説明

乳清成分の単離と精製

所望の成分、特に3’−シアリルラクトースを、乳清、特にチーズ乳清から単離及び/又は精製する方法であって、以下の工程を含む: タンパク質濃縮物と乳清透過物を準備するために、乳清を限外濾過にかける任意の工程; 乳清又は乳清透過物を少なくとも一組のイオン交換樹脂に接触させる工程であって、前記一組に乳清透過物を脱塩するための第一の弱酸性陽イオン樹脂、第一の弱塩基性陰イオン樹脂、第二の強酸性陽イオン樹脂、及び第二の弱塩基性陰イオン樹脂を含む工程; この脱塩された透過物を、強酸性陽イオン樹脂及び最後の弱塩基性陰イオン樹脂を含む二つの最後のイオン交換樹脂に接触させる工程であって、3’−シアリルラクトースなどの所望の成分が最後の陰イオン樹脂に取り込まれる工程; 及び、最後の陰イオン樹脂から所望の成分を溶出させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳清成分の単離と精製の方法に関し、詳細には、乳清透過物からの単離に限らず、特にシアリルラクトース、具体的には3’−シアリルラクトース(別の方法では、3’−SL、3−SL、又は3プライムと称される)の単離に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、チーズの製品には、ミルクへの酵素の作用により、又は適当な酸を使用したミルクのpHの低下により、乳固形分と乳脂肪分を凝乳マトリクス中に閉じ込めるための乳タンパク質(カゼイン)の凝固物が含まれる。そして、この凝乳マトリクスは、チーズ乳清として知られている液体画分を搾り出すために、固められる。チーズ乳清は、凝乳マトリクス中には保持されない乳固形分、特にミルク単糖類及び可溶性タンパク質を含んでいる。乳清は、チーズ製造工程において使用されるミルクの全体積のうち、80〜90%を占めており、また最初の全乳からの固形分の半分以上を占め、20%のタンパク質とラクトースの大部分を含有し、非常に高い有機物含量を有する。
【0003】
その高い有機物含量のために、乳清の処分は、常に酪農産業の課題であった。現在、乳清からの可溶性タンパク質を回収し、ラクトースから有用性を取り戻すことが可能である。そして放流河川への有機物負荷を減少させ、乳清からより高い利益を得るために、できるだけ多くの有機物量を回収することが明らかに望ましい。主な努力は、この産品の利用法を開発するチーズ製造会社によって、進められている。
【0004】
タンパク質濃縮物と乳清透過物を得るために、乳清を限外濾過(UF)することは業界において一般的となっている。タンパク質濃縮物は、動物飼料、肥料、発酵において、また食物増量材として、適用法が見出された。しかしながら、透過物の個々の成分について、それらをさらなる利用に適するように、単離して精製することが十分にできないため、ラクトースを多く含む透過物は依然として廃棄物のままである。
【0005】
ラクトースを多く含む透過物は、3’−シアリルラクトースなどの様々なオリゴ糖類を含んでいる。これは、有益な適用、例えば医薬品やベビーフードへの適用があることが見出されているが、十分に純粋な状態で、この成分を提供することが必要である。
【0006】
α(2−3)トランス−シアリダーゼの触媒活性の使用によって、乳製品源とチーズ加工廃棄物のストリームから、シアリルオリゴ糖を製造する方法が報告されている(特許文献1(Pelletier))。α(2−3)トランス−シアリダーゼは、α(2−3)シアリルラクトースの酵素合成を促進するとされている、チーズ加工廃棄物中で自然に生じるラクトース及びシアロシド類の高濃縮物を、有効に利用する。この酵素作用により作り出されたシアリルラクトースは、陽イオン樹脂とその後に続く強陰イオン樹脂とを通過させることによって精製される。シアリルラクトースは陰イオン樹脂に取り込まれ、適切な溶液を使用して溶出される。この工程はシアリルラクトースを精製する。しかし、陽イオン樹脂は、シアリルラクトースと共に塩を形成して残存する陽イオン種と共に、いくつかの陽イオンしか取り除けないという欠点を抱えている。さらに、塩を分配し、シアリルラクトースを樹脂に結合させるためには、強い陰イオン樹脂を必要とする。しかしながら、実際にカラムに結合するシアリルラクトースの量は、廃棄物中に存在するシアリルラクトースに対する他の陰イオンの量に依存する。したがって、他の陰イオンを多く含む溶出された原料の浄化が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6323008号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の欠点を克服、又は少なくとも軽減するための、乳清の成分、特に3’−シアリルラクトースの単離及び精製に係る方法を提供することを目的とするが、単離及び精製の対象として、乳清透過物のみには限らない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の第一の態様は、3’−シアリルラクトースのような乳清の所望の成分を、乳清から単離及び/又は精製する方法を提供し、該方法は以下の工程を含む:
乳清を少なくとも一組のイオン交換樹脂に接触させる工程であって、前記一組とは、乳清を脱塩するための第一の陽イオン樹脂、第一の陰イオン樹脂、第二の陽イオン樹脂及び第二の陰イオン樹脂を含む工程;
該脱塩された乳清を、強酸性陽イオン及び最後の弱塩基性陰イオン樹脂を含む二つのさらなる又は最後のイオン交換樹脂に接触させる工程であって、所望の成分が陰イオン樹脂に取り込まれる工程;及び、
最後の陰イオン樹脂から適切な溶離液を使用して所望の成分を溶出させる工程。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1の方法にかかる工程を示すフローチャートである。
【図2】図2は、実施例2の方法にかかる工程を示すフローチャートである。
【図3】図3は、実施例3の方法にかかる工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適実施態様においては、イオン交換樹脂に接触する前に原料の乳清は限外濾過にかけられ、該限外濾過工程はタンパク質濃縮物と乳清透過物を提供することができる。ここで該乳清透過物はイオン交換樹脂に接触する。この工程には、原料の乳清又は脱塩された乳清を使用することが可能である。
【0012】
所望の成分とは、好ましくは3’−シアリルラクトースである。他の成分には透過物中に存在する6’−シアリルラクトース及び/又は他の陰イオン性オリゴ糖類を含むことができる。
【0013】
第一の陽イオン樹脂は、好ましくは、弱酸性陽イオン樹脂である。第二の陽イオン樹脂は強酸性陽イオン樹脂であることが好ましい。第二の陽イオン樹脂が弱酸性陽イオンである場合は、樹脂に入る物質のpHはpH5以上、好ましくはpH5.5以上で維持されるべきである。
【0014】
第一及び第二の塩基性陰イオンは、好ましくは、弱塩基性陰イオンを含む。
【0015】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様の方法によって乳清から単離及び精製された所望の成分、特に3’−シアリルラクトースを対象とする。
【0016】
コスト効率及び/又は技術効率を最適化するために、限外濾過(UF)された乳清透過物は、直接、イオン交換樹脂に通しても良いし、又は、完全に、若しくは、より好ましくは部分的に、透析、電気透析、ナノ濾過、又は前記の組み合せなどの技術を使用する、事前の脱塩工程にかけても良い。
【0017】
本発明の1つの実施態様では、濃縮された原料が本発明の第一の態様で定義される一組の樹脂と接触する前に、UF乳清透過物がナノ濾過を使用して濃縮される。この実施態様では、濃縮された原料が2組の樹脂、すなわち、弱酸性陽イオン、塩基性陰イオン、強酸性陽イオン、塩基性陰イオンの第一組目と、その後に続く弱酸性陽イオン、塩基性陰イオン、強酸性陽イオン、塩基性陰イオンの第二組目とに接触することが好ましい。塩基性陰イオンは、強塩基であっても弱塩基であってもよいが、好ましくは、損失を最小に抑え、溶出を最適化するために弱塩基である。
【0018】
電気透析によって、透過物に部分的脱塩を施すことができる。そして、これを、一組の陽イオン及び陰イオン樹脂に通過させて、3−SLの完全な浄化とその後の最後の陰イオン樹脂への結合ができるようにする。
【0019】
本発明の1つの実施態様では、本発明の第一の態様による一組の樹脂との接触前に、イオン浸透クロマトグラフィー(又は、イオン排除クロマトグラフィー)測定によって、濃縮されたUF乳清透過物中の相対的な3’−SL含有量を増加することができる。好ましくは、イオン浸透クロマトグラフィーは高温で行われ、より好ましくは少なくとも50℃であり、さらに好ましくは50℃から80℃である。溶出する原料は、3’−シアリルラクトースを含んだ帯電した分子を含む第一の画分と、それに続くラクトースなどの帯電していない分子を含んだ第二の画分とを含有する。次に、3’−シアリルラクトースが陰イオン樹脂に取り込まれる状態で、3’−シアリルラクトースを含む第一の画分を一組の樹脂と接触させる。
【0020】
クロマトグラフ分離用樹脂は、好ましくは、ローム アンド ハース(Rohm & Haas)によって供給されるCR1310Kである。しかしながら、他にも適切な樹脂は存在する。例として、これらに限定されることはないが、CR1310Ca&Na、CR1320Ca、K若しくはNa,ダウ(Dow)によるDOWEX(商標)Monosphere(商標)99Ca/320、三菱によるダイヤイオン(Diaion)(商標)UBK530、又はピュロライト(Purolite)によるPCR145Kが挙げられる。
【0021】
3’−シアリルラクトースは、適切に希釈されたアルカリ、塩、緩衡剤又は酸の溶液のいずれかを使用することで、陰イオン樹脂から溶出される。使用されるアルカリは、水酸化アンモニウム、NaOH、KOHが挙げられ、塩の溶液は、NaCl、KCl、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられ、また、酸は、希薄なHCl、酢酸、ギ酸が挙げられ、及び/又は、緩衡剤は、陰イオン樹脂から3’−シアリルラクトースを効率的に溶出させることができる十分な量のカウンターアニオンを含有し、又は上記の適切な組み合わせたものである。しかしながら、揮発性の傾向があるため、アンモニウム塩がより好ましい。
【0022】
適切な塩基又は塩を使用して陰イオン樹脂から溶出した3’−シアリルラクトースは、セファデックス(Sephadex)(商標)G25などの脱塩樹脂を使用して塩類の除去を施すことができる。例えば、溶出生成物は、ナノ濾過を使用して固形分約20〜30%に濃縮することができ、そして得られた物質はセファデックス(Sephadex)(商標)G25(又は、市販されているこのような他の脱塩樹脂)でクロマトグラフされる。溶出する最初の物質は、より大きな分子と共に3’−シアリルラクトースであり、NPNなどのより小さな分子と塩がそれに続く。酢酸塩、ギ酸塩などの大きなイオンを含む溶液を使用する場合は、セファデックス(Sephadex)(商標)G25又はその同等の樹脂を用いたこれらの分子の除去はいくらか不十分となる。それでもなお、樹脂層の深さと流速を調整することで、純度を改善することができる。このような場合、適切な陰イオン樹脂(強塩基性又は弱塩基性陰イオン樹脂)と、それに続くpHを中性に調整するための弱酸性陽イオン樹脂を使用することで、不純物を除去することを選択することができる。また、透析濾過、ナノ濾過、電気透析、透析又は他の手段によっても塩を除去することができる。
【0023】
浄化された溶出した物質は、ナノ濾過及び/又は蒸発によってさらに濃縮することができ、好ましくは、白い生成物質を生じさせるために乾燥する。
【0024】
本発明の方法においては、任意の適切な、強及び弱、陽イオン及び陰イオンの樹脂を使用することができる。第一の弱酸性陽イオンは、好ましくはポリアクリル酸の弱酸性陽イオンであり、好ましくは商品名IMAC HP336で供給されるものである。別のポリアクリル酸の弱陽イオンとしては、ローム アンド ハース(Rohm and Haas)が供給するPWC11、ダウが供給するDOWEX(商標)MAC−3、又は三菱が供給するダイヤイオン(Diaion)(商標)WK10及びWK40が挙げられる。第一の弱陰イオンは、好ましくはアクリル系の弱塩基性陰イオン、好ましくは商品名FPA55で供給されるものである。別のアクリル系の弱塩基性陰イオンには、三菱が供給するダイヤイオン(Diaion)(商標)WA10、WA20、WA21J及びWA30、又はピュロライト(Purolite)が供給するA847又はPFA847が挙げられる。また、スチレンの弱塩基性陰イオン樹脂を使用することができる。さらに強塩基性陰イオン樹脂を使用することもできるが、これは、その後に続く樹脂の浄化のための再生液の使用量を増加させる可能性がある。
【0025】
第二の強酸性陽イオンは、好ましくはスチレン−DVBの強酸性陽イオンであり、より好ましくは商品名HP1110で販売されるものである。別の強酸性陽イオンには、ローム アンド ハースが供給するFPC23、ダウが供給するDOWEX(商標)88、DOWEX(商標)88MB、DOWEX(商標)Monosphere(商標)88、三菱が供給するダイヤイオン(Diaion)(商標)SK1B、SK104、SK110、SK112、SK116、PK208、PK212、PK216、PK220、PK228若しくはHPK25、又はピュロライト(Purolite)が供給するPFC110若しくはPFC150が挙げられる。
【0026】
第二の弱塩基性陰イオンは、好ましくはスチレン−DVBの弱塩基性陰イオンであり、より好ましくは商品名FPA51で販売されるものである。別の弱塩基性陰イオンには、ダウが供給するDOWEX(商標)66、DOWEX(商標)Monosphere(商標)66若しくはDOWEX(商標)Monosphere(商標)77、又は三菱が供給するダイヤイオン(Diaion)(商標)WA10、WA20、WA21J及びWA30が挙げられる。
【0027】
弱塩基性陰イオン樹脂が好ましくはあるが、弱塩基性陰イオン樹脂を強陰イオン樹脂と置き換えることもできる。このような樹脂として、これらに限定されることはないが、ローム アンド ハースによるFPA42、FPA90、ピュロライト(Purolite)によるA600、A400E、A420及びA850、並びにダウケミカル社(Dow Chemical Co.)によるDowex(商標)A、Dowex(商標)1、Dowex(商標)22、Dowex(商標)SARが挙げられる。
【0028】
さらなる態様においては、本発明は乳清の所望の成分に富んだ酪農製品を製造する方法を提供するが、該方法は、本発明の第一の態様の方法により、乳清の所望の成分を準備する過程を含む。乳清の所望の成分は、任意に、3’−シアリルラクトースとすることができ、該方法は、任意に、3’−シアリルラクトースに富んだ酪農製品を製造する方法とすることができる。酪農製品は、場合により、乳製品であるが、乳清の所望の成分に富んだ任意の酪農製品を用いることができる。溶出した所望の成分を酪農製品のストリームと接触させることによって、乳清の所望の成分に富んだ酪農製品を製造することができる。溶出した所望の成分と酪農製品のストリームは、それぞれ独立して液体であっても固体であってもよい。場合により、溶出した所望の成分と酪農製品のストリームは、それぞれ独立した液体である。場合により、酪農製品の製造方法は、さらに酪農製品を濃縮する工程を含む。濃縮工程は、酪農製品のナノ濾過、蒸発及び乾燥のいずれか一つ、又は組み合せを含むことができる。
【実施例】
【0029】
ここで、ほんの一例である実施例を添えて、本発明をより具体的に説明する。実施例1は、本発明の方法を用いた、UF乳清透過物からの3’−シアリルラクトースの直接単離について説明する。実施例2は、UF乳清透過物がナノ濾過を使用して最初に濃縮される本発明の方法を使用した、濃縮されたUF乳清透過物からの3’−シアリルラクトースの単離について説明する。実施例3〜7は、ナノ濾過とそれに続くイオン浸透クロマトグラフィーを使用してUF乳清透過物が最初に濃縮される本発明の方法を使用する、濃縮されたUF乳清透過物からのシアリルラクトースの単離について説明する。また添付の図面に関しては:
図1は、実施例1の方法にかかる工程を示すフローチャートであり;
図2は、実施例2の方法にかかる工程を示すフローチャートであり;そして、
図3は、実施例3の方法にかかる工程を示すフローチャートである。
【0030】
<実施例1>
全ての実施例について、本発明における第一の工程は、チーズ乳清中のタンパク質の大部分を取り除く限外濾過(UF)工程である。
UF工程は、乳清タンパク質濃縮物(WPC)35、60、80及び85の製造を含むことができる。この工程の副産物は、固形分が約4〜7%の乳清透過物であり、約90〜95%のラクトース、1〜5%のタンパク質(NPNと純タンパク質)、4〜7%の灰分、及び0.05〜0.25%の3’−シアリルラクトース(3−SL)で構成される。年間のある時期には、3−SLの割合がかなり高く、固形分が最大0.5重量%程度までとなることがある。
【0031】
実施例ではUF透過物を一組の樹脂と直接接触させ、そして、3−SLは陰イオン樹脂に最終的に取り込まれた。この工程は添付図面の図1に要約される。
【0032】
固形分約5%、3’−SL約60ppmのUF乳清透過物ストリーム1,035リットルをポンプで送り、直径200mmのカラム内の一組の樹脂に通すことによって、連続的に以下の樹脂と直接、接触させた。
・15リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・22リットルのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・23リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・23リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン);
・17リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)。
【0033】
3−SLは、最後の陰イオン樹脂に取り込まれ、4.4%の水酸化アンモニウム28リットルと、それに続く脱塩水50リットルによって溶出された。溶出した物質は、約6〜15重量%の3’−シアリルラクトースを含んでいた。そして、これを30リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン)、及びそれに続くFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)と接触させ、過剰のアンモニアを取り除き、最終生成物のpHを7〜9.5に調整した。
【0034】
得られた生成物は、固形分重量あたりで12〜50重量%の非常に高純度な3’−シアリルラクトースを含んでいた。最終生成物中における灰分含量は、10%未満であり、残りはタンパク質であった。タンパク質の値の約20〜50%はNPNであった。このようにして、本実施例では、一定の流速で3−SLをポンプで送ることによって、以下の一組の樹脂に通し、透過物を直接接触させた: 陽イオン−陰イオン−陽イオン−陰イオン−陽イオン−陰イオン。
これは、不要かつ干渉する分子を取り除くことを可能とし、また、特に最後の陰イオン樹脂カラムに3−SLが取り込まれるようにする。具体的には、以下の系列は、3−SLを最大に回収することについて最高の結果を示した:
・強酸性陽イオン(WAC)−弱塩基性陰イオン(WBA)−強酸性陽イオン(SAC)−弱塩基性陰イオン(WBA)−強酸性陽イオン(SAC)−弱塩基性陰イオン(WBA)。
3−SLは、少量のタンパク質(純タンパク質+NPN)といくらかの陰イオンと共に、最後の陰イオンカラムに取り込まれる。次に、3−SLは、水酸化アンモニウムを使用して溶出される。(アンモニア、カリウム、ナトリウム、マグネシウム若しくはカルシウムの塩化物、又はそれらの組み合せをうまく使用することもできる。)
【0035】
層を通した圧力の低下が大きくなり過ぎるので、処理された透過物を回収するために、適切な位置で中断タンク(break tank)を使用してもよい。このタンクから、処理された透過物はさらにポンプで送られ、残りのカラムを通過する。
【0036】
次に、溶出した3−SLは、塩を取り除くために、陽イオン樹脂とそれに続く陰イオン樹脂で浄化された。その代案として、透析濾過、NF、電気透析、透析又は他の手法によって塩を取り除くことができる。樹脂技術の使用による他の利点は、特定の不要のNPNを同様に取り除くことである。
【0037】
得られた物質は、NF及び/又は蒸発による濃縮のために7〜42重量%の3−SL含有量を有しており、非常に高い3−SL濃度を有する白い生成物を得るために最後に乾燥される。
【0038】
最後の弱塩基性陰イオン樹脂における透過物からの3’−SLの取り込みはほぼ100%であり、溶出されたのは、吸着された3’−SLの総量のうちの85〜100%であった。上記の製造過程において、イオン交換樹脂技術における当業者にとっては、水酸化アンモニウムの濃度、体積、又はそれら両方の変更を検討し、溶出を最適化して、その結果、収量について妥協するか否かに関わらず、最も高い純度を得ることが可能である。また、3−SLの最も高い純度と収量を得るために、予備的な工程として、より低い濃度の水酸化アンモニウムを用い、次に最適濃度の水酸化アンモニウムで溶出することによって、陰イオン樹脂中の不要の物質の溶出を選択することができる。
【0039】
<実施例2>
上記の実施例1のように、乳清透過物を再び限外濾過(UF)工程にかけた。次に、ナノ濾過(NF)により、UF透過物を固形分30%まで濃縮して、濃縮された原料を本発明による一組の樹脂と接触させることで、最終的に3−SLを陰イオン樹脂に取り込んだ。該工程を添付図面の図2に要約する。
【0040】
UF透過物は、ナノ濾過によって濃縮され、固形分が約15〜25%、186〜208ppmの3’−シアリルラクトースを含むNF残余分(NF retentate)が得られた。2,500mlの上記NF残余分は、直径25mmのカラム内で樹脂の中にポンプで送られることによって、以下の一組の樹脂の中に通された/送り込まれた:
・120mlのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・180mlのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・180mlのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・180mlのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン);
・100mlのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・150mlのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・150mlのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・150mlのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)。
【0041】
この場合も先と同様に、圧力低下の問題を回避するために、第4カラムの後に中断タンクを首尾よく用いた。
【0042】
3−SLは、最後の陰イオン樹脂に取り込まれ、180mlの4.4%水酸化アンモニウムと、その後に続く300mlの脱塩水を用いて溶出された。溶出した物質は、約6〜18重量%の3’−シアリルラクトースを含んでいた。そして溶出した物質を、250mlのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン)と、その後に続く120mlのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)とに接触させて、過剰のアンモニアを除去し、最終生成物のpHを7〜9.5に調整した。得られた生成物は、固形分で20〜50重量%にあたる、非常に高い純度の3’−シアリルラクトースを含んでいた。最終生成物の灰分含量は、10%未満であり、残りはタンパク質であった。タンパク質の値の約20〜50%はNPNであった。
【0043】
<実施例3>
乳清透過物は、実施例1と2に関して説明したものと同様に、限外濾過工程にかけられた。次に、UF透過物は、ナノ濾過を使用して固形分20〜30%(好ましくは25%)に濃縮され、そして、透過物は、50〜80℃の高温でイオン浸透クロマトグラフィー(さもなければ、大抵はイオン排除クロマトグラフィーと称される)にかけられた。溶出した物質は、2つの画分に分けられた。−最初の画分は、大部分のタンパク質(NPNを含む)、無機物及び3−SLを含む帯電分子を含み、それに続く画分は、ラクトースなどの非帯電分子を含む。次に、3−SLを含む最初の画分を、実施例1で示す一組の樹脂と接触させた。そして、3−SLは最終的に陰イオン樹脂に取り込まれた。該工程は、添付図面の図3に要約される。
【0044】
より詳細には、イオン浸透の工程は、650リットルのCR1310Kを含むクロマトグラフカラムを使用し、プロセス水で較正された3メートルの高さの層を与えた。+4〜75℃の運転温度で評価を行い、高い温度で最も良い結果が得られた。UF透過物は、ナノ濾過によって濃縮され、固形分が約22〜25%、118〜304ppm(平均220ppm)の3’−シアリルラクトースを含むNF残余分が得られた。そして、イオン排除工程として、この原料をイオン排除樹脂層と、それに続く水の中を通し、ナノ濾過した原料をポンプで送った。最適な結果として、樹脂の対NF残余分の1サイクルあたりのロード率は1:0.1で維持され、水の0.9bvがそれに続いた(1bv=全樹脂量、viz.=650リットル)。0.3〜0.86bv/時間の一定の流速が評価された。流速の変化は、得られたクロマトグラムの本質に、大きな影響を与えることはなかった。溶出した物質は、2つの画分に分けられた。−最初の画分は、無機物及びタンパク質(NPNを含む)とともに3’−シアリルラクトースを含み、それに続く第二の画分は、ほとんど純粋な状態のラクトースを含む。1サイクルによって得られた3’−シアリルラクトースを多く含む画分の実容量は、135リットルであった。固形分は0.5〜1%の間で異なり、3’−シアリルラクトースのレベルは、固形分で0.5〜1.3重量%であった。95サイクル以上の操作における3’−シアリルラクトースの再生は、80〜100%の範囲にあり、再生の平均は85%であった。
【0045】
次に、950リットルの3−SLを豊富に含む画分を、以下の樹脂に、順に通過させた。
・15リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・22リットルのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・17リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)。
【0046】
3−SLは、最後の陰イオン樹脂に取り込まれ、28リットルの4.4%アンモニウムと、その後に続く50リットルの脱塩水を用いて溶出された。溶出した物質は、約6〜15重量%の3’−シアリルラクトースを含んでいた。そして、これを、30リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン)と、その後に続く23リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)とに接触させて、過剰のアンモニアを取り除き、最終生成物のpHを7〜9.5に調整した。固形分0.3〜1%の得られた生成物は、固形分あたりで0.5〜3重量%の3’−シアリルラクトースを含んでいた。最終生成物の灰分含量は10%未満であり、ラクトース含量は30〜50%、残りがタンパク質であった。タンパク質の値の約20〜50%はNPNであった。
【0047】
<実施例4>
別の製造方法では、実施例3に記載のナノ濾過とイオン浸透工程によって製造された1,600リットルの3−SLを豊富に含む画分をポンプで送り、直径200mmのカラム内を通すことによって、以下の一組の樹脂と接触させた:
・15リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・22リットルのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・17リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン);
・17リットルHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)。
【0048】
3−SLは、最後の陰イオン樹脂に取り込まれ、28リットルの4.4%水酸化アンモニウムと、その後に続く50リットルの脱塩水を用いて溶出された。溶出した物質は、約6〜15重量%の3’−シアリルラクトースを含んでいた。そして、これを、30リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン)と、その後に続く23リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)に接触させて、過剰のアンモニアを取り除き、最終生成物のpHを7〜9.5に調整した。得られた生成物は、固形分で20〜70重量%にあたる非常に高い濃度の、精製された3’−シアリルラクトースを含んでいた。最終生成物の灰分含量は、10%未満であり、残りがタンパク質であった。タンパク質の値の約15〜30%はNPNであった。
【0049】
<実施例5>
乳清透過物は、実施例1と2に関して説明したのと同様に、限外濾過工程にかけられた。UF透過物を本発明による二相の一組の樹脂と接触させ、最終的に3−SLは陰イオン樹脂に取り込まれた。該工程は、添付図面の図1に要約したものの変形である。
【0050】
30〜80ppmの3’−シアリルラクトースを含む固形分2〜6%のUF透過物を使用した。
本実施例の第1相において、多量の上記UF残余分をポンプで送り、直径200mmのカラム内を通すことによって、以下の一組の樹脂の中を通された/送り込まれた:
・15リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・22リットルのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・17リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)。
UF残余分のロードのカットオフポイントは、排出水伝導率が約300〜400マイクロジーメンスに達したときのポイントに決定した。上記手順を3回連続して繰り返すことによって、残余分のロードは、各々610リットル、650リットル及び600リットルとなった。上記の4つの樹脂カラムを通過して脱塩された3’−SLを有する対象の生成物(残余分)は、100リットルのプロセス水、上記の684リットル、724リットル及び674リットルの連続3回の繰り返しによって、第1相で得られた生成物と置き換えられた。
【0051】
そして、本実施例の第2相では、800リットルの第1相で溶出した物質を、17リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン)と、それに続く17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)とに接触させた。精製された3’−SLを含む対象の生成物は、最後の樹脂に取り込まれ、そして20リットルの1%塩化カリウムと、それに続く45リットルのプロセス水を用いて溶出された。
【0052】
第2相の2度の繰り返しにおいて、合計120リットルの溶出した生成物を得た。次に、これをナノ濾過、それに続く透析濾過にかけ、7.3リットルの残余分を製造した。この生成物は、固形分27重量%の3’−シアリルラクトースを含む。
【0053】
凍結乾燥の後、ナノ濾過とダイアフィルター(商標)にかけられた生成物2.96リットルから、固体の3’−SL重量で30重量%含む420gの乾燥生成物を製造した。最終物質の灰分含量は16%であり、たんぱく質は30%で、2%のNPNを含んでいた。
【0054】
<実施例6>
別の製造方法において、実施例3に記載されたイオン排除工程による3−SLを多く含む画分は、ナノ濾過によって固形分約12%にまで濃縮された。この物質15mlを150mlのセファデックス(Sephadex)G25でクロマトグラフし、固形分で4〜6重量%の3−SLを含む最終生成物を得た。回収率は約98%であった。市販されているトヨパール(Toyopearl)(商標)HW40、バイオゲル(Bio−Gel)(商標)P−4、バイオゲル(商標)P−6又はその他バルク脱塩樹脂のような、セファデックスG10を含む任意の脱塩樹脂を使用することができる。
【0055】
上記実施例で示すように、本発明の単離の工程は、本質的に、透過物原料(実施例1の場合は未処理のUF透過物、実施例2の場合はナノ濾過された透過物、又は、実施例3〜6の場合はイオン排除された原料)を以下の樹脂に通すことを含む:
・弱酸性陽イオン樹脂(例えば、Imac HP336又はWK40)
・弱又は強陰イオン樹脂(例えば、FPA55又はFPA42)
・強酸性陽イオン樹脂(例えば、Imac HP1110又はFPC23)
・弱又は強陰イオン樹脂(例えば、FPA51、FPA55又はFPA42)
【0056】
これは透過物原料の浄化をもたらす。浄化に続いて、適切な陰イオン交換樹脂に3−SLを吸収することができる(好適な実施例は、FPA51であり、最も良い溶出をもたらした)。原料は陰イオン樹脂の前に陽イオン樹脂を通過でき、全ての3’−SLが陰イオン樹脂に取り込まれる。先の陽イオンの有無に関わらず、強塩基性陰イオンを使用することは、3’−SLが樹脂に取り込まれることにつながるが、また溶出媒体のより大きな溶出力をも必要とする。樹脂からの溶出は、水酸化アンモニウム、塩化カルシウム、NaCl及びKCl又はこれらの組み合せを使用することで達成された。
【0057】
<実施例7>
実施例5と同じ方針に沿って実施された別の系の実験において、3’−シアリルラクトースの溶出画分は様々な画分に分けられ、100%純粋な3’−シアリルラクトースの画分は、収率が19〜20%に減少して得られた。
【0058】
画分は、直接凍結乾燥すること、又は、適切な方法による固形分の濃縮に続いて、スプレー乾燥することができる。
【0059】
負に帯電した分子は不要であり、及び/又は、3−SLが陰イオン樹脂(FPA51)に選択的に付着する妨げとなるが、本発明の方法についての周辺の原理は、この負に帯電した分子を除くことから成る。3−SLが陰イオン樹脂に捕えられる前に、3−SLを負に帯電させるため、陽イオン樹脂は不可欠である。
【0060】
任意の強陽イオン樹脂を使用した正に帯電した分子の除去に続いて、3−SLが任意の陰イオン樹脂に捕えられることが予期される。しかし、驚くべきことに、そのようにはならず、3’−SLと樹脂との間の結合が非常に弱く、任意の競合する陰イオン種の存在によって容易に分離することが示唆される。上記のように、一組である4つの樹脂全てを有することは不可欠である。このような場合、ナノ濾過された透過物が出発物質として使用されると(実施例2参照)、弱陰イオン樹脂を含む最後のカラムで3−SLを捕えるためには、前記の4つの樹脂の存在に加えて、再度これら4つの樹脂をこの順番で有することが非常に望ましい。
【0061】
純粋な天然状態の3−SLは非常に弱い負電荷を帯びた分子として存在している。Hイオンを除くほとんどすべてのカチオン種を除去し、多くの競合する陰イオンを除去した場合に、陰イオン樹脂は3−SLのみを捕えることができる。本発明の方法は、固形分で3〜60重量%の異なった濃度範囲である場合に、精製された3−SLを得ることを目的とする。この目的を達成することは容易ではない。第一の弱酸性陽イオンは、CaやMgなど、多くの二価の陽イオンや、それほどではないにせよ、乳清の中に存在するNa、Kや、特定のアミノ酸やタンパク質をも取り除く。第二の樹脂である弱塩基性陰イオンは、塩化物、リン酸塩及び硫酸塩などの負電荷を帯びた一部の分子や、ある程度のクエン酸塩、乳酸塩、並びに負電荷のアミノ酸やタンパク質を捕える。次に、第三の樹脂は、残存する陽イオンのほとんど全てを捕える強い陽イオン樹脂である。第四の樹脂は、選択的に、3−SL上に残存する陰イオンをどれでも捕える弱塩基性陰イオンである。最小限の3−SLがこのカラムに捕えられることを確実にするために、第四の樹脂によって取り込まれた3−SLのどれもが、競合する陰イオンによって選択的にたたき出されることが、工程の上で好ましい。一度、原料が浄化されると(又は90%以上が脱塩されると)、事実上、すべての残存する陽イオンを取り除くために、強酸性陽イオンを放出することができ、その結果、3−SLを天然の又は自由な状態(“H−3−SL”の可能性が最も高い)で存在することができる。次に、−OH型の弱い陰イオンは、容易に“H−3−SL”と反応し(HはOHと反応して水になる)、負に帯電した3−SLは弱陰イオン樹脂によって容易に捕えられる。
【0062】
上記より明らかなように、3’−SLを含む原料を樹脂と接触させる前に、透析、電気透析、透析濾過などの群から選択される手順/技術によって、樹脂上のイオンによる負荷を軽減させる手法を選択できる。これは、樹脂の耐荷性を高める一方で、対象のオリゴ糖を単離する基本的な原則を変更しない。
【0063】
すべての場合において、3−SLをとらえる際に技術的に等しくうまく作用するのは強塩基性陰イオンであるが、最後の樹脂は弱塩基性陰イオンである。一方、強塩基性陰イオンからの溶出は弱塩基性陰イオンと比較してより困難である。KCl、NaCl、CaClなどの塩化物、又はこれらの組み合せが好ましい。他の揮発性塩としては、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、ギ酸、酢酸などが含まれる。
【0064】
陰イオンカラムからの溶出に続き、アンモニア及び/又はCaClが使用されたときはCaを、KClが使用されたときはKを取り除くために、原料を弱酸性陽イオンと接触させ、それに続いてFPA51などの弱い陰イオンに接触させることで、中性のポイントまで戻してpHを調整する。そしてKCl又はCaClが使用された場合、過剰の塩化物を取り除く。または、原料をナノ濾過及び/又はダイアフィルターにかけ、生成物中の所望の目標とする規格を達成することができる。
【0065】
また、当業者は、3’−シアリルラクトースを含む溶出画分の部分を得る技術を使用した場合、たとえ収量に妥協したとしても、純度は100%である所望の生成物を得ることができる。
【0066】
実施例は、製造方法を3’−SLに限定して説明しているが、透過物中には、タンパク質、アミノ酸類及び他のオリゴ糖類など、対象となる様々な成分が存在し、本明細書中に記載された同様の操作原理を使用することで、分離が成功する。さらに、溶出溶液の濃度を変えることによって、樹脂技術のいずれの当業者であっても、吸着された原料を選択的に樹脂から分画することで、純度を上げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳清の所望の成分を、乳清から単離及び/又は精製する方法であって、以下の工程を含む方法:
乳清を少なくとも一組のイオン交換樹脂に接触させる工程であって、前記一組とは、乳清を脱塩するための第一の陽イオン樹脂、第一の陰イオン樹脂、第二の陽イオン樹脂及び第二の陰イオン樹脂を含む工程;
該脱塩された乳清を、強酸性陽イオン樹脂、それに続く弱塩基性陰イオン樹脂を含む二つのさらなる又は最後のイオン交換樹脂に接触させる工程であって、所望の成分が陰イオン樹脂に取り込まれる工程;及び、
陰イオン樹脂から所望の成分を溶出させる工程。
【請求項2】
イオン交換樹脂に接触する前に乳清を限外濾過にかけて、タンパク濃縮物と乳清透過物とを供給し、そこで該乳清透過物がイオン交換樹脂に接触する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
所望の成分が3’−シアリルラクトースである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第一の陽イオン樹脂が弱酸性陽イオン樹脂である請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
第二の陽イオン樹脂が強酸性陽イオン樹脂である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第二の陽イオン樹脂が弱酸性陽イオン樹脂である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
乳清のpHが少なくとも5.5で維持されている請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第一及び第二の陰イオン樹脂の一方又は双方が、弱塩基性陰イオン樹脂を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
乳清又は乳清透過物が、樹脂を通過する前に、濃縮工程にかけられる請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
所望の成分の単離及び精製を改良するために、乳清又は乳清透過物が追加の手順にかけられ、該追加の手順が、透析、電気透析、透析濾過、ナノ濾過、及びイオン交換樹脂から選択される請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
濃縮された原料が少なくとも一組の樹脂と接触する前に、ナノ濾過を使用して乳清又は乳清透過物を濃縮する工程をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
濃縮された原料が二組の樹脂と接触することをさらに含み、第一組目は、弱酸性陽イオン、弱塩基性陰イオン、強酸性陽イオン、強塩基性陰イオン、弱酸性陽イオン及び弱塩基性陰イオンを含み、第二組目は、強酸性陽イオン及び強塩基性陰イオンを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
イオン浸透クロマトグラフィー(又は、イオン排除クロマトグラフィー)測定によって、濃縮されていない又は濃縮された、乳清又は乳清透過物中の所望の成分の相対的な濃度を増加させることをさらに含み、所望の成分を含む帯電した分子を含む第一の画分と、それに続く第二の画分を準備し、そして第一の画分が少なくとも一組の樹脂と接触する請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
濃縮された第一の画分を少なくとも一組の樹脂と接触させて、脱塩された濃縮画分を得る請求項13に記載の方法。
【請求項15】
濃縮された画分を少なくとも一組の樹脂と接触させて、所望の成分をさらなる陰イオン樹脂に吸着させる請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも50℃の高温でイオン浸透クロマトグラフィーを行う工程をさらに含む請求項13、14、又は15に記載の方法。
【請求項17】
高温とは50℃〜80℃である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
適切に希釈されたアルカリ、塩、緩衡剤、又は酸の溶液を使用することで、さらなる陰イオン樹脂から所望の成分を溶出する工程をさらに含む請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記溶出に、アンモニウム塩を使用する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記溶出に、アルカリ土類金属と塩化物の塩、又は任意の二価陽イオンと塩化物の塩を使用する請求項18に記載の方法。
【請求項21】
適切な陽イオン樹脂、それに続く弱塩基性陰イオン樹脂と接触させることで、溶出した原料を浄化する工程をさらに含む請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
透析濾過、ナノ濾過、電気透析、及び透析からなる群より選択された手段によって、溶出した原料を浄化する工程をさらに含む請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ナノ濾過及び/又は蒸発及び/又は乾燥によって、溶出した原料を濃縮する工程をさらに含む請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
第一の陽イオン樹脂がポリアクリル系の弱酸性陽イオンである請求項6〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
第一の陰イオン樹脂がアクリル系の弱塩基性陰イオンである請求項8〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
第二の陽イオン樹脂がスチレン−DVB系の強酸性陽イオンである請求項5〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
第二の陰イオン樹脂がスチレン−DVB又はアクリル系の弱塩基性陰イオンである請求項8〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第三の陽イオン樹脂がスチレン−DVB系の強酸性陽イオンである請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
第三の陰イオン樹脂がスチレン−DVB系の弱塩基性陰イオンである請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法により製造された3’−シアリルラクトース。
【請求項31】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の乳清の所望の成分の製造を含む、酪農製品を製造する方法。
【請求項32】
乳清の所望の成分が3’−シアリルラクトースである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
溶出工程からの所望の成分を、酪農製品のストリームと接触させる工程をさらに含む請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
酪農製品が乳製品である請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
酪農製品をナノ濾過及び/又は蒸発及び/又は乾燥することによって、酪農製品を濃縮する工程をさらに含む請求項31〜34のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−520666(P2012−520666A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500305(P2012−500305)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000479
【国際公開番号】WO2010/106320
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(511227406)セパレーション テクノロジーズ インベスティメンツ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】