説明

乳房検診用放射線撮影装置

【課題】体幹部由来の放射線を確実に遮蔽し、かつ乳房を検出器リングに挿入するときの邪魔とならない遮蔽プレートを備えた乳房検診用放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明における遮蔽プレート13は、部位によって厚さが異なる。すなわち、本発明の遮蔽プレート13は、検出器リングの中心軸方向に肉厚の肉厚部13aと、肉薄の肉薄部13bとを有している。この様な遮蔽プレート13における肉厚部13aでは、被検体の心臓などから多く発する放射線を確実に吸収することができる。また、肉薄部13bでは、被検体と検出器リングとの距離をより近づけることができる。したがって、本発明の装置によれば、鮮明で乳房全体を写し込んだ断層画像が取得できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から放射される消滅放射線対を検出して、被検体内の放射線薬剤分布のイメージングを行う乳房検診用放射線撮影装置に係り、特に、がん検診用の乳房検診用放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射線薬剤の分布をイメージングする放射線断層撮影装置が配備されている。この様な放射線断層撮影装置の具体的な構成について説明する。従来の放射線断層撮影装置は、放射線を検出する放射線検出器が円環状に並んで構成される検出器リングが備えられている。この検出器リングは、被検体内の放射性薬剤から照射される互いに反対方向となっている一対の放射線(消滅放射線対)を検出する(例えば、特許文献1参照)
【0003】
この様な放射線断層撮影装置の一種として、乳房検診用の放射線断層撮影装置がある。この乳房検診用放射線撮影装置について具体的に説明する。図10は、従来の乳房検診用放射線撮影装置について説明する図である。従来の乳房検診用放射線撮影装置51では、検査に際し、被検体Mの乳房Bの片側が検出器リング62に挿入される。この状態で、検出器リング62は、被検体Mから照射される消滅放射線対を検出する。
【0004】
検出器リング62は、乳房Bから発せられた消滅放射線対の発生源を特定して、この位置情報を基に放射性薬剤の分布が生成される。放射性薬剤は、正常組織と比べがん組織により多く集積する性質があるので、放射性薬剤の分布図を診断すれば、乳がんの検診が行える。
【0005】
遮蔽プレート63は、検出器リング62の乳房挿入側に設けられている。体幹部から生じた放射線が検出器リング62に入射すると、乳房Bをうまくイメージングすることができなくなる。そこで、遮蔽プレート63は、被検体の体幹部から生じた放射線が検出器リング62に入射することを防止する目的で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3828195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の構成によれば、次のような問題点がある。
すなわち、従来構成によれば、乳房を検出器リングに導入する際に、遮蔽プレートが邪魔となるという問題点がある。遮蔽プレートは、被検体の体幹部から生ずる放射線を確実に吸収する必要がある。そのためには、遮蔽プレートはある程度厚くする必要がある。
【0008】
遮蔽プレート63が厚いと、それだけ、検出器リング62に乳房を深く挿入することができなくなる。乳房を検出器リング62に十分に挿入することができないと、取得される断層画像に乳がんが写り込まない可能性が増大する。乳房の付け根は乳がんが発生する場合が多く、この部分は、乳房を検出器リング62の奥深くまで挿入しなければ検査できないからである。
【0009】
乳房を検出器リング62に奥深くまで挿入しようとして遮蔽プレート63を薄くすると、被検体の体幹部から検出器リング62に向けて放射される放射線を十分に遮蔽することができない。すると、検出器リング62には、乳房に位置する放射性薬剤に由来しない放射線を検出してしまい、鮮明な断層画像を取得することが難しくなる。
【0010】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、体幹部由来の放射線を確実に遮蔽し、かつ乳房を検出器リングに挿入するときの邪魔とならない遮蔽プレートを備えた乳房検診用放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る乳房検診用放射線撮影装置は、放射線を検出する検出器が弧状に配列されて構成される検出器リングと、検出器リングの中心軸と直交する検出器リングの側面を覆うように設けられた放射線を吸収する遮蔽プレートを備え、遮蔽プレートは、中心軸方向に肉厚の肉厚部と、中心軸方向に肉薄の肉薄部とを有していることを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]本発明における遮蔽プレートは、部位によって厚さが異なる。すなわち、本発明の遮蔽プレートは、検出器リングの中心軸方向に肉厚の肉厚部と、肉薄の肉薄部とを有している。この様な遮蔽プレートにおける肉厚部では、被検体の心臓などから多く発する放射線を確実に吸収することができる。これにより、心臓などの放射性薬剤が集積した部分から放射される放射線は、遮蔽プレートの肉厚部に吸収されて検出器リングに到達しない。一方、肉薄部では、被検体と検出器リングとの距離をより近づけることにより乳房を検出器リングに対してより密着して配置することができる。これにより、乳房から放射される放射線は、確実に検出器リングに到達する。このように、本発明に係る乳房検診用放射線撮影装置によれば、被検体の体幹部から発する放射線を検出器リングに入射することを確実に防止できる。しかも、本発明の装置によれば乳房を確実に検出器リングに挿入して診断ができる。したがって、本発明の装置によれば、偽像が抑制されることにより鮮明でしかも乳房全体を写し込んだ断層画像が取得できる。
【0013】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、遮蔽プレートにおける被検体側の一端面は、平面となっていればより望ましい。
【0014】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の乳房検診用放射線撮影装置のより具体的な構成を示すものとなっている。遮蔽プレートにおける被検体側の一端面を平面とし、凹凸を設けないようにすれば、被検体が凹凸に当たることなく、被検体に痛みを感じさせずに診断を実行できる。
【0015】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、遮蔽プレートは、検査時において肉厚部が被検体の心臓に近づく方向に配置されていればより望ましい。
【0016】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の乳房検診用放射線撮影装置のより具体的な構成を示すものとなっている。遮蔽プレートが検査時において肉厚部を心臓に近づく方向に配置されれば、より確実に鮮明な断層画像を取得できる。放射性薬剤は、被検体の心臓に集中する性質がある。したがって、心臓からは強い放射線が発生している。上述の構成によれば、心臓から発した放射線は遮蔽プレートの肉厚部で確実に吸収されるので、乳房の撮影は低ノイズで実行される。
【0017】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、遮蔽プレートを中心軸を中心として回転させる回転手段と、回転手段を制御する回転制御手段とを備えればより望ましい。
【0018】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の乳房検診用放射線撮影装置のより具体的な構成を示すものとなっている。遮蔽プレートを回転できるようにすれば、被検体の体幹部における放射線を多く発生する部位まで肉厚部を移動させることができる。また、被検体の右胸と左胸とを検査するときに、遮蔽プレートの肉厚部の位置を変更するようにすることもできる。このようにすれば、検査の度に変わる被検体の体幹部の位置に応じて遮蔽プレートの位置を変更することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明における遮蔽プレートは、部位によって厚さが異なる。すなわち、本発明の遮蔽プレートは、検出器リングの中心軸方向に肉厚の肉厚部と、肉薄の肉薄部とを有している。この様な遮蔽プレートにおける肉厚部では、被検体の心臓などから多く発する放射線を確実に吸収することができる。肉薄部では、被検体と検出器リングとの距離をより近づけることができる。したがって、本発明の装置によれば、鮮明で乳房全体を写し込んだ断層画像が取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る遮蔽プレートを説明する斜視図である。
【図3】実施例1に係る遮蔽プレートと検出器リングとの位置関係を説明する断面図である。
【図4】実施例1に係る遮蔽プレートを説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る遮蔽プレートを説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る検出器リングを説明する平面図である。
【図7】実施例1に係る放射線検出器を説明する斜視図である。
【図8】本発明に係る1変形例を説明する機能ブロック図である。
【図9】本発明に係る1変形例を説明する斜視図である。
【図10】従来の放射線撮影装置の構成を説明する断面図である。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置の実施例について図面を参照しながら説明する。実施例1におけるγ線は本発明の放射線の一例である。なお、実施例1の構成は、乳房検診用のマンモグラフィー装置となっている。すなわち、実施例1の放射線断層撮影装置は、乳房Bに分布する放射性薬剤のイメージングを行って断層画像を生成する。
【0022】
<放射線断層撮影装置の全体構成>
図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置の具体的構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る放射線断層撮影装置9は、被検体Mの乳房Bをz方向から挿入させる開口部を備えたガントリ11と、ガントリ11の内部に設けられた被検体Mの乳房Bをz方向から挿入させるリング状の検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた開口部は、z方向に伸びた円筒形(正確には、正8角柱)となっている。したがって、検出器リング12自身もz方向に伸びている。なお、検出器リング12の開口部の領域が、放射線断層撮影装置9の断層画像Pが生成できる撮影視野となっている。z方向は、検出器リング12の中心軸の伸びる方向に沿っている。
【0023】
天板10は、腹ばいの状態となった被検体Mを載置する目的で設けられている。天板10には、被検体Mの乳房Bを挿通する穴がz方向に貫通するように設けられており、乳房Bは、この穴を通じて乳房Bを検出器リング12の内部に挿入される。ガントリ11の開口部は、鉛直上向きに設けられており、乳房Bは、この開口部に鉛直下向きの方向から挿入されることになる。
【0024】
ガントリ11は、支持台25に載置されている。この支持台25は、被検体Mから見てガントリ11の裏側に位置している。
【0025】
遮蔽プレート13は、タングステンや鉛等で構成される(図1参照)。放射性薬剤は、被検体Mの乳房B以外の部分にも存在するので、そこからも消滅γ線対が発生している。この様な関心部位以外から発生する消滅γ線対が検出器リング12に入射すると、断層画像撮影の邪魔となる。そこで、検出器リング12のz方向における被検体Mに近い側の一端を覆うようにリング状の遮蔽プレート13が設けられているのである。遮蔽プレート13は、γ線を吸収するので、被検体Mの体幹部から発したγ線は、遮蔽プレート13に吸収されることになる。遮蔽プレート13は、検出器リング12の中心軸と直交する検出器リング12の側面を覆うように設けられている。
【0026】
この遮蔽プレート13の形状が本発明の最も特徴的な構成である。図2は、遮蔽プレート13の概観を示している。遮蔽プレート13は、検出器リング12の形状に倣ってリング状の形状となっている。その中心軸方向(z方向)の厚みは、遮蔽プレート13の部位によって異なっている。遮蔽プレート13は、z方向に肉厚の肉厚部13aとz方向に肉薄の肉薄部13bとを有している。この遮蔽プレート13の被検体側の一端面は楕円形の平面に開口部が設けられた形状となっており、平面となっている。この開口部には被検体Mの乳房Bが導入される。肉厚部13aの厚みは5mm程度、肉薄部13bの厚みは1mm程度となっている。この様に、遮蔽プレート13はテーパ状となっている。
【0027】
図3は、遮蔽プレート13と検出器リング12との位置関係を示している。リング状の遮蔽プレート13は、検出器リング12の開口を延長するように検出器リング12の側面に設けられている。遮蔽プレート13は検出器リング12に固定されている。
【0028】
検出器リング回転機構23は、検出器リング12を中心軸を中心として回転させるものである(図1参照)。遮蔽プレート13は、検出器リング12に固定されている。したがって、検出器リング回転機構23は、遮蔽プレート13を検出器リング12と一体に回転させることになる。検出器リング回転機構23を動作させると、被検体Mに対する遮蔽プレート13の肉厚部13aの位置を変更することができる。検出器リング回転制御部24は、検出器リング回転機構23を制御する目的で設けられている。検出器リング回転機構23は、本発明の回転手段に相当し、検出器リング回転制御部24は、本発明の回転制御部に相当する。
【0029】
次に、検査時における被検体Mと遮蔽プレート13の位置関係について説明する。図4における符号hは、被検体Mの心臓を意味している。放射性薬剤は心臓に集合しやすい性質がある。したがって、放射性薬剤が注射された被検体Mの心臓からは、比較的強いγ線が発生している。
【0030】
心臓から発生するγ線が検出器リング12で検出されると、正確な乳房検診が難しくなる。乳房以外から発生したγ線が乳房Bの放射性薬剤の分布のイメージングの邪魔となるからである。そこで、検査時において、遮蔽プレート13は、肉厚部13aが被検体Mの心臓に近づく方向に配置される。
【0031】
図5は、検査時における遮蔽プレート13の様子を表している。被検体Mにとっての左胸の診断をするときには、図5左側に示すように、遮蔽プレート13は、図中の斜線で示す肉厚部13aが被検体Mの心臓hに近づく位置まで回転される。すると、図中の矢印で示す心臓hから照射される放射線は、遮蔽プレート13の肉厚部13aで吸収されることになる。一方、図中の網掛けで示す遮蔽プレート13の肉薄部13bでは、遮蔽プレート13が肉薄となっている分だけ被検体Mと検出器リング12との距離が短くなっている。これにより、被検体Mの乳房Bが検出器リング12の奥深くまで挿入される。また、このときの心臓hは、z方向から見ると、遮蔽プレート13の開口部の内部に位置している。遮蔽プレート13の回転は検出器リング回転機構23が行う。
【0032】
また、被検体Mにとっての右胸の診断を行うときも、遮蔽プレート13は、図中の斜線で示す肉厚部13aが被検体Mの心臓hに近づく位置まで回転される(図5右側参照)。すると、図中の矢印で示す心臓hから照射される放射線は、遮蔽プレート13の肉厚部13aで吸収されることになる。一方、図中の網掛けで示す遮蔽プレート13の肉薄部13bでは、遮蔽プレート13が肉薄となっている分だけ被検体Mと検出器リング12との距離が短くなっている。これにより、被検体Mの乳房Bが検出器リング12の奥深くまで挿入される。また、このときの心臓hは、遮蔽プレート13の肉厚部13aで覆われる位置に位置している。遮蔽プレート13の回転は検出器リング回転機構23が行う。
【0033】
このように、右胸、左胸いずれの乳房Bを診断する際でも、遮蔽プレート13の肉薄部13bでは、被検体Mの体幹部から発するγ線が確実に吸収される。遮蔽プレート13の肉薄部13bには心臓などのγ線を多く照射する照射源が近くにないので、肉薄部13bに入射するγ線が少ない。したがって、この部分では遮蔽プレート13を肉薄としても、体幹部由来のγ線を確実に吸収できる。また、遮蔽プレート13の肉厚部13aでは、被検体Mの心臓hから発する多い線量のγ線が確実に吸収される。検出器リング12に到達しようとするγ線は、肉厚部13aを構成する厚い部材で確実に吸収されるからである。このように、心臓などの放射性薬剤が集積した部分から放射されるγ線は、遮蔽プレート13の肉厚部13aに吸収されて検出器リング12に到達しない。一方、肉薄部13bでは、乳房Bを検出器リング12に対してより密着して配置することができるので、乳房Bから放射されるγ線は、確実に検出器リング12に到達する。
【0034】
なお、図5左側で説明した被検体Mにとっての左胸の診断において、被検体Mの心臓hから照射されるγ線は遮蔽プレート13の肉薄部13bにも向かう。しかし、遮蔽プレート13の肉薄部13bは心臓hから離れているので、肉薄部13bに到達するγ線の密度は小さくなっている。したがって、肉薄部13bに照射されるγ線は、肉薄部13bを構成する部材が薄くても確実に吸収される。
【0035】
検出器リング12の構成について説明する。検出器リング12は、8個の放射線検出器1がz方向(中心軸方向)に垂直な平面上の仮想円に配列されることで、1つの単位リング12bが形成される。この単位リング12bがz方向に3個配列されて検出器リング12が構成される(具体的には、図6参照)。
【0036】
放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図7は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図7に示すように放射線を光に変換するシンチレータ2と、光を検出する光電子増倍管から構成される光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0037】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶が3次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶は、Ceが拡散したLu2(1−X)2XSiO(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が光を発したかという光の発生位置を特定することができるようになっているとともに、光の強度や、光の発生した時刻をも特定することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0038】
クロック19は、検出器リング12にシリアルナンバーとなっている時刻情報を送出する。検出器リング12から出力される検出信号には、γ線をどの時点で検出したかという時刻情報が付与され、後述のフィルタ部20に入力される。
【0039】
同時計数部21(図1参照)には、後述のフィルタ部20を経由して検出器リング12から出力された検出信号が送られてきている。検出器リング12に同時に入射した2つのγ線は、被検体内の放射性薬剤に起因する消滅γ線対である。同時計数部21は、検出器リング12を構成するシンチレータ結晶のうちの2つの組み合わせ毎に消滅γ線対が検出された回数をカウントし、この結果を断層画像生成部22に送出する。同時計数部21による検出信号の同時性の判断は、クロック19によって検出信号に付与された時刻情報が用いられる。
【0040】
フィルタ部20は、検出器リング12における無用なデータを同時計数部21に送出させない目的で設けられている。フィルタ部20は、同時計数部21の負荷を軽減するように検出信号を間引くことができる。
【0041】
断層画像生成部22は、同時計数部21より出力される同時計数データを基に、検出器リング12の開口部をある平面で裁断したときの断層画像Pを生成する。断層画像生成部22は、検出器リング回転制御部24より検出器リング12の回転状況を示すデータを受信して、乳房Bの立体像を適宜回転させて断層画像Pを生成するように構成してもよい。
【0042】
表示部36は、断層画像生成部22が生成した断層画像Pを表示させるものである。記憶部37は、検出器リング12が出力する検出信号、同時計数部21が生成する同時計数データ、断層画像P等、各部の動作によって生じるデータ、および各部の動作に際して参照されるパラメータの一切を記憶するものである。
【0043】
なお、放射線断層撮影装置9は、各部を統括的に制御する主制御部41を備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部19,20,21,22,24を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。
【0044】
<放射線断層撮影装置の動作>
次に、放射線断層撮影装置の動作を説明する。実施例1の放射線断層撮影装置で乳房Bの検診を行うには、まず、検出器リング12および遮蔽プレート13が回転される。そして、放射性薬剤が投与された被検体Mを腹ばいになるように天板10に載置する。このとき、遮蔽プレート13の肉厚部13aは、被検体Mの心臓に近い位置に位置している。
【0045】
術者が操作卓35を通じて断層画像撮影の開始を指示すると、検出器リング12は消滅γ線対の検出を開始する(撮影開始ステップS3)。断層画像生成部22は、検出された消滅γ線対をイメージングして断層画像Pを生成する。断層画像Pが表示部36に表示されて実施例1における放射線断層撮影装置の動作は終了となる。
【0046】
以上のように、本発明における遮蔽プレート13は、部位によって厚さが異なる。すなわち、本発明の遮蔽プレート13は、検出器リング12の中心軸方向(z方向)に肉厚の肉厚部13aと、肉薄の肉薄部13bとを有している。この様な遮蔽プレート13における肉厚部13aでは、被検体Mの心臓などから多く発するγ線を確実に吸収することができる。これにより、心臓などの放射性薬剤が集積した部分から放射されるγ線は、遮蔽プレート13の肉厚部13aに吸収されて検出器リング12に到達しない。一方、肉薄部13bでは、被検体Mと検出器リング12との距離をより近づけることにより乳房Bを検出器リング12に対してより密着して配置することができる。これにより、乳房Bから放射されるγ線は、確実に検出器リング12に到達する。このように、本発明に係るγ線断層撮影装置9によれば、被検体Mの体幹部から発するγ線を検出器リング12に入射することを確実に防止できる。しかも、本発明の装置によれば乳房Bを確実に検出器リング12に挿入して診断ができる。したがって、本発明の装置によれば、偽像が抑制されることにより鮮明でしかも乳房全体を写し込んだ断層画像Pが取得できる。
【0047】
また、上述の遮蔽プレート13における被検体側の一端面を平面とし、凹凸を設けないようにすれば、被検体Mが凹凸に当たることなく、被検体Mに痛みを感じさせずに診断を実行できる。
【0048】
上述のように遮蔽プレート13が検査時において肉厚部13aを心臓に近づく方向に配置されれば、より確実に鮮明な断層画像Pを取得できる。放射性薬剤は、被検体Mの心臓に集中する性質がある。したがって、心臓からは強いγ線が発生している。上述の構成によれば、心臓から発したγ線は遮蔽プレート13の肉厚部13aで確実に吸収されるので、乳房Bの撮影は低ノイズで実行される。
【0049】
また、遮蔽プレート13を回転できるようにすれば、被検体Mの体幹部におけるγ線を多く発生する部位まで肉厚部13aを移動させることができる。また、被検体Mの右胸と左胸とを検査するときに、遮蔽プレート13の肉厚部13aの位置を変更するようにすることもできる。このようにすれば、検査の度に変わる被検体Mの体幹部の位置に応じて遮蔽プレート13の位置を変更することができる。
【0050】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することが可能である。
【0051】
(1)上述の構成においては、遮蔽プレート13が検出器リング12に固定され、検出器リング12を回転させることで遮蔽プレート13を回転させていたが、本発明はこの構成に限られない。遮蔽プレート13を検出器リング12に対して回転させる構成とすることもできる。この構成においては、図8に示すように検出器リング回転機構23の代わりに遮蔽プレート回転機構27が設けられており、検出器リング回転制御部24の代わりに遮蔽プレート回転制御部28が設けられている。遮蔽プレート13と検出器リング12との間には、互いの位置関係を変更させる目的でクリアランスが設けられている。
【0052】
(2)上述の構成においては、遮蔽プレート13をテーパ状としていたが、本発明はこの構成に限られない。図9のように、遮蔽プレート13の厚みを一部だけ厚くする構成としても良い。遮蔽プレート13に設けられた突起13cが本発明の肉厚部であり、突起13cが設けられていない部分が本発明の肉薄部である。
【0053】
(3)上述した実施例のいうシンチレータ結晶は、LYSOで構成されていたが、本発明においては、その代わりに、LGSO(Lu2(1−X)2XSiO)やGSO(GdSiO)などの他の材料でシンチレータ結晶を構成してもよい。本変形例によれば、より安価な放射線検出器が提供できる放射線検出器の製造方法が提供できる。
【0054】
(4)上述した実施例において、光検出器は、光電子増倍管で構成されていたが、本発明はこれに限らない。光電子増倍管に代わって、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードや半導体検出器などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0055】
12 検出器リング
13 遮蔽プレート
13a 肉厚部
13b 肉薄部
23 検出器リング回転機構(回転手段)
24 検出器リング回転制御部(回転制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する検出器が弧状に配列されて構成される検出器リングと、
前記検出器リングの中心軸と直交する前記検出器リングの側面を覆うように設けられた放射線を吸収する遮蔽プレートを備え、
前記遮蔽プレートは、中心軸方向に肉厚の肉厚部と、中心軸方向に肉薄の肉薄部とを有していることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
前記遮蔽プレートにおける被検体側の一端面は、平面となっていることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
前記遮蔽プレートは、検査時において肉厚部が被検体の心臓に近づく方向に配置されていることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
前記遮蔽プレートを中心軸を中心として回転させる回転手段と、
前記回転手段を制御する回転制御手段とを備えることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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