乳腺分泌物から細胞を単離するための方法
本発明は、幹細胞様の特性を有する全ての細胞、特に多能性又は多型潜在性の前駆体細胞を含む前駆体細胞を人体から単離する方法に関し、そのような細胞はヒト乳腺分泌物から直接的に又は間接的に誘導され、それは非妊娠期、妊娠期、授乳期、衰退期(involuting period)のうちの少なくとも一つの期間にある人体の、初乳、成熟乳、又は男性若しくは女性の乾燥期分泌物である。本発明は、さらに、そのようにして単離された細胞の好ましい用途に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から細胞を単離する方法、並びにそのような細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、分化の過程を経てより専門分化した多様な細胞の種類を生産できる、クローン原性の、自己更新する(self-renewing)前駆体細胞と定義されている。古典的には、幹細胞には2つの別の型が存在すると信じられてきた。胚幹(ES)細胞は、胚盤胞の内部塊(inner mass)から誘導され、多能性であり、それ故、体内で全ての分化した細胞種類を生産することができる。幹細胞の他方の亜母集団(sub-population)は、ES細胞から誘導され、臓器又は組織特異的である。また、これらの多能性の細胞は、成熟幹細胞として知られており、起源となるそれらの臓器から組織にのみ分化できると信じられていた。これらの多能性の細胞の例は、造血幹細胞であり、それは血液及び免疫系の細胞を絶えず再生させる。
【0003】
幹細胞は、これまで、血液、臍帯血、骨髄、皮膚、小腸、及び乳房組織(breast tissue)等の継続的な細胞回転率が高い組織から、脳、骨格筋、及び乳歯等の回転率の低い組織までの広範囲の組織から、単離されていた。組織の起源とは関係なく、成熟幹細胞は、それらがそれらから誘導された組織にのみ分化することができるというのが、長年にわたる定説であった。しかしながら、最近の研究で、新規な環境に暴露すると、臓器特異的幹細胞は、これらの内在的な制限を克服し、他の組織に分化転換する(transdifferentiate)ことが立証された。例えば、神経幹細胞は血液細胞に分化転換でき、幹細胞から誘導された骨髄は筋肉、脳、肝臓及び心臓細胞に分化転換でき、そして幹細胞から誘導された皮膚は脳細胞に分化転換できることが示された。従って、現在では、臓器特異的幹細胞の発生の制限に関係する定説は正しくないであろうと思われ、適当な環境刺激下にあるこれらのES細胞は別の細胞種類に分化転換できるものと思われる。
【0004】
ヒトの乳汁は異なる細胞種類の混合物を含んでいる。分泌上皮細胞(乳腺細胞;lactocytes)は、乳房の継続的な充填及び放出に関連する圧力の結果として乳房の基底膜が剥がれ落ちることにより乳汁中にそれらが見出される。乳腺細胞は、全細胞集団の約10〜20%の割合を占めている。ヒト乳汁中に見出される残りの細胞の主なものは白血球(リンパ球、マクロファージ、単核白血球、ナチュラルキラー細胞、好塩基球、好酸球、及び好中球などの免疫細胞)であり、乳房を感染症から保護し、乳児に免疫保護を与えることの両方のために、これらは乳汁中に存在すると信じられている。現在までのところ、これらは乳汁中に含まれていると信じられている細胞種類のみである。
【発明の開示】
【0005】
従って、本発明の基礎をなす対象となる課題は、人体から前駆体細胞を単離する新規な方法を提供することである。ここで、語句「前駆体細胞」は、幹細胞様の特性を有する全ての細胞を含むが、好ましくは、例えば、幹細胞のような多能性又は多型潜在性の前駆体細胞を含むことを排除しない。
【0006】
本発明は、非妊娠期、妊娠期、授乳期、衰退期(involuting period)のうちの少なくとも一つの時期にある該人体の初乳、成熟乳、又は男性又は女性からの乾燥期分泌物である、ヒト乳腺分泌物から直接的又は間接的にそのような細胞を誘導することにより上記課題を解決する。言い換えれば、本明細書中で我々は、驚くべきことに、前駆体細胞がヒト分泌乳汁(lactation milk)中に見出されること、これらの細胞が母親及び乳児の組織を生産するために利用される可能性を有していることを立証する。ヒト乳腺分泌物のみならず哺乳類種由来の一般的な乳腺分泌物も、対応する前駆体細胞の単離に用いることができることに留意すべきである。前駆体細胞特異的抗体によって、確かに哺乳類分泌物(mammalian secretion)、即ち、例えば、ヒト乳汁が前駆体細胞を含んでいることを明らかに示すことができる。
【0007】
本発明の第1の好ましい実施態様においては、乳汁分泌物の非細胞性部分が細胞性部分から分離され、特に非多能性又は非多型潜在性細胞が、このようにして誘導された細胞性部分から除去されて、前記前駆体細胞が乳汁分泌物から単離される。多能性細胞以外の乳汁分泌物の細胞性部分は、さらに、分泌上皮細胞、白血球及び特に、細菌細胞のような非ヒト細胞を含んでいてもよい。それらの非多能性細胞は、乳汁分泌物から除去されていることが好ましい。
【0008】
本発明の別の好ましい実施態様では、授乳期の乳汁分泌物を前駆体細胞の単離に用い、個体摂食の開始後;これに対する個体摂取の終わり;授乳期(lactation phase);好ましくは早期授乳(early lactation)等の乳汁分泌の特定の段階にある乳汁分泌物を用いる。
【0009】
磁気ビーズを用いれば、それらの分泌物由来の前駆体細胞を単離するのに特に有用で実用的な方法が可能である。それらの磁気ビーズは、この目的を達成するために、前駆体細胞にビーズを結合させた前駆体細胞特異的抗体に結合されていることが好ましい。
【0010】
通常は、第1工程において細胞性成分を乳汁分泌物から洗い出し、第2工程においてその細胞性成分を抗体で染色して前駆体細胞のマーカーとし、第3工程において結合した抗体によって前駆体細胞を他の細胞から直接的に又は間接的に分離するが、好ましくは上述した磁気ビーズを利用することを排除しない(but not exclusively)。この目的を達成するためには、抗体染色された前駆体細胞をビーズ、好ましくは小さな鉄のビーズに結合させ、前駆体細胞をビーズによって抽出し、小さな鉄ビーズの場合には磁石を用いて抽出することが好ましく、次いで、ビーズ並びに必要ならば抗体を前駆体細胞から除去する。これは、例えば、ビーズを選択することによって可能となり、このビーズは、ビーズに結合された特異的抗体を提供し、その抗体が前駆体細胞に選択的に結合する。純粋な細胞を得るために、続いてビーズを前駆体細胞から除去する。そしてそれは例えば、ビーズと抗体の間のリンクを開裂する酵素によって行うことができる。ビーズ及び抗体の間の結合がDNAに基づくならば、その開裂はDnaseを用いて行うことができ、ビーズと抗体の間の結合がアミノ酸鎖に基づくならば、プロテイナーゼを用いることができる。
【0011】
通常は、例えば、マウス繊維芽細胞支持細胞層のような、非常に特殊な支持細胞層(feeder layer)上で通常の前駆体細胞を培養、即ち、増殖させなければならないが、驚くべきことに、この方法で単離された前駆体細胞は、そのような特殊な支持細胞層を必要とせず、例えば、具体例の範囲に開示した他の支持細胞層に基づく支持細胞層上で通常は増殖させることができる。
【0012】
より具体的には、この単離方法は、下記の工程を含む:(i)全ヒト乳汁分泌物を通常の遠心分離にかけ、一番上の脂肪層、その下のタンパク質及び炭水化物に富む上清、及び底部の細胞ペレットに分け;(ii)脂肪画分及び上清を除去し;(iii)例えば、これらに限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、TBS及び/又はPBS等の緩衝液、又はこれらに限定されないが、ウイリアムズ培養液(Williams media)又はRPMI培養液(RPMI Media)等の培養液を添加し、細胞(前駆体細胞のみを含むものではない)を、緩衝液/培養液中に再懸濁させ、上記と同様に遠心分離し、好ましくはこの工程を3又は4回繰り返し、実質的に純粋な細胞ペレットとし;(iv)前駆体細胞を細胞ペレットから分離する。
【0013】
細胞ペレットからの前駆体細胞の分離は、下記工程で行うことが好ましい:(v)細胞ペレットを培養液、好ましくは例えば、ウシ胎児血清を含有するRPMI培養液中に懸濁し;(vi)この懸濁液を、好ましくは予め前駆体細胞特異的抗体(好ましくは抗マウスIgG抗体のような幹細胞特異的抗体)と共にインキュベートし、抗体が例えば、DNA又はアミノ酸の小さなストランドを介して磁気ビーズに結合された(磁気)ビーズと共にインキュベートし、これらの磁気ビーズ中の細胞懸濁液のインキュベーションは、好ましくは4℃、15分間行い;(vii)前駆体細胞を一旦磁気ビーズに結合させ、細胞−ビーズを含むチューブに磁石を取り付け、このようにしてビーズに結合している前駆体細胞を磁石に引き寄せ、一方結合していない細胞は引き寄せられることなく上清中に残り;(viii)上清を除去して、前駆体細胞抗体を介してビーズと結合した前駆体細胞のみが残る。
【0014】
前駆体細胞にそれらを選択的に結合させることができる他の種類のビーズ又は一般的な分離手段を用いることができることを指摘しなければならない。そのようなビーズは前駆体細胞から分離できなければならず、この目的のためには、下記の加工工程を好ましく用いることができる:(ix)幹細胞抗体を介してビーズに結合された前駆体細胞を適当な開裂手段によって除去し、抗体が小さなDNAストランドを介してビーズと結合されている場合には、Dnaseの添加によることが好ましく;(x)再度磁石を取り付け、もはや幹細胞に結合していないビーズを磁石に引き寄せることによって除去し;(xi)今や単離された前駆体細胞を含む上清を除去する。
【0015】
多能性細胞の特殊な増殖に基づく別の分離方法は、下記工程を含む:
(i)第1工程において全ヒト乳汁分泌物を遠心分離し、一番上の脂肪層、その下のタンパク質及び炭水化物に富む上清、及び底部の細胞ペレットに分ける。
(ii)任意の第2工程において細胞ペレットを培養液中で洗浄する。細胞は、RPMI培養液のみで洗浄することが好ましい。
(iii)第3工程において細胞ペレット中の細胞を、増殖培養液中で処理された細胞培養装置上にプレーティングし、インキュベートする。このインキュベーションは、10〜30日間行うことが好ましく、14〜20日間が最も好ましい。
(iv)好ましくはトリプシン処理により細胞を刈り取る、即ち、細胞を支持体から分離する。次いで、分離した細胞を、好ましくは増殖培養溶液を用いて洗浄する。
(v)刈り取られ、洗浄された細胞を、再生基底膜プレパラート(reconstituted basement membrane preparation)上にプレーティングし、好ましくは密集状態(confluence)になるまで増殖させる。この最後の工程において、例えば、BD Biosiences社から入手可能なMatrigel(登録商標)のようなマウスEHS肉腫から抽出された、溶解された(solubulized)基底膜プレパラートを用いることが好ましい。
【0016】
この方法は前駆体細胞として典型的な形態学を有する細胞培養物を与える。この細胞は乳腺細胞(lactocytes)のようには見えず、前駆体細胞/幹細胞/乳腺細胞の増殖に寛容な培地なので、これらの細胞は細菌細胞ではあり得ない。
【0017】
さらに、本発明は、前駆体細胞に関し、好ましくは上記の方法を用いて誘導された多能性又は多型潜在性の前駆(幹)細胞である。
【0018】
さらに、本発明はそのような前駆体細胞の、例えば、ex vivo、in vitro及び/又はin vivo応用への使用に関する。本発明の範囲を制限することなく、そのような使用は下記具体例及びそれらの組み合わせにも及ぶ:母親及び/又は乳児及び/又は他の個体の利益のための組織又は細胞の生成;それに続く遺伝子治療処置又は子宮内の胎児の治療;病気治療のための細胞、組織、腺又は臓器の生産;それに続くクローニング又は科学研究;下記目的の群からの一つ又は複数:臨床、診断、バイオエンジニアリング、ラクトエンジニアリング(lactoengineering)、乳房組織再生、乳房再建外科手術(breast reconstructive surgery)、乳房美容(breast cosmetic)若しくは乳房増大外科手術(enhancement surgery)、外分泌腺組織再生及び/又は外科手術。
【0019】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項に述べられている。
【0020】
添付図面に、本発明の好ましい実施形態を示す:
図1:
図1は、脂肪及びスキムミルクを除去した後のヒト乳汁の全混合細胞集団を示す。
図2:
図2は、全乳汁細胞集団から単離された幹細胞(sc)を示す。これらの細胞は、顕微鏡スライド(slides)上にサイトスピン(cytospun)され、ヘマトキシリン及びエオシンで染色されていた。図2a及び2bは、単独の幹細胞(sc)を示す。図2cは、Dynabeads(登録商標)(Db)に未だ結合している単独の幹細胞を示す。Dynabeads(登録商標)(Db)は、4.5μMの大きさであり、それによって幹細胞の大きさが6〜7μMであると見積もることができる。
図3:
全乳汁細胞集団から幹細胞を精製した後、単離された幹細胞を種々の培養条件を用いて培養することができ;図3は、培養液中に入れて1日後の単独の幹細胞を示す。
図4:
1〜2週間培養後、全細胞集団から単離された幹細胞は細胞分割(細胞分裂)し;この写真中の矢印は、細胞分裂している細胞を示す。
図5:
数ヶ月培養後、これらの細胞は他の細胞種類に分化したようには見えず;図5は、顕微鏡スライド上にサイトスピンされ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された2ヶ月培養後の幹細胞を示す。
図6:
培養2ヶ月後、幹細胞は分化しておらず;図6は、培養2ヶ月後、SSEA−4(a)及びTra 1−60(b)抗体によって単離された幹細胞を示し;培養培地から細胞を洗い出し、共焦点顕微鏡上で、蛍光標識された第2抗体(AlexaFluor−488に結合されたヤギ抗マウスIgG)に結合されたSSEA−4(a)及びTra 1−60(b)抗体によって可視化される前にスライド上にサイトスピンされた。
図7:
図7は、培養液中の単離された幹細胞の増殖率を示し;細胞は4日間に渡って分割増殖が見られ;Dynabeads(登録商標)及びSSEA−4抗体によって単離された細胞は、4日間の培養で、約50細胞/プレート〜150細胞/プレートの細胞総数の増加を示し;プレート中央領域を決定し、十字形の計数パターン(cruciform counting pattern)を用い;各培養物のN=10領域及び日にち毎の数を簡単に合計し;この図に、同じ実験を3回行ったデータを示す。
図8:
図8は、本発明の別の手順を用いて、乳腺分泌物から得た多能性細胞の単層を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
幹細胞であると信じられる細胞が実際に幹細胞であるか否かを決定するために、対象の細胞の亜致死照射されたマウスに移植することが従来は必要であった。次いで、これらの移植された細胞は、これらのマウスのいくつかの臓器に定着し(locate)、増殖する(repopulate)と、問題の細胞は多能性幹細胞であると考えられていた。しかしながら、より最近では、多能性幹細胞の細胞外マーカー(例えば、Tra−1−60及びSSEA−4;Chemicon International, Temecula, California,US)の同定により、移植による長いプロセス無しで多能性(幹)細胞の同定が可能になった。
【0022】
緩やかな遠心分離、上清の吸引及び緩衝液又は培養液中への細胞の再懸濁の工程を数回繰り返してヒト乳汁から全ての細胞を洗い出した後、製造者の仕様書に従ってdynabeads用いて幹細胞を全乳汁細胞集団から単離した(図1)。緩衝液としてトリス緩衝生理食塩水溶液(TBS)又はリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)を用いることができる。特に、トリス濃度10mM、NaOH濃度150mMであり、pHを7.4付近に調整されたTBS溶液を用いることができる。PBS溶液の場合には、それらはKH2PO4濃度1.1mM、NaCl濃度140mM、Na2HPO4・7H2O濃度4.5mM及びNaCl濃度2.7mMであり、pHを7.4付近に調整されたものでよい。培養液としては、Sigma Aldrich、米国から、製品番号R6504、R7755、R4130又はW4125、W4128、W1878で入手可能なWilliams又はRPMI(Rosewell Park Memorial Institute)を用いることができる。培養液として、Gibco(米国カリフォルニア州)、カタログNo.11875−093のRPMIを入手することもできる。
【0023】
幹細胞特異的抗体、(例えば、Tra−1−60、Tra 1−81及び/又はSSEA−4、両者ともモノクローナルであり、両者とも例えば、Chemicon international、CHEMICON International、カリフォルニア州92590、Temecula、Single Oak Drive28820番地から入手可能)を、前駆体細胞の単離のためにDynabeads(登録商標)に結合した。造血細胞抗体CD133(カタログNo.MAB1133;米国カリフォルニア州のR&D Systems,Inc製)を用いることもできる。
【0024】
末梢血液由来の原始造血幹細胞及び前駆体細胞は、免疫−磁気細胞分離原理を用いてすでに単離されている。モノクローナル抗体結合磁気粒子(CliniMACS System及びReagent AC133;Miltenyi Biotec製)を用いた研究グループが、CD133陽性細胞の単離及び培養に成功した。
【0025】
任意の幹細胞特異的抗体(SSEA−3、SSEA−1及びTRA 1−81、Oct−4、CD133を含む)をDynabeads(登録商標)と共にインキュベートする。Dynabeads(登録商標)は、Dynal AS、NOから入手可能な小さな鉄製のビーズであり、それに小さなDNAストランドを介して抗マウスIgG抗体が結合されている。例えば、Dynal CD34の名称で入手可能なDynabeads(登録商標)を用いることができる。Dynabeads(登録商標)を乳汁から単離された細胞と共に4℃で15分間インキュベートする前に、Dynabeads(登録商標)のインキュベーションを室温で1時間行う。幹細胞を、通常約30分〜1時間かけて、一旦Dynabeadsに結合させ、細胞/Dynabeads(登録商標)が入ったチューブの側面に磁石を取り付ける。Dynabeads(登録商標)は、直径4.5μmの、均一な、ポリスチレン系の常磁性ビーズである。(幹細胞が結合した)Dynabeads(登録商標)を磁石に引き寄せ、一方、結合していない細胞は引き寄せられることなく上清中に残る。次いで、上清を除去し、幹細胞抗体を介してDynabeads(登録商標)に結合された細胞のみとする。幹細胞抗体を介してDynabeads(登録商標)に結合された細胞を、Dnaseを添加して小さなDNAストランドを破壊することによって外す。これを解放緩衝液(releasing buffer)と呼び、Dynal kit 62500 U/ml(指示書中で引用されているバイアル当たり15000〜20000U)の一部である。再度磁石を取り付け、もはや幹細胞に結合していないDynabeads(登録商標)を引き寄せてDynabeads(登録商標)を除去する。このとき上清は、取り外された幹細胞を含んでいる。これらの幹細胞は、上記又は下記に列挙されている任意の次の応用に用いることができる。
【0026】
単離された前駆体(幹)細胞は、ノックアウト−ダルベッコ修飾イーグル培地(Knockout-Dulbecco's modified Eagle's medium)中のマウス胚繊維芽細胞支持細胞(mouse embryo fibroblast feeder cells)上で培養することができる。通常、培養は、37℃の温度で行うことができる。
【0027】
支持細胞の利用例
・ヒト胚幹細胞の長期間の増殖は、最近では、支持細胞としての最初の(primary)マウス胚繊維芽細胞と共培養することによって達成されている。
【0028】
・ソニック・ヘッジホッグ(sonic hedgehog)発現支持細胞を用いる培養上皮組織の形成の促進。
【0029】
・ヒト成熟骨髄細胞は、培養物中のヒト胚幹細胞の長期間の増殖(expansion)をサポートする。
【0030】
・OP9支持細胞を必要とする脈管形成のin vitroモデルでの胚幹細胞の内皮細胞への増殖及び成熟。
【0031】
・成熟ブタ血液由来のマクロファージの選択的増殖(expansion)及び継続培養。マクロファージは、選択的に増殖し(expanded)、成熟ブタ血液から直接、STOマウス繊維芽細胞の支持細胞層を覆う培養液中で継続的に培養された。
【0032】
・その生存のために繊維芽細胞に依存している、新規なヒト未成熟巨核芽球性白血病細胞株、M−MOKの確立及び特徴付け。新規な繊維芽細胞依存性ヒト未成熟巨核芽球性白血病細胞株(M−MOK)を、急性巨核芽球性白血病の少女の骨髄から確立し、その増殖が、ヒト胚細胞性肺由来繊維芽細胞、HEL−Oの存在に完全に依存していることを確定した。
【0033】
・支持細胞層として予め照射を受けた胎児性G30ブタ繊維芽細胞を用いたブタ胚盤胞からの胚盤細胞のin vitro培養。
【0034】
・乳児及び小児の急性リンパ球性白血病(ALL)細胞は、マウス骨髄由来の内皮脂肪細胞(14F1.1)のクローニングされた細胞株との共培養で優先的に生き残ることが見出され、マウス間質細胞の存在下で大規模な(extensive)増殖を示した。これらのALL細胞は、マウス間質クローン14F1.1に強く依存しており、内皮含脂肪細胞の不存在下又は種々の支持細胞によっては増殖できなかった。
【0035】
細胞増殖(cell growth)
Dynabeads(登録商標)及びSSEA−4抗体によって単離された細胞は、4日で約50細胞/プレート〜150細胞/プレートの細胞総数を示した(図7参照)。
【0036】
方法:
細胞の準備
150mlの全乳汁を2000rpmで15分間回転し、細胞を回収する。細胞ペレットを、TBS1%BSAの約4ml中に再懸濁し、再度10分間遠心分離する。
最終のペレットは、RPMI1%FCS200μl中に再懸濁する。
【0037】
ビーズの調製
ビーズをRPMI1%ウシ胎児血清で3回洗浄する。
500μlのTBS1%BSA中1μlの濃度の一次抗体でビーズを被覆し、緩やかに撹拌しながら、室温で1時間インキュベートする。
被覆ビーズを分離し、TBS1%BSAの1mlで3回洗浄して、きれいなチューブに移す。最後は1mlのRPMI1%FCSで洗浄する。
【0038】
細胞の単離
200μlの細胞調製物(cell preparation)をビーズに添加し、約100℃で30分間インキュベートする。
インキュベーションに続き、結合していない画分を捨てる。
200μlのRPMI1%FCSを細胞とビーズの複合体に加え、次いで、緩やかにピペッティング(pipetted)し、結合していないものをさらに遊離させる。
200μlのビーズと細胞の複合体に、5μlの放出緩衝液(releasing buffer)を添加し、緩やかに混合しながら37℃で15分間インキュベートする。
ビーズと細胞の複合体を激しくピペッティングし、細胞を遊離させる。
単離された細胞懸濁液200μlを回収し、無菌のエッペンドルフに添加する。
このとき、この細胞懸濁液を直ちに培養系に導入することができる。
【0039】
培養方法
細胞を、コラーゲン被覆された培養皿に播いた。
所定時間後、上清を注意深く抜き取り、汚染物質を除去し、新たな培養液を加えた。次いで、培養物を2日毎に培養液を交換しながら、5%CO2インキュベーター中37℃で培養皿でインキュベートした。
【0040】
培養培地
10%ウシ胎児血清を添加したウイリアムのE培地;10−7Mデキサメタゾン(dexamethasone)(Sigma);Becton−Dickinson(ベッドフォード、MA)製の、インシュリン(6.25μg/ml)、トランスフェリン(transferrin;6.25μg/ml)、亜セレン酸(6.25ng/ml)、ウシ血清アルブミン(1.25mg/ml)及びリノレン酸(5.35μg/ml)含有グルタミン2mmol/L ITS+プレミックス(premix)。ペニシリン/ストレプトマイシン5,000μg/mlファンギゾン(Fungizone;250μg/ml)。
【0041】
抗体
この系で用いることができる可能性のある幾つかの抗体の例は;全てCHEMICON International、カリフォルニア州92590、テメキュラ、シングル・オーク・ドライブ、28820番地から供給される:
SSEA−1(カタログNo.MAB4301)
SSEA−3(MAB4303)
SSEA−4(MAB4304)
TRA 1−60(MAB4360)
TRA 1−81(MAB4381)
造血細胞抗体CD133(カタログNo.MAB1133)R&D Systems, Inc.製
【0042】
緩衝液
TBS1%BSA、10mMトリス、150mMNaOH
RPMI1%FCS
PBS1.1mM KH2PO4、140mM NaCl、4.5mM Na2HPO47H2O
【0043】
ヒト乳汁からの幹細胞の精製に続き、Dynabeads(登録商標)に結合された幹細胞(Tra−1−60及びSSEA−4)に対する細胞外マーカーを用い、顕微鏡スライド上で幹細胞をサイトスピンし、ヘマトキシリン及びエオシンを用いて幹細胞を染色した(図2)。これらの同じ精製された幹細胞を用い、細胞を培養することができ(図3)、これらの細胞が細胞分割することが立証された(図4)。長期間の培養の後、ヘマトキシリン及びエオシンを用いてこれらの細胞を染色することができ(図5)、これらの細胞は、共焦点顕微鏡によって可視化されているように(図6)、数ヶ月間の培養後も幹細胞抗体(Tra−1−60及びSSEA−4)に結合し続けるので、幹細胞のままであることが立証された。単離された細胞の増殖も立証された(図7参照)。
【0044】
多能性細胞の単離/増殖の別の方法では、明らかに乳腺細胞には見えない多能性細胞の単層の増殖が可能な特定の増殖培地の組み合わせを用いる(図8参照)。確かに、培養物中で増殖した細胞は、例えば、肝臓幹細胞培養物と物理的に(physically)同一である。細胞が発現する細胞マーカー及びそれらの遺伝子活性によるこれらの細胞のさらなる分類が可能である。
【0045】
この単離又は選択的増殖の別法は、次のように行うことができる:
Matrigel(登録商標)被覆プレートの製造:
Matrigel(商業的に入手可能な再生基底膜、BD Matrigel(登録商標)、BD Biosciences ref−354234)を、氷上でゆっくりと解凍した。ピペットチップ及び培養皿を冷却し、使用するまで氷上に置いた。50μlの解凍済みのMatrigelをアリコートし(aliquoted)、ピペットチップで24ウェルの平底のミクロプレートの各ウェルに分配し、氷上で30分間インキュベートした。これに続き、ゲルを定着させるために、プレートを37℃で30分間さらにインキュベートした。定着された1mlの増殖培地を各ウェルにアリコートし、使用するときまで(5日より長くない)プレートを、一旦インキュベーターに戻した。
【0046】
細胞の増殖及び調製
新たに採取した(expressed)ハイドミルク(hind milk)(約50ml、ハイドミルクは、脂肪分が多く、クリーム色のヒトの母乳であり;乳児のカロリーの大部分を提供し、体重増加に最も寄与する)を遠心分離して細胞をペレット化した(詳細は上述した通りである)。
【0047】
細胞ペレットをRPMI培地(RPMI Medium 1640、Gibco ref−108−36)で、2回だけ洗浄した。
【0048】
次いで、細胞を、プラスチック製の培養皿を増殖培地(細胞培養増殖培地組成:RPMI 1640;ウシ胎児血清20%;インシュリン5μg/ml;コレラ毒素50ng/ml;ヒドロコルチゾン0.5μg/ml;ペニシリン・ストレプトマイシン・ファンギゾン2回(2x))で処理した細胞培養器上にプレーティングし、約14〜20日間インキュベートした。
【0049】
この期間後、大きなコロニーを示し、密集状態に近づいたプレートを選択し、トリプシン処理(trypsinization;Trypsin−EDTA 1回(1x)、JRH Bioscience ref=59218)によって細胞を刈り取った。
【0050】
刈り取った細胞を増殖培地で1回洗浄し、Matrigel(登録商標)被覆プレート上に、約1500細胞/mlの密度でプレーティングした。
【0051】
約14日後、密集状態の細胞の斑点(patches)が観察できる。
【0052】
説明
細胞の密集状態のシートが発達し(develop)、コロニー内の細胞が密接であり、形態学的には典型的な上皮である。このようにして培養された母乳由来の細胞が第一次培養で増殖し、はっきりと明確な境界を有する広い円形のコロニーを形成するという事実は、前駆体細胞様の性質を有する細胞を強く暗示している。細胞が未分化であるように見え、多くが細胞質に対して大きな核の割合を示すことも、前駆体細胞様の同定(progenitor like identity)のさらなる証拠である。
【0053】
使用した具体的な材料
コレラ毒素(LIST BIOLOGICAL LABORATORIES ref−101B)
ウシ胎児血清(Invitrogen ref−10099141)
ヒドロコルチゾン(Sigma ref−HO135)
インシュリン(Sigma ref−19278)
ペニシリン/ストレプトマイシン ファンギゾン(Scott Scientific ref−17.745E)
マイクロプレート(IWAKI ref−3820−024)
細胞培養皿(Corning ref−430165)
【0054】
多能性幹細胞は柔軟性(plasticity)が有るため、これらの単離された細胞は、多数の異なる用途に用いることができる。例えば、これらの細胞は、次の用途に用いることができる:
【0055】
・遺伝子治療処理、子宮内の胎児の治療、及び病気治療のための細胞、組織、腺、又は臓器の生産を含む、母親及び乳児(及びもしかすると他の個体)の利益のための組織を作り出すこと。これには、それらの科学研究、臨床、診断又は商業的応用における使用を含む。これはまた、細胞、細胞性成分、細胞分泌物、細胞単離物、ヌクレオチド、デオキシリボ核酸、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む生物学的化合物の生産を含む。さらに、これは、下記の組織への病気治療、組織再生、肉体増大(body enhancement)、又は美容適用のための組織、腺又は臓器の生産の前駆体、又は結果物(consequence)としての細胞の生産を含むことができる:嗅覚、聴覚、視覚、リンパ管、免疫、造血、内分泌、外分泌、腸、胃腸、パイエル集腺、ランゲルハンス島、骨格、筋肉、結合組織、脈管、血液、皮膚、毛髪、爪、乳房、脳及び中枢神経系、肝臓、心臓、肺、腎臓、骨、膵臓、生殖器。
【0056】
・将来のための貯蔵。これらの幹細胞又は分化した又は脱分化した細胞の後での使用は、これらの幹細胞の、下記に概説するような将来の利用のための貯蔵物を含むことができる。これは、科学研究、臨床、診断又は商業的用途における使用のためのそれらの貯蔵物を含む。
【0057】
・細胞培養のための使用。それがこれらの幹細胞の増殖(propagation)のためか、又はこれらの幹細胞の他の細胞種類への分化若しくは脱分化のためかを問わない。これは、科学研究、臨床、診断又は商業的用途におけるそれらの使用を含む。
【0058】
・クローニングのための使用。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、胚であるか全動物であるかに関わらず、クローン生産における使用であり得る。これは科学研究、臨床、診断又は商業的利用におけるそれらの使用を含む。
【0059】
・科学研究のための使用。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、科学研究における使用であり得る。これは、細胞、細胞成分、細胞分泌物、細胞単離物、ヌクレオチド、デオキシリボ核酸、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む生物学的化合物の生産を含むことができる。さらに、これは、下記組織のための病気治療、組織再生、肉体増大(body enhancement)、又は美容適用のための組織、腺又は臓器の生産の前駆体、又は結果物としての細胞の生産を含むことができる:嗅覚、聴覚、視覚、リンパ管、免疫、造血、内分泌、外分泌、腸、胃腸、パイエル集腺、ランゲルハンス島、骨格、筋肉、結合組織、脈管、血液、皮膚、毛髪、爪、乳房、脳及び中枢神経系、肝臓、心臓、肺、腎臓、骨、膵臓、生殖器。
【0060】
・臨床、診断又は商業的用途のための使用。これらの幹細胞、これらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、臨床、診断又は商業的用途における使用であり得る。これは、細胞、細胞成分、細胞分泌物、細胞単離物、ヌクレオチド、デオキシリボ拡散、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む生物学的化合物の生産を含む。さらに、これは、下記組織のための病気治療、組織再生、肉体増大、若しくは美容用途のための組織、腺若しくは臓器の生産の前駆体としての、若しくは結果物としての細胞の生産を含むことができる:嗅覚、聴覚、視覚、リンパ管、免疫、造血、内分泌、外分泌、腸、胃腸、パイエル集腺、ランゲルハンス島、骨格、筋肉、結合組織、脈管、血液、皮膚、毛髪、爪、乳房、脳及び中枢神経系、肝臓、心臓、肺、腎臓、骨、膵臓、生殖器。
【0061】
・バイオエンジニアリングのための使用。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、人体における任意の他の細胞の生産のための使用であり得る。これらの細胞、組織、又は臓器は、次いで、第三者の美容/再建外科、臓器/組織移植又は細胞/組織/臓器の生産のために用いることができる。これは、細胞、細胞成分、細胞分泌物、細胞単離物、デオキシリボ核酸、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む生物学的化合物の生産を含むことができる。さらに、これは、下記組織のための、病気治療、組織再生、肉体増大、又は美容用途のための組織、腺又は臓器の再生の、前駆体としての、又は結果物としての細胞の生産を含むことができる:嗅覚、聴覚、視覚、リンパ管、免疫、造血、内分泌、外分泌、腸、胃腸、パイエル集腺、ランゲルハンス島、骨格、筋肉、結合組織、脈管、血液、皮膚、爪、乳房、脳及び中枢神経系、肝臓、心臓、肺、腎臓、骨、膵臓、生殖器。
【0062】
・ラクトエンジニアリング(lactoengineering)のための使用。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、細胞、細胞成分、細胞分泌物、細胞単離物、ヌクレオチド、デオキシリボ核酸、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む乳汁(milk)の生物学的化合物の生産するための使用であり得る。
【0063】
・乳房組織再生。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、乳房組織を生産するための使用であり得る。
【0064】
・乳房再建外科。この上記のように再生された組織を、次いで、乳房再建外科のために用いることができる。
【0065】
・乳房美容外科。この上記のように再生された組織を、次いで、乳房美容外科のために用いることができる。
【0066】
・内分泌腺組織再生及び/又は外科。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、内分泌腺組織の生産であり得、そしてそれは今度は、内分泌腺の再生又は置換のための使用であり得る。
【0067】
・細胞、細胞成分、細胞分泌物、細胞単離物、ヌクレオチド、デオキシリボ核酸、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む生物学的化合物の生産。
【図面の簡単な説明】
【0068】
添付図面に、本発明の好ましい実施形態を示す:
【図1】図1は、脂肪及びスキムミルクを除去した後のヒト乳汁の全混合細胞集団を示す電子顕微鏡写真である。
【図2a】図2aは、単独の幹細胞(sc)を示す電子顕微鏡写真である。
【図2b】図2bは、単独の幹細胞(sc)を示す電子顕微鏡写真である。
【図2c】図2cは、Dynabeads(登録商標)(Db)に未だ結合している単独の幹細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、培養液中に入れて1日後の単独の幹細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、1〜2週間培養後、全細胞集団から単離された幹細胞が細胞分割(細胞分裂)した様子を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、顕微鏡スライド上にサイトスピンされ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された2ヶ月培養後の幹細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【図6a】図6aは、培養2ヶ月後、培養培地から細胞を洗い出し、共焦点顕微鏡上で、蛍光標識された第2抗体(AlexaFluor−488に結合されたヤギ抗マウスIgG)に結合されたSSEA−4抗体によって可視化される前にスライド上にサイトスピンされた、SSEA−4抗体によって単離された幹細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【図6b】図6bは、培養2ヶ月後、培養培地から細胞を洗い出し、共焦点顕微鏡上で、蛍光標識された第2抗体(AlexaFluor−488に結合されたヤギ抗マウスIgG)に結合されたTra 1−60(b)抗体によって可視化される前にスライド上にサイトスピンされた、Tra 1−60抗体によって単離された幹細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、培養液中の単離された幹細胞の増殖率を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の別の手順を用いて、乳腺分泌物から得た多能性細胞の単層を示す電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0069】
Db:Dynabeads(登録商標)
sc:幹細胞
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から細胞を単離する方法、並びにそのような細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、分化の過程を経てより専門分化した多様な細胞の種類を生産できる、クローン原性の、自己更新する(self-renewing)前駆体細胞と定義されている。古典的には、幹細胞には2つの別の型が存在すると信じられてきた。胚幹(ES)細胞は、胚盤胞の内部塊(inner mass)から誘導され、多能性であり、それ故、体内で全ての分化した細胞種類を生産することができる。幹細胞の他方の亜母集団(sub-population)は、ES細胞から誘導され、臓器又は組織特異的である。また、これらの多能性の細胞は、成熟幹細胞として知られており、起源となるそれらの臓器から組織にのみ分化できると信じられていた。これらの多能性の細胞の例は、造血幹細胞であり、それは血液及び免疫系の細胞を絶えず再生させる。
【0003】
幹細胞は、これまで、血液、臍帯血、骨髄、皮膚、小腸、及び乳房組織(breast tissue)等の継続的な細胞回転率が高い組織から、脳、骨格筋、及び乳歯等の回転率の低い組織までの広範囲の組織から、単離されていた。組織の起源とは関係なく、成熟幹細胞は、それらがそれらから誘導された組織にのみ分化することができるというのが、長年にわたる定説であった。しかしながら、最近の研究で、新規な環境に暴露すると、臓器特異的幹細胞は、これらの内在的な制限を克服し、他の組織に分化転換する(transdifferentiate)ことが立証された。例えば、神経幹細胞は血液細胞に分化転換でき、幹細胞から誘導された骨髄は筋肉、脳、肝臓及び心臓細胞に分化転換でき、そして幹細胞から誘導された皮膚は脳細胞に分化転換できることが示された。従って、現在では、臓器特異的幹細胞の発生の制限に関係する定説は正しくないであろうと思われ、適当な環境刺激下にあるこれらのES細胞は別の細胞種類に分化転換できるものと思われる。
【0004】
ヒトの乳汁は異なる細胞種類の混合物を含んでいる。分泌上皮細胞(乳腺細胞;lactocytes)は、乳房の継続的な充填及び放出に関連する圧力の結果として乳房の基底膜が剥がれ落ちることにより乳汁中にそれらが見出される。乳腺細胞は、全細胞集団の約10〜20%の割合を占めている。ヒト乳汁中に見出される残りの細胞の主なものは白血球(リンパ球、マクロファージ、単核白血球、ナチュラルキラー細胞、好塩基球、好酸球、及び好中球などの免疫細胞)であり、乳房を感染症から保護し、乳児に免疫保護を与えることの両方のために、これらは乳汁中に存在すると信じられている。現在までのところ、これらは乳汁中に含まれていると信じられている細胞種類のみである。
【発明の開示】
【0005】
従って、本発明の基礎をなす対象となる課題は、人体から前駆体細胞を単離する新規な方法を提供することである。ここで、語句「前駆体細胞」は、幹細胞様の特性を有する全ての細胞を含むが、好ましくは、例えば、幹細胞のような多能性又は多型潜在性の前駆体細胞を含むことを排除しない。
【0006】
本発明は、非妊娠期、妊娠期、授乳期、衰退期(involuting period)のうちの少なくとも一つの時期にある該人体の初乳、成熟乳、又は男性又は女性からの乾燥期分泌物である、ヒト乳腺分泌物から直接的又は間接的にそのような細胞を誘導することにより上記課題を解決する。言い換えれば、本明細書中で我々は、驚くべきことに、前駆体細胞がヒト分泌乳汁(lactation milk)中に見出されること、これらの細胞が母親及び乳児の組織を生産するために利用される可能性を有していることを立証する。ヒト乳腺分泌物のみならず哺乳類種由来の一般的な乳腺分泌物も、対応する前駆体細胞の単離に用いることができることに留意すべきである。前駆体細胞特異的抗体によって、確かに哺乳類分泌物(mammalian secretion)、即ち、例えば、ヒト乳汁が前駆体細胞を含んでいることを明らかに示すことができる。
【0007】
本発明の第1の好ましい実施態様においては、乳汁分泌物の非細胞性部分が細胞性部分から分離され、特に非多能性又は非多型潜在性細胞が、このようにして誘導された細胞性部分から除去されて、前記前駆体細胞が乳汁分泌物から単離される。多能性細胞以外の乳汁分泌物の細胞性部分は、さらに、分泌上皮細胞、白血球及び特に、細菌細胞のような非ヒト細胞を含んでいてもよい。それらの非多能性細胞は、乳汁分泌物から除去されていることが好ましい。
【0008】
本発明の別の好ましい実施態様では、授乳期の乳汁分泌物を前駆体細胞の単離に用い、個体摂食の開始後;これに対する個体摂取の終わり;授乳期(lactation phase);好ましくは早期授乳(early lactation)等の乳汁分泌の特定の段階にある乳汁分泌物を用いる。
【0009】
磁気ビーズを用いれば、それらの分泌物由来の前駆体細胞を単離するのに特に有用で実用的な方法が可能である。それらの磁気ビーズは、この目的を達成するために、前駆体細胞にビーズを結合させた前駆体細胞特異的抗体に結合されていることが好ましい。
【0010】
通常は、第1工程において細胞性成分を乳汁分泌物から洗い出し、第2工程においてその細胞性成分を抗体で染色して前駆体細胞のマーカーとし、第3工程において結合した抗体によって前駆体細胞を他の細胞から直接的に又は間接的に分離するが、好ましくは上述した磁気ビーズを利用することを排除しない(but not exclusively)。この目的を達成するためには、抗体染色された前駆体細胞をビーズ、好ましくは小さな鉄のビーズに結合させ、前駆体細胞をビーズによって抽出し、小さな鉄ビーズの場合には磁石を用いて抽出することが好ましく、次いで、ビーズ並びに必要ならば抗体を前駆体細胞から除去する。これは、例えば、ビーズを選択することによって可能となり、このビーズは、ビーズに結合された特異的抗体を提供し、その抗体が前駆体細胞に選択的に結合する。純粋な細胞を得るために、続いてビーズを前駆体細胞から除去する。そしてそれは例えば、ビーズと抗体の間のリンクを開裂する酵素によって行うことができる。ビーズ及び抗体の間の結合がDNAに基づくならば、その開裂はDnaseを用いて行うことができ、ビーズと抗体の間の結合がアミノ酸鎖に基づくならば、プロテイナーゼを用いることができる。
【0011】
通常は、例えば、マウス繊維芽細胞支持細胞層のような、非常に特殊な支持細胞層(feeder layer)上で通常の前駆体細胞を培養、即ち、増殖させなければならないが、驚くべきことに、この方法で単離された前駆体細胞は、そのような特殊な支持細胞層を必要とせず、例えば、具体例の範囲に開示した他の支持細胞層に基づく支持細胞層上で通常は増殖させることができる。
【0012】
より具体的には、この単離方法は、下記の工程を含む:(i)全ヒト乳汁分泌物を通常の遠心分離にかけ、一番上の脂肪層、その下のタンパク質及び炭水化物に富む上清、及び底部の細胞ペレットに分け;(ii)脂肪画分及び上清を除去し;(iii)例えば、これらに限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、TBS及び/又はPBS等の緩衝液、又はこれらに限定されないが、ウイリアムズ培養液(Williams media)又はRPMI培養液(RPMI Media)等の培養液を添加し、細胞(前駆体細胞のみを含むものではない)を、緩衝液/培養液中に再懸濁させ、上記と同様に遠心分離し、好ましくはこの工程を3又は4回繰り返し、実質的に純粋な細胞ペレットとし;(iv)前駆体細胞を細胞ペレットから分離する。
【0013】
細胞ペレットからの前駆体細胞の分離は、下記工程で行うことが好ましい:(v)細胞ペレットを培養液、好ましくは例えば、ウシ胎児血清を含有するRPMI培養液中に懸濁し;(vi)この懸濁液を、好ましくは予め前駆体細胞特異的抗体(好ましくは抗マウスIgG抗体のような幹細胞特異的抗体)と共にインキュベートし、抗体が例えば、DNA又はアミノ酸の小さなストランドを介して磁気ビーズに結合された(磁気)ビーズと共にインキュベートし、これらの磁気ビーズ中の細胞懸濁液のインキュベーションは、好ましくは4℃、15分間行い;(vii)前駆体細胞を一旦磁気ビーズに結合させ、細胞−ビーズを含むチューブに磁石を取り付け、このようにしてビーズに結合している前駆体細胞を磁石に引き寄せ、一方結合していない細胞は引き寄せられることなく上清中に残り;(viii)上清を除去して、前駆体細胞抗体を介してビーズと結合した前駆体細胞のみが残る。
【0014】
前駆体細胞にそれらを選択的に結合させることができる他の種類のビーズ又は一般的な分離手段を用いることができることを指摘しなければならない。そのようなビーズは前駆体細胞から分離できなければならず、この目的のためには、下記の加工工程を好ましく用いることができる:(ix)幹細胞抗体を介してビーズに結合された前駆体細胞を適当な開裂手段によって除去し、抗体が小さなDNAストランドを介してビーズと結合されている場合には、Dnaseの添加によることが好ましく;(x)再度磁石を取り付け、もはや幹細胞に結合していないビーズを磁石に引き寄せることによって除去し;(xi)今や単離された前駆体細胞を含む上清を除去する。
【0015】
多能性細胞の特殊な増殖に基づく別の分離方法は、下記工程を含む:
(i)第1工程において全ヒト乳汁分泌物を遠心分離し、一番上の脂肪層、その下のタンパク質及び炭水化物に富む上清、及び底部の細胞ペレットに分ける。
(ii)任意の第2工程において細胞ペレットを培養液中で洗浄する。細胞は、RPMI培養液のみで洗浄することが好ましい。
(iii)第3工程において細胞ペレット中の細胞を、増殖培養液中で処理された細胞培養装置上にプレーティングし、インキュベートする。このインキュベーションは、10〜30日間行うことが好ましく、14〜20日間が最も好ましい。
(iv)好ましくはトリプシン処理により細胞を刈り取る、即ち、細胞を支持体から分離する。次いで、分離した細胞を、好ましくは増殖培養溶液を用いて洗浄する。
(v)刈り取られ、洗浄された細胞を、再生基底膜プレパラート(reconstituted basement membrane preparation)上にプレーティングし、好ましくは密集状態(confluence)になるまで増殖させる。この最後の工程において、例えば、BD Biosiences社から入手可能なMatrigel(登録商標)のようなマウスEHS肉腫から抽出された、溶解された(solubulized)基底膜プレパラートを用いることが好ましい。
【0016】
この方法は前駆体細胞として典型的な形態学を有する細胞培養物を与える。この細胞は乳腺細胞(lactocytes)のようには見えず、前駆体細胞/幹細胞/乳腺細胞の増殖に寛容な培地なので、これらの細胞は細菌細胞ではあり得ない。
【0017】
さらに、本発明は、前駆体細胞に関し、好ましくは上記の方法を用いて誘導された多能性又は多型潜在性の前駆(幹)細胞である。
【0018】
さらに、本発明はそのような前駆体細胞の、例えば、ex vivo、in vitro及び/又はin vivo応用への使用に関する。本発明の範囲を制限することなく、そのような使用は下記具体例及びそれらの組み合わせにも及ぶ:母親及び/又は乳児及び/又は他の個体の利益のための組織又は細胞の生成;それに続く遺伝子治療処置又は子宮内の胎児の治療;病気治療のための細胞、組織、腺又は臓器の生産;それに続くクローニング又は科学研究;下記目的の群からの一つ又は複数:臨床、診断、バイオエンジニアリング、ラクトエンジニアリング(lactoengineering)、乳房組織再生、乳房再建外科手術(breast reconstructive surgery)、乳房美容(breast cosmetic)若しくは乳房増大外科手術(enhancement surgery)、外分泌腺組織再生及び/又は外科手術。
【0019】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項に述べられている。
【0020】
添付図面に、本発明の好ましい実施形態を示す:
図1:
図1は、脂肪及びスキムミルクを除去した後のヒト乳汁の全混合細胞集団を示す。
図2:
図2は、全乳汁細胞集団から単離された幹細胞(sc)を示す。これらの細胞は、顕微鏡スライド(slides)上にサイトスピン(cytospun)され、ヘマトキシリン及びエオシンで染色されていた。図2a及び2bは、単独の幹細胞(sc)を示す。図2cは、Dynabeads(登録商標)(Db)に未だ結合している単独の幹細胞を示す。Dynabeads(登録商標)(Db)は、4.5μMの大きさであり、それによって幹細胞の大きさが6〜7μMであると見積もることができる。
図3:
全乳汁細胞集団から幹細胞を精製した後、単離された幹細胞を種々の培養条件を用いて培養することができ;図3は、培養液中に入れて1日後の単独の幹細胞を示す。
図4:
1〜2週間培養後、全細胞集団から単離された幹細胞は細胞分割(細胞分裂)し;この写真中の矢印は、細胞分裂している細胞を示す。
図5:
数ヶ月培養後、これらの細胞は他の細胞種類に分化したようには見えず;図5は、顕微鏡スライド上にサイトスピンされ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された2ヶ月培養後の幹細胞を示す。
図6:
培養2ヶ月後、幹細胞は分化しておらず;図6は、培養2ヶ月後、SSEA−4(a)及びTra 1−60(b)抗体によって単離された幹細胞を示し;培養培地から細胞を洗い出し、共焦点顕微鏡上で、蛍光標識された第2抗体(AlexaFluor−488に結合されたヤギ抗マウスIgG)に結合されたSSEA−4(a)及びTra 1−60(b)抗体によって可視化される前にスライド上にサイトスピンされた。
図7:
図7は、培養液中の単離された幹細胞の増殖率を示し;細胞は4日間に渡って分割増殖が見られ;Dynabeads(登録商標)及びSSEA−4抗体によって単離された細胞は、4日間の培養で、約50細胞/プレート〜150細胞/プレートの細胞総数の増加を示し;プレート中央領域を決定し、十字形の計数パターン(cruciform counting pattern)を用い;各培養物のN=10領域及び日にち毎の数を簡単に合計し;この図に、同じ実験を3回行ったデータを示す。
図8:
図8は、本発明の別の手順を用いて、乳腺分泌物から得た多能性細胞の単層を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
幹細胞であると信じられる細胞が実際に幹細胞であるか否かを決定するために、対象の細胞の亜致死照射されたマウスに移植することが従来は必要であった。次いで、これらの移植された細胞は、これらのマウスのいくつかの臓器に定着し(locate)、増殖する(repopulate)と、問題の細胞は多能性幹細胞であると考えられていた。しかしながら、より最近では、多能性幹細胞の細胞外マーカー(例えば、Tra−1−60及びSSEA−4;Chemicon International, Temecula, California,US)の同定により、移植による長いプロセス無しで多能性(幹)細胞の同定が可能になった。
【0022】
緩やかな遠心分離、上清の吸引及び緩衝液又は培養液中への細胞の再懸濁の工程を数回繰り返してヒト乳汁から全ての細胞を洗い出した後、製造者の仕様書に従ってdynabeads用いて幹細胞を全乳汁細胞集団から単離した(図1)。緩衝液としてトリス緩衝生理食塩水溶液(TBS)又はリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)を用いることができる。特に、トリス濃度10mM、NaOH濃度150mMであり、pHを7.4付近に調整されたTBS溶液を用いることができる。PBS溶液の場合には、それらはKH2PO4濃度1.1mM、NaCl濃度140mM、Na2HPO4・7H2O濃度4.5mM及びNaCl濃度2.7mMであり、pHを7.4付近に調整されたものでよい。培養液としては、Sigma Aldrich、米国から、製品番号R6504、R7755、R4130又はW4125、W4128、W1878で入手可能なWilliams又はRPMI(Rosewell Park Memorial Institute)を用いることができる。培養液として、Gibco(米国カリフォルニア州)、カタログNo.11875−093のRPMIを入手することもできる。
【0023】
幹細胞特異的抗体、(例えば、Tra−1−60、Tra 1−81及び/又はSSEA−4、両者ともモノクローナルであり、両者とも例えば、Chemicon international、CHEMICON International、カリフォルニア州92590、Temecula、Single Oak Drive28820番地から入手可能)を、前駆体細胞の単離のためにDynabeads(登録商標)に結合した。造血細胞抗体CD133(カタログNo.MAB1133;米国カリフォルニア州のR&D Systems,Inc製)を用いることもできる。
【0024】
末梢血液由来の原始造血幹細胞及び前駆体細胞は、免疫−磁気細胞分離原理を用いてすでに単離されている。モノクローナル抗体結合磁気粒子(CliniMACS System及びReagent AC133;Miltenyi Biotec製)を用いた研究グループが、CD133陽性細胞の単離及び培養に成功した。
【0025】
任意の幹細胞特異的抗体(SSEA−3、SSEA−1及びTRA 1−81、Oct−4、CD133を含む)をDynabeads(登録商標)と共にインキュベートする。Dynabeads(登録商標)は、Dynal AS、NOから入手可能な小さな鉄製のビーズであり、それに小さなDNAストランドを介して抗マウスIgG抗体が結合されている。例えば、Dynal CD34の名称で入手可能なDynabeads(登録商標)を用いることができる。Dynabeads(登録商標)を乳汁から単離された細胞と共に4℃で15分間インキュベートする前に、Dynabeads(登録商標)のインキュベーションを室温で1時間行う。幹細胞を、通常約30分〜1時間かけて、一旦Dynabeadsに結合させ、細胞/Dynabeads(登録商標)が入ったチューブの側面に磁石を取り付ける。Dynabeads(登録商標)は、直径4.5μmの、均一な、ポリスチレン系の常磁性ビーズである。(幹細胞が結合した)Dynabeads(登録商標)を磁石に引き寄せ、一方、結合していない細胞は引き寄せられることなく上清中に残る。次いで、上清を除去し、幹細胞抗体を介してDynabeads(登録商標)に結合された細胞のみとする。幹細胞抗体を介してDynabeads(登録商標)に結合された細胞を、Dnaseを添加して小さなDNAストランドを破壊することによって外す。これを解放緩衝液(releasing buffer)と呼び、Dynal kit 62500 U/ml(指示書中で引用されているバイアル当たり15000〜20000U)の一部である。再度磁石を取り付け、もはや幹細胞に結合していないDynabeads(登録商標)を引き寄せてDynabeads(登録商標)を除去する。このとき上清は、取り外された幹細胞を含んでいる。これらの幹細胞は、上記又は下記に列挙されている任意の次の応用に用いることができる。
【0026】
単離された前駆体(幹)細胞は、ノックアウト−ダルベッコ修飾イーグル培地(Knockout-Dulbecco's modified Eagle's medium)中のマウス胚繊維芽細胞支持細胞(mouse embryo fibroblast feeder cells)上で培養することができる。通常、培養は、37℃の温度で行うことができる。
【0027】
支持細胞の利用例
・ヒト胚幹細胞の長期間の増殖は、最近では、支持細胞としての最初の(primary)マウス胚繊維芽細胞と共培養することによって達成されている。
【0028】
・ソニック・ヘッジホッグ(sonic hedgehog)発現支持細胞を用いる培養上皮組織の形成の促進。
【0029】
・ヒト成熟骨髄細胞は、培養物中のヒト胚幹細胞の長期間の増殖(expansion)をサポートする。
【0030】
・OP9支持細胞を必要とする脈管形成のin vitroモデルでの胚幹細胞の内皮細胞への増殖及び成熟。
【0031】
・成熟ブタ血液由来のマクロファージの選択的増殖(expansion)及び継続培養。マクロファージは、選択的に増殖し(expanded)、成熟ブタ血液から直接、STOマウス繊維芽細胞の支持細胞層を覆う培養液中で継続的に培養された。
【0032】
・その生存のために繊維芽細胞に依存している、新規なヒト未成熟巨核芽球性白血病細胞株、M−MOKの確立及び特徴付け。新規な繊維芽細胞依存性ヒト未成熟巨核芽球性白血病細胞株(M−MOK)を、急性巨核芽球性白血病の少女の骨髄から確立し、その増殖が、ヒト胚細胞性肺由来繊維芽細胞、HEL−Oの存在に完全に依存していることを確定した。
【0033】
・支持細胞層として予め照射を受けた胎児性G30ブタ繊維芽細胞を用いたブタ胚盤胞からの胚盤細胞のin vitro培養。
【0034】
・乳児及び小児の急性リンパ球性白血病(ALL)細胞は、マウス骨髄由来の内皮脂肪細胞(14F1.1)のクローニングされた細胞株との共培養で優先的に生き残ることが見出され、マウス間質細胞の存在下で大規模な(extensive)増殖を示した。これらのALL細胞は、マウス間質クローン14F1.1に強く依存しており、内皮含脂肪細胞の不存在下又は種々の支持細胞によっては増殖できなかった。
【0035】
細胞増殖(cell growth)
Dynabeads(登録商標)及びSSEA−4抗体によって単離された細胞は、4日で約50細胞/プレート〜150細胞/プレートの細胞総数を示した(図7参照)。
【0036】
方法:
細胞の準備
150mlの全乳汁を2000rpmで15分間回転し、細胞を回収する。細胞ペレットを、TBS1%BSAの約4ml中に再懸濁し、再度10分間遠心分離する。
最終のペレットは、RPMI1%FCS200μl中に再懸濁する。
【0037】
ビーズの調製
ビーズをRPMI1%ウシ胎児血清で3回洗浄する。
500μlのTBS1%BSA中1μlの濃度の一次抗体でビーズを被覆し、緩やかに撹拌しながら、室温で1時間インキュベートする。
被覆ビーズを分離し、TBS1%BSAの1mlで3回洗浄して、きれいなチューブに移す。最後は1mlのRPMI1%FCSで洗浄する。
【0038】
細胞の単離
200μlの細胞調製物(cell preparation)をビーズに添加し、約100℃で30分間インキュベートする。
インキュベーションに続き、結合していない画分を捨てる。
200μlのRPMI1%FCSを細胞とビーズの複合体に加え、次いで、緩やかにピペッティング(pipetted)し、結合していないものをさらに遊離させる。
200μlのビーズと細胞の複合体に、5μlの放出緩衝液(releasing buffer)を添加し、緩やかに混合しながら37℃で15分間インキュベートする。
ビーズと細胞の複合体を激しくピペッティングし、細胞を遊離させる。
単離された細胞懸濁液200μlを回収し、無菌のエッペンドルフに添加する。
このとき、この細胞懸濁液を直ちに培養系に導入することができる。
【0039】
培養方法
細胞を、コラーゲン被覆された培養皿に播いた。
所定時間後、上清を注意深く抜き取り、汚染物質を除去し、新たな培養液を加えた。次いで、培養物を2日毎に培養液を交換しながら、5%CO2インキュベーター中37℃で培養皿でインキュベートした。
【0040】
培養培地
10%ウシ胎児血清を添加したウイリアムのE培地;10−7Mデキサメタゾン(dexamethasone)(Sigma);Becton−Dickinson(ベッドフォード、MA)製の、インシュリン(6.25μg/ml)、トランスフェリン(transferrin;6.25μg/ml)、亜セレン酸(6.25ng/ml)、ウシ血清アルブミン(1.25mg/ml)及びリノレン酸(5.35μg/ml)含有グルタミン2mmol/L ITS+プレミックス(premix)。ペニシリン/ストレプトマイシン5,000μg/mlファンギゾン(Fungizone;250μg/ml)。
【0041】
抗体
この系で用いることができる可能性のある幾つかの抗体の例は;全てCHEMICON International、カリフォルニア州92590、テメキュラ、シングル・オーク・ドライブ、28820番地から供給される:
SSEA−1(カタログNo.MAB4301)
SSEA−3(MAB4303)
SSEA−4(MAB4304)
TRA 1−60(MAB4360)
TRA 1−81(MAB4381)
造血細胞抗体CD133(カタログNo.MAB1133)R&D Systems, Inc.製
【0042】
緩衝液
TBS1%BSA、10mMトリス、150mMNaOH
RPMI1%FCS
PBS1.1mM KH2PO4、140mM NaCl、4.5mM Na2HPO47H2O
【0043】
ヒト乳汁からの幹細胞の精製に続き、Dynabeads(登録商標)に結合された幹細胞(Tra−1−60及びSSEA−4)に対する細胞外マーカーを用い、顕微鏡スライド上で幹細胞をサイトスピンし、ヘマトキシリン及びエオシンを用いて幹細胞を染色した(図2)。これらの同じ精製された幹細胞を用い、細胞を培養することができ(図3)、これらの細胞が細胞分割することが立証された(図4)。長期間の培養の後、ヘマトキシリン及びエオシンを用いてこれらの細胞を染色することができ(図5)、これらの細胞は、共焦点顕微鏡によって可視化されているように(図6)、数ヶ月間の培養後も幹細胞抗体(Tra−1−60及びSSEA−4)に結合し続けるので、幹細胞のままであることが立証された。単離された細胞の増殖も立証された(図7参照)。
【0044】
多能性細胞の単離/増殖の別の方法では、明らかに乳腺細胞には見えない多能性細胞の単層の増殖が可能な特定の増殖培地の組み合わせを用いる(図8参照)。確かに、培養物中で増殖した細胞は、例えば、肝臓幹細胞培養物と物理的に(physically)同一である。細胞が発現する細胞マーカー及びそれらの遺伝子活性によるこれらの細胞のさらなる分類が可能である。
【0045】
この単離又は選択的増殖の別法は、次のように行うことができる:
Matrigel(登録商標)被覆プレートの製造:
Matrigel(商業的に入手可能な再生基底膜、BD Matrigel(登録商標)、BD Biosciences ref−354234)を、氷上でゆっくりと解凍した。ピペットチップ及び培養皿を冷却し、使用するまで氷上に置いた。50μlの解凍済みのMatrigelをアリコートし(aliquoted)、ピペットチップで24ウェルの平底のミクロプレートの各ウェルに分配し、氷上で30分間インキュベートした。これに続き、ゲルを定着させるために、プレートを37℃で30分間さらにインキュベートした。定着された1mlの増殖培地を各ウェルにアリコートし、使用するときまで(5日より長くない)プレートを、一旦インキュベーターに戻した。
【0046】
細胞の増殖及び調製
新たに採取した(expressed)ハイドミルク(hind milk)(約50ml、ハイドミルクは、脂肪分が多く、クリーム色のヒトの母乳であり;乳児のカロリーの大部分を提供し、体重増加に最も寄与する)を遠心分離して細胞をペレット化した(詳細は上述した通りである)。
【0047】
細胞ペレットをRPMI培地(RPMI Medium 1640、Gibco ref−108−36)で、2回だけ洗浄した。
【0048】
次いで、細胞を、プラスチック製の培養皿を増殖培地(細胞培養増殖培地組成:RPMI 1640;ウシ胎児血清20%;インシュリン5μg/ml;コレラ毒素50ng/ml;ヒドロコルチゾン0.5μg/ml;ペニシリン・ストレプトマイシン・ファンギゾン2回(2x))で処理した細胞培養器上にプレーティングし、約14〜20日間インキュベートした。
【0049】
この期間後、大きなコロニーを示し、密集状態に近づいたプレートを選択し、トリプシン処理(trypsinization;Trypsin−EDTA 1回(1x)、JRH Bioscience ref=59218)によって細胞を刈り取った。
【0050】
刈り取った細胞を増殖培地で1回洗浄し、Matrigel(登録商標)被覆プレート上に、約1500細胞/mlの密度でプレーティングした。
【0051】
約14日後、密集状態の細胞の斑点(patches)が観察できる。
【0052】
説明
細胞の密集状態のシートが発達し(develop)、コロニー内の細胞が密接であり、形態学的には典型的な上皮である。このようにして培養された母乳由来の細胞が第一次培養で増殖し、はっきりと明確な境界を有する広い円形のコロニーを形成するという事実は、前駆体細胞様の性質を有する細胞を強く暗示している。細胞が未分化であるように見え、多くが細胞質に対して大きな核の割合を示すことも、前駆体細胞様の同定(progenitor like identity)のさらなる証拠である。
【0053】
使用した具体的な材料
コレラ毒素(LIST BIOLOGICAL LABORATORIES ref−101B)
ウシ胎児血清(Invitrogen ref−10099141)
ヒドロコルチゾン(Sigma ref−HO135)
インシュリン(Sigma ref−19278)
ペニシリン/ストレプトマイシン ファンギゾン(Scott Scientific ref−17.745E)
マイクロプレート(IWAKI ref−3820−024)
細胞培養皿(Corning ref−430165)
【0054】
多能性幹細胞は柔軟性(plasticity)が有るため、これらの単離された細胞は、多数の異なる用途に用いることができる。例えば、これらの細胞は、次の用途に用いることができる:
【0055】
・遺伝子治療処理、子宮内の胎児の治療、及び病気治療のための細胞、組織、腺、又は臓器の生産を含む、母親及び乳児(及びもしかすると他の個体)の利益のための組織を作り出すこと。これには、それらの科学研究、臨床、診断又は商業的応用における使用を含む。これはまた、細胞、細胞性成分、細胞分泌物、細胞単離物、ヌクレオチド、デオキシリボ核酸、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む生物学的化合物の生産を含む。さらに、これは、下記の組織への病気治療、組織再生、肉体増大(body enhancement)、又は美容適用のための組織、腺又は臓器の生産の前駆体、又は結果物(consequence)としての細胞の生産を含むことができる:嗅覚、聴覚、視覚、リンパ管、免疫、造血、内分泌、外分泌、腸、胃腸、パイエル集腺、ランゲルハンス島、骨格、筋肉、結合組織、脈管、血液、皮膚、毛髪、爪、乳房、脳及び中枢神経系、肝臓、心臓、肺、腎臓、骨、膵臓、生殖器。
【0056】
・将来のための貯蔵。これらの幹細胞又は分化した又は脱分化した細胞の後での使用は、これらの幹細胞の、下記に概説するような将来の利用のための貯蔵物を含むことができる。これは、科学研究、臨床、診断又は商業的用途における使用のためのそれらの貯蔵物を含む。
【0057】
・細胞培養のための使用。それがこれらの幹細胞の増殖(propagation)のためか、又はこれらの幹細胞の他の細胞種類への分化若しくは脱分化のためかを問わない。これは、科学研究、臨床、診断又は商業的用途におけるそれらの使用を含む。
【0058】
・クローニングのための使用。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、胚であるか全動物であるかに関わらず、クローン生産における使用であり得る。これは科学研究、臨床、診断又は商業的利用におけるそれらの使用を含む。
【0059】
・科学研究のための使用。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、科学研究における使用であり得る。これは、細胞、細胞成分、細胞分泌物、細胞単離物、ヌクレオチド、デオキシリボ核酸、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む生物学的化合物の生産を含むことができる。さらに、これは、下記組織のための病気治療、組織再生、肉体増大(body enhancement)、又は美容適用のための組織、腺又は臓器の生産の前駆体、又は結果物としての細胞の生産を含むことができる:嗅覚、聴覚、視覚、リンパ管、免疫、造血、内分泌、外分泌、腸、胃腸、パイエル集腺、ランゲルハンス島、骨格、筋肉、結合組織、脈管、血液、皮膚、毛髪、爪、乳房、脳及び中枢神経系、肝臓、心臓、肺、腎臓、骨、膵臓、生殖器。
【0060】
・臨床、診断又は商業的用途のための使用。これらの幹細胞、これらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、臨床、診断又は商業的用途における使用であり得る。これは、細胞、細胞成分、細胞分泌物、細胞単離物、ヌクレオチド、デオキシリボ拡散、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む生物学的化合物の生産を含む。さらに、これは、下記組織のための病気治療、組織再生、肉体増大、若しくは美容用途のための組織、腺若しくは臓器の生産の前駆体としての、若しくは結果物としての細胞の生産を含むことができる:嗅覚、聴覚、視覚、リンパ管、免疫、造血、内分泌、外分泌、腸、胃腸、パイエル集腺、ランゲルハンス島、骨格、筋肉、結合組織、脈管、血液、皮膚、毛髪、爪、乳房、脳及び中枢神経系、肝臓、心臓、肺、腎臓、骨、膵臓、生殖器。
【0061】
・バイオエンジニアリングのための使用。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、人体における任意の他の細胞の生産のための使用であり得る。これらの細胞、組織、又は臓器は、次いで、第三者の美容/再建外科、臓器/組織移植又は細胞/組織/臓器の生産のために用いることができる。これは、細胞、細胞成分、細胞分泌物、細胞単離物、デオキシリボ核酸、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む生物学的化合物の生産を含むことができる。さらに、これは、下記組織のための、病気治療、組織再生、肉体増大、又は美容用途のための組織、腺又は臓器の再生の、前駆体としての、又は結果物としての細胞の生産を含むことができる:嗅覚、聴覚、視覚、リンパ管、免疫、造血、内分泌、外分泌、腸、胃腸、パイエル集腺、ランゲルハンス島、骨格、筋肉、結合組織、脈管、血液、皮膚、爪、乳房、脳及び中枢神経系、肝臓、心臓、肺、腎臓、骨、膵臓、生殖器。
【0062】
・ラクトエンジニアリング(lactoengineering)のための使用。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、細胞、細胞成分、細胞分泌物、細胞単離物、ヌクレオチド、デオキシリボ核酸、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む乳汁(milk)の生物学的化合物の生産するための使用であり得る。
【0063】
・乳房組織再生。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、乳房組織を生産するための使用であり得る。
【0064】
・乳房再建外科。この上記のように再生された組織を、次いで、乳房再建外科のために用いることができる。
【0065】
・乳房美容外科。この上記のように再生された組織を、次いで、乳房美容外科のために用いることができる。
【0066】
・内分泌腺組織再生及び/又は外科。これらの幹細胞、又はこれらの幹細胞から分化した若しくは脱分化した細胞のその後の用途は、内分泌腺組織の生産であり得、そしてそれは今度は、内分泌腺の再生又は置換のための使用であり得る。
【0067】
・細胞、細胞成分、細胞分泌物、細胞単離物、ヌクレオチド、デオキシリボ核酸、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、及びサイトカインを含む生物学的化合物の生産。
【図面の簡単な説明】
【0068】
添付図面に、本発明の好ましい実施形態を示す:
【図1】図1は、脂肪及びスキムミルクを除去した後のヒト乳汁の全混合細胞集団を示す電子顕微鏡写真である。
【図2a】図2aは、単独の幹細胞(sc)を示す電子顕微鏡写真である。
【図2b】図2bは、単独の幹細胞(sc)を示す電子顕微鏡写真である。
【図2c】図2cは、Dynabeads(登録商標)(Db)に未だ結合している単独の幹細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、培養液中に入れて1日後の単独の幹細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、1〜2週間培養後、全細胞集団から単離された幹細胞が細胞分割(細胞分裂)した様子を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、顕微鏡スライド上にサイトスピンされ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された2ヶ月培養後の幹細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【図6a】図6aは、培養2ヶ月後、培養培地から細胞を洗い出し、共焦点顕微鏡上で、蛍光標識された第2抗体(AlexaFluor−488に結合されたヤギ抗マウスIgG)に結合されたSSEA−4抗体によって可視化される前にスライド上にサイトスピンされた、SSEA−4抗体によって単離された幹細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【図6b】図6bは、培養2ヶ月後、培養培地から細胞を洗い出し、共焦点顕微鏡上で、蛍光標識された第2抗体(AlexaFluor−488に結合されたヤギ抗マウスIgG)に結合されたTra 1−60(b)抗体によって可視化される前にスライド上にサイトスピンされた、Tra 1−60抗体によって単離された幹細胞を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、培養液中の単離された幹細胞の増殖率を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の別の手順を用いて、乳腺分泌物から得た多能性細胞の単層を示す電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0069】
Db:Dynabeads(登録商標)
sc:幹細胞
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞様の特性を有する全ての細胞を含む前駆体細胞を人体から単離する方法であって、該細胞が、ヒト乳腺分泌物(mammary secretion)から直接的又は間接的に誘導されたものであり、ヒト乳腺分泌物が、非妊娠期、妊娠期、授乳期、衰退期(involuting period)のうちの少なくとも一つの期間にある該人体の初乳、成熟乳、又は男性又は女性の乾燥期分泌物であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記前駆体細胞が多能性(pluripotent)又は多型潜在性(multipotent)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前駆体細胞が、乳腺分泌物の非細胞性部分が細胞性部分から分離されている乳腺分泌物から単離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
非多能性又は非多型潜在性の細胞が、細胞性部分から除去されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
分泌上皮細胞、白血球及び特に細菌細胞等の非ヒト細胞を、乳腺分泌物から除去することを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
授乳期の乳腺分泌物を前駆体細胞の単離のために用い、個体摂食の開始後;これに対する個体摂取の終わり;授乳期(lactation phase);好ましくは早期授乳(early lactation)等の乳腺分泌の特定の段階にある乳腺分泌物であることを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆体細胞の単離に磁気ビーズを用いることを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1工程において乳腺分泌物の細胞性成分(cellular component)を洗い出し、第2工程において該細胞性成分を抗体で染色して前記前駆体細胞マーカーとし、そして第3工程において、結合された抗体によって、前記前駆体細胞を、その他の細胞から直接的又は間接的に分離することを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体染色された前駆体細胞をビーズ、好ましくは小さな鉄ビーズに結合させ、前記前駆体細胞を、ビーズ、好ましくは小さな鉄ビーズにより、磁石を用いて抽出し、次いで、該ビーズ並びに必要な場合には前記抗体を前記前駆体細胞から除去することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ビーズの除去を、Dnase、Proteinase及びRnaseからなる群から選択される酵素によって実行することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆体細胞を、繊維芽細胞支持細胞層(fibroblast feeder layer)、特にマウス繊維芽細胞支持細胞層を用いずに培養することを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
(i)第1工程において、全ヒト乳腺分泌物を遠心分離して一番上の脂肪層、その下のタンパク質及び炭水化物に富む上清、及び底部の細胞ペレットに分け(leaving)、;
(ii)第2工程において、脂肪画分及び上清を除去し;
(iii)第3工程において、これらに限定されないが、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、TBS及び/又はPBS等の緩衝液、又はこれらに限定されないが、例えば、ウイリアムズ培養液(Williams media)若しくはRPMI培養液(RPMI Media)等の培養液を添加し、前記細胞を緩衝液又は培養液中に再懸濁させ、上記と同様に遠心分離し、好ましくはこのプロセスを3又は4回繰り返して実質的に純粋な細胞ペレットとし;そして
(iv)第4工程において、前記前駆体細胞を細胞ペレットから分離する
ことを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
細胞ペレットをヒト乳腺分泌物から生成させ、次いで、下記の分離工程を用いることを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法:
(v)該細胞ペレットを培養液、好ましくは牛胎児血清を含有するRPMI培養液中に懸濁させ;
(vi)抗マウスIgG抗体等の幹細胞特異性抗体等の前駆体細胞、好ましくは幹細胞特異的抗体と共に予めインキュベートされた磁気ビーズであり、該抗体が小さなDNAストランド(strand)を介して結合されている前記磁気ビーズと共に、この懸濁液をインキュベートし、該細胞懸濁液のインキュベーションは、好ましくは4℃で15分間行い;
(vii)前記前駆体細胞は一旦磁気ビーズに結合し、細胞−ビーズを含有するチューブに磁石を取り付けることにより、前記ビーズと結合した前駆体細胞を該磁石に引き寄せ、一方、結合していない細胞は引き寄せられず懸濁液中に止まり;
(viii)上清を除去して、前記前駆体細胞抗体を介してビーズと結合した前駆体細胞のみを残す。
【請求項14】
次いで、下記の工程を用いることを特徴とする請求項13に記載の方法:
(ix)前記幹細胞抗体を介して前記ビーズに結合された前駆体細胞を、適切な解裂手段、好ましくは、小さなDNAストランドを介してビーズと結合されている抗体の場合には、Dnaseの添加によって除去し;
(x)該ビーズを再度磁石に引き寄せ、もはや前記幹細胞に結合していないビーズを磁石に引き寄せることによって除去し;
(xi)単離された前駆体細胞を含有する上清を除去する。
【請求項15】
前記細胞が、ヒト乳腺分泌物から遠心分離によって分離され、次いで、前駆体細胞/幹細胞/乳腺細胞(lactocyte)の増殖を許容する増殖培養液(growth media)中でインキュベートすることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
(i)第1工程において、全ヒト乳腺分泌物を遠心分離して一番上の脂肪層、その下のタンパク質及び炭水化物に富む上清、及び底部の細胞ペレットとし;
(ii)第2工程において、該細胞ペレットを培養液、好ましくはRPMI培養液のみで洗浄し;
(iii)第3工程において、該細胞ペレットの細胞を殺細菌性(bacteriocidal)及び/又は殺真菌性(fungicidal)の増殖培養液中で処理された細胞培養装置(device)上にプレーティングし、好ましくは10〜30日間、最も好ましくは14〜20日間インキュベートし;
(iv)該細胞を、好ましくはトリプシン処理(trypsination)によって刈り取り(harvest)、好ましくは増殖培養液を用いて洗浄し;
(v)該刈り取った細胞を、再生基底膜プレパラート(reconstituted basement membrane preparation)上にプレーティングし、好ましくは密集状態(confluence)になるまで増殖させる
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(v)において、例えば、Matrigel(登録商標)のような、マウスEHS肉腫から抽出された、可溶化された基底膜プレパラートを用いることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
先行する請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法を用いて生成された前駆体細胞、好ましくは多能性(pluripotent)又は多型潜在性(multipotent)前駆体細胞。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法を用いて生成された多能性(pluripotent)又は多型潜在性(multipotent)前駆体細胞のex vivo、in vitro及び/又はin vivo応用における使用。
【請求項20】
母親及び/又は乳児及び/又は他の個体からの利益のために組織又は細胞を作り出すための請求項19に記載の使用。
【請求項21】
後での(subsequent)遺伝子治療処置(therapy treatments)又は子宮内の胎児の治療を含む請求項17又は20に記載の使用。
【請求項22】
病気治療のための細胞、組織、腺又は臓器の生成のための請求項19〜21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
後でのクローニング又は科学研究のための、請求項19〜23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
臨床、診断、バイオエンジニアリング、ラクトエンジニアリング(lactoengineering)、乳房組織再生(breast tissue regeneration)、乳房再建外科手術(breast reconstructive surgery)、乳房美容(breast cosmetic)若しくは乳房増大外科手術(enhancement surgery)、外分泌腺組織再生及び/又は外科手術からなる群の1つ又は複数の目的のための請求項19〜23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項1】
幹細胞様の特性を有する全ての細胞を含む前駆体細胞を人体から単離する方法であって、該細胞が、ヒト乳腺分泌物(mammary secretion)から直接的又は間接的に誘導されたものであり、ヒト乳腺分泌物が、非妊娠期、妊娠期、授乳期、衰退期(involuting period)のうちの少なくとも一つの期間にある該人体の初乳、成熟乳、又は男性又は女性の乾燥期分泌物であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記前駆体細胞が多能性(pluripotent)又は多型潜在性(multipotent)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前駆体細胞が、乳腺分泌物の非細胞性部分が細胞性部分から分離されている乳腺分泌物から単離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
非多能性又は非多型潜在性の細胞が、細胞性部分から除去されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
分泌上皮細胞、白血球及び特に細菌細胞等の非ヒト細胞を、乳腺分泌物から除去することを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
授乳期の乳腺分泌物を前駆体細胞の単離のために用い、個体摂食の開始後;これに対する個体摂取の終わり;授乳期(lactation phase);好ましくは早期授乳(early lactation)等の乳腺分泌の特定の段階にある乳腺分泌物であることを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆体細胞の単離に磁気ビーズを用いることを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1工程において乳腺分泌物の細胞性成分(cellular component)を洗い出し、第2工程において該細胞性成分を抗体で染色して前記前駆体細胞マーカーとし、そして第3工程において、結合された抗体によって、前記前駆体細胞を、その他の細胞から直接的又は間接的に分離することを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体染色された前駆体細胞をビーズ、好ましくは小さな鉄ビーズに結合させ、前記前駆体細胞を、ビーズ、好ましくは小さな鉄ビーズにより、磁石を用いて抽出し、次いで、該ビーズ並びに必要な場合には前記抗体を前記前駆体細胞から除去することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ビーズの除去を、Dnase、Proteinase及びRnaseからなる群から選択される酵素によって実行することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆体細胞を、繊維芽細胞支持細胞層(fibroblast feeder layer)、特にマウス繊維芽細胞支持細胞層を用いずに培養することを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
(i)第1工程において、全ヒト乳腺分泌物を遠心分離して一番上の脂肪層、その下のタンパク質及び炭水化物に富む上清、及び底部の細胞ペレットに分け(leaving)、;
(ii)第2工程において、脂肪画分及び上清を除去し;
(iii)第3工程において、これらに限定されないが、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、TBS及び/又はPBS等の緩衝液、又はこれらに限定されないが、例えば、ウイリアムズ培養液(Williams media)若しくはRPMI培養液(RPMI Media)等の培養液を添加し、前記細胞を緩衝液又は培養液中に再懸濁させ、上記と同様に遠心分離し、好ましくはこのプロセスを3又は4回繰り返して実質的に純粋な細胞ペレットとし;そして
(iv)第4工程において、前記前駆体細胞を細胞ペレットから分離する
ことを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
細胞ペレットをヒト乳腺分泌物から生成させ、次いで、下記の分離工程を用いることを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の方法:
(v)該細胞ペレットを培養液、好ましくは牛胎児血清を含有するRPMI培養液中に懸濁させ;
(vi)抗マウスIgG抗体等の幹細胞特異性抗体等の前駆体細胞、好ましくは幹細胞特異的抗体と共に予めインキュベートされた磁気ビーズであり、該抗体が小さなDNAストランド(strand)を介して結合されている前記磁気ビーズと共に、この懸濁液をインキュベートし、該細胞懸濁液のインキュベーションは、好ましくは4℃で15分間行い;
(vii)前記前駆体細胞は一旦磁気ビーズに結合し、細胞−ビーズを含有するチューブに磁石を取り付けることにより、前記ビーズと結合した前駆体細胞を該磁石に引き寄せ、一方、結合していない細胞は引き寄せられず懸濁液中に止まり;
(viii)上清を除去して、前記前駆体細胞抗体を介してビーズと結合した前駆体細胞のみを残す。
【請求項14】
次いで、下記の工程を用いることを特徴とする請求項13に記載の方法:
(ix)前記幹細胞抗体を介して前記ビーズに結合された前駆体細胞を、適切な解裂手段、好ましくは、小さなDNAストランドを介してビーズと結合されている抗体の場合には、Dnaseの添加によって除去し;
(x)該ビーズを再度磁石に引き寄せ、もはや前記幹細胞に結合していないビーズを磁石に引き寄せることによって除去し;
(xi)単離された前駆体細胞を含有する上清を除去する。
【請求項15】
前記細胞が、ヒト乳腺分泌物から遠心分離によって分離され、次いで、前駆体細胞/幹細胞/乳腺細胞(lactocyte)の増殖を許容する増殖培養液(growth media)中でインキュベートすることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
(i)第1工程において、全ヒト乳腺分泌物を遠心分離して一番上の脂肪層、その下のタンパク質及び炭水化物に富む上清、及び底部の細胞ペレットとし;
(ii)第2工程において、該細胞ペレットを培養液、好ましくはRPMI培養液のみで洗浄し;
(iii)第3工程において、該細胞ペレットの細胞を殺細菌性(bacteriocidal)及び/又は殺真菌性(fungicidal)の増殖培養液中で処理された細胞培養装置(device)上にプレーティングし、好ましくは10〜30日間、最も好ましくは14〜20日間インキュベートし;
(iv)該細胞を、好ましくはトリプシン処理(trypsination)によって刈り取り(harvest)、好ましくは増殖培養液を用いて洗浄し;
(v)該刈り取った細胞を、再生基底膜プレパラート(reconstituted basement membrane preparation)上にプレーティングし、好ましくは密集状態(confluence)になるまで増殖させる
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(v)において、例えば、Matrigel(登録商標)のような、マウスEHS肉腫から抽出された、可溶化された基底膜プレパラートを用いることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
先行する請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法を用いて生成された前駆体細胞、好ましくは多能性(pluripotent)又は多型潜在性(multipotent)前駆体細胞。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法を用いて生成された多能性(pluripotent)又は多型潜在性(multipotent)前駆体細胞のex vivo、in vitro及び/又はin vivo応用における使用。
【請求項20】
母親及び/又は乳児及び/又は他の個体からの利益のために組織又は細胞を作り出すための請求項19に記載の使用。
【請求項21】
後での(subsequent)遺伝子治療処置(therapy treatments)又は子宮内の胎児の治療を含む請求項17又は20に記載の使用。
【請求項22】
病気治療のための細胞、組織、腺又は臓器の生成のための請求項19〜21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
後でのクローニング又は科学研究のための、請求項19〜23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
臨床、診断、バイオエンジニアリング、ラクトエンジニアリング(lactoengineering)、乳房組織再生(breast tissue regeneration)、乳房再建外科手術(breast reconstructive surgery)、乳房美容(breast cosmetic)若しくは乳房増大外科手術(enhancement surgery)、外分泌腺組織再生及び/又は外科手術からなる群の1つ又は複数の目的のための請求項19〜23のいずれか1項に記載の使用。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2007−515174(P2007−515174A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545881(P2006−545881)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000738
【国際公開番号】WO2005/061696
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504296275)カラク アーゲー (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000738
【国際公開番号】WO2005/061696
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504296275)カラク アーゲー (9)
【Fターム(参考)】
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