説明

乳液および乳液を製造する方法

【課題】 乳液の基本的性能である保湿、収斂、清浄作用等に、生体反応論から皮膚との調和性、皮膚に付着した活性酸素等遊離基消去作用、皮膚の生物活性と洗浄作用を高める。
【解決手段】 精製水100ccに、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1L/分で水素ガスを吹き込み酸化還元電位−615mV、pH7.35、溶存水素量1.5ppmの水相を製造し、油性成分として、ステアリン酸2cc、セチルアルコール1.5cc、ワセリン4cc、スクワラン5cc、グルセロールトリ−2−エチルヘキサン酸エステル2ccを混合、加熱、溶解し、界面活性剤ソルビタンモノオレイン酸エステル2cc、香料ゲラニオール、防腐剤メチルパラベンを各々適量添加し、加熱、溶解し、油相を製造し、油相を水相に添加し、予備乳化をした後、攪拌・混合して、乳化した後、脱気、濾過して、瓶に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳液に関し、より詳細には、水性成分と、油性成分と、界面活性剤とを含む乳液において、水性成分を構成する基本成分が、水素を0.5〜1.5ppm含み、酸化還元電位が−400mV以下の加水素水であることを特徴とする乳液およびその製造方法に関する。
【0002】
乳液は、化粧水とクリームの中間の性能を持つもので、水および油の一方を分散相(乳化微粒子)とし、他方を分散媒(連続相)とし、分散媒中に安定な状態で分散させたエマルションを基剤とする流動性がある化粧品で、皮膚の保湿・柔軟、皮膚の血行促進・柔軟、皮膚の洗浄・化粧落とし、生活紫外線の防御、化粧下地、角質柔軟、毛髪保護等を目的および機能とする。
【0003】
本発明の乳液は、(1)皮膚の保湿および柔軟を目的とするエモリエントローション(モイスチャーローション、ミルキーローション、ナリシングローション、ナリシングミルク、スキンモイスチャー、モイスチャーエマルション等)、(2)皮膚の血行促進および柔軟を目的とするマッサージローション、(3)皮膚の洗浄および化粧落としを目的とするクレンジングローション、(4)生活紫外線の防御を目的とするサンプロテクトローション(プロテクトエマルション、サンプロテクター、UVケアミルク等)、その他日焼け止め化粧品、メーキャップローション、角質スムーザー、エルボーローション、ヘアミルク、ハンドローション、ボディーローションの総てを包含する。
【0004】
乳液は、乳化状態によって二大別される。即ち、油滴が水中に分散している水中油滴型エマルション(O/Wエマルション)と、水滴が油の中に分散している油中水滴型エマルション(W/Oエマルション)である。
【0005】
油性成分としては、流動性油分、固形油分、および中間的な半固形状油分に三大別される。流動性油分としては、炭化水素系のスクワラン等、植物系油のオリーブ油、マカデミアナッツ油、ひまわり油等、シリコーン系のジメチルポリシロキサン、シクロメチコン等が例示される。固形油分としては、炭化水素系の固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等、高級アルコールのセタノール、ステリアルアルコール等が例示される。半固形状油分としては、ワセリン、水素添加パーム油等が例示される。これらの油性成分の使用量、種類等は、製品の使用性、安定性等の各要件によって適宜選択される。
【0006】
乳化剤は、製品の乳化型、即ち、O/W型エマルションか、またはW/O型エマルションによって異なる。O/W型エマルションであるエモリエントローションには、高級脂肪酸石鹸、石鹸および非イオン界面活性剤兼用、非イオン界面活性剤、水溶性高分子、タンパク質界面活性剤等が使用される。
【0007】
水性成分に、非イオン界面活性剤、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを配合したO/W型エマルションの代表的な製造方法は、先ず、水に保湿剤、キレート剤、アルカリおよび色剤を添加して加熱して水相を製造しておく。一方、別工程で、油成分に界面活性剤、目的に応じた薬剤、防腐剤、香料等を添加し、加熱溶解して油相を製造する。この油相を前記水相に添加して乳化させ、加熱しながら攪拌・混合し、乳化処理、脱気、濾過、冷却した後、所定の瓶に充填する。
【0008】
水性成分に、石鹸および非イオン界面活性剤兼用を配合したO/W型エマルションの代表的な製造方法は、先ず、水に保湿剤、キレート剤、アルカリおよび色剤を添加して加熱して水相を製造しておく。一方、別工程で、油成分に界面活性剤、目的に応じた薬剤、防腐剤、香料等を添加し、加熱溶解して油相を製造する。この油相を前記水相に添加して乳化させ、さらに水溶性薬剤を添加し、加熱しながら攪拌・混合し、乳化処理、脱気、濾過、冷却した後、所定の瓶に充填する。
【0009】
即ち、乳液の水性成分は、水に、主としてエタノール、多価アルコール、水溶性高分子、その他防腐剤、各種薬剤、キレート剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、褪色防止剤、緩衝剤、色剤、改質剤、香料等を配合して製造している。
【0010】
従来、乳液の水性成分の基本成分である水は、日本薬局方に収載されている蒸留水およびイオン交換樹脂で精製した脱イオン水である。これらの精製水は、いずれも水道水を、蒸留するか或いはイオン交換樹脂を通して精製したものである。その目的とするところは、主として殺菌である。
【0011】
水は、乳液の基本構成成分として80%近くも占めるにも係わらず、エタノール、多価アルコール、水溶性高分子、その他防腐剤、各種薬剤、キレート剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、褪色防止剤、緩衝剤、色剤、改質剤、香料等を溶解すること、殺菌されていること、角質層への水分補給として作用すること等を主眼として検討されていたが、その酸化還元電位に着眼して研究することは行われていなかった。
【0012】
ところで、生体内には種々の酸化還元反応系が存在し、またその中の多くは相互に共役して生体内酸化還元反応に関与している。生体内酸化還元系の酸化還元電位は、反応の自由エネルギー変化および平衡定数と直接に関係しており、これらの反応の方向を予言するのに役立つものである。
【0013】
人体の最表面にある皮膚は、多種多様な機能を担っている。例えば、皮膚に含まれる水分が外に逃散するのを防止する水分保持機能、アレルゲンや有害物質、刺激物が体内に侵入するのを防止するバリアー機能、紫外線防御機能、抗酸化作用、免疫機能、保湿調整作用、知覚機能、女性ホルモン、男性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモン、ビタミンA、D、E、K等の脂溶性物質等の経過皮吸収機能等多用な作用、機能がある。
【0014】
これら皮膚の持つ諸機能および作用も当然生体内の酸化還元反応に因るものである。そこで、本発明者は、皮膚に適用する乳液の基本成分である水と皮膚の生体酸化還元反応との関係に着眼した。
【0015】
生体内反応の酸化還元反応は電位が低く、通常−100mV〜−400mVの範囲であり、そのpHは3〜7の範囲である。体液の酸化還元電位が高くなると活性酸素が滞留し易く、器官に障害が出てくると云われている。
【0016】
たとえば、生体内における、(酢酸+CO2+2H/α−ケトグルタル酸反応)の酸化還元電位は−673mV、(酢酸+CO2/ピルビン酸反応)の酸化還元電位は−699mV、(酢酸+2H/アセトアルデヒド反応)の酸化還元電位は−581mV、フェレドキシンの酸化還元電位は−413mV、(キサンチン+H/ヒポキサンチン+H2O)の酸化還元電位は−371mV、(尿酸+H/キサンチン+H2O)の酸化還元電位は−360mV、(アセト酢酸+2H/β−ヒドロキシ酪酸反応)の酸化還元電位は−346mV、(シスチン+2H/2システイン反応)の酸化還元電位は−340mVである。
【0017】
このように生体内における酵素、補酵素、代謝関連物質の反応は、酸化還元電位が低い環境下にある。また、酸化還元電位が低い水、または食品は、身体を酸化させる活性酸素や、1個又はそれ以上の不対電子を有する分子或いは原子、即ち、フリーラジカルを分離、消去する作用があって、SOD(スーパーオキシドジムスターゼ)という活性酸素消去酵素の反応を促進させると云われている。
【0018】
ところで、我が国の通常の水道水(13.0℃)の酸化還元電位は+400〜+800mV、pHが7.0〜7.5、溶存水素量が2.3〜2.6ppb、溶存酸素量が約10.0ppmの範囲である。即ち、水道水は、溶存酸素量が多いため、生体に対して活性酸素を生成し易く、また酸化還元電位がプラスなので、酸化力はあっても、還元力がなく、酸化還元電位が−400mV〜−700mVの範囲のヒトの皮膚とバランスがとれないと考えられる。
【0019】
さらに、本発明者は、乳液に、皮膚に付着した活性酸素等遊離基を消去する機能を付与することを検討した。従来の乳液の基本成分である精製水の溶存水素量は2.3〜2.6ppbと極めて少量であり、連続的に生体内で生成される活性酸素等遊離基を消去するには不足しており、さらに酸化還元電位が+400〜+800mVと大きく、生体内での還元力が弱い。
【0020】
ところで、本発明者の一人は、酸化体と還元体の混合状態にある精製水に水素を吹き込んで、精製水の酸化還元電位を−400mV以下に維持する関連技術を開発し特許出願した。
【0021】
特許文献1は、「酸化体と還元体の混合状態にある精製水を、シリカ系石英岩に金属を担持させた還元触媒と接触させながら、水素をガス圧0.1〜0.95MPaで、10秒〜10分間吹き込んで精製水の酸化還元電位を−400mV〜−600mVに低下し、次いで、この水を、光、酸素、水素、水蒸気に対して完全バリヤー機能がある容器に充填することから成る酸化還元電位を−400mV〜−600mVに維持する方法」を開示している。
【0022】
特許文献2は、「酸化体と還元体の混合状態にある精製水を、シリカ系石英岩に金属を担持させた還元触媒と接触させながら、水素をガス圧0.1〜0.95MPaで、10秒〜10分間吹き込んで精製水の酸化還元電位をマイナスに低下する方法において、還元体の活量を、酸化体の活量より大きくすることにより酸化還元電位を−400mV以下に維持する方法」を開示している。
【0023】
特許文献3は、「所定の方法で製造した酸化還元電位が−400mV〜−600mVの水を、酸素、水素、水蒸気に対して完全バリヤー機能がある容積可変型容器に充填し、85〜100℃で30〜45分間加熱することを含む酸化還元電位が−400mV〜−600mVの水を殺菌する方法」を開示している。
【0024】
特許文献4は、「精製水貯蔵能力がある反応槽を、透孔を有し還元触媒を載置した仕切板で上部チャンバと下部チャンバに分割し、家庭用水道と連結した精製水供給系パイプ、減圧系パイプ、水素ボンベと連結した水素供給系パイプ、および生成水取出し系パイプを封止接合し、29リットルの水素を、3分間バブリングし、時間当たり最大で30リットルの水素水を製造する装置」を開示している。
【0025】
さらに、本発明者は、乳液の基本成分である水自体に皮膚の生物活性を高める機能および皮膚の洗浄作用を保持させることを検討した。
【0026】
特許文献1〜4に開示された−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水を、乳液の基本成分として使用すれば、酸化還元電位が−400mV〜−700mVの範囲のヒトの皮膚とバランスがとれた乳液となる。しかしながら、特許文献1〜4に開示された加水素水に溶存している水素は、粒径が数mmと大きく、均一ではなく、分散も均一ではないので、皮膚の生物活性を高める機能および皮膚の洗浄作用を保持する効果に欠け、皮膚に付着した活性酸素等遊離基を消去する作用はない。
【0027】
従って、乳液の基本成分である水に含有される水素の粒径をできるだけ小さくし、均一にし、分散を均一にすることができれば、液体中への吸収効率が高く、皮膚の生物活性と洗浄作用を高めることができる。
【特許文献1】特開2005−901号公報
【特許文献2】特開2005−21875号公報
【特許文献3】特開2005−66584号公報
【特許文献4】特開2005−177724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
発明が解決しようとする第1の課題は、乳液の基本的性能である皮膚の保湿・柔軟、皮膚の血行促進・柔軟、皮膚の洗浄・化粧落し、生活紫外線の防御、化粧下地、角質の柔軟化等の効果を持つばかりでなく、生体反応論からも皮膚との調和がとれている乳液を提供することである。
【0029】
発明が解決しようとする第2の課題は、前記第1の課題に加えて、皮膚に付着した活性酸素等遊離基を消去する作用がある乳液を提供することである。
【0030】
発明が解決しようとする第3の課題は、前記第1および第2の課題に加えて、乳液の基本成分である水自体に皮膚の生物活性を高める機能および皮膚の洗浄作用を保持した乳液を提供することである。
発明が解決しようとするさらに別の課題および利点は以下逐次明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前記第1の課題は、−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水を、乳液の基本成分として使用することにより解決される。
【0032】
本発明において、酸化還元電位の最大値を−400mVとした理由は、ヒトの皮膚を含む酸化還元反応が、通常−400mV〜−700mVの範囲だからである。従って、本発明において、酸化還元電位の最小値は−700mVが好ましい。
【0033】
次に、前記第2の課題を解決する手段に関して説明する。本発明者は、遊離基の発生、その作用、及び消去に関して以下のように理論的考察を行った。生体内に活性酸素等遊離基が発生する全ての原因は完全には解明されていない。然しながら、その一つとして、例えば、紫外線が皮膚に照射されると、皮膚を構成する細胞の内外に存在する水分子に作用して、正負の水分子イオンを発生する。これらのイオンは更に分解してH、OHの安定イオンの他に、OH・、H・の遊離基を生成する。反応物質が無い場合は、これらの遊離基の間に、OH・+H・→HO(水)、H・+H・→H(水素)、OH・+OH・→H(過酸化水素)のような反応がおこる。ところで、OH・、H・等遊離基は最外殻軌道に不対電子を有しているため、電子のスピンは打ち消されずに残る。即ち、スピン角運動がゼロではなく、種々の磁気的性質を示す。例えば、全ての電子が対をなしている分子は、反磁性を示すが、不対電子を持ったものは常磁性を示す。通常、遊離基は、他の不対電子を持ったものと電子対を作って結合し安定化しようとするために反応性が大きい。従って、生体内のように、周囲に反応物質が存在する場合には、OH・、H・、Hはそれらと反応し、その結果、生体内に様々な異常現象を起こす。例えば、DNAに作用する場合は、脱アミノ、脱水素、塩基結合の分裂、塩基の開裂、糖の酸化、無機リンの遊離等を引き起こし、種々の疾病の原因となる。
【0034】
次に、遊離基の消去法に関して、理論的考察を行った。生体も熱力学の法則の例外ではなく、仕事をするためのエネルギーの尺度としての自由エネルギー(Gibbsの自由エネルギー)の変化、即ちΔG=ΔH−TΔS(ΔHはエンタルピー変化、Tは絶対温度、ΔSはエントロピー変化)で表される変化(単位J)が、生体エネルギーの出発点とされている。生体における自由エネルギー産生は、自然界における濃度変化よりは、そのほとんどが酸化還元反応における反応物質の酸化還元電位の差により放出される自由エネルギーによっている。ここに、酸化とは電子を失う反応、還元とは電子を得る反応である。例えば、1/2H2+Fe3+⇔H+Fe2+という反応は、1/2H2−e→H(または、1/2H2→H+e)という酸化反応と、Fe3++e→Fe2+という還元反応に分けて考えることができる。この場合、酸化される、すなわち電子を失って他に与える1/2H2は、還元剤として働き、還元される、すなわち電子を受け取るFe3+は、酸化剤として働いているといういい方をする。また、一般的にAH+B⇔A+BHという水素の授受による酸化還元反応も、AH→A+H+eという酸化反応と、B+H+e→BHという還元反応に分解して考えることができる。水素の授受をH+eという電子の授受と見なすことができる。このように考えれば、電子の動きと水素の動きは等価と見なすことができる。
【0035】
このように考えれば、活性酸素等遊離基を消去するには、それを原子状水素(H⇔H+e)により還元して安定化すればよいことになる。
【0036】
ところで、共立出版株式会社発行「化学大辞典2」は、「活性水素」を、「放電、高熱、紫外線により水素分子の安定な共有結合が切れて、原子状水素が生成したため化学反応を起こしやすくなった水素をいう。また、いわゆる発生期状態の水素およびパラジウムやニッケルなど、還元触媒上の水素は原子状またはそれに近い状態にあると考えられ、反応性に富み、これらも広義の活性水素に含まれる。」と定義し、強力な還元作用を示すと説明している。
【0037】
本発明は、乳液の基本成分となる水にできるだけ大量の水素を吹き込んで溶存させることを骨子とするが、精製水に吹き込まれた水素は、分子状水素(H2)で、原子状水素(H)ではないので、そのままでは、活性酸素等遊離基を還元する能力はない。そこで、本発明では、水素気泡注入により製造した加水素水を、現場(in site)で白金族元素と接触させることにより活性水素にして、活性酸素等遊離基を還元することとした。
【0038】
本発明で使用する白金族元素に関して説明する。白金族元素とは周期律表第VIII族に属する元素のうち、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)の6元素の総称である。これらの白金族元素は、水素添加、脱水素、酸化の諸反応に活性を示す。いわゆる還元触媒としての機能がある。従って、分子状水素が白金族元素と接触すると、分子状水素が原子状またはそれに近い状態になる。従って、本明細書では、白金族元素が、分子状水素を原子状またはそれに近い状態にする作用を「触媒作用」という。
【0039】
本発明において、特に好ましく使用される白金族元素は、白金である。また、その形状は、乳液に添加するので、コロイド状が好ましい。
【0040】
本発明で特に好ましく使用される白金コロイドは、例えば、(1)ヘキサクロロ白金(IV)酸水溶液の表面にブンゼンバーナーの外炎をあてて還元する、(2)ヘキサクロロ白金(IV)酸水溶液に保護コロイドとしてアスコルビン酸ナトリウム、アラビアゴム或いはゼラチン等を添加し、ヒドラジン等還元剤で還元する、(3)蒸発皿に純水を入れ、冷却しながら、この中に浸した2本の白金線の間にアークを放電するブレディッヒ法等の方法で製造される。ブレディッヒ法で製造した白金コロイドは不安定であるが、コロイド粒子が保護コロイドで被覆されていないので、触媒能が強い。一方、保護コロイドを含むものは、ブレディッヒ法で製造した白金コロイドに比べて触媒能は低いが、安定である。
【0041】
本発明において、白金コロイドの添加量は0.1〜1.0ppm、好ましくは0.4〜1.0ppm、である。
【0042】
次に、前記第3の課題である、乳液の基本成分である水自体に皮膚の生物活性を高める機能および皮膚の洗浄作用を保持した乳液を提供すること、に関して説明する。
【0043】
近年、いわゆるマイクロバブルの研究と、その用途開発が盛んに行われてきている。マイクロバブルは、直径が10〜数10μmの微細な気泡と定義されている。通常、水中で発生或いは形成される気泡の直径は数ミリ程度であるが、マイクロバブルはその1/100以下であるという特徴を活かした用途が研究・開発されている。即ち、マイクロバブルは、液体中への吸収効率が高い、均一性と分散性に優れている、生体の生物活性を高める、生体の洗浄作用等に応用されている。
【0044】
本発明者は、前記皮膚の生体反応に悪影響を与えない、皮膚の生体反応と性質が同じか、酷似している水である酸化還元電位が−400mV以下で、水に溶存させる水素を、マイクロバブルとして形成することを検討し、実験を繰り返した結果、直径が2μm(0.002mm)〜120μm(0.12mm)の範囲の微細気泡を製造することができることを発見した。従って、この発見に基づいて、水素を、直径が2μm(0.002mm)〜120μm(0.12mm)の混合微細気泡として大量に含んだ加水素水を使用することにより、前記第3の課題を解決したものである。
【0045】
なお、本発明で使用する文言「水素を、直径が2μm(0.002mm)〜120μm(0.12mm)の混合微細気泡として大量に含んだ加水素水」とは、本発明の加水素水が、水素を、直径が2μm(0.002mm)〜120μm(0.12mm)の混合微細気泡を含んでいればよく、その他、通常、水中で発生或いは形成される直径が数ミリ程度の気泡を同時に含んでいることを排除しない。
【0046】
水素の気泡の直径が2μm以下の場合、発生させるのに必要なコストが掛かるので好ましくなく、120μm以上の場合は、微細気泡としての望ましい、生物活性効果、皮膚洗浄効果が得られないので好ましくない。
【0047】
本発明において、水素を、直径が2μm(0.002mm)〜120μm(0.12mm)の混合微細気泡として大量に含んだ加水素水は、精製水を、イ。管体と、ロ。管体の一方の端部に形成され、精製水を高圧で供給する精製水供給系と、ハ。管体に形成され、精製水供給系から供給された水に対して、ほぼ直角に水素を供給する水素供給系と、ニ。管体内において前記水素供給系の下流に管体の長手方向に形成され、精製水供給系から管体に供給された水と、水素供給系から管体に供給された水素を混合して拡散させるための拡散室と、ホ。拡散室に充填された所定の孔径を有する多孔質要素と、ヘ。管体の他方の端部に形成され、製造された目的とする加水素水を排出する排出口とを備えている混合微細気泡含有加水素水製造装置を通過させることによって製造される。
【0048】
管体の一方の端部には水の精製水の噴射口となる開口部が形成されていて、精製水を高圧で供給する精製水供給系が水密結合されている。精製水供給系は、水圧が0.1〜1.0MPaの水供給施設、通常は水道水と連結し、その中間にポンプを連結する。水の供給量は8〜20リットル/分が好ましい。
【0049】
管体の一方の端部に形成された水の噴射口の管体内側は、ノズルとなっていて、高圧で噴射された水をさらに高圧で噴射するようになっている。通常は、精製水を非圧縮性の状態で噴射させるので、ノズルの形状は、流路面積がなめらかに適当に小さくなるような、いわゆる先細ノズルでよい。しかしながら、精製水を圧縮性の状態で噴射させる場合は、先細ノズルと末広ノズルを組合せたものが好ましい。
【0050】
管体には、精製水供給系から供給された水に対して、ほぼ直角に水素を供給する水素供給系を水密結合して設ける。水素供給系には、逆止弁を設けて、精製水供給系から供給された水が、水素供給系に逆流するのを防止することが好ましい。水素供給系には水素ボンベ、ガス圧調整装置、配管等が組み込まれていて、圧力を調整した水素を噴射するようになっている。
【0051】
水素は、注入量が0.05〜1リットル/分、注入圧が水圧以上が好ましく、一例として、水圧0.1MPaの場合、水素の注入圧は0.5MPaが好ましい。
【0052】
管体内には、前記水素供給系の下流に、管体の長手方向に拡散室が、いわゆるダブルチューブの構造で形成されている。拡散室は、精製水供給系から管体に供給された水と、水素供給系から管体に供給された水素の混合流体を拡散させるためのものである。
【0053】
拡散室は、両端から中央に向かって縮径構造、即ち、絞り構造となっていて、絞り部で負圧が形成されるようになっている。拡散室が絞り構造になっていて、負圧が形成されるようになっているので、精製水供給系から管体に供給された水と、水素供給系から管体に供給された水素との混合流体の吸引効果が増強される。
【0054】
拡散室には、所定の孔径を有する多孔質要素が充填されている。拡散室に配設される多孔質要素は、一種のフィルターである。拡散室に導入される水と水素から成る混合流体を、多孔質要素を介して噴射することにより、多孔に形成されている孔の直径と同じ直径の気泡として形成するためのものである。
【0055】
多孔質要素は、孔径が2μm〜120μmを有するものならば、その材料は特段に限定されない。砲金、ブロンズ、ニッケル、ステンレススチール、セラミックス等の焼結体、金網等が使用できる。耐磨耗性と、製造された水を飲用に供する場合には、ステンレススチールの焼結体が好ましい。
【0056】
多孔質要素の形状は、円盤、円筒、円筒底付き、口金付き等多種多様な形状があるが、管体に挿入するには円筒形が好ましい。
【0057】
多孔質要素の厚さは、5〜20mm、好ましくは5〜10mmであるが、水圧、水量等の条件によって適宜選択される。
【0058】
市場から入手できる多孔質体としては、孔径が2μm〜120μmの範囲の焼結金属要素がある。より微細な気泡を形成するには、できるだけ孔径が小さな焼結金属要素を使用することになるが、水圧水量の圧損が大きくなり、製造効率が低下する。従って、求める溶存水素量、水量により、適宜選択することが重要である。
【0059】
本発明で加水素水を製造する場合、水素ガスの注入圧は、例えば、0.1〜1.0MPaの範囲である。水素ガスの注入圧がこの範囲ならば、−550mVの酸化還元電位が確保できる。
【0060】
本発明で加水素水を製造する場合、水素ガスの注入時間は、例えば、10秒〜10分間、好ましくは2〜5分間である。水素ガスの注入時間がこの範囲ならば、−550mVの酸化還元電位が確保できる。水素ガスの注入時間が短すぎると、電位が不安定であり、逆に、長すぎても、電位低下効果に格段の影響はなく、コストを引き上げる。
【0061】
本発明の乳液のpHは、皮膚表面のpHに合わせて弱酸性〜中性とする事が好ましい。但し、角質スムーザーやエルボーローションのように特殊な乳液の場合は、pHをアルカリ側にしてもよい。
【0062】
乳液のpHを調整するには、例えば、セーレンセンの緩衝液、クラーク−ラプス緩衝液、コルトフ緩衝液、酢酸と酢酸ナトリウムでつくるワルポール緩衝液、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムでつくるメンツエル緩衝液、クエン酸とリン酸水素二ナトリウムでつくるマッキルペイン緩衝液、バルビタールのナトリウム塩を用いるミハエリス緩衝液、リン酸、ホウ酸、酢酸および水酸化ナトリウムを混合してつくるブリトン−ロビンソン緩衝液等を調整すべきpH範囲に応じて適宜使用する。
【0063】
本発明の代表的な乳液である「O/W型石鹸+非イオン界面活性剤兼用乳液」は、例えば、先ず、精製水に、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水を製造する加水素水製造工程と、前記加水素水に、保湿剤、所望によりキレート剤、アルカリ、色剤等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、前記水相製造工程とは別に、油分、界面活性剤、および所望により薬剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、前記水相に前記油相を混合して予備乳化液を製造する予備乳化工程と、前記予備乳化液に水溶性薬剤を添加し、60〜70℃の加熱下で攪拌・混合し、乳化装置で乳化する乳化工程を含む方法によって製造される。
【0064】
あるいは、本発明に従って、「O/W型石鹸+非イオン界面活性剤兼用乳液」は、例えば、先ず、精製水に、保湿剤、所望によりキレート剤、アルカリ、色剤等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、前記水相製造工程とは別に、油分、界面活性剤、および所望により薬剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、前記水相に前記油相を混合して予備乳化液を製造する予備乳化工程と、前記予備乳化液に水溶性薬剤を添加し、60〜70℃の加熱下で攪拌・混合し、乳化装置で乳化する乳化工程と、次いで、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで、精製水を酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水に転換する工程を含む方法によって製造される。
【0065】
従って、この製造方法によれば、予め乳液の構成成分を配合した市販の乳液を出発原料として使用することができる。
【0066】
また、本発明に従って、「微細混合気泡入りO/W型石鹸+非イオン界面活性剤兼用乳液」は、例えば、先ず、精製水に、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで混合し、孔径が2μm〜120μmの多孔質要素から噴出させて製造した水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として大量に含み、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水を製造する加水素水製造工程と、前記加水素水に、保湿剤、所望によりキレート剤、色剤等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、前記水相製造工程とは別に、油分、界面活性剤、および所望により薬剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、前記水相に前記油相を混合して予備乳化液を製造する予備乳化工程と、前記予備乳化液に粘液剤、アルカリを添加し、前記予備乳化液を中和する中和工程と、中和工程を攪拌・混合する工程と、60〜70℃の加熱下で乳化装置で乳化する乳化工程を含む方法によって製造される。
【0067】
あるいは、本発明に従って、「微細混合気泡入りO/W型石鹸+非イオン界面活性剤兼用乳液」は、例えば、先ず、精製水に、保湿剤、所望によりキレート剤、色剤等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、前記水相製造工程とは別に、油分、界面活性剤、および所望により薬剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、前記水相に前記油相を混合して第1予備乳化液を製造する第1予備乳化工程と、前記第1予備乳化液に粘液剤、アルカリを添加し、前記第1予備乳化液を中和する中和工程と、中和工程を攪拌・混合する工程と、60〜70℃の加熱下で乳化装置で乳化して第2予備乳化液を製造する第2予備乳化工程と、次いで第2予備乳化液にガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで混合し、孔径が2μm〜120μmの多孔質要素から噴出させて、第2予備乳化液の精製水を、水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として大量に含み、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5ppm〜1.5ppmの加水素水に転換する工程を含む方法によって製造される。
【0068】
従って、この製造方法によれば、予め乳液の構成成分を配合した市販の乳液を出発原料として使用することができる。
【0069】
本発明の別の代表的な乳液である「O/W型、非イオン界面活性剤、カルボキシビニルポリマー配合乳液」は、例えば、先ず、精製水に、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水を製造する加水素水製造工程と、前記加水素水に、保湿剤、所望によりキレート剤、色剤等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、前記水相製造工程とは別に、油分、界面活性剤、および所望により薬剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、前記水相に前記油相を混合して予備乳化液を製造する予備乳化工程と、前記予備乳化液に粘液剤、アルカリを添加し、前記予備乳化液を中和する中和工程と、中和工程を攪拌・混合する工程と、60〜70℃の加熱下で乳化装置で乳化する乳化工程を含む方法によって製造される。
【0070】
さらに、本発明の別の代表的な乳液である「O/W型、非イオン界面活性剤、カルボキシビニルポリマー配合乳液」は、例えば、先ず、精製水に、保湿剤、所望によりキレート剤、色剤等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、前記水相製造工程とは別に、油分、界面活性剤、および所望により薬剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、前記水相に前記油相を混合して予備乳化液を製造する予備乳化工程と、前記予備乳化液に粘液剤、アルカリを添加し、前記予備乳化液を中和する中和工程と、中和工程を攪拌・混合する工程と、60〜70℃の加熱下で乳化装置で乳化する乳化工程と、次いで、水素を、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で吹き込んで、精製水の酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水に転換する工程を含む方法によって製造される。
【0071】
従って、この製造方法によれば、予め乳液の構成成分を配合した市販の乳液を出発原料として使用することができる。
【0072】
さらに、本発明の「微細混合気泡入り、O/W型、非イオン界面活性剤、カルボキシビニルポリマー配合乳液」は、例えば、先ず、精製水に、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで混合し、孔径が2μm〜120μmの多孔質要素から噴出させて製造した水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として大量に含み、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5ppm〜1.5ppmの加水素水を製造する加水素水製造工程と、前記加水素水に、保湿剤、所望によりキレート剤、色剤等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、前記水相製造工程とは別に、油分、界面活性剤、および所望により薬剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、前記水相に前記油相を混合して予備乳化液を製造する予備乳化工程と、前記予備乳化液に粘液剤、アルカリを添加し、前記予備乳化液を中和する中和工程と、中和工程を攪拌・混合する工程と、60〜70℃の加熱下で乳化装置で乳化する乳化工程を含む方法によって製造される。
【0073】
さらに、本発明の「微細混合気泡入り、O/W型、非イオン界面活性剤、カルボキシビニルポリマー配合乳液」は、例えば、先ず、精製水に、保湿剤、所望によりキレート剤、色剤等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、前記水相製造工程とは別に、油分、界面活性剤、および所望により薬剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料等を配合して、60〜70℃に加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、前記水相に前記油相を混合して第1予備乳化液を製造する第1予備乳化工程と、前記第1予備乳化液に粘液剤、アルカリを添加し、前記第1予備乳化液を中和する中和工程と、前記第1予備乳化液を攪拌・混合する工程と、前記第1予備乳化液を60〜70℃の加熱下で乳化装置で乳化して第2予備乳化液を製造する第2予備乳化工程と、次いで、第2予備乳化液にガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで混合し、孔径が2μm〜120μmの多孔質要素から噴出させて、第2予備乳化液の精製水を、水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として大量に含み、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水に転換する工程を含む方法によって製造される。
【0074】
従って、この製造方法によれば、予め乳液の構成成分を配合した市販の乳液を出発原料として使用することができる。
【0075】
前述した諸方法によって製造された乳液は、さらに、脱気工程、濾過工程、冷却工程を経て所定の容器に充填される。
【0076】
本発明の方法において、水素を吹き込む前の任意の工程でコロイド状白金族元素を添加することが好ましい。コロイド状白金族元素に関しては、既に詳述した。
【0077】
いずれの方法でも、バッチ式でも連続式でも実施できる。
【0078】
次に、本発明の乳液を製造するのに使用する水性成分、乳化剤(界面活性剤)、油性成分、各種成分、薬剤に関して説明する。
【0079】
本発明の乳液の水性成分の基本成分である精製水は、日本薬局方に収載されている精製水、および通常の水道水、即ち常水を所定の浄水装置を通過させて浄化処理した水を包含する。浄水装置としては、通常の活性炭、ポリメジック繊維、アクリル繊維、特殊フェノール樹脂繊維などを原料とした繊維状活性炭、チューブ繊維、ヘリカル繊維、ダブルチューブ繊維、フィッシュボーン繊維、木炭、各種濾材、或いはこれらを組み合わせたものを使用する。ただし、これらに限定されず、水道水の汚れ、カビ、臭気、塩素、夾雑物等を除去する機能があればよい。
【0080】
本発明の乳液において、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水の量は50〜80質量%の範囲が好ましい。加水素水の量が50質量%以下の場合、加水素水本来の作用効果が十分に発現されないので好ましくない。但し、市販の乳液を使用して製造する場合は、その乳液に含まれる精製水の量になる。
【0081】
本発明の乳液には、水性成分として、清涼感の付与、制菌、成分の溶解を目的として、エタノール、イソプロパノール等アルコール類を最高20質量%添加してもよい。本発明の乳液にエタノール、イソプロパノール等アルコール類を添加する場合は、日本薬局方に収載されている品級のものを使用する。
【0082】
本発明の乳液には、水性成分として、角質層の保湿、使用感の改良、他の成分の溶媒として機能する保湿剤を最高20質量%添加してもよい。保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコ−ル、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、マルチトール等の多糖類、ピロリドンカルボン酸等アミノ酸等が例示される。
【0083】
本発明の乳液に、例えば、保湿剤としてグリセリンを使用する場合は、日本薬局方に収載されている品級のものを、常水1リットル当たり、10乃至20グラムの範囲で添加することが好ましい。
【0084】
本発明の乳液には、水性成分として、皮膚のエモリエント、使用感の改良、保湿を目的として柔軟剤(エモリエント剤)を、適量添加してもよい。柔軟剤(エモリエント剤)としては、エステル油、オリーブ油等植物油等が例示される。
【0085】
本発明の乳液には、水性成分として、原料成分の可溶化を目的として、最高1質量%の可溶化剤を配合してもよい。可溶化剤としては、HLB(親水性親油性バランス)の高い界面活性剤で、ポリオキシエチレン、オレイルエーテル等が例示される。
【0086】
本発明の乳液には、水性成分として、角質層軟化剤として、水酸化カリウム、炭酸カリウム等アルカリ類を、水1リットル当たり、1乃至2gの範囲で配合してもよい。
【0087】
本発明の乳液には、水性成分として、香りを付与するために、ゲラニオール、リナロール等各種天然、人造香料を適量添加してもよい。
【0088】
本発明の乳液には、水性成分として、防腐剤としてメチルパラベン、フェノキシエタノール等を添加してもよい。
【0089】
本発明の乳液には、水性成分として、所望により許可染料を添加してもよい。
【0090】
本発明の乳液には、水性成分として、所望により褪色防止剤として、金属イオン元素封鎖剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。
【0091】
本発明の乳液には、水性成分として、パラフェノールスルホン酸亜鉛等収斂剤、ベンザルコニウム塩酸塩等殺菌剤、ビタミン、アミノ酸誘導体類等栄養剤を添加してもよい。
【0092】
その他、本発明の乳液には、水性成分として、スルホ石炭酸亜鉛、スルホ石炭酸ナトリウム等皮膚を引き締める収斂剤、ベンズアルコニウム塩酸塩等皮膚上の殺菌をする殺菌剤、ビタミン、アミノ酸誘導体、動物植物エキス等皮膚を賦活させる賦活剤、グルチルリチン誘導体、アラントイン等抗炎症作用がある消炎剤、アルブチン、コウジ酸、ビタミンC等メラニンの生成を阻害する美白剤等を配合してもよい。
【0093】
本発明で乳化剤として使用される陰イオン界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩等が例示される。
【0094】
本発明で乳化剤として使用される陽イオン界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等が例示される。
【0095】
本発明で乳化剤として使用される両性イオン界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が例示される。
【0096】
本発明で乳化剤として使用される非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン型、多価アルコールエステル型、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体等が例示される。
【0097】
本発明で乳化剤として使用されるその他の界面活性剤としては、高分子界面活性剤、天然界面活性剤等がある。
【0098】
本発明で特に好ましく使用される乳化剤は、安定性が高い非イオン系、陰イオン系界面活性剤で、特に、高級脂肪酸石鹸、高級脂肪酸石鹸+非イオン界面活性剤、水溶性高分子、タンパク質界面活性剤等が好ましい。
【0099】
本発明に従って、O/W型エマルションであるエモリエントローションを製造するには、高級脂肪酸石鹸、石鹸および非イオン界面活性剤兼用、非イオン界面活性剤、水溶性高分子、タンパク質界面活性剤が特に好ましい。
【0100】
本発明に従って、O/W型エマルションであるサンプロテクトを製造するには、高級脂肪酸石鹸、石鹸および非イオン界面活性剤兼用が特に好ましい。
【0101】
本発明に従って、O/W型エマルションであるハンドローションを製造するには、高級脂肪酸石鹸、石鹸および非イオン界面活性剤兼用が特に好ましい。
【0102】
本発明に従って、O/W型エマルションであるクレンジングローションを製造するには、非イオン界面活性剤が使用される。
【0103】
本発明に従って、O/W型エマルションであるマッサージローションを製造するには、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、有機変性粘土鉱物が特に好ましい。
【0104】
本発明に従って、W/O型エマルションであるマッサージローション、エモリエントローションを製造するには、非イオン界面活性剤、有機変性粘土鉱物が特に好ましい。
【0105】
本発明に従って、多相エマルションを製造するには、非イオン界面活性剤が特に好ましい。
【0106】
本発明において、界面活性剤の配合量は、0.1〜5質量%が好ましい。
【0107】
本発明で使用される油性成分としては、オリ−ブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油等油脂、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等ロウ類、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等炭化水素、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等高級脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール等高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル等エステル類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等シリコーン油等が例示される。
【0108】
本発明において油性成分の量および種類は、乳液の使用性、安定性等諸条件を勘案して決定される。
【0109】
本発明の乳液は、粘度を1000cP〜3000cPに調整することが好ましい。そのことによって、皮膚への滞留時間が長くなる。但し、粘度などの物性が製造条件により決定されることがあるので、水性成分、油分、界面活性剤、各種薬剤等の添加方法および順序、乳化条件、混合・攪拌条件、乳化装置の諸元および操作条件、脱気、濾過、冷却等の条件を適当に選択することが重要である。例えば、分散媒に分散質を添加して予備乳化を行った後、乳化装置を使用して乳化粒子を均一にした後、脱気、濾過後、熱交換機で冷却して製品とする事が好ましい。
【0110】
粘度調整に増粘剤を使用する場合は、増粘剤としては、アルギン酸塩、セルロース誘導体、クインスシードガム、ペクチン、プルラン、キサンタンガム、ビーガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸系ポリマー、ラボナイト等が例示されるが、なかでも、無毒で医療用や食品添加剤としても使用されていて、さらには、効果及び使い勝手等の点からアルギン酸ナトリウムが好ましい。
【0111】
本発明でアルギン酸ナトリウムを使用する場合は、日本薬局方に収載されている品級のものをトリエタノールアミンの形で、水1リットル当たり、2乃至3グラムの範囲で添加することが好ましい。
【0112】
本発明で使用できる乳化機としては、例えば、攪拌機が数個の孔のある固定子と、回転数500〜10,000rpmの回転羽根を有し、液を回転羽根の回転により固定子の孔を通って下方から上方に吸い上げて羽根の剪断作用を受けさせる形式のもが好ましい。
【0113】
最近は、化粧品の使用者が、男女を問わず、且つ小学生から高齢者までと広範且つ多様になってきている。それを受けて、化粧品の容器も、その材料、機能、形態、意匠も多種多様になってきている。しかしながら、化粧品の容器に要求される基本的な性能は、使用者側からは、中味の品質保持性能、使い勝手である機能性、経済性であり、製造業者側からは、経済性と販売促進効果である。従来の乳液の場合は、プラスチック製、ガラス製瓶でもよいが、本発明の場合は、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水を使用するものであるので、酸化還元電位および溶存水素量を経時的に低減させないような材料で製造した容器が好ましい。従って、本発明の乳液は、溶存水素が逃散しないように、アルミパウチ、アルミ缶、ガラス瓶に充填することが好ましい。
【0114】
従って、上記課題は下記の各項に記載したいずれかの手段によって解決される。
1.水性成分と、油性成分と、界面活性剤とを含む乳液において、水性成分を構成する基本成分が、水素を0.5〜1.5ppm含み、酸化還元電位が−400mV以下の加水素水であることを特徴とする乳液。
【0115】
2.1項において、水素を、直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として存在させる。
【0116】
3.1または2項に記載した乳液に、さらに、コロイド状白金族元素を添加する。
【0117】
4.イ。精製水に、ガス圧0.1〜1MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水を製造する加水素水製造工程と、
ロ。前記加水素水に、保湿剤を含む水性成分を配合して、加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、
ハ。前記水相製造工程とは別に、油性成分、および界面活性剤を混合し、加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、
ニ。前記水相に前記油相を混合し、加熱下に予備乳化して予備乳液を製造する予備乳化工程と、
ホ。前記予備乳液に水溶性薬剤を添加し、加熱下に攪拌・混合し、乳化装置により乳化する乳化工程を含む乳液を製造する方法。
【0118】
5.4項に記載した方法において、精製水にガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んだ後、孔径が2μm〜120μmの多孔質要素から噴出させて水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として生成することをさらに付加した乳液を製造する。
【0119】
6.精製水に、イ。保湿剤を含む水性成分を配合して、加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、
ロ。前記水相製造工程とは別に、油性成分、および界面活性剤を混合し、加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、
ハ。前記水相と前記非水相を混合して、加熱下に第1次乳化液を製造する第1次乳化液工程と、
ニ。前記第1次乳化液に増粘剤と、増粘剤を中和するアルカリを添加し、加熱し、第1次乳化液を中和する中和工程と、
ホ。加熱下に攪拌・混合し、乳化装置により乳化して第2次乳化液を製造する第2次乳化工程と、
ヘ。第2次乳化液に、ガス圧0.1〜1MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで、精製水を、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水に変換する工程を含む乳液を製造する方法。
【0120】
7.6項に記載した方法に、第2次乳化液に、ガス圧0.1〜1MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んだ後、孔径が2μm〜120μmの多孔質要素から噴出させて水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として生成することをさらに付加する。
【0121】
8.4〜7のいずれか1項に記載した方法において、水素を吹き込む前にコロイド状白金族元素を添加することをさらに付加する。
【発明の効果】
【0122】
請求項1の発明により、乳液の水性成分の基本成分である水として、皮膚の持つ生体の酸化還元反応に極めて近い酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水を大量に含むので、イ。皮膚の角層に水分・保湿成分を補給し、みずみずしく、滑らかな潤いのある肌を保つ。ロ。肌を一時的に引き締める収斂作用と過剰な皮脂を抑える作用を持ち、さっぱりした使用感で化粧くずれを防ぐ、ハ。ライトメークとして、また素肌の汚れ落としとして効果があるばかりでなく、皮膚との調和がとれている。
【0123】
請求項2の発明により、乳液の基本成分である水自体に皮膚の生物活性を高める機能および皮膚の洗浄作用を保持した乳液を提供することができる。
【0124】
請求項3の発明により、請求項1による効果に加えて、皮膚に付着した活性酸素等遊離基を消去する能力を付与することができる。
【0125】
請求項4の発明により、乳液の基本成分である水を、精製水に、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素ガスを吹き込んで酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水として予め製造したものを使用するので、後続工程で、水以外の成分を添加すればよいので、乳液を製造する方法として汎用性がある。
【0126】
請求項5の発明により、精製水に、水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として吹き込むと同時に、酸化還元電位を−400mV以下、溶存水素量を0.5〜1.5ppmの加水素水として製造することができる。
【0127】
請求項6の発明により、予め精製水に、水性成分、油性成分、界面活性剤を含んだ乳液に、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素ガスを吹き込んで、精製水を、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水に変換するので、市販の乳液を簡単に所望の乳液に転換することができる。
【0128】
請求項7の発明により、予め精製水に、水性成分、油性成分、界面活性剤を含んだ乳液に、水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として吹き込むと同時に、酸化還元電位を−400mV以下、溶存水素量を0.5〜1.5ppmとすることができるので、市販の乳液を簡単に所望の乳液に転換することができる。
【0129】
請求項8の発明により、請求項4〜7の発明による効果に加えて、皮膚に付着した活性酸素等遊離基を消去する能力を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0130】
以下、発明を実施するための最良の形態を実施例をもって説明する。
[使用した測定機器]
1.酸化還元電位:ポータブルORP計「RM−20P」(登録商標)(東亜ディーケーケー工業製)
2.pH:ポータブルpH計「HM−20P」(登録商標)(東亜ディーケーケー工業製)
3.溶存水素:「DHD1−1型溶存水素計」(登録商標)(東亜ディーケーケー工業製)
4.粘度:「ビスコテスタVT−04F」(登録商標)(リオン株式会社製)
【実施例1】
【0131】
[加水素水の製造]
原料水噴出ノズルと、水素ガス噴出ノズルと、製造された加水素水を排出する排出口とを備えている管体状の加水素水製造装置を使用して、日本薬局方に収載されている精製水(酸化還元電位=357mV、pH=7.25、溶存水素量=3ppb、水温=13.2℃)流量10リットル/分に、ガス圧調整器でガス圧を0.25MPa、流量を0.5リットル/分に調整した100%の水素ガスを注入して加水素水を製造した。この加水素水の溶存水素量は1.31ppm、酸化還元電位は−615mV、pHは7.35であった。
【0132】
[O/W型−高級脂肪酸石鹸+非イオン界面活性剤兼用エモリエントローションの製造]
先ず、加水素水710ccに、保湿剤としてジプロピレングリコールを40ccおよびポリエチレングリコール1500を30cc、トリエタノールアミンを1ccを添加して70℃に加熱し、溶解し、水相を製造した。
【0133】
油性成分として、ステアリン酸を2cc、セチルアルコールを1.5cc、ワセリンを4cc、スクワランを5cc、グルセロールトリ−2−エチルヘキサン酸エステルを2ccを混合して、加熱、溶解し、界面活性剤としてソルビタンモノオレイン酸エステルを2cc、香料としてゲラニオール、および防腐剤としてメチルパラベンをそれぞれ適量添加して、70℃で加熱、溶解し、油相を製造した。
【0134】
油相を水相に添加し、予備乳化をした後、70℃で攪拌・混合して、ホモミキサーで乳化して粒子を均一にした後、脱気、濾過して、非透光性の細口ガラス瓶(100cc/本)に充填し、8本製造した。
【0135】
製造した8本の乳液の溶存水素量、酸化還元電位を、10日毎に2ケ月間測定してそれらの経時変化を調べた結果、全量が製造時点の値を保持していた。
【実施例2】
【0136】
[混合微細気泡入りO/W型−高級脂肪酸石鹸+非イオン界面活性剤兼用エモリエントローションの製造]
実施例1で使用した加水素水製造装置の内部に、両端から中央に向かって縮径構造、即ち、絞り構造になっていて、絞り部で負圧が形成されるようになっているダブルチューブ構造の拡散室を設け、拡散室に、厚さ10mm、孔径サイズ2μmのステンレススチールの焼結体である多孔質要素を取り付けた。
【0137】
日本薬局方に収載されている精製水(酸化還元電位=357mV、pH=7.25、溶存水素量=3ppb、水温=13.2℃)を、前記加水素水製造装置の原料水噴射ノズルから水圧0.25MPa、水量20リットル/分で噴出させながら、水素ガスを、ガス圧調整器でガス圧を0.25MPa、流量を0.5リットル/分に調整して、水素ガス噴出ノズルから噴出させ、原料水と水素ガスの混合流体を形成し、多孔質要素を介して、拡散室内に拡散させ、排出口から加水素水を取り出した。
【0138】
製造された加水素水は、水温13.5℃、溶存水素量が1.31ppm、酸化還元電位が−660mV、pHが7.85で、2μmを中心とする微細気泡を大量に含有していた。
【0139】
この加水素水を使用したこと以外には、実施例1と同じ手順で実験を行って、混合微細気泡入りO/W型−高級脂肪酸石鹸+非イオン界面活性剤兼用エモリエントローションを8本製造した。
【0140】
製造した8本の乳液の溶存水素量、酸化還元電位を、10日毎に2ケ月間測定してそれらの経時変化を調べた結果、全量が製造時点の値を保持していた。
【実施例3】
【0141】
[白金コロイド入り活性酸素消去性O/W型−高級脂肪酸石鹸+非イオン界面活性剤兼用エモリエントローションの製造]
[活性酸素消去性加水素水の製造]
白金(Pt)−PVP(ポリビニルピロリドン)コロイド(4.0wt%)を超純水で100倍に希釈し、日本薬局方に収載されている精製水(酸化還元電位=357mV、pH=7.25、溶存水素量=3ppb、水温=13.2℃)1000ccに、白金コロイド濃度が0.4ppmになるように添加して、白金コロイド溶液を製造した。次いで、流量10リットル/分の白金コロイド溶液に、ガス圧調整器でガス圧を0.25MPa、流量を0.5リットル/分に調整して、100%の水素ガスを注入して白金コロイド入り加水素水を製造した。この白金コロイド入り加水素水の酸化還元電位は−615mV、pHは7.35であった。
【0142】
白金コロイド入り加水素水を使用したこと以外には、実施例1と同じ手順で実験を行って、白金コロイド入り活性酸素消去性O/W型−高級脂肪酸石鹸+非イオン界面活性剤兼用エモリエントローションを8本製造した。
【0143】
製造した8本の乳液の溶存水素量、酸化還元電位を、10日毎に2ケ月間測定してそれらの経時変化を調べた結果、全量が製造時点の値を保持していた。
【0144】
[遊離基消去能力の測定]
1.使用した測定機器
日立製作所製分光光度計
2.使用試薬類
2−1:遊離基の発生源
遊離基モデルとして1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)を使用した。DPPHは比較的安定な遊離基であるが、他の遊離基と容易に結合するので、熱、放射線等によって生成される遊離基の存在の確認、濃度の決定等に使用されている。本発明では、本発明の遊離基消去機能水が、DPPHが発生する遊離基を消去する能力を測定することにより、遊離基消去能力の目安とした。
【0145】
2−2:DPPH溶液の調製
2−2−1:100μM−DPPH(50%エチルアルコール溶液)
DPPH 0.0010gを精秤し、アルミホイルで遮光した50mLメスフラスコに入れた。次いで、99%エタノールを約25mL入れ、溶解させた。完全に溶解した後で、全量を超純水で50mLにした。溶解作業中は、メスフラスコを完全に遮光した。
2−2−2:25μM−DPPH(50%エチルアルコール溶液)
100μM−DPPH溶液(50%エチルアルコール溶液)を3mLとり、9mLの50%エタノールに添加した。
【0146】
[測定方法]
25μM−DPPH溶液2mLと、実施例3で製造した白金コロイド入り乳液2mLをボルテックスミキサーを使用して試験管内で混合し、攪拌し、520nmの波長で吸光度を測定した。
【0147】
[測定結果]
白金コロイド入り加水素水の520nmにおける吸光度は0.037、対照例としての超純水のそれは0.123であった。
Pt−PVPコロイド溶液入り加水素水の場合、DPPHラジカルの色である紫色が退色し、ジフェニルピクリルヒドラジンの黄色へ変色した。一方、超純水の場合は、Pt−PVPコロイド溶液を添加直後には、退色せず、約5〜6分後に退色した。数回の実験の結果、2mLの加水素水と10μLのPt−PVPコロイド溶液で、2mLの25μM−DPPH溶液のラジカルを完全に消去できることが確認された。
【0148】
以上の結果から、精製水に吹き込まれた水素は、水中では分子状態で存在しているが、白金コロイドが存在すると、分子状態の水素が活性化され、それが原子状または原子状に近い状態になり、それによりDPPHのラジカルが完全に消去できることが確認された。このことは、前記共立出版株式会社発行「化学大辞典2」による、「活性水素とは、放電、高熱、紫外線により水素分子の安定な共有結合が切れて、原子状水素が生成したため化学反応を起こしやすくなった水素をいう。また、いわゆる発生期状態の水素およびパラジウムやニッケルなど、還元触媒上の水素は原子状またはそれに近い状態にあると考えられ、反応性に富み、これらも広義の活性水素に含まれる。」を検証したことになる。
【実施例4】
【0149】
実施例4は、某化粧品メーカーの市販の乳液から本発明の乳液を製造した例である。
某化粧品メーカーの市販の乳液は、日本薬局方に収載されている精製水74%、保湿剤としてポリエチレングリコールおよびトレハロースを計5.0%、油分としてミネラルオイル、スクワラン、セチルアルコール、ステリアルアルコール、ステリアン酸、ラノリン、パラフィン、ステアリン酸ソルビタンおよびテトラオレイン酸ソルベースを計13%、防腐剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベンをそれぞれ適量、清涼剤としてエタノールを適量、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを適量、抗酸化剤としてトコフェノールを適量、緩衝剤としてEDTA−2Naを適量、界面活性剤としてテトラオレイン酸ソルベース−30を2.0%、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を適量含んでいた。
【0150】
この市販の乳液の酸化還元電位は272mV、pHは7.05、溶存水素量は6.2ppb、粘度は2500cPであった。
【0151】
次いで、この市販の乳液500ccを、容量が2000ccの攪拌装置付き反応容器に入れて、混合攪拌しながら、ガス圧調整器でガス圧を0.25MPa、流量を0.5リットル/分に調整した100%の水素ガスを30秒間注入した。その後測定した酸化還元電位は−630mV、pHは7.10、溶存水素量は1.35ppm、粘度は2200cPであった。
であった。
【実施例5】
【0152】
実施例5は、某化粧品メーカーの市販の乳液から、混合微細気泡入り本発明の乳液を製造した例である。
実施例4で使用した某化粧品メーカーの市販の乳液を使用した。実施例1で使用した加水素水製造装置の内部に、両端から中央に向かって縮径構造、即ち、絞り構造になっていて、絞り部で負圧が形成されるようになっているダブルチューブ構造の拡散室を設け、拡散室に、厚さ10mm、孔径サイズ2μmのステンレススチールの焼結体である多孔質要素を取り付けた。
【0153】
前記加水素水製造装置を使用して、前記市販の乳液を、噴射ノズルから水圧0.25MPa、流量20リットル/分で噴出させながら、ガス圧調整器でガス圧を0.25MPa、流量を0.5リットル/分に調整した100%水素ガスを、噴出ノズルから噴出させ、乳液と水素ガスの混合流体を形成し、多孔質要素を介して、拡散室内に拡散させ、排出口から微細混合気泡を大量に含んだ乳液を取り出した。
【0154】
製造された乳液の酸化還元電位は−569mV、溶存水素量は1.11ppm、pHは6.25で、2μmを中心とする混合微細気泡を大量に含有していた。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の乳液は、乳液の水性成分の基本成分である水を、酸化還元電位が人体の酸化還元反応に近い−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水とし、さらにコロイド状白金属元素を含有させることにより分子状水素を原子状水素にすることができ、また、水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として含ませることができるので、乳液の基本的性能である(イ)皮膚の角層に水分・保湿成分を補給し、みずみずしく、滑らかな潤いのある肌を保ち、(ロ)肌を一時的に引き締める収斂作用と過剰な皮脂を抑える作用を持ち、さっぱりした使用感で化粧くずれを防ぎ、(ハ)ライトメークとして、また素肌の汚れ落としとして効果を持つばかりでなく、生体反応論からも皮膚との調和がとれていて、皮膚に付着した活性酸素等遊離基を消去する作用があり、水自体が均一性と分散性に優れていて、皮膚の生物活性と洗浄作用を有している。従って、新しい乳液として用途の拡大が期待される。
【0156】
本発明の乳液は、精製水に、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素ガスを吹き込んで酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水として予め製造したものを乳液の基本成分である水として使用し、その他の成分、即ち、油性成分および界面活性剤を任意に選択して配合できるので、新規な組成、性能の乳液の市場を容易に創成することができる。
【0157】
本発明の乳液は、水性成分、油性成分、および界面活性剤を含んだ乳液に、ガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素ガスを吹き込んで、水性成分の基本成分である精製水を、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水に変換することによっても製造することができ、市販の乳液から出発することもできるので、新規な組成、性能の乳液の市場を容易に創成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性成分と、油性成分と、界面活性剤とを含む乳液において、水性成分を構成する基本成分が、水素を0.5〜1.5ppm含み、酸化還元電位が−400mV以下の加水素水であることを特徴とする乳液。
【請求項2】
水素が、直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として存在する請求項1に記載した乳液。
【請求項3】
請求項1または2項に記載した乳液に、さらに、コロイド状白金族元素を添加した乳液。
【請求項4】
イ。精製水に、ガス圧0.1〜1MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水を製造する加水素水製造工程と、
ロ。前記加水素水に、保湿剤を含む水性成分を配合して、加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、
ハ。前記水相製造工程とは別に、油性成分、および界面活性剤を混合し、加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、
ニ。前記水相に前記油相を混合し、加熱下に予備乳化して予備乳液を製造する予備乳化工程と、
ホ。前記予備乳液に水溶性薬剤を添加し、加熱下に攪拌・混合し、乳化装置により乳化する乳化工程を含む乳液を製造する方法。
【請求項5】
請求項3または4項に記載した方法において、精製水にガス圧0.25MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んだ後、孔径が2μm〜120μmの多孔質要素から噴出させて水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として生成することをさらに付加した乳液を製造する方法。
【請求項6】
イ。精製水に、保湿剤を含む水性成分を配合して、加熱・溶解して水相を製造する水相製造工程と、
ロ。前記水相製造工程とは別に、油性成分、および界面活性剤を混合し、加熱・溶解して油相を製造する油相製造工程と、
ハ。前記水相と前記非水相を混合して、加熱下に第1次乳化液を製造する第1次乳化液工程と、
ニ。前記第1次乳化液に増粘剤と、増粘剤を中和するアルカリを添加し、加熱し、第1次乳化液を中和する中和工程と、
ホ。加熱下に攪拌・混合し、乳化装置により乳化して第2次乳化液を製造する第2次乳化工程と、
ヘ。第2次乳化液に、ガス圧0.1〜1MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んで、精製水を、酸化還元電位が−400mV以下、溶存水素量が0.5〜1.5ppmの加水素水に変換する工程を含む乳液を製造する方法。
【請求項7】
請求項6に記載した方法で作成した、第2次乳化液に、ガス圧0.1〜1MPa、ガス流量0.1〜1リットル/分で水素を吹き込んだ後、孔径が2μm〜120μmの多孔質要素から噴出させて水素を直径が2μm〜120μmの混合微細気泡として生成することをさらに付加した乳液を製造する方法。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1項に記載した方法において、水素を吹き込む前にコロイド状白金族元素を添加することをさらに付加した乳液を製造する方法。

【公開番号】特開2007−238535(P2007−238535A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65206(P2006−65206)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【出願人】(505264462)株式会社H4O (4)
【Fターム(参考)】