説明

乳酸ホモポリマーとブロックコポリマーとを含む組成物

【課題】乳酸のホモポリマーとブロックコポリマーとを含む組成物。
【解決手段】(1)式CH2−C(CH3)−COOR1の少なくとも一種のメタクリレートを含むモノマーから作られる、ホモポリマーと混合可能な少なくとも一種のブロックAと、(2)式CH2−CH−COOR2の少なくとも一種のアルキルアクリレートおよび/または式CH2−C(CH3)−COOR3の少なくとも一種のメタクリレートを含むモノマーから作られる、ホモポリマーと混合可能な少なくとも一種のブロックBを含む、多分散性指数が1.5〜5である少なくとも一種の乳酸のホモポリマーと少なくとも一種のブロックコポリマーとを含む組成物。この組成物の医薬品、織物繊維、熱成形プレートまたは包装材料、特にフィルムまたはボトルの製造での使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳酸ホモポリマーとブロックコポリマーとを含む組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳酸は、生体適合 (biocompatible) 性(生体同化性、bio-assimilable)、生体再利用(bio-recylable) 性のある分解性ポリマーの前駆体で、ポリ乳酸またはポリ(乳酸)またはポリラクチドまたはPLAとして知られている。
乳酸は再生利用可能な資源から得られ、一般にトウモロコシ発酵によってバイオテクノロジーで生産される。PLAは剛性、透明および疎水性で、種々の工業用途、特に生物医学分野、織物繊維および包装材料での用途があり、PET(ポリエチレンテレフタレート)の代替物として利用される。このPETは環境に残留し、石油由来で、将来の使用が不確かな材料である。
【0003】
分解性材料としてのPLAの非常に大きな可能性をこれ以上説明する必要はないが、製造コストが高いため、PLAの開発は制限されており、その開発は工業的に安価に重合法にかかっている。また、PLAの用途を拡大するには、その熱的特性および機械特性を改善する必要がある。すなわち、包装材料分野で使用するには破断点伸びが不十分である。
【0004】
PLAをベースにしたマトリクスを強化するために一般には衝撃改質剤を用いるが、この衝撃改質剤をマトリクスに入れると、その寸法(80nm以上)およびその光学指数のため、透明性に影響を受ける。ポリ(メチルメタクリレート)をベースにした強化剤にも同じ欠点がある。さらに、例えばアルケマ(Arkema)社の製品クリアストレング(Clearstrength、登録商標)のようなメチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン型の衝撃改質剤を混和した、ポリ(メチルメタクリレート)強化のPLAベースのマトリクスの耐熱性および衝撃強度も改善する必要があることが多い。
【0005】
透明性に実質的に影響を与えずに、PLAの可撓性および伸び率を改善するために特許文献1で提案されている別の解決策は、PLAグラフト化アクリルコポリマーまたはPLAブロックと(メタ)アクリルホモポリマーブロックを含むブロックコポリマーを混合し、PLAマトリクス中に分散した(メタ)アクリルコポリマーミクロドメインまたはその逆相を形成することにある。
【0006】
しかし、透明性に実質的な影響を与えずにPLAベースのマトリクスを強化するためにはさらに別の手段が必要である。すなわち、このマトリクスは他のポリマーとの相溶性が不十分であることが知られている。また、これらは化学分解部位になりやすく、マトリクスの着色および分子量の低下につながる。しかも、2つの材料の界面密着性は必ずしも十分ではないため強化マトリクスの物理的特性が影響を受け、特に強化マトリクスが脆くなることがある。
【0007】
特許文献2には、直鎖または星型ブロックのアクリルコポリマー、例えばメチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレートトリブロックコポリマーと組み合わせることでPLAのような熱可塑性樹脂の可撓性および衝撃強度を改善できることが記載されている。
【0008】
このコポリマーは多分散性指数Ip=Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である)が1.8以下、好ましくは1.5以下である。このコポリマーはリビングアニオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合または例えばニトロオキシドを用いるリビングラジカル重合によって調製できるが、有機ハロゲン化物を用いて開始し、金属錯体で触媒する原子移動ラジカル重合するのが好ましい。
【0009】
同様に、特許文献3ではPLAをアクリルブロックコポリマー、特にメチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メチルメタクリレート型コポリマーと、PLA/コポリマー重量比を97/3〜40/60にして組み合わせる。
【0010】
このコポリマーは原子移動ラジカル重合法またはアニオン重合法で開始剤として用いられる遷移金属およびハロゲン化化合物の存在下で得られる。この方法によって多分散性指数が1〜1.4になる。
【0011】
特許文献3に記載の混合物は可撓性、成形性、熱接着特性、水分透過性、衝撃強度、曲げ強度および伸びに対する耐性に関する特性を、透明性を損なわずに改善したと記載されているが、これらの特性は所定の溶融粘度比を有する混合物の2つの成分の組合せでのみ得られる。特に、この文献の表2からPLAとコポリマーとの重量比が30/70の組成物は所望の特性を提供できないことがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際特許第WO 2007/084 291号公報
【特許文献2】米国特許第2004/0 147 674号明細書
【特許文献3】国際特許第WO 2007/060 930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、特許文献3で用いる方法とは異なる方法で得られるPLAとブロックアクリルコポリマーとの混合物を含む組成物、従って、多分散性指数が少なくとも1.5である組成物は特許文献3に記載の混合物より特性が良く、特に、使用が容易になり、より高いメルトフローインデックスを有するということを見出した。しかも、コポリマーとPLAとの混合物の全重量に対してコポリマーの含有率を65重量%以上にしても、透明性を実質的に損なわずに、上記特性が達成できる。
【0014】
本発明者が開発したPLAとブロックコポリマーとの混合物は従来法の欠陥を克服することができる。本発明のこのコポリマーを用いることで機械的混合ではない熱力学的に制御された分子の自己組織化によってナノメートルオーダで材料を組織化することができる。その結果、PLAベースのマトリクスが大幅に強化され、その他の特性、特に透明性と剛性には実質的な影響がない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の対象は、下記(1)と(2)を含む、多分散性指数が1.5〜5である、少なくとも一種の乳酸ホモポリマーと少なくとも一種のブロックコポリマーとを含む組成物にある:
(1)式:CH2−C(CH3)−COOR1(ここで、R1は直鎖または分岐鎖のC1−C3アルキル基、分岐鎖C4基、C3−C8シクロアルキル基、C6−C20アリール基、C1−C4アルキル基を含むC7−C30アリールアルキル基、複素環式基またはC1−C4アルキル基を含む複素環式アルキル基で、これらの基はハロゲンおよびヒドロキシル基の中から選択される一種以上の同一または異なる基で置換されていてもよい)の少なくとも一種のメタクリレートを含むモノマーから作られる、上記ホモポリマーと混合可能な少なくとも一種のブロックA、
(2)下記(a)および/または(b):
(a)式:CH2−CH−COOR2(ここで、R2は直鎖または分岐鎖のC1−C12アルキル基であり、この基はハロゲンおよびヒドロキシル基の中から選択される一種以上の同一または異なる基で置換されていてもよい)の少なくとも一種のアルキルアクリレート、
(b)式:CH2−C(CH3)−COOR3(ここで、R3は直鎖C4−C12アルキル基または分岐鎖のC5−C12アルキル基である)の少なくとも一種のメタクリレート、
を含むモノマーから作られる、上記ホモポリマーと混合可能な少なくとも一種のブロックB。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「ブロックコポリマー」とは、直鎖または星型ブロックコポリマーを意味し、その延長線上のグラジエント(傾斜)コポリマーも意味する。このコポリマーは個別の独立した種とみなされ、別の(コ)ポリマーにグラフトされた構造、例えば衝撃改質剤として通常用いられるコア−シェル系のシェルではない。本発明のコポリマーはPLAのグラフト基は全く含まないということは理解できよう。
【0017】
本発明のコポリマーは多分散性指数Ip=Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である)が1.5〜5、好ましくは2〜3である。
本発明のブロックコポリマーのブロックAはガラス遷移温度が0℃以上であるのが好ましい。ブロックAは例えば下記の中から選択される少なくとも一種のモノマーを含むことができる:メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレートおよびtert-ブチルメタクリレートまたはこれらの混合物。
【0018】
本発明の好ましい一つの実施例では、ブロックAはメチルメタクリレートモノマーを含むか、このモノマーから成る。ブロックAはさらに、メタクリレートの他に、直鎖または分岐鎖のアルキル基が互いに独立して1〜10の炭素原子を含む少なくとも一種のジアルキルアクリルアミドモノマー、例えばN,N−ジメチルアクリルアミドを含むことができる。
【0019】
ブロックBはガラス遷移温度が0℃以下、好ましくは−10℃以下であるのが好ましい。ブロックBは、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびn−オクチルアクリレートおよびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一種のモノマーを含むことができる。
【0020】
本発明の好ましい一つの実施例では、ブロックBは、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびn−オクチルアクリレートモノマーまたはこれらの混合物から選択される。
【0021】
本発明のブロックコポリマーの好ましい一つの実施例はメチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレートブロックコポリマーである。
【0022】
本発明で用いるコポリマーは下記特許文献4に記載のようなニトロオキシドの存在下での制御されたラジカル重合によって得ることができる。
【特許文献4】国際特許出願第WO 03/062 293号公報
【0023】
この方法は下記の一連の段階を含む:
(1)下記特許文献5に記載のように、ニトロオキシドからモノアルコキシアミンを調製する:
【特許文献5】国際特許出願第WO 2004/014 926号公報
【0024】
(2)段階(1)で得られたモノアルコキシアミンから、例えば、(メタ)アクリル酸のようなカルボキシビニル化合物でエステル化された末端基を含むα,ω−ジオールとの反応によって、ポリアルコキシアミン、特にジアルコキシアミンを調製する。
(3)段階(2)で得られたポリアルコキシアミンの存在下で対応するモノマーを好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下、例えば70%の変換率まで重合してブロックBをつくる。
(4)こうして得られたブロックBと、ブロックAを作るためのモノマーとを混合する。
(5)重合開始剤としてブロックBを用いてブロックAを作る。
(6)得られたコポリマー中に存在する可能性のある残留モノマーを除去する。
【0025】
この方法で用いるニトロオキシドは例えば下記式(III)に対応する:
【化1】

【0026】
(ここで、
RとR’はC1〜C40アルキル基(一種以上のヒドロキシル、アルコキシルまたはアミノ基で置換されていてもよい)を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、必要に応じて互いに結合して環を形成していてもよい。RとR’は互いに独立して非置換のC1〜C10アルキル基であるのが好ましく、C1〜C6アルキル基、例えばtert-ブチル基であるのがさらに好ましい。
Lはモル質量が16g/モル以上の一価の基、例えばジアルキルホスホネート基、特にジエチルホスホネート基を表す。)
【0027】
本発明で使用可能なブロックコポリマーは、アルケマ(Arkema)社から商品名ナノストレング(Nanostrength、登録商標)で市販されている。
【0028】
乳酸のホモポリマーは特に、ネイチャーワークス(Nature Works)社から製品番号2002 Dで市販されている。乳酸ホモポリマーは特に数平均分子量Mnを20,000〜100,000g/モルに、多分散性指数を1〜2にすることができる。
【0029】
乳酸のホモポリマーと、上記のコポリマーとの混合は、任意の手段、特に共押出、前もって作られたブロックコポリマーの存在下でのホモポリマーの重合、または、内部混合室または一軸スクリューまたは二軸スクリュー型の混練機を用いたブレンディングによって行うことができる。ホモポリマーとブロックコポリマーとの混合(それぞれ顆粒の形で存在するのが有利である)は、コニーダ、例えばBuss型で好ましくは約220℃の温度で行うのが好ましい。
【0030】
本発明の好ましい一つの実施例では、コポリマーと乳酸のホモポリマーとの重量比は30/70〜80/20である。コポリマーと乳酸のホモポリマーとの重量比は50/50〜70/30であるのがさらに好ましい。変形例では、コポリマーと乳酸のホモポリマーとの重量比は65/35〜80/20にすることができる。
【0031】
本発明の組成物はASTM D 1003規格に従って測定したヘイズ値が5%以下で、透過率が80%以上であるのが有利である。
本発明の別の対象は、上記組成物の、医薬品、織物繊維、熱成形プレートまたは包装材料、特にフィルムまたはボトルの製造での使用にある。この組成物の強度が高い透明な射出成形品の製造での使用も考えられる。
本発明はさらに、上記コポリマーの、乳酸のホモポリマーマトリクスの透明性、流動性、破断点変形および/または強度の改善剤としての使用にも関するものである。
【実施例】
【0032】
本発明は以下の実施例からより良く理解できよう。下記実施例は単に説明のためであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明は添付の請求の範囲によってのみ限定されるものである。
実施例1
本発明の組成物の製造
1A−ブロックコポリマーの製造
2−メチル−2−[N−tert-ブチル−N−(ジエトキシホスホリル−2,2−ジメチルプロピル)アミノキシ]プロピオン酸の製造
窒素でパージした2リットル容のガラス反応器に500mlの脱気済みトルエンと、35.9gのCuBr(250mmol)と、15.9gの銅粉末(250mmol)と、86.7gのN,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンまたはPMDETA(500mmol)とを入れる。次いで、500mlの脱気済みトルエンと、42.1gの2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(250mmol)と、78.9gの下記式の84%SG1(225mmol)とを含む混合物を室温(20℃)で撹拌下に添加する:
【0033】
【化2】

【0034】
反応媒体を室温で撹拌下に90分間反応させ、濾過する。トルエン濾液を1.5lのNH4Cl飽和水溶液で2回洗浄する。得られた帯黄色固体をペンタンで洗浄して51gの2−メチル−2−[N−tert-ブチル−N−(ジエトキシホスホリル−2,2−ジメチルプロピル)アミノキシ]プロピオン酸(収率:60%)を得る。この構造体を特に質量分析および1H NMRによって確認する。
【0035】
ジアルコキシアミンの製造
窒素パージした100mlの丸底フラスコに、上記で得られた2gのモノアルコキシアミンと、0.52gの純度>98%(1当量)の1,4−ブタンジオールジアクリレートと、6.7mlのエタノールとを入れる。混合物を78℃で20時間還流した後、エタノールを真空蒸発させる。2.5gの極めて粘性の高い黄色油が得られる。
31P NMRによる分析によって、モノアルコキシアミン(27.4ppm)が完全に消失し、ジアルコキシアミン(24.7〜25.1ppmで多重項)が発生したことがわかる。エレクトロスプレー型の質量分析による分析によって質量が961(M+)が明らかになる。
【0036】
ブロックコポリマーの製造
合成は2つの段階で行う:
第1段階:
リビングポリ(n−ブチルアクリレート)ポリマーの調製
可変速撹拌モータと、成分導入用の入口と、酸素を除去するための不活性ガス導入用ラインと、温度測定用プローブと、還流による蒸気凝縮装置と、内部に熱交換流体を循環させて反応器の内容物を加熱/冷却するジャケットとを備えた1リットルの重合反応器に、146gのブチルアクリレートと、3.93gの上記で得られたジアルコキシアミンとを入れる。窒素で複数回脱気した後に、反応媒体を115℃に加熱し、この温度を温熱調節によって数時間維持する。
【0037】
反応中にサンプルを採り、
(1)重量測定(固形分の測定)によって重合反応速度を測定し、
(2)数平均分子量(Mn)の変化をモノマーのポリマーへの変換率の関数としてモニターする。
【0038】
70%の変換率を達成したときに、反応媒体を60℃に冷却し、残留ブチルアクリレートを真空蒸発して除去する。
ポリ(n−ブチルアクリレート)の分子量はポリスチレン当量でMp(ピークの頂部での分子量)が49,090g/mol、Mn(数平均分子量)が35,090g/mol、Mw(重量平均分子量)が49,830g/molである。
【0039】
第2段階:
メチルメタクリレートによるリビングポリ(n−ブチルアクリレート)の再開始
上記で調製したポリ(n−ブチルアクリレート)に、142gのメチルメタクリレートと、予め脱気した305.6gのトルエンとを60℃で添加する。次いで、反応媒体を105℃で1時間加熱した後、120℃でさらに1時間加熱する。達成した変換率は約50%である。室温に冷却した後、50重量%のn−ブチルアクリレートを含むコポリマー(メチルメタクリレート−b−n−ブチルアクリレート−b−メチルメタクリレート)の溶液を反応器から除去し、残留する溶剤およびモノマーを真空蒸発して除去する。
このコポリマーの分子量はポリスチレン当量でMp(ピークの頂部での分子量)が102,730g/mol、Mn(数平均分子量)が63,800g/mol、Mw(重量平均分子量)が131,130g/molである。多分散性指数は2.05である。
【0040】
1B−ブロックコポリマーと乳酸のホモポリマーとの混合
実施例1Aで調製したコポリマーを、ポリ乳酸(PLA)(ネイチャーワークス(Nature Works)社の製品2002 D)と、コポリマー/PLA重量比を60/40にして220℃のBussコニーダで混合した。混合物は型閉め力が70トンのビリオン射出成形機で閉ループとして射出した。射出温度は210℃、金型温度は20℃にした。
【0041】
実施例2
本発明の組成物の機械特性および光学特性の評価
2A−実施した試験の手順
実施例1Bの組成物に対して[表1]に詳細を示した操作条件下で種々の試験を実施した。
【0042】
【表1】

【0043】
2B−試験結果
実施例1Bの組成物に実施した試験の結果を[表2]および[表3]に示す。
【0044】
【表2】

【表3】

【0045】
光学特性に関しては、本発明の組成物の方が対照例のPLAよりわずかに黄色が濃いが、これはコンパウンディング条件とその後の射出条件が最適化されなかったことによる。一方で、光散乱に起因する組成物の濁度を示すヘイズ値は減少するが、透明度は維持され且つ透過率は大幅に低下しない。
【0046】
機械特性に関しては、本発明の組成物の流動性が大幅に改善される。剛性(FEM)は半減するが、対象とする用途には完全に許容可能なレベルを維持する。破断点伸びの増加は脆性挙動から延性挙動への移行を示す。特に、ノッチ付きシャルピー試験での強度は大幅に増加し、ノッチなしシャルピー試験(NB=破壊なし)ではサンプルを破壊するのは不可能であり、19kJ/m2の弾性で破壊する対照例のPLAとは異なる。PLAマトリクスの熱的特性は強化されていてもいなくても不変である。
【0047】
実施例3(比較例)
PMMA強化PLAマトリクスの機械特性および光学特性の評価
実施例1と同様な方法で、アルケマ(Arkema)社から商品名Altuglas(登録商標)V920で市販のポリ(メチルメタクリレート)で強化された乳酸のホモポリマーマトリクスを調製した。
【0048】
【表4】

【表5】

【0049】
これらの表から明らかなように、比較例の組成物は本発明の実施例1Bより濁度が高い。しかも、比較例の組成物の溶融指数(MI)、破断点変形および強度(シャルピー)は本発明の組成物より著しく低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)のブロックAと(2)のブロックBとを含む、多分散性指数が1.5〜5である、少なくとも一種の乳酸のホモポリマーと少なくとも一種のブロックコポリマーとを含む組成物:
(1)式:CH2−C(CH3)−COOR1(ここで、R1は直鎖または分岐鎖のC1〜C3アルキル基、C4分岐鎖基、C3〜C8シクロアルキル基、C6〜C20アリール基、C1〜C4アルキル基を含むC7〜C30アリールアルキル基、複素環式基またはC1〜C4アルキル基を含む複素環式アルキル基で、これらの基はハロゲンおよびヒドロキシル基の中から選択される一種または複数の同一または異なる基で置換されていてもよい)の少なくとも一種のメタクリレートを含むモノマーから作られる、上記ホモポリマーと混合可能な少なくとも一種のブロックA、
(2)下記(a)および/または(b):
(a)式:CH2−CH−COOR2(ここで、R2は直鎖または分岐鎖のC1〜C12アルキル基で、この基はハロゲンおよびヒドロキシル基の中から選択される一種または複数の同一または異なる基で置換されていてもよい)の少なくとも一種のアルキルアクリレート、
(b)式:CH2−C(CH3)−COOR3(ここで、R3は直鎖C4〜C12アルキル基または分岐鎖のC5〜C12アルキル基である)の少なくとも一種のメタクリレート、
を含むモノマーから作られる、上記ホモポリマーと混合可能な少なくとも一種のブロックB。
【請求項2】
ブロックAがメチルメタクリレートモノマーを含むか、このモノマーから成る請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ブロックAのガラス遷移温度が0℃以上である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ブロックAが、アルキル基が互いに独立して1〜10の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖である少なくとも一種のジアルキルアクリルアミドモノマー、例えばN,N−ジメチルアクリルアミドをメタクリレートの他に含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ブロックBのガラス遷移温度が0℃以下、好ましくは−10℃以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ブロックBがn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびn−オクチルアクリレートおよびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一種のモノマーを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ブロックBがn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびn−オクチルアクリレートモノマーまたはこれらの混合物からのみ生成される請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
コポリマーがメチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレートブロックコポリマーである請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ブロックコポリマーが直鎖または星型ブロックコポリマーまたはグラジエントコポリマーである請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
上記ブロックコポリマーが下記の一連の段階を含むプロセスで得られる請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物:
(1)ニトロオキシドからモノアルコキシアミンを調製し、
(2)段階(1)で得られたモノアルコキシアミンから、(メタ)アクリル酸のようなカルボキシビニル化合物でエステル化された末端基を有するα,ω−ジオールとの反応等によって、ポリアルコキシアミン、特にジアルコキシアミンを調製し、
(3)段階(2)で得られたポリアルコキシアミンの存在下で対応するモノマーを好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下、例えば70%の変換率まで重合してブロックBを作り、
(4)こうして得られたブロックBと、ブロックAを作るためのモノマーとを混合し、
(5)重合開始剤としてブロックBを用いてブロックAを作り、
(6)こうして得られたコポリマー中に存在する可能性のある残留モノマーを除去する。
【請求項11】
乳酸のホモポリマーの重量平均分子量が20,000〜100,000g/モルである請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
コポリマーと乳酸のホモポリマーとの重量比が30/70〜80/20である請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
コポリマーと乳酸のホモポリマーとの重量比が50/50〜70/30である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ASTM D1003規格に従って測定したヘイズ値が5%以下で、透過率が80%以上である請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物の、医薬品、織物繊維、熱成形プレートまたは包装材料、特にフィルムまたはボトルの製造での使用。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のコポリマーの、乳酸のホモポリマーマトリクスの透明性、流動性、破断点変形および/または強度の改善剤としての使用。

【公表番号】特表2010−539317(P2010−539317A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525394(P2010−525394)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051530
【国際公開番号】WO2009/037412
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】