説明

乳化装置

【課題】乳化状態を生成することを可能にする乳化装置を提供する。
【解決手段】乳化装置10は、混合ポンプ30、水源20、送水調節器40、送気調節器50および乳化器70を備える。水源20は混合ポンプ30に接続され、送水調節器40は混合ポンプ30に接続される。また、送気調節器50は混合ポンプ30に接続される。混合ポンプ30は空気を水中に溶解させ、そののち高圧気液混合体を出力する。乳化器70は混合ポンプ30に接続され、ハウジング71を有し、ハウジング71は隔離板72によって内部空間が前チャンバー73および後チャンバー74に分割される。隔離板72は複数の細孔75を有するため、高圧気液混合体が細孔75を通過する際、空洞現象(cavitation)によって乳化状態を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化装置に関し、詳しくは空洞現象(cavitation)によって高圧気液混合体を乳化させる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気を溶解させた水を減圧することによって生成する微細気泡は、汎用され、特に水質処理およびそれに関わるプロセスに応用することが成功したとされている。気泡が小さければ小さいほど水中に滞留する時間は長くなり、生じる作用は大きくなる。乳化とは水中の気泡密度が最大状態に達することを指す。乳化に必要な気泡径は数マイクロメートルより小さいため、加圧浮上分離法において、如何に直径がより小さく密度がより高い気泡を獲得するかということが重要な課題になる。
【0003】
台湾特許第I245667号により開示される『超微細気泡発生器』は、多段式ポンプによって空気を水中に溶解させ、気液混合体を生成させ、そののち気液混合体を減圧装置に出力し、気液混合体を瞬間に減圧することによって超微細気泡を放出する。
【0004】
しかしながら、上述した発明は、構造のため、気泡の大きさおよび密度が制限されることが原因で乳化条件に達することができない。
【0005】
【特許文献1】台湾特許第I245667号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、高速水路において速度を変えるとき、一部分の圧力は水の蒸気圧力より低いため、水を空洞気泡(cavitation bubble)に蒸発させ、そののち空洞泡は崩壊(collapse)が発生し、高エネルギーを放出することを発見した。この現象は、流体力学において空洞現象(cavitation)と称される。
【0007】
本発明者は、さらに気液混合体が空洞発生領域(cavitation zone)を通過する際、気泡(air bubble)が水中から放出されることと、空洞泡が縮退崩壊する際、空洞泡が含有した空気は微細な気泡に分解し、空洞泡が縮退崩壊して放出した高エネルギーは水中から気泡を激増させ、乳化効果を生成することを発見した。
【0008】
従って、本発明の主な目的は、流体力学の空洞現象によって気泡を水中に拡散させ、ミルクのような乳化状態を生成することを可能にする乳化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明による乳化装置は、混合ポンプ、水源、送水調節器、送気調節器および乳化器を備える。水源は混合ポンプに給水するため、混合ポンプに接続される。送水調節器は混合ポンプに流れ込む水量を調節するため混合ポンプに接続される。送気調節器は混合ポンプに流れ込む空気量を調節するため混合ポンプに接続される。混合ポンプは空気を水中に溶解させ、そののち高圧気液混合体を出力する。乳化器は混合ポンプに接続され、ハウジングを有し、ハウジングは隔離板によって内部空間が前チャンバーおよび後チャンバーに分割され、隔離板は複数の細孔を有するため、高圧気液混合体が細孔を通過する際、空洞現象(cavitation)によって乳化状態を生成する。
【0010】
好ましいのは、乳化器の細孔は幅が0.3mm以下であり、空洞発生地帯は細孔の断面積の20%以上を占める。
【0011】
好ましいのは、乳化器は隔離板の一側を移動可能なように装着される隙間調整板を有し、隙間調整板は複数の細孔を有する。隙間調整板を移動させ、隔離板の細孔に対して細孔の位置を調整して、互いに向かい合う二つの細孔をずらして生じた隙間を調整する。
【0012】
好ましいのは、混合ポンプは遠心式であり、ポンプシャフトとともに回転する少なくとも一つのローターと、ポンプケースに固定される少なくとも一つのステーターとを有する。ローターおよびステーターは高圧気液混合体を軸方向に通過させるため、円盤の周縁に配置される複数の通路を別々に有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の技術内容および特徴を明確するため、以下の図面および詳細な実施形態に基づいて説明を進める。
【0014】
本発明の技術内容の説明に用いる乳化装置10を図1の平面図で示す。乳化装置10は、水源20、混合ポンプ30、送水調節器40、送気調節器50、逆止弁60、乳化器70および必要な管路を備える。
【0015】
水源20は、混合ポンプ30に給水するため、第一管路25によって混合ポンプ30に接続される。混合ポンプ30に流れ込む水の清潔を確保するため、水源20は流出口にフィルター21を有する。フィルター21は水中の固体異物をろ過し、乳化通路の塞ぎ現象を避けることが可能である。
【0016】
送水調節器40は、水源20が混合ポンプ30に供給する水量を調節するため、第一管路25に装着される。
【0017】
送気調節器50は、混合ポンプ30に流れ込む空気量を調節するため、第二管路45に装着される。第二管路45は第一管路25と連絡し、かつ送水調節器40と混合ポンプ30の間に位置付けられる。
【0018】
混合ポンプ30は、水源20に接続され、かつ送水口あたりの低圧を生成し、水をポンプケース内に誘導し、かつ空気を吸引し、水中に溶解させることによって、圧力が4.0Kg/cm2以上の飽和気液混合体を出力する。図2と図3に示す混合ポンプ30は遠心式であり、従来の遠心式ポンプと比べて、ポンプシャフト31とともに回転するローター33と、ポンプケース32に固定されるステーター34とを有する。高圧気液混合体を軸方向に通過させるため、ローター33の円盤35は複数の通路37を有し、ステーター34の円盤36は複数の通路38を有する。その作用についての説明は後ほど述べる。本実施形態において通路36、38は円形であるが、円形に限らず細長い形などの別の形を採用することが可能である。またローター33とステーター34との組み合せを複製し、多段式混合ポンプを成型することによって圧力のより高い飽和気液混合体を生成することが可能である。
【0019】
逆止弁60は、第二管路45に装着され、かつ第一管路25中の水が第二管路45を経て送気調節器50に逆流することを防止するため、第一管路25および送気調節器50の間に位置付けられる。
【0020】
乳化器70は、第三管路55によって混合ポンプ30に接続される。本願発明の第1実施形態の乳化器70は、図4に示すように、ハウジング71を有し、ハウジング71は隔離板72によって内部空間が前チャンバー73および後チャンバー74に分割される。隔離板72は複数の第一細孔としての細孔75を有し、細孔75によって乳化通路を構成するため、気液混合体が流れる際、空洞現象(cavitation)を生じさせることが可能である。空洞現象は細孔75の周縁にしか発生しないため、割合の比較的高い空洞発生領域(cavitation zone)を獲得するのには、細孔75の幅aを0.33mm以下、空洞発生地帯を細孔75の断面積の20%以上にすることが好ましい。
【0021】
乳化装置10が作動する際、混合ポンプ30は運転を開始し、第一管路25によって水源20から供給される水を吸引すると同時に第二管路45によって送気調節器50から適量の空気を吸引する。水および空気がポンプケース32に流れ込み、ローター33とともに回転する際、ローター33のエネルギーが吸収されるため、圧力および速度が高くなると同時に、空気を水中に溶解させて高圧飽和気液混合体を生成させることが可能である。ローター33によって気液混合体を排出口39まで誘導すると、気液混合体は軸方向に沿ってローター33およびステーター34の通路36、38を通過することが可能である。ローター33はステーター34に向かい合って回転し、裁断作用を発生させるため、まだ均質化されていない気泡を細かく崩し、気泡を水中に均質に分布させることによって空気を水中に溶解させる時間を短縮することが可能である。ポンプケース32から流出した気液混合体は、第三管路55によって乳化器70の前チャンバー73に出力される。気液混合体が乳化器70の細孔75を通過する際、空洞現象によって乳化を完成させ、そののち後チャンバー74から第四管路65を経て水槽80に流れ込むか、同一水源20に戻ることが可能である。
【0022】
本願発明の第2実施形態の乳化器70aは図5のように示す。本実施形態において、乳化器70aは、上述の乳化器70と比べて隙間調整板76が増加する。隙間調整板76は隔離板72の一側を移動可能なように配置され、かつ複数の第二細孔としての細孔77を有する。本実施形態において、隔離板72および隙間調整板76の細孔75、77は一定の距離をおいて配置され、幅は数mmに達することが可能であるため、隙間調整板76を移動させ、隔離板の細孔75に対して細孔77の位置を調整し、互いに向かい合う二つの細孔75、77をずらすか、同一軸線上に位置させなければ、上述の細孔の幅aが一定するという制限を受けることなく、異なる流体条件に適することが可能である。かつ乳化通路が塞がれた時、隙間bを最大に調整すれば固定異物を排出することが可能である。
【0023】
上述した説明及び図面にかかわるあらゆる記述は、本発明を説明するための一例に過ぎず、本発明の請求範囲を制限することができないため、上述した実施形態は本発明の請求範囲を逸脱しない限り、若干の変化を加えることが認められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による乳化装置を示す平面図である。
【図2】本発明による乳化装置においての混合ポンプを示す断面図である。
【図3】本発明による乳化装置においての混合ポンプを示す一部分の平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による乳化装置においての乳化器を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による乳化装置においての乳化器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10:乳化装置、 20:水源、 21:フィルター、 25:第一管路、 30:混合ポンプ、 31:ポンプシャフト、 32:ポンプケース、 33:ローター、34:ステーター、 35:円盤、 36:円盤、 37:通路、 38:通路、 39:出口、 40:送水調節器、 45:第二管路、 50:送気調節器、 55:第三管路、 60:逆止弁、 65:第四管路、 70:乳化器、 70a:乳化器、 71:ハウジング、 72:隔離板、 73:前チャンバー、 74:後チャンバー、 75:細孔、 76:隙間調整板、 77:細孔、 80:水槽、 a:幅、 b:隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ポンプと、
該混合ポンプに給水するため、前記混合ポンプに接続される水源と、
前記混合ポンプに流れ込む水量を調節するため前記混合ポンプに接続される送水調節器と、
前記混合ポンプに流れ込む空気量を調節するため前記混合ポンプに接続される送気調節器と、
前記混合ポンプに接続され、ハウジングを有し、ハウジングは隔離板によって内部空間が前チャンバーおよび後チャンバーに分割される乳化器と、
を備え、
前記混合ポンプは空気を水中に溶解させ、そののち高圧気液混合体を出力し、前記隔離板は複数の第一細孔を有するため、高圧気液混合体が前期第一細孔を通過する際、空洞現象によって乳化状態を生成することを特徴とする乳化装置。
【請求項2】
前記第一細孔の幅は、0.3mm以下であり、空洞発生領域は、前記第一細孔の断面積の20%以上を占めることを特徴とする請求項1に記載の乳化装置。
【請求項3】
前記乳化器は、さらに前記隔離板の一側を移動可能なように装着される隙間調整板を有し、該隙間調整板は複数の第二細孔を有し、かつ前記隙間調整板を移動させ、前記第一細孔に対して前記第二細孔の位置を調整して、互いに向かい合う前記第一細孔と前記第二細孔とをずらして生じた隙間を調整することを特徴とする請求項1に記載の乳化装置。
【請求項4】
前記混合ポンプは、遠心式であり、ポンプシャフトとともに回転する少なくとも一つのローターと、ポンプケースに固定される少なくとも一つのステーターとを有し、ローターおよびステーターは前記高圧気液混合体を軸方向に通過させるため、円盤の周縁に配置される複数の通路を別々に有することを特徴とする請求項1に記載の乳化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137180(P2010−137180A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316939(P2008−316939)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(508367197)
【出願人】(508367201)
【Fターム(参考)】