アルキル基又はリノール酸がエステル結合した炭素数9〜27の直鎖アルキル基である化合物が挙げられる。また、X8は水素原子を示すか、酸素原子とともにオキソ基を形成するのが好ましい。更に、R14としては、トリコシル、1−ヒドロキシペンタデシル、1−ヒドロキシトリコシル、ヘプタデシル、1−ヒドロキシウンデシル、ω位にリノール酸がエステル結合したノナコシル基が好ましい。
【0034】
天然型セラミドの具体的な例示として、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン又はスフィンガジエニンがアミド化されたセラミドType1〜7(例えば、J. Lipid Res., 24:759(1983)の図2、及びJ. Lipid. Res.,35:2069(1994)の図4記載のブタ及びヒトのセラミド類)が挙げられる。
【0035】
更にこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)も含まれる。
これらのセラミドは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでも良く、また、これらの混合物によるものでもよい。これらのうち、CERAMIDE1、CERAMIDE2、CERAMIDE3、CERAMIDE5、CERAMIDE6IIの化合物(以上、INCI、8th Edition)及び次式で表わされるものが好ましい。
【0036】
【化6】

【0037】
これらは天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。
このような天然型セラミドの市販のものとしては、Ceramide I、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、コスモファーム社)、Ceramide TIC-001(高砂香料社)、CERAMIDE II(Quest International社)、DS-Ceramide VI、DS-CLA-Phytoceramide、C6-Phytoceramide、DS-ceramide Y3S(DOOSAN社)、CERAMIDE2(セダーマ社)が挙げられる。
【0038】
【化7】

【0039】
(II)一般式(4)で表わされる擬似型セラミド。
【0040】
【化8】

【0041】
(式中、R15は、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し;X9は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;R16はヒドロキシル基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;R17は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基を示す。)
【0042】
16としては、ノニル、トリデシル、ペンタデシル、ω位にリノール酸がエステル結合したウンデシル基、ω位にリノール酸がエステル結合したペンタデシル基、ω位に12−ヒドロキシステアリン酸がエステル結合したペンタデシル基、ω位にメチル分岐イソステアリン酸がアミド結合したウンデシル基が好ましい。
【0043】
17は、R15が水素原子の場合は、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数10〜30の、好ましくは総炭素数12〜20のアルキル基であり、R15がヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基である場合には、水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜8のアルキル基を示すものが好ましい。R17のヒドロキシアルコキシ基又はアルコキシ基としては炭素数1〜7のものが好ましい。
【0044】
【化9】

【0045】
一般式(4)としては、R15がヘキサデシル基、X9が水素原子、R16がペンタデシル基、R17がヒドロキシエチル基のもの;R15がヘキサデシル基、X9が水素原子、R16がノニル基、R17がヒドロキシエチル基のもの;又はR15がヘキサデシル基、X9がグリセリル基、R16がトリデシル基、R17が3−メトキシプロピル基の擬似型セラミド類が好ましく、一般式(4)のR15がヘキサデシル基、X9が水素原子、R16がペンタデシル基、R17がヒドロキシエチル基のもの(N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)が、更に好ましい。
【0046】
【化10】

【0047】
成分(C)の化合物は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.001〜15質量%含有され、好ましくは0.05〜7質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%含有される。この範囲内であれば、本発明の乳化組成物を皮膚に塗布後、乾燥過程で皮膚表面に前述の成分(A)、(B)及び、後述する成分(D)〜(E)が構成する脂質層と水分層が交互に並ぶラメラ状皮膜を形成することができる。この結果、層間に水分を保持できる。なお、本件発明の乳化組成物中及び、塗布乾燥後形成されるラメラ状の皮膜中において、成分(C)は結晶化することがない。この結果、成分(C)は皮膚に高浸透させることが出来るので好ましい。更に、塗布後の肌の外観向上・使用感触向上につながるので好ましい。
【0048】
本発明で用いる成分(D)のアニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸アルギニン等の炭素数12〜24の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム等の脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩;N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸アルギニン、N−ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩などが挙げられる。
【0049】
これらのうち、炭素数12〜24の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸アミドスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、長鎖N−アシルグルタミン酸塩が好ましい。
中でも、ステアロイルグルタミン酸塩、ステアロイルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸塩が好ましく、ステアロイルグルタミン酸塩、ステアロイルメチルタウリン塩がより好ましく、更に、ステアロイルグルタミン酸塩が好ましい。
成分(D)の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、塩基性アミノ酸塩、アンモニウムから選ばれる1種以上が好ましく、乳化組成物の粘度の発現の観点からナトリウム塩、アルギニン塩から選ばれる1種以上が好ましい。
【0050】
成分(D)は酸として配合し、塩基によって中和して塩として含有されることもできる。この場合の成分(D)を中和する塩基は、塩基性アミノ酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、水酸化カルシウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。成分(D)を中和する塩基としては、乳化組成物の粘度の発現の観点からアルギニン、水酸化ナトリウムから選ばれる1種又は2種が好ましく、使用感等の点からアルギニンがより好ましい。
【0051】
成分(D)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.00025〜10質量%含有され、好ましくは0.05〜2質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%含有される。この範囲内であれば、成分(A)〜(C)を乳化することができる。更に、本発明の乳化組成物を皮膚に塗布後、乾燥過程で皮膚表面に成分(A)〜(D)及び成分(E)とで構成する脂質層と水分層が交互に並ぶラメラ状皮膜を形成することができる。この結果、層間に水分を保持でき、水分保持能向上に役立つので好ましい。
【0052】
本発明で用いる成分(E)は、アルキル変性ポリアクリル酸系ポリマー及びアルキル変性多糖類系ポリマーから選ばれる水溶性高分子である。
例えば、アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレンステアリルエーテル共重合体、多糖誘導体等が挙げられる。
より具体的には、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、ラウレス−13PGヒドロキシエチルセルロース、ステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Na等が好ましい。
市販品としては、例えば、アクリル酸アルキル重合体として、アキュリン33(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー)、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体として、ペムレンTR−1、ペムレンTR−2、カーボポールETD2020(以上、Lubrizol Advanced Materials, Inc.)等が挙げられる。また、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレンステアリルエーテル共重合体としては、アキュリン22(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー)等が挙げられる。多糖誘導体としては、SPS−S−SA、ソフケアEP−S(以上、花王社)、Natrosol Plus(Hercules-Aqualon)等が挙げられる。
【0053】
成分(E)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.001〜6質量%含有され、好ましくは0.05〜5質量%、更に好ましくは0.1〜3質量%含有される。この範囲内であれば、本発明の乳化組成物の保存安定性を向上させることができる。更に、成分(A)〜(D)で構成される脂質混合物の結晶化を抑制することがでる。この結果、本発明の乳化組成物を塗布後、乾燥過程で皮膚表面に形成されるラメラ状の皮膜に柔軟性を付与することができる。この結果、水分保持能/使用感触向上/塗布後の肌の外観向上に役立つので好ましい。
【0054】
本発明において、成分(F)の水は、各成分の残部をなし、全組成中に49〜85質量%、更に55〜80質量%含有されるのが好ましい。
【0055】
本発明においては、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量割合が、(E)/((A)+(B)+(C))=0.0025〜50、更に0.01〜3、特に0.1〜1.5であるのが、高粘度で弾性的な液性が得られる点で好ましい。この結果、皮膚に塗布した際、高い塗布感を感じさせ、良好な使用感を付与することができる。
また、(E)/(D)=0.025〜100、更に0.14〜7.5、特に1.2〜6であるのが、柔軟性及び弾性を有する被膜を得るために好ましい。
【0056】
本発明においては、前記成分のそれぞれの好ましい成分、及び好ましい含有量を組み合わせるのが、より好ましい。
【0057】
更に、本発明の乳化組成物においては、
成分(A)がモノベヘン酸グリセリル又はモノセチルグリセリルエーテル、
成分(B)がセタノール又はステアリルアルコール、
成分(C)が一般式(1)で表される化合物、
成分(D)がステアロイルグルタミン酸塩、ステアロイルメチルタウリン塩又はポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸塩、
成分(E)が(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、ラウレス−13PGヒドロキシエチルセルロース又はステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Na、
成分(F)が水であるのが好ましい。
【0058】
更に、本発明の乳化組成物においては、
成分(A)がモノベヘン酸グリセリル、
成分(B)がセタノール、
成分(C)が一般式(1)で表される化合物、
成分(D)がステアロイルグルタミン酸塩、
成分(E)が(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、ラウレス−13PGヒドロキシエチルセルロース又はステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Na、
成分(F)が水であるのが好ましい。
【0059】
本発明においては、成分(A)〜(D)で、乳化物の脂質を形成する。これらは、乾燥すると、結晶化が起こり、硬くもろい皮膜を形成し、保湿性の高い皮膜は得られない。しかし、更に成分(E)を含有することにより、脂質の結晶化が抑制され、水分を多量に含有し、脂質層と水層とが交互に並ぶラメラ状の柔軟な皮膜が形成されることがわかった。特に、成分(B)にセタノールを使用すると皮膜の柔軟性が増し、肌の見た目及び感触の滑らかさが向上する。さらに、皮膚塗布剤の製造のための本発明の乳化組成物の使用、皮膚の水分保持剤の製造のための本発明の乳化組成物の使用、及び皮膚への塗布膜形成剤の製造のための本発明の乳化組成物の使用を提供することができる。
【0060】
本発明の乳化組成物は、更に、成分(B)及び(C)以外の油性成分を含有することができる。例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素油;セチルジメチルブチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油;ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリオクタノイン等のエステル油;ステアリン酸、ベヘン酸、イソミリスチン酸等の高級脂肪酸;オリーブ油等の植物油;ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油;パーフルオロアルキルエチルリン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンリン酸、パーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系油などが挙げられる。これらの油性成分は、全組成中に0〜20質量%含有されるのが好ましい。
【0061】
また、本発明の乳化組成物は、通常の化粧料に用いられる有効成分や添加剤、例えば、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸等の水溶性ビタミン類;オウバクエキス、カンゾウエキス、アロエエキス、スギナエキス、茶エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、ハマメリス抽出液、プラセンタエキス、海藻エキス、マロニエエキス、ユズエキス、アスナロエキス、ローヤルゼリーエキス、ユーカリエキス、アスナロ抽出液等の動・植物抽出液;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム等の塩基;クエン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、コハク酸、アジピン酸等の酸などを含有することもできる。
【0062】
本発明の乳化組成物の製造方法は、成分(A)〜(D)及び成分(F)の一部(F1)を含む水相Iを混合して乳化し、冷却する工程1の後、成分(E)及び成分(F)の残部(F2)を含む水相成分(水相II)を更に混合する工程を備えることが好ましい。この方法によれば、α−ゲル構造を形成させた後にポリマーを相互作用させることで、広い温度範囲において、安定性に優れた乳化物が得られるので好ましい。
【0063】
工程1は、α−ゲル構造を形成させる工程であって、以下の工程1A、1B、1C及び1Dの4つの製造工程から選ばれる工程が好ましい。製造性の点からは、未中和の成分(D)を塩基により中和する工程を備える工程1A及び工程1Cから選ばれる工程が好ましく、粘度発現の観点からは、油相に成分(D)を混合する工程1A及び工程1Bから選ばれる工程が好ましい。以上のように、工程1は、工程1A、工程1B及び工程1Cから選ばれる工程を備えることが好ましく、工程1A又は工程1Bを備えることがより好ましく、工程1Aを備えることがさらに好ましい。
【0064】
工程1A:成分(A)、(B)、(C)及び未中和の成分(D)を含む油相の混合成分を得る工程と、当該油相に成分(F)の一部(F1)及び塩基を含む水相Iを混合して乳化し、冷却する工程を備
える工程。
工程1B:成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)の塩を含む油相の混合成分を得る工程と、当該油相に成分(F)の一部(F1)を含む水相Iを混合して乳化し、冷却する工程を備える工程。
工程1C:成分(A)、(B)及び(C)を含む油相の混合成分を得る工程と、当該油相に未中和の成分(D)、成分(F)の一部(F1)及び塩基を含む水相Iを混合して乳化し、冷却する工程。
工程1D:成分(A)、(B)及び(C)を含む油相の混合成分を得る工程と、当該油相に成分(D)の塩及び成分(F)の一部(F1)を含む水相Iを混合して乳化し、冷却する工程を備える工程。
【0065】
これらの方法においては、成分(F)の水を、(F1)と(F2)に分けて添加・混合するが、その質量割合は、(F1)/(F2)=0.1〜9、更に0.25〜4であるのが好ましい。
【0066】
得られる乳化組成物は、α−ゲル(α型結晶)であり、結晶(γ型結晶)の析出が抑制される。α−ゲルは、X線による構造解析により、確認することができる。α型構造は六方晶系のことであり、親油基が親水基層の面に対して直角に配向しており、Bragg角21〜23°付近に鋭い一本の回折ピークが現れるのが特徴である。
【0067】
また、乳化組成物は、25℃における粘度が10〜8000dPa・s、500〜1500dPa・sであるのがより好ましく、更に1500〜5000dPa・sであるのが好ましい。本発明の乳化組成物は、前記成分を組み合わせることにより、このように高粘度で弾性的な液性として得ることができる。
なお、本発明において、粘度は、25℃において、B8R型回転粘度計(ロータC又はD、5r/min、1分間測定)により、測定したものである。
【0068】
また、得られる乳化組成物は、水中油型乳化組成物であり、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の化粧料や、皮膚外用剤として好適である。上述した実施の形態に関し、本発明は、さらに以下の乳化組成物の使用方法、用途を開示する。
【0069】
皮膚への塗布膜形成剤の製造のための、成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)を含有する乳化組成物の使用。
皮膚外用剤の製造のための、成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)を含有する乳化組成物の使用。
成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)を含有する、皮膚への塗布膜形成用水中油型乳化組成物。
【実施例】
【0070】
実施例1〜10及び比較例1〜7
表1及び表2に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、粘度及び残存水分量の測定を行うとともに、皮膜について、SAXSによるラメラ構造の確認及びSEMによる表面状態の観察を行った。また、潤いの持続性、塗布後の肌の感触及び外観を官能評価した。結果を表1及び表2に併せて示す。
【0071】
(製造方法)
第I相の成分を、80〜90℃で加熱混合し、これに、プロペラ攪拌下(300rpm)、80〜90℃に加熱した第II相の成分を加え、ホモミキサーにて7000rpm、10分間の条件でせん断を加えながら乳化し、α−ゲルを形成させた。25℃まで徐々に冷却した後、第III相の成分を加え、水中油型乳化組成物を得た。
【0072】
(評価方法)
(1)粘度:
25℃において、B8R型回転粘度計(ロータC又はD、5r/min、1分間測定)により、測定した。
【0073】
(2)残存水分量:
6×6cmの金属トレーに、水中油型乳化組成物1gを一定厚みで均一に広げ、20℃、湿度40%の恒温恒湿下で、質量変化を時間に対してプロットする。経時でラメラ皮膜が形成することにより、その後質量変化が極めて小さくなる。質量が一定になった24時間後の残存水分量を求め、製剤中の固形分に対する水分量を、以下の式で求めた。固形分には、成分(A)〜(E)全ての成分を含む。
【0074】
【数1】

【0075】
(3)SAXSによるラメラ構造の確認:
人工皮革サプラーレ(登録商標)に、水中油型乳化組成物を0.001g/cm2で均一に伸ばして1日乾燥させた後、皮膜表面の状態を、Nano-viewer、λCuKα=1.54Å、30分照射、カメラ長649.5mm、2θ=0.2〜5°の範囲で測定した。
【0076】
(4)SEMによる皮膜の表面状態の観察:
人工皮革サプラーレ(登録商標)に、水中油型乳化組成物を0.001g/cm2で均一に伸ばして1日乾燥させた後、皮膜表面の状態を、SEM(走査型電子顕微鏡)により、倍率50倍で観察した。結果を以下の基準で示した。
○;皮丘・皮溝の境界部分が滑らか。
△;皮丘・皮溝の境界部分がめくれ上がっている。
×;皮膜を形成していない。
【0077】
(5)潤いの持続性、塗布後の肌の感触(滑らかさ)及び外観(見た目の滑らかさ):
12名の専門パネラーが、各水中油型乳化組成物0.4〜0.6gを顔に塗布した直後の「肌の感触の滑らかさ」及び「肌の見た目の滑らかさ」、更に塗布10時間経過後の「潤いの持続性」を官能評価した。結果を、「良好である」と評価したパネラーの人数で示した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
実施例11〜29及び比較例8〜9
実施例1〜10と同様にして、表3〜表6に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、粘度及び残存水分量の測定を行うとともに、皮膜について、SAXSによるラメラ構造の確認及びSEMによる表面状態の観察を行った。また、潤いの持続性、塗布後の肌の感触及び外観を評価した。結果を表3〜表6に併せて示す。
【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
【表5】

【0084】
【表6】

【0085】
実施例1、30〜32
実施例1〜10と同様にして、表7に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、粘度及び残存水分量の測定を行うとともに、皮膜について、SAXSによるラメラ構造の確認及びSEMによる表面状態の観察を行った。また、潤いの持続性、塗布後の肌の感触及び外観を評価した。結果を表7に併せて示す。
【0086】
【表7】

【0087】
実施例1、30は、製造工程1A、実施例31は製造工程1C、実施例32は製造工程1Dにより製造した。油相に未中和の成分(D)を配合して製造工程1Aにより製造した実施例1及び実施例30は、塗布後の肌感触の滑らかさの評価が高く、セラミドの結晶析出が抑制されラメラ構造が確認され、保湿効果が高い結果が得られ、高い粘度が得られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(F1):
(A)次の一般式(1)
【化1】

(式中、Z1は、グリセリン、ソルビタン、ソルビトール又はショ糖残基で2個以上のヒドロキシル基を有する構造を示し、Y1は、エステル結合基又はエーテル結合基を示し、Rは、炭素数14〜22の炭化水素基を示し、nは1〜4の数を示す)
で表される化合物 0.001〜10質量%、
(B)炭素数14〜22の高級アルコール及びステロール類から選ばれる1種以上の化合物 0.001〜10質量%、
(C)一般式(2):
【化2】

(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基若しくはアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示し;Zはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Zがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R4はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、主鎖にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有していてもよい炭素数5〜60の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;R5は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい、総炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)で表される化合物 0.001〜15質量%、
(D)アニオン界面活性剤 0.00025〜10質量%、
(F1)水を含む水相I
を混合して乳化し、冷却する工程1の後に、
(E)アルキル変性ポリアクリル酸系ビニルポリマー及びアルキル変性多糖類系ポリマーから選ばれる水溶性高分子 0.001〜6質量%、及び
(F2)水を含む水相IIをさらに混合する工程2
を備える乳化組成物の製造方法。
【請求項2】
工程1が、成分(A)、(B)、(C)及び未中和の成分(D)を含む油相の混合成分を得る工程と、当該油相に(F1)及び塩基を含む水相Iを混合して乳化し、冷却する工程を備える工程1A、
又は成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)の塩を含む油相の混合成分を得る工程と、当該油相に(F1)を含む水相Iを混合して乳化し、冷却する工程を備える工程1Bである請求項1記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項3】
工程1が、成分(A)、(B)及び(C)を含む油相の混合成分を得る工程と、当該油相に未中和の成分(D)、(F1)及び塩基を含む水相Iを混合して乳化し、冷却する工程1C、又は成分(A)、(B)及び(C)を含む油相の混合成分を得る工程と、当該油相に成分(D)の塩及び(F1)を含む水相Iを混合して乳化し、冷却する工程を備える工程1Dである請求項1記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項4】
成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量割合が、(E)/((A)+(B)+(C))=0.0025〜50で、かつ(E)/(D)=0.025〜100である請求項1〜3のいずれか1項記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項5】
成分(A)が、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、ソルビトールモノ脂肪酸エステル、ソルビトールジ脂肪酸エステル、ショ糖モノ脂肪酸エステル及びグリセリンモノアルキルエーテルから選ばれる1種以上の化合物である請求項1〜4のいずれか1項記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項6】
成分(D)が、炭素数12〜24の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、脂肪酸アミドスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩及び長鎖N−アシルグルタミン酸塩から選ばれるものである請求項1〜5のいずれか1項記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項7】
α−ゲル構造を形成する請求項1〜6のいずれか1項記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項8】
乳化組成物の25℃における粘度が10〜8000dPasである請求項1〜7のいずれか1項記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項9】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)モノベヘン酸グリセリル又はモノセチルグリセリルエーテル 0.001〜10質量%、
(B)セタノール又はステアリルアルコール 0.001〜10質量%、
(C)一般式(2)で表されるセラミド類 0.001〜15質量%、
【化3】

(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基若しくはアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示し;Zはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Zがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R4はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、主鎖にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有していてもよい炭素数5〜60の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;R5は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい、総炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)
(D)ステアロイルグルタミン酸塩、ステアロイルメチルタウリン塩又はポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸塩 0.00025〜10質量%、
(E)(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、ラウレス−13PGヒドロキシエチルセルロース又はステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Na 0.001〜6質量%、
(F)水
を含有する乳化組成物。
【請求項10】
成分(A)がモノベヘン酸グリセリル、
成分(B)がセタノール、
成分(C)が一般式(3)又は一般式(4)で表されるセラミド類、
【化4】

(式中、R11はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Z1はメチレン基又はメチン基を示し;X5、X6、及びX7は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し;X8は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Z1がメチン基のとき、X5とX6のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X8がオキソ基を形成するとき、X7は存在しない。);R12はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R13は水素原子を示すか、炭素数1〜4のアルキル基を示し;R14はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数5〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該アルキル基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。)
【化5】

(式中、R15は、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し;X9は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;R16はヒドロキシル基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;R17は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基を示す。)
成分(D)がステアロイルグルタミン酸塩、
成分(E)が(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、ラウレス−13PGヒドロキシエチルセルロース又はステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Na、
成分(F)が水である請求項9記載の乳化組成物。
【請求項11】
成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の質量割合が、(E)/((A)+(B)+(C))=0.0025〜50で、かつ(E)/(D)=0.025〜100である請求項9又は10記載の乳化組成物。
【請求項12】
α−ゲル構造が形成されている請求項9〜11のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項13】
25℃における粘度が10〜8000dPasである請求項9〜12のいずれか1項記載の乳化組成物。

【公開番号】特開2012−214469(P2012−214469A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−82773(P2012−82773)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】