説明

乳幼児服

【課題】視覚障害を有する保育者による取り扱いの容易な乳幼児服を提供する。
【解決手段】首元から股までの前立て部分で開閉する上半身用開閉部と、この上半身用開閉部にそれぞれ繋がってズボンの内股側を開閉する左足側開閉部及び右足側開閉部とを有するつなぎ服から成る乳幼児服において、前立てには、首元から股にかけて舌片状の第1の膨出部と、第2の膨出部と、第3の膨出部とを順次設けて正面視で波形状とし、前立ての下端となる股の部分には、下方向に膨出させた舌片状の第4の膨出部を設け、ズボンの左足内股の部分には、右足の方向に膨出させた舌片状の第5の膨出部を設け、ズボンの右足内股の部分には、左足の方向に膨出させた舌片状の第6の膨出部を設け、第1〜6の膨出部にそれぞれスナップボタンの一方を取り付け、スナップボタンの他方を所定位置に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳幼児服に関するものであり、特にボタンの取付構造に特徴を有することにより視覚障害を有する保育者による取り扱いの容易な乳幼児服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乳幼児用の服に関しては、デザイン性や機能性の面から様々な提案がなされており、多種多様な商品が販売されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、乳幼児用ではないものの、障害者が容易に着脱できるようにした衣服も提案されている。特に、ボタンの掛け違いを防止しやすいように、隣り合ったボタンを異種のボタンとすることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−214317号公報
【特許文献2】特開2004−137616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、視覚障害を有する保育者が、乳幼児に衣服を着せようとする際には、ボタンの位置がわかりにくいことにより、ボタンを探すことに手間取って、スムーズに着せることができないという問題があった。
【0006】
このような場合、一般的には面ファスナーが用いられることが多いが、面ファスナーの場合には、多少のずれが生じていても問題なく留められるという利点を有している一方で、ずれた状態のまま面ファスナーで留めていると、乳幼児などの体の動きの多い者が着用している場合には、着衣のずれが生じやすくなるという問題があった。
【0007】
このような現状に鑑み、本発明者は、視覚障害を有する保育者による取り扱いの容易な乳幼児服を提供すべく開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乳幼児服では、首元から股までの前立て部分で開閉する上半身用開閉部と、この上半身用開閉部にそれぞれ繋がってズボンの内股側を開閉する左足側開閉部及び右足側開閉部とを有するつなぎ服から成る乳幼児服において、前立てには、首元から股にかけて舌片状の第1の膨出部と、第2の膨出部と、第3の膨出部とを順次設けて正面視で波形状とし、前立ての下端となる股の部分には、下方向に膨出させた舌片状の第4の膨出部を設け、ズボンの左足内股の部分には、右足の方向に膨出させた舌片状の第5の膨出部を設け、ズボンの右足内股の部分には、左足の方向に膨出させた舌片状の第6の膨出部を設け、第1〜6の膨出部にそれぞれスナップボタンの一方を取り付け、スナップボタンの他方を所定位置に取り付けているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1〜6の膨出部にそれぞれスナップボタンの一方を取り付けていることから、ボタンの位置を認識しやすく、目の不自由な方でも確実にボタンをつかめて、掛け違いなく合わせることができる。
【0010】
特に、第1〜3の膨出部によって前立てを正面視で波形状としているので、ボタンを認識しやすいだけでなく、少ないボタン数でも各ボタンの間に生地の隙間ができることがなく、着衣の状態を乱れにくくすることができる。
【0011】
また、上半身側の第1〜3の膨出部に設けた3つのボタンと、下半身側の第4〜6の膨出部に設けた3つのボタンとで着衣可能であるため、掛け違いがなくボタンを合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る乳幼児服の正面図である。
【図2】本発明に係る乳幼児服の背面図である。
【図3】中間布片の説明図である。
【図4】使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の乳幼児服は、首元から股までの前立て部分で開閉する上半身用開閉部と、この上半身用開閉部にそれぞれ繋がってズボンの内股側を開閉する左足側開閉部及び右足側開閉部とを有するつなぎ服としているものである。
【0014】
そして、前立てには、首元から股にかけて舌片状の第1の膨出部と、第2の膨出部と、第3の膨出部とを順次設けて正面視で波形状としている。
【0015】
また、前立ての下端となる股の部分には、下方向に膨出させた舌片状の第4の膨出部を設けている。
【0016】
さらに、ズボンの左足内股の部分には、右足の方向に膨出させた舌片状の第5の膨出部を設け、ズボンの右足内股の部分には、左足の方向に膨出させた舌片状の第6の膨出部を設けている。
【0017】
このように設けた第1〜6の膨出部には、それぞれスナップボタンの一方を取り付け、スナップボタンの他方を所定位置に取り付けることにより、目の不自由な保育者でもボタンの位置を認識しやすく、また、ボタン自体を直接的につかめなくても各膨出部をつかむことにより間接的にボタンをつかむことができ、確実にボタンをつかんで掛け違いなく合わせることができる。
【0018】
図面に基づいてより詳細に説明すると、図1及び図2に示すように、本発明の乳幼児服は、上着10とズボン20が連結されて一体となっているつなぎ服であって、首元から股までの前立て部分で開閉する上半身用開閉部31と、この上半身用開閉部31にそれぞれ繋がってズボン20の内股側を開閉する左足側開閉部32及び右足側開閉部33とを設けているものである。
【0019】
このように、上半身用開閉部31だけでなく左足側開閉部32と右足側開閉部33とを設けたことにより、乳幼児服をシート状に広げることができる。そして、シート状に広げた乳幼児服の上に乳幼児を寝かせることで、乳幼児服を容易に着させることができる。
【0020】
前立てには、首元から股にかけて舌片状の第1膨出部11と、第2膨出部12と、第3膨出部13とを順次設けている。この第1〜3膨出部11,12,13によって、前立ては正面視で波形状としている。
【0021】
第1〜3膨出部11,12,13にはそれぞれスナップボタンの一方を取り付け、スナップボタンの他方を右前身頃14の所定位置に取り付けている。スナップボタンは、通常、突出部を有する雄型金具と、突出部と嵌め合わせる凹状の嵌合穴を有する雌型金具で構成され、必要に応じて雄型金具と雌型金具とをそれぞれ固定する固定金具が用いられている。説明の便宜上、雄型金具を雄型ボタン、雌型金具を雌型ボタンと呼ぶこととする。本実施形態では、第1〜3膨出部11,12,13には第1〜3雄型ボタン11a,12a,13aをそれぞれ取り付け、右前身頃14の所定位置には第1〜3雌型ボタン11b,12b,13bをそれぞれ取り付けている。なお、第1〜3膨出部11,12,13に雌型ボタンを取り付け、右前身頃の所定位置に雄型ボタンを取り付けてもよい。
【0022】
右前身頃14に取り付けられる第1〜3雌型ボタン11b,12b,13bは、それぞれ小判形状とした中間布片15に装着し、この中間布片15を所定位置に縫い付けることにより右前身頃14への雌型ボタンの取り付けを行っている。
【0023】
中間布片15は、右前身頃14の生地と異なる色合いの布片としており、中間布片15を目に付きやすくすることによって第1〜3雌型ボタン11b,12b,13bを視認しやすくしている。
【0024】
本実施例では、中間布片15を小判形状としているが、小判形状に限定するものではなく、矩形状や円形状などの適宜の形状としてよく、色合いで視認性を高めるだけでなく、形状的あるいは模様的にも視認性を高めるようにしてもよい。
【0025】
中間布片15を右前身頃14の所定位置に縫い付ける際には、図3に示すように、中間布片15の上側部15uと下側部15dとを右前身頃14の生地に縫合する一方で、雌型ボタンが取り付けられている中央部分15cは縫合せずに、図4に示すように、右前身頃14の生地と中間布片15との間に手の指を挿入できる隙間15sを形成している。
【0026】
雌型ボタンに雄型ボタンを嵌め合わせる場合には、図4に示すように、右前身頃14の生地と中間布片15との間の隙間15sに左手の人差し指を挿し入れて、人差し指の指先の腹の部分で雌型ボタンを支えておきながら、右手で前立てに設けた膨出部を引張って雄型ボタンを雌型ボタンの位置にまでもってきて、左手の親指で雄型ボタンを雌型ボタンの方に押しつけることにより、雄型ボタンと雌型ボタンとを嵌め合わせることができるようにしている。
【0027】
このとき、雄型ボタンと雌型ボタンとの嵌め合わせを左手だけで行うことができ、特に、左手の親指と人差し指で円をつくる動きで嵌め合わせができるので、視覚障害を有する保育者でも確実に嵌め合わせることができる。
【0028】
図1に示すように、前立ての下端となる股の部分には、下方向に膨出させた舌片状の第4膨出部24を設けている。この第4膨出部24は、股下を覆うカバーとしても機能するものである。
【0029】
第4膨出部24には第4雄型ボタン24aを取り付けており、この第4雄型ボタン24aと嵌め合わされる第4雌型ボタン24bは、図2に示すように、ズボン20のおしり部分から下方に引き出した帯状の延長片21に取り付けている。
【0030】
第4雌型ボタン24bを延長片21に取り付ける場合にも、図2に示すように、第4雌型ボタン21を中間布片22に取り付け、この中間布片22を延長片21の所定位置に縫い付けている。なお、第4雌型ボタン24bが取り付けられた中間布片22を延長片21に縫い付ける場合には、延長片21が帯状となっているために、延長片21と中間布片22との間に隙間を設けることなく縫い付けてよい。
【0031】
図1に示すように、ズボン20の左足内股の部分には左足側開閉部32を設けて開閉自在とし、左足側開閉部32で分けられた前側の端縁に右足の方向に膨出させた舌片状の第5膨出部25を設けている。また、ズボン20の右足内股の部分には右足側開閉部33を設けて開閉自在とし、右足側開閉部33で分けられた前側の端縁に左足の方向に膨出させた舌片状の第6膨出部26を設けている。
【0032】
第5膨出部25には第5雄型ボタン25aを取り付け、第6膨出部26には第6雄型ボタン26aを取り付けている。
【0033】
図2に示すように、第5雄型ボタン25aと嵌め合わされる第5雌型ボタン25bは、ズボン20の左足部分の左足側開閉部32で分けられた後側の端縁に取り付けている。また、第6雄型ボタン26aと嵌め合わされる第6雌型ボタン26bは、ズボン20の右足部分の右足側開閉部33で分けられた後側の端縁に取り付けている。
【0034】
本実施例では、図2に示すように、第5雌型ボタン25bと第6雌型ボタン26bも中間布片27に取り付けて、この中間布片27をズボン20の所定位置に縫い付けている。なお、第5雌型ボタン25bが取り付けられた中間布片27、及び第6雌型ボタン26bが取り付けられた中間布片27をズボン20に縫い付ける場合には、それぞれ左足側開閉部32及び右足側開閉部33の近傍に取り付けられるため、ズボン20の生地と中間布片22との間に隙間を設けることなく縫い付けてもよい。
【0035】
中間布片27にも、ズボン20の生地と色合いの異なる布片を用いることにより、第5雌型ボタン25b及び第6雌型ボタン26bを見つけやすくすることができ、乳幼児への乳幼児服の着付けを速やかに行うことができる。
【0036】
上記したように構成した乳幼児服では、上着10側で第1〜3雄型ボタン11a,12a,13aと第1〜3雌型ボタン11b,12b,13bの3組のボタンで着付けを行うことができ、ズボン20側で第4〜6雄型ボタン24a,25a,26aと第4〜6雌型ボタン24b,25b,26bの3組のボタンで着付けを行うことができ、速やかに着付けすることができる。
【0037】
特に、上着10側では、第1〜3雄型ボタン11a,12a,13aを正面視波形状とした前身頃の第1〜3膨出部11,12,13にそれぞれ設けたことにより、各ボタンの位置を認識しやすくすることができ、掛け違いを生じることなく速やかに着付けすることができるとともに、各ボタンの間に生地の隙間ができることがなく、着衣の状態を乱れにくくすることができる。
【符号の説明】
【0038】
10 上着
11 第1膨出部
11a 第1雄型ボタン
11b 第1雌型ボタン
12 第2膨出部
12a 第2雄型ボタン
12b 第2雌型ボタン
13 第3膨出部
13a 第3雄型ボタン
13b 第3雌型ボタン
14 右前身頃
15 中間布片
20 ズボン
21 延長片
22 中間布片
24 第4膨出部
24a 第4雄型ボタン
24b 第4雌型ボタン
25 第5膨出部
25a 第5雄型ボタン
25b 第5雌型ボタン
26 第6膨出部
26a 第6雄型ボタン
26b 第6雌型ボタン
27 中間布片
31 上半身用開閉部
32 左足側開閉部
33 右足側開閉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
首元から股までの前立て部分で開閉する上半身用開閉部と、
この上半身用開閉部にそれぞれ繋がってズボンの内股側を開閉する左足側開閉部及び右足側開閉部と
を有するつなぎ服から成る乳幼児服において、
前記前立てには、首元から股にかけて舌片状の第1の膨出部と、第2の膨出部と、第3の膨出部とを順次設けて正面視で波形状とし、
前記前立ての下端となる股の部分には、下方向に膨出させた舌片状の第4の膨出部を設け、
前記ズボンの左足内股の部分には、右足の方向に膨出させた舌片状の第5の膨出部を設け、
前記ズボンの右足内股の部分には、左足の方向に膨出させた舌片状の第6の膨出部を設け、
前記第1〜6の膨出部にそれぞれスナップボタンの一方を取り付け、スナップボタンの他方を所定位置に取り付けている乳幼児服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−214930(P2012−214930A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81197(P2011−81197)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(505376444)
【Fターム(参考)】