説明

乳幼児用衣服

【課題】おむつを交換する際、容易にパンツ部を着脱することができ、かつ構造が簡単で生産コストが安い乳幼児用衣服を提供する。
【解決手段】乳幼児用衣服10は、前部13と背部14とを含む上衣11と、上衣11に連結され、腹部15と腰部16と一対の脚部17a、17bとを有するパンツ部12とを備えている。また上衣11の前部13とパンツ部12の腹部15とは一体に連結されている。一方、上衣11の背部14とパンツ部12の腰部16とは連結されないで、おむつ換え用開口部20を形成している。このおむつ換え用開口部20から乳幼児Bのおむつ30を容易に交換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上衣とパンツ部とが一体となった乳幼児向けの衣服に係り、とりわけおむつを交換する際に容易に臀部や大腿部を露出させることができ、かつ構造が簡単で生産コストが安い乳幼児用衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上下一体に構成された乳幼児用衣服が知られている。例えば図3に示すように、従来の乳幼児用衣服50は、背面部51と、背面部51の右側縁51aから延びる右側前面部52と、背面部51の左側縁51bから延びる左側前面部53とを有している。背面部51と右側前面部52との間、および背面部51と左側前面部53との間に、一対の袖部54が設けられている。
【0003】
また右側前面部52の端部52aと左側前面部53の端部53aが、複数のスナップボタン56aにより互いに着脱自在に取付けられている。他方、右側前面部52の下部および左側前面部53の下部は、それぞれスナップボタン56b、56cを介して背面部51の下部に着脱自在に取付けられている。このようにして右側前面部52の下部および左側前面部53の下部を背面部51の下部にそれぞれ取付けることにより、一対の筒状の脚部55a、55bが形成される。
【0004】
ところで、このような乳幼児用衣服50を着用している乳幼児のおむつを交換する場合、まず乳幼児を仰臥状態にする。次に、複数のスナップボタン56b、56cを取外し、右側前面部52および左側前面部53を上方へまくり上げて、乳幼児のおむつを交換する。このようにしておむつの交換が完了した後、右側前面部52および左側前面部53を下方に引下げ、次に各スナップボタン56b、56cを取付けることにより、右側前面部52の下部および左側前面部53の下部を背面部51の下部にそれぞれ取付ける。
【0005】
しかしながら、このような乳幼児用衣服50を着用している乳幼児のおむつを交換する場合、その都度複数のスナップボタン56b、56cを取外したり取付けたりする作業を行なう必要があるため煩雑である。またおむつを交換する際や着替えを行なう際、スナップボタン56a、56b、56cを掛け違えるミスが発生しやすい。またスナップボタン56a、56b、56cは、必要以上の力が加えられた場合などに故障が発生しやすい。さらに、乳幼児用衣服50を製造する際多くのスナップボタン56a、56b、56cを縫製する必要があるため、乳幼児用衣服50の生産コストが上昇してしまう。
【特許文献1】特開2006−207038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、上衣の背部とパンツ部の腰部との間におむつ換え用開口部が形成されていることにより、おむつを交換する際、容易にパンツ部を着脱することができ、スナップボタンをなくすことで外観上の見栄えも良く、かつ構造が簡単で生産コストが安い乳幼児用衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前部と背部とを含む上衣と、上衣に連結され、腹部と腰部と一対の脚部とを有するパンツ部とを備え、上衣の前部とパンツ部の腹部とは一体に連結され、上衣の背部とパンツ部の腰部とは連結されないで、おむつ換え用開口部を形成することを特徴とする乳幼児用衣服である。
【0008】
本発明は、パンツ部の腰部上部周縁にゴムが挿入されていることを特徴とする乳幼児用衣服である。
【0009】
本発明は、上衣の背部は、パンツ部の腰部上に重なっており、この重なり幅は60乃至100mmとなることを特徴とする乳幼児用衣服である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上衣の背部とパンツ部の腰部との間におむつ換え用開口部が形成されているので、おむつを交換する際、おむつ換え用開口部から乳幼児の臀部や大腿部を露出させ、容易におむつを交換することができる。また乳幼児用衣服を着替えさせる際、おむつ換え用開口部から乳幼児の体を出し入れすることができる。
【0011】
また、本発明によれば、乳幼児用衣服がスナップボタンを有しないので、おむつを交換する際や着替えをする際にスナップボタンを着脱する必要がない。またスナップボタンを有することなく、かつ上衣の前部とパンツ部の腹部とが一体に連結されているため、見栄えの良い外観を提供することができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、乳幼児用衣服の構造が簡単なので、乳幼児用衣服の生産コストを安くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、図1および図2を参照して説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施の形態を示す正面図であり、図2は、おむつ換え用開口部を開とした状態における乳幼児用衣服を示す背面図である。
【0014】
まず、図1および図2により本実施の形態による乳幼児用衣服の概略について説明する。
図1および図2に示す乳幼児用衣服10は、おむつを着用する乳幼児用のための衣服である。すなわち図1および図2に示すように、乳幼児用衣服10は、前部13と、背部14と、前部13と背部14との間に設けられた一対の袖部19a、19bとを含む上衣11と、上衣11に連結され、腹部15と腰部16と一対の脚部17a、17bとを有するパンツ部12とを備えている。
【0015】
図1に示すように、上衣11の上端に乳幼児Bの頭部が突出する首周り部22が形成され、首周り部22の周囲に乳幼児Bの首周りを覆う襟部23が設けられている。また首周り部22の下方に縦方向に延びる開襟部24が形成され、さらに開襟部24に沿って開襟部24を固定する複数のボタン25が設けられている。
【0016】
また図1に示すように、上衣11の前部13とパンツ部12の腹部15とは一体に連結されている。すなわち、乳幼児用衣服10は、上衣11と、上衣11とは別体に構成されたパンツ部12とを一体に連結して構成したものであり、上衣11の前部13の下部13aとパンツ部12の腹部15の上部15aとは、横一線に延びる前面縫製部18において互いに縫合されている。また上衣11の前部13とパンツ部12の腰部16とは、腰部16の上部16a両端に設けられた側部縫製部18a、18bにおいて互いに縫合されている。
【0017】
一方、図2に示すように、上衣11の背部14とパンツ部12の腰部16とは連結されないで、おむつ換え用開口部20を形成している。すなわち、通常時において、図1に示すように背部14の下部14aは腰部16の上部16aを覆っている。これに対して、着替えの際やおむつ30を交換する際には、図2に示すように、背部14の下部14aをまくり上げるとともに腰部16の上部16aを引下げ、これにより背部14の下部14aと腰部16の上部16aとの間のおむつ換え用開口部20が大きく開かれる。
【0018】
また、図2に示すように、パンツ部12の腰部16の上部16a周縁に、伸縮自在のゴム21が挿入されている。これにより、通常時にはパンツ部12の腰部16を乳幼児Bの腰に密着させることができるとともに、着替えの際やおむつ30を交換する際には腰部16の上部16aを引下げ、これによりおむつ換え用開口部20から容易に乳幼児Bの臀部や大腿部を露出させることができる。
【0019】
ところで、上述したように上衣11の背部14は、パンツ部12の腰部16上に重なっている。この背部14と腰部16との重なり幅Wは、腰部16の上端16bと背部14の下端14bとの間の幅に相当し、また上述した側部縫製部18a、18bの長さに相当する。この重なり幅Wは60乃至100mmとなるのが好ましく、約80mmとなるのが最も好ましい。なお、背部14と腰部16との重なり幅Wが60mm未満であると、乳幼児Bが屈んだ際などにおむつ換え用開口部20から乳幼児Bの背中が露出しやすい。他方、重なり幅Wが100mmを上回ると、おむつ換え用開口部20からおむつ30を交換したり乳幼児Bの着替えをさせたりする作業がむずかしくなる。
【0020】
なお図1に示すように、腰部16の上端16bは前面縫製部18より上方に設けられ、背部14の下端14bは前面縫製部18より下方に設けられている。なお、前部13の下端13bと背部14の下端14bとは同一の高さに配置されている。
【0021】
ところで図1および図2において、上衣11はポロシャツ形状を有しているが、これに限らず、上衣11は、例えば襟部23を有さないTシャツ形状や袖部19a、19bを有さないタンクトップ形状を有していても良い。すなわち、上衣11およびパンツ部12のデザインはそれぞれ自由に変更することができる。これら上衣11とパンツ部12とを組合わせることにより、図3に示すような従来の乳幼児用衣服50と比較して多くの種類からなる乳幼児用衣服10を構成することができる。
【0022】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0023】
まず、乳幼児Bのおむつ30を交換する際の作用について述べる。
はじめに、乳幼児Bを寝かせ、上衣11の背部14を上方にまくり上げる。次に、パンツ部12の腰部16を下方に引き下げる。この際、腰部16の上部16a周縁に設けられたゴム21が伸びるので、おむつ換え用開口部20が大きく開き、乳幼児Bの臀部およびおむつ30が露出する(図2)。次に、乳幼児Bの両足L、Lをパンツ部12の各脚部17a、17bから引き抜く。
【0024】
その後、このようにして乳幼児Bの臀部や大腿部を露出させた状態で、乳幼児Bのおむつ30を交換する。
【0025】
次に、おむつ30を交換した後、乳幼児Bの両足L、Lをパンツ部12の各脚部17a、17b内に挿入して収納する。次に、パンツ部12の腰部16を乳幼児Bの腰側に引き上げる。この際、腰部16の上部16a周縁に設けられたゴム21により、パンツ部12の腰部16が乳幼児Bの腰に密着する。次に、上衣11の背部14を下方に引下げ、背部14の下部14aを腰部16の上部16a上に重ね合わせる。
【0026】
次に、乳幼児Bを着替えさせる際の作用について述べる。
まず、乳幼児Bを脱衣させる場合の作用について述べる。この場合、おむつ30を交換する場合と同様、まず乳幼児Bを寝かせ、この状態で上衣11の背部14を上方にまくり上げ、かつパンツ部12の腰部16を下方に引き下げる。次に、乳幼児Bの両足L、Lをパンツ部12の各脚部17a、17bから引き抜き、パンツ部12を乳幼児Bから取り除く。
【0027】
次に、上衣11を上方へ引き上げる。この際、乳幼児Bの頭部を首周り部22から抜き取るとともに、乳幼児Bの両腕A、Aを一対の袖部19a、19bから抜き取る。このようにして、乳幼児Bの上半身から上衣11が取り外される。これにより、乳幼児Bが乳幼児用衣服10を脱衣することができる。この際、各ボタン25を予め取り外して開襟部24を開としておくと、首周り部22から乳幼児Bの頭部を容易に抜き取ることができる。
【0028】
次に、乳幼児Bに着衣させる場合の作用について述べる。
まず、各ボタン25を予め取り外して開襟部24を開とし、この状態で首周り部22内へ乳幼児Bの頭部を挿入する。同時に乳幼児Bの両腕A、Aを一対の袖部19a、19b内に挿入して収納する。次に、上衣11を乳幼児Bの腹側へ引き下げることにより、上衣11が乳幼児Bの上半身に着用される。その後、各ボタン25を取付けて開襟部24を閉とする。
【0029】
次に、乳幼児Bの両足L、Lをパンツ部12の各脚部17a、17b内に挿入して収納する。次に、パンツ部12の腰部16を乳幼児Bの腰側に引き上げる。その後、上衣11の背部14を下方に引下げ、上衣11の背部14をパンツ部12の腰部16上に重ね合わせる。このようにして、パンツ部12が乳幼児Bの下半身に着用される。これにより、乳幼児Bが乳幼児用衣服10を着衣することができる。
【0030】
このように、本実施の形態によれば、上衣11の背部14とパンツ部12の腰部16との間におむつ換え用開口部20が形成されているので、おむつ30を交換する際、おむつ換え用開口部20から乳幼児Bの臀部や大腿部を露出させ、容易におむつ30を交換することができる。また乳幼児用衣服10を着替えさせる際、おむつ換え用開口部20から乳幼児Bの体を出し入れすることができる。
【0031】
また、本実施の形態によれば、乳幼児用衣服10がスナップボタンを有しないので、おむつ30を交換する際や着替えをする際にスナップボタンを着脱する必要がない。またスナップボタンを有することなく、かつ上衣11の前部13とパンツ部12の腹部15とが一体に連結されているため、見栄えの良い外観を提供することができる。
【0032】
さらに、本実施の形態によれば、乳幼児用衣服10は、上衣11の前部13とパンツ部12の腹部15とを縫合して一体に連結されているので、乳幼児用衣服10の構造が簡単であり、乳幼児用衣服10の生産コストを安くすることができる。また、上衣11とパンツ部12とを種々組合わせることにより、多様なデザインからなる乳幼児用衣服10を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による乳幼児用衣服の一実施の形態を示す正面図。
【図2】おむつ換え用開口部を開とした状態における乳幼児用衣服を示す背面図。
【図3】従来の乳幼児用衣服を示す正面図。
【符号の説明】
【0034】
10 乳幼児用衣服
11 上衣
12 パンツ部
13 前部
13a 前部の下部
13b 前部の下端
14 背部
14a 背部の下部
14b 背部の下端
15 腹部
15a 腹部の上部
16 腰部
16a 腰部の上部
16b 腰部の上端
17a、17b 脚部
18 前面縫製部
18a、18b 側部縫製部
19a、19b 袖部
20 おむつ換え用開口部
21 ゴム
22 首周り部
23 襟部
24 開襟部
25 ボタン
30 おむつ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部と背部とを含む上衣と、
上衣に連結され、腹部と腰部と一対の脚部とを有するパンツ部とを備え、
上衣の前部とパンツ部の腹部とは一体に連結され、上衣の背部とパンツ部の腰部とは連結されないで、おむつ換え用開口部を形成することを特徴とする乳幼児用衣服。
【請求項2】
パンツ部の腰部上部周縁にゴムが挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の乳幼児用衣服。
【請求項3】
上衣の背部は、パンツ部の腰部上に重なっており、この重なり幅は60乃至100mmとなることを特徴とする請求項1または2に記載の乳幼児用衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−231631(P2008−231631A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75369(P2007−75369)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(391003912)コンビ株式会社 (165)
【Fターム(参考)】