説明

乳癌のための、ネラチニブを活用する治療計画

HER−2/neu過剰発現/増幅のある癌を治療するための長期レジメンであって、ネラチニブ療法のコースを、手術療法およびアジュバント療法の完了後に、HER−2/neu過剰発現/増幅のある癌患者に送達するステップを含むレジメンを記載する。このネラチニブレジメンは、最長12カ月〜5年まで継続することができる。また、このレジメンに関する服薬遵守を容易にするように設計された医薬キットも提供する。一態様では、本発明は、HER−2/neu過剰発現/増幅のある新生物の治療のためのレジメンを提供し、このレジメンは、ネラチニブ療法のコースを、トラスツズマブアジュバント療法の延長として、HER−2/neu過剰発現/増幅のある癌患者に送達するステップを含み、例えば、ネラチニブを、手術および標準的なアジュバント療法の完了後に送達する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
乳癌は、女性において最も頻繁に診断される悪性腫瘍であり、世界的に、女性の癌による死亡の主要な原因である。今後10年で、乳癌の全世界での発生率は、500万人の女性に達すると推定されている[非特許文献1]。2007年には、乳癌は世界全体でおよそ540,000件の死亡の原因となった[非特許文献2;WHOのウェブサイトから入手可能である]。
【0002】
TKI(チロシンキナーゼ阻害物質)のerbB(赤芽球性白血病ウイルス癌遺伝子相同体)ファミリーは、4つのメンバー、すなわち、erbB−1(EGFR[上皮増殖因子受容体])、erbB−2(HER−2、neu)、erbB−3(HER−3)、およびerbB−4(HER−4)からなる。erbBファミリーの受容体は、細胞増殖、腫瘍形成および転移に関与し、複数の腫瘍型において異常に発現する。HER2陽性の乳癌、すなわち、ヒトEGFRと呼ばれているタンパク質について陽性反応を示す乳癌は、Erb−2タンパク質の過剰発現と関連があり、一方、乳癌腫瘍におけるerbB−2遺伝子の増幅は、より侵襲性の臨床疾患および予後不良と関連付けられている[非特許文献3]。
【0003】
ヒトerbB−2受容体に選択的に結合するヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブは、erbB−2陽性の乳癌を有する女性の予後を改善する。erbB−2を過剰発現している転移性乳癌を有する患者において、化学療法と組み合わせたトラスツズマブは、化学療法単独と比べて、腫瘍の退縮を改善し、腫瘍の進行が生じるまでの時間を延長し、生存期間の中央値を延ばすことから、トラスツズマブは転移性の状況における第一選択の治療として承認されている。[非特許文献4]。Herceptin(トラスツズマブ)[添付文書、Genentech(2008)]。また、トラスツズマブは、アジュバントの状況において、erbB−2を過剰発現している、リンパ節転移陽性またはリンパ節転移陰性(エストロゲン受容体/プロゲステロン受容体[ER/PgR]について陰性)の転移性乳癌を治療するための他の薬物と組み合わせた使用についても承認されている。したがって、トラスツズマブは、(a)ドキソルビシン、シクロホスファミド、およびパクリタキセルまたはドセタキセルのいずれかからなる治療計画の一部として、(b)ドセタキセルおよびカルボプラチンを用いるレジメンの一部として、および(c)集学的なアントラサイクリンに基づく療法に続く、単一薬剤として使用されている。
【0004】
HER+乳癌の診断後の現在の標準的な治療看護は、手術とそれに続く1年間のアジュバント治療である。標準的なアジュバント治療は、化学療法、放射線照射、ER/PRに陽性の疾患でのホルモン療法、およびトラスツズマブの何らかの組合せである。アジュバント療法の完了にも関わらず、早期乳癌患者には再発のリスクが残る。トラスツズマブ療法の公開されている報告は、3年後の80.6%[非特許文献5]から、4年後の85.9%〜82%[非特許文献6、および非特許文献7]までの範囲の無病生存率を示している。
【0005】
HKI−272(ネラチニブ)は、新生物の治療のために記載されている[特許文献1]。ネラチニブは、強力な不可逆的な汎erbB阻害剤である。ネラチニブは、経口により利用可能な低分子であり、この分子は、細胞内チロシンキナーゼドメインにおいて、erbB−1、erbB−2およびerbB−4を阻害し、この機構は、トラスツズマブとは異なる作用機構である。ネラチニブは、erbB−1およびerbB−2の自己リン酸化、erbB−1およびerbB−2の下流のシグナル伝達、ならびにerbB−1およびerbB−2に依存する細胞系の増殖を低下させる。前臨床データから、ネラチニブは、erbB−1および/またはerbB2を発現する癌細胞系において、100nM未満の細胞IC50で抗腫瘍活性を示すであろうことが示唆されている[非特許文献8]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,288,082号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Parkin、DMおよびFernandez LM、Use of statistics to assess the global burden of breast cancer、Breast Journal、2006;(12、Suppl 1):S70〜80;World Health Statistics、2008、World Health Organization
【非特許文献2】World Health Organization Fact Sheet No.297、2008
【非特許文献3】Slamon D、Human breast cancer:correlation of relapse and survival with amplification of the HER−2/neu oncogene、Science、1987(235):177〜182
【非特許文献4】Ligibel JAおよびWiner EP、Trastuzumab/chemotherapy combinations in metastatic breast cancer、Seminars in Oncology、2002;29(3 Suppl 11):38〜43
【非特許文献5】Smith Iら、2−year follow−up of trastuzumab after adjuvant chemotherapy in HER2−positive breast cancer:a randomized controlled trial、Lancet、2007;369:29〜36
【非特許文献6】Perez EAら、Updated results of the combined analysis of NCCTG N9831 and NSABP B−31 adjuvant chemotherapy with/without trastuzumab in patients with HER2−positive breast cancer、Journal of Clinical Oncology、ASCO Annual Meeting Proceedings、2007;25(18S):512
【非特許文献7】Slamon Dら、Phase III trial comparing AC−T with AC−TH and with TCH in the adjuvant treatment of HER2 positive early breast cancer patients:second interim efficacy analysis、Presentation by Slamon D.、SABCC 2006
【非特許文献8】Rabindran SKら、Antitumor activity of HKI−272,an orally active,irreversible inhibitor of the HER−2 tyrosine kinase、Cancer Research、2004;64(11):3958〜65
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
患者の生存率を改善する薬物およびレジメン、ならびに/または一次治療およびアジュバント治療が完了した後の、乳癌の再発を減少させる薬物およびレジメンが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明は、HER−2/neu過剰発現/増幅のある新生物の治療のためのレジメンを提供し、このレジメンは、ネラチニブ療法のコースを、トラスツズマブアジュバント療法の延長として、HER−2/neu過剰発現/増幅のある癌患者に送達するステップを含み、例えば、ネラチニブを、手術および標準的なアジュバント療法の完了後に送達する。
【0010】
別の態様では、本発明は、患者の、HER−2/neu過剰発現/増幅のある乳癌の再発率を、一次療法およびトラスツズマブアジュバント療法のみを投与した患者と比較して減少させるための方法またはレジメンを提供する。この方法は、ネラチニブを、一次療法およびトラスツズマブを用いる標準的なアジュバント療法の後に、前記患者に送達するステップを含む。一実施形態では、また、この方法は、1つまたは複数の従来のネオアジュバント療法または標準的なアジュバント療法の完了後に行う。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、浸潤性疾患のない生存期間(invasive−disease free survival)を改善するためのレジメンを提供し、このレジメンは、癌患者を、一次療法およびトラスツズマブを用いる標準的なアジュバント療法の完了後に、ネラチニブを用いて治療するステップを含む。一実施形態では、このネラチニブを用いる治療は、手術後のトラスツズマブを用いる標準的なアジュバント療法後の2週〜48カ月以内に始まる。
【0012】
本発明のさらなる他の態様および利点が、以下の本発明の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態では、本発明は、HER−2/neu過剰発現/増幅のある癌を治療するための長期アジュバントレジメンを提供し、このレジメンは、ネラチニブ療法のコースを、HER−2/neu過剰発現/増幅のある癌患者に送達するステップを含む。そのような長期アジュバント療法は、ネラチニブ療法を、トラスツズマブを用いるアジュバント療法の完了のときに開始することを含む。この長期アジュバント療法を使用して、浸潤性疾患のない生存期間(IDFS)もしくは非浸潤性乳管癌(DCIS)を含む無病生存期間(DFS)の改善、ならびに/または全生存期間、遠隔再発までの時間および/もしくは遠隔無病生存期間の改善をもたらす。
【0014】
本明細書で使用する場合、浸潤性疾患のない生存期間(IDFS)を、無作為化の日から、IDFS事象日までの時間と定義し、IDFS事象は、浸潤性の同側性乳腺腫瘍(breast tumor)の再発、局所性/領域性の浸潤性の再発、遠隔再発、いずれかの原因による死亡、浸潤性の対側性乳癌、および第2の原発性の浸潤性癌(非乳房性)を含む。DFS−DCISを、無作為化から、いずれかのIDFS事象または非浸潤性乳管癌が最初に出現するまでの時間と定義する。遠隔無病生存期間(DDFS)は、無作為化から、最初の遠隔再発またはいずれかの原因による死亡までの時間である。遠隔再発までの時間(TTDR)を、無作為化と、最初の遠隔性腫瘍の再発の日との間の時間と定義し、局所領域性の再発および第2の乳房性または非乳房性の癌は無視し、遠隔性乳癌が再発する前の死亡を打切り事象として考慮に入れる。
【0015】
したがって、ネラチニブを使用する、本発明の長期アジュバント療法は、無病生存期間を、再発または死亡のリスクを低下させることによって増加させる。一実施形態では、この長期ネラチニブアジュバント療法は、癌の再発または癌による死亡のリスク、すなわち、ハザード率を、トラスツズマブ療法の後の従来の観察結果と比較して30%または20%低下させる。
【0016】
別の実施形態では、本明細書に記載する長期ネラチニブレジメンを使用すると、一次療法およびアジュバント療法を投与された患者の15%未満、10%未満、および/または5%未満が、療法開始の3年後に癌を発症する。さらに別の実施形態では、本明細書に記載する長期ネラチニブレジメンを使用すると、一次療法およびアジュバント療法を投与された患者の20%未満、15%未満、および/または5%未満が、療法開始の5年後に癌を発症する。
【0017】
本明細書で使用する場合、ネラチニブは、HKI−272を指し、遊離の塩基の形態では、以下のコア構造を有する。
【0018】
【化1】


その薬学的に許容できる塩または水和物を場合により使用してもよい。上記に示したコア構造は、HKI−272またはネラチニブと呼ばれる特定のHKI−272化合物であり、この化合物は、化学名[(2E)−N−[4−[[3−クロロ−4−[(ピリジン−2−イル)メトキシ]フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシキノリン−6−イル]−4−(ジメチルアミノ)ブタ−2−エンアミド]を有する。
【0019】
現時点ではそれほど好ましくないが、別のHKI−272化合物も、ネラチニブの代わりに使用することができる。「HKI−272化合物」は、一実施形態では、上記で示したネラチニブのコア構造から誘導された化合物を指す。適切な誘導体として、例えば、エステル、エーテルまたはカルバメートを挙げることができる。そのようなHKI−272化合物は、以下の構造を有し得る。
【0020】
【化2】


式中、
は、ハロゲンであり、
は、ピリジニル、チオフェニル、ピリミジニル、チアゾリルまたはフェニルであり、Rは、場合により、最大3つの置換基で置換され、
は、OまたはSであり、
は、CHまたはCHCHOCHであり、
は、CHまたはCHCHであり、かつ
nは、0または1である。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「ハロゲン」は、Cl、Br、IおよびFを指す。
【0022】
また、ネラチニブおよび/または本明細書に記載する他のHKI化合物の薬学的に許容できる塩、水和物およびプロドラッグも包含する。「薬学的に許容できる塩およびエステル」は、薬学的に許容でき、所望の薬理学的特性を示す塩およびエステルを指す。そのような塩として、例えば、化合物中に存在する酸性プロトンが、無機または有機の塩基と反応することができる場合に形成され得る塩が挙げられる。適切な無機塩として、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムと形成される塩が挙げられる。また、適切な有機塩として、例えば、有機塩基、例として、アミン塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等と形成される塩、およびN−テトラアルキルアンモニウム塩、例として、N−テトラブチルアンモニウム塩を形成することができる塩も挙げられる。また、薬学的に許容できる塩として、親化合物中の塩基性部分、例として、アミンと、無機酸(例えば、塩酸および臭化水素酸)および有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、ならびにアルカン−およびアレーン−スルホン酸、例として、メタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸)との反応から形成される酸付加塩を挙げることもできる。薬学的に許容できる塩の他の適切な例として、これらに限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸))、および脂肪酸の塩、例として、カプロン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩およびリノレイン酸塩が挙げられる。
【0023】
薬学的に許容できるエステルには、本発明の化合物中に存在するカルボキシ基、スルホニルオキシ基およびホスホノキシ基から形成されるエステル、例えば、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキルエステルまたは1〜6個の炭素原子を含有する分枝鎖アルキル基があり、それらとして、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、2−メチルプロピルエステルおよび1,1−ジメチルエチルエステル、シクロアルキルエステル、アルキルアリールエステル、ベンジルエステル等が挙げられる。2つの酸性の基が存在する場合には、薬学的に許容できる塩またはエステルは、一酸一塩もしくは一酸一エステルであっても、または二塩もしくは二エステルであってもよく、同様に、2つを超える酸性の基が存在する場合には、そのような基の一部または全部を塩化またはエステル化してもよい。本明細書において活用する化合物は、非塩化形態もしくは非エステル化形態で存在しても、または塩化形態および/もしくはエステル化形態で存在してもよく、そのような化合物の名前は、元々(非塩化および非エステル化の状態)の化合物ならびにその薬学的に許容できる塩およびエステルの両方を含むことを意図する。また、本明細書において活用する1つまたは複数の化合物は、2つ以上の立体異性の形態で存在してもよく、そのような化合物の名前は、そのような立体異性体の全ての単一の立体異性体および全ての混合物(ラセミ体であってもまたはラセミ体でなくても)を含むことを意図する。
【0024】
ネラチニブがそのうちの1つの化学種であるHKI−272化合物の調製が、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2005/0059678号詳細に記載されている。また、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,288,082号、米国特許第6,002,008号、米国特許第6,297,258号、および米国特許出願公開第2007/0104721号も参照されたい。また、これらの文献に記載されている方法を、ネラチニブ、ならびに/または本明細書において使用する他のHKI−272および置換3−キノリン化合物を調製するためにも使用することができ、それらの方法は、参照により本明細書に組み込まれている。これらの文献に記載されている方法に加えて、参照により本明細書に組み込まれている国際特許公開第WO−96/33978号および第WO−96/33980号も、これらのHKI−272化合物の調製に有用な方法を記載している。これらの方法は、特定のキナゾリンの調製を記載しているが、また、そうした方法は、対応する置換3−シアノキノリンの調製にも適用可能であり、参照により本明細書に組み込まれている。
【0025】
用語「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」は、ネラチニブを対象に投与して、新生物と関連がある症状もしくは状態を、阻止するもしくは遅延させること、軽減すること、またはそれらの症状もしくは状態の発生を停止させるもしくは阻害することを指す。
【0026】
トラスツズマブ、ならびにトラスツズマブを作製および製剤化する方法が記載されている。例えば、米国特許第6,821,515号、米国特許第6,399,063号、および米国特許第6,387,371号を参照されたい。トラスツズマブは、Genentechから「Herceptin」の名前の下で商業的に入手可能である。本明細書で使用する場合、用語「トラスツズマブ」は、トラスツズマブ、ならびにトラスツズマブの変化形態および誘導体を含む。用語「トラスツズマブ」は、HER−2受容体上のエピトープであって、トラスツズマブが標的にするのと同じエピトープを標的にする薬剤を含む。このエピトープについては、H.S.Choら、Structure of the extracellular region of HER2 alone and in complex with the Herceptin Fab、Nature 421(2003)、pp.756〜760から既知である。
【0027】
本明細書で使用する場合、erB−2(HER−2およびneuと互換的に使用する)を増幅する/過剰発現する新生物は、特定の乳癌および他の新生物を含み、他の新生物として、卵巣癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、および非小細胞肺癌を含めた肺癌を挙げることができる。erbB1を発現または過剰発現する他の新生物は、多様な固形ヒト腫瘍を含み、それらとして、非小細胞肺(NSCL)癌、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌および卵巣癌が挙げられる。試料をスクリーニングして、新生物がerb−1および/またはerb−2/HER−2を過剰発現するかどうかを決定するための方法は当業者に既知である。
【0028】
抗新生物の一次療法およびアジュバント療法
本明細書に定義するように、一次療法は、新生物、例として、HER−2/neu過剰発現/増幅のある新生物が診断された後に、患者に提供される最初の療法である。また、一次療法は、限定局所療法(definitive local therapy)とも呼ばれている。HER−2/neu過剰発現/増幅のある新生物のための一次療法は、手術(乳癌の場合、これは、乳腺腫瘍摘出術、改変根治的乳房切除術、乳房切除術を含むことができる)および/または放射線照射を、単独でまたは組み合わせて含む。アジュバント療法は、治癒の可能性を増加させるために、最初の療法または一次療法に続いて従来から提供されている療法を指す。現時点では、HER−2/neu過剰発現/増幅のある新生物のための標準的なアジュバント療法は、例えば、化学療法および/または抗体療法を含む。典型的には、これらのアジュバント療法のうちの1つまたは複数が、一次療法(例えば、手術)の前に送達される場合には、こうした療法は、ネオアジュバント療法と呼ばれている。本明細書の以下の部分全体を通して、用語「ネオ/アジュバント」を、ネオアジュバント療法および標準的なアジュバント療法の両方を指すための省略表現として使用する。1つまたは複数の型のアジュバント療法を同時に送達することができる。
【0029】
一実施形態では、患者は、アントラサイクリンもしくはタキサンによるレジメン、または任意のシクロホスファミド、メトトレキサートおよび5−フルオロウラシルによるレジメンのいずれかの送達を含む化学療法を受けたことがある場合がある。そのような化学療法は、ドキソルビシン等のアントラサイクリン、シクロホスファミド、パクリタキセル、ドセタキセルおよびカルボプラチンのうちの1つまたは複数を含むことができる。別の適切なネオ/アジュバント療法は、集学的なアントラサイクリンに基づく療法である。さらなる他のネオ/アジュバント療法は、とりわけ、ラパチニブ[ラパチニブジトシラート、TYKERB(登録商標)]、ペルツズマブ[Roche、Genentech]、ベバシズマブ[Avastin(登録商標)、Genentech]、トラスツズマブ−DM−1[Genentech]を含む。ネオアジュバント療法またはアジュバント療法の選択により、本発明は制限されない。本発明の長期アジュバント療法を、トラスツズマブを用いる療法の完了後に開始する。トラスツズマブは典型的には、維持療法としての化学療法の完了後またはそうした化学療法と同時に送達される。トラスツズマブの場合、単回投与および多回投与が企図される。一実施形態では、第1日に、トラスツズマブの単回初回投与量を、約4〜5mg/kgの範囲で90分間の静脈内注入として投与し、それに続いて、第8日から約2mg/kg/週を投与する。典型的には、3週が、1サイクルとなる。1週から2〜3週を、サイクル間に設けることができる。別の実施形態では、トラスツズマブを、初回投与量としての8mg/kgおよび維持投与量としての6mg/kgを使用する3週毎の投与スケジュールを用いて送達する。また、トラスツズマブを、6mg/kgの投与量で、3〜4週に1回投与してもよい。さらなる他のトラスツズマブの投与計画を設計および活用してもよい。
【0030】
一実施形態では、患者は、一次療法も、さらに、トラスツズマブのネオ/アジュバント療法に加えて、他のネオ/アジュバント療法も投与されたことがあり得る。一実施形態では、アジュバント療法のうちの1つまたは複数を、トラスツズマブ療法の完了後、この長期アジュバント療法の間に継続することができる。一次療法またはネオ/アジュバント療法のいずれにも、本発明の長期ネラチニブレジメンの開始前まで、ネラチニブ療法が関与しないのが適している。
【0031】
本発明の長期ネラチニブレジメン
一実施形態では、本明細書に記載する長期ネラチニブレジメンを、一次療法の開始の約1年、約2年または約3年後に開始する。この長期ネラチニブアジュバントレジメンを、トラスツズマブを用いるネオ/アジュバント療法の完了後に開始する。を用いるアジュバント療法の完了
【0032】
本明細書に記載する長期レジメンを、少なくとも1回の投与、少なくとも3週サイクル、少なくとも3回の3週サイクル、少なくとも4カ月、少なくとも6カ月、少なくとも8カ月または少なくとも1年のトラスツズマブのネオ/アジュバント療法の完了後に開始することができる。一実施形態では、この長期ネラチニブレジメンを、トラスツズマブ療法の完了の少なくとも約2週間、少なくとも約1カ月、少なくとも約6カ月、少なくとも約9カ月、または約1年〜4年後に開始する。
【0033】
本明細書に記載するように、この長期ネラチニブレジメンを使用して、患者におけるHER−2/neu過剰発現/増幅のある乳癌の再発率を減少させる。これらの再発率は、治療開始の6カ月、1年、3年または5年後の時点で測定することができる。このレジメンは、ネラチニブを、一次療法およびネオ/アジュバント療法の後に、これらの患者に提供するステップを含む。別の実施形態では、この長期ネラチニブを使用して、癌患者の浸潤性疾患のない生存期間、DFS−DCIS、遠隔無病生存期間、および/または遠隔再発までの時間を改善する。
【0034】
本発明のこの長期アジュバント療法は、トラスツズマブ療法の完了後のネラチニブの単回投与のみを含むことができる。しかし、別の実施形態では、この長期ネラチニブレジメンを、1カ月、2カ月、少なくとも6カ月、少なくとも1年、少なくとも18カ月の期間、または必要なもしくは所望のより長い期間にわたり投与する。別の実施形態では、患者を、ネラチニブを用いて、約8カ月〜約5年、約12カ月(1年)〜約3年、または医学の専門家が決定するより長いもしくはより短い期間にわたり治療する。
【0035】
本明細書で使用する場合、ネラチニブを提供すること(providing)に関する用語「提供すること(providing)」は、この化合物もしくは組成物を直接投与すること、または体内で有効量のネラチニブ化合物を形成するプロドラッグ、誘導体もしくは類似体を投与することのいずれかを意味する。
【0036】
本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、用語「個体」、「対象」および「患者」を互換的に使用し、それらの用語は、いずれかの動物を指し、これらとして、哺乳動物、好ましくは、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、非ヒト霊長類およびヒトが挙げられる。望ましくは、用語「個体」、「対象」または「患者」は、ヒトを指す。ほとんどの実施形態では、対象または患者は、治療処置を必要としている。したがって、用語「対象」または「患者」は、本明細書で使用する場合には、請求するレジメンを投与することができる任意の哺乳類の患者または対象を意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」または「薬学的有効量」は、対象に投与して、新生物を治療する場合、対象において病変もしくは腫瘍の増殖を阻害する、緩慢化する、低下させるもしくは排除するのに、または疾患の進行を阻害する、緩慢化するもしくは低下させるのに、および/または対象の無進行生存率を増加させるのに十分な量である。
【0038】
ネラチニブ(または選択されたHKI−272化合物)を、例えば、経口により、約0.01〜100mg/kgの投与量範囲で投与することができる。一実施形態では、ネラチニブを、約0.1〜約90mg/kgの投与量範囲で投与する。別の実施形態では、ネラチニブを、約1〜約80mg/kgの投与量範囲で投与する。さらなる実施形態では、ネラチニブを、約10〜約70mg/kgの投与量範囲で投与する。さらに別の実施形態では、ネラチニブを、約15〜約60mg/kgの投与量範囲で投与する。その上さらなる実施形態では、ネラチニブを、約20〜約240mg/日の投与量範囲、少なくとも約40mg、少なくとも約120mgまたは少なくとも約160mgで、ネラチニブを投与するサイクルの間、何日か投与する。当業者であれば、実験的な活性試験を常法通りに実施して、バイオアッセイにおける化合物の生物活性を決定することができ、したがって、化合物を別の経路により送達する場合の投与すべき投与量を決定することができるであろう。
【0039】
一実施形態では、ネラチニブの経口投与量は、少なくとも約700mg/週である。別の実施形態では、ネラチニブの経口投与量は、約800mg/週〜少なくとも約1700mg/週である。別の実施形態では、ネラチニブの経口投与量は、約840mg/週〜約1680mg/週である。別の実施形態では、ネラチニブの経口投与量は、約900mg/週〜約1600mg/週である。さらなる実施形態では、ネラチニブの経口投与量は、約1000mg/週〜約1500mg/週である。さらに別の実施形態では、ネラチニブの経口投与量は、約1100mg/週〜約1400mg/週である。その上さらなる実施形態では、ネラチニブの経口投与量は、約1200mg/週〜約1300mg/週である。正確な投与量は、投与する医師が、治療しようとする個々の対象に関する経験に基づいて決定する。他の投薬計画および投与の変更形態が予測でき、それらは医師の助言により決定される。
【0040】
ネラチニブの場合、この化合物は単位用量剤型をとることが望ましい。ネラチニブを、約0.01〜100mg/kgの投与量範囲で、または0.1〜10mg/kgの投与量範囲で投与することができる。一実施形態では、ネラチニブを、1日1〜6回、より一般的には、1日1〜4回経口投与する。適切な単位用量剤型は、錠剤、カプセル剤、およびサシェまたはバイアル中の散剤を含む。そのような単位用量剤型は、1日当たり120mg〜300mg、または1日当たり240mgの投与量において、0.1〜300mgのネラチニブ、2〜100mgを含有することができる。あるいは、ネラチニブを、別の適切な経路、例えば、静脈内から投与することもできる。さらに別の実施形態では、ネラチニブを週1回投与する。特定の状況では、ネラチニブの投与を、治療コースの間に、短期間(例えば、1、2または3週間)遅延させるまたは中断することができる。そのような遅延または中断は、治療コースの間に1回または複数回生じ得る。有効量は、当業者であれば分かるであろうし、また、化合物の剤型にも依存するであろう。当業者であれば、実験的な活性試験を常法通りに実施して、バイオアッセイにおける化合物の生物活性を決定することができ、したがって、投与すべき投与量を決定することができるであろう。
【0041】
一実施形態では、本明細書において使用する薬学的担体の適切な例として、これらに限定されないが、賦形剤、希釈剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、および担体として機能することができる他の薬剤が挙げられる。用語「薬学的に許容できる賦形剤」は、医薬組成物を調製するのに有用であり、一般に、安全であり、無毒性であり、望ましい賦形剤を意味し、動物への使用およびヒトへの医薬品としての使用に許容できる賦形剤を含む。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体であってもよく、またはエアロゾル組成物の場合には、気体であってもよい。医薬組成物は、許容できる薬学的手順、例として、Remingtons Pharmaceutical Sciences、17th edition、Alfonoso R.Gennaro編、Mack Publishing Company、Easton、Pa.(1985)に記載されている手順に従って調製する。薬学的に許容できる担体は、製剤中の他の成分に適合し、生物学的に許容できる担体である。錠剤またはカプレット剤を製剤化するのに適している薬学的に許容できる賦形剤または担体として、例えば、不活性な賦形剤、例として、ラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウム、顆粒化剤および崩壊剤、例として、コーンスターチまたはアルギン酸、結合剤、例として、ゼラチンまたはデンプン、滑沢剤、例として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク、保存剤、例として、4−ヒドロキシ安息香酸エチルまたは4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、および抗酸化剤、例として、アスコルビン酸が挙げられる。錠剤またはカプレット剤の製剤を、被覆しなくてもよく、または、消化管内部におけるそれらの製剤の崩壊およびそれに続く活性成分の吸収を改変するため、またはそれらの製剤の安定性および/または外観を改善するためのいずれかの目的で、当技術分野で周知の従来の被覆剤および被覆手順を使用して被覆してもよい。
【0042】
一実施形態では、本発明は、HER−2/neu過剰発現/増幅のある癌を治療するための長期レジメンを提供し、このレジメンは、一連の長期ネラチニブ療法を、HER−2/neu過剰発現/増幅のある癌患者に送達するステップを含む。そのような長期療法は、ネラチニブ療法を、手術療法または/およびアジュバント療法の完了のときに開始することを含む。この長期療法を使用して、浸潤性疾患のない生存期間の改善、ならびに/または全生存期間、遠隔再発までの時間および遠隔無病生存期間の改善をもたらす。
【0043】
本明細書に記載するように、この長期ネラチニブレジメンを、最初の療法の開始の少なくとも1年、少なくとも2年または少なくとも3年後に開始する。一実施形態では、ネラチニブ療法を、一次療法および標準的なネオ/アジュバント療法の完了の少なくとも約2週間後かつ最長でも約4年後に開始する。
【0044】
一実施形態では、選択された併用療法を、この長期ネラチニブレジメンと共に使用することができる。例えば、患者は、骨減少症または骨粗鬆症のために、ビスホスホネートを用いる併用療法をさらに受けていてもよい。別の例では、患者は、併用内分泌療法をさらに受けていてもよい。場合により、そのような併用療法は、非アジュバント療法であってもよいが、どちらかといえば、患者が示し得る他の状態または症状を治療するためのものである。
【0045】
医薬パック/医薬キット
本発明は、1個体の哺乳動物のための一連の抗新生物治療を含有する製品または医薬パックを含み、この製品または医薬パックは、1つ、1〜4つ、または4つ以上の単位のネラチニブを有し、1つ、1〜4つ、または4つ以上の単位の別の活性を示す薬剤も場合により有する1つまたは複数の容器を含む。
【0046】
別の実施形態では、1個体の哺乳動物のための一連の抗新生物治療を含有する医薬パックを含み、これらの医薬パックは、単位投与剤型中に1単位のラパマイシンを有する容器と、1単位のネラチニブを有する容器とを含み、別の活性を示す薬剤を有する容器も場合により含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、投与の準備が整った形態でパック中にある。他の実施形態では、本発明の組成物は、濃縮された形態でパック中にあり、投与のための最終溶液を作製するのに必要な希釈剤も場合により伴う。さらなる他の実施形態では、この製品は、本発明に有用な化合物を固体の形態で含有し、本発明に有用な化合物のための適切な溶媒または担体を有する別個の容器も場合により含有する。
【0048】
さらなる他の実施形態では、上記のパック/キットは、他の構成成分、例えば、この製品を希釈、混合および/または投与するための指示、他の容器、シリンジ、針等を含む。他のそのようなパック/キットの構成成分が、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0049】
以下の実施例により、本発明の組合せの使用を示す。例えば、構成成分の製剤、送達経路および投与における変化形態または改変形態を、当業者に既知の理由により作製することができることが容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0050】
単一薬剤としてのネラチニブが、第2相治験で、転移性のerbB−2陽性乳癌を有する対象において研究されている。トラスツズマブに基づく療法を以前に受けたことがある66人の対象を、A群に登録し、トラスツズマブに以前に曝露されたことが全くない70人の対象を、B群に登録した。客観的な応答率および無進行生存期間の中央値を、抗腫瘍活性の推定値として使用した。
【0051】
独立した放射線学の評価に基づいた予備的なデータによれば、トラスツズマブ治療を以前に受けたことがある対象の間では、全体的な応答率(ORR)は、26%(95%信頼区間(CI))であり、無進行生存(PFS)の中央値は、23週(95%CI)であった。トラスツズマブに以前に曝露されたことがない対象については、ORRは、57%(95%CI)であり、PFSの中央値は、40週(95%CI)であった。A群における抗腫瘍活性は、ネラチニブを単一薬剤としてトラスツズマブ難治性の対象において試験することについての根拠を提供している。
【0052】
A群では、トラスツズマブ曝露期間の中央値は、60週であった。28人(28%)の対象が、トラスツズマブをアジュバント療法またはネオアジュバント療法として投与された。大部分(48%)の対象が、転移性の状況において、1回のトラスツズマブに基づくレジメンを投与され、およそ43%が、転移性疾患のために、第2または第3のトラスツズマブに基づくレジメンを投与された。また、A群の対象は、広範な細胞傷害性の事前治療を受けており、53%の対象が、2〜3回の事前レジメンを投与されており、別の27%は、3回を超える細胞傷害性の事前レジメンを投与されていた。総合すると、これらの治療の特徴は、A群の研究集団が、大量に事前の治療を受けており、難治性である可能性が高いことを説明していた。したがって、難治性集団における26%のORRは、ネラチニブが、erbB−2陽性乳癌については、高い活性を示す薬剤である可能性が高いことを示唆している。
【0053】
ネラチニブと関連がある主要な有害事象は下痢であり、この有害事象は一般に、医薬品、治療の中断または用量の改変により十分に管理可能である。他の一般的な有害事象は、悪心、嘔吐、疲労および食欲不振である。
【0054】
(実施例1)
無作為化、二重盲検、プラセボ対照第3相治験で、ネラチニブを、早期のHER−2/neu過剰発現/増幅のある乳癌を有する女性において、トラスツズマブ後にプラセボと比較する。対象は、事前のアジュバントのトラスツズマブのコースを完了していなければならない。12カ月未満にわたりトラスツズマブが投与されている場合、少なくとも8回の事前用量が投与されていなければならず、その対象は、トラスツズマブを用いるさらなるアジュバント療法の投与には適格でないことまたはそうした投与が不可能であることのいずれかが明記されなければならない。少なくとも8カ月、好ましくは、12カ月にわたるトラスツズマブを含むアジュバント療法のコースをすでに完了した後に、対象は、本明細書に記載するレジメンを用いる治療に適格となる。トラスツズマブの最後の用量は、無作為化の開始から2週を超え、かつ4年未満の間に投与されていなければならない。無作為化を、以下の因子により階層化する:ERおよび/またはPgRに陽性対ERおよびPgRに陰性、結節の状態(0、1〜3、または4以上)、診断から3年未満対3年超、トラスツズマブを化学療法剤と、順次に投与対同時に投与。
【0055】
適格の対象を、以下の2つの群のうちの1つに1:1の比で無作為に割り当てる:ネラチニブ240mgを毎日1年間の群、またはプラセボを毎日1年間の群。研究治療の中断後、対象を、予定数の無浸潤性疾患生存(IDFS)事象に達するまでの疾患の再発および生存期間について、およびその後研究の終点までの生存期間について、追跡し続ける。IDFSの一次有効性エンドポイントおよび事象までの時間の二次エンドポイントを、階層化したログランク検定を使用して解析する。ハザード比および対応する95%信頼区間を、階層化したコックス比例ハザード回帰モデルから誘導する[DR Cox、1972、「Regression Models and Life Tables(with Discussion)」、Journal of the Royal Statistical Society、Series B 34:187〜220]。事象までの時間の中央値および関連の95%信頼区間を、カプラン−マイヤー法を使用して推定する[Kaplan、E.L.およびMeier、Paul、「Nonparametric estimation from incomplete observations」、J.Am.Stat.Assoc.53、457〜481(1958)]。一次有効性解析を、無作為化した対象の全てと定義される、包括解析(intent to treat)集団に対して実施する。有害事象および重大な有害事象を、ネラチニブまたはプラセボを投与した対象の全てと定義される安全性集団について、治療群毎に要約する。また、グレード3以上の下痢の発生率についても要約し、治療群にわたる差を、マンテル−ヘンツェル検定を使用して検定する。[Mantel NおよびHaenszel W.、Statistical aspects of the analysis of data from retrospective studies of disease、J.Nat.Cancer Inst.22:719〜48、1959]。
【0056】
本明細書に引用する刊行物は全て、参照により本明細書に組み込まれる。本発明を特定の実施形態を参照して記載してきたが、本発明の精神から逸脱することなく改変形態を作製することができることが理解されるであろう。そのような改変形態は、添付の特許請求の範囲内に入ることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HER−2/neu過剰発現/増幅のある癌を治療するためのレジメンであって、ネラチニブ療法を、トラスツズマブ療法の完了のときに、HER−2/neu過剰発現/増幅のある癌患者に送達するステップを含むレジメン。
【請求項2】
ネラチニブ療法のコースが、癌患者を、ネラチニブを用いて少なくとも1カ月間治療するステップを含む、請求項1に記載のレジメン。
【請求項3】
ネラチニブ療法のコースが、8カ月〜5年の範囲内である、請求項1に記載のレジメン。
【請求項4】
癌患者が、ネラチニブを用いて少なくとも約12カ月間治療される、請求項2に記載のレジメン。
【請求項5】
ネラチニブ療法が、手術療法および標準的なアジュバント療法の完了から約2週間〜約1年後に開始される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項6】
ネラチニブが、経口送達される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項7】
ネラチニブが、錠剤の形態で送達される、請求項6に記載のレジメン。
【請求項8】
ネラチニブが毎日投与される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項9】
ネラチニブが、120mg〜300mgの投与量で毎日送達される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項10】
ネラチニブが、240mgの投与量で送達される、請求項9に記載のレジメン。
【請求項11】
患者の、浸潤性疾患のない生存期間(IDFS)または非浸潤性乳管癌(DCIS)を含む無病生存期間(DFS)を改善するための、ならびに/または全生存期間、遠隔再発までの時間および/もしくは遠隔無病生存期間の改善のための方法であって、ネラチニブを、トラスツズマブ療法の後に前記患者に送達するステップを含む方法。
【請求項12】
患者が、少なくとも3サイクルのトラスツズマブを投与された、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
患者が、12サイクルのトラスツズマブを投与された、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
患者が、トラスツズマブ、および1つまたは複数の化学療法からなる標準的なアジュバント療法を投与された、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
化学療法に、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、ドセタキセル、カルボプラチン、ラパチニブ、ペルツズマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ−DM−1、またはアントラサイクリンに基づく療法のうちの1つまたは複数が含まれた、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
浸潤性疾患のない生存期間、非浸潤性乳管癌を含む無病生存期間、全生存期間、遠隔再発までの時間および/または遠隔無病生存期間を改善するためのレジメンであって、癌患者を、ネラチニブを用いて少なくとも1カ月〜6カ月間治療するステップを含み、ネラチニブを用いる前記治療が、トラスツズマブを用いるアジュバント療法に続くレジメン。
【請求項17】
患者が、ネラチニブを用いて少なくとも12カ月間治療される、請求項16に記載のレジメン。
【請求項18】
ネラチニブ療法が、トラスツズマブ療法の完了の約2週間〜約4年後に始まる、請求項16に記載のレジメン。
【請求項19】
ネラチニブ療法が、トラスツズマブ療法の完了の約6カ月〜約12カ月後に始まる、請求項16に記載のレジメン。
【請求項20】
患者が、骨減少症または骨粗鬆症のためのビスホスホネート、および内分泌療法のうちの1つまたは複数から選択される併用療法をさらに受けている、請求項16に記載のレジメン。

【公表番号】特表2012−522837(P2012−522837A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504700(P2012−504700)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/028448
【国際公開番号】WO2010/117633
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】