説明

乳房の疾患および障害の処置のための薬学的調製物

【課題】処方物および投与方法を提供して、乳房および胸部の疾患および障害の処置の間の患者のコンプライアンスおよび快適さを向上させること。
【解決手段】有効量が全身投与される場合よりも低い全身薬物レベルで部位効果または局部効果を生じるための直接的に乳房もしくは胸部への薬物の局所投与または局部投与のための処方物が、本明細書中に開示される。好ましい実施形態において、この薬物は、乳房、乳輪の表面、または直接乳頭に投与される。この処方物は、全身投与される処方物と比較して副作用の軽減とともに、患者の快適さの向上、バイオアベイラビリティーの向上および処置される部位における比較的高い血中レベルを提供する。好ましい処方物は、ミクロ粒子またはナノ粒子の形態における薬物を含有し、これらの薬物は、薬物単独または賦形剤もしくはキャリアとの組み合わせで形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「Pharmaceutical Preparations for Treatments of Diseases and Disorders of the Breast」と題されたU.S.S.N.60/437,778号(Gerianne Tringali DiPianoおよびPeter Kevin Maysにより2003年1月2日出願)に対して優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、乳房、胸部および下層にある筋系の疾患および障害の治療のための薬学的調製物に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
乳房障害は、非常に発症率が高く、Breast Disease 2,D.Wilmore,ら(編)(New York, Scientific America)(1995)中のB.SmithおよびW.Souba,Breast disease,1ページは、全女性の2人に1人は、その生涯におけるある時点で、その医師に乳房障害について診察を受けると推定する。臨床的に、良性乳房疾患についての最も有用な分類体系は、症状および医師の所見に基づく。6種の一般的なカテゴリーの症状は、以下である:
1.生理学的腫脹および生理学的圧痛;
2.小結節形成、顕著な塊(lumpiness)(両者ともに周期性または非周期性);
3.乳房痛(mastalgia)、激しい痛み(両者ともに周期性または非周期性);
4.優性なしこり(lump)(ひどいしこり(lump)および線維腺腫を含む);
5.乳頭分泌(管内乳頭腫および菅拡張症を含む);ならびに
6.感染および炎症(乳輪下膿瘍、産褥乳腺炎、乳房膿瘍およびモンドール病を含む)。
D. Marchant,Breast Disease,65−68ページ(WB Saunders,Philadelphia,PA)(1997)中のJ.Isaacs,Benign Neoplasmsを参照のこと。
【0004】
腫脹、乳房の痛み、および小結節形成(カテゴリー1およびカテゴリー2)は、多くの場合一緒に分類され、線維嚢胞病または線維嚢胞変化(fibrocystic change)と呼ばれる。しかし、これらの症状の種々の原因が分離されてこの状態の特異的原因および行われるべき、結果として生じる処置選択肢を決定するために、これらのカテゴリーを統合することは分類されるので、問題であり得る。例えば、経口避妊薬またはホルモン置換療法を受けている女性は、腫脹および乳房の圧痛を体験する(カテゴリー1)。エストロゲン置換療法を減少させるか、または廃止することによって、乳房の痛みまたは腫脹は、軽減され得る。あるいは、乳房の痛みは、外傷、胸壁の痛みによって引き起こされ得るか、または肋軟骨炎によって引き起こされ得る。
【0005】
優性なしこり(カテゴリー4)は、概して、識別可能で、持続性で、かつ比較的変化しない臨床的に良性の乳房病変である。これらのしこりによって代表される病変としては、マクロシスト、乳瘤、および線維腺腫が挙げられる。これらのしこりは、概して、小結節形成または乳房の痛みの処置において有効であり得るホルモン治療に反応しない。
【0006】
線維腺腫(カテゴリー4)は、女性の乳房の最も発症率の高い良性の固形腫瘍を表す。線維腺腫は、代表的に、30代の女性に見られるが、一方で線維腺腫は、時折、閉経後の女性においても見られる。線維腺腫は、ホルモン治療に反応し、そして月経周期を通じて、規模が変化し得る。
【0007】
乳房障害についての治療選択肢は、2種の主要なカテゴリー(薬理学的治療および外科的アプローチ)に分かれる。任意の処置を開始する前に、食事、ホルモン治療および他の因子の評価を考慮に入れなければならない。エストロゲン置換療法または経口避妊薬を使用する女性は、治療を中断し得る。さらに、食事の改変(例えば、飽和脂肪摂取およびカフェイン消費の減少)が、特定の女性における乳房の痛みを軽減し得る。
【0008】
乳房の痛みについての薬物処置は、痛みの重篤度、各薬物を用いる改善の変化、および潜在的副作用に合わせられる。P.HollandおよびC.Gately,Drugs,48(5):709−716(1994)。軽い痛みを有する女性は、1日あたり6〜8個のカプセルのγリノレン酸(「ガモレン酸」または「GLA」としてもまた公知)(40mg)を投与され得る。GLA関連の副作用は、軽い。激しい痛みについて、唯一の承認された処置選択肢が、ダナゾールである、これは、代表的に、1日あたり100mg〜200mgの用量で与えられる。ダナゾールは、非常に有効であるが、一方でダナゾールは、患者のコンプライアンスを低下し得るアンドロゲン性副作用を引き起こす。対照臨床試験は、1日あたり200mg〜400mgの経口用量で、ダナゾールは、70%〜80%の患者において順調な臨床的反応を生じることを実証する。C.Hinton,ら,British J.Clinical Practice,40(8):326−30(1986);R.Mansel,ら,Lancet,8278:928−933(1982);ならびにB.Steinbrum,ら,Postgraduate Medicine,102(5):183−84,187−87,および193−94(1997)。ほとんどの場合、乳房の痛みおよび圧痛は、初めの1ヵ月までに顕著に軽減し、2〜3ヵ月以内にはなくなる。通常、小結節形成の除去は、4〜6ヵ月の治療を必要とする。しかし、高用量のダナゾールは、有害な副作用を生じ、この有害な副作用としては、処置を受けている間の体重増加、声の変化、顔面の毛および胸毛の発毛、性欲の減少、ざ瘡、および中枢神経系(「CNS」)の症状(例えば、うつ、不安、疲労、悪心および下痢)ならびに妊娠の阻害が挙げられる。例えば、Spooner,Classification of Side Effects to Danazol Therapy,Winthrop Laboratories,Surrey,Englandを参照のこと。
【0009】
ブロモクリプチン、タモキシフェン、および黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログは、乳房の痛みおよび乳房線維嚢胞性病の初期の処置には認められないが、処置の他の形態に対して耐性である乳房の痛みおよび線維嚢胞性病を処置するために使用される。これらの薬物に関連する副作用は、重度である。
【0010】
プロラクチンの放出を阻害するブロモクリプチンは、周期性の乳腺痛(すなわち、長い間規則的パターンで起こる乳房の痛み)のために、1日あたり5mgの用量で処置される女性のうちの65%までにおいて有効である。これらの結果は、多施設研究、無作為研究、制御下研究において確認された。K.Nazliら,Br J Clin Pract,.43:322−27(1989);R.ManselおよびL.Dogliotti,Lancet,335(868):190−193(1990)。症状の改善は、血清プロラクチンレベルにおける低下によって達成された。軽い副作用(悪心、眩暈、頭痛、および被刺激性を含む)は、30%の女性において報告されており、そして10%の女性が、より重篤な副作用を訴えている。これらの副作用は、用量レジメンの変化または投与薬物の量の減少によって最小限に抑えられ得る。しかし、R.Manselら,BR J
Surgery,65(10):724−27(1978)は、ブロモクリプチンが、非周期性乳房の痛みを有する患者において反応を誘導しないことを記述していた。
【0011】
乳房の痛みおよび乳房線維嚢胞病の重症の場合、タモキシフェンが、処方されている。対照臨床試験は、臨床的乳腺痛の処置において80%〜90%の成功を実証した。I.Fentimen,ら,Br.J.Clinical Prac.Sympt.,68:34−36(1989)。さらに、1日あたり10mgの日用量を受けた女性対1日あたり20mgの日用量を受けた女性において、反応における相違は、注目されなかった。しかし、副作用の減少が、1日あたり10mgを受けた女性において注目された。I.Fentimen,ら,BR J Surg.,75(9):845−46(1988)。
【0012】
非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)が、時折、乳房の痛みの処置のために処方される。NSAIDのゲル処方物としての局所適用の有効性の見込みの研究が、重度の乳房の痛みを有する26人の女性において、行われた。局所的NSAIDゲルが、必要に応じて適用され、81%の女性において副作用のない痛みの迅速な軽減がもたらされた。A.IrvingおよびS.Morrison,JR Coll Edinb,43(3):158−9(1998)。
【0013】
非周期性乳腺痛において、そして特に胸壁の痛みについて、リドカイン1%(1ml)およびメチルプレドニゾン(40mg)の注射が、有効であることが示されている。90%の反応率が報告されているが、約50%の患者は、2〜3ヵ月後に第2の注射を必要とした。A.MilletおよびF.Dirbas,Obstetrical and Gynecological Survey,57(7):459(2002)。
【0014】
ミルテフォシン(MILTEX(登録商標)およびヘキサデシルホスホコリンとしてもまた公知)は、転移性乳癌の皮膚の徴候を処置するために局所的に使用されている。例えば、C.Ungerら,Cancer Treat Rev 17:243−246(1990);J.Terwogtら,Br J Cancer,79:1158−1161(1999);およびR.Leonardら,J Clin Oncol,19:4150−4159(2001)を参照のこと。これらの報告は、抗悪性腫瘍薬(ミルテホシン)が、乳房における一次新生物形成事象から生じる局所的病変を処置するために有用であることを示す。しかし、この薬物は、乳房組織内の新生物病変を処置せず、そして皮膚の転移性組織は、乳房の皮膚へ局部化される必要はない。従って、この薬物は、投与の部位に局所的に作用するだけである。さらに、この薬物は、乳房の基礎疾患の処置に有効ではない。
【0015】
経口投与または全身投与の慣用的な方法による、乳房および根底にある筋系の障害および疾患の処置は、かなりの数の副作用およびこれらの使用を限定する他の合併症に関連する。例えば、正常の消化プロセスは、所望の効果を達成するためにより高い用量が投与されることを必要とする薬物のバイオアベイラビリティーを低下させ得る。さらに、薬物の肝臓から体循環への通過は、薬物を薬物の代謝産物へ転換し得、そして種々の有害な副作用を引き起こし得る。これらの問題のいずれかは、患者に投薬を避けさせ、そして医師の治療処置レジメンを軽視させる原因となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、処方物および投与方法を提供して、乳房および胸部の疾患および障害の処置の間の患者のコンプライアンスおよび快適さを向上させることが、本発明の目的である。
【0017】
全身投与される薬物と比較して、乳房または胸部に局所投与される薬物のバイオアベイラビリティーを上昇させることは、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の簡単な要旨)
有効量が全身投与される場合よりも少ない全身性薬物レベルで部位作用または局部作用を生じるための直接的に乳房または胸部への、非ステロイド性抗炎症性剤または非ステロイド性鎮痛薬(例えば、リドカイン)以外の薬物(例えば、ホルモン(およびホルモン放出化合物)およびそれらのアナログ)、ならびに化学療法剤の局所投与または局部投与のための処方物が、本明細書中に開示される。好ましい実施形態において、この薬物は、乳房、乳輪の表面、または乳首へ直接的に投与される。この処方物は、同一の薬物が全身投与される場合と比較して、患者の快適さの向上、バイオアベイラビリティーの向上および処置される部位における比較的高い血中濃度を提供し、そして副作用の軽減を有する。好ましい処方物は、ミクロ粒子またはナノ粒子の形態における薬物を含有し、これらの薬物は、薬物単独または賦形剤もしくはキャリアと組み合わせて形成され得る。この賦形剤またはキャリアは、放出速度を改変し得るか、または患部への吸収を高め得る。この薬物処方物は、クリームまたは泡沫の形態であり得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
乳房への局所投与のための薬学的に受容可能なキャリア中に、乳房の疾患または障害の軽減を提供するために有効量の薬物を含有する薬物処方物であって、ここで該薬物が、非ステロイド性抗炎症性または非ステロイド性鎮痛性ではない、薬物処方物。
(項目2)
前記薬物が、水溶液中で可溶性である、項目1に記載の薬物処方物。
(項目3)
前記薬物が、ミクロ粒子またはナノ粒子の形態である、項目1に記載の薬物処方物。
(項目4)
前記キャリアが、ゲル、軟膏、ローション、エマルジョン、クリーム、泡沫、ムース、液体、スプレー、およびエアロゾルからなる群より選択される、項目1に記載の薬物処方物。
(項目5)
前記キャリアが、水性アルコールゲルである、項目4に記載の薬物処方物。
(項目6)
前記薬物が、化学療法剤、ホルモン、ホルモン放出剤、ホルモンアナログ、および抗増殖性剤からなる群より選択される、項目1に記載の薬物処方物。
(項目7)
前記薬物が、ダナゾール、ブロモクリプチン、タモキシフェン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログ、および抗エストロゲン剤からなる群より選択される、項目6に記載の薬物処方物。
(項目8)
前記薬物が、ダナゾールである、項目6に記載の薬物処方物。
(項目9)
乳房の良性疾患を処置するための有効な投薬における、項目1に記載の薬物処方物。
(項目10)
乳房、胸部または下層にある筋系の疾患もしくは障害を処置するための方法であって、該方法は以下の工程、
症状の軽減をもたらすための有効量の薬剤を含有する局部送達または部位送達に適した薬物処方物を、患者に局所投与する工程を包含し、ここで該薬物は、該薬物の全身投与と比較して低い血清薬物レベルを生じる投薬において、非ステロイド性抗炎症性または非ステロイド性鎮痛性ではない、方法。
(項目11)
前記薬物が、ミクロ粒子またはナノ粒子の形態である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記キャリアが、ゲル、軟膏、ローション、エマルジョン、クリーム、泡沫、ムース、液体、スプレー、およびエアロゾルからなる群より選択される、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記薬物が、化学療法剤、ホルモン、ホルモン放出剤、ホルモンアナログ、および抗増殖性剤からなる群より選択される、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記薬物が、ダナゾール、ブロモクリプチン、タモキシフェン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログ、および抗エストロゲン剤からなる群より選択される、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記薬物が、ダナゾールである、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記乳房の良性疾患に対し、有効投薬における、項目10に記載の方法。
(項目17)
前記乳房の良性疾患が、乳房痛、乳房痛、モンドール病、乳房線維嚢胞病、肋軟骨炎、乳腺炎、乳輪のパジェット病、線維腺腫、乳房膿瘍、および乳房感染からなる群より選択される、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記薬物処方物が、部位処置に対して有効投薬を提供する、項目10に記載の方法。
(項目19)
前記部位が、乳房、乳輪、および胸部の下層にある筋系である、項目18に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、2つの異なる処方物(1つは、キャリアとしてプロピレングリコールを含む処方物(白いひし形)ならびにもう1つは、キャリアとしてプロピレングリコールおよび5%のオレイルアルコールを含有する処方物(黒い四角))について、時間(時間) 対 乳房の皮膚を通って浸透するダナゾールの累積量(μg)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
組成物およびその投与の方法は、全身的薬物投与技術と比較して、バイオアベイラビリティーの向上とともに、副作用の有意な減少を提供する。
本明細書中で使用される場合、「局部的に(locally)」は、概して、乳房または胸部の表面ならびに乳房および胸部の表面の直下の組織に送達することを言う。本明細中で使用される場合、「部位的に(regionally)」は、一般的な適用部位およびその相互に関係する周囲の組織を言う。本明細中で使用される場合、「全身的に(systemically)」は、概して、循環系および上記場所の外側の部位を言う。
【0021】
(I.処方物)
処方物は、処置される部位の全体にわたる迅速な播種とともに、薬物の全身の血液レベルがほとんど増加しないか、または全く増加せずに作用する組織において最大の取り込みを提供するように設計される。好ましい実施形態において、活性薬剤は、ミクロ化されたナノ粒子処方物またはミクロ粒子処方物中に存在する。これは、溶媒抽出液体中への活性薬剤の製粉もしくは活性薬物を含有する溶液の微粒化、または粒子の大きさの縮小のための他の標準技術よって達成され得る。
【0022】
処方物は、薬物単独または賦形剤もしくはキャリア、および/または浸透エンハンサーとの組み合わせを含有し得る。局所投与のための賦形剤としては、以下を含有し得る:(a)抗微生物化合物(例えば、パラベン)、(b)抗酸化剤(例えば、アスコルビンアセテートナトリウム)、(c)安定化剤(例えば、ソルビトールおよびα−トコフェロール)、または(d)親水相および疎水相の両方を有する安定なエマルジョンを作製するための乳化剤。好ましい実施形態において、処方物は、局所適用され、処置を必要とする組織へ経皮的に送達される。
【0023】
(A.活性薬剤)
概して、本明細書中で使用される場合、用語「薬物」は、生理学的体系への所望の変化を誘発可能な任意の薬理学的に活性のある物質を言う。処方物は、一以上の活性薬剤を含み得る。薬物は、合成のもしくは単離された天然の化合物、タンパク質もしくはペプチド、抗体、オリゴヌクレオチドもしくはヌクレオチド、多糖もしくは糖、または上記の任意の複合体であり得る。薬物は、種々の活性を有し、これらの活性は、抑制性または刺激性であリ得、これらの活性としては、抗菌性効果、抗ウイルス性効果、抗真菌性効果、ステロイド性効果、細胞傷害性効果、および抗増殖性効果であり得る。
【0024】
他の適した活性薬剤としては、媒体造影剤および他の診断用薬が挙げられる。診断用薬は、疾患の診断において役立つための処方物中で送達され得る。種々のクラスの適した薬理学的薬剤および薬理学的薬物の説明は、GoodmanおよびGilman,The Pharmacological Basis of Therapeutics,(第9版,McGraw−Hill Publishing Co.)(1996)中に見出され得る。
【0025】
好ましい実施形態において、薬物は、化学療法剤(例えば、ダナゾール、ブロモクリプチン、またはタモキシフェン)、もしくはホルモン、ホルモン放出剤、またはそれらのアナログ(例えば、LHRHアナログもしくは抗エストロゲン)である。最も好ましい実施例において、活性薬物は、ダナゾール、17∝エテニルテストステロン(アンドロゲンホルモン)のイソキサゾロ誘導体である。
【0026】
(B.賦形剤またはキャリア)
薬物は、薬物浸透を可能とし、そして/または増強するための適した賦形剤またはキャリアを用いて局部送達、局所送達または経皮的送達を介して、乳房組織に送達される。適したキャリアまたは賦形剤は、処方物の物理的安定性および化学的安定性を増強し得るか、またはその美的特性を増強し得る。
【0027】
キャリアは、薬物を乳房組織へ送達可能な任意のゲル、軟膏、ローション、エマルジョン、クリーム、泡沫、ムース、液体、スプレー、またはエアロゾルであり得る。本明細書中で記載される局部薬物送達ビヒクルにおいて、配合剤、共溶媒、界面活性剤、乳化剤、抗酸化剤、防腐剤、安定剤、または希釈剤が、処方物内に含まれ得る。適した乳化剤は、活性薬剤が水環境において不溶性である場合、必要である。浸透エンハンサーは、活性薬剤を角質層の障壁を通過させるために添加され得る。好ましい実施形態において、キャリアは、ゲルであり、このゲルは、無臭かつ無味であり、例えば、水性アルコールゲルのように、急速に溶解する。
【0028】
希釈剤は、処方物内に含まれて、キャリアを溶解、分散させ得るか、または他の方法で取り込み得る。希釈剤の例としては、水、緩衝化水溶液、有機親水性希釈剤(例えば、一価アルコール)、ならびに低分子量グリコールおよび低分子量ポリオール(例えば、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ブチレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
適切な賦形剤は、活性薬剤および処方物のタイプに基づいて選択される。標準的な賦形剤としては、ゼラチン、カゼイン、レシチン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、糖、およびデンプンが挙げられる。
【0030】
(C.浸透エンハンサー)
浸透エンハンサーは、皮膚を通過する、特に角質層を通過する薬物の経皮送達を促進するために、頻繁に使用される。いくつかの浸透エンハンサーは、真皮の刺激作用、真皮の毒性および真皮のアレルギーを引き起こす。しかし、より一般に使用される浸透エンハンサーとしては、尿素、(カルボニルジアミド)、イミド尿素、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1−ドデカル−アザシクロヘプタン−2−オン、カルシウムチオグリケート、2−ピロリドン、N,N−ジエチル−m−トルアミド、オレイン酸およびそのエステル誘導体(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ビニルおよびグリセリルモノオレエート)、ソルビタンエステル(例えば、ソルビタンモノラウレートおよびソルビタンモノオレエート)、他の脂肪酸エステル(例えば、イソプロピルラウレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、ジイソプロピルアジペート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノオレエート)ならびに非イオン性界面活性剤(例えば、BRIJ(登録商標)76(ステアリルポリ(10オキシエチレンエーテル)、BRIJ(登録商標)78(ステアリルポリ(20)オキシエチレンエーテル)、BRIJ(登録商標)96(オレイルポリ(10)オキシエチレンエーテル)、およびBRIJ(登録商標)721(ステアリルポリ(21)オキシエチレンエーテル)(ICI Americas Inc.Corp.))が挙げられる。
【0031】
(D.投薬)
組成物は、低用量の薬物を含む量において患者に投与される。代表的に、局所処方物における投薬は、経口投薬の約1/10である。ダナゾールについて、投薬範囲は、約1〜200mg/日であり、好ましくは、約10〜50mg/日である。
【0032】
(II.投与の方法)
処方物は、好ましくは、乳房または胸部の表面に局所投与され、経皮的に輸送され、そして乳房組織に送達される。組成物は、投与されて、乳房、胸部および根底にある筋系の疾患および障害を処置する。特に、組成物は、投与されて乳房の良性疾患(乳腺痛(mastalgia)、乳房痛(mastodynia)、モンドール病、乳房線維嚢胞病、肋軟骨炎、乳腺炎、乳輪のパジェット病、線維腺腫、乳房膿瘍、および乳房感染)を処置し得る。代表的に、これらは、必要に応じて、1日あたり少なくとも1回投与される。
【0033】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに理解される。
【実施例】
【0034】
(実施例1:ダナゾール処方物を用いる皮膚浸透性のインビトロ研究)
(材料)
Molecular Probes(Eugene,OR)からルシファーイエローを入手した。ウシ血清アルブミン(BSA)、オレイルアルコールおよびプロピレングリコールをSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。ダナゾールを、FemmePharmaより提供を受けた。蓄積緩衝液は、クレブスリンガー重炭酸(KRB)緩衝液(pH 7.4で10mM HEPESおよび0.015mM炭酸水素ナトリウムを含有する)中に濾過した1%BSAを含有していた。
【0035】
(組織)
真皮節のヒト乳房皮膚をBioreclamation Inc.(Hicksville, NY)から入手した。ドナーは、72歳の白人女性であった。この真皮節の皮膚は、表皮層のみからなり、研究の時まで、−80℃で凍結保存された。
【0036】
(処方物)
プロピレングリコール中におけるダナゾール溶解性は、10mg/mLよりも大きかった。2つの異なるキャリアを試験した。1つのキャリアは、プロピレングリコールであり、第2のキャリアは、プロピレングリコール中5%オレイルアルコールであった。オレイルアルコールが、皮膚浸透を増強する特性を有することは公知である。
【0037】
第1の処方物(「処方物1」)は、プロピレングリコール(10mL)、ルシファーイエロー(25.63mg)およびダナゾール(100.64 mg)を含有していた。第2の処方物(「処方物2」)は、プロピレングリコール(9.5mL)、オレイルアルコール(0.5mL)、ルシファーイエロー(25.46mg)およびダナゾール(100.61mg)を含有していた。ルシファーイエローを、実験の間の膜結合性をモニタリングするために処方物内に含有していた。各処方物を、1人の皮膚ドナー由来の4つの複製で使用した。
【0038】
(浸透研究)
室温で約30分間皮膚を解凍し、生理食塩水でリンスした。この皮膚を約3cm切片に切り、この切片をドナーチャンバーとフランツ拡散細胞のレシーバチャンバーとの間にクランプした。このレシーバチャンバーを8mLのリザーバ緩衝液で満たした。撹拌子で、リザーバの内容物を混合した。次いで0.2mLの処方物を、ドナーチャンバー内の皮膚の上に直接配置した。
【0039】
各フランツ拡散細胞を、乾燥ブロック加温/撹拌モジュール内に配置した。温度を、リザーバ内を37℃に保つために、40℃に設定した。撹拌速度を10(400RPM)に設定した。2時間、4時間、8時間、24時間、32時間、および48時間でレシーバチャンバーからサンプル(0.5mL)を取り出し、等量のリザーバ緩衝液で置換した。
【0040】
ダナゾールの分析について、200μLのリザーバサンプルを400μLのアセトニトリルで希釈してアルブミンを沈殿させ、そして10,000RPMで10分間遠心した。48時間のインキュベーションの終わりに、マスバランスを計算するためにドナーチャンバーからサンプルを回収した。
【0041】
(サンプル分析)
ルシファーイエロー濃度を、FLUOstar蛍光プレートリーダー(BMG Laboratories,Durham,NC)を使用して測定した。励起波長および発光波長は、それぞれ485nmおよび538nmであった。エレクトロスプレーイオン化を使用するLC/MSによって、ダナゾールを測定した。
【0042】
(データ分析)
以下のとおり、0.5mLのサンプルの除去および置換を補正して、レシーバチャンバー内の累積濃度を計算した。
【0043】
=C+(0.5mL/8.0mL)×Cn−1 (式1)
ここでCおよびCn−1は、それぞれ時点nおよび先の時点n−1で測定したレシーバ濃度である。
【0044】
見かけ上の浸透性(Papp)を以下のとおり計算した。
【0045】
流量=(dC/dt)×V/A (式2)
app=(dC/dt)×V/(A×C) (式3)
ここで、
dC/dtは、時間に対するレシーバチャンバー内の勾配累積濃度(μg/mL)であり、
は、レシーバチャンバーの体積(8mL)であり、
Aは、暴露した皮膚膜の拡散面積(1.77cm)であり、
は、処方物内の化合物の開始濃度(μg/mL)である。
【0046】
(ダナゾール浸透)
異なる時間で皮膚内におよび/または皮膚を通過して浸透したダナゾールの量を、図1にプロットする。ダナゾールの皮膚浸透性は、5%オレイルアルコールの存在下で、明らかに向上した。
【0047】
8時間〜48時間の時間グラフに対する累積的濃度の勾配を使用して流量およびPappを推定した(図1を参照のこと)。Flux値およびPapp値を表1に表す。
【0048】
【表1】

48時間のインキュベーション時間の終わりにドナーチャンバーをサンプリングし、ダナゾールについてアッセイした。これらの結果を、表2に列挙する。プロピレングリコールキャリア(処方物1)は、ドナー区画において回復した高い百分率で示されるように、比較的低い浸透を提供した。この結果は、皮膚を通過する浸透の結果と一致する(表1を参照のこと)。しかし、処方物2(これは、キャリアとしてオレイルアルコールおよびプロピレングリコールを使用した)は、大部分のダナゾールを皮膚を通過してレシーバチャンバーまで送達させた。これは、48時間にドナーチャンバー内に残存したダナゾールの低い百分率によって示される(表2を参照のこと)。同様に、表1は、処方物1よりも処方物2を用いた方が、より多量のダナゾールが、皮膚内および/または皮膚を通過して浸透したことを実証する。ダナゾールの浸透性は、100%プロピレングリコールを含有するキャリアと比較して、プロピレングリコール中5%のオレイルアルコールを含有するキャリアを使用する場合、約13倍大きかった。
【0049】
【表2】

(ルシファーイエロー浸透)
各皮膚膜をルシファーイエロー(これは、膜統合性の指標を提供する)の浸透について評価した。インキュベーションの8時間後または24時間後まで検出可能なルシファーイエローの浸透がなかったことは、これらの皮膚試料が、この極性のあるマーカー化合物に対して浸透性ではなかったことを示す。ルシファーイエローPapp値は、処方物1および処方物2のキャリアについて得られた値と類似した(値については、表1を参照のこと)。
【0050】
当業者は、慣例的な実験法のみを使用して、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確かめ得る。このような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2009−280627(P2009−280627A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205375(P2009−205375)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【分割の表示】特願2005−518791(P2005−518791)の分割
【原出願日】平成16年1月2日(2004.1.2)
【出願人】(306005011)フェムファーマ ホールディング カンパニー, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】