説明

乳化組成物

【課題】セラミドを安定に含有し、保湿効果が高く、しかも、きしみ感が抑制され、使用感に優れた乳化組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)炭素数10〜24の直鎖脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステル、
(B)炭素数10〜24の高級アルコール、
(C)セラミド類、
(D)アニオン界面活性剤、
(E)IOBが0.2〜0.85の分岐の脂肪酸エステルであって、ヒドロキシル基を有する分岐の脂肪酸エステル及びアミノ基を有する分岐の脂肪酸エステルから選ばれる極性油、
(F)水
を含有し、成分(A)、(B)、(C)及び酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(E)の含有量の質量割合((A)+(B)+(C)+(D))/(E)が、1.2〜25である乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
α−ゲルは、水和型の結晶構造であり、ラメラ構造を有する。皮膚最外層の角層に存在する角層細胞間脂質も、その大半がこのα−ゲル構造をとっている。そして、皮膚に対して、外部からの物質の侵入、内部からの水分蒸散を抑制すると同時に、そのもの自身が水分を保持することで、皮膚の柔軟性やなめらかな外観を保つ機能を有している。皮膚中において、角層は、水分を結合水の形で約33質量%保持しており、角層細胞間脂質は、約13質量%の結合水を保持していることが知られている。
このように、α−ゲルは水分を保持することができるため、化粧料などへの適用が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、セラミド類、グリセリンモノ脂肪酸エステル、高級アルコール等を含有する乳化組成物が、α−ゲル構造を形成することが記載されている。しかしながら、この乳化組成物は、セラミドを安定に含有し、保湿効果も高いものの、きしみ感を感じるため、さらに使用感の良好な乳化組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−22997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、セラミドを安定に含有し、保湿効果が高く、しかも、きしみ感が抑制され、使用感に優れた乳化組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、水分保持能が高まる設計のα−ゲルに対し、特定の分岐極性油を特定の割合で用いることにより、塗布中から塗布後に形成されるα−ゲル膜をより柔軟化し、きしみ感を抑制し、使用感に優れた乳化組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)炭素数10〜24の直鎖脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステル、
(B)炭素数10〜24の高級アルコール、
(C)セラミド類、
(D)アニオン界面活性剤、
(E)IOBが0.2〜0.85の分岐の脂肪酸エステルであって、ヒドロキシル基を有する分岐の脂肪酸エステル及びアミノ基を有する分岐の脂肪酸エステルから選ばれる極性油、
(F)水
を含有し、成分(A)、(B)、(C)及び酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(E)の含有量の質量割合((A)+(B)+(C)+(D))/(E)が、1.2〜25である乳化組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の乳化組成物は、α−ゲル構造を形成し、セラミドの結晶化を防止して安定に含有し、保湿効果が高く、しかも、きしみ感が抑制され、使用感に優れたものである。
本発明における「きしみ感」とは、皮膚の上に手指をスライドさせて乳化組成物を塗布していくと、皮膜で覆われたようになるが、すべりにくく、手指の動きが停止させられるような感触をいい、「きしみ感が抑制されている」とは、皮膚に乳化組成物を塗布していくと、乳化組成物によって皮膚を覆う保護機能を有しつつも、適度なすべりとなめらかさがあり、閉塞感が感じられないことをいう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる成分(A)の炭素数10〜24の直鎖脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノラウリン酸エステル、グリセリンモノミリスチン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノベヘン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル等が挙げられる。
これらのうち、炭素数18〜22の直鎖脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルが好ましく、グリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノベヘン酸エステルがより好ましい。
【0010】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、水分保持能の向上の観点から、含有量は、本発明の乳化組成物中に、0.001質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、10質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A)は、本発明の乳化組成物中に、0.001〜10質量%含有することが好ましく、0.05〜3質量%含有するのがより好ましく、0.1〜2質量%含有するのがさらに好ましい。
【0011】
本発明で用いる成分(B)の高級アルコールは、炭素数10〜24のものであり、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
これらのうち、炭素数14〜22の高級アルコールが好ましく、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールがより好ましい。
【0012】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、水分保持性の向上の観点から、含有量は、本発明の乳化組成物中に、0.001質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2.5質量%以下がさらに好ましい。また、成分(B)は、本発明の乳化組成物中に0.001〜10質量%含有することが好ましく、0.1〜3質量%含有するのがより好ましく、0.5〜2.5質量%含有するのが更に好ましい。
【0013】
成分(C)のセラミド類としては、次の(I)天然由来のセラミド類、及び/又は(
II)擬似型セラミド類が好ましい。具体的には、(I)の天然由来のセラミド類は次の
一般式(1)で表されるセラミド類が好ましく、(II)擬似型セラミド類は次の一般式(2)で表わされるセラミド類が好ましい。一般式(1)又は(2)の構造によって、成分(A)、成分(B)、成分(D)とともに混合されていることによって、層状ラメラの構造を形成することができる。
(I)一般式(1)で表わされる天然由来のセラミド類又は同構造の合成物及びその誘導体(以下、天然型セラミドという)。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R11はヒドロキシル基が置換してもよい炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Z1はメチレン基又はメチン基を示し;X5、X6、及びX7は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し;X8は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Z1がメチン基のとき、X5とX6のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X8がオキソ基を形成するとき、X7は存在しない。);R12はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R13は水素原子を示すか、炭素数1〜4のアルキル基を示し;R14はヒドロキシル基が置換してもよい炭素数5〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該アルキル基のω末端に、ヒドロキシル基が置換してもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。)
【0016】
成分(C)は、R11が炭素数7〜19、更に好ましくは炭素数13〜15の直鎖アルキル基;R14がヒドロキシル基が置換してもよい炭素数9〜27の直鎖アルキル基又は炭素数9〜27の直鎖アルキル基にリノール酸がエステル結合した基であるものが好ましい。。また、X8は水素原子を示すか、酸素原子とともにオキソ基を形成するのが好ましい。更に、R14としては、トリコシル、1−ヒドロキシペンタデシル、1−ヒドロキシトリコシル、ヘプタデシル、1−ヒドロキシウンデシル、ω位にリノール酸がエステル結合したノナコシル基が好ましい。
【0017】
天然型セラミドの具体的な例示として、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン又はスフィンガジエニンがアミド化されたセラミドType1〜7(例えば、J. Lipid Res., 24:759(1983)の図2、及びJ. Lipid. Res.,35:2069(1994)の図4記載のブタ及びヒトのセラミド類)が挙げられる。
【0018】
更にこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)も含まれる。
これらのセラミドは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでも良く、また、これらの混合物によるものでもよい。これらのうち、CERAMIDE1、CERAMIDE2、CERAMIDE3、CERAMIDE5、CERAMIDE6IIの化合物(以上、INCI、8th Edition)及び次式で表わされるものが好ましい。
【0019】
【化2】

【0020】
これらは天然からの抽出物及び/又は合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。
このような天然型セラミドの市販のものとしては、Ceramide I、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、コスモファーム社)、Ceramide TIC-001(高砂香料社)、CERAMIDE II(Quest International社)、DS-Ceramide VI、DS-CLA-Phytoceramide、C6-Phytoceramide、DS-ceramide Y3S(DOOSAN社)、CERAMIDE2(セダーマ社)が挙げられる。
【0021】
【化3】

【0022】
(II)一般式(2)で表わされる擬似型セラミド。
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R15は、ヒドロキシル基が置換してもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し;X9は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;R16はヒドロキシル基又はアミノ基が置換してもよい炭素数5〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換してもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;R17は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基を示す。)
【0025】
16としては、ノニル、トリデシル、ペンタデシル、ω位にリノール酸がエステル結合したウンデシル基、ω位にリノール酸がエステル結合したペンタデシル基、ω位に12−ヒドロキシステアリン酸がエステル結合したペンタデシル基、ω位にメチル分岐イソステアリン酸がアミド結合したウンデシル基が好ましい。
【0026】
17は、R15が水素原子の場合は、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数10〜30の、好ましくは総炭素数12〜20のアルキル基であり、R15がヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基である場合には、水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜8のアルキル基を示すものが好ましい。R17のヒドロキシアルコキシ基又はアルコキシ基としては炭素数1〜7のものが好ましい。
【0027】
【化5】

【0028】
一般式(2)としては、R15がヘキサデシル基、X9が水素原子、R16がペンタデシル基、R17がヒドロキシエチル基のもの;R15がヘキサデシル基、X9が水素原子、R16がノニル基、R17がヒドロキシエチル基の擬似型セラミド類が好ましく、一般式(2)のR15がヘキサデシル基、X9が水素原子、R16がペンタデシル基、R17がヒドロキシエチル基のもの(N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)が、更に好ましい。
【0029】
【化6】

【0030】
成分(C)のセラミド類は、1種又は2種以上を用いることができ、成分(C)を充分に皮膚に浸透させる点から、含有量は、本発明の乳化組成物中に、0.001質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。また、成分(C)は、本発明の乳化組成物中に0.001〜10質量%含有することが好ましく、更に、きしみ感の抑制とのバランスから0.1〜5質量%含有することがより好ましく、0.2〜3質量%含有することがさらに好ましい。
【0031】
本発明で用いる成分(D)のアニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸アルギニン等の炭素数12〜24の脂肪酸を由来とする脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム等の脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩;N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸アルギニン、N−ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩などが挙げられる。
これらのうち、炭素数12〜24の脂肪酸を由来とする脂肪酸塩、炭素数14〜22の脂肪酸を由来とする脂肪酸アミドスルホン酸塩、炭素数14〜22のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、炭素数12〜22の脂肪酸を由来とするN−アシルグルタミン酸塩が好ましく、塩としてはナトリウム塩及びアルギニン塩が好ましい。さらに、炭素数18〜22の脂肪酸を由来とする脂肪酸アミドスルホン酸塩、炭素数18〜22のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、炭素数18〜22の脂肪酸を由来とするN−アシルグルタミン酸塩が好ましく、更に、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸アルギニン、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0032】
成分(D)は、1種又は2種以上を用いることができ、成分(C)の結晶化の抑制の点から、含有量は、酸に換算して、本発明の乳化組成物中に、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましい。また、成分(D)の含有量は酸に換算して、本発明の乳化組成物中に0.01〜3質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましく、0.1〜1.5質量%がさらに好ましい。
なお、成分(D)は、酸型化合物と塩基とによって中和された化合物であって、成分(D)の含有量は、酸型化合物としての含有量、又は酸に換算した含有量とする。
【0033】
本発明で用いる成分(E)の分岐の脂肪酸エステルから選ばれる極性油は、IOBが0.2〜0.85であって、きしみ感を抑制し使用感を向上する点から、0.25〜0.60のものがより好ましく、0.28〜0.5であるものがさらに好ましい。なお、成分(E)は油剤として分類されるもの、及び油剤かつ非イオン性界面活性剤として分類されるものも含まれる。
ここで、IOBは、有機概念図(藤田穆、有機化合物の予測と有機概念図、化学の領域 Vol.11,No.10(1957)719−725)に基づき求められる無機性値及び有機性値の比(Inorganic Organic Balance)を表わすもので、次式により求められる。
【0034】
【数1】

【0035】
成分(E)の分岐の脂肪酸エステルは、ヒドロキシル基を有する分岐の脂肪酸エステル及びアミノ基を有する分岐の脂肪酸から選ばれる極性油である。分岐の脂肪酸エステルは、アルコールの部分が、多価アルコールであってもよいし、脂肪酸が多価脂肪酸であってもよい。アミノ基は、アミド結合に変換されていてもよい。
具体的には、乳酸オクチルドデシル(IOB=0.36)、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル(IOB=0.29)等の分岐の脂肪酸エステル;イソステアリン酸とミリスチン酸のジ脂肪酸グリセリル(IOB=0.32)、ジイソステアリン酸ジグリセリル(IOB=0.42)、トリエチルヘキサン酸エリスリチル(IOB=0.55)、モノイソステアリン酸ジグリセリル(IOB=0.81)、トリオクタノイン(IOB=0.35)等のヒドロキシル基を有する分岐の脂肪酸エステル;N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)(IOB=0.29〜0.35)等のアミノ基を有する分岐の脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0036】
これらのうち、ヒドロキシル基を有する分岐の脂肪酸エステル及びアミノ基を有する分岐の脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の分岐の脂肪酸エステルが好ましく、更に、乳酸オクチルドデシル(IOB=0.36)、イソステアリン酸とミリスチン酸のジ脂肪酸グリセリル(IOB=0.32)、ジイソステアリン酸ジグリセリル(IOB=0.42)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)(IOB=0.29〜0.35)から選ばれる1種又は2種以上の分岐の脂肪酸エステルからなる極性油が好ましい。
【0037】
成分(E)は、1種又は2種以上を用いることができ、成分(C)の結晶化を防止し、きしみ感を抑制する点から、含有量は、本発明の乳化組成物中に、0.001質量%以上であるのが好ましく、0.15質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。また、成分(E)は、本発明の乳化組成物中に0.001〜5質量%含有することが好ましく、0.15〜4質量%含有することがより好ましく、更に0.2〜3質量%含有することが好ましい。
【0038】
本発明において、成分(A)、(B)、(C)及び酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(E)の含有量の質量割合((A)+(B)+(C)+(D))/(E)が1.2〜25であり、さらに成分(C)の結晶化を防止して安定性を向上し、かつきしみ感を抑制する点から、好ましくは、1.25〜20、更に好ましくは1.5〜17である。
また、成分(B)の含有量及び(C)の含有量の質量割合(B/C)は、成分(C)の結晶化を防止して安定性を向上し、きしみ感を抑制する点から、0.2〜5であることが好ましく、0.25〜4であることがより好ましく、0.3〜4であることがさらに好ましい。
酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(E)の含有量の質量割合(D/E)は、成分(C)の結晶化を抑制して安定性を向上し、きしみ感を抑制する点から、0.1〜5であることが好ましく、0.15〜4であることがより好ましく、0.2〜3であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明において、成分(F)の水は、本発明の乳化組成物中に20〜99質量%含有されるのが好ましく、更に40〜90質量%含有されるのが好ましい。
また、その他の水性基剤、例えばエタノール、プロパノール等の炭素数1〜4の低級アルコールなどを含有することもできる。
【0040】
本発明の乳化組成物は、更に、きしみ感をより低減する点から(G)IOBが1.5〜3.5の多価アルコールを含有することが好ましい。
具体的には、直鎖または分岐鎖型のグリコール、モノアルキルモノ、ジ、またはトリアルキルグリコールエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコールが挙げられる。より具体的には、1,3−ブチレングリコール(IOB=2.50)、イソプレングリコール(IOB=2.0)、プロピレングリコール(IOB=3.33)、1,3−プロパンジオール(IOB=3.33)、ジプロピレングリコール(IOB=1.83)等の炭素数が2〜10のグリコール;ジエチレングリコールモノエチルエーテル(IOB=1.6)、分子量が100〜1万のポリプロピレングリコール、分子量が100〜1万のポリエチレングリコール、オキシエチレンの平均付加モル数が4〜20のポリオキシエチレンジグリセリルエーテルが挙げられる。
【0041】
成分(G)の多価アルコールは、1種又は2種以上を用いることができ、きしみ感をより抑制する点から、含有量は、本発明の乳化組成物中に、0.001質量%以上であるのが好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。また、成分(G)は、本発明の乳化組成物中に0.001〜20質量%含有することが好ましく、0.2〜20質量%含有することがより好ましく、2〜20質量%含有することがさらに好ましく、べたつき感を抑制しつつしっとり感を向上する点から、0.2〜15質量%含有することが好ましく、2〜10質量%含有することがさらに好ましい。
また、成分(G)を含有する場合の成分(A)、(B)及び(C)の含有量、成分(D)の酸に換算した含有量、並びに(G)の含有量との質量割合は、きしみ感をより抑制しつつべたつきを抑制する点から((A)+(B)+(C)+(D))/(G)が0.1〜20であることが好ましく、0.2〜15であることがより好ましく、0.22〜3であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の乳化組成物は、更に、成分(B)、(C)、(E)以外の油剤を含有することができる。例えば、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素油;ステアリン酸、ベヘン酸、イソミリスチン酸等の高級脂肪酸;オリーブ油、ホホバオイル等の植物油;ジメチルポリシロキサン(メチルポリシロキサン)、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油;パーフルオロアルキルエチルリン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンリン酸、パーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系油などが挙げられる。ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等の、成分(E)以外の極性油を含有することができる。
これらの油剤は、本発明の乳化組成物中に含有しないか、20質量%以下含有することが好ましく、さらに15質量%以下含有することが好ましい。ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等の成分(E)以外のIOBが0.2以上の極性油の含有量は5質量%以下であることが好ましく、オリーブ油等のIOBが0.1〜0.2の油剤の含有量は5質量%以下であることが好ましい。
【0043】
また、本発明の乳化組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常の化粧料に用いられる有効成分や添加剤、例えば、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸等の水溶性ビタミン類;オウバクエキス、カンゾウエキス、アロエエキス、スギナエキス、茶エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、ハマメリス抽出液、プラセンタエキス、海藻エキス、マロニエエキス、カミツレエキス、ユズエキス、チョウジエキス、アスナロエキス、アルテアエキス、ローヤルゼリーエキス、ユーカリエキス、褐藻エキス、アスナロ抽出液等の動・植物抽出液;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム等の塩基;クエン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、コハク酸、アジピン酸等の酸;カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸ナトリウム、オキサゾリン変性シリコーン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N−ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体等の増粘剤などを含有することもできる。
【0044】
本発明の乳化組成物は、例えば、以下の製造方法(1)〜(3)のいずれかにより製造することができ、水中油型乳化組成物として得ることができる。
(1)成分(A)、(B)及び(C)を含む第1油相を80〜90℃で加熱混合し、攪拌する工程、次に80〜90℃に加熱した成分(D)の酸型化合物と塩基、及び成分(F)の一部を含む第1水相を添加する工程、次に80〜90℃に加熱した成分(E)及び他の油性成分を混合した第2油相を添加し攪拌する工程、さらに攪拌下40〜25℃まで冷却し、残りの成分(F)と他の水溶性成分(第2水相)を添加しながら混合する工程を備える。
(2)成分(A)、(B)及び(C)に成分(D)の酸型化合物を含む第1油相を80〜90℃で加熱混合し、攪拌する工程、次に80〜90℃に加熱した成分(D)を中和するための塩基と成分(F)水の一部を含有する第1水相を添加し混合する工程、次に80〜90℃に加熱した成分(E)及び他の油性成分(第2油相)を混合する工程、さらに攪拌下40〜25℃まで冷却し、残りの成分(F)と他の水溶性成分(第2水相)を添加しながら混合する工程を備える。
(3)成分(A)、(B)及び(C)に成分(D)の酸型化合物の一部を含む第1油相を80〜90℃で加熱混合し、攪拌する工程、次に80〜90℃に加熱した成分(D)の残りの酸型化合物と塩基と成分(F)の一部を含む第1水相を添加し混合攪拌する工程、次に80〜90℃に加熱した成分(E)及び他の油性成分(第2油相)を混合攪拌する工程、さらに攪拌下40〜25℃まで冷却し、残りの成分(F)と他の水溶性成分(第2水相)を添加しながら混合する工程を備える。
上記の製造方法(1)〜(3)のいずれにおいても、冷却する場合は、40℃以下の室温に冷却すればよく、30℃以下がより好ましく、15℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。
【0045】
以上のように、本発明の組成物は、製造性及び安定性の点から、成分(E)を添加し混合する工程の前に、成分(A)〜(D)を加熱混合する工程を備えることが好ましく、成分(E)を添加して混合する工程の前に、成分(D)の酸型化合物を塩基によって中和する工程を備えることが好ましい。
上記の製造方法のうち、生産性と経時安定性から、製造方法(1)又は(2)が好ましく、製造方法(1)がより好ましい。なお、製造方法(1)又は(2)における第1水相における成分(F)は、製造後の乳化組成物全量の10〜50質量%であることが好ましく、15〜45質量%であることがより好ましく、成分(F)は成分(D)の酸型化合物が塩基によって中和され、溶解状態になる量であればよい。
【0046】
得られる乳化組成物は、α−ゲル(α型結晶)であり、結晶(γ型結晶)の析出が抑制される。α−ゲルは、広角X線回折(Bragg角21〜23°)による構造解析により、確認することができる。α型構造は六方晶系のことであり、親油基が親水基層の面に対して直角に配向しており、Bragg角21〜23°付近に鋭い一本の回折ピークが現れるのが特徴である。
さらに、成分(A)〜(D)によって層状ラメラが形成されており、小角X線回折(Bragg角0.3〜5°)により、Bragg角が1:2:3:4の比においてピークを確認することができる。本発明の乳化組成物は、遠心分離機で濃縮したものを小角X線回折により測定する。以上のように、本発明の乳化組成物は、連続相が水相であって、成分(A)〜(D)により形成されるα−ゲル又は層状ラメラ構造が、成分(E)の混合によって適度に柔軟になり、これによってきしみ感が抑制されるものと考えられる。
成分(A)〜(D)によって、形成された層状ラメラは疎水部と親水部が層状に重なった構造をとっており、成分(E)がヒドロキシル基を有する分岐の脂肪酸の場合には、分岐の脂肪酸エステルはラメラ構造に取り込まれやすく、疎水部の脂肪酸の部分が層状ラメラの組成物に入り込み、ラメラ構造を緩めることができると考えられる。成分(E)がアミノ基を有する分岐の脂肪酸エステルの場合には、アミノ基を有するためにラメラ構造に取り込まれやすく、疎水部の脂肪酸の部分が層状ラメラの疎水部に入り込み、ラメラ構造を緩めることができると考えられる。
本発明は成分(E)を含有しても、α−ゲルが形成され、層状ラメラ構造が存在するので、保湿効果(しっとり感)を備えつつ、きしみ感が抑制されたなめらかなすべりの良好な乳化組成物を得ることができる。
【0047】
本発明の乳化組成物は、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の化粧料や、皮膚外用剤として好適である。
【0048】
本発明は、
〔1〕次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)炭素数10〜24の直鎖脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステル、
(B)炭素数10〜24の高級アルコール、
(C)セラミド類、
(D)アニオン界面活性剤、
(E)IOBが0.2〜0.85の分岐の脂肪酸エステルであって、ヒドロキシル基を有する分岐の脂肪酸エステル及びアミノ基を有する分岐の脂肪酸エステルから選ばれる極性油、
(F)水
を含有し、成分(A)、(B)、(C)及び酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(E)の含有量の質量割合((A)+(B)+(C)+(D))/(E)が、1.2〜25である乳化組成物である。
【0049】
本発明は、さらに以下の組成物又は製造方法が好ましい。
〔2〕成分(E)が、ヒドロキシル基を有する分岐の脂肪酸エステル及びアミノ基を有する分岐の脂肪酸エステルから選ばれる分岐の脂肪酸を由来とする極性油であって、乳酸オクチルドデシル、イソステアリン酸/ミリスチン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、及びN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)から選ばれる1種又は2種以上の分岐の脂肪酸エステルである前記〔1〕記載の乳化組成物。
〔3〕酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(E)の含有量の質量割合(D)/(E)が、0.1〜5であり、好ましくは0.15〜4であり、さらに好ましくは0.2〜3である前記〔1〕又は〔2〕記載の乳化組成物。
【0050】
〔4〕更に、(G)IOBが1.5〜3.5の多価アルコールを含有する前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔5〕更に、成分(B)、(C)、(E)以外の油剤を含有する前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔6〕成分(A)、(B)、(C)及び酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(E)の含有量の質量割合((A)+(B)+(C)+(D))/(E)が、1.25〜20であり、好ましくは1.5〜17である前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の乳化組成物。
【0051】
〔7〕成分(B)及び(C)の質量割合(B)/(C)が、0.2〜5であり、好ましくは0.25〜4であり、さらに好ましくは0.3〜4である前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔8〕成分(A)の含有量が、0.001〜10質量%であり、好ましくは0.05〜3質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の乳化組成物。
【0052】
〔9〕成分(B)の含有量が、0.001〜10質量%であり、好ましくは0.1〜3質量%であり、より好ましくは0.5〜2.5量%である前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔10〕成分(C)の含有量が、0.001〜10質量%であり、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.2〜3質量%である前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の乳化組成物。
【0053】
〔11〕成分(D)の酸に換算した含有量が、0.01〜3質量%であり、好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1.5質量%である前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔12〕成分(E)の含有量が、0.001〜5質量%であり、好ましくは0.15〜4質量%であり、より好ましくは0.2〜3質量%である前記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の乳化組成物。
【0054】
〔13〕成分(F)の含有量が、20〜99質量%であり、好ましくは40〜90質量%である前記〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔14〕成分(G)の含有量が、0.001〜20質量%であり、好ましくは0.2〜20質量%であり、より好ましくは2〜20質量%であり、好ましくは0.2〜15質量%であり、さらに好ましくは2〜10質量%である前記〔4〕〜〔13〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔15〕成分(A)、(B)、(C)及び酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(G)の含有量の質量割合{((A)+(B)+(C)+(D))/(G)}が、0.1〜20であり、好ましくは0.2〜15であり、より好ましくは0.22〜3である前記〔1〕〜〔14〕のいずれかに記載の乳化組成物。
【0055】
〔16〕成分(D)が、炭素数12〜24の脂肪酸、炭素数14〜22の脂肪酸を由来とする脂肪酸アミドスルホン酸、炭素数14〜22のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及び炭素数12〜22の脂肪酸を由来とするN−アシルグルタミン酸から選ばれる酸のナトリウム塩又はアルギニン塩であり、好ましくは炭素数18〜22の脂肪酸を由来とする脂肪酸アミドスルホン酸、炭素数18〜22のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及び炭素数18〜22の脂肪酸を由来とするN−アシルグルタミン酸から選ばれる酸のナトリウム塩又はアルギニン塩であり、より好ましくは、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸アルギニン及びポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上である前記〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔17〕成分(A)が、炭素数18〜22の直鎖脂肪酸を由来とするグリセリン脂肪酸エステルであって、好ましくはグリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル及びグリセリンモノベヘン酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である前記〔1〕〜〔16〕のいずれかに記載の乳化組成物。
【0056】
〔18〕成分(B)が、炭素数14〜22の高級アルコールであって、好ましくはセタノール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールから選ばれる1種又は2種以上である前記〔1〕〜〔17〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔19〕成分(C)が、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン又はスフィンガジエニンがアミド化されたセラミドType1〜7及びこれらのN−アルキル体から選ばれる天然型セラミド、並びに一般式(2)
【0057】
【化7】

【0058】
(式中、R15は、ヒドロキシル基が置換してもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し;X9は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;R16はヒドロキシル基又はアミノ基が置換してもよい炭素数5〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換してもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;R17は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基を示す。)
で表される擬似型セラミドから選ばれるセラミド類である前記〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載の乳化組成物。
【0059】
〔20〕成分(G)が、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、分子量が100〜1万のポリプロピレングリコール、分子量が100〜1万のポリエチレングリコール及びオキシエチレンの平均付加モル数が4〜20のポリオキシエチレンジグリセリルエーテルから選ばれる多価アルコールである前記〔1〕〜〔19〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔21〕成分(E)以外のIOBが0.1〜0.2の油剤の含有量が5質量%以下である前記〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載の乳化組成物。
〔22〕水中油型乳化組成物である前記〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載の乳化組成物。
【0060】
〔23〕成分(E)を添加し混合する工程より前に、成分(A)〜(D)を加熱混合する工程を備える前記〔1〕〜〔22〕のいずれかに記載の乳化組成物の製造方法。
〔24〕成分(E)を添加し混合する工程より前に、成分(D)の酸型化合物を塩基によって中和する工程を備える前記〔23〕記載の乳化組成物の製造方法。
〔25〕成分(A)、(B)及び(C)に成分(D)の酸型化合物を含む第1油相を加熱混合し攪拌する工程、成分(D)を中和するための塩基と成分(F)水の一部を含有する第1水相を加熱し第1油相に添加し混合する工程を備える前記〔1〕〜〔22〕のいずれかに記載の乳化組成物の製造方法。
〔26〕成分(E)及び前記第1油相以外の油性成分を加熱し、さらに添加し混合する工程を備える前記〔25〕記載の乳化組成物の製造方法。
【0061】
〔27〕皮膚に塗布するための前記〔1〕〜〔22〕のいずれかに記載の乳化組成物の使用。
〔28〕皮膚塗布剤の製造のための前記〔1〕〜〔22〕のいずれかに記載の乳化組成物の使用。
【実施例】
【0062】
実施例1〜5及び比較例1〜2
表1に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、安定性及び使用感(きしみ感のなさ、しっとり感、べたつき感のなさ)を評価した。結果を表1に併せて示す。
なお、実施例で得られた組成物はいずれも、光学顕微鏡によりセラミド類の結晶は観察されず又は殆ど観察されず安定であり、広角X線回折によりα−ゲルであることが確認された。
【0063】
(製造方法)
第1油相の成分(成分(A)〜(C)を含む混合成分)を80〜90℃で加熱混合し、これにプロペラ攪拌下(300rpm)、80〜90℃に加熱した第1水相(成分(D)と成分(F)の一部を含む水溶液)、次いで80〜90℃に加熱した第2油相(成分(E)、他の油性成分)を添加した。ホモジナイザー(7000rpm)により攪拌後、プロペラ攪拌下(300rpm)25℃まで冷却し、第2水相(残りの成分(F)と他の水溶性成分)を添加した。これによって、水中油型乳化組成物を得た。
【0064】
(評価方法)
(1)安定性:
実施例及び比較例の乳化組成物について保存加速試験を行った。保存加速試験は、サイクル試験であって、1日のうちに保存温度を15℃〜60℃に変化させ(15℃〜60℃のサイクル/1日)、これを7日間行う。保存加速試験後の実施例及び比較例の乳化組成物について、偏光下、光学顕微鏡観察により、結晶の有無を確認した。結晶の有無は以下の基準で評価した。
AA:結晶が観察されない。
A :わずかに結晶が観察される。
B :小さな結晶が観察される。
C :針状結晶が観察される。
【0065】
(2)使用感(きしみ感のなさ、しっとり感、べたつき感のなさ):
専門パネラーが、各乳化組成物0.5〜0.6gを顔面に手指をスライドさせながら塗布し、以下の4段階の基準で評価した。評価結果は専門パネラー3名の評価結果の合計値で示す。
「きしみ感のなさ」:塗布時から塗布直後までの評価。
4:きしみ感が感じられない。
3:きしみ感がほとんど感じられない。
2:きしみ感をやや感じる。
1:きしむ。
「しっとり感」、「べたつきのなさ」:塗布時及び塗布した直後から3分の間で評価。
4:良好である。
3:やや良好である。
2:あまり良好でない。
1:良好でない。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例6〜13
実施例1〜5と同様にして、表2に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、安定性及び使用感(きしみ感のなさ、しっとり感、べたつき感のなさ)を評価した。結果を表2に併せて示す。
なお、実施例で得られた組成物はいずれも、光学電子顕微鏡により、セラミド類の結晶は観察されず又は殆ど観察されず安定であり、広角X線回折によりα−ゲルであることが確認された。
【0068】
【表2】

【0069】
実施例14〜20及び比較例3〜4
実施例1〜5と同様にして、表3に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、安定性及び使用感(きしみ感のなさ、しっとり感、べたつき感のなさ)を評価した。結果を表3に併せて示す。
なお、実施例で得られた組成物はいずれも、光学電子顕微鏡により、セラミド類の結晶は観察されず、又は殆ど観察されず安定であり、広角X線回折によりα−ゲルであることが確認された。
【0070】
【表3】

【0071】
実施例21〜31
実施例1〜5と同様にして、表4に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、安定性及び使用感(きしみ感のなさ、しっとり感、べたつき感のなさ)を評価した。結果を表4に併せて示す。
なお、実施例で得られた組成物はいずれも、光学電子顕微鏡により、セラミド類の結晶は殆ど観察されず、安定であり、広角X線回折によりα−ゲルであることが確認された。
【0072】
【表4】

【0073】
実施例32、33、34
表5に示す実施例32、表6に示す33、34の水中油型乳化組成物を、実施例1〜5と同様にして製造した。得られた組成物は、広角X線回折によりα−ゲルであることが確認され、セラミドが殆ど結晶化せず、安定に含有され、保湿効果が高く、しかも、きしみ感が抑制されており、使用感に優れたものであった。
【0074】
【表5】

【0075】
【表6】

【0076】
実施例35、36、37
表7に示す実施例35〜37の水中油型乳化組成物を、実施例1〜5と同様にして製造した。得られた水中油型乳化組成物は、広角X線回折によりα−ゲルであることが確認でき、セラミドが殆ど結晶化せず、安定に含有され、保湿効果が高く、しかも、きしみ感が抑制されており、使用感に優れる。
【0077】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)炭素数10〜24の直鎖脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステル、
(B)炭素数10〜24の高級アルコール、
(C)セラミド類、
(D)アニオン界面活性剤、
(E)IOBが0.2〜0.85の分岐の脂肪酸エステルであって、ヒドロキシル基を有する分岐の脂肪酸エステル及びアミノ基を有する分岐の脂肪酸エステルから選ばれる極性油、
(F)水
を含有し、成分(A)、(B)、(C)及び酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(E)の含有量の質量割合((A)+(B)+(C)+(D))/(E)が、1.2〜25である乳化組成物。
【請求項2】
酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(E)の含有量の質量割合(D)/(E)が、0.1〜5である請求項1記載の乳化組成物。
【請求項3】
更に、(G)IOBが1.5〜3.5の多価アルコールを含有する請求項1又は2記載の乳化組成物。
【請求項4】
更に、成分(B)、(C)、(E)以外の油剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項5】
成分(D)が、炭素数18〜22の脂肪酸を由来とする脂肪酸アミドスルホン酸、炭素数18〜22のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及び炭素数18〜22の脂肪酸を由来とするN−アシルグルタミン酸から選ばれる酸のナトリウム塩又はアルギニン塩である請求項1〜4のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項6】
成分(B)及び(C)の含有量の質量割合(B)/(C)が、0.2〜5である請求項1〜5のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項7】
成分(A)、(B)、(C)及び酸に換算した成分(D)の含有量と、成分(G)の含有量の質量割合{(A)+(B)+(C)+(D)}/(G)が、0.1〜20である請求項3〜6のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項8】
成分(E)以外のIOBが0.1〜0.2の油剤の含有量が5質量%以下である請求項1〜7のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項9】
成分(E)を添加し混合する工程より前に、成分(A)〜(D)を加熱混合する工程を備える請求項1〜8のいずれか1項記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項10】
成分(E)を添加し混合する工程より前に、成分(D)の酸型化合物を塩基によって中和する工程を備える請求項9に記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項11】
成分(A)、(B)及び(C)に成分(D)の酸型化合物を含む第1油相を加熱混合し攪拌する工程、成分(D)を中和するための塩基と成分(F)水の一部を含有する第1水相を加熱し第1油相に添加し混合する工程を備える請求項1〜8のいずれか1項に記載の乳化組成物の製造方法。
【請求項12】
成分(E)及び前記第1油相以外の油性成分を加熱し、さらに添加し混合する工程を備える請求項11に記載の乳化組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−53146(P2013−53146A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176230(P2012−176230)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】