説明

乳化装置及び乳化液の製造方法

【課題】安定した乳化液を短時間で製造することが可能な乳化装置、及び、乳化液の製造方法を提供する。
【解決手段】乳化装置1は、公転軸線L1を中心に公転しながら、自転軸線L2を中心に自転することが可能に構成された容器ホルダ30と、容器ホルダを公転させながら自転させる駆動機構50と、を含む。容器ホルダは、内部に材料Mが封入された乳化容器を、その高さ方向が自転軸線に対して傾斜するように保持し、容器ホルダを公転させながら自転させることにより、乳化容器内で材料を乳化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化装置及び乳化液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、材料・医薬・工業など様々な分野で、乳化した状態の物質(乳化液)を利用する機会が増えており、種々の乳化装置や乳化方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-47264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの態様は、安定した乳化液を短時間で製造することが可能な乳化装置、及び、乳化液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る乳化装置は、
公転軸線を中心に公転しながら、自転軸線を中心に自転することが可能に構成された容器ホルダと、
前記容器ホルダを公転させながら自転させる駆動機構と、
を含み、
前記容器ホルダは、内部に材料が封入された乳化容器を、その高さ方向が前記自転軸線に対して傾斜するように保持し、
前記容器ホルダを公転させながら自転させることにより、前記乳化容器内で前記材料を乳化させる。
【0006】
この乳化装置によると、乳化容器内で、材料に乳化に足る大きなエネルギーを作用させることができ、乳化容器内で材料を乳化させることが可能になる。
【0007】
(2)この乳化装置において、
前記容器ホルダは、前記乳化容器を、前記高さ方向が前記自転軸線と直交するように保持してもよい。
【0008】
(3)この乳化装置において、
前記容器ホルダは、複数の前記乳化容器を保持することが可能に構成されていてもよい。
【0009】
(4)この乳化装置において、
前記容器ホルダは、前記複数の乳化容器を、前記自転軸線と直交する一つの仮想平面上に保持することが可能に構成されていてもよい。
【0010】
(5)この乳化装置において、
前記容器ホルダは、前記複数の乳化容器を、前記自転軸線からの距離が一定になるように保持してもよい。
【0011】
(6)この乳化装置において、
前記容器ホルダは、ホルダ本体と、前記ホルダ本体に対して着脱可能に構成されたアダプタとを含み、
前記乳化容器は、前記アダプタに保持されてもよい。
【0012】
(7)本発明に係るアダプタは、
公転軸線を中心に公転しながら自転軸線を中心に自転することが可能に構成された容器ホルダに保持されて前記容器ホルダと一体的に挙動するアダプタであって、
内部に乳化処理の対象となる材料が封入された乳化容器を、その高さ方向が前記自転軸線に対して傾斜するように保持する保持部を有する。
【0013】
このアダプタによると、乳化容器内で、材料に乳化に足る大きなエネルギーを作用させることができ、乳化容器内で材料を乳化させることが可能になる。
【0014】
(8)本発明に係る乳化液の製造方法は、
公転軸線を中心に公転しながら、自転軸線を中心に自転することが可能に構成された容器ホルダに、材料が封入された乳化容器を、その高さ方向が前記自転軸線に対して傾斜するように保持させる工程と、
前記容器ホルダを公転させながら自転させることにより、前記乳化容器内で前記材料を乳化させて乳化液を製造する工程と、
を含む。
【0015】
この乳化液の製造方法によると、乳化容器内で、材料に乳化に足る大きなエネルギーを作用させることができ、乳化容器内で材料を乳化させて乳化液を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る乳化装置の構成を説明するための図である。
【図2】本発明に係る乳化装置の構成を説明するための図である。
【図3】本発明に係る乳化装置の構成を説明するための図である。
【図4】本発明に係る乳化装置の構成を説明するための図である。
【図5】本発明に係る乳化装置の動作を説明するための図である。
【図6】本発明に係る乳化液の製造方法について説明するための図である。
【図7】本発明に係る乳化液の製造方法の実験結果を示す図である。
【図8】変形例に係る乳化装置の構成を説明するための図である。
【図9】変形例に係る乳化装置の構成を説明するための図である。
【図10】変形例に係る乳化装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。すなわち、以下の実施の形態で説明するすべての構成が本発明にとって必須であるとは限らない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含む。
【0018】
(1)乳化装置1の構成
はじめに、本発明を適用した実施の形態に係る乳化装置1の構成について、図1〜図3(B)を参照しながら説明する。
【0019】
本実施の形態に係る乳化装置1は、図1に示すように、回転軸10を含む。回転軸10は、仮想の直線を中心に回転するように構成されている。本実施の形態では、回転軸10は、図1に示すように、鉛直に延びる仮想の直線(公転軸線L1)を軸として回転するように構成されている。ただし、回転軸10は、水平に延びる直線を軸線として回転するように構成されていてもよい(図示せず)。
【0020】
乳化装置1は、図1に示すように、回転体20を含む。回転体20は、回転軸10に固定されており、回転軸10の回転に伴って、公転軸線L1を中心に(軸線として)回転するように構成されている。
【0021】
乳化装置1は、図1に示すように、容器ホルダ30を有する。以下、容器ホルダ30について詳述する。
【0022】
容器ホルダ30は、回転体20における、公転軸線L1から所定の間隔をあけた位置に取り付けられている。これにより、容器ホルダ30は、回転体20の回転に伴って、公転軸線L1を中心に公転することになる。
【0023】
容器ホルダ30は、また、回転体20に対して自転可能に取り付けられている。本実施の形態では、容器ホルダ30(ホルダ本体38)には自転軸32が固定されており、自転軸32は、ベアリング34を介して回転体20に取り付けられている。これにより、容器ホルダ30を、回転体20に対して自転可能とすることができる。なお、本実施の形態では、容器ホルダ30は、回転体20の所定の位置を通る仮想の直線(自転軸線L2)を軸として自転可能に構成されている。そして、本実施の形態では、公転軸線L1と自転軸線L2とは、所定の角度で斜めに交差する直線となっている。より具体的には、乳化装置1は、公転軸線L1と自転軸線L2とは、45度の角度で交差するように構成されている。ただし、変形例として、公転軸線L1と自転軸線L2とが平行になるように、乳化装置を構成することも可能である(図示せず)。
【0024】
本実施の形態では、1つの回転体20に、1つの容器ホルダ30が取り付けられている。そして、回転体20における容器ホルダ30とは反対側の位置には、バランス錘36が取り付けられている。このバランス錘36は、公転軸線L1からの距離が可変に構成されている。これにより、乳化装置1を、安定して運転させることができる。ただし、変形例として、回転体20に、2個の容器ホルダ30を取り付けることも可能である。この場合、2個の容器ホルダ30を、公転軸線L1を中心とする点対称の配置となるように取り付ければ、乳化装置を安定して動作させることができる。あるいは、乳化装置を、1つの回転体20に3個以上の複数の容器ホルダ30を取り付けた構成とすることも可能である。
【0025】
本実施の形態では、図1に示すように、容器ホルダ30は、ホルダ本体38と、アダプタ40とを含む。アダプタ40は、ホルダ本体38に着脱可能に構成されており、かつ、ホルダ本体38に保持されてホルダ本体38と一体的に挙動するように構成されている。例えば、ホルダ本体38及びアダプタ40は、両者の空回りを防止するための空回り防止機構を備えた構成とすることができる(図示せず)。また、先述した自転軸32は、ホルダ本体38に固定される。
【0026】
アダプタ40(容器ホルダ30)は、乳化容器100を保持する役割を果たす。詳しくは、アダプタ40(容器ホルダ30)は、乳化容器100を、その高さ方向が、自転軸線L2に対して直交するように保持する(図1参照)。アダプタ40の具体的な構造は特に限定されるものではないが、本実施の形態では、アダプタ40は、図2(A)〜図3(B)に示すように、乳化容器100を保持する保持部42を有する構成となっている。そして、保持部42は、アダプタ40の内底に形成された凹部(アダプタ40の底面と平行に延びる溝状の凹部)によって実現されている。なお、図2(A)及び図2(B)はアダプタ40の断面図及び斜視図であり、図3(A)及び図3(B)は乳化容器100を保持した状態のアダプタ40の断面図及び斜視図である。また、本実施の形態に適用可能な乳化容器100の詳細については、後述する。
【0027】
本実施の形態に係る乳化装置1は、図1に示すように、駆動機構50を含む。駆動機構50は、容器ホルダ30(乳化容器100)を公転させながら自転させる役割を果たす。以下、駆動機構50の一例について説明する。
【0028】
駆動機構50は、容器ホルダ30を公転させる公転駆動機構として、回転軸10を回転させるモータ51を含む。乳化装置1では、回転軸10が回転すると容器ホルダ30が公転する。そのため、モータ51(モータ51、及び、回転軸10、回転体20)により、容器ホルダ30を公転させることができる。なお、本実施の形態では、モータ51は、支持基板60に固定されている。
【0029】
また、駆動機構50は、容器ホルダ30を自転させる自転駆動機構52を含む。以下、自転駆動機構52について説明する。
【0030】
自転駆動機構52は、自転軸32に固定された自転プーリー54を有する。本実施の形
態では、自転軸32は容器ホルダ30に固定されていることから、自転プーリー54と容器ホルダ30とは一体的に挙動する。自転駆動機構52は、回転軸10と同心軸に設けられた自転力付与プーリー56を有する。自転力付与プーリー56は、支持基板60に固定されて、回転不能に構成されている。また、自転駆動機構52は、ベルト58を含む。ベルト58は、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56にかけまわされる。なお、ベルト58は、アイドラプーリー59によって屈曲し、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56にかけまわされている。
【0031】
自転駆動機構52によると、ベルト58によって、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56の回転角速度が関連付けされるため、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56が、遊星歯車機構と同様の挙動を示すことになる。また、自転力付与プーリー56は回転不能に構成されている。そのため、回転体20を回転させると、自転プーリー54は、公転しながら自転することになる。具体的には、本実施の形態では、回転体20を時計回りに回転させると、自転プーリー54は、公転軸線L1を中心に時計回りに公転しながら、自転軸線L2を中心に反時計回りに自転する。そして、容器ホルダ30は自転プーリー54と一体的に挙動することから、自転駆動機構52によって、容器ホルダ30を公転させながら自転させることが可能になる。なお、乳化装置1では、自転駆動機構52をプーリーとベルトを利用して構成したが、自転駆動機構は歯車等の動力伝達要素を利用して構成することも可能である。
【0032】
なお、変形例として、自転力付与プーリー56を、回転軸10を中心に所望の回転角速度で回転させることが可能な構成とすることも可能である(図示せず)。具体的には、自転力付与プーリー56をベアリングを介して回転軸10に取り付け、そして、モータ51とは別に用意されたモータの駆動力や、ブレーキの制動力を利用して自転力付与プーリー56の回転速度を制御する構成とすることで、自転力付与プーリー56を所望の回転角速度で回転させることが可能になる。かかる構成とすることで、容器ホルダ30の自転角速度(自転/公転角速度比)を所望の値に設定することが可能になる。
【0033】
乳化装置1は、図示しない筐体や、筐体内で支持基板60を支持し、かつ、支持基板60の振動を防止する防振手段(防振ワイヤや防振バネなど)をさらに含んだ構成とすることができる。
【0034】
(2)乳化容器100について
次に、図4(A)及び図4(B)を参照して、本実施の形態に適用可能な乳化容器100の一例について説明する。なお、図4(A)は乳化容器100の断面図であり、図4(B)は乳化容器100の斜視図である。
【0035】
乳化容器100は、図4(A)及び図4(B)に示すように、本体110を含む。本体110は、円形の底部112、及び、円柱形の本体部114、並びに、上部116を有し、上部116の先端が開口している。また、上部116の径は、本体部114(底部112)の径よりも小さくなっている。本体110を構成する素材は特に限定されるものではなく、例えば、ガラスやプラスチックなど、材料Mの特性に合致した種々の素材を選択することが可能である。
【0036】
乳化容器100は、また、図4(A)及び図4(B)に示すように、蓋体120を含む。蓋体120は、本体110の上端(上部116の先端)の開口を塞ぐことが可能に構成されており、蓋体120によって、乳化容器100(本体110)は、内部に材料Mを封入(密封)することが可能になる。本実施の形態では、蓋体120は、ゴム栓122と、ゴム栓122を覆う、開口を有する金属フィルム124と、該開口を塞ぐシール(金属シール)126を含む構成となっている。
【0037】
そして、本実施の形態では、乳化容器100は、その高さ方向が自転軸線L2に対して直交するように、容器ホルダ30(アダプタ40)に保持される(図1参照)。ここで、「高さ方向」とは、底部112の垂線方向である。あるいは、「高さ方向」は、底部112と上部116とを結ぶ方向である。
【0038】
(3)動作
次に、本実施の形態に係る乳化装置1の動作について説明する。
【0039】
乳化装置1は、図1に示すように、容器ホルダ30が乳化容器100を保持した状態で回転体20を回転させることにより、容器ホルダ30を公転させながら自転させる。なお、本実施の形態では、乳化容器100は、その高さ方向が自転軸線L2に対して直交する。そのため、容器ホルダ30を公転させながら自転させることによって、材料Mを、遠心力を受けながら、乳化容器100内を激しく移動させることができる。
【0040】
詳しくは、容器ホルダ30が公転すると、材料Mは、公転軸線L1から離れる方向に向かう力を受け、乳化容器100内における公転軸線L1から最も離れた領域(最遠領域)に集まろうとする。そのため、例えば乳化容器100が、底部112が公転軸線L1から最も遠くなる姿勢の場合、図5(A)に示すように、材料Mは底部112に集められることになる。逆に、乳化容器100が、上部116が公転軸線L1から最も遠くなる姿勢の場合、図5(B)に示すように、材料Mは上部116に集められることになる。そして、乳化装置1では、容器ホルダ30が公転しながら自転するため、材料Mは、容器ホルダ30の自転(回転体20に対する自転)半回転毎に、乳化容器100の底部112付近に集まり、乳化容器100の上部116付近に集まるという挙動を繰り返すことになる。すなわち、乳化装置1では、容器ホルダ30を公転させながら自転させると、材料Mは、公転による遠心力が作用した状態で、乳化容器100の高さ方向に移動することになる。
【0041】
そして、乳化容器100内を高さ方向に移動した材料Mは、乳化容器100の内壁面(底部112及び上部116の内面)と衝突する。特に、乳化装置1によると、材料Mは、公転による遠心力が作用した状態で乳化容器100の内壁面と衝突することになるため、材料Mに大きなエネルギー(衝突エネルギー)を作用させることができる。
【0042】
以上のことから、乳化装置1によると、材料Mを激しく移動させながら、材料Mに大きな衝突エネルギーを作用させることができるため、乳化容器100内で、材料Mに、乳化に足るエネルギーを作用させることができ、乳化容器100内で材料Mを乳化させることが可能になる。
【0043】
(4)乳化方法
次に、図6を参照して、本実施の形態に係る材料Mの乳化方法(乳化液の製造方法)について説明する。図6は、材料Mの乳化方法を説明するためのフローチャート図である。
【0044】
本実施の形態に係る乳化方法は、容器ホルダ30(アダプタ40)に、材料Mが封入された乳化容器100を、その高さ方向が自転軸線L2に対して傾斜するように保持させる工程(ステップS10)と、容器ホルダ30を公転させながら自転させる工程(ステップS12)とを含む。これにより、乳化容器100内で材料Mを乳化させて、乳化液を製造することができる。
【0045】
(5)効果
次に、本実施の形態が奏する作用効果について説明する。
【0046】
本実施の形態によると、乳化容器100内で材料Mに乳化に足るエネルギーを作用させることができるため、乳化容器100内で材料Mを乳化させることが可能になる。すなわち、本実施の形態によると、乳化容器100を開封することなく、乳化容器100内の材料を乳化させることができるため、医療分野などの特に材料の取扱に注意を要する分野での材料処理(乳化処理)に適した乳化装置を提供することができる。また、乳化容器100内で、必要最低限の量の乳化液を製造することが可能になるため、現在注目を集めている「テーラーメード型ワクチン療法」に利用されるワクチンのように、乳化液の使用量が少ない分野での利用に適した乳化装置を提供することができる。
【0047】
また、本実施の形態によると、容器内で材料Mに作用するエネルギーは遠心力に基づくものであり、そのため、容器ホルダ30の回転数を調整することによって、容易に材料Mに作用するエネルギーを調整することができる。このことから、材料Mや容器の形状に合致した条件で乳化処理を行うことが可能になり、効率よく乳化処理を行うことができるとともに、容量の小さい容器(例えば5ml程度の容器)内での材料Mの乳化処理が可能になる。
【0048】
(6)実験結果
次に、本実施の形態に関して行った実験結果を示す。
【0049】
本実験では、「テーラーメード型ワクチン療法(より具体的には、テーラーメード型がんペプチドワクチン療法)」と呼ばれる療法で利用されるワクチン(テーラーメードワクチン)の製造実験を行った。すなわち、テーラーメードワクチンの油相材料2.728mlと、水相材料(代替物として生理食塩水)0.210mlが封入された容量5mlの容器(バイアル瓶)を、容器ホルダ30に保持させ、容器ホルダ30を2000rpmで1分間回転(公転及び自転)させた。そして、上記の処理によって製造された処理液(乳化液E)を水に滴下して観察することにより、乳化液Eの安定度を確認した。
【0050】
図7(A)は乳化液Eを水に滴下した直後の様子を示す写真であり、図7(B)は滴下から4分経過後の様子を示す写真である。図7(A)及び図7(B)からわかるように、乳化液Eと水との境界がはっきりと表れており、上記実験によって材料が乳化していることが確認できる。特に、図7(A)及び図7(B)から、滴下から4分経過後にも、乳化液Eの乳化の崩れが起こっていないことが確認できる。すなわち、上記の実験により、乳化装置1により、非常に安定した乳化液を製造することが可能であることが確認できる。
【0051】
(7)変形例
以下、本実施の形態の変形例について説明する。
【0052】
(7−1)第1の変形例
本変形例では、乳化装置は、図8に示す、アダプタ70を有する。アダプタ70は、複数の乳化容器100を保持することが可能に構成されている。具体的には、アダプタ70は、二つの保持部72を有する。そして、アダプタ70では、二つの保持部72が、自転軸線L2と直交する仮想平面上に配置されている。また、アダプタ70では、二つの保持部72が、自転軸線L2から等距離に配置されている。ただし別の変形例として、アダプタを、3個以上の複数の保持部を有するように構成することも可能である(図示せず)。
【0053】
このアダプタ70を利用することにより、複数の乳化容器100を同時に処理することができるため、材料Mの処理効率を高めることができる。特に、複数の乳化容器100を、自転軸線L2から等距離の位置に配置することにより、すべての乳化容器100が同じ挙動を示すことになる。そのため、複数の乳化容器100を利用した場合でも、均一に乳化処理を行うことができる。
【0054】
また、このアダプタ70では、乳化容器100が、自転軸線L2からずれた位置に配置される。このことから、乳化容器100を自転軸線L2上に配置する場合に比べて、材料Mに作用するエネルギーが大きくなり、効率よく乳化処理を行うことができる。
【0055】
(7−2)第2の変形例
本変形例では、乳化装置は、図9(A)及び図9(B)に示す、アダプタ80を有する。アダプタ80は、乳化容器100を保持するための保持部82を有する。保持部82は、第1の保持領域84と、第2の保持領域86とを含み、第1の保持領域84又は第2の保持領域86で、乳化容器100を保持することが可能に構成されている(図9(B)参照)。言い換えると、アダプタ80(保持部82)は、アダプタ80の直径方向に配置された上側保持部84−1及び下側保持部84−2と、上側保持部86−1及び下側保持部86−2とを含む。そして、アダプタ80は、上側保持部84−1及び下側保持部84−2で乳化容器100を保持するか、又は、上側保持部86−1及び下側保持部86−2で乳化容器100を保持するように構成されている。
【0056】
アダプタ80によると、第1の保持領域84及び第2の保持領域86を異なる外形(大きさ)とすることにより、一つのアダプタで、外形の異なる複数種類(二種類)の乳化容器に対応することが可能になる。また、図9(B)に示すように、乳化容器100を保持した状態で、乳化容器100の中央部の側面を露出させることができるため、乳化容器100の取り出しが容易になる。
【0057】
なお、他の変形例として、アダプタの保持部を、3個以上の複数の保持領域を有するように構成することも可能である(図示せず)。
【0058】
(7−3)第3の変形例
本変形例では、乳化装置は、図10に示す、アダプタ90を有する。アダプタ90は、一つの保持部92を有する。そして、保持部92は、自転軸線L2(アダプタ90の中心)からずれた位置に配置される。すなわち、アダプタ90は、乳化容器100を、自転軸線L2からずれた位置に保持するように構成されている。
【0059】
アダプタ90によると、効率よく乳化処理を行うことができるだけでなく、乳化容器100を保持した状態で、アダプタ90及び乳化容器100の重心点を自転軸線L2近傍に配置することが可能になる。そのため、容器ホルダ30を公転させながら自転させる工程で、乳化装置の挙動を安定させることができる。
【0060】
(7−4)その他の変形例
他の変形例として、乳化装置は、乳化容器100を、その高さ方向が自転軸線L2と斜めに交差するように保持するように構成されたアダプタを利用することも可能である。あるいは、乳化装置は、公転軸線L1と自転軸線L2とが平行になるように構成することも可能である。これらの変形例を採用した場合にも、乳化容器100内で材料Mに十分なエネルギーを作用させることができるため、乳化容器100内で材料Mを乳化させることが可能になる。あるいは、上記したホルダ本体38とアダプタ40とが一体的に構成された容器ホルダを利用することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…乳化装置、 10…回転軸、 20…回転体、 30…容器ホルダ、 32…自転軸、 34…ベアリング、 36…バランス錘、 38…ホルダ本体、 40…アダプタ、 42…保持部、 50…駆動機構、 51…モータ、 52…自転駆動機構、 54…自転プーリー、 56…自転力付与プーリー、 58…ベルト、 59…アイドラプーリー、 60…支持基板、 70…アダプタ、 72…保持部、 80…アダプタ、 82…保持部、 84…第1の保持領域、 84−1…上側保持部、 84−2…下側保持部、 86…第2の保持領域、 86−1…上側保持部、 86−2…下側保持部、 90…アダプタ、 92…保持部、 100…乳化容器、 110…本体、 112…底部、 116…上部、 120…蓋体、 122…ゴム栓、 124…金属フィルム、 126…シール、 E…乳化液、 L1…公転軸線、 L2…自転軸線、 M…材料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
公転軸線を中心に公転しながら、自転軸線を中心に自転することが可能に構成された容器ホルダと、
前記容器ホルダを公転させながら自転させる駆動機構と、
を含み、
前記容器ホルダは、内部に材料が封入された乳化容器を、その高さ方向が前記自転軸線に対して傾斜するように保持し、
前記容器ホルダを公転させながら自転させることにより、前記乳化容器内で前記材料を乳化させる乳化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乳化装置において、
前記容器ホルダは、前記乳化容器を、前記高さ方向が前記自転軸線と直交するように保持する乳化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の乳化装置において、
前記容器ホルダは、複数の前記乳化容器を保持することが可能に構成されている乳化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の乳化装置において、
前記容器ホルダは、前記複数の乳化容器を、前記自転軸線と直交する一つの仮想平面上に保持することが可能に構成されている乳化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の乳化装置において、
前記容器ホルダは、前記複数の乳化容器を、前記自転軸線からの距離が一定になるように保持する乳化装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の乳化装置において、
前記容器ホルダは、ホルダ本体と、前記ホルダ本体に対して着脱可能に構成されたアダプタとを含み、
前記乳化容器は、前記アダプタに保持される乳化装置。
【請求項7】
公転軸線を中心に公転しながら自転軸線を中心に自転することが可能に構成された容器ホルダに保持されて前記容器ホルダと一体的に挙動するアダプタであって、
内部に乳化処理の対象となる材料が封入された乳化容器を、その高さ方向が前記自転軸線に対して傾斜するように保持する保持部を有するアダプタ。
【請求項8】
公転軸線を中心に公転しながら、自転軸線を中心に自転することが可能に構成された容器ホルダに、材料が封入された乳化容器を、その高さ方向が前記自転軸線に対して傾斜するように保持させる工程と、
前記容器ホルダを公転させながら自転させることにより、前記乳化容器内で前記材料を乳化させて乳化液を製造する工程と、
を含む乳化液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−194470(P2010−194470A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43145(P2009−43145)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(393030408)株式会社シンキー (34)
【Fターム(参考)】