説明

乳化組成物

【課題】半固形状態で熱安定性に優れ、皮膚に塗布した際の使用感も良好である乳化組成物、皮膚外用剤及び鎮痛剤を提供する。
【解決手段】水、油性成分、親水性界面活性剤及びテルペンを含有する乳化組成物であって、前記水1重量部に対して、前記油性成分を0.2〜0.7重量部、前記油性成分1重量部に対して、前記親水性界面活性剤を0.37〜1.0重量部、前記テルペンを0.08〜0.45重量部含有することを特徴とする乳化組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物、皮膚外用剤及び鎮痛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通常では互いに交じり合わない水と油(脂)を安定に混合するために乳化技術が汎用され、安定な乳化組成物を得るために、水と油の界面張力を低下させる乳化剤などが使用されている。例えば、水中に油性成分を分散した水中油型乳化組成物は、乳化剤の作用によって水と油性成分を安定的に混合させたもので、高付加価値を有する製剤として医薬品、化粧品など、幅広く展開されている。
【0003】
しかし、このような乳化組成物は、本来安定的に混合させることが困難な水と油を共に含み、一般に熱力学的に不安定であることが知られているため、熱安定性の確保は大きな課題である。特に、乳化製剤を用途に応じて使用感や治療効果を発揮させる場合、その組成物の安定性の確保という問題が常に存在するため、乳化剤の種類、乳化組成物の製造時の加温条件や冷却条件など、種々の検討がなされている。
【0004】
また、肩こりや筋肉疲労などに対して、有効成分を含む軟膏、クリーム、ゲルなどを用いた場合、硬くて塗り込むことが困難である、皮膚刺激性がある、などの問題も存在するため、熱安定性が高いと同時に、そのような問題も生じない乳化組成物の提供が望まれている。
【0005】
特許文献1には、アトピー性皮膚炎治療薬として有効なエステル系ステロイド及びメントールなどを含有する皮膚外用剤組成物が開示されている。しかし、ここでは安定性が必要とされないクリームが示されているにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−184951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、半固形状態で熱安定性に優れ、皮膚に塗布した際の使用感も良好である乳化組成物、皮膚外用剤及び鎮痛剤を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水、油性成分、親水性界面活性剤及びテルペンを含有する乳化組成物であって、前記水1重量部に対して、前記油性成分を0.2〜0.7重量部、前記油性成分1重量部に対して、前記親水性界面活性剤を0.37〜1.0重量部、前記テルペンを0.08〜0.45重量部含有することを特徴とする乳化組成物に関する。
【0009】
前記乳化組成物において、前記油性成分は常温で液状であることが好ましい。また、前記油性成分は油性成分100重量%中に流動パラフィンを25重量%以上含有することが好ましい。更に、前記親水性界面活性剤は親水性界面活性剤100重量%中にHLB8〜13.5のポリオキシエチレンセチルエーテルを30重量%以上含有することが好ましい。
【0010】
前記乳化組成物において、前記テルペンはモノテルペンであることが好ましい。ここで、前記モノテルペンは環式モノテルペンであることが好ましい。また、前記乳化組成物は水中油型乳化組成物であることが好ましい。
【0011】
本発明は、前記乳化組成物からなる皮膚外用剤でもある。
本発明はまた、前記乳化組成物からなる鎮痛剤でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、水、油性成分、親水性界面活性剤及びテルペンを各々特定量含有する乳化組成物であるので、液状〜半固形状態で熱安定性に優れたものであり、また、皮膚に塗布した際の使用感も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の乳化組成物は、水、油性成分、親水性界面活性剤及びテルペンを各々特定量含有する。
【0014】
清涼剤や香気成分として使用できる化合物を、本質的に異なる用途の乳化安定化剤に適用すると、通常安定性を低下させる傾向がある。本発明では、このような化合物のうち、テルペンという特定化合物を使用し、かつ該テルペンと、水、油性成分、親水性界面活性剤とを特定量で配合しているため、熱安定性に非常に優れた乳化組成物(乳化製剤)を調製できる。
【0015】
このように、従来から乳化安定化剤の用途が知られておらず、むしろ不安定化するものとして知られていたテルペンが本発明のような特定配合の乳化組成物に限って安定化剤として機能するという知見は、従来の技術常識に反し、到底予想できない効果を奏するものである。更に、このようなテルペンを用いた特定配合を見出すことは非常に大きな困難性を伴うものである。
【0016】
本発明において使用できる水の例としては、精製水、蒸留水、滅菌水、生理食塩水、海洋深層水などが挙げられ、好ましくは精製水である。
【0017】
本発明において、油性成分(油相)は、上記乳化組成物(水中油型乳化組成物)の油滴(油相)を構成する成分である。例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品などで通常使用されるものとして、オリーブ油、小麦胚芽油、こめ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油などの植物油、ラード、魚油、スクワラン、蜜蝋等の動物油、流動パラフィン、ゲル化炭化水素、ワセリンなどの鉱物油、大豆レシチンなどのレシチン誘導体、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル類、ジメチルシリコーン、環状シリコーンなどのシリコーン類、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸類、エチニルエストラジオールなどのホルモン類、ウイキョウ油、チョウジ油、ハッカ油、ユーカリ油、レモン油などの精油類などが挙げられる。シリコンオイル、ワックス類なども挙げられる。
【0018】
また、他の油性成分としては、高級アルコールが挙げられる。高級アルコールとしては、炭素数6以上の脂肪族アルコールが挙げられる。具体的には、セタノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0019】
上記油性成分としては、乳化組成物の流動性確保の観点から、常温(25℃)で液状のものが好ましい。また、上記油性成分のなかでも、優れた熱安定性、流動性を持つ乳化組成物を調製できるという点から、植物油、動物油、鉱物油、脂肪酸エステルが好ましく、動物油、鉱物油、脂肪酸エステルがより好ましい。特に鉱物油として流動パラフィンを単独又は組み合わせて配合することが好ましい。更に、これらの成分とともに、上記高級アルコールを配合することが好ましい。油性成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明の乳化組成物において、油性成分の配合量は、熱安定性の観点から、水1重量部に対して0.2〜0.7重量部であり、好ましくは0.22〜0.50重量部、より好ましくは0.22〜0.45重量部である。
【0021】
また、本発明の乳化組成物では、油性成分100重量%中に流動パラフィンを25重量%以上含有することが好ましい。これにより、優れた熱安定性、流動性が得られる。より好ましくは27重量%以上、更に好ましくは29重量%以上である。一方、上限は特に限定されないが、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0022】
親水性界面活性剤は、HLBが8〜18.0のものが好ましく、8〜13.5のものがより好ましい。なお、HLBとは親水親油バランス(hydrophile−lipophile balance)の略称であり、界面活性剤が果たす効果を表す指標の一つとして知られ、HLB値が大きいほど親水性が高いことを示す。本発明においてHLBは、Daviesの式であるHLB=7+Σ(親水基の基数)−Σ(親油基の基数)によって算出した値をいう。また、2種以上の界面活性剤を含有する場合は加重平均値をいう。
【0023】
親水性界面活性剤としては、医薬品、医薬部外品、化粧品などで通常使用されるものであれば特に限定されないが、熱安定性及び流動性の観点から、ノニオン性の親水性界面活性剤が好ましい。ノニオン性の親水性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POE)付加タイプの界面活性剤が好適であり、例えば、POE(10〜50モル)フィトステロールエーテル、POE(10〜50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、POE(10〜50モル)2−オクチルドデシルエーテル、POE(10〜50モル)デシルテトラデシルエーテル、POE(10〜50モル)オレイルエーテル、POE(10〜50モル)セチルエーテル、POE(5〜30モル)ポリオキシプロピレン(5〜30モル)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(10〜50モル)ポリオキシプロピレン(2〜30モル)セチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;これらのリン酸・リン酸塩(POEセチルエーテルリン酸ナトリウムなど);POE(20〜60モル)ソルビタンモノオレート、POE(10〜60モル)ソルビタンモノイソステアレート、POE(10〜80モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜30モル)グリセリルモノステアレート、POE(20〜100)ヒマシ油、POE(20〜100)POE・ポリオキシプロピレン変性シリコーン、POE・アルキル変性シリコーン、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジリシノレイン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0024】
なかでも、熱安定性の点から、ポリオキシエチレンセチルエーテル、これとモノ(ジ)ステアリン酸ポリエチレングリコールの混合物、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルを1種以上配合することが好ましく、これらの化合物のHLBが8〜13.5のものがより好ましく、HLBが8〜13.5のポリオキシエチレンセチルエーテルが特に好ましい。親水性界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の乳化組成物において、親水性界面活性剤の配合量は、熱安定性の観点から、油性成分1重量部に対して0.37〜1.0重量部であり、好ましくは0.39〜0.91重量部、より好ましくは0.42〜0.75重量部である。
【0026】
また、本発明の乳化組成物では、親水性界面活性剤100重量%中にHLB8〜13.5のポリオキシエチレンセチルエーテルを30重量%以上含有することが好ましい。これにより、優れた熱安定性、流動性が得られる。より好ましくは33重量%以上である。一方、上限は特に限定されないが、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0027】
テルペン(非環式化合物、環式化合物(単環式、二環式などの多環式)としては、モノテルペン、ヘミテルペン、セスキテルペンなどがあり、具体的には、テルペン系炭化水素、テルペン系アルコール、テルペン系アルデヒド、テルペン系ケトンなどが挙げられる。
【0028】
テルペン系炭化水素としては、リモネン、ピネン、カンフルなどのモノテルペン系炭化水素、リシチンなどのセスキテルペン系炭化水素が挙げられる。テルペン系アルコールとしては、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、メントール、テルピネオール、ボルネオールなどのモノテルペン系アルコール、ファルネソールなどのセスキテルペン系アルコール、ジテルペン系アルコールなどが挙げられる。テルペン系アルデヒドとしては、シトロネラール、シトラール、サフラナールなどのモノテルペン系アルデヒド、レチナールなどのジテルペン系アルデヒドなどが挙げられる。テルペン系ケトンとしては、メントン、カルボメントン、ヨノンなどのモノテルペン系ケトンなどが挙げられる。これらのテルペンは、d−,l−,dl−体のいずれでもよい。
【0029】
なかでも、熱安定性の点から、モノテルペンが好ましく、環式モノテルペンがより好ましい。テルペンは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の乳化組成物において、テルペンの配合量は、熱安定性の観点から、油性成分1重量部に対して0.08〜0.45重量部であり、好ましくは0.08〜0.43重量部、より好ましくは0.08〜0.39重量部である。
【0031】
本発明の乳化組成物の粘度は、熱安定性、皮膚への塗布時の使用感の点から、好ましくは4000〜150000cP、より好ましくは10000〜130000cPである。
なお、粘度は、粘度計「型式:LVDV−II+(BROOK FIELD社製、スピンドルE型)」を使用して下記方法による測定値である。
(方法)
試料(乳化組成物)35gをマルエムスクリュー管(No.7)のサンプル容器に入れ、室温下(25℃付近)で上下動させながら、4.0RPMで測定し、最大値と最小値の中間値を測定値として採用する。
【0032】
本発明の乳化組成物を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、以下のようにして製造できる。水、油性成分、親水性界面活性剤、テルペン、必要に応じて薬効成分、高級アルコール、香料等の他の成分を混合し、65.0〜85.0℃に加熱した後、ホモジナイザーなどの混合機を用いて所定条件で乳化するなど、周知の方法で乳化することで本発明の乳化物を調製できる。
【0033】
本発明の乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その形態等に応じて、他の成分を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して配合できる。例えば、液剤及び半固形剤等の調製に一般的に使用される安定化剤、増粘剤、防腐剤、緩衝剤、pH調整剤等の各種添加剤を挙げることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
【0034】
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム等。
【0035】
増粘剤:キサンタンガム、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、カルボキシビニルポリマー等。
【0036】
防腐剤:ブチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール等。
【0037】
緩衝剤:ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩等。
【0038】
pH調整剤:塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸等の無機酸;乳酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、プロピオン酸、酢酸、アスパラギン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、グルタミン酸、アミノエチルスルホン酸等の有機酸;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、リジン等の有機塩等。
【0039】
その他:カルボキシメチルスターチナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、乳糖、ハードファット、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸グリセリン、D−ソルビトール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トウモロコシデンプン、プロピレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン等。
【0040】
本発明の乳化組成物の形態は、液状〜半固形状の水中油型乳化組成物であって、適用対象となる患部、適用方法等に応じて薬効成分などを配合し、適宜設定することで皮膚外用剤として好適に使用でき、治療効果が得られる。また、前記乳化組成物は、液状〜半固形状態で流動性を有するため、使用時に手にとりやすい、展延性が良好である、ベタツキが少ない、肌になじみやすい、刺激性が少ないなど、使用感も優れているため、触覚、視覚などの感覚的要素を重視する女性などの層に好適に適用できる。
【0041】
当該皮膚外用剤の形態として、具体的には、液状〜半固形状のクリーム、乳液、ローション等が例示される。これらの中で、好ましい形態として、乳液、ローションが挙げられる。特に、鎮痛剤として好適に使用できる。具体的には、消炎鎮痛剤として、肩こりや筋肉疲労の患部に塗り込むことにより、筋肉をほぐしたり、癒したりすることが可能となる。
【0042】
上記皮膚外用剤は、有効成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合できる。
有効成分としては、例えば、ステロイド剤(デキサメタゾン、塩酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、塩酸ヒドロコルチゾン、吉草酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、安息香酸アルキルエステル(例えばアミノ安息香酸エチル、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル)、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等)、抗炎症剤(グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸モノアンモニウム、アラントイン、サリチル酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等)、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アンモニア水、スルファジアジン、乳酸、フェノール等)、鎮痒剤(クロタミトン、チアントール等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進成分(ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等、ビタミンE)、ビタミン類(ビタミンA,B,C,D等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルコサミン、ヒアルロン酸等)などが挙げられる。
【0043】
上記皮膚外用剤を身体的な痛みを軽減又は消散する鎮痛剤として使用する場合、そのような身体的な痛みとしては特に限定されないが、外傷など外部からの刺激に起因するものや加齢、不良姿勢、長時間労働、静止姿勢の長時間維持や過度の運動、精神的ストレスといったものに起因するものであってもよい。治療可能な痛みとしては、神経痛、関節痛、腰痛、筋肉痛、肩こり痛、骨折痛、打撲痛、ねんざ痛、外傷痛、頭痛、手術後の疼痛等が挙げられる。好ましくは加齢、不良姿勢、長時間労働等によって生じる神経痛、腰痛、筋肉痛、肩こり痛、関節痛であり、より好ましくは腰痛、筋肉痛、肩こり痛、関節痛である。また、鎮痛に加えて、並行して抗炎症(消炎)及び/又は疲労感、疲労の改善を目的として使用することもできる。
【実施例】
【0044】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1〜14及び比較例1〜8)
表1〜3に記載の処方に従って、配合成分を混合し、65℃以上に加熱した後、ホモジナイザー「ROBOMICS(TOKUSYU KIKA社製)」にて、12500rpmで3分間、乳化した。その後、攪拌しながら室温まで冷却し、乳化組成物を得た。
【0046】
なお、各親水性界面活性剤のHLB、商品名は以下のとおりである。
ポリオキシエチレンセチルエーテル(BC−5.5):HLB=10.5(日光ケミカルズ社製)
ポリオキシエチレンセチルエーテル(BC−2):HLB=8(日光ケミカルズ社製)
ポリオキシエチレンセチルエーテル(BC−10):HLB=13.5(日光ケミカルズ社製)
ポリオキシエチレンセチルエーテル(BC−23):HLB=18(日光ケミカルズ社製)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール−100:HLB=18(日光ケミカルズ社製)
【0047】
得られた乳化組成物の熱安定性を以下の方法で評価した。また、乳化組成物の粘度を前述の方法で測定した。結果を表1〜3に示した。
【0048】
(熱安定性)
得られた乳化組成物を1日静置した後、70℃の湯浴内で加温し、性状変化(断層/分離の発生)までの時間を計測し、以下の基準に従って評価した。なお、1日静置後に分離発生していたものは、0秒とした。
◎:1200秒以上
○:600秒以上1200秒未満
×:600秒未満
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
実施例5と比較例1の結果から、l−メントールが乳化組成物を安定化させる作用を発揮していることが明らかとなった。加えて実施例1〜3及び11と比較例2〜3により、l−メントールを特定量に調整することで安定化作用が発揮されることも証明された。更に、比較例4〜6から親水性界面活性剤を特定量に調整すること、比較例7〜8から油性成分を特定量に調整することが重要であることも明らかとなった。
【0053】
HLBが8〜13.5のPOEセチルエーテルを用いることで良好な安定化作用が発揮された(実施例5〜10)。また、実施例12〜14から、dl−カンフル、ゲラニオール、リモネンでもl−メントールと同様の安定化作用が発揮されることも示された。
【0054】
(実施例:実施例15〜19及び比較例9〜10)
表4に示す処方に従い、配合成分を混合し、65℃以上に加熱した後、ホモジナイザー「ROBOMICS(TOKUSYU KIKA社製)」にて、12500rpmで3分間、乳化した。その後、攪拌しながら室温まで冷却し、乳化組成物(消炎鎮痛剤)を調製した。得られた製剤を上記と同様に評価し、結果を表4に示した。
【0055】
【表4】

【0056】
製剤についてもl−メントールが特定量に調整することで同様の作用効果が発揮された。また、油性成分中の流動パラフィン含有率や親水性界面活性剤中のHLBが8〜13.5のPOEセチルエーテル含有率を特定以上とすることで、充分な安定化効果を奏することが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、油性成分、親水性界面活性剤及びテルペンを含有する乳化組成物であって、
前記水1重量部に対して、前記油性成分を0.2〜0.7重量部、
前記油性成分1重量部に対して、前記親水性界面活性剤を0.37〜1.0重量部、前記テルペンを0.08〜0.45重量部含有することを特徴とする乳化組成物。
【請求項2】
前記油性成分が常温で液状である請求項1記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記油性成分が油性成分100重量%中に流動パラフィンを25重量%以上含有する請求項1又は2記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記親水性界面活性剤が親水性界面活性剤100重量%中にHLB8〜13.5のポリオキシエチレンセチルエーテルを30重量%以上含有する請求項1〜3のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記テルペンがモノテルペンである請求項1〜4のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項6】
前記モノテルペンが環式モノテルペンである請求項5記載の乳化組成物。
【請求項7】
前記乳化組成物が水中油型乳化組成物である請求項1〜6のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の乳化組成物からなる皮膚外用剤。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の乳化組成物からなる鎮痛剤。

【公開番号】特開2012−77027(P2012−77027A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223056(P2010−223056)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】