説明

乳酸発酵された水中油型乳化物及びシュー生地の製造方法

【課題】従来のシューパフよりも油っぽさが軽減され、噛み出しがソフトであり、さらに口残りがしない新たなシューパフを提供する。
【解決手段】植物性油脂を含有し、無脂乳固形分が10〜20重量%及び油脂分が5〜30重量%であり、20℃におけるpHが5.5〜6.4となるように乳酸発酵された水中油型乳化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸発酵された水中油型乳化物及びシュー生地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シューパフは水及び油脂類を沸騰させて混合した後、小麦粉を添加し、その後卵類を混合し調製されたシュー生地を焼成して製造される。
洋菓子の中でもシューは老若男女を問わず幅広く好まれており、洋菓子店、コンビニエンスストア、スーパーなどの量販店等、様々な市場でシューを用いた商品を目にすることができる。
【0003】
一方、人々の嗜好は多種多様であり、日々新たなシューアイテムが市場をにぎわしているなか、近年の消費者の嗜好は、風味にこだわったもの、食感にこだわったもの、といった、「より美味しく」、「よりやわらかく」、「より口溶けのよい」ものを好む傾向にある。
【0004】
これまでに、より広く市場に受け入れられるシューアイテムを開発するため、いくつかの検討が行われている。
例えば、特許文献1では、高品質で形状の良いシュー皮を安定且つ簡易に製造する方法として油脂を水中油型乳化組成物にして使用することを特徴とするシュー皮の製造方法が提案されている、一方、特許文献2では、水の一部を水中油型乳化物の状態で用いることを特徴とするシュー生地の製造方法が提案されている。
また、特許文献3では、酸性のカゼイン分散液を使用することを特徴とするシュー生地の製造方法が提案されており、さらに特許文献4では、シュー生地のpHを40℃において5.6〜7.3に調整することを特徴とするシュー生地の製造方法が提案されている。
しかしながら、これらの製造方法はいずれも、ボリュームや形状など外観の改良を提案するものであり、より美味しく、よりやわらかく、より口溶けのよいシューパフを得る方法は、これまで見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−266750号公報
【特許文献2】特開2005−168416号公報
【特許文献3】特開2007−110917号公報
【特許文献4】特開2010−227038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、「より美味しく」、「よりやわらかく」、「より口溶けのよい」シューパフを得ることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、鋭意検討を重ね、水中油型乳化物の乳酸発酵におけるpHの最適値を詳細に検討した結果、pH5.5〜6.4という特定の範囲に乳酸発酵された水中油型乳化物をシュー生地の製造に用いることにより、得られたシューパフの油っぽさが軽減され、噛み出しがソフトであり、さらに口残りしないという顕著な効果が得られるという知見を見出し、本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物及びシュー生地の製造方法を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)植物性油脂を含有し、無脂乳固形分が10〜20重量%及び油脂分が5〜30重量%であり、20℃におけるpHが5.5〜6.4となるように乳酸発酵された水中油型乳化物、
(2)カルシウムイオン封鎖剤を含有しない(1)記載の水中油型乳化物、
(3)合成乳化剤を含有しない(1)記載の水中油型乳化物、
(4)シュー生地の製造に用いることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載のシュー用水中油型乳化物、
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の水中油型乳化物を含む、油中水型乳化物、
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の乳化物を使用することを特徴とする焼成菓子の製造方法、
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載の乳化物を使用することを特徴とするシュー生地の製造方法、
(8)シュー生地にカゼインナトリウムを含有する(7)記載のシュー生地の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物を用いることにより、従来のシューパフよりも油っぽさが軽減され、噛み出しがソフトであり、さらに口残りせず、焼き色の良好な新たなシューパフを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物は、植物性油脂を含有し、無脂乳固形分が10〜20重量%及び油脂分が5〜30重量%であり、20℃におけるpHが5.5〜6.4となるように乳酸発酵されたものである。
【0012】
本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物中に使用できる植物性油脂としては、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油などが例示できる。
さらに、植物性油脂以外の油脂として、バター、生クリームなどに由来する乳脂、あるいは牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示できる。
さらに、これら動植物性油脂の単独または混合油、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等施した加工油脂を組み合わせて使用することができる。
【0013】
また、本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物に使用する油脂の融点は、0〜45℃、さらには5〜40℃であることが好ましく、最も好ましくは5〜35℃である。
融点が下限未満であると油っぽい食感となりやすく、上限を超えると口溶けに影響を及ぼすおそれがある。
【0014】
本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物は、植物性油脂や動物性油脂を油脂分として5〜30重量%含有し、好ましくは6〜29重量%、より好ましくは8〜25重量%含有する。
油脂分が上限を超えると乳化が不安定になりやすく、下限未満であるとシューパフの口溶けに影響を及ぼすおそれがある。
【0015】
また、本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物は乳原料を含有するが、乳原料としては、牛乳、加工乳、生クリーム、脱脂乳、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、ナチュラルチーズ、プロセスチーズなどの乳製品を使用することができる。
上記乳原料を無脂乳固形分として10〜20重量%含有し、好ましくは11〜19重量%、より好ましくは12〜18重量%含有する。
無脂乳固形分が上限を超えると乳化が不安定になりやすく、下限未満であるとシューパフの口溶けに影響を及ぼすおそれがある。
【0016】
本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物は、上記原料を含有し、さらに20℃におけるpHが5.5〜6.4となるように乳酸発酵されていることを特徴とする。
pHが上限を超えると良好な風味のシューパフが得られず、下限未満であると硬い食感となり、噛み出しのソフトなシューパフが得られない。
【0017】
また、本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物はカルシウムイオン封鎖剤を含有しないことが好ましく、さらに合成乳化剤を含有しないことが好ましい。
カルシウムイオン封鎖剤としては、リン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、有機酸塩類(クエン酸塩、酒石酸塩等)、無機塩類(炭酸塩等)等が挙げられる。
合成乳化剤としては、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
これらを含有しないことにより、より美味しく、より口溶けの良いシューパフが得られる。
【0018】
本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物はシュー生地の製造に用いることにより、従来のシューパフよりも油っぽさが軽減されて美味しく、噛み出しがソフトであり、さらに口残りがしない新たなシューパフを提供することができる。
【0019】
また、本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物を用いて、油中水型乳化物とすることで、本発明の効果を付与することのできるシュー用マーガリンを提供することができる。
【0020】
また、本発明の乳酸発酵された水中油型乳化物あるいは油中水型乳化物はシューパフだけでなく、焼成菓子の製造にも使用するができ、シューパフと同様、油っぽさが軽減され、口溶けがよくなるという効果を得ることができる。
【0021】
本発明の乳化物を使用したシュー生地の製造方法としては、水及び油脂類を沸騰させた後、小麦粉を加え、その後卵類を加えて混合するシュー生地の製造法において、水の一部を乳酸発酵された水中油型乳化物で置換することにより得ることが出来る。さらに、シュー生地中の乳酸発酵された水中油型乳化物が、小麦粉100重量部に対して、好ましくは5〜20重量部、より好ましくは8〜18重量部含まれていると、最大限その効果を発揮する。
【0022】
上記シュー生地の製造方法として、シュー生地にカゼインナトリウムを使用することにより、さらに油っぽさを軽減する効果、口溶けをよくする効果を得ることができる。。
【0023】
以下に実施例を示し、本発明の詳細をより具体的に説明する。なお、例中、部あるいは%はいずれも重量基準をあらわす。
【実施例1】
【0024】
パーム菜種混合硬化油16.8部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水68.5部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳12.7部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物にチーズ用乳酸菌スターターを添加し、20℃で発酵を行い、所定のpHとなったところで、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.7の水中油型乳化物を得た。この乳酸発酵された水中油型乳化物の無脂乳固形分は、12.1重量%、油脂分は17.6重量%であった。この乳酸発酵された水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いることにより、ソフトな噛み出しで、口溶けがよく、風味の良好なシューパフが得られた。
【実施例2】
【0025】
パーム菜種混合硬化油13.4部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水63.4部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳11.2部、生クリーム12部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物にチーズ用乳酸菌スターターを添加し、20℃で発酵を行い、所定のpHとなったところで、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.7の水中油型乳化物を得た。この乳酸発酵された水中油型乳化物の無脂乳固形分は、11.9重量%、油脂分は19.3重量%であった。この乳酸発酵された水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いることにより、ソフトな噛み出しで、口溶けがよく、風味の良好なシューパフが得られた。
【実施例3】
【0026】
パーム菜種混合硬化油16.8部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水63.2部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳18部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物にチーズ用乳酸菌スターターを添加し、20℃で発酵を行い、所定のpHとなったところで、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.7の水中油型乳化物を得た。この乳酸発酵された水中油型乳化物の無脂乳固形分は、17.1重量%、油脂分は17.7重量%であった。この乳酸発酵された水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いることにより、ソフトな噛み出しで、口溶けがよく、風味の良好なシューパフが得られた。
【実施例4】
【0027】
パーム菜種混合硬化油8部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水77.3部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳12.7部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物にチーズ用乳酸菌スターターを添加し、20℃で発酵を行い、所定のpHとなったところで、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.7の水中油型乳化物を得た。この乳酸発酵された水中油型乳化物の無脂乳固形分は、12.1重量%、油脂分は8.8重量%であった。この乳酸発酵された水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いることにより、ソフトな噛み出しで、口溶けがよく、風味の良好なシューパフが得られた。
【実施例5】
【0028】
パーム菜種混合硬化油28部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水57.3部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳12.7部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物にチーズ用乳酸菌スターターを添加し、20℃で発酵を行い、所定のpHとなったところで、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.7の水中油型乳化物を得た。この乳酸発酵された水中油型乳化物の無脂乳固形分は、12.1重量%、油脂分は28.8重量%であった。この乳酸発酵された水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いることにより、ソフトな噛み出しで、口溶けがよく、風味の良好なシューパフが得られた。
【実施例6】
【0029】
パーム菜種混合硬化油8部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水72部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳18部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物にチーズ用乳酸菌スターターを添加し、20℃で発酵を行い、所定のpHとなったところで、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.7の水中油型乳化物を得た。この乳酸発酵された水中油型乳化物の無脂乳固形分は、17.1重量%、油脂分は8.9重量%であった。この乳酸発酵された水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いることにより、ソフトな噛み出しで、口溶けがよく、風味の良好なシューパフが得られた。
【実施例7】
【0030】
パーム菜種混合硬化油28部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水52部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳18部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物にチーズ用乳酸菌スターターを添加し、20℃で発酵を行い、所定のpHとなったところで、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.7の水中油型乳化物を得た。この乳酸発酵された水中油型乳化物の無脂乳固形分は、17.1重量%、油脂分は28.9重量%であった。この乳酸発酵された水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いることにより、ソフトな噛み出しで、口溶けがよく、風味の良好なシューパフが得られた。
【0031】
[比較例1]
水85.3部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳12.7部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記を、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物にチーズ用乳酸菌スターターを添加し、20℃で発酵を行い、所定のpHとなったところで、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.7の水中油型乳化物を得た。この乳酸発酵された水中油型乳化物の無脂乳固形分は、12.1重量%、油脂分は0.8重量%であった。この乳酸発酵された水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いたが、口溶けが良好なシューパフは得られなかった。
【0032】
[比較例2]
パーム菜種混合硬化油16.8部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水76.2部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳5部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物にチーズ用乳酸菌スターターを添加し、20℃で発酵を行い、所定のpHとなったところで、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.7の水中油型乳化物を得た。この乳酸発酵された水中油型乳化物の無脂乳固形分は、4.8重量%、油脂分は17.5重量%であった。この乳酸発酵された水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いたが、風味・口溶けが良好なシューパフは得られなかった。
【0033】
[比較例3]
パーム菜種混合硬化油16.8部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水68.5部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳12.7部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物を発酵せずに、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが6.5の水中油型乳化物を得た。この水中油型乳化物の無脂乳固形分は、12.1重量%、油脂分は17.6重量%であった。この水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いたが、風味の良好なシューパフは得られなかった。
【0034】
[比較例4]
パーム菜種混合硬化油16.8部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水68.5部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳12.7部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物に50%乳酸を添加しpH調整した後、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.7の水中油型乳化物を得た。この水中油型乳化物の無脂乳固形分は、12.1重量%、油脂分は17.6重量%であった。この水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いたが、風味の良好なシューパフは得られなかった。
【0035】
[比較例5]
パーム菜種混合硬化油16.8部を60℃に加温し油相を調製した。一方、水68.5部を約30℃に加温し、ホモミキサーで攪拌しながら、脱脂粉乳12.7部、卵黄2部を徐々に添加して水相を調製した。上記の水相に油相を添加し、70℃で30分予備乳化した後、殺菌処理を行い、次いでホモゲナイザーで5MPaの圧力下で均質化し、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。このようにして得た水中油型乳化物にチーズ用乳酸菌スターターを添加し、20℃で完全に発酵を行い、80℃で30分間加熱殺菌した後、10MPaの圧力下で均質化、プラスティックフィルムチューブに充填、密封し5℃に急冷して、20℃でのpHが5.0の水中油型乳化物を得た。この乳酸発酵された水中油型乳化物の無脂乳固形分は、12.1重量%、油脂分は17.6重量%であった。この乳酸発酵された水中油型乳化物を小麦粉100重量部に対して10重量部の割合で、シュー生地の製造に用いたが、やや硬い食感となり噛み出しのソフトなシューパフは得られなかった。
【0036】
実施例1〜7、比較例1〜5のシューの官能評価について、訓練された専門パネラーによる評価結果(○:優、△:良、×:可)を表に示す。
【0037】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性油脂を含有し、無脂乳固形分が10〜20重量%及び油脂分が5〜30重量%であり、20℃におけるpHが5.5〜6.4となるように乳酸発酵された水中油型乳化物。
【請求項2】
カルシウムイオン封鎖剤を含有しない請求項1記載の水中油型乳化物。
【請求項3】
合成乳化剤を含有しない請求項1記載の水中油型乳化物。
【請求項4】
シュー生地の製造に用いることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のシュー用水中油型乳化物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中油型乳化物を含む、油中水型乳化物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の乳化物を使用することを特徴とする焼成菓子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の乳化物を使用することを特徴とするシュー生地の製造方法。
【請求項8】
シュー生地にカゼインナトリウムを含有する請求項7記載のシュー生地の製造方法。

【公開番号】特開2012−191920(P2012−191920A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60305(P2011−60305)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】