説明

乳房撮影検査用X線診断装置

【課題】X線曝射が長時間にわたるときでも術者が安心して曝射を続けることができると共に、患者にとっても曝射終了を容易に予想することができる乳房撮影検査用X線診断装置を提供することである。
【解決手段】乳房撮影検査用X線診断装置10は、被検体に対してX線を曝射するX線管11と、X線管11より発生されたX線を検出するX線検出器17とを備えたアーム部19と、該アーム部を回動可能に支持する支持部21と、X線管11の操作を行う操作装置30とを備えた乳房撮影検査用X線診断装置に於いて、操作装置30に備えられ、被検体の乳房の圧迫厚に起因するX線条件に基づいて決まるX線の曝射残り期間を表示する表示器35aを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば乳房等の被検体に於ける投影像データを取得する乳房撮影検査用X線診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳房撮影装置は、本体にX線管保持部が支持されており、このX線管保持部内に乳房である被検体X線を照射するX線管が内蔵されている。そして、撮影台上に、上記被検体が載置され、該撮影台の上方に設けられた圧迫板により、被検体の厚さを薄く均一にするようにして撮影が行われるようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2500895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述した乳房撮影装置では、乳房が厚い場合、数秒間X線を曝射する場合がある。X線曝射時間は、装置が最適な照射量を決定する自動露光制御により決定されるが、決定された曝射時間を術者が前もって知ることができない。そのため、曝射時間が長いと、術者は装置が異常な動作をしているという疑いを持ち、曝射完了前にX線の曝射を停止してしまうことがあった。曝射完了前にX線の曝射を停止してしまうと、装置が決定した最適X線量が照射されないため、得られる画像は診断には不十分となる場合があった。 また、乳房撮影装置では、前述したように、X線曝射は乳房を圧迫して行い、X線曝射の終了直後に乳房の圧迫を解除する。圧迫中は、患者(被検体)はかなり苦痛を感じるが、撮影中は正確な画像を得るために動かないようにしている。したがって、X線の曝射がいつ終わるかを知ることは、患者にとって必要な情報である。しかしながら、従来の装置では、この曝射時間を知ることはできないものであった。
【0004】
加えて、近年行われているデジタルトモシンセシスでは、乳房の圧迫期間が更に長くなるため、患者にとっては圧迫が解除されるタイミングを知ることは、更に重要なものとなる。しかしながら、こうしたデジタルトモシンセシスでも、従来の装置では知ることができないものであった。
【0005】
したがって本発明の目的は、X線曝射が長時間にわたるときでも術者が安心して曝射を続けることができると共に、患者にとっても曝射終了を容易に予想することができる乳房撮影検査用X線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、被検体に対してX線を曝射して撮影するX線発生手段と、該X線発生手段より発生されたX線を前記被検体を透過して検出する検出手段とを備えたアーム部と、該アーム部を回動可能に支持する支持体と、前記X線発生手段の操作を行う操作装置と、を備えた乳房撮影検査用X線診断装置に於いて、前記X線発生手段によるX線の曝射期間を表示する表示手段を具備することを特徴とする。
【0007】
また本発明は、被検体に対してX線を曝射して撮影するX線発生手段と、該X線発生手段を前記被検体の周囲に移動させて前記X線発生手段より発生されたX線を前記被検体を透過して検出する検出手段とを備えたアーム部と、該アーム部を回動可能に支持する支持体と、前記X線発生手段の操作を行う操作装置と、を備えた乳房撮影検査用X線診断装置に於いて、前記X線発生手段によるX線の曝射期間を表示する表示手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、X線の曝射の進行状況を目標期間(目標線量)に対して視覚的に表示するようにしたので、X線曝射が長時間にわたるときでも術者が安心して曝射を続けることができると共に、患者にとっても曝射終了を容易に予想することができるため、苦痛を和らげて体を静止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る乳房撮影検査用X線診断装置の外観構成を示す斜視図である。
【0011】
図1に於いて、この乳房撮影検査用X線診断装置10は、乳房撮影検査用装置本体20と、操作装置30とより構成される。そして、乳房撮影検査用装置本体20は、X線管11、線質調整フィルタ及び照射制限マスク12、フェイスガード13、乳房圧迫板14、移動グリッド16、X線検出器17、Cアーム上下動/回転微調整スイッチ18を有したアーム部19と、支持部22、情報表示パネル23、サイドパネル24、圧迫フットペダル25を有したスタンド部21とより構成される。
【0012】
X線管11は、患者の乳房に対してX線を曝射するもので、前記線質調整フィルタ及び照射制限マスク12を介して適切なX線が曝謝される。これらX線管11及び線質調整フィルタ及び照射制限マスク12は、アーム部19内に設けられている。フェイスガード13は、図2(b)に示されるように、被検体Pの顔の部分にX線が曝謝されないように顔を保護するために設けられている。
【0013】
乳房圧迫板14は、撮像時に被検体Pの乳房を移動グリッド16上に圧迫するのに用いられる。X線検出器17は、X線管11から曝射されて患者の乳房を透過したX線を検出するためのものである。Cアーム上下動/回転微調整スイッチ18は、アーム部19の上下動や回転方向を微調整するためのスイッチである。
【0014】
そして、このような構成のアーム部19は、その裏面側に設けられた支持部22を介して、スタンド部21内に回動可能に支持されている。
【0015】
情報表示パネル23は、撮影条件設定パネル32によって入力された情報等を表示するための表示手段であり、サイドパネル24は情報入力のために設けられている。また、圧迫フットペダル25は、被検体Pが前記乳房圧迫板14を上下動させるためのスイッチである。
【0016】
一方、操作装置30は、X線管11よりX線を曝謝するための駆動部であるインバータ式X線高電圧装置31と、診断に際して撮影条件等を入力するための撮影条件設定パネル32と、を有して構成される。
【0017】
また、アーム部19の線質調整フィルタ及び照射制限マスク12の近傍、スタンド部21の上部、操作装置30の上部には、詳細を後述するX線曝射期間を表示するための表示器35a、35b、35cが設けられる。但し、これらの表示器35a、35b、35cは、全て設けられている必要はなく、少なくとも何れか1つ設けられていれば良い。例えば、図2(a)に示されるようにスタンド部21に設けられている表示器35bや、図2(b)に示されるようにアーム部19に設けられている表示器35cの場合は、操作装置30の表示器35aよりも、被検体Pにとって容易に視認可能な位置である。
【0018】
図3は、本実施形態に係る乳房撮影検査用X線診断装置10の電気系の主要部の構成を示すブロック図である。
【0019】
図3に於いて、システム制御部41は、この乳房撮影検査用X線診断装置10の全体の制御動作を司るものである。このシステム制御部41には、X線制御部42を介してX線管11と、X線検出器17と、表示器35(表示器35a、35b、35c)と、画像処理部43と、比較器48と、報知部49と、操作部50とが接続されており、それぞれの動作処理が行われる。また、このシステム制御41内には、後述するフォトセンサ45を使用する際にカウントするフォトタイマ41aを有している。
【0020】
前記X線管11は、システム制御部41からX線制御部42を介して、X線曝射の動作制御が行われる。乳房圧迫板14は、乳房である被検体Pの厚さを薄く均一にするために被検体Pを圧迫する。X線検出器17は、X線管11から被検体PにX線を曝射したときのX線の信号を検出し、この検出された信号を画像処理部43に出力する。画像処理部43では、X線検出器17の出力した未処理の影像データを取得して、被検体Pの画像処理後の影像データを生成する。これら影像データは、システム制御部41によって図示されないメモリに記憶される。このメモリに記憶された影像データに対応する画像が、図示されない表示部23に表示される。
【0021】
表示器35は、図1に示される表示器35a、35b、35cに対応するもので、全体の期間に対して現在の状態がどれくらいの期間が経過しているかを表すための表示が為されるものであればよい。或いは、表示器35と同様の機能を有する報知部49を有しても良い。この報知部49とは、例えば全体の期間に対する残り時間を発音(例えば、音声)により報知するもの等であっても良い。
【0022】
操作部50は、前述した撮影条件設定パネル32、サイドパネル24に対応するもので、各種時用件の設定や動作を行うための入力部を有している。また、図1には示されないが、この操作部50には、被検体PにX線管11よりX線を曝射するための操作を行うX線曝射釦51が接続されている。更に、前記操作部50は、後述するように、通常モード撮影とトモシンセシスモード撮影とを切り替える等の切り替え手段としての操作や、トモシンセシスモード撮影の際にX線管11を移動させるための入力等の操作を行うためのものである。
【0023】
また、X線検出器17の近傍には、フォトタイマ41aを使用する場合に、X線曝射中の信号を積分器46で積分するためにX線を検出するためのフォトセンサ45が配設されている。メモリ47は、フォトタイマ41aを使用する際に比較される所定値を記憶しているもので、この値は予め定められているものである。そして、このメモリ47に記憶されている所定値と積分器46との出力結果が、X線制御部42に供給されるようになっている。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に於ける乳房撮影検査用X線診断装置10の動作について説明する。
【0025】
初めに、図4のフローチャートを参照して、X線の条件を術者が決定するマニュアル撮影を行う動作について説明する。
【0026】
尚、以下に説明する実施形態に於いて、被検体Pを撮像するための処理動作は、従来よりある乳房撮影検査用X線診断装置と同様であるので、ここではその詳細な説明は省略して、X線の曝射とその表示に関して説明する。
【0027】
本シーケンスが開始されると、先ず、ステップS1に於いて、術者が撮影条件設定パネル32等を操作することより、X線曝射の条件(管電圧,mAs)の設定がなされる。そして、ステップS2にてX線曝射釦51が操作(押下)されると、続くステップS3に於いて、X線管11の管電流が決定されると共に、X線のパルス幅がシステム制御部41内の演算部にて算出される。ここで算出されたパルス幅がプログレスバーの100%となる。その後、ステップS4に於いて、装置の準備が整ったか(OKか)否かが判定される。ここで、まだ準備が整っていない場合は、前記ステップS1に移行して、ステップS1〜S4の処理動作が繰り返される。
【0028】
一方、前記ステップS4にて装置の準備が整った場合は、ステップS5に移行して、X線管11によるX線の曝射が実行される。また、このステップS5のX線曝射と同時に、ステップS6にて表示器35のプログレスバーの表示がなされる。尚、ここでは代表的に表示器35として説明するが、前述したように表示器35a、35b、35cの少なくとも1つであれば良く、何れか1つであっても、全ての表示器35a、35b、35cであっても良い。
【0029】
このプログレスバーによる表示は、例えば、図5に示されるようになっている。
【0030】
図5(a)は、曝射開始前の表示であり、前述したステップS5でX線曝射釦51が押下されるまでは、表示器35には何も表示されていない状態である。そして、ステップS5でX線曝射が開始されると、図5(b)に示されるように、表示器35にプログレスバーの1段目のみが表示される。
【0031】
このプログレスバーによる表示は、例えば、図5(d)に示されるように、全体の表示が表示器35の両端に渡るものであった場合、左端部が0%、右端部が100%を表している。そして、この100%の値は、前述したステップS3で算出されたX線パルス幅であり、曝射時間に相当している。
【0032】
次に、ステップS7に於いて、X線管11によるX線の曝射時間と前記ステップS3で予め設定されたX線パルス幅とが比較される。ここで、まだ曝射時間が前記設定されたパルス幅に到達していない場合は、前記ステップS5に移行して、ステップS5〜S7の処理動作が繰り返される。このとき、表示器35には、図5(c)に示されるように、プログレスバーが表示されて、現在はX線の曝射中であることが表される。
【0033】
プログレスバーの100%の表示は、前述したように、ステップS3で算出されたX線パルス幅であることがわかっているので、現在の曝射期間が全体の曝射期間と比較されてその割合から、現在の状況がわかる。つまり、図5(c)の例では、現在の曝射状態は、全体の略半分の期間(5段目)であることがわかる。
【0034】
そして、ステップS5〜S7にてX線の曝射時間が前記設定されたパルス幅に到達するまでは、プログレスバーの表示が0%から100%の間で経時的に変化する。つまり、曝射開始直後は図5(b)に示されるように(10%)表示され、途中の表示を経て、終了直前には図5(d)に示されるように(100%)表示される。
【0035】
前記ステップS7に於いて、X線の曝射時間が前記設定されたパルス幅に到達した場合は、ステップS8に移行して、X線管11によりX線の曝射が終了する。ここで、ステップS8の曝射が終了する直前には、図5(d)に示されるように、プログレスバーの表示は、表示器35の右端部まで、すなわち100%に到達したことが表される。
【0036】
こうしてステップS8で曝射が終了すると、続くステップS9にて表示器35のプログレスバーの表示が、図5(e)に示されるように消灯された状態となり、本シーケンスが終了する。
【0037】
このように、最終的に曝射しようとするX線量から、プログレスバーの表示状態により、その期間を知ることができるので、術者は安心して操作を行うことができる。また、被検体にとっても、プログレスバーの表示によって、残り時間を予想することが容易にできるので、残り時間が不明であることによる不安感を除去して、乳房圧迫板による圧迫に苦痛を和らげることができる。
【0038】
次に、図6のフローチャートを参照して、プレ曝射により本曝射のX線条件を決定する場合の例について説明する。
【0039】
ここで、X線条件とは、例えば、X線管11の管電圧、管電流、X線パルス幅、X線フィルタ等である。プレ曝射の結果得られた画像データから、装置で算出された本曝射のX線パルス幅を100%としている。尚、プログレスバーの表示については、前述したマニュアル撮影時の表示と同じであるので説明は省略する。
【0040】
本シーケンスが開始されると、ステップS11に於いて、X線曝射釦51が操作(押下)される。次いで、ステップS12にて、被検体20の乳房の圧迫厚から、プレ曝射X線条件(管電圧,mAs)が決定される。そして、ステップS13に於いて、X線管11のプレ曝射管電流が決定されると共に、X線のパルス幅がシステム制御部41内の演算部にて算出される。その後、ステップS14に於いて、装置の準備が整ったか(OKか)否かが判定される。ここで、まだ準備が整っていない場合は、前記ステップS11に移行して、ステップS11〜S14の処理動作が繰り返される。
【0041】
一方、前記ステップS14にて装置の準備が整った場合は、ステップS15に移行して、X線管11によるX線のプレ曝射が実行される。すると、ステップS16にて、X線検出器17及び画像処理部43によりプレ曝射画像が収集され、続くステップS17にて、収集されたプレ曝射画像から本曝射条件が、システム制御部41内の演算部にて算出される。これにより、ステップS18にて、本曝射のX線条件(管電圧,mAs)が決定される。次いで、ステップS19にて、X線管11の本曝射管電流が決定されると共に、X線のパルス幅がシステム制御部41内の演算部にて算出される。
【0042】
次に、ステップS20に於いて、装置の準備が整ったか(OKか)否かが判定される。ここで、まだ準備が整っていない場合は、前記ステップS15に移行して、ステップS15〜S20の処理動作が繰り返される。一方、前記ステップS20にて装置の準備が整った場合は、ステップS21に移行して、X線管11によるX線の本曝射が実行される。 このステップS21のX線曝射と同時に、ステップS22にて表示器35のプログレスバーの表示がなされる。このプログレスバーの表示については、前述したマニュアル撮影の例と同じであるので、説明は省略する。
【0043】
次に、ステップS23に於いて、X線管11によるX線の本曝射時間と前記ステップS19で設定されたX線パルス幅とが比較される。ここで、まだ本曝射時間が前記設定されたパルス幅に到達していない場合は、前記ステップS21に移行して、ステップS21〜S23の処理動作が繰り返される。一方、X線の本曝射時間が前記設定されたパルス幅に到達した場合は、ステップS24に移行して、X線管11によりX線の本曝射が終了する。そして、ステップS25にて表示器35のプログレスバーの表示が消灯されると、本シーケンスが終了する。
【0044】
このように、プレ曝射により本曝射のX線条件を決定するようにしても、最終的に曝射しようとするX線量から、プログレスバーの表示状態によって、その期間を知ることができる。
【0045】
次に、図7のフローチャートを参照して、プレ曝射せずに本曝射を行い、フォトタイマ41aにて曝射終了を制御する例について説明する。
【0046】
本シーケンスが開始されると、先ず、ステップS31に於いて、術者が撮影条件設定パネル32等を操作することより、X線曝射の条件(管電圧)の設定がなされる。そして、ステップS32にてX線管11の管電流が決定されると、続くステップS33でX線曝射釦51が操作(押下)される。すると、ステップS34に於いて、装置の準備が整ったか(OKか)否かが判定される。ここで、まだ準備が整っていない場合は、前記ステップS31に移行して、ステップS31〜S34の処理動作が繰り返される。
【0047】
一方、前記ステップS34にて装置の準備が整った場合は、ステップS35に移行して、X線管11によるX線の曝射が実行される。また、このステップS35のX線曝射と同時に、ステップS36にて表示器35のプログレスバーの表示がなされる。
【0048】
ここで、図5(a)〜(e)に示されるプログレスバーの表示は、前述したマニュアル撮影、プレ曝射を利用する例では曝射期間に相当するものであったが、このフォトタイマ41aを利用する例では、X線の積算量に相当している。したがって、プログレスバーの表示そのものは前述した例と同じであるが、現在の状態がX線積算量の何割に相当するかを表している点が異なっている。
【0049】
ステップS37に於いて、X線管11によるX線の曝射中の信号がフォトセンサ45で検出され、この検出された信号が積分器46で積分された積算X線量と、メモリ47に予め記憶された所定値(目標値)とが、比較器48によって比較される。ここで、まだ積算X線量が前記目標値に到達していない場合は、前記ステップS35に移行して、ステップS35〜S37の処理動作が繰り返される。
【0050】
一方、前記ステップS37に於いて、積算X線量が前記目標値に到達した場合は、ステップS38に移行して、X線管11によりX線の曝射が終了する。次いで、ステップS39にて表示器35のプログレスバーの表示が消灯され、本シーケンスが終了する。
【0051】
このように、最終的に曝射しようとするX線量から、プログレスバーの表示状態によって、その期間を知ることができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0053】
前述した第1の実施形態では、X線管は何れも固定した状態で撮影を行っている例で説明したが、この第2の実施形態では、トモシンセシス撮影によるX線曝射期間の表示の例について説明する。
【0054】
尚、この第2の実施形態に於いて、乳房撮影検査用X線診断装置の基本的な構成及び動作については、前述した第1の実施形態と同じであるので、説明の重複を避けるため、同一の部分には同一の参照番号を付して、その図示及び説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0055】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る乳房撮影検査用X線診断装置を説明するための概略図である。
【0056】
図8に於いて、トモシンセシス撮影では、アーム部19を移動(回転)しながら、複数の位置でX線管11(11a、11b、11c)によりX線曝射を行う撮影である。そして、被検体はアーム部19が移動する全ての位置で、X線の曝射が終了するまで静止していることが要求される。
【0057】
図9(a)〜(c)はトモシンセシス撮影によるプログレスバーの表示例であって、それぞれ上段はX線曝射期間を表示する表示器61、下段はアーム部の移動期間を含む全体の表示を行う表示器62を示している。これら表示器61及び62は、前述した第1の実施形態の表示器35に相当するものであり、表示器35a、35b、35cの何れの位置に設けられるものであっても良い。
【0058】
先ず、図8に示されるX線管11aの位置で撮影が開始される。例えば、図9(a)に示される例では、全体表示である表示器62は2段目の表示である場合、X線曝射期間を表す表示器61の表示は、この撮影位置に於いての曝射中の表示(例えば、5段目)となる。つまり、この位置での曝射が終了するまで、表示器61の表示は0%から100%まで変化する。
【0059】
次いで、X線管11aの位置の撮影が終了してX線管11bの位置にアーム部19が移動すると、X線曝射を表す表示器61の表示はこの移動期間中は一旦消灯される。しかしながら、表示器62の表示は全体の撮影期間に対する表示であるので、プログレスバーの表示は消灯されずに継続的に表示される。
【0060】
そして、X線管11bの位置での撮影が開始されると、表示器62のプログレスバーは図9(a)の状態から継続して表示(図9(b)の場合5段目)される。一方、表示器61は、この位置に於いてのX線曝射期間を表すものであるから、ここでも0%から100%まで、プログレスバーの表示は変化する。尚、図9(b)に於いては表示器61のプログレスバーは7段目を表示している。
【0061】
その後、X線管11bの位置での撮影が終了すると、再度アーム部19が移動してX線管11cの位置での撮影となる。この移動期間中は、前記と同様、X線曝射を表す表示器61のプログレスバーの表示は一旦消灯され、表示器62のプログレスバーの表示は消灯されずに継続的に表示される。
【0062】
そして、X線管11cの位置での撮影が開始されると、表示器62のプログレスバーは図9(b)の状態から継続して表示(図9(c)の場合10段目)される。一方、表示器61は、この位置に於いてのX線曝射期間を表すものであるから、ここでも0%から100%まで、プログレスバーの表示は変化する。尚、図9(c)に於いては表示器61のプログレスバーは3段目を表示している。
【0063】
このように、トモシンセシス撮影の場合、アーム部の移動中は、アーム部移動期間を含む全体表示のプログレスバー0%側よりだんだん延びてきて、全体の移動及び撮影が終了するときに枠一杯の表示(100%)となる。そして、アーム部の移動中にX線の曝射が複数回行われるが、その度にX線曝射期間表示の枠にプログレスバーが表示され、曝射中に0%から100%までバーが延びていき、所定の曝射期間に達する時点で枠一杯の長さとなる。最後のX線曝射が終了し、且つ、アーム部移動期間を含む全体表示のバーが最長となった後、両者のバーが消灯することで、術者、被検体は撮影が終了したことを知ることができる。
【0064】
したがって、長時間の撮影となるトモシンセシス撮影の場合でも、被検体には、プログレスバーの表示によって、残り時間を予想することが容易にできるので、残り時間が不明であることによる不安感を除去して、乳房圧迫板による圧迫に苦痛を和らげることができる。
【0065】
尚、前述した説明では、トモシンセシス撮影を3箇所として説明したが、勿論これに限られるものではなく、複数の箇所で可能なことはいうまでもない。
【0066】
また、前述した第1及び第2の実施形態に於いては、表示器への表示をプログレスバーによる表示として説明したが、これに限られるものではない。
【0067】
例えば、円形のメータ表示やスライドバー状の表示であっても、全体の期間のうち現在がどのくらいにあるかがわかる表示であれば良い。また、数字の表示によるカウントダウン表示であっても良いし、カラー表示や階調表示によりその色や濃度の変化によって経過期間を表示するものであっても良い。
【0068】
更には、表示器35と同様の機能を有する報知部49により、例えば全体の期間に対する残り時間を発音(例えば、音声)により報知するもの等であっても良い。この場合、例えば、「10秒前」、「9」、「8」、…のように音声により告知するものであったり、電子音の音量や間隔を変化させたりして告知するようなものであっても良い。
【0069】
また、本発明は、乳房撮影検査用X線診断装置について説明したが、これに限られるものではなく、例えば断層撮影を行うX線医用診断治療装置等にも適用が可能である。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能であるのは勿論である。
【0071】
更に、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、或いは実施形態に示される構成要件が幾つか組合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る乳房撮影検査用X線診断装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】スタンド部21に表示器を設けた例を示した図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る乳房撮影検査用X線診断装置10の電気系の主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による乳房撮影検査用X線診断装置10のX線の条件を術者が決定するマニュアル撮影を行う動作について説明するためのフローチャートである。
【図5】プログレスバーによる表示の例を示した図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による乳房撮影検査用X線診断装置10のプレ曝射により本曝射のX線条件を決定する場合の例について説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態による乳房撮影検査用X線診断装置10のプレ曝射せずに本曝射を行い、フォトタイマ41aにて曝射終了を制御する例について説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る乳房撮影検査用X線診断装置を説明するための概略図である。
【図9】トモシンセシス撮影によるプログレスバーの表示例を示した図である。
【符号の説明】
【0073】
10…乳房撮影検査用X線診断装置、11、11a、11b、11c…X線管、12…線質調整フィルタ及び照射制限マスク、13…フェイスガード、14…乳房圧迫板、16…移動グリッド、17…X線検出器、18…Cアーム上下動/回転微調整スイッチ、19…アーム部、20…乳房撮影検査用装置本体、21…スタンド部、22…支持部、23…情報表示パネル、24…サイドパネル、25…圧迫フットペダル、30…操作装置、31…インバータ式X線高電圧装置、32…撮影条件設定パネル、35、35a、35b、35c…表示器、41…システム制御部、41a…フォトタイマ、42…X線制御部、43…画像処理部、45…フォトセンサ、48…比較器、49…報知部、50…操作部、51…X線曝射釦。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対してX線を曝射するX線発生手段と、該X線発生手段より発生されたX線を検出する検出手段とを備えたアーム部と、該アーム部を回動可能に支持する支持部と、前記X線発生手段の操作を行う操作装置と、を備えた乳房撮影検査用X線診断装置に於いて、
前記操作装置に備えられ、前記被検体の乳房の圧迫厚に起因するX線条件に基づいて決まるX線の曝射残り期間を表示する表示手段を具備することを特徴とする乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記X線発生手段による前記X線の曝射残り期間の表示を、目標曝射期間に対しての進行状況として表示することを特徴とする請求項1に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記X線発生手段による前記X線の曝射残り期間の表示を、目標曝射量に対しての進行状況として表示することを特徴とする請求項1に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記操作装置とともに前記アーム部にも設けられていることを特徴とする請求項2若しくは3に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記操作装置とともに前記支持部にも設けられていることを特徴とする請求項2若しくは3に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項6】
被検体に対してX線を曝射するX線発生手段と、該X線発生手段を前記被検体の周囲に移動させて前記X線発生手段より発生されたX線を検出する検出手段とを備えたアーム部と、該アーム部を回動可能に支持する支持部と、前記X線発生手段の操作を行う操作装置と、を備えた乳房撮影検査用X線診断装置に於いて、
前記操作装置に備えられ、前記被検体の乳房の圧迫厚に起因するX線条件に基づいて決まるX線の曝射残り期間を表示する表示手段を具備することを特徴とする乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記X線発生手段による前記X線の曝射残り期間の表示を、目標曝射期間に対しての進行状況として表示することを特徴とする請求項6に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項8】
前記表示手段は、前記X線発生手段による前記X線の曝射残り期間の表示を、目標曝射量に対しての進行状況として表示することを特徴とする請求項6に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項9】
前記表示手段は、前記操作装置とともに前記アーム部にも設けられていることを特徴とする請求項7若しくは8に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項10】
前記表示手段は、前記操作装置とともに前記支持部にも設けられていることを特徴とする請求項7若しくは8に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項11】
前記表示手段は、前記X線発生手段を移動させて撮影する撮影期間全体に対する曝射期間を表示する第1の表示と、前記X線発生手段を固定又は移動しながら撮影する個別の撮影期間に対する曝射期間を表示する第2の表示を行うことを特徴とする請求項6に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項12】
前記表示手段は、前記第2の表示を、目標曝射期間に対しての進行状況として表示することを特徴とする請求項11に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。
【請求項13】
前記表示手段は、前記第2の表示を、目標曝射量に対しての進行状況として表示することを特徴とする請求項11に記載の乳房撮影検査用X線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−66784(P2013−66784A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−9000(P2013−9000)
【出願日】平成25年1月22日(2013.1.22)
【分割の表示】特願2007−260321(P2007−260321)の分割
【原出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】