説明

乳腺炎の治療のための獣医用組成物

本発明は、哺乳動物の乳腺炎の予防および治療のための獣医用組成物に関する。より特に、本発明は、雌牛の乳腺炎の治療に関する。本発明の製剤は、一般に2つの別々の製剤として動物に投与される2つの部分を含む。最初の部分はゲル基剤およびその基剤中の無毒の重金属塩を含むシール製剤である。前記製剤の第2の部分は、例えばオイル・ベースの製剤中に抗生物質を含みうるオイル・ベースの物である。しかし、オイル・ベースの製剤はウシの病気の治療または予防のためのあらゆる医薬としての活性物質を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の乳腺炎の予防および治療のための獣医用組成物に関する。より特に、本発明は、雌牛の乳腺炎の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
雌牛の乳頭を経由した細菌感染が乳腺炎の最も一般的な原因であることは十分に立証されている。乳腺炎の発生を予防するか、または乳腺炎の症状を治療しようと試みる様々な治療が先行技術において利用可能である。このように、乳頭をきれいにするための抗菌性洗浄剤として使われる乳頭浸漬組成物がUS5211961で公表されている。あるいは、EP1104233およびEP799047は、細菌物質の侵入に対する障壁を提供するために乳頭に適用することができるフィルム形成組成物を開示する。
【0003】
GB1441747に記載のように病原体の進入を防ぐために、利用される他のアプローチは、乳頭管における物理的障壁の提供に関与する。GB2273441は、プラグを形成するように組み合わせて使用され、そして乳腺炎を治療する、抗菌製剤とシール製剤を開示する。関連特許、GB2273443は、雌牛の乳腺炎の治療のためのシール製剤と抗菌製剤の使用を同様に開示する。GB2273441において、前記シール製剤は、ゲル基剤および当該基剤中に無毒な重金属塩を含み、一方GB2273443において、前記シール製剤は、ポリエチレンゲルを含む。抗生物質は水性製剤で別々に提供されて、そしてGB2273441は抗生物質の水性製剤が非常に短期間に迅速な吸収をもたらすことを開示している。
【発明の開示】
【0004】
驚いたことに、我々は、オイル・ベースの製品と、無毒の重金属塩を含むシール製剤との同時投与がシール有効性の改善をもたらすことをここで発見した。様々なタイプのオイル、例えば鉱油、シリコーン油、および植物油が存在し、そして我々はシール製剤との組み合わせで植物油ベースの抗生物質の使用がシール有効性の改善をもたらすことを発見した。
【0005】
GB2273441で行われた試験は、水性抗生物質製剤が、乾乳雌牛(dry cow)の治療において先行技術製剤に対して顕著な利点を提供したことを示した。我々は、実際、消費者の健康と動物の快適さに関する限り、オイル・ベースの製剤、特に植物油ベースの抗生物質製剤の使用がより大きな改善をもたらすことをここで発見した。
【0006】
理想的な乳頭シールの重要な特性は、そのシールが乾乳期の期間にその場に留まることができなくてはならない。前記シールは、乳房の中で破損または破裂を起こさない十分な一体性(integrity)を同様にもつべきである。さらに、前記シール製剤は、同時投与された製剤と適合すべきである。本発明の製剤はこれらの基準を満たし、シールの改善された性能および改善された乳頭状態をもたらす。
【0007】
本発明による製剤で治療した動物の改善された性能と乳頭状態に関する正確な理由は完全に理解されているわけではない。さらに、先行技術は水性抗生物質の製剤が急速に吸収されて、顕著な利点を提供することを明らかに示す。理論に縛られることなく、本発明のオイル・ベースの製剤は本来の場所でのシール製剤の有効性を高め、そして水性製剤に対して、乳頭管においてシールとの改善された適合性を提供すると思われる。植物油の物理的性質、例えば密度および粘性が性能の改善に何らかの関連があるとも思われる。
【0008】
本発明の製剤は、一般に2つの別々の製剤として動物に投与される2つの部分を含む。最初の部分はゲル基剤およびその基剤中の無毒の重金属塩を含むシール製剤である。前記製剤の第2の部分は、例えばオイル・ベースの製剤中に抗生物質を含みうるオイル・ベースの物である。しかし、オイル・ベースの製剤はウシの病気の治療または予防のための、あらゆる医薬としての活性物質を含むことができる。
【0009】
本発明の1つの側面によると、抗菌製剤と別個のシール製剤を含むヒト以外の動物における乳房内使用のための獣医用組成物を提供する、ここで、上記抗菌製剤がオイル・ベースの製剤であり、かつ、上記シール製剤がゲル基剤と、上記ゲル基剤の少なくとも30重量%の重量でゲル基剤中に無毒の重金属塩を含む。
【0010】
本発明の態様において、重金属は、好ましくは、特に次硝酸ビスマスである。好ましくは、重金属塩は、ゲル基剤の40重量%〜80重量%、そしてより好ましくは50重量%〜70重量%の範囲の量で存在する。特に効果的なシール製剤は、約65重量%、つまり62〜66重量%の重金属塩を含む。
【0011】
本発明の他の態様において、基剤はステアリン酸アルミニウム・ベースのゲルであり、より好ましくは、上記ゲルは流動パラフィンのような媒体を同様に含む。本発明の他の態様において、同時投与されるオイル・ベースの製剤は、好ましくは植物油をベースとする。本発明の他の態様において、同時投与されるオイル・ベースの製剤は、好ましくは植物油をベースとし、かつ、抗生物質を含む。我々は、落花生油および硬化落花生油が、シール製剤と一緒に使用されることになる抗菌製剤のベースとして特に有効であることを発見した。
【0012】
本発明の他の態様において、抗菌剤は、好ましくは、例えばペニシリンまたはセファロスポリンといったβ−ラクタム系抗生物質である。より特に、クロキサシリン、そしてより好ましくはクロキサシリン・ベンザシン。しかし、獣医用途に承認されたあらゆる抗生物質を利用することができる。
【0013】
本発明の他の態様において、本発明の獣医用組成物は単位用量として提供される。一般的に、単位用量は、クロキサシリン・ベンザシンの形で600 mgのクロキサシリンを含む。
【0014】
本発明の選択的な側面において、抗菌性の製剤およびシール製剤は、ワンステップでヒト以外の動物の乳頭管に直接投与される単独の製剤として提供されうる。そのような製剤中の成分の相対的な割合は、2つの別々の製剤として適用されるべき製剤の相対的な割合と同じである。
本発明のさらなる側面において、ヒト以外の動物の乳房疾患の治療または予防のための薬剤の製造における、先に規定されるような別々にまたは単独の製剤として抗菌製剤とシール製剤を含む獣医用組成物の使用を提供する。
【0015】
本発明のオイル・ベースの抗生物質製剤と一緒に使用されうる特定のシール製剤の例がGB2273441およびGB2273443で開示されている、そしてそれらの開示事項は本明細書中に援用するように特に意図される。疑いの回避のために、好適なシール製剤と、それらの文書中に開示されたシール製剤の特定の例は、本発明の製剤における使用に好適であり、本発明によるシール製剤の範囲内に含まれる。
【実施例】
【0016】
本発明による獣医用製剤の一体性を、乾乳雌牛の4つの分房への投与によって評価した。前記雌牛に、各々別々の乳頭に配置された、3つの異なる植物油ベースの乳房内抗生物質製剤を投与した。そして、3つの乳頭の各々を、GB2273441の製剤2A4に記載のように65重量%の次硝酸ビスマスを含むビスマス・ベースの乳頭シールでシールした。4番目の乳頭に、抗生物質製剤を含まず、同じシール製剤(つまり、65重量%の次硝酸ビスマスを含む)を有するシール製剤だけを与えた。乳頭をX線分析によって評価し、そして重金属塩のX線不透過像はシール一体性、および乳頭管の所望の領域内のシールの量の鮮明な写真を提供した。前記乳頭を、不透過領域とそれによるシール一体性を測定するために、1、7、14、および21日目にX線写真を撮った。結果を以下の表1に要約する。
【0017】
【表1】

【0018】
抗生物質製剤Aは、落花生油および硬化落花生油を含んだ。抗生物質製剤BおよびCは、落花生油を含んだ。各々のケースにおいて、シール製剤と一緒に、植物油ベースの抗生物質製剤の同時投与が、乳頭管の基部に存在するシールの量の増加をもたらすことを観察した。よって、オイル・ベースの抗生物質製剤がオイル・ベースの製剤を分散させるかもしれないという予想に反して、乳頭の基部に存在するシールの量が増加したことを実際に観察した。よって、本発明の製剤は、先行技術製剤に対する利点を提供する。シールが乳頭の基部に存在し、乳腺炎の原因となる、乳房内への生体の進入を防ぐために乳頭の基部にそのまま留まっていることが重要である。
本発明の獣医用製剤はこれらの要求事項を満足させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌製剤と、別個のシール製剤とを含むヒト以外の動物における乳房内使用のための獣医用組成物であって、上記抗菌製剤がオイル・ベースの製剤であり、かつ、上記シール製剤がゲル基剤と、上記ゲル基剤中、当該ゲル基剤の少なくとも30重量%の量で無毒の重金属塩とを含む前記獣医用組成物。
【請求項2】
ワンステップで、ヒト以外の動物の乳頭管に直接投与されうる単独の製剤として提供されうる、抗菌製剤とシール製剤とを含む組成物であって、上記抗菌製剤がオイル・ベースの製剤であり、かつ、上記シール製剤がゲル基剤と、上記ゲル基剤中に当該ゲル基剤の少なくとも30重量%の量で無毒の重金属塩とを含む前記獣医用組成物。
【請求項3】
前記重金属がビスマスである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記重金属塩が次硝酸ビスマスである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記重金属塩が、ゲル基剤の40重量%〜80重量%の量で存在する、請求項1、2、3、または4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記同時投与されるオイル・ベースの製剤が植物油をベースとする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記基剤が、ステアリン酸アルミニウム・ベースのゲルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗菌製剤の植物油基剤が、落花生油および/または硬化落花生油である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗菌剤が、β−ラクタム系抗生物質である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗菌剤がクロキサシリンである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ヒト以外の動物の乳房疾患の治療用または予防用薬剤の製造における、請求項1〜8のいずれか1項に記載の、別個のまたは単独の製剤での、抗菌製剤とシール製剤とを含む獣医用組成物の使用方法。

【公表番号】特表2006−515865(P2006−515865A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510888(P2005−510888)
【出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005825
【国際公開番号】WO2005/051352
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】