説明

乳癌を治療または予防するためのアクチビンActRIIaアンタゴニストおよび使用

特定の態様において、本発明は、ヒトにおける乳癌を治療または予防するための組成物および方法を提供する。一部分において、本開示は、乳癌または乳癌関連骨量減少を治療または予防するための、アクチビンアンタゴニスト、およびActRIIaアンタゴニストの使用に関する。特に本開示は、アクチビンの阻害剤として作用する可溶形のActRIIaを使用する、乳癌を治療または予防するための方法を提供する。可溶性ActRIIaはアクチビンアンタゴニズム以外の機構によって癌細胞の増殖または生存に影響を与えることができるが、それにもかかわらず望ましい治療剤は、アクチビンアンタゴニズムまたはActRIIaアンタゴニズムまたは両方に基づいて選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へ相互参照
この出願は、2007年2月1日に出願された米国仮出願第60/899,070号および2007年10月25日に出願された米国仮出願第61/000,540号の利益を主張する。上に言及された全ての教示は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
乳癌は西欧諸国において女性の間で最も一般的な型の癌であり、毎年米国では180,000人を超える女性に影響を及ぼしている。この疾患は、分岐管系で構成される乳腺において生じる。それぞれの乳腺、または乳房は葉と呼ばれる15〜20の部分を含み、かつそれぞれの葉は乳頭に至る一連の分岐管を含む。それぞれの管の内側を覆う上皮細胞は乳汁産生を担う。侵襲性乳癌は、一連の次第に異常な増殖性病変を介して末端管/小葉単位の正常上皮から生じると考えられる。腫瘍は転移する能力を獲得した後、乳癌細胞は他の器官に広がり、治療は次第に困難となる。乳癌転移の最も一般的な部位は肺、肝臓、および骨である。骨への転移は重度の痛み、骨量減少、および骨折の高い危険性と一般に関係がある。乳癌の治療において使用される多くの抗エストロゲン療法も、加速する骨量減少と関係がある。
【0003】
乳癌と診断された患者は、原発性腫瘍を治療するための外科手術および/または放射線療法、次に遠隔部位に広がった可能性がある任意の癌細胞を治療するためのアジュバント療法を典型的には受ける。アジュバント療法は細胞毒性化学療法および/または内分泌療法からなる。化学療法は様々な型の悪性腫瘍を治療する際に有効となっているが、多くの抗腫瘍化合物は望ましくない副作用を誘導する。さらに、多くの腫瘍は化学療法および内分泌療法に応答しないか、またはそれらに耐性がある状態になるかのいずれかである。アジュバント療法は乳癌患者間の死亡率を改善しているが、最も一般的な組織病理学的型の侵襲性乳癌を有する患者に関する10年生存率は、依然としてわずか35〜50%である(非特許文献1)。さらに、予後判断基準が乏しいために、局所治療のみによって治療され得る多くの女性が、不必要にアジュバント療法を受けている。
【0004】
結果として、乳癌に対するより効率が良く有効な分子標的が必要とされる。化学療法および内分泌療法より毒性が低いおよび/またはより有効である代替療法は、治療レジメンを改善し生存を高める可能性がある。さらに、侵襲性または転移性乳癌を発症する危険の可能性がある患者用の予防治療剤として使用することができる作用物質は、臨床において有用である可能性がある。したがって、本開示の目的は、乳癌を治療するため、または患者における乳癌の進行を阻害もしくは予防するための、代替的組成物および方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Weigeltら、Nat.Rev.Cancer(2005)5:591〜602頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部分において、本開示は、乳癌または乳癌関連骨量減少を治療または予防するための、アクチビンアンタゴニスト、およびActRIIaアンタゴニストの使用に関する。特に本開示は、アクチビンの阻害剤として作用する可溶形のActRIIaを使用する、乳癌を治療または予防するための方法を提供する。可溶性ActRIIaはアクチビンアンタゴニズム以外の機構によって癌細胞の増殖または生存に影響を与えることができるが、それにもかかわらず望ましい治療剤は、アクチビンアンタゴニズムまたはActRIIaアンタゴニズムまたは両方に基づいて選択することができる。このような作用物質は、まとめてアクチビン−ActRIIaアンタゴニストと呼ばれる。したがって、特定の実施形態において、本開示は、例えばアクチビン結合ActRIIaポリペプチド、抗アクチビン抗体、抗ActRIIa抗体、アクチビンまたはActRIIa標的化小分子およびアプタマー、およびアクチビンおよびActRIIaの発現を低下させる核酸を含めた、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストを使用して、その必要がある患者において乳癌を治療または予防するための方法を提供する。本明細書に参照によって組み込む米国特許出願第11/603,485号中に記載されたように、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストを使用して、骨の成長を促進し骨密度を増大させることが可能である。本明細書に記載するように、このようなアンタゴニストを使用して、乳癌、骨への乳癌転移および乳癌関連骨量減少を治療または予防することもできる。
【0007】
特定の態様において本開示は、アクチビンと結合する可溶性、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドを含むポリペプチドを使用して、乳癌を治療または予防するための方法を提供する。ActRIIaポリペプチドは、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドおよび薬剤として許容される担体を含む医薬製剤として配合することができる。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、1マイクロモル未満または100、10または1ナノモル未満のKでアクチビンと結合することができる。場合によっては、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、アクチビン対GDF11および/またはGDF8と、場合によってはGDF11および/またはGDF8に対してよりアクチビンに対して10分の1、20分の1または50分の1以下のKで選択的に結合する。特定の作用機構に拘泥するものではないが、GDF11/GDF8阻害に優るアクチビン阻害に対するこの選択度が、筋肉に対する絶えず測定可能な影響なしで、骨または腫瘍の生存もしくは増殖に対する影響の原因であることが予想される。多くの実施形態において、癌細胞に対する望ましい効果を得る用量で15%未満、10%未満または5%未満の筋肉の増大を引き起こすActRIIaポリペプチドが選択される。サイズ排除クロマトグラフィーにより評価して、組成物は他のポリペプチド部分に対して少なくとも95%純粋であってよく、場合によっては、組成物は少なくとも98%純粋である。このような製剤中に使用するためのアクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、配列番号2、3、7または12から選択されるアミノ酸配列を有する、または配列番号2、3、7、12または13から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどの、本明細書で開示するポリペプチドのいずれかであってよい。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、配列番号1〜3から選択される配列、またはC末端の10〜15個のアミノ酸(「尾部」)を欠く配列番号2の配列の少なくとも10、20、30、50または90個以上のアミノ酸を含む断片などの、天然ActRIIaポリペプチドの機能的断片を含むことができる。
【0008】
可溶性、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、天然に存在するActRIIaポリペプチドと比較して、アミノ酸配列中(例えば、リガンド結合ドメイン中)に1つまたは複数の改変を含む可能性がある。改変型ActRIIaポリペプチドの例は、本明細書に参照によって組み込むWO2006/012627、59〜60頁中に提供される。アミノ酸配列の改変は、例えば哺乳動物、昆虫または他の真核細胞中で生成されるときポリペプチドのグリコシル化を改変する、または天然に存在するActRIIaポリペプチドと比較してポリペプチドのタンパク質分解切断を改変する可能性がある。
【0009】
アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、1ドメインとしてActRIIaポリペプチド(例えば、ActRIIaのリガンド結合部分)、および例えば改善された薬物動態、より容易な精製、特定組織に対するより高い標的化などの望ましい特性を与える1つまたは複数の追加的なドメインを有する融合タンパク質であってよい。例えば、融合タンパク質のドメインは、in vivo安定性、in vivo半減期、摂取/投与、組織局在または分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質のマルチマー化、および/または精製の1つまたは複数を高めることができる。アクチビン結合ActRIIa融合タンパク質は、改善された薬物動態、改善された可溶性または改善された安定性などの望ましい特性を与える、免疫グロブリンFcドメイン(野生型または突然変異体)または血清アルブミンまたは他のポリペプチド部分を含むことができる。好ましい実施形態では、ActRIIa−Fc融合体は、Fcドメインと細胞外ActRIIaドメインの間に位置する比較的構造化されていないリンカーを含む。この非構造化リンカーは、ActRIIaの細胞外ドメインのC末端(「尾部」)における約15アミノ酸の非構造化領域に相当する可能性があり、あるいはそれは1、2、3、4または5個のアミノ酸の人工配列、二次構造が比較的自由である5〜15、20、30、50個以上のアミノ酸の長さの配列、または両方の混合物であってよい。リンカーはグリシンおよびプロリン残基が豊富である可能性があり、例えばスレオニン/セリンおよびグリシンの単一配列またはスレオニン/セリンおよびグリシンの反復配列(例えば、TGまたはSG一重項または反復)を含む可能性がある。融合タンパク質は、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合体などの精製部分配列を含むことができる。場合によっては、可溶性ActRIIaポリペプチドは、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分と結合したアミノ酸、および有機誘導体化剤と結合したアミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾アミノ酸残基を含む。医薬製剤は、骨障害を治療するために使用される化合物などの、1つまたは複数の追加的化合物を含むこともできる。医薬製剤は、実質的に発熱物質を含まないことが好ましい。一般に、ActRIIaタンパク質が、ActRIIaタンパク質の本来のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞系で発現されて、その結果患者中の好ましくない免疫応答の可能性が低下することが好ましい。ヒトおよびCHO細胞系の使用に成功しており、他の一般的な哺乳動物発現系が有用であり得ることが予想される。さらに、酵母菌および他の細胞系が、グリコシル化を触媒する哺乳動物酵素を発現させるために遺伝的に改変されており、したがってこれらの非哺乳動物細胞中で発現されるタンパク質における厳重に制御された哺乳動物様グリコシル化の発生が可能である。これらの組換え細胞系を使用して、本明細書に記載するタンパク質を発現させることも可能である。
【0010】
本明細書に記載するように、ActRIIa−Fc(ActRIIa部分とFc部分の間に最小リンカーを有する形)で表すActRIIaタンパク質は、アクチビン対GDF8および/またはGDF11との選択的結合、高親和性リガンド結合、および動物モデルにおける2週間を超える血清半減期を含めた望ましい特性を有する。特定の実施形態において本発明は、ActRIIa−Fcポリペプチドおよびこのようなポリペプチドおよび薬剤として許容される賦形剤を含む医薬製剤を使用して、乳癌を治療または予防するための方法を提供する。
【0011】
特定の態様において、本開示は、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドをコードする核酸を使用して、乳癌を治療または予防するための方法を提供する。単離ポリヌクレオチドは、前に記載したような、可溶性、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドのコード配列を含むことができる。例えば、単離核酸は、ActRIIaの細胞外ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン)をコードする配列、および膜貫通ドメインまたは細胞質ドメイン内に位置する、または細胞外ドメインと膜貫通ドメインまたは細胞質ドメインの間に位置する停止コドンではなく、ActRIIaの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインの一部分または全部をコードし得る配列を含むことができる。例えば、単離ポリヌクレオチドは、配列番号4または5などの完全長ActRIIaポリヌクレオチド配列、または部分的に切断された型を含むことができ、前記単離ポリヌクレオチドは、3’末端から少なくとも600ヌクレオチド前に、または他の場合はポリヌクレオチドの翻訳によって完全長ActRIIaの切断部分と場合によっては融合した細胞外ドメインが生じるように位置する転写停止コドンをさらに含む。好ましい核酸配列は配列番号14である。本明細書に記載する方法による有用な核酸は発現用のプロモーターと作動可能に連結することができ、本開示は、このような組換えポリヌクレオチドで形質転換した細胞を提供する。細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞であることが好ましい。
【0012】
本開示は、乳癌の治療または予防に使用することができる、可溶性、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドを作製するための方法も提供する。このような方法は、CHO細胞などの適切な細胞中で、本明細書で開示する核酸(例えば、配列番号4、5または14)のいずれかを発現させることを含むことができる。このような方法は、a)可溶性ActRIIaポリペプチドの発現に適した条件下で細胞を培養することであって、前記細胞を可溶性ActRIIa発現構築体で形質転換すること、およびb)そのように発現した可溶性ActRIIaポリペプチドを回収することを含むことができる。可溶性ActRIIaポリペプチドは、粗製、部分的に精製されたまたは高度に精製された分画として回収することができる。精製は、例えば任意の順序でプロテインAクロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー(例えば、Qセファロース)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(例えば、フェニルセファロース)、サイズ排除クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーの1個、2個または3個以上を含む一連の精製ステップによって実施することができる。
【0013】
特定の態様では、可溶性、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドなどの、本明細書で開示するアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、例えば乳癌の発症の遅延を引き起こす、乳癌の進行を阻害する、腫瘍の大きさを低下させる、腫瘍の増殖を妨げる、骨への転移を含めた転移の発症を遅延させるかまたは転移を妨げるための方法を含めた、対象における乳癌を治療、予防または抑制するための方法中で使用することができる。特定の実施形態において、本開示は、その必要がある患者における乳癌細胞の増殖または生存を低下させるまたは阻害するための方法を提供する。方法は、その必要がある対象に有効量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストを投与することを含むことができる。特定の態様において本開示は、本明細書に記載する乳癌の治療または予防用の医薬品を製造するための、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストの使用を提供する。本開示は、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストと放射線療法、化学療法(例えば、細胞毒性薬)、および/または内分泌療法を含む併用療法にも関する。アンタゴニストはActRIIa−Fc融合タンパク質であってよく、この場合ActRIIa−Fc融合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0014】
さらなる実施形態では、本発明は、乳癌について1つまたは複数の危険因子を有する患者における、乳癌の発症を予防または遅延する方法に関する。幾つかの実施形態では、本発明は、原発性乳房腫瘍または乳房の増殖性病変を有すると既に診断された患者における、転移性疾患の発症を予防または遅延する方法に関する。ヒト患者における乳癌の発症を予防または遅延する方法は、a)配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、b)配列番号3と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびc)配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチドからなる群から選択される有効量のポリペプチドを、その必要があるヒト患者に投与することを含むことができる。
【0015】
本発明の他の実施形態は、乳癌を有するヒト患者におけるアクチビン媒介シグナル伝達を阻害する方法に関する。特定の実施形態において、この方法は、有効量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストをヒト患者に投与することを含む。さらなる実施形態では、アンタゴニストは、a)配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、b)配列番号3と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびc)配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドである。
【0016】
特定の態様において本開示は、癌細胞(例えば、乳癌細胞)の増殖または生存を阻害する作用物質を同定するための方法を提供する。この方法は、a)アクチビンまたはActRIIaポリペプチドのリガンド結合ドメインと結合する試験作用物質を同定すること、およびb)癌細胞の増殖、生存、またはアポトーシスに対する作用物質の効果を評価することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】CHO細胞中で発現されたActRIIa−hFcの精製を示す図である。サイジングカラム(左図)およびクーマシー染色したSDS−PAGE(右図)(左レーン:分子量標準;右レーン:ActRIIa−hFc)により目に見える状態にして、単一の明確なピークとしてタンパク質を精製した。
【図2】BiaCore(商標)アッセイによって測定した、アクチビンおよびGDF−11とのActRIIa−hFcの結合を示す図である。
【図3】ActRIIa−mFc治療が、転移性乳癌のマウスモデル中の転移性病変の形成を大幅に減らすことを示す図である。ルシフェラーゼ発現MDA−MB−231乳癌細胞の心腔内注射後5週間で、マウスを非侵襲的に(麻酔、蛍光イメージング)目に見える状態にした。14匹中12匹の媒体治療マウスは目に見える転移性病変を示し、一方12匹中4匹のみのActRIIa−mFc治療マウスが目に見える病変を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.概要
形質転換増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーは、共通の配列エレメントおよび構造モチーフを共有する様々な増殖因子を含む。これらのタンパク質は、脊椎動物と無脊椎動物の両方における多数の様々な細胞型に対して、生物学的効果を発揮することが知られている。このスーパーファミリーの幾つかのメンバーは、胚発生中のパターン形成および組織特異化において重要な機能を果たし、脂質生成、筋生成、軟骨生成、心臓生成、造血、ニューロン生成、および上皮細胞分化を含めた様々な分化過程に影響を与えることができる。このファミリーは、2つの一般的分科:BMP/GDFとTGF−β/アクチビン分科に分けられ、そのメンバーは多様で、しばしば相補的な効果を有する。TGF−βファミリーのメンバーの活性を操作することによって、生物中で有意な生理的変化を引き起こすことがしばしば可能である。例えば、PiedmonteseおよびBelgian Blueウシ品種は、筋肉量の顕著な増大を引き起こすGDF8(ミオスタチンとも呼ばれる)遺伝子において機能喪失型突然変異を有する。Grobetら、Nat Genet.1997年、17(1):71〜4頁。さらに、ヒト中では、GDF8の不活性対立遺伝子は筋肉量の増大、および報告によれば、桁外れの強さと関係がある。Schuelkeら、N Engl J Med2004年、350:2682〜8頁。
【0019】
アクチビンは、TGF−βスーパーファミリーに属する二量体ポリペプチド増殖因子である。2つの密接に関連したβサブユニットのホモ/ヘテロ二量体である(それぞれββ、ββ、およびββ)、3つの主なアクチビンの形(A、B、およびAB)が存在する。ヒトゲノムはアクチビンCおよびアクチビンEもコードしており、これらは肝臓中で主に発現され、βまたはβを含むヘテロ二量体形も知られている。TGF−βスーパーファミリー中では、アクチビンは、卵巣および胎盤細胞中のホルモン生成を刺激し、神経細胞の生存を支援し、細胞型に応じて細胞周期の進行に正または負の影響を与える、かつ少なくとも両生類胚において中胚葉分化を誘導することができる、特有かつ多機能の因子である(DePaoloら、1991年、Proc Soc Ep Biol Med.198:500〜512頁;Dysonら、1997年、Curr Biol.7:81〜84頁;Woodruff、1998年、Biochem Pharmacol.55:953〜963頁)。さらに、アクチビンBはマウス中の乳房上皮細胞分化の制御に関与することが示されている(Robinson and Hennighausen、1997年Development124:2701〜2708頁)。幾つかの組織中では、アクチビンシグナル伝達は、その関連ヘテロ二量体、インヒビンによってアンタゴナイズされる。例えば、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出中に、アクチビンはFSHの分泌および合成を促進し、一方インヒビンはFSHの分泌および合成を妨げる。アクチビン生物活性を制御することができるおよび/またはアクチビンと結合することができる他のタンパク質には、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)およびα−マクログロブリンがある。
【0020】
TGF−βシグナルは、リガンド刺激によって下流Smadタンパク質をリン酸化および活性化する、I型およびII型セリン/スレオニンキナーゼ受容体の異種複合体によって媒介される(Massague、2000年、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1:169〜178頁)。これらのI型およびII型受容体は、システイン多量領域を有するリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予想されるセリン/スレオニン特異性を有する細胞質ドメインで構成される膜貫通タンパク質である。I型受容体はシグナル伝達に必要不可欠であり、かつII型受容体はリガンド結合およびI型受容体の発現に必要とされる。I型およびII型アクチビン受容体はリガンド結合後に安定した複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化をもたらす。
【0021】
2つの関連II型受容体、ActRIIaおよびActRIIbは、アクチビンに対するII型受容体として同定されている(Mathews and Vale、1991年、Cell65:973〜982頁;Attisanoら、1992年、Cell68:97〜108頁)。アクチビン以外に、ActRIIaおよびActRIIbは、BMP7、Nodal、GDF8、およびGDF11を含めた幾つかの他のTGF−βファミリータンパク質と生化学的に相互作用することができる(Yamashitaら、1995年、J.Cell Biol.130:217〜226頁;Lee and McPherron、2001年、Proc.Natl.Acad.Sci.98:9306〜9311頁;Yeo and Whitman、2001年、Mol.Cell7:949〜957頁;Ohら、2002年、Genes Dev.16:2749〜54頁)。ALK4はアクチビンに対する、特にアクチビンAに対する主なI型受容体であり、かつALK−7もアクチビンに対する、特にアクチビンBに対する受容体として働くことができる。
【0022】
本明細書に記載するように、GDF8またはGDF11などの他のTGF−βファミリーのメンバーとは反対に、アクチビンAとの結合において実質的な優先を示す可溶性ActRIIaポリペプチド(sActRIIa)を使用して、癌、特に乳癌を治療または予防することができる。任意の特定の機構に拘泥するものではないが、これらの試験中で使用した特定のsActRIIa構築体によって示される非常に強いアクチビン結合(ピコモルの解離定数)を考慮すると、sActRIIaの効果はアクチビンアンタゴニストの効果によって主に引き起こされることが予想される。アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、例えばアクチビン結合可溶性ActRIIaポリペプチド、アクチビン(特にアクチビンAまたはBサブユニット、βAまたはβBとも呼ばれる)と結合しActRIIa結合を妨害する抗体、ActRIIaと結合しアクチビン結合を妨害する抗体、アクチビンまたはActRIIa結合に関して選択される非抗体タンパク質(例えばこれらの設計および選択に関するそのようなタンパク質および方法の、WO/2002/088171、WO/2006/055689、およびWO/2002/032925を例えば参照されたい)、Fcドメインに固定されることが多いアクチビンまたはActRIIa結合に関して選択されるランダムペプチドを含む。アクチビンまたはActRIIa結合活性を有する2つの異なるタンパク質(または他の部分)、特にそれぞれI型(例えば、可溶性I型アクチビン受容体)およびII型(例えば、可溶性II型アクチビン受容体)結合部位を遮断するアクチビン結合物質を一緒に連結させて、二官能性結合分子を作製することが可能である。アクチビン−ActRIIaシグナル伝達軸を阻害する核酸アプタマー、小分子および他の作用物質も使用することができる。様々なタンパク質がアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト活性を有し、これらのタンパク質には、全ての組織中でアクチビンを例外なくアンタゴナイズするわけではないがインヒビン(すなわち、インヒビンαサブユニット)、フォリスタチン(例えば、フォリスタチン−288およびフォリスタチン−315)、FSRP、アクチビンC、α(2)−マクログロブリン、およびM108A(位置108におけるメチオニンからアラニンへの変化)突然変異アクチビンAが挙げられる。一般に、代替形のアクチビン、特にI型受容体結合ドメインにおける改変を有するアクチビンはII型受容体と結合することができ、活性のある三元複合体を形成することができず、したがってアンタゴニストとして作用する。追加的に、アクチビンA、B、CまたはE、または特にActRIIaの発現を阻害するアンチセンス分子、siRNAsまたはリボザイムなどの核酸を、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストとして使用することができる。使用するアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、アクチビン媒介シグナル伝達対TGF−βファミリーの他のメンバーの阻害に対する、特にGDF8およびGDF11に関する選択性を示す可能性がある。可溶性ActRIIbタンパク質はアクチビンと結合するが、しかしながら、野生型タンパク質はアクチビン対GDF8/11との結合において有意な選択性を示さない。それにもかかわらず、異なる結合特性を有する、このようなActRIIbポリペプチド、および改変型のActRIIb(例えば、本明細書に参照によって組み込む、WO2006/012627、55〜59頁を参照されたい)は、癌細胞に対する所望の効果を得ることができる。天然または改変型のActRIIbに、第2のアクチビン選択的結合物質とのカップリングによって、アクチビンに対する追加的特異性を与えることができる。
【0023】
本明細書中で使用する用語は一般に、本発明の文脈内で、かつ各々の用語を使用する具体的な文脈中で、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本発明の組成物および方法ならびにそれらの作製法および使用法を記載する際に、実践者に追加的ガイダンスを提供するために、本明細書中の以下または他の場所で特定の用語を論じる。用語の任意の使用の範囲または意味は、その用語を使用する具体的文脈から明らかとなる。
【0024】
「約」および「およそ」は、測定の性質または精度を考慮して、測定した量に関する許容可能な誤差度を一般的に意味するものとする。典型的には、代表的な誤差度は、所与の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、およびより好ましくは5%以内である。
【0025】
あるいは、特に生物系では、用語「約」および「およそ」は、所与の値の一桁以内、好ましくは5倍以内およびより好ましくは2倍以内の値を意味することができる。本明細書で与える数量は他に言及しない限り近似値であり、明確に言及しないときは、用語「約」または「およそ」は推測することができることを意味する。
【0026】
本発明の方法は、野生型配列と1つまたは複数の突然変異体(配列変異体)の比較を含めて、配列を互いに比較するステップを含むことができる。このような比較は、例えば当技術分野でよく知られている配列アラインメントプログラムおよび/またはアルゴリズム(例えば、数例挙げると、BLAST、FASTAおよびMEGALIGN)を使用する、ポリマー配列のアラインメントを典型的に含む。当業者は、このようなアラインメントでは、突然変異が残基の挿入または欠失を含む場合、配列アラインメントは、挿入または欠失残基を含まないポリマー配列中に、「ギャップ」(典型的にはダッシュ記号、または「A」によって表される)を導入し得ることは容易に理解することができる。
【0027】
「相同的」は、全てのその文法形およびスペル変形において、同種の生物におけるスーパーファミリー由来のタンパク質、および異種の生物由来の相同的タンパク質を含めた、「共通の進化起源」を有する2タンパク質間の関係を指す。このようなタンパク質(およびそれらのコード核酸)は、パーセント同一性の観点であれ、または特定の残基もしくはモチーフおよび保存位置の存在によるものであれ、それらの配列類似性によって反映される配列相同性を有する。
【0028】
用語「配列類似性」は、全てのその文法形において、共通の進化起源を共有する可能性があるかまたは無い核酸またはアミノ酸配列間の、同一性または対応の程度を指す。
【0029】
しかしながら、一般的な使用および本出願において、用語「相同的」は、「非常に」などの副詞で修飾するとき、配列類似性を指すことができ、共通の進化起源と関係がある可能性があるかまたは無い。
【0030】
用語「乳癌」は、例えば良性病変、前癌病変および悪性病変、固形腫瘍、および転移性疾患(局所に転移、例えばステージIII、およびより広く転移、例えばステージIVの両方)を含めた、乳房の任意の増殖性病変または増殖異常を指す。乳癌には、腺癌、小葉(小細胞)癌、乳管内癌、髄乳癌、粘液乳癌、管状乳癌、乳頭乳癌、ページェット病、および炎症性乳癌があるが、これらだけには限られない。乳癌は、乳房中の転移性病変由来の、肺、肝臓、および骨などの他の器官における疾患も指す。乳癌は、ホルモン応答性の癌とホルモン非依存性の癌の両方も包含する。一般に、ホルモン非依存性の乳癌はエストロゲンおよび/またはプロゲステロン受容体の不在または低レベルによって特徴付けられ、かつこれらの癌は典型的には、抗ホルモン(特に抗エストロゲン)療法による治療に対して抵抗性である。乳癌はHer2発現に基づいてさらに分類され、Her2腫瘍はHer2腫瘍より悪い予後を有する。
【0031】
2.ActRIIaポリペプチド
特定の態様において本発明は、ActRIIaポリペプチドを使用して乳癌を治療または予防するための方法に関する。本明細書で使用する用語「ActRIIa」は、任意の種由来のアクチビン受容体IIa型(ActRIIa)タンパク質、および突然変異誘発または他の修飾によってこのようなActRIIaタンパク質から誘導される変異体のファミリーを指す。本明細書におけるActRIIaに対する言及は、現在同定されている形のいずれか1つに対する言及であると理解されたい。ActRIIaファミリーのメンバーは一般に、システイン多量領域を有するリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予想されるセリン/スレオニンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインで構成される膜貫通タンパク質である。
【0032】
用語「ActRIIaポリペプチド」は、有用な活性を保持する、ActRIIaファミリーのメンバーの任意の天然に存在するポリペプチドを含むポリペプチド、およびそれらの任意の変異体(突然変異体、断片、融合体、およびペプチド模倣形を含む)を含む。例えば、WO/2006/012627を参照されたい。例えば、ActRIIaポリペプチドは、ActRIIaポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一であり、場合によっては少なくとも85%、90%、95%、97%、99%以上同一である配列を有する、任意の知られているActRIIaの配列由来のポリペプチドを含む。例えば、本発明のActRIIa_ポリペプチドは、ActRIIaタンパク質および/またはアクチビンと結合し、その機能を阻害することができる。ActRIIaポリペプチドは、in vivoでの癌細胞の増殖または生存を阻害する際の活性に関して選択することができる。ActRIIaポリペプチドの例には、ヒトActRIIa前駆体ポリペプチド(配列番号1)および可溶性ヒトActRIIaポリペプチド(例えば、配列番号2、3、7および12)がある。
【0033】
ヒトActRIIa前駆体タンパク質の配列は以下の通りである:
【0034】
【化1】

シグナルペプチドには1本の下線が引かれており、細胞外ドメインは太字であり、考えられるN結合グリコシル化部位には2本の下線が引かれている。
【0035】
ヒトActRIIa可溶性(細胞外)、プロセシングポリペプチドの配列は以下の通りである:
【0036】
【化2】

「ILG...」で始まるN末端配列は実験によって決定したものであり、かつ文献中に一般的に示される「AIL...」のN末端配列とは異なることは留意すべきである。細胞外ドメインのC末端「尾部」には下線が引かれている。欠失した「尾部」を有する配列(Δ15配列)は以下の通りである:
【0037】
【化3】

ヒトActRIIa前駆体タンパク質をコードする核酸配列は以下の通りである(Genbank entry NM_001616のヌクレオチド164〜1705):
【0038】
【化4】

ヒトActRIIa可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列は以下の通りである:
【0039】
【化5】

具体的な実施形態では、本発明は、可溶性ActRIIaポリペプチドを使用して乳癌を治療または予防するための方法に関する。本明細書に記載する用語「可溶性ActRIIaポリペプチド」は、ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドを一般に指す。本明細書で使用する用語「可溶性ActRIIaポリペプチド」は、ActRIIaタンパク質およびそれらの任意の変異体(突然変異体、断片およびペプチド模倣形を含む)の任意の天然に存在する細胞外ドメインを含む。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、例えばアクチビンAA、AB、BB、またはCまたはEサブユニットを含む形を含めた、アクチビンと結合する能力を保持しているポリペプチドである。場合によっては、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、1nM以下の解離定数でアクチビンAAと結合し得る。ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインはアクチビンと結合し、かつ一般に可溶性であり、したがって可溶性、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドと名付けることができる。可溶性、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドの例には、配列番号2、3、7、12および13で例示する可溶性ポリペプチドがある。配列番号7はActRIIa−hFcと呼ばれ、かつ実施例中にさらに記載する。可溶性、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドの他の例は、ActRIIaタンパク質の細胞外ドメイン以外に、シグナル配列、例えばミツバチメリチンリーダー配列(配列番号8)、組織プラスミノゲンアクチベータ(TPA)リーダー(配列番号9)または天然ActRIIaリーダー(配列番号10)を含む。配列番号13で例示するActRIIa−hFcポリペプチドは、tPAリーダーを使用する。
【0040】
ActRIIaポリペプチドの機能活性断片は、ActRIIaポリペプチドをコードする核酸の対応する断片から組換えにより生じたポリペプチドを、スクリーニングすることによって得ることができる。さらに、従来のMerrifield固相f−Mocまたはt−Boc化学合成などの当技術分野で知られている技法を使用して、断片を化学的に合成することができる。断片は(組換えによりまたは化学合成によって)生成することができ、これらを試験して、ActRIIaタンパク質またはアクチビンによって媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(阻害剤)として機能することができるペプチジル断片を同定することができる。
【0041】
ActRIIaポリペプチドの機能活性変異体は、対応するActRIIaポリペプチドをコードする突然変異誘発核酸から組換えにより生じた修飾ポリペプチドのライブラリーを、スクリーニングすることによって得ることができる。変異体を生成させ、これらを試験して、ActRIIaタンパク質またはアクチビンによって媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(阻害剤)として機能することができる変異体を同定することができる。特定の実施形態では、ActRIIaポリペプチドの機能変異体は、配列番号2または3から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の場合では、機能変異体は、配列番号2または3から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0042】
治療有効性、または安定性(例えば、ex vivoでの貯蔵寿命およびin vivoでのタンパク質分解に対する耐性)の向上などの目的でActRIIaポリペプチドの構造を修飾することによって、機能変異体を生成することができる。このような修飾ActRIIaポリペプチドは、アクチビン結合を保持するために選択するとき、天然に存在するActRIIaポリペプチドの機能相当物であると考えられる。修飾ActRIIaポリペプチドは、例えば、アミノ酸の置換、欠失、または付加によって生成することも可能である。例えば、ロイシンとイソロイシンまたはバリン、アスパラギン酸とグルタミン酸、スレオニンとセリンの単離置換、または1つのアミノ酸と構造上関連があるアミノ酸の同様の置換(例えば、保存的突然変異)は、得られる分子の生物活性に対して重大な影響を有さないはずであると、予想することは妥当である。保存的置換は、その側鎖に関連があるアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。ActRIIaポリペプチドのアミノ酸配列の変化が機能相同体をもたらすかどうかは、野生型ActRIIaポリペプチドと同様に細胞中において応答を生み出す、変異体ActRIIaポリペプチドの能力を評価することによって容易に決定することができる。
【0043】
特定の実施形態において本発明は、ポリペプチドのグリコシル化を改変する特異的突然変異を有するActRIIaポリペプチドを使用して、乳癌を治療または予防するための方法を企図する。このような突然変異を選択して、O結合型またはN結合型グリコシル化部位などの、1つまたは複数のグリコシル化部位を導入または排除することができる。アスパラギン結合型グリコシル化認識部位は、適切な細胞グリコシル化酵素によって特異的に認識される、トリペプチド配列、アスパラギン−X−スレオニンまたはアスパラギン−X−セリン(この場合「X」は任意のアミノ酸である)を一般に含む。(O結合型グリコシル化部位に関しては)野生型ActRIIaポリペプチドの配列への1つまたは複数のセリンまたはスレオニン残基の付加、またはそれらによる置換によって改変を行うこともできる。グリコシル化認識部位の第1または第3アミノ酸位置の一方または両方における様々なアミノ酸置換または欠失(および/または第2位置におけるアミノ酸欠失)は、修飾型トリペプチド配列において非グリコシル化をもたらす。ActRIIaポリペプチドにおける炭水化物部分の数を増大させる他の手段は、ActRIIaポリペプチドとグリコシドの化学または酵素カップリングである。使用するカップリング形式に応じて、糖(複数可)を(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システイン基などの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリン基などの遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンの残基などの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基と結合させることが可能である。ActRIIaポリペプチドに存在する1つまたは複数の炭水化物部分の除去は、化学的および/または酵素によって実施することができる。化学的脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸、または同等化合物へのActRIIaポリペプチドの露出を含み得る。この処理は、アミノ酸配列を完全な状態に保ちながら、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外の大部分または全ての糖の切断をもたらす。ActRIIaポリペプチドにおける炭水化物部分の酵素切断は、Thotakuraら、(1987年)Meth.Enzymol.138:350によって記載されたのと同様の様々なエンドおよびエキソグリコシダーゼの使用によって実施することができる。ActRIIaポリペプチドの配列は、必要に応じて、使用する発現系の型に応じて調節することができる、何故なら哺乳動物、酵母菌、昆虫および植物細胞はいずれも、ペプチドのアミノ酸配列によって影響を受ける可能性がある、異なるグリコシル化パターンを導入することができるからである。一般に、ヒトにおいて使用するためのActRIIaタンパク質は、HEK293またはCHO細胞系などの、適切なグリコシル化をもたらす哺乳動物細胞系中で発現させることが可能であるが、他の哺乳動物発現細胞系も有用であると予想される。
【0044】
本開示は、突然変異体、特にActRIIaポリペプチドのコンビナトリアル突然変異体のセット、および切断型突然変異体を作製する方法をさらに企図し、コンビナトリアル突然変異体のプールは機能変異体配列を同定するのに特に有用である。このようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えばアクチビンまたは他のリガンドと結合するActRIIaポリペプチド変異体を生成することであってよい。様々なスクリーニングアッセイを以下に与え、かつこのようなアッセイを使用して変異体を評価することができる。例えば、ActRIIaポリペプチド変異体を、ActRIIaリガンドと結合する能力に関してスクリーニングして、ActRIIaリガンドとActRIIaポリペプチドの結合を妨げる、またはActRIIaリガンドによって引き起こされるシグナル伝達に干渉することができる。
【0045】
ActRIIaポリペプチドまたはその変異体の活性は、細胞ベースまたはin vivoアッセイにおいて試験することもできる。例えば、癌細胞の増殖または生存に対するActRIIaポリペプチド変異体の効果を評価することができる。癌細胞は、固形腫瘍を構成する生体中の細胞、または腫瘍に由来し生体内の他の部位に広がっている細胞(すなわち、転移性細胞)を指すことができる。追加的に、癌細胞は、腫瘍または癌増殖から入手または誘導しin vitroで培養した細胞を指すことができる。癌細胞は、例えばin vitroで培養することができ、または動物異種移植試験中で使用することができる細胞系も包含する。癌細胞は、転移後の細胞分裂によって転移性細胞に由来する細胞も指す。細胞はホルモン応答性(例えば、エストロゲン受容体陽性)またはホルモン非依存性(例えば、エストロゲン受容体陰性)であってよい。癌細胞の増殖または生存は、1つまたは複数の組換えActRIIaリガンドタンパク質(例えば、アクチビン)の存在下で評価することができ、かつ細胞をトランスフェクトして、ActRIIaポリペプチドおよび/またはその変異体、および場合によっては、ActRIIaリガンドを生成することができる。同様に、ActRIIaポリペプチドはマウスまたは他の動物に投与することができ、対照と比較した腫瘍の大きさ、または細胞増殖率もしくはアポトーシス率などの1つまたは複数の測定値を評価することができる。
【0046】
天然に存在するActRIIaポリペプチドと比較して選択的または一般に高い効力を有する、コンビナトリアル由来の変異体を生成することができる。同様に、突然変異誘発によって、対応する野生型ActRIIaポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有する変異体を生成することができる。例えば、改変型タンパク質は、タンパク質分解、または天然ActRIIaポリペプチドの破壊、もしくは他の場合は不活性化をもたらす他の細胞過程に対してより安定な状態、または安定性のより低い状態にすることができる。このような変異体、およびそれらをコードする遺伝子を使用して、ActRIIaポリペプチドの半減期を調節することによりActRIIaポリペプチドのレベルを改変することができる。例えば、短い半減期はより一時的な生物学的効果をもたらす可能性があり、かつ誘導的発現系の一部分であるとき、細胞内の組換えActRIIaポリペプチドのレベルの厳格な制御を可能にすることができる。Fc融合タンパク質において、突然変異をリンカー(存在する場合)および/またはFc部分に施して、タンパク質の半減期を改変することができる。
【0047】
考えられるActRIIaポリペプチド配列の少なくとも一部分をそれぞれが含む複数のポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーによって、コンビナトリアルライブラリーを作製することができる。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物は、縮重セットの考えられるActRIIaポリペプチドヌクレオチド配列が個別のポリペプチドとして、または代替的に(例えば、ファージディスプレイ用の)1セットの大きな融合タンパク質として発現可能であるように、遺伝子配列に酵素によって連結させることが可能である。
【0048】
それによって考えられる相同体のライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から作製することができる、多くの方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成は自動DNA合成装置において実施することができ、次いで合成遺伝子を発現に適したベクターに連結させることが可能である。縮重オリゴヌクレオチドの合成は当技術分野でよく知られている(例えば、Narang, SA(1983年)Tetrahedron39:3;Itakuraら、(1981年)Recombinant DNA、Proc.3rd Cleveland Sympos.Macromolecules、ed.AG Walton、Amsterdam:Elsevier273〜289頁;Itakuraら、(1984年)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakuraら、(1984年)Science198:1056;Ikeら、(1983年)Nucleic Acid Res.11:477を参照されたい)。このような技法は他のタンパク質の定方向進化において使用されている(例えば、Scottら、(1990年)Science249:386〜390頁;Robertsら、(1992年)PNAS USA89:2429〜2433頁;Devlinら、(1990年)Science249:404〜406頁;Cwirlaら、(1990年)PNAS USA87:6378〜6382頁;および米国特許第5,223,409号、同第5,198,346号、および同第5,096,815号を参照されたい)。
【0049】
あるいは、他の型の突然変異誘発を使用して、コンビナトリアルライブラリーを作製することができる。例えば、ActRIIaポリペプチド変異体を作製し、例えばアラニンスキャニング突然変異誘発などを使用するスクリーニングによって(Rufら、(1994年)Biochemistry33:1565〜1572頁;Wangら、(1994年)J.Biol.Chem.269:3095〜3099頁;Balintら、(1993年)Gene137:109〜118頁;Grodbergら、(1993年)Eur.J.Biochem.218:597〜601頁;Nagashimaら、(1993年)J.Biol.Chem.268:2888〜2892頁;Lowmanら、(1991年)Biochemistry30:10832〜10838頁;およびCunninghamら、(1989年)Science244:1081〜1085頁)、リンカースキャニング突然変異誘発によって(Gustinら、(1993年)Virology193:653〜660頁;Brownら、(1992年)Mol.Cell Biol.12:2644〜2652;McKnightら、(1982年)Science232:316)、飽和突然変異誘発によって(Meyersら、(1986年)Science232:613)、PCR突然変異誘発によって(Leungら、(1989年)Method Cell Mol Biol1:11〜19頁)、または化学的突然変異誘発などを含めたランダム突然変異誘発によって(Millerら、(1992年)A Short Course in Bacterial Genetics、CSHL Press、Cold Spring Harbor、NY;およびGreenerら、(1994年)Strategies in Mol Biol7:32〜34頁)、ライブラリーから単離することができる。リンカースキャニング突然変異誘発は、特にコンビナトリアル設定では、切断(生物活性)型のActRIIaポリペプチドを同定するのに魅力的な方法である。
【0050】
点突然変異および切断によって作製したコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、かつさらに言えば、cDNAライブラリーを特定の特性を有する遺伝子産物に関してスクリーニングするための、広範囲の技法が当技術分野で知られている。このような技法は一般に、ActRIIaポリペプチドのコンビナトリアル突然変異誘発によって作製した遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適用することができるはずである。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために最も広く使用されている技法は、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングすること、得られたベクターのライブラリーで適切な細胞を形質転換すること、および所望の活性の検出がその産物を検出した遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を助長する条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させることを典型的に含む。好ましいアッセイには、アクチビン結合アッセイおよびアクチビン媒介細胞シグナル伝達アッセイがある。
【0051】
特定の実施形態では、本明細書に記載する方法による有用なActRIIaポリペプチドは、ActRIIaポリペプチドに本来存在する任意の修飾に加えて、翻訳後修飾をさらに含むことができる。このような修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化があるが、これらだけには限られない。結果として、修飾ActRIIaポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸などの非アミノ酸エレメントを含み得る。ActRIIaポリペプチドの機能に対するこのような非アミノ酸エレメントの影響は、他のActRIIaポリペプチド変異体に関して本明細書で記載するように試験することができる。新生型のActRIIaポリペプチドの切断によって細胞中でActRIIaポリペプチドが生成されるとき、翻訳後プロセシングは、タンパク質の正確なフォールディングおよび/または機能にも重要である可能性がある。異なる細胞(CHO、HeLa、MDCK、WI38、NIH−3T3またはHEK293など)は、このような翻訳後活性に関して特異的な細胞機構および特徴的な機構を有し、これらを選択してActRIIaポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを確実にすることができる。
【0052】
特定の態様では、ActRIIaポリペプチドの機能変異体または修飾型は、ActRIIaポリペプチド配列の少なくとも一部分および1つまたは複数の融合ドメインを有する融合タンパク質を含む。このような融合ドメインのよく知られている例には、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンがあるが、これらだけには限られない。融合ドメインは所望の特性を与えるように選択することができる。例えば、幾つかの融合ドメインは、親和性クロマトグラフィーにより融合タンパク質を単離するのに特に有用である。親和性による精製の目的で、グルタチオン−、アミラーゼ−、およびニッケル−またはコバルト−結合樹脂などの、親和性クロマトグラフィーの関連マトリクスを使用する。多くのこのようなマトリクスは、Pharmacia GST精製系および(HIS)融合パートナーと共に有用なQIAexpress(商標)系(Qiagen)などの、「キット」の形で入手可能である。他の例として、ActRIIaポリペプチドの検出を容易にするために、融合ドメインを選択することができる。このような検出ドメインの例には、通常はそれに対する特異的抗体が利用可能な短いペプチド配列である、様々な蛍光タンパク質(例えばGFP)および「エピトープタグ」がある。それに対する特異的モノクローナル抗体が容易に利用可能である、よく知られているエピトープタグには、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、およびc−mycタグがある。幾つかの場合、融合ドメインは因子Xaまたはトロンビンなどのプロテアーゼ切断部位を有し、これは関連プロテアーゼが融合タンパク質を部分的に消化し、それによってそこからの組換えタンパク質の遊離を可能にする。次いで遊離したタンパク質を、後のクロマトグラフィー分離によって融合ドメインから単離することができる。特定の好ましい実施形態では、in vivoでActRIIaポリペプチドを安定化させるドメイン(「安定剤」ドメイン)と、ActRIIaポリペプチドを融合させる。「安定化」によって、これが低下した破壊、低下した腎クリアランス、または他の薬物動態作用によるものであるかどうかとは無関係に、血中半減期を増大させる任意の事象を意味する。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範囲のタンパク質において望ましい薬物動態特性を与えることが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンとの融合は望ましい特性を与える可能性がある。選択することができる他の型の融合ドメインには、多量体化(例えば、2量体化、4量体化)ドメインおよび(追加的生物機能を与える)機能的ドメインがある。
【0053】
具体的例として、本発明は、Fcドメイン(例えば、配列番号6)と融合したActRIIaの可溶性細胞外ドメインを含む融合タンパク質を使用して、乳癌を治療または予防するための方法を提供する。
【0054】
【化6】

場合によっては、Fcドメインは、Asp−265、リシン322、およびAsn−434などの残基において1つまたは複数の突然変異を有する。特定の場合では、1つまたは複数のこれらの突然変異(例えば、Asp−265突然変異)を有する突然変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較してFcγ受容体と結合する低い能力を有する。他の例では、1つまたは複数のこれらの突然変異(例えば、Asn−434突然変異)を有する突然変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較してMHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)と結合する高い能力を有する。得られる「Fcドメイン」がジスルフィド結合を介して共有結合により二量体化する能力を保持し、比較的安定した、可溶性タンパク質を形成するという条件で、Fcドメインは免疫グロブリンの定常領域の小部分または大部分を含むことができることは、一般に理解されている。
【0055】
融合タンパク質の異なるエレメントは、所望の機能と一致する任意の形式で配置することができることは理解されている。例えば、ActRIIaポリペプチドは非相同ドメインに対するC末端に置くことができ、または代替的に、非相同ドメインをActRIIaポリペプチドに対するC末端に置くことができる。ActRIIaポリペプチドドメインと非相同ドメインは融合タンパク質中で隣接している必要はなく、かつ追加的ドメインまたはアミノ酸配列が、いずれかのドメインに対するC末端もしくはN末端またはドメイン間に含まれる可能性がある。
【0056】
特定の実施形態では、本明細書に記載する方法による有用なActRIIaポリペプチドは、ActRIIaポリペプチドを安定化することができる1つまたは複数の修飾を含むことができる。例えば、このような修飾はActRIIaポリペプチドのin vitro半減期を増大させ、ActRIIaポリペプチドの循環半減期を増大させ、またはActRIIaポリペプチドのタンパク質分解を低下させる。このような安定化修飾には、融合タンパク質(例えば、ActRIIaポリペプチドおよび安定剤ドメインを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部位の修飾(例えば、ActRIIaポリペプチドへのグリコシル化部位の付加を含む)、および炭水化物部分の修飾(例えば、ActRIIaポリペプチドからの炭水化物部分の除去を含む)があるが、これらだけには限られない。本明細書で使用する用語「安定剤ドメイン」は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えば、Fc)を指すだけでなく、炭水化物部分などの非タンパク質修飾、またはポリエチレングリコールなどの非タンパク質部分も含む。
【0057】
特定の実施形態では、本明細書に記載する方法は、他のタンパク質から単離した、または他の場合は他のタンパク質を実質的に含まない、単離および/または精製型のActRIIaポリペプチドを使用する。ActRIIaポリペプチドは一般に、組換え核酸からの発現によって生成し得る。
【0058】
3.ActRIIaポリペプチドをコードする核酸
本明細書で提供するのは、本明細書で開示する断片、機能変異体および融合タンパク質を含めた、任意のActRIIaポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIaポリペプチド)をコードする単離および/または組換え核酸である。例えば、配列番号4は天然に存在するヒトActRIIa前駆体ポリペプチドをコードし、一方配列番号5はActRIIaのプロセシング細胞外ドメインをコードする。対象の核酸は一本鎖または二本鎖であってよい。このような核酸はDNAまたはRNA分子であってよい。これらの核酸は、例えばActRIIaポリペプチドを作製するための方法中で、または(例えば、遺伝子療法手法中で)直接的治療剤として使用することができる。
【0059】
特定の態様では、ActRIIaポリペプチドをコードする対象の核酸は、配列番号4または5の変異体である核酸を含むとさらに理解される。対立遺伝子変異体などの変異体ヌクレオチド配列は、1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加または欠失によって異なる配列を含む。
【0060】
特定の実施形態では、本発明は、配列番号4または5と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一である単離または組換え核酸配列を使用して、乳癌を治療または予防するための方法を提供する。配列番号4または5と相補的な核酸配列、および配列番号4または5の変異体も、本発明の範囲内にあることを、当業者は理解するはずである。さらなる実施形態では、本明細書に記載する核酸配列は単離する、組換える、かつ/または異種ヌクレオチド配列と、もしくはDNAライブラリー中で融合させることが可能である。
【0061】
他の実施形態では、本明細書に記載する方法による有用な核酸は、配列番号4または5で表すヌクレオチド配列、配列番号4または5の相補配列、またはそれらの断片と高ストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列も含む。DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は変更することができることを、当業者は容易に理解するはずである。例えば、約45℃での6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、次に50℃での2.0×SSCの洗浄で、ハイブリダイゼーションを実施することが可能である。例えば、洗浄ステップ中の塩濃度は、50℃での約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから50℃での約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまで選択することができる。さらに、洗浄ステップ中の温度は、室温での低ストリンジェンシー条件、約22℃から、約65℃での高ストリンジェンシー条件に上昇させることが可能である。温度と塩の両方を変更することができ、または温度もしくは塩濃度は、他方の変数を変えながら一定に保つことができる。一実施形態では、本明細書に記載する方法は、室温における6×SSC、次に室温における2×SSCでの洗浄の低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸を使用する。
【0062】
遺伝コードの縮重により配列番号4または5で述べる核酸と異なる単離核酸も、本明細書に記載する方法による使用に企図される。例えば、幾つかのアミノ酸は2つ以上のトリプレットによって表される。同じアミノ酸を指定するコドン、またはシノニム(例えば、CAUとCACはヒスチジンのシノニムである)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を与えない「サイレント」突然変異をもたらす可能性がある。しかしながら、対象のタンパク質のアミノ酸配列の変化をもたらすDNA配列多型が、哺乳動物細胞間に存在するであろうことは予想される。個々のタンパク質をコードする核酸の1つまたは複数のヌクレオチド(ヌクレオチドの約3〜5%まで)のこれらの変異は、本来の対立遺伝子の変異により所与の種の個体間に存在し得ることを、当業者は理解するはずである。任意および全てのこのようなヌクレオチド変異、および得られるアミノ酸の多型は、本発明の範囲内にある。
【0063】
特定の実施形態では、本明細書に記載する組換え核酸を、発現構築体中の1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列と作動可能に連結させることが可能である。制御ヌクレオチド配列は一般に、発現に使用する宿主細胞に適しているはずである。多数の型の適切な発現ベクターおよび適切な制御配列が、様々な宿主細胞に関して当技術分野で知られている。典型的には、前記1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列は、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および停止配列、翻訳開始および停止配列、およびエンハンサーまたはアクチベーター配列だけには限られないが、これらを含むことができる。当技術分野で知られている構成性または誘導性プロモーターが本発明によって企図される。プロモーターは天然に存在するプロモーター、または2つ以上のプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであってよい。発現構築体は細胞中、プラスミドなどのエピソーム上に存在することができ、または発現構築体は染色体中に挿入することができる。好ましい実施形態では、発現ベクターは、形質転換宿主細胞の選択を可能にするための、選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択可能なマーカー遺伝子は当技術分野でよく知られており、使用する宿主細胞と共に変わるはずである。
【0064】
特定の態様において、本明細書に記載する方法は、少なくとも1つの制御配列と作動可能に連結したActRIIaポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを使用する。制御配列は当技術分野で認められており、これらを選択してActRIIaポリペプチドの発現を誘導する。したがって、用語制御配列はプロモーター、エンハンサー、および他の発現調節エレメントを含む。代表的な制御配列はGoeddel;Gene Expression Technology: Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990年)中に記載されている。例えば、それと作動可能に連結したときにDNA配列の発現を調節する、任意の広く様々な発現調節配列をこれらのベクター中で使用して、ActRIIaポリペプチドをコードするDNA配列を発現させることが可能である。このような有用な発現調節配列には、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルス即時型初期プロモーター、RSVプロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC系、その発現がT7RNAポリメラーゼによって誘導されるT7プロモーター、ファージラムダの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質に関する調節領域、3−ホスホグリセレートキナーゼまたは他の糖分解酵素に関するプロモーター、酸ホスファターゼのプロモーター、例えばPho5、酵母菌α−接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系および原核または真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を調節することが知られている他の配列のポリヘドロンプロモーター、およびそれらの様々な組合せがある。発現ベクターの設計は、形質転換する宿主細胞の選択および/または発現させることを望むタンパク質の型などの要因に依存し得ることは理解されるはずである。さらに、ベクターのコピー数、そのコピー数および抗生物質マーカーなどのベクターによってコードされる任意の他のタンパク質の発現を調節する能力も考慮すべきである。
【0065】
本明細書に記載する組換え核酸は、クローニング遺伝子、またはその一部分を、原核細胞、真核細胞(酵母菌、鳥類、昆虫または哺乳動物)のいずれか、または両方における発現に適したベクターに連結させることによって生成することができる。組換えActRIIaポリペプチドを生成するための発現媒体には、プラスミドおよび他のベクターがある。例えば、適切なベクターには、E.coliなどの原核細胞における発現用の、幾つかの型のプラスミド:pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミドおよびpUC由来プラスミドがある。
【0066】
幾つかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの伝播を容易にするための原核生物配列と、真核細胞中で発現される1つまたは複数の真核生物転写単位の両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHyg由来ベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターの幾つかを、pBR322などの細菌プラスミド由来の配列で修飾して、原核細胞と真核細胞の両方における複製および薬剤耐性選択を容易にする。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)、またはエプスタインバーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)などのウイルスの誘導体を、真核細胞中でのタンパク質の一時的発現に使用することができる。(レトロウイルスを含めた)他のウイルス発現系の例は、遺伝子療法送達系の記載中において以下で見ることができる。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において利用する様々な方法は、当技術分野でよく知られている。原核細胞と真核細胞の両方に適した他の発現系、および一般的な組換え手順に関しては、Sambrook、Fritsch and ManiatisによるMolecular Cloning A Laboratory Manual、第3版(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年)を参照されたい。幾つかの場合、バキュロウイルス発現系の使用によって、組換えポリペプチドを発現させることが望ましい可能性がある。このようなバキュロウイルス発現系の例には、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393およびpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUW1など)、およびpBlueBac由来ベクター(β−gal含有pBlueBacIIIなど)がある。
【0067】
好ましい実施形態では、CHO細胞中で対象のActRIIaポリペプチドを生成するために、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene、La Jolla、Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen、Carlsbad、Calif)およびpCI−neoベクター(Promega、Madison、Wisc.)などのベクターが設計され得る。明らかとなるように、対象の遺伝子構築体を使用して、培養中に増殖した細胞における対象のActRIIaポリペプチドの発現を引き起こす、例えば精製用の融合タンパク質または変異体タンパク質を含めたタンパク質を生成することができる。
【0068】
本開示はさらに、1つまたは複数の対象のActRIIaポリペプチドに関するコード配列(例えば、配列番号4または5)を含む組換え遺伝子でトランスフェクトした宿主細胞に関する。宿主細胞は任意の原核または真核細胞であってよい。例えば、本明細書に記載するActRIIaポリペプチドは、E.coliなどの細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を使用して)、酵母菌、または哺乳動物細胞中で発現させることが可能である。他の適切な宿主細胞は当業者に知られている。
【0069】
対象のActRIIaポリペプチドを生成する方法も、本明細書において提供する。例えば、ActRIIaポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトした宿主細胞は、ActRIIaポリペプチドの発現を引き起こすのに適した条件下で培養することができる。ActRIIaポリペプチドを分泌させ、ActRIIaポリペプチドを含む細胞と培地の混合物から単離することが可能である。あるいは、ActRIIaポリペプチドは細胞質または膜分画中に保持することができ、細胞を採取、溶解し、かつタンパク質を単離することができる。細胞培養物は宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養に適した培地は当技術分野でよく知られている。対象のActRIIaポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ActRIIaポリペプチドの個々のエピトープに特異的な抗体を用いた免疫親和性による精製、およびActRIIaポリペプチドと融合したドメインと結合する作用物質を用いた親和性による精製(例えば、プロテインAカラムを使用してActRIIa−Fc融合体を精製することができる)を含めた、タンパク質を精製するための当技術分野で知られている技法を使用して、細胞培養培地、宿主細胞、または両方から単離することができる。好ましい実施形態では、ActRIIaポリペプチドは、その精製を容易にするドメインを含む融合タンパク質である。好ましい実施形態では、精製は、例えば任意の順序で以下の:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーの3個以上を含む一連のカラムクロマトグラフィーステップによって実施する。精製はウイルス濾過およびバッファー交換を伴うことが可能である。本明細書で実証するように、ActRIIa−hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定して98%を超える純度、およびSDSPAGEにより決定して95%を超える純度に精製した。このレベルの純度は、マウス、ラットおよび非ヒト霊長類において望ましい結果を得るのに十分であった。
【0070】
他の実施形態では、組換えActRIIaポリペプチドの所望部分のN末端におけるポリ−(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列などの精製リーダー配列をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を使用する親和性クロマトグラフィーによる発現された融合タンパク質の精製を可能にすることができる。したがって精製リーダー配列を、エンテロキナーゼを用いた処理により後に除去して、精製ActRIIaポリペプチドを与えることができる(例えば、Hochuliら、(1987年)J.Chromatography411:177;およびJanknechtら、PNAS USA88:8972を参照)。
【0071】
融合遺伝子を作製するための技法はよく知られている。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNA断片の接合は、連結用の平滑末端または交互末端を使用する従来の技法、適切な末端、必要に応じて付着末端の充填をもたらすための制限酵素による消化、望ましくない接合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素による連結に従い実施する。他の実施形態では、自動DNA合成装置を含めた従来の技法によって、融合遺伝子を合成することができる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、後にアニーリングしてキメラ遺伝子配列を生成し得る2つの連続遺伝子断片間に相補的突出部分を生成するアンカープライマーを使用して実施することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992年を参照されたい)。
【0072】
4.代替アクチビンおよびActRIIaアンタゴニスト
本開示は、アクチビン−ActRIIaシグナル伝達のアンタゴニストを使用して、乳癌を治療または予防するための方法に関する。可溶性ActRIIaポリペプチド、および特にActrIIa−Fcは好ましいアンタゴニストであり、かつこのようなアンタゴニストは、アクチビンアンタゴニズム以外の機構によって乳癌細胞の増殖または生存に影響を与える可能性があるが(例えば、アクチビン阻害は、おそらくTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーを含めた一定範囲の分子の活性を、作用物質が阻害する傾向の指標である可能性があり、かつこのような全体的阻害は、乳癌細胞の増殖または生存に対する所望の効果をもたらす可能性がある)、抗アクチビン(例えば、アクチビンβ、β、βおよびβ)抗体、抗ActRIIa抗体、ActRIIaの生成を阻害するアンチセンス、RNAiまたはリボザイム核酸、およびアクチビンまたはActRIIaの他の阻害剤、特にアクチビン−ActRIIa結合を妨害する阻害剤を含めた、他の型のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストが有用であると予想される。特定の実施形態では、アクチビンBに特異的なアンタゴニスト(例えば、抗アクチビンB抗体)が、本発明の方法中で有用である。
【0073】
ActRIIaポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIaポリペプチド)と特異的に反応し、かつActRIIaポリペプチドと競合的にリガンドと結合する、または他の場合ActRIIa媒介シグナル伝達を阻害する抗体を、ActRIIaポリペプチド活性のアンタゴニストとして使用することができる。同様に、アクチビンβ、β、βまたはβポリペプチド、またはそれらの任意のヘテロ二量体と特異的に反応し、かつActRIIa結合を妨害する抗体を、アンタゴニストとして使用することができる。
【0074】
ActRIIaポリペプチドまたはアクチビンポリペプチド由来の免疫原を使用することによって、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体を、標準的なプロトコルによって作製することができる(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual Harlow and Lane編(Cold Spring Harbor Press:1988年)を参照されたい)。マウス、ハムスターまたはウサギなどの哺乳動物を、免疫原型のActRIIaポリペプチド、および抗体応答を誘導することができる抗原断片、または融合タンパク質で免疫処置することができる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を与えるための技法には、担体との結合、または当技術分野でよく知られている他の技法がある。ActRIIaまたはアクチビンポリペプチドの免疫原部分は、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫処置の進行は、血漿または血清中の抗体力価の検出によってモニタリングすることができる。標準的なELISAまたは他のイムノアッセイを抗原としての免疫原と共に使用して、抗体のレベルを評価することができる。
【0075】
ActRIIaポリペプチドの抗原製剤を用いた動物の免疫処置後に、抗血清を得ることができ、かつ望むならば、ポリクローナル抗体を血清から単離することができる。モノクローナル抗体を産生するために、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫処置した動物から採取し、標準的な体細胞融合手順によりミエローマ細胞などの不死化細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を生成することができる。このような技法は当技術分野でよく知られており、かつ例えば、ハイブリドーマ技法(Kohler and Milstein、(1975年)Nature、256:495〜497頁によって本来開発された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbarら、(1983年)Immunology Today、4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV−ハイブリドーマ技法(Coleら、(1985年)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、Inc.77〜96頁)を含む。ハイブリドーマ細胞は、ActRIIaポリペプチドと特異的に反応する抗体の産生に関して免疫化学的にスクリーニングすることができ、かつモノクローナル抗体はこのようなハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離することができる。抗体可変ドメインまたはFab断片のライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングして、選択した抗原(例えば、アクチビンまたはActRIIa)と結合する結合物質を同定することによって、抗体を作製することもできる。このin vitro手法は、哺乳動物、特にマウスおよびヒトの間で高度に保存されたタンパク質に関して有用であることが多い。
【0076】
本明細書で使用する用語「抗体」は、例えば任意のアイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgEなど)の完全抗体を含むものとし、かつ選択した抗原と反応性がある免疫グロブリンの断片またはドメインを含む。抗体は従来の技法を使用して断片化することができ、かつ断片は有用性および/または対象の特異的エピトープとの相互作用に関してスクリーニングすることができる。したがって、この用語は、特定のタンパク質と選択的に反応することができる、タンパク質分解により切断した部分または組換えにより調製した部分の抗体分子のセグメントを含む。このようなタンパク質分解および/または組換え断片の非制限的な例には、Fab、F(ab’)、Fab’、Fv、およびペプチドリンカーによって接合したV[L]および/またはV[H]ドメインを含む単鎖抗体(scFv)がある。scFvは共有または非共有結合して、2つ以上の結合部位を有する抗体を形成することができる。用語抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、または他の抗体の精製製剤および組換え抗体も含む。用語「組換え抗体」は、分子生物学の技法を使用して構築された核酸から発現された抗体、または免疫グロブリンの抗原結合ドメイン、単鎖抗体から開発されたヒト化抗体または完全ヒト抗体などを意味する。シングルドメインおよび単鎖抗体も用語「組換え抗体」内に含まれる。
【0077】
特定の実施形態では、本明細書に記載する方法は、例えばモノクローナル抗体などの抗体を使用することができる。新規な抗体を作製するための方法も提供する。例えば、ActRIIaポリペプチドまたはアクチビンポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル抗体を作製するための方法は、検出可能な免疫応答を刺激するのに有効な量の抗原ポリペプチドを含む免疫原性組成物をマウスに投与すること、マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓由来の細胞)を得ること、および抗体産生細胞とミエローマ細胞を融合させて抗体産生ハイブリドーマを得ること、および抗体産生ハイブリドーマを試験して抗原と特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定することを含むことができる。ハイブリドーマを得た後、それは細胞培養において、場合によってはハイブリドーマ由来の細胞が抗原と特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件で、増殖させることが可能である。モノクローナル抗体は細胞培養物から精製することができる。
【0078】
抗体に関して使用する形容詞「と特異的に反応する」は、当技術分野で一般的に理解されているように、対象の抗原(例えば、ActRIIaポリペプチド)と対象ではない他の抗原の間で抗体が十分選択的であること、個々の型の生物サンプル中で対象の抗原の存在を検出するのに抗体が少なくとも有用であることを意味するものとする。治療用途などで抗体を利用する特定の方法では、結合におけるさらに高度の特異性が望ましい可能性がある。モノクローナル抗体は一般に、(ポリクローナル抗体と比較して)望ましい抗原と交差反応ポリペプチドを有効に区別しやすい傾向がある。抗体:抗原の相互作用の特異性に影響を与える1つの特徴は、抗原に対する抗体の親和性である。所望の特異性は異なる親和性の範囲に達する可能性があるが、一般に好ましい抗体は約10−6、10−7、10−8、10−9M以下の親和性(解離定数)を有するはずである。
【0079】
さらに、抗体をスクリーニングして望ましい抗体を同定するために使用する技法は、得られる抗体の特性に影響を与える可能性がある。例えば、抗体を溶液中での抗原との結合に使用する場合、溶液結合性を試験することが望ましい可能性がある。様々な異なる技法が、抗体と抗原の間の相互作用を試験して特に望ましい抗体を同定するのに利用可能である。このような技法にはELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore(商標)結合アッセイ、Biacore AB、Uppsala、スウェーデン)、サンドウィッチアッセイ(例えば、IGEN International、Inc.、Gaithersburg、Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウエスタンブロット、免疫沈降アッセイ、および免疫組織化学法がある。
【0080】
アクチビンまたはActRIIaアンタゴニストである核酸化合物のカテゴリーの例には、アンチセンス核酸、RNAi構築体および触媒核酸構築体がある。核酸化合物は一本鎖または二本鎖であってよい。二本鎖化合物は突出部分領域または非相補性領域も含むことができ、この場合鎖の一方またはもう一方は一本鎖である。一本鎖化合物は自己相補性領域を含むことができ、この化合物は、二重らせん構造の領域を有する、いわゆる「ヘアピン」または「ステム−ループ」構造を形成することを意味する。核酸化合物は、完全長ActRIIaの核酸配列またはアクチビンβ、β、βもしくはβの核酸配列の1000を超えない、500を超えない、250を超えない、100を超えない、または50、35、25、22、20、18または15を超えないヌクレオチドからなる領域と相補的であるヌクレオチド配列を含むことができる。相補性領域は、少なくとも8ヌクレオチド、および場合によっては約18〜35ヌクレオチドであることが好ましいはずである。相補性領域は、イントロン、標的転写産物のコード配列または非コード配列、コード配列部分などの範囲内にある可能性がある。一般に核酸化合物は、約8〜約500ヌクレオチドまたは塩基対長の長さを有するはずであり、場合によっては、長さは約14〜約50ヌクレオチドであるはずである。核酸は(特にアンチセンスとして使用するための)DNA、RNAまたはRNA:DNAハイブリッドであってよい。任意の1本の鎖が、DNAとRNAの混合物、およびDNAまたはRNAのいずれかとして容易に分類することができない修飾型を含むことができる。同様に、二本鎖化合物はDNA:DNA、DNA:RNAまたはRNA:RNAであってよく、かつ任意の1本の鎖は、DNAとRNAの混合物、およびDNAまたはRNAのいずれかとして容易に分類することができない修飾型も含むことができる。核酸化合物は、骨格(ヌクレオチド間結合を含めた天然核酸中の糖−リン酸部分)または塩基部分(天然核酸のプリンまたはピリミジン部分)に対する1つまたは複数の修飾を含めた、任意の様々な修飾を含むことができる。アンチセンス核酸化合物は約15〜約30ヌクレオチドの長さを有することが好ましいはずであり、かつ血清中、細胞中、または化合物が送達される可能性がある場所、例えば経口送達化合物の場合は胃、および吸入化合物に関しては肺などにおける安定性などの特徴を改善するための、1つまたは複数の修飾を含むことが多いはずである。RNAi構築体の場合、標的転写産物と相補的な鎖は一般にRNAまたはその修飾型であるはずである。もう一方の鎖はRNA、DNAまたは任意の他の変形である可能性がある。二本鎖または一本鎖「ヘアピン」RNAi構築体の二重鎖部分は、それがダイサー基質として働く限り、18〜40ヌクレオチド長の長さ、および場合によっては約21〜23ヌクレオチド長の長さを一般に有するはずである。触媒または酵素核酸はリボザイムまたはDNA酵素であってよく、修飾型も含むことができる。核酸化合物は、ナンセンスまたはセンス対照がほとんどまたは全く影響を有していない生理的条件下および濃度で細胞と接触したとき、約50%、75%、90%以上標的の発現を阻害することができる。核酸化合物の効果を試験するのに好ましい濃度は1、5および10マイクロモルである。例えば乳癌細胞または乳房腫瘍の増殖または生存に対する影響に関して、核酸化合物を試験することもできる。
【0081】
5.スクリーニングアッセイ
特定の態様において本発明は、アクチビン−ActRIIaシグナル伝達経路のアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(作用物質)を同定するための、ActRIIaポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIaポリペプチド)およびアクチビンポリペプチドの使用に関する。このスクリーニングによって同定した化合物を試験して、in vivoまたはin vitroで癌細胞、特に乳癌細胞の増殖または生存を調節するそれらの能力を評価することができる。これらの化合物は、例えばマウス異種移植モデルなどの動物モデルにおいて試験することができる。1つの有用な動物モデルはネズミMDA−MB231乳癌モデルであり、MDA−MB231細胞はホルモン非依存性であり、かつ骨に転移する傾向がある。Drebinら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、83:9129〜9133頁(1986年)によって記載されたのとほぼ同様に、例えばラット神経芽腫細胞(そこからneuオンコジーンを最初に単離した)、またはneu形質転換NIH−3T3細胞をヌードマウスに移植することによって、乳癌の他の動物モデルを作製することができる。
【0082】
アクチビンおよびActRIIaシグナル伝達を標的化することによって、乳癌を治療または予防するための治療剤をスクリーニングするための、多数の手法が存在する。特定の実施形態では、化合物の高スループットスクリーニングを実施して、選択した細胞系に対するアクチビンまたはActRIIa媒介の影響を乱す作用物質を同定することができる。特定の実施形態では、アッセイを実施して、アクチビンとActRIIaポリペプチドの結合を特異的に阻害するかまたは低下させる化合物をスクリーニングおよび同定する。あるいは、アッセイを使用して、アクチビンとActRIIaポリペプチドの結合を高める化合物を同定することができる。さらなる実施形態では、アクチビンとActRIIaポリペプチドと相互作用するそれらの能力によって、化合物を同定することができる。
【0083】
様々なアッセイ形式が事足りるはずであり、かつ本開示に照らして、本明細書に明確に記載しないアッセイ形式が、それにもかかわらず当業者によって理解されるはずである。本明細書に記載するように、試験化合物(作用物質)は任意のコンビナトリアル化学法によって生成することができる。あるいは、対象の化合物はin vivoまたはin vitroで合成された天然に存在する生物分子であってよい。組織増殖のモジュレーターとして作用するそれらの能力に関して試験する化合物(作用物質)は、例えば細菌、酵母菌、植物または他の生物によって生成される可能性があり(例えば、天然産物)、化学的に生成することができ(例えば、ペプチド模倣体を含めた小分子)、または組換えによって生成することができる。本明細書で企図する試験化合物には、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、糖、ホルモン、および核酸分子がある。特定の実施形態では、試験作用物質は、約2,000ダルトン未満の分子量を有する小さな有機分子である。
【0084】
試験化合物は単一の、別個の実体として提供することができ、またはコンビナトリアル化学法によって作製したライブラリーなどの、複雑性の高いライブラリーに提供することができる。これらのライブラリーは、例えばアルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび他のクラスの有機化合物を含むことができる。試験系に対する試験化合物の提示は、特に最初のスクリーニングステップにおいて、単離形、または化合物の混合物としてのいずれかであってよい。場合によっては、化合物は他の化合物で場合によっては誘導体化することができ、化合物の単離を容易にする誘導体化基を有する。誘導体化基の非制限的な例には、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、アイソトープ、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化架橋剤またはこれらの任意の組合せがある。
【0085】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬剤スクリーニングプログラムでは、所与の時間期間中に調べる化合物の数を最大にするために、高スループットアッセイが望ましい。精製または半精製タンパク質を誘導することができるような、無細胞系で実施されるアッセイは、それらを作製して迅速な開発および試験化合物によって媒介される分子標的の変化の比較的容易な検出を可能にすることができる点で、「一次」スクリーニングとして好ましいことが多い。さらに、試験化合物の細胞毒性または生物学的利用能の効果は、in vitro系では一般に無視される可能性があり、このアッセイは代わりに、ActRIIaポリペプチドとアクチビンの間の結合親和性の変化において示され得る分子標的に対する薬剤の影響に主に焦点を当てている。
【0086】
単なる例示のために、代表的なスクリーニングアッセイでは、対象の化合物を、通常アクチビンと結合することができる単離および精製ActRIIaポリペプチドと接触させる。次いで化合物とActRIIaポリペプチドの混合物に、ActRIIaリガンドを含む組成物を加える。ActRIIa/アクチビン複合体の検出および定量化は、ActRIIaポリペプチドとアクチビンの間の複合体形成の阻害(または促進)における、化合物の有効性を決定するための手段を提供する。化合物の有効性は、様々な濃度の試験化合物を使用して得たデータから、用量応答曲線を作製することによって評価することができる。さらに、対照アッセイを実施して比較のベースラインを与えることもできる。例えば、対照アッセイでは、単離および精製アクチビンをActRIIaポリペプチドを含む組成物に加え、ActRIIa/アクチビン複合体の形成を試験化合物の不在下で定量化する。一般に、反応物を混合することができる順序は変わる可能性があり、かつ同時に混合することができることは理解されよう。さらに、精製タンパク質の代わりに、細胞抽出物および溶解物を使用して適切な無細胞アッセイ系にすることができる。
【0087】
ActRIIaポリペプチドとアクチビンの間の複合体形成は、様々な技法によって検出することができる。例えば、複合体の形成の調節は、例えば放射標識(例えば、32P、35S、14CまたはH)、蛍光標識(例えば、FITC)、または酵素標識したActRIIaポリペプチドまたはアクチビンなどの検出可能に標識したタンパク質を使用して、イムノアッセイによって、またはクロマトグラフィー検出によって定量化することができる。
【0088】
特定の実施形態では、蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイを、直接的または間接的のいずれかで、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質の間の相互作用の程度を測定するために使用することができる。他の適切な検出形態には、例えば、光導波路(PCT公開WO96/26432および米国特許第5,677,196号)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面電荷センサー、および表面力センサーに基づく検出形態がある。
【0089】
「ツーハイブリッドアッセイ」としても知られる相互作用捕捉アッセイを、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質の間の相互作用を妨害または促進する作用物質を同定するために使用することもできる。例えば、米国特許第5,283,317号、Zervosら、(1993年)Cell72:223〜232頁、Maduraら、(1993年)J Biol Chem268:12046〜12054頁、Bartelら、(1993年)Biotechniques14:920〜924頁およびIwabuchiら、(1993年)Oncogene8:1693〜1696頁)を参照されたい。特定の実施形態では、リバースツーハイブリッド系を使用して、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質の間の相互作用を絶つ化合物(例えば、小分子またはペプチド)を同定することができる。例えば、Vidal and Legrain、(1999年)Nucleic Acids Res27:919〜29頁、Vidal and Legrain、(1999年)Trends Biotechnol17:374〜81頁、および米国特許第5,525,490号、同第5,955,280号、および同第5,965,368号を参照されたい。
【0090】
特定の実施形態では、本明細書に記載するActRIIaまたはアクチビンポリペプチドと相互作用するそれらの能力によって化合物を同定する。化合物とActRIIaまたはアクチビンポリペプチドの間の相互作用は、共有結合または非共有結合であってよい。例えば、光架橋、放射標識リガンド結合、および親和性クロマトグラフィー(Jakoby WBら、1974年、Methods in Enzymology46:1)を含めたin vitroでの生化学的方法を使用して、このような相互作用をタンパク質レベルで同定することができる。特定の場合では、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドと結合する化合物を検出するためのアッセイなどの機構に基づくアッセイにおいて、化合物をスクリーニングすることができる。これは固相または液相結合事象を含む可能性がある。あるいは、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドをコードする遺伝子を、レポーター系(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)を用いて細胞にトランスフェクトすることができ、場合によっては高スループットスクリーニングによりライブラリーに対して、またはライブラリーの個々のメンバーでスクリーニングすることができる。他の機構に基づく結合アッセイ、例えば自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイを使用することができる。結合アッセイは、ウエル、ビーズもしくはチップに固定された、または固定化抗体によって捕捉された、またはキャピラリー電気泳動によって分離した標的で実施することができる。結合した化合物は、比色分析または蛍光または表面プラズモン共鳴を使用して通常検出することができる。
【0091】
6.代表的な治療的使用
特定の実施形態では、本発明は、治療有効量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト、例えばActRIIaポリペプチドなどを個体に投与することによって、その必要がある個体における乳癌を治療または予防する方法を提供する。これらの方法は、乳癌を発症する高い危険性を有するヒト、特に女性の療法的および予防的治療に使用することができる。全ての女性は乳癌を発症する危険性があるので、乳癌を発症する高い危険性を有する女性は、特定の年齢群内の一般集団または女性集団と比較して、その危険因子がこの疾患を発症する高い確率をもたらす女性である。代表的な危険因子には、年齢、家族歴または遺伝子構造、運動および食事などの生活習慣、放射線または他の発癌性物質への曝露、第一子が生まれたときの年齢、遺伝的変化、および閉経後の体重増加がある。
【0092】
本明細書で使用するように、障害または状態を「予防する」治療剤は、統計サンプルにおいて、未治療対照サンプルと比較して治療サンプル中の障害または状態の発生を低下させる、または未治療対照サンプルと比較して障害または状態の1つまたは複数の症状または特徴の発症を遅延させる化合物を指す。例えば、乳癌の予防は、治療後の新たな病変の不在、または転移性疾患の不在もしくは遅延を指すことができる。
【0093】
用語「乳癌の治療」は、未治療対照と比較した、または治療前の疾患の重度と比較した、疾患の1つまたは複数の症状または特徴の改善を指す。この用語は、治療を受けている患者が治癒されること、または患者から疾患を完全に根絶することを必ずしも必要としない。乳癌を治療する作用物質は、疾患の1つまたは複数の症状または特徴の重度を低下させる作用物質であってよい。腫瘍の増殖および進行は、細胞周期進行および細胞分裂のメディエーター、および細胞死、またはアポトーシスのレギュレーターを含めた様々な要因によって影響を受けることに留意しなければならない。したがって、乳癌の治療は、癌細胞増殖の低下または細胞分裂速度の低下を含むことができる。代替的または追加的に、乳癌の治療は、癌細胞生存の低下、アポトーシスの増大、または転移性乳癌、特に骨転移の乳癌の発生または重度の低下を含むことができる。したがって、特定の実施形態では、乳癌の治療は、細胞分裂の低下と細胞死の増大の両方を含むことができる。機構とは無関係に、乳癌を治療する際の作用物質の有効性は、(低下した増殖、増大したアポトーシスのいずれか、またが両方による)対照と比較して少数の癌細胞、または対照と比較した腫瘍の大きさの低下などの観察可能な指標によって決定することができる。したがって、乳癌の治療または腫瘍もしくは癌細胞増殖の阻害は、このような変化が生じる機構に関して中立であると考えられる。予防と治療の両方が、医師または他のヘルスケア提供者によって与えられる診断、および治療剤の投与の目的とする結果の分析において識別することができる。
【0094】
ヒトにおける乳癌進行に対する対象のアンタゴニストの効果を観察するとき、効果は測定可能な疾患の減少または消失、および/または新たな病変の不在または転移の予防によって評価することができる。例えば、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、非侵襲性乳癌と侵襲性乳癌の両方を有する患者における、乳癌進行を有意に低下または遅延させることが可能である。さらに、これらのアンタゴニストは、乳癌に関する危険因子を有する健常な女性においてこの疾患を発症する危険性を予防する、または低下させることが可能である。これらのアンタゴニストは、乳癌の病歴を有する患者におけるこの疾患の再発の危険性を低下させることも可能である。
【0095】
したがって、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストを使用して、疾患を発症する危険性があると考えられる個体における乳癌の発症を予防または遅延することができ、このようなアンタゴニストは、選択した患者集団において使用することができる。適切な患者集団の例は、乳癌および卵巣癌の家族歴を有する患者、母親または姉妹がこの疾患を有すると診断された女性患者などを含む。BRCA1/2遺伝子または女性が乳癌および卵巣癌になりやすい素因であることが示されている他の遺伝子の突然変異を有する患者も含まれる。一実施形態では、乳癌を発症する危険性が高いと考えられるが、この疾患であると診断されていない患者を、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストで治療する。患者が30、35、または40歳に達したとき、または女性患者が妊娠しようとしていない(すなわち、患者が幼児を育てる予定がない)とき、または閉経に達したとき、このような治療を始めることができる。特に、本明細書に示すデータは、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、全身循環に導入される乳癌細胞系の転移拡散を阻害することを実証し、このようなアンタゴニストは乳房腫瘍の転移を予防する際に有用であり得ることを実証する。乳癌と診断されたかまたは乳癌を有する疑いがある任意の患者を治療する際に、このような化合物は有用であり得る。さらに、乳房腫瘍を発症する危険性が高いために、予防的、または選択的、乳腺切除を有すると考えられる患者は、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストを代わりに選択して、またはアクチビン−ActRIIaアンタゴニストを追加的に摂取して、未検出腫瘍の転移拡散の危険性を減らすことができる。
【0096】
本明細書で開示するアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト、および特にActRIIa−Fcタンパク質を使用して、固形腫瘍を有する患者および転移性癌を有する患者を含めた、患者において乳癌を治療または予防することができる。アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、乳房の前癌または良性病変を有する、または典型的過形成、異型過形成、および非侵襲性またはin situ癌腫を含めた任意の異常な増殖性病変を有する、ヒト対象に投与することもできる。本開示のアンタゴニストは、ホルモン依存性またはホルモン応答性の癌(例えば、エストロゲン受容体陽性の癌)とホルモン非依存性の癌(例えば、エストロゲン受容体陰性またはエストロゲン受容体突然変異癌)の両方の治療または予防においても有用である。アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、増殖因子またはオンコジーンが活性化される癌(例えば、(HER−2/Neuとしても知られる)c−erbB−2チロシンキナーゼが発現される乳癌)用の治療剤としても有用である。アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、(正常乳房組織由来の組織に対して)高レベルのアクチビン(例えば、A、ABまたはB)または高レベルのActRIIaまたはActRIIbを発現する腫瘍において特に有用であることが判明する可能性がある。
【0097】
本発明は、従来の癌療法(例えば、化学療法、放射線療法、光療法、免疫療法、および外科手術)の有効性は、対象のアンタゴニストの使用によって高めることができることを認める。したがって、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、乳癌を治療、予防、または管理するための併用療法中で使用することができる。放射線および/または外科手術治療ならびに細胞毒性化学療法および/または内分泌療法と組み合わせて、アンタゴニストを患者に投与することができる。このような併用治療は相乗的に働くことができ、かつそれぞれ個別の治療の用量を減らすことができ、それによってさらに高用量でそれぞれの治療によって与えられる有害な副作用を減らすことができる。他の場合、治療に対して抵抗性のある悪性腫瘍が、2つ以上の異なる治療の併用療法に応答する可能性がある。したがって本開示は、抗腫瘍薬の治療効果を高めるためまたはこのような抗腫瘍薬に対する細胞耐性を克服するための、同時または連続のいずれかで他の従来の抗腫瘍薬と組み合わせた、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストの投与に関する。
【0098】
併用抗腫瘍療法に使用することができる医薬化合物には、単に例示すると、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ベロマイシン、ブスルファン、ブサルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルチシン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エクセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、リュープロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲステロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンが挙げられる。
【0099】
これらの化学療法用抗腫瘍化合物は、それらの作用機構によって、例えば以下の群:代謝拮抗剤/抗癌剤、ピリミジン類似体(5−フルオロウラシル、フロキシウリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸アンタゴニストおよび関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))など;抗増殖剤/抗有糸分裂剤、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビンオレルビン)などの天然産物、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビン、エピジポドフィルロトキシン(エトポシド、テニポシド)などの微小管阻害剤、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ベロマイシン、ブサルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イプホスファミド、メルファラン、メルクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タクソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミドおよびエトポシド(VP16))を含む;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ベロマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシンなどの抗生物質;酵素(L−アスパラギンを全体で代謝しかつそれら独自のアスパラギンを合成する能力を有していない細胞を剥奪するL−アスパラギナーゼ);抗血小板薬;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート−ブサルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(DTIC)などの抗増殖剤/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキセート)などの抗増殖剤/抗有糸分裂代謝拮抗剤;プラチナ配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビン阻害剤);線維素溶解薬(組織プラスミノゲンアクチベータ、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;移動阻害剤;分泌抑制剤(ブレベルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP−470、ゲニステイン)および増殖因子阻害剤(血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);アンギオテンシン受容体遮断薬;酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシンおよびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルペドニソロン、プレドニゾン、およびプレニソロン);増殖因子シグナル伝達系キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導剤およびカスパーゼ活性化剤;およびクロマチン阻害剤に分類することができる。
【0100】
特定の実施形態では、併用療法に使用することができる医薬化合物には、(1)bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)などの「血管新生分子」の放出の阻害剤、(2)抗βbFGF抗体などの血管新生分子の中和剤、および(3)コラゲナーゼ阻害剤、基底膜代謝回転阻害剤、血管新生抑制ステロイド、真菌由来血管新生阻害剤、血小板因子4、トロンボスポンジン、D−ペニシラミンおよび金チオマレートなどの関節炎薬、ビタミンD3類似体、α−インターフェロンなどを含めた、血管新生刺激に対する内皮細胞応答の阻害剤などの抗血管新生剤がある。追加的な示されている血管新生の阻害剤に関しては、Bloodら、Bioch.Biophys.Acta.、1032:89〜118頁(1990年)、Mosesら、Science、248:1408〜1410頁(1990年)、Ingberら、Lab.Invest.、59:44〜51頁(1988年)、および米国特許第5,092,885号、同第5,112,946号、同第5,192,744号、同第5,202,352号、および同第6573256号を参照されたい。さらに、血管新生を阻害するために使用することができる広く様々な化合物、例えばVEGF媒介血管新生経路を遮断するペプチドまたは作用物質、エンドスタチンタンパク質または誘導体、アンギオスタチンのリシン結合断片、メラニンまたはメラニン促進化合物、プラスミノゲン断片(例えば、プラスミノゲンのクリングル1〜3)、トロポインサブユニット、ビトロネクチンαvβ3のアンタゴニスト、サポシンB由来のペプチド、抗生物質または類似体(例えば、テトラサイクリン、またはネオマイシン)、ジエノゲスト含有組成物、ペプチドと結合したMetAP−2阻害コアを含む化合物、化合物EM−138、カルコンおよびその類似体、およびナアラダーゼ阻害剤が存在する。例えば、米国特許第6,395,718号、同第6,462,075号、同第6,465,431号、同第6,475,784号、同第6,482,802号、同第6,482,810号、同第6,500,431号、同第6,500,924号、同第6,518,298号、同第6,521,439号、同第6,525,019号、同第6,538,103号、同第6,544,758号、同第6,544,947号、同第6,548,477号、同第6,559,126号、および同第6,569,845号を参照されたい。
【0101】
併用療法の性質に応じて、本発明の治療用アンタゴニストの投与を、他の療法を施している最中および/またはその後に続けることができる。本明細書に記載するアンタゴニストの投与は単回投与、または複数回投与で行うことができる。幾つかの場合、アンタゴニストの投与は従来の療法の少なくとも数日前に開始し、一方他の場合、投与は従来の療法を施す直前または施す時のいずれかで始める。
【0102】
7.医薬組成物
特定の実施形態では、本明細書に記載するアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、薬剤として許容される担体と共に配合する。例えば、ActRIIaポリペプチドは単独で、または医薬品配合物(治療用組成物)の構成要素として投与することができる。ヒトまたは獣医学において使用するための任意の好都合な方法での投与用に、対象のアンタゴニストを配合することができる。
【0103】
特定の実施形態では、本明細書に記載する乳癌を治療または予防するための方法は、インプラントまたはデバイスとして、全身、または局所に組成物を投与することを含む。投与時に、本発明中で使用するための治療用組成物は、当然ながら発熱物質を含まない、生理的に許容される形である。前に記載した組成物中に場合によっては含めることも可能である、アクチビン−ActRIIaアンタゴニスト以外の治療上有用な作用物質を、本発明の方法中で対象のアンタゴニストと同時または連続的に投与することができる。
【0104】
典型的には、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは非経口的に投与されるはずである。非経口投与に適した医薬組成物は、1つまたは複数の薬剤として許容される無菌等張水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液または乳濁液、または使用直前に、抗酸化剤、バッファー、静菌薬、配合物を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含み得る、無菌注射溶液または分散液中に戻すことができる無菌粉末と組み合わせて、1つまたは複数のActRIIaポリペプチドを含むことができる。本発明の医薬組成物中に利用することができる適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルがある。例えばレシチンなどのコーティング物質の使用によって、分散液の場合は必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。
【0105】
さらに、組成物は、標的組織部位(例えば、乳腺上皮)に送達するための形で封入または注射することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載する組成物は、1つまたは複数の治療用化合物(例えば、ActRIIaポリペプチド)を標的組織部位(例えば、乳腺上皮)に送達することができるマトリクスを含むことができ、発生中の組織に構造を与え、および最適には身体に再吸収することができる。例えばマトリクスは、ActRIIaポリペプチドの徐放をもたらすことができる。このようなマトリクスは、他の植え込まれる医療適用例に現在使用されている材料で形成され得る。
【0106】
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、美容外観および界面特性に基づく。対象の組成物の個々の用途が、適切な配合を定義するはずである。組成物に関して考えられるマトリクスは生分解性、かつ化学的に定義された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物であってよい。他の考えられる材料は生分解性、かつ生物学的に十分定義された材料、例えば骨または皮膚コラーゲンなどである。さらなるマトリクスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリクス構成要素からなる。他の考えられるマトリクスは、非生分解性、かつ化学的に定義されたマトリクス、例えば焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、または他のセラミクスなどである。マトリクスは、前に言及した型の材料のいずれかの組合せ、例えばポリ乳酸とヒドロキシアパタイトまたはコラーゲンとリン酸三カルシウムなどからなっていてよい。バイオセラミクスはカルシウム−アルミン酸塩−リン酸などの組成を変えることができ、かつ処理して孔径、粒径、粒子形状、および生分解性を変えることができる。
【0107】
特定の実施形態では、本明細書に記載するアンタゴニストは、例えば、それぞれが活性成分として所定量の作用物質を含む、カプセル、カシェ剤、ピル、錠剤、トローチ剤(香味基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用する)、粉末、顆粒の形で、または水性または非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型または油中水型液体エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップとして、またはトローチ(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤を使用する)として、および/またはうがい薬などとして経口投与することができる。アンタゴニストは、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与することもできる。
【0108】
経口投与用の固体剤形(カプセル、錠剤、ピル、糖衣錠、粉末、顆粒など)において、1つまたは複数の治療用アンタゴニストを、1つまたは複数の薬剤として許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウム、および/または以下の:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤、(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなどの結合剤、(3)グリセロールなどの保湿剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(5)パラフィンなどの溶液緩染剤、(6)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(7)例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、(8)カオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体状ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物などの潤滑剤、および(10)着色剤のいずれかと混合することができる。カプセル、錠剤およびピルの場合、医薬組成物は緩衝剤も含むことができる。同様の型の固体組成物も、例えばラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として利用することができる。
【0109】
経口投与用の液体剤形には、薬剤として許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤がある。活性成分に加えて、液体剤形は、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実、ピーナッツ、コーン、小麦胚種、オリーブ、ヒマシ、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル、およびこれらの混合物などの、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含むことができる。不活性希釈剤以外に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、香料、および防腐剤などのアジュバントも含むことができる。
【0110】
懸濁液は、活性化合物に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、およびこれらの混合物などの懸濁剤を含むことができる。
【0111】
本明細書に記載する方法に従って有用である組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含むことができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確実にすることができる。例えば糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を、組成物に含めることも望ましい可能性がある。さらに、注射可能な医薬品形態の長期の吸収は、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンなどの、吸収を遅延させる作用物質を含めることによってもたらすことができる。
【0112】
乳癌を治療または予防するのに適した投与レジメンは、本発明の対象の化合物(例えば、ActRIIaポリペプチド)の作用を変える様々な要因を考慮して、担当医によって決定されるはずであることは理解されよう。様々な要因には、患者の年齢、性別、および食生活、疾患の重度、投与の時間、および他の臨床学的要因があるが、これらだけには限られない。最終組成物への他の知られている増殖因子の添加も、投与に影響を与える可能性がある。腫瘍の大きさ、ステージ、または組織学的グレード、エストロゲンまたはプロゲステロン受容体の状態、血管侵入、および局所リンパ節転移だけには限られないが、これらを含めた様々な要因の定期評価によって、進行をモニタリングすることができる。臨床医は、タンパク質uPA/PAI1のレベル−高レベルのuPAおよびPAI1は転移の高い危険性と関係がある−およびやはり転移と関係があるHer−2遺伝子の増幅および/またはタンパク質の発現(Weigeltら、2005年Nat. Rev. Cancer5:591〜602頁)などのマーカーもモニタリングすることができる。遺伝子発現プロファイリングも、疾患の進行をモニタリングする際に有用であることが判明する可能性がある(van `t Veerら、2002年Nature415:530〜536頁およびvan de Vijverら、2002年N.Engl.J.Med.347:1999〜2009年)。
【0113】
特定の実施形態では、本発明は、ActRIIaポリペプチドをin vivo生成するための遺伝子療法を含む、乳癌を治療または予防するための方法も提供する。このような療法は、ActRIIaポリヌクレオチド配列を乳癌と関係がある細胞または組織、例えば乳腺上皮細胞などに導入することによって、その治療効果を得るはずである。ActRIIaポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスなどの組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を使用して実施することができる。ActRIIaポリヌクレオチド配列の療法送達に好ましいのは、標的リポソームの使用である。
【0114】
本明細書で教示する遺伝子療法に使用することができる様々なウイルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、またはレトロウイルスなどのRNAウイルスがある。レトロウイルスベクターは、ネズミまたは鳥類レトロウイルスの誘導体であってよい。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例には、モロニーネズミ白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイネズミ肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)があるが、これらだけには限られない。幾つかの他のレトロウイルスベクターは、多数の遺伝子を取り込むことができる。全てのこれらのベクターは、形質導入細胞を同定し生成することができるように、選択可能なマーカーの遺伝子を運ぶまたは取り込むことができる。レトロウイルスベクターは、例えば糖、糖脂質、またはタンパク質と結合させることによって標的特異的にすることができる。抗体を使用することによって、好ましい標的化を実施することができる。当業者は、特異的ポリヌクレオチド配列をレトロウイルスゲノムに挿入して、またはウイルスエンベロープに結合させて、ActRIIaポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にすることができることを理解しているはずである。
【0115】
あるいは、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによって、レトロウイルス構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドで、組織培養細胞を直接トランスフェクトすることができる。次いでこれらの細胞を、対象の遺伝子を含むベクタープラスミドでトランスフェクトする。生成した細胞は、レトロウイルスベクターを培養培地に放出する。
【0116】
ActRIIaポリヌクレオチドに関する他の標的送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系は、マクロ分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および水中油型エマルジョンを含めた脂質ベース系、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、in vitroおよびin vivoで送達媒体として有用な人工膜小胞である。RNA、DNAおよび完全ビリオンは水溶性内面中に封入することができ、かつ生物活性形で細胞に送達することができる(例えば、Fraleyら、Trends Biochem.Sci.、6:77、1981年を参照されたい)。リポソーム媒体を使用する有効な遺伝子導入のための方法は当技術分野で知られており、例えば、Manninoら、Biotechniques、6:682、1988年を参照されたい。リポソームの組成物は通常、ステロイド、特にコレステロールと通常組み合わせた、リン脂質の組合せである。他のリン脂質または他の脂質も使用することができる。リポソームの物理的特徴はpH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0117】
リポソーム生成において有用な脂質の例には、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴリピド、セレブロシド、およびガングリオシドなどのホスファチジル化合物がある。例示的なリン脂質には、卵黄ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンがある。例えば器官特異性、細胞特異性、およびオルガネラ特異性に基づくリポソームの標的化も可能であり、当技術分野では知られている。
【実施例】
【0118】
本発明はここでは一般的に記載しており、以下の実施例を参照することによってさらに容易に理解されるはずであり、これらの実施例は本発明の特定の態様および実施形態の単なる例示の目的で含め、本発明を制限することを意図するものではない。
【0119】
(実施例1)
ActRIIa−Fc融合タンパク質
本出願人は、間に最小リンカーがあるヒトまたはマウスFcドメインと融合したヒトActRIIaの細胞外ドメインを有する、可溶性ActRIIa融合タンパク質を構築した。これらの構築体は、それぞれActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcと呼ぶ。
【0120】
CHO細胞系から精製したActRIIa−hFcを以下に示す
(配列番号7):
【0121】
【化7】

ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcタンパク質がCHO細胞系中で発現された。3つの異なるリーダー配列を考えた:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号8)、
(ii)組織プラスミノゲンアクチベータ(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号9)、および
(iii)天然:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号10)。
【0122】
選択した形はTPAリーダーを利用し、かつ以下の非プロセシングアミノ酸配列を有する:
【0123】
【化8】

このポリペプチドは以下の核酸配列によってコードされる:
【0124】
【化9】

【0125】
【化10】

ActRIIa−hFcとActRIIa−mFcの両方が、組換え発現の影響を特に受けやすかった。図1中に示すように、タンパク質の単一の明確なピークとしてタンパク質を精製した。N末端の配列決定によって、−ILGRSTQE(配列番号11)という単一の配列が明らかになった。精製は、例えば任意の順序で以下の:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーの3個以上を含む一連のカラムクロマトグラフィーステップによって実施することができた。精製はウイルス濾過およびバッファー交換を用いて完了することができた。ActRIIa−hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定して98%を超える純度、およびSDSPAGEにより決定して95%を超える純度に精製した。
【0126】
ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcは、リガンド、特にアクチビンAに対して高い親和性を示した。GDF−11またはアクチビンA(「ActA」)を、標準的なアミンカップリング手順を使用してBiacoreCM5チップに固定化した。ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcタンパク質を系に充填し、結合を測定した。ActRIIa−hFcは5×10−12の解離定数(K)でアクチビンと結合し、かつタンパク質は9.96×10−9のKでGDF11と結合した。図2を参照されたい。ActRIIa−mFcは同様に挙動した。
【0127】
ActRIIa−hFcは薬物動態試験において非常に安定していた。ラットには1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのActRIIa−hFcタンパク質を投与し、かつタンパク質の血漿中レベルを24、48、72、144および168時間で測定した。別の試験では、ラットに1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgを投与した。ラット中では、ActRIIa−hFcは11〜14日の血清半減期を有しており、かつ薬剤の循環レベルは2週間後非常に高かった(それぞれ1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgの初回投与に関して11μg/ml、110μg/mlまたは304μg/ml)。カニクイザルでは、血漿中半減期は14日より有意に長く、かつ薬剤の循環レベルは、それぞれ1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgの初回投与に関して25μg/ml、304μg/mlまたは1440μg/mlであった。
【0128】
(実施例2)
ActRIIa−hFcタンパク質の特徴付け
ActRIIa−hFc融合タンパク質を、配列番号9の組織プラスミノゲンリーダー配列を使用して、pAID4ベクター(SV40ori/エンハンサー、CMVプロモーター)から安定的にトランスフェクトしたCHO−DUKXB11細胞中で発現させた。実施例1で前に記載したように精製したタンパク質は、配列番号7の配列を有していた。配列番号7中に示すように、Fc部分はヒトIgG1Fc配列である。シアル酸分析は、タンパク質は平均して、ActRIIa−hFc融合タンパク質の1分子当たり約1.5〜2.5モルのシアル酸を含んでいたことを示した。
【0129】
この精製タンパク質は、ヒト患者中の25〜32日の半減期を含めて、試験した全ての動物中で著しく長い血清半減期を示した(以下の実施例3を参照されたい)。CHO細胞が発現する物質は、ヒト293細胞中で発現されるActRIIa−hFc融合タンパク質に関して報告された親和性より、アクチビンBリガンドに対して高い親和性を有する(del Reら、J Biol Chem.2004年12月17日;279(51):53126〜35頁)。さらに、tPaリーダー配列の使用は他のリーダー配列より高い生成をもたらし、かつ天然リーダーで発現したActRIIa−Fcと異なり、高純度のN末端配列をもたらした。天然リーダー配列の使用は、それぞれが異なるN末端配列を有する2種の主なActRIIa−Fcをもたらした。
【0130】
(実施例3)
ヒト臨床試験
健常な、閉経後の女性におけるタンパク質の安全性を主に評価するために実施した、無作為、二重盲検、プラセボ対照試験において、実施例2に記載したタンパク質をヒト患者に投与した。48人の対象を6人のコホートに無作為に分けて、1回用量のActRIIa−hFcまたはプラセボのいずれかを与えた(5アクティブ:1プラセボ)。用量レベルは静脈内(IV)で0.01〜3.0mg/kg、および皮下(SC)で0.03〜0.1mg/kgの範囲であった。全ての対象は120日間追跡した。試験開始の6カ月以内に骨代謝に影響を与える薬を対象が服用した場合、対象は関係試験参加から除外した。安全性評価をそれぞれのコホートに従い実施して、用量漸増を決定した。薬物動態(PK)分析に加えて、ActRIIa−hFcの生物活性も、骨形成および再吸収の生化学的マーカー、ならびにFSHレベルの測定によって評価した。
【0131】
本試験において重度の有害事象は報告されなかった。有害事象(AE)は一般に軽度で一時的であった。AEの予備的分析は、頭痛、高い臨床検査値、風邪症状、嘔吐または吐き気、静脈内浸潤、および注射部位における血腫を含んでいた。
【0132】
ActRIIa−hFcのPK分析は、用量に関する直線的プロファイル、および約25〜32日の平均半減期を示した。ActRIIa−hFcに関する曲線下面積(AUC)は用量、およびSC投与がほぼ終了した後の吸収と直線的関係があった。これらのデータは、SCは投与のための望ましい手法であることを示す、何故ならそれは、IV投与の最初の数日間と関係がある薬剤の血清中濃度の急増を避けながら、薬剤に関する均等な生物学的利用能および血清半減期を与えるからである。ActRIIa−hFcは、同化作用による骨成長のマーカーである骨特異的アルカリホスファターゼ(BAP)の、血清中レベルの迅速な、持続的用量依存性の増大、および骨再吸収のマーカーであるC末端1型コラーゲンテロペプチドおよび酒石酸耐性酸ホスファターゼ5bレベルの、用量依存的低下を引き起こした。P1NPなどの他のマーカーは、要領を得ない結果を示した。BAPレベルは最高用量の薬剤でほぼ飽和状態の効果を示し、この同化作用の骨バイオマーカーに対する半最大効果は0.3mg/kgの用量で得ることができ、3mg/kgまでの範囲で増大することが示された。薬剤のAUCに対する薬力学的効果の関係として計算して、EC50は51,465(日*ng/ml)である。これらの骨バイオマーカーの変化は、試験した最高用量レベルで約120日間持続した。アクチビンの阻害と一致する血清中FSHレベルの用量依存的低下もあった。
【0133】
健常な閉経後の女性に与えた1回用量のActRIIa−hFcは、試験した用量レベルの範囲で安全かつ十分許容された。長期のPKおよび薬力学的効果は、間欠投与はさらなる試験に適している可能性があることを示唆する。例えば、血清半減期に基づく投与は、月1回ベースで、あるいは2、3、4、5または6週間毎に1度の程度で、実施することが可能であった。さらに、薬力学的効果は薬剤の血清中滞在よりはるかに長く続くので、投与は薬力学的効果に基づいて実施することができ、3カ月毎または2、3、4、5、6またはさらに12カ月毎の投与は、患者において所望の効果を生み出すのに有効である可能性があることを意味した。この臨床試験は、ヒト中ではActRIIa−hFcは、骨形成の増大と骨再吸収の低下の両方の生物学的証拠によって、骨同化剤であることを実証する。
【0134】
(実施例4)
ActRIIa−Fcは、乳癌転移によって引き起こされる骨量減少を改善または予防する
65〜75パーセントの乳癌が骨に転移し、骨構造に対して相当な損傷を引き起こし、骨折の危険性が増大し、かつ痛みまたは他の副作用を引き起こすと推測される。本発明者らは、骨に転移した乳癌のマウスモデルにおいてActRIIa−Fcの影響を試験した。
【0135】
ヒト乳癌細胞系MDA−MB−231(クローン2287、Kangら、Cancer Cell2003年、第3巻:537〜549頁)の亜系をin vitroで培養し、5×10細胞/mlの密度で細胞を採取した。MDA−MB−231は、骨に播種し骨転移によって引き起こされる損傷と同等の骨の損傷を引き起こすのに非常に適した細胞系である。10μlの細胞を、試験第0日に6週齢のメス無胸腺ヌードマウスの頸骨に注射した。試験第10日に、マウスにActRIIa−mFc(10mg/kg/1週間に2回/皮下)(n=8)またはPBS賦形剤(n=7)を与えた。1週間間隔で二重エネルギーx線吸収測定法(PIXIMus)を使用して骨ミネラル濃度の変化によって、疾患の進行を評価した。マウスはActRIIa−mFcで4週間治療し、次いで屠殺し、頸骨(注射腫瘍と非腫瘍の両方)をそれぞれの動物から回収した。次いで頸骨を処理し、マイクロコンピュータ断層撮影法(マイクロCT)および組織学的分析用に調製した。
【0136】
無胸腺ヌードマウスへのMDA−MB−231細胞の頸骨内注射は、反対側の脚と比較して注射した頸骨において、溶骨性骨病変の発症を促進した。近位頸骨のマイクロCT分析は、PBS媒体治療マウス中の非腫瘍頸骨と比較して、MDA−MB−231を有する頸骨における網状骨体積の62%の減少を実証した。ActRIIa−mFc治療は、媒体と比較してそれぞれ非投薬または腫瘍含有頸骨において70%または147%の増大をもたらした(両方に関してP<0.01)。ActRIIa−mFc治療マウスの腫瘍含有頸骨は、VEH治療マウスの非投薬頸骨と同等の網状骨密度を有していた(p=0.39)。
【0137】
したがってActRIIa−mFcは、骨中の乳房腫瘍細胞の存在と関係がある骨の損傷を除去することができる。
【0138】
(実施例5)
ActRIIa−Fcは乳癌転移を減らし、かつ生存を促進する
転移性疾患のモデルとして、MDA−MB−231細胞を心臓内注射によってマウスに導入することができる。左心室に注射した細胞は血流を通って移動し、遠位部位で転移性病変を形成するはずである。誘導細胞系MDA−MB−231−luc−D3H2LN(Caliper Life Sciences)は、バイオフォトニックイメージング技術(Caliper Life Sciences)を使用した転移性腫瘍の形成の非侵襲的モニタリングを可能にする、ルシフェラーゼ発現細胞系である。このモデルを使用して、転移性乳癌病変の形成を低下させるActRIIa−mFcの能力を評価した。
【0139】
MDA−MB−231−luc−D3H2LN細胞を、心臓内注射によって26匹の無胸腺ヌードマウスに導入した。14匹のマウスは媒体(リン酸緩衝生理食塩水−PBS)で治療し、12匹はActRIIa−mFc(10mg/kg、1週間に2回、皮下注射)で治療し、これは腫瘍投与の2週間前に開始し試験の行程中続けた。追加的な9匹のマウスに細胞を擬似注射し、ActRIIa−mFcで治療した。マウスには定期的に麻酔をかけ、生物発光用に目に見える状態にして転移進行の形成を検出した。
【0140】
ActRIIa−mFc治療群は、転移性病変の実質的に低下した発症を示した。第5週までに、14匹の媒体治療マウスのうち12匹が、転移拡散を示す多重の強い蛍光シグナルを示し、一方12匹のActRIIa−mFc治療マウスのうちわずか4匹が、同様の病変を示した(図3)。蛍光強度の定量化は、治療マウスにおける蛍光シグナルの約10倍の低下を示した。
【0141】
さらに、ActRIIa−mFc治療はマウスの生存を著しく増大させた。試験第40日までに、全て(14/14)の媒体治療マウスが死に至り、または(実験動物の人道的処理に関する標準的な手順に従い)安楽死させ、一方わずか2匹(2/12)のActRIIa−mFc治療マウスが死に至った、または安楽死させた。第45日までに、3/12のActRIIa−mFc治療マウスが死に至り、または安楽死させ、かつ擬似注射したマウスは1匹も死ななかった。
【0142】
したがって、転移性乳癌のこのモデルにおいて、ActRIIa−mFc治療は転移性病変の形成の実質的低下を引き起こし、かつ生存を促進した。これらのデータは、ActRIIa−Fcは、特に原発性腫瘍を標的化する外科手術、ホルモン療法または従来の化学療法などの療法と併用して使用して、ヒト患者における乳癌を治療することができることを示す。
【0143】
(実施例6)
代替のActRIIa−Fcタンパク質
本明細書に記載する方法に従って使用することができる様々なActRIIa変異体は、参照によってその全体を本明細書に組み込む、WO2006/012627として公開された国際特許出願中に記載されている(例えば、55〜60頁を参照されたい)。代替の構築体には、C末端尾部(ActRIIaの細胞外ドメインの最後の15個のアミノ酸)の欠失がある可能性がある。このような構築体の配列は以下に表す(Fc部分に下線が引かれている)(配列番号12):
【0144】
【化11】

参照による組み込み
本明細書で言及する全ての刊行物および特許は、それぞれ個々の刊行物または特許が参照によって組み込まれることが具体的および個別に示されるが如く、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。係争が生じた場合、本明細書のいずれの定義をも含めて本出願を調整する。
【0145】
本主題の具体的な実施形態を論じてきたが、前述の明細書は例示的であり制限的ではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を概観することによって、多くの変形が当業者に明らかとなるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲、およびその均等物の全範囲、および本明細書、およびこのような変形を参照することによって決定されるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者における乳癌または乳癌関連骨量減少を治療または予防するための方法であって、有効量のActRIIa−Fc融合タンパク質を該患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、
a.配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
b.配列番号3と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
c.配列番号2の少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、以下の特性:
i.少なくとも10−7MのKでActRIIaリガンドと結合すること、および
ii.細胞中のActRIIaシグナル伝達を阻害すること
の1つまたは複数を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分と結合したアミノ酸、および有機誘導体化剤と結合したアミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾アミノ酸残基を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を各々が含む2個のポリペプチドで形成される二量体であり、該ActRIIa−Fc融合タンパク質が3個以上のシアル酸部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が3〜5個のシアル酸部分を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記患者の骨格筋量の10%未満の増大を引き起こす、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者中で少なくとも0.2mg/kgの血清濃度に到達するように前記ActRIIa−Fc融合タンパク質を投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が配列番号7のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、正常で健常なヒト中で15〜40日の血清半減期を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質を、1週間当たり1回を超えない頻度で前記患者に投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質を、1カ月当たり1回を超えない頻度で前記患者に投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質を、3カ月当たり1回を超えない頻度で前記患者に投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、前記ActRIIa−Fc融合タンパク質の投与前1年以内に、骨吸収阻害療法(bone anti-resorptive therapy)を受けているか、または受けた、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
再吸収阻害薬が、ビスホスホネート薬、RANKリガンドアンタゴニストおよびオステオプロテグリンアンタゴニストからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
放射線療法、内分泌療法または細胞毒性薬を前記ヒト患者に施すことをさらに含む、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト患者が乳癌について1つまたは複数の危険因子を有する女性である、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
乳癌または乳癌関連骨量減少を治療または予防する方法であって、有効量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストをその必要がある対象に投与することを含む方法。
【請求項24】
前記アクチビン−ActRIIaアンタゴニストがアクチビンまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アクチビン−ActRIIaアンタゴニストが、
a.抗アクチビン抗体、および
b.抗ActRIIa抗体
からなる群から選択される抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アクチビン−ActRIIaアンタゴニストの投与が乳癌の発症の遅延を引き起こすか、乳癌の進行を阻害するか、転移の発症を遅延させるか、または腫瘍の大きさを低下させる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象がヒトである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒトが乳癌について1つまたは複数の危険因子を有する女性である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
放射線療法、内分泌療法または細胞毒性薬を前記対象に施すことをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
乳癌を治療または予防するのに有用である作用物質を同定する方法であって、
a.ActRIIaリガンドと競合的にActRIIaポリペプチドのリガンド結合ドメインと結合する試験作用物質を同定することと、
b.乳癌細胞の増殖または生存に対する該作用物質の効果を評価することと
を含む方法。
【請求項31】
乳癌を有するヒト患者におけるアクチビン媒介シグナル伝達を阻害する方法であって、有効量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストを該ヒト患者に投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記アクチビン−ActRIIaアンタゴニストがアクチビンまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記アクチビン−ActRIIaアンタゴニストがアクチビンまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記アクチビン−ActRIIaアンタゴニストが、
a.抗アクチビン抗体、および
b.抗ActRIIa抗体
からなる群から選択される抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記アクチビン−ActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、
a.配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
b.配列番号3と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
c.配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド
からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記アクチビン−ActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、以下の特性:
i.少なくとも10−7MのKでActRIIaリガンドと結合すること、および
ii.細胞中のActRIIaシグナル伝達を阻害すること
の1つまたは複数を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記アクチビン−ActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、ActRIIaポリペプチドドメインに加えて、in vivo安定性、in vivo半減期、摂取/投与、組織局在または分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製の1つまたは複数を高める1つまたは複数のポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンからなる群から選択されるポリペプチド部分を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記アクチビン−ActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分と結合したアミノ酸、および有機誘導体化剤と結合したアミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾アミノ酸残基を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
ヒト患者における乳癌または乳癌関連骨量減少の治療または予防用の医薬品を製造するためのActRIIa−Fc融合タンパク質の使用。
【請求項41】
ヒト患者における乳癌または乳癌関連骨量減少の治療または予防において使用するためのActRIIa−Fc融合タンパク質。
【請求項42】
対象における乳癌または乳癌関連骨量減少の治療または予防用の医薬品を製造するためのアクチビン−ActRIIaアンタゴニストの使用。
【請求項43】
対象における乳癌または乳癌関連骨量減少の治療または予防において使用するためのアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト。
【請求項44】
乳癌を有するヒト患者におけるアクチビン媒介シグナル伝達を阻害するための医薬品を製造するためのアクチビン−ActRIIaアンタゴニストの使用。
【請求項45】
乳癌を有するヒト患者におけるアクチビン媒介シグナル伝達を阻害する際に使用するためのアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−518006(P2010−518006A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548327(P2009−548327)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/001429
【国際公開番号】WO2008/094708
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(509125475)アクセルロン ファーマ, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】