説明

乳房投射撮影用静脈内造影剤の使用および装置

【解決手段】本発明は、乳房投射撮影用静脈内造影剤の使用ならびに乳房投射撮影用新規装置に関するものである。また、本発明は、乳房投射撮影用診断剤製造のため静脈内造影剤の使用に関するものでもある。
【効果】補助的静脈内造影剤投与により、乳房投射撮影法は磁気共鳴断層撮影法(MRT)のような最新の方法に匹敵する感度が、極めて多様な使用の際に、MRTの出費を回避しつつも達成される。新規方法は、患者に特別な負担をかけずに簡単に実施でき、a)胸部における巣性病変の検証感度の著しい改善およびb)あらかじめ確認された病変の性質に関する補助的情報が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房投射撮影用静脈内造影剤の使用ならびに乳房投射撮影用新規装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
技術水準
乳房用撮影法は、胸部腫瘍の早期発見、X線学的検証、特性決定および位置確認のために十年前に確立され、その後もずっと改善されてきたX線技術である。乳房用撮影法は、幾つかの点で、患者に対するその性能および利便性が達成されていない。最大の欠点は、僅かな大きさおよび微量石灰(Mikrokalk)のない腫瘍に対して検出感度が不十分なことである。
【0003】
乳房投射撮影法の改善のために造影剤を使用することは既に早い時期に試みられた。この目的のために、適当な製剤を乳管中へ導入し、その胸部における分配を病変の検証および特性決定のために利用していた。ビョルン−ハンセン(R.Bjφrn-Hansen)の論文:Contrast-mammography、Brit. J. Radiol.38巻、947〜951頁、1965年により概要が分かる。この技術は、ガラクトグラフィー(Galaktographie)としても公知である。対比は、濃厚なヨード含有造影剤によって達成される(ヨード>100mg/ml)。さらに、造影剤は直接に胸部の疑わしいかまたは腫瘍性の病変中へ、特性決定(たとえばLehto M. u. Mathiesen T. l.:Adenography:An ancillary diagnostic method of circumscribed lesions of the breast with a positive contrast agent、Breast Dis、6巻、259〜268頁、1993年)または標識(たとえばRaininko R.、Linna M. l.、Rasanen O.:Preoparative localization of nonpalpable breast tumors.Acta Chir Scand、142巻、575〜578頁、1976年)のために注射していた。双方の場合に、希釈してない市販の造影剤を直接に描写させている。
【0004】
放射線投射撮影法における実質性隆起物の描写のためのX線造影剤の静脈内投与は、非常に稀な例外である。該投与は、1つの組織または器官が造影剤を積極的に蓄積する場合にしか成功しない。それに対し従来2つの例がある:今日慣用の尿路造影剤による健康な腎臓実質組織の描写およびX線不透過性物質のエマルジョンまたは懸濁液による健康な肝臓−および脾臓実質組織の描写。双方の方法は、もはや適用されないか(肝臓、脾臓)または僅かに例外的な場合に(腎臓)適用されるにすぎない。静脈内投与したX線造影剤を、放射線投射撮影法において適当な大きさの腫瘍の直接対比のために利用することは全く成功しなかった。
【0005】
コンピューター断層撮影法および殊に磁気共鳴断層撮影法は、これらのための造影剤に対する非常に高い測定感度で公知である。それにも拘わらず、双方の技術を用いて胸部腫瘍を静脈内造影剤注射により大きな確信をもって検証することができたことは驚異的であった(Gisvold J.J.、Karsell P.R.、Reese E.C.:Clinical evaluation of computerized tomographic mammography.Mayo Clin. Proc. 52巻、181〜185頁、1977年;Teifke A.、Schweden F.、Cagil H.、Kanczor H. U.、Mohr W.、Thelen M.:Spiral-Computertomographie der Mamma.Fortschr.Roentgenstr.161巻、495〜500頁、1994年;Heywang S. H.、Hahn D.、Schmidt H.、Krischke I.、Eiermann W.、Bassermann R.、Lissner J.:MR imaging of the breast using Gadolinium DTPA. J. Comp. Ass. Tomogr. 10巻、199〜204頁、1986年)。
【0006】
CTにおける静脈内造影剤投与による胸部腫瘍の対比強化の公表後も、CTにおいて確認しうる効果を乳房用撮影法において利用できるようにするためには、従来、ヨード含有造影剤に対する乳房投射撮影法の検出感度は低すぎると思われていた。従って、この適用に対する、X線不透過性が僅かであるとして公知の臭素含有造影剤または低濃度で利用できるにすぎない金属キレート溶液の有用性はまだ確認されていない。それ故、フリッツ(Fritz S. L.)、チャン(Chang C. H.J.)およびリビングストン(Livungston W.H.:(Scatter/primary ratios for X-ray spectra modified to enhance iodine contrast in screen-film mammography、Med Phys 10巻、866〜870頁、1983年)は、種々の物理的手段によりヨードの吸収スペクトルから十分に計算される放射線品質を作り出すことができるか否かの問題を調べている。彼らの研究の結果は、まだ満足のいくものとは見なされていないが、X線スペクトルをより一層最適化するのに一定の可能性が認められる。
【0007】
80年代の中頃に、造影剤の静脈注射を含むデジタルサブトラクション血管造影法(DSA)を使用することが試みられた。この方法は、信頼性および感度が低すぎおよびそれぞれの場合に補助的検査を必要とするので定着しなかった(Dean P. B.、Sickles E. A.:Invest Radiol 20巻、698〜699頁、1985年)。
【0008】
記述した方法には、通常の乳房投射撮影法に比べて利点があるが、高いコストおよび利用上の制約、腫瘍診断にとり重要な微量石灰の検出不足、低い立体的解像度、長い検査時間、生検組織に到達することの困難性ないしは高い被爆量のような重大な欠点をも有する。それぞれの欠点が各技術に当てはまらないとしても、MRおよびましてやCTは、今日、当該患者の非常に僅かな部分において使用されるにすぎず、DSAは実際には胸部腫瘍の検証に全く使用されていない。
【0009】
従って、殆ど万能に利用でき、低コストおよび多くの点で性能が高いために、より確実な腫瘍検出の点で、導入された乳房投射撮影法を改善することは極めて重要である。この点に関して、既に多数の実験が行われた。殊に、撮影技術および使用されるフィルム材料はこの十年間に最適化され;ゼロラジオグラフィーがテストされた。新規受像装置およびデジタル化は、更なる進歩を約束する。それにも拘わらず、乳房投射撮影法は、これまでに予測可能な限りでは、明らかにこれまでに最良の方法、対比強化した磁気共鳴断層撮影法の感度を下回っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ビョルン−ハンセン(R.Bjφrn-Hansen)の論文:Contrast-mammography、Brit. J. Radiol.38巻、947〜951頁、1965年
【非特許文献2】Lehto M. u. Mathiesen T. l.:Adenography:An ancillary diagnostic method of circumscribed lesions of the breast with a positive contrast agent、Breast Dis、6巻、259〜268頁、1993年
【非特許文献3】Raininko R.、Linna M. l.、Rasanen O.:Preoparative localization of nonpalpable breast tumors.Acta Chir Scand、142巻、575〜578頁、1976年
【非特許文献4】Gisvold J.J.、Karsell P.R.、Reese E.C.:Clinical evaluation of computerized tomographic mammography.Mayo Clin. Proc. 52巻、181〜185頁、1977年
【非特許文献5】Teifke A.、Schweden F.、Cagil H.、Kanczor H. U.、Mohr W.、Thelen M.:Spiral-Computertomographie der Mamma.Fortschr.Roentgenstr.161巻、495〜500頁、1994年
【非特許文献6】Heywang S. H.、Hahn D.、Schmidt H.、Krischke I.、Eiermann W.、Bassermann R.、Lissner J.:MR imaging of the breast using Gadolinium DTPA. J. Comp. Ass. Tomogr. 10巻、199〜204頁、1986年
【非特許文献7】Livungston W.H.:(Scatter/primary ratios for X-ray spectra modified to enhance iodine contrast in screen-film mammography、Med Phys 10巻、866〜870頁、1983年
【非特許文献8】Dean P. B.、Sickles E. A.:Invest Radiol 20巻、698〜699頁、1985年
【発明の概要】
【0011】
発明の説明
ところで全く意外なことに、造影剤は途中で心臓および肺により非常に強力に薄められ、胸部腫瘍における積極的蓄積は知られていないが、相当に造影剤に敏感でないとして公知の放射線投射撮影法は、乳房投射撮影法の特殊な場合に静脈内造影剤投与により改善できることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は乳房投射撮影用診断剤製造のための静脈内造影剤の使用に関する。
【発明の効果】
【0013】
補助的静脈内造影剤投与により、乳房投射撮影法は、磁気共鳴断層撮影法(MRT)のような極最近の方法に匹敵する感度が、極めて多様な使用の際に、MRTの出費を回避しつつも達成される。新規方法は、患者に特別な負担をかけずに簡単に実施でき、a)胸部における巣性病変の検出感度の著しい改善およびb)あらかじめ確認された病変の特性に関する補助的情報が得られる。
【0014】
本発明によれば、通常の乳房投射撮影法におけるのと同様に、装置が低い放射線エネルギーで運転される限り、今日利用できる装置および手段を用いて、たとえば次のように実施することができる。
【0015】
測定方法は、とくに次のように実施される:
1)正常乳房撮影像を撮影する(前造影撮影)。
2)患者に、通常の尿路撮影用のX線造影剤を、体重1kg当たりヨード約0.5g〜1.5gの投与量で迅速に静脈内注射または注入により投与する。
3)注射終了から30秒〜1分後に、第2の乳房撮影像を撮影する(後造影撮影)。
【0016】
場合により、注射終了後約5分までに、必要な場合に、病変の性質に関する補助的常法が得られる撮影を更に行う。
【0017】
本発明による使用に対しては、50kV以下の装置および装置調節が適当であり;20kV〜40kVに相当する放射線の利用が好ましく、25kV〜35kVの放射線エネルギーがとくに好ましい。
【0018】
本発明による使用には、尿路撮影用の水溶性造影剤製造のために普通に使用されるすべての化合物が適当である。例として次の物質が挙げられる:メグルミン(Meglumin)またはリシンジアトリゾエート(Lysin Diatrizoat)、ロタラマート(Lothalamat)、ロキシタラマート(Loxithalamat)、ロプロミド(Lopromid)、ロヘキソール(Lohexol)、ロメプロール(Lomeprol)、ロパミドール(Lopamidol)、ロベルソール(Loversol)、ロビトリドール(Lobitridol)、ロペントール(Lopentol)、ロトロラン(Lotrolan)、ロジキサノール(Lodixanol)およびロキシラン(Loxilan)(INN)。
【0019】
ヨード不含化合物、たとえば:
1.造影元素(bildgebendes Element)として臭素を含有する造影剤、
2.造影元素として原子番号34、42、44〜52、54〜60、62〜79、82または83の元素を含有する造影剤、
3.造影元素として原子番号56〜60、62〜79、82または83の元素のキレート化合物を含有する造影剤を使用することもできる。
【0020】
従って本発明は、このようなヨード不含化合物の使用に関するものでもある。
【0021】
今日慣用の尿路撮影用のX線造影剤は、記載された方法に特に好適である。意外にも、殆どあらゆる他のX線法とは異なり、乳房投射撮影法においてヨード元素は臭素元素と完全にまたは部分的に交換することができることが判明した。これは、実際に過去においても討論されたが、しかしヨードに比べて臭素の放射線吸収が明らかに低いため、どのX線方法においても成功しなかった。その限りでは、乳房投射撮影法は1つの例外である。これは、たとえばEP0118348A1号に記載された化合物の新たな意外な用途である。
【0022】
さらに、分子および超分子構造の他の造影元素を基礎とする、排出可能で相容性の造影剤は、本発明による使用にも同様に適当である。
【0023】
造影元素として、就中原子番号34、42、44〜60、62〜79、82または83を有する元素が適当である。造影元素は、有機分子に共有結合されているかまたは錯体として存在するかまたは高分子構造中に組み込まれていてもよい。10000〜80000Dの分子量を有する物質がとくに有利である。さらに、個々の造影剤分子は、会合体、リポソーム、エマルジョン滴およびミクロ粒子ないしはナノ粒子のようなより大きい構造の成分であってもよい(Parvez Z.、Moncada R.、Sovak M.編:Contrast Media:Biological Effects and clinical application、III巻、CRC Press、Boca Raton、フロリダ1987年、73〜130頁)。
【0024】
調製は、安定剤(たとえば錯体、複合体形成物質、酸化防止剤)、緩衝剤(たとえばトリス、クエン酸塩、重炭酸塩)、乳化剤および必要に応じ、モル浸透圧および電解質含量の調整のための物質のような慣用の助剤の使用下に、生理的に認容性の担持媒体、好ましくは水中で製薬上通常の形で行われる。
【0025】
ヨード100mg/ml〜ヨード500mg/mlの濃度を有する造影剤が好ましく、とくに好ましくはヨード200mg/ml〜ヨード400mg/mlの濃度を有するかまたは他の放射線吸収性元素を選択する場合には相応するX線濃度を有する非イオン性X線造影剤である。該造影剤は、体重(KG)1kg当たりヨード150〜1500mgの投与量で適用することができる。
【0026】
臭素含有化合物の本発明による使用の場合、造影剤中で臭素100〜500mg/mlの濃度が好まれる。適用しうる投与量は、体重1kg当たり臭素100〜1500mg/である。
【0027】
原子番号34、42、44〜52、54〜60、62〜79、82または83の元素の化合物の本発明による使用の場合、造影元素に対して造影剤中で10mモル〜2モル/lの濃度が好まれる。適用しうる投与量は、体重1kg当たり0.1〜2mモル(造影元素に対して)である。体重1kg当たり0.2〜0.6mモルの範囲が好ましい。
【0028】
原子番号56〜60、62〜79、82または83の元素のキレート化合物の本発明による使用の場合、造影元素に対して造影剤中で10mモル〜2モル/lの濃度が好ましい。適用しうる投与量は、体重1kg当たり0.1〜2mモル(造影元素に対して)である。体重1kg当たり0.2〜0.6mモルの範囲が好ましい。
【0029】
本発明による使用の場合、静脈内造影−乳房投射撮影法の非常に有利な変法は、乳房投射撮影法中に従来導入されていなかったサブトラクション法の利用に関するものである。相応する方法は、血管造影法において非常に適当であることが実証されている。しかし、血管造影法においては、またしても胸部腫瘍において達成しうるよりも著しく高い局所ヨード濃度(血液中)が必要である。この限りにおいて、小さい病変の検証にこの技術を使用する可能性は予測できなかった。従ってこの方法は、これらの検査法に対し十分良好な位置解像度(Ortsaufloesung)を有していなければならない乳房用撮影法におけるデジタル受像機の使用に基づいている。従って、乳房用撮影法に必要なデジタル画像における解像度を達成するために、画素サイズの小さいデジタル受像機を用いて作業するかまたはデジタル受像機を直接放射線撮影法の拡大技術と合わせて使用することが可能である。拡大技術をデジタル受像機と組合せて使用することにより、造影解像度ならびに位置解像度が明瞭に改善される。これにより、小さい病変の検出がさらに著しく容易になる。この方法は、大体において次の段階に基づいている:
1)正常乳房撮影像を撮影する(前造影撮影)。データを記憶させる。
2)患者に、適当な造影剤を十分な投与量で静脈内注射して迅速に投与する。
3)注射終了後30秒から、1以上の他の乳房撮影像を撮影し、記憶させる。
4)(1)で収集したデータを(3)で収集したデータと対比させ(とくに減算し)、結果を相応に増幅し、画像として転送する。
5)場合により、速度および造影剤増加の程度および排泄過程の動力学についてのデータを算出し、別個に描写する。
【0030】
従って本発明は、乳房撮影検査に十分な位置解像度を特徴とする乳房投射撮影装置に関するものでもある。この十分な位置解像度は、直接にデジタル受像機の解像力により達成されるか、またはデジタル受像機と直接放射線撮影法の拡大技術とを合わせることにより達成される。さらに該装置は、前造影撮影用の少なくとも1つの記憶装置、後造影撮影用の少なくとも1つの記憶装置、種々の撮影を対比(殊に減算)させるための少なくとも1つの計算装置および計算された乳房撮影像用の出力装置を有している。
【0031】
時間的に連続する撮影またはデータセットの対比の外に、異なる放射線エネルギーで仕上げた撮影像の対比も有利である。それでたとえば、臭素含有化合物の本発明による使用の場合、ε1=35kVの放射線エネルギーでの撮影およびε2=25kVの放射線エネルギーでの撮影を実施し、記憶させた撮影を互いに対比させ−殊にお互いから減算することができる。この場合組織の放射線吸収が、選択されたエネルギーの場合に、造影剤の放射線吸収から区別されるので、同様に、静脈内供給された造影元素のため正常な組織構造の隠蔽が達成される。繰り返し測定することにより、このような装置を用いて、造影剤濃度の時間的経過を把握し、評価することができる。
【0032】
従って本発明のもう1つの対象は、放射線エネルギーε1における撮影像用の少なくとも1つの記憶装置、放射線エネルギーε2における撮影像用の少なくとも1つの記憶装置、種々の撮影像の対比のための少なくとも1つの計算装置および計算された乳房撮影像用出力装置を特徴とする乳房投射撮影装置である。
【0033】
旧来の乳房投射撮影法では、それぞれ片方の乳房しか検査されない。必要な造影剤量を制限するため、本発明による使用においては、両方の乳房を同時に検査することが有利である。このような検査ができる装置は、従来知られていない。従って、両方の乳房を同時に検査できるようにすることを特徴とする装置も本発明の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、左列、厚さ5mm、中央列、厚さ10mm、右列、厚さ3mmの、埋設された造影剤含有寒天ブロックを有する寒天ファントムの28kV、63mAにおけるX線撮影像を示す図である。
【実施例】
【0035】
次の例は、本発明の対象を説明するものであるが、本発明をこれらの例に限定しようとするものではない。
【0036】
例1:ファントム研究(Phantomstudien)
ビスマス含有、ヨード含有および臭素含有の造影剤溶液((4S)−4−(エトキシベンジル)3,6,9−トリアザウンデカン酸、ビスマス錯体、二ナトリウム塩、イオトロラン(Iotrolan)(INN)ないしはN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド)を、2%寒天中Bi9.8mg/ml、ヨード6mg/mlないしはBr3.8mg/mlの濃度で製造する。寒天ゲルを、3mm、5mmまたは10mmの層厚に切断する。造影剤含有ゲルならびにNaCl2.8mg/mlを有する対照ゲルを、厚さ5cmの寒天ブロックに組み込む。ファントム全体を、乳房撮影像に応じ28kVおよび63mAでX線撮影像を撮影するが、その際X線を、それぞれ約4cm〜5cmの造影剤不含寒天及び3mm〜10mmの造影剤含有寒天を透過させなければならない。
【0037】
結果:厚さ約3mmにすぎない造影剤含有寒天片であっても、良好に識別できる。臭素は等モル濃度において意外にもヨードの約2倍も有効であり;ビスマスはヨードの3倍以上も有効である(図1)。
【0038】
図1は、左列、厚さ5mm、中央列、厚さ10mm 、右列、厚さ3mmの、埋設された造影剤含有寒天ブロックを有する寒天ファントムの28kV、63mAにおけるX線撮影像を示している。上列のブロックは臭素3.8mg/mlを含有し、中央列のブロックはヨード6mg/mlを含有し、下列のブロックはBi9.8mg/mlを含有している。
【0039】
NaClを有するブロックは目に見えない。
【0040】
例2:静脈内造影剤−乳房用撮影法
患者において、乳房用撮影法で、構造、微量石灰および組織鏡検に基づき1.5cm×0.8cm大きさの乳癌が確認された。術前に多病巣性を調べねばならず;このため患者の右腕静脈中に第一留置カニューレを挿入する(V.cubitalis)。投影X線撮影法を、造影剤投与前に繰り返す。自然吸収の直後に、ウルトラビスト(Ultravist(R))−300(Schering AG、ベルリン;自動注入器を用い3ml/secの速度で作用物質:Iopromid(INN))3ml/kgの注入を、開始する。造影剤投与後の最初の撮影は、注入終了から1分後に行う。患者および撮影装置の位置は、この間完全に不動のままであり、真空管電圧28kVおよび63mAsでの撮影条件も全く同様である。
【0041】
造影剤注入後の撮影は、造影剤投与前の腫瘍範囲として定義される組織に比べて著しく拡大された造影剤吸収範囲を示すが、胸部に他の別個の増殖病巣を示してはいない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房投射撮影用診断剤製造のための静脈内造影剤の使用。
【請求項2】
静脈内造影剤が造影元素としてヨードを含有することを特徴とする請求項1記載の造影剤の使用。
【請求項3】
静脈内造影剤が造影元素として臭素を含有することを特徴とする請求項1記載の造影剤の使用。
【請求項4】
静脈内造影剤が、原子番号34、42、44〜52、54〜60、62〜79、82または83の元素の化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の造影剤の使用。
【請求項5】
静脈内造影剤が、原子番号56〜60、62〜79、82または83の元素の金属キレートを含有することを特徴とする請求項1記載の造影剤の使用。
【請求項6】
静脈内造影剤が10000〜80000Dの分子量を有することを特徴とする請求項1記載の造影剤の使用。
【請求項7】
静脈内造影剤が高分子構造で存在することを特徴とする請求項1記載の造影剤の使用。
【請求項8】
静脈内造影剤が会合体、リポソーム、ナノ粒子またはミクロ粒子の形で存在することを特徴とする請求項7記載の造影剤の使用。
【請求項9】
ヨード100mg/ml〜ヨード500mg/mlに相当するX線濃度で存在することを特徴とする請求項1記載の静脈内造影剤の使用。
【請求項10】
ヨード100mg/ml〜ヨード500mg/mlの濃度で存在することを特徴とする請求項2記載の静脈内造影剤の使用。
【請求項11】
体重1kg当たりヨード150mgから体重1kg当たりヨード1500mgに相当する用量で投与されることを特徴とする請求項2記載の静脈内造影剤の使用。
【請求項12】
臭素100mg/ml〜500mg/mlの濃度で存在することを特徴とする請求項3記載の静脈内造影剤の使用。
【請求項13】
体重1kg当たり臭素100mgから体重1kg当たり1500mgに相当する用量で投与されることを特徴とする請求項3記載の静脈内造影剤の使用。
【請求項14】
10mモル〜2モル/lの濃度で存在することを特徴とする請求項4記載の静脈内造影剤の使用。
【請求項15】
体重1kg当たり0.1〜2mモルの用量で適用されることを特徴とする請求項4記載の静脈内造影剤の使用。
【請求項16】
10mモル/l〜2モル/lの濃度で存在することを特徴とする請求項5記載の静脈内造影剤の使用。
【請求項17】
体重1kg当たり0.1〜2mモルの用量で適用されることを特徴とする請求項5記載の静脈内造影剤の使用。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−12074(P2011−12074A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223769(P2010−223769)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願平11−503741の分割
【原出願日】平成10年6月19日(1998.6.19)
【出願人】(507210421)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (12)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Muellerstrasse 178, D−13353 Berlin, Germany
【Fターム(参考)】