説明

乳酸菌においてアポリポタンパク質遺伝子生成物を生成するための組成物および方法

本開示は、乳酸菌において組換えアポリポタンパク質(例えば、エンドトキシンを含まない組換えアポリポタンパク質)を生成するための組成物および方法に関する。具体的には、本発明は、乳酸菌において発現可能な発現ベクターを提供し、このベクターは、アポリポタンパク質をコードするヌクレオチドコード配列、および該ヌクレオチドコード配列に作動可能に連結されて該ヌクレオチドコード配列の発現を制御する1つ以上の調節ヌクレオチド配列を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.関連出願の引用)
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づいて、米国特許出願第号60/712,295号(2005年8月26日出願)に対する利益を主張する。この内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(2.背景)
循環性コレステロールは、2つの主要なコレステロールキャリア、すなわち、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)によって運ばれる。LDLは、肝臓(ここで、コレステロールは、合成または食事から得られる)から、身体中の肝臓外組織へのコレステロールの送達を担うと考えられる。血漿HDL粒子は、コレステロール調節において主要な役割を果たし、組織コレステロールのスカベンジャーとして作用していると考えられている。
【0003】
アテローム硬化症は、動脈壁内のコレステロール蓄積によって特徴付けられる進行性疾患である。アテローム硬化病変に沈着した脂質は、主に血漿LDLからもたらされる;従って、LDLは、一般に、「悪い」コレステロールとして公知になった。対照的に、HDL血清レベルは、冠状動静脈心臓疾患(coronary heart disease)と逆に相関し、そして結果として;高血清レベルのHDLは、ネガティブリスク因子であるとみなされている。従って、HDLは、一般に、「良い」コレステロールとして公知になった。
【0004】
HDLの保護機構の最近の研究は、HDLの主要成分であるアポリポタンパク質A−I(ApoA−I)に焦点を当てている。高血漿レベルのApoA−Iは、冠状動静脈病変の非存在または軽減と関連している(非特許文献1;非特許文献2)。しかし、Apo A−1および公知のApoA−I改変体、ならびに再構築HDLの治療的使用は、全体的に低い収量を考慮すると、治療的投与に必要とされるアポリポタンパク質の量が大量であることおよびタンパク質生成の費用によって制限されている。従って、冠動脈内のコレステロール蓄積を処置および/または予防するために使用され得るApo A−Iを生成するための代替方法を開発する必要がある。
【非特許文献1】Maciejkoら,1983,N Engl J Med 309:385−89
【非特許文献2】Sedlisら,1986,Circulation 73:978−84
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(3.要旨)
本開示は、エンドトキシンを含まない組換えアポリポタンパク質を生成するための組成物および方法を提供する。本明細書中に記載される方法を使用して作製され得る組換えアポリポタンパク質としては、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、ApoA−VおよびApoEのプレプロアポリポタンパク質形態;ヒトApoA−I、ApoA−II、ApoA−IVおよびApoEのプロ形態および成熟形態;ならびに活性な多型性形態、アイソフォーム、改変体および変異体、ならびに末端切断型(truncated)形態が挙げられるが、これらに限定されず、これらのうちの最も一般的なものは、ApoA−I(ApoA−I)およびApoA−I(ApoA−I)である。
【0006】
いくつかの局面において、本開示は、発現ベクター、上記発現ベクターを含む宿主細胞、およびエンドトキシン非生成細菌(例えば、乳酸菌)において目的のアポリポタンパク質を生成するためのベクターを使用する方法を提供する。適した乳酸菌としては、Lactococcus spp.、Streptococcus spp.、Lactobacillus spp.、Leuconostoc spp.、Pediococcus spp.、Brevibacterium spp.およびPropionibacterium spp.が挙げられるが、これらに限定されない。適切な調節ヌクレオチド配列は、上記アポリポタンパク質をコードする上記ヌクレオチドコード配列に作動可能に連結されて、乳酸菌においてアポリポタンパク質を発現させる。調節ヌクレオチド配列としては、構成性プロモーターおよび調節性プロモーター(すなわち、誘導性プロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記調節配列は、乳酸菌の調節配列を含む。
【0007】
いくつかの局面において、上記方法は、アポリポタンパク質をコードするヌクレオチド配列、およびこれに作動可能に連結されてこのコード配列の発現を制御する適切な調節ヌクレオチド配列を含む組換え乳酸菌を構築する工程、上記アポリポタンパク質を発現させるのに有効な条件下で上記組換え乳酸菌を培養する工程、ならびに上記乳酸菌または上記培養培地から上記アポリポタンパク質を回収する工程を包含する。
【0008】
上記組換えアポリポタンパク質は、種々の障害および状態(脂質異常症が挙げられる)ならびに/または種々の疾患、障害および/またはこれらと関連する状態を、処置ならびに/あるいは予防するために、使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(4.詳細な説明)
候補治療用タンパク質の高スループットの初期発見および高収量生成において、E.coliベースの発現系が、広く使用されている。しかし、全てのタンパク質が、宿主生物としてE.coliを使用して高収量で生成することができるわけではない。さらに、E.coliにおける成功裏の組換えタンパク質発現/精製は、精製タンパク質がエンドトキシンのような汚染物質を含まないようにすることができる信頼性の高い系に依存する。このE.coliから得られる精製タンパク質サンプルにおけるエンドトキシンの存在は、多くの場合検出されない。さらに、汚染物質を除去するために一般に使用される方法(例えば、アニオン交換クロマトグラフィー)は、エンドトキシンを除去しない。例えば、McKinstryら,2003,Biotechniques 35:724−6を参照のこと。
【0010】
E.coliでのアポリポタンパク質A−Iの生成は、低い。例えば、米国特許第5,059,528号およびそこで引用される参考文献を参照のこと;McGuireら,1996,J Lipid Res.37:1519−1528;Panagotopulosら,2002,Protein Expr Purif.25:353−61;およびRyanら,2003,Protein Expr Purif.27:98−103もまた参照のこと。エンドトキシンを除去するために必要とされる精製工程は、収率をさらに低くし得る。E.coliにおいて発現される組換えタンパク質に依存して、夾雑するエンドトキシンを排除しかつ現行のGood Manufacturing Practice(cGMP)と適合する純度レベルを達成することは可能でないこともある。例えば、Maら,2004,Acta Biochim Biophys Sin.36:419−24を参照のこと。例えば、アポリポタンパク質A−Iは、エンドトキシン(リポ多糖(LPS))に結合して、その毒性を中和する(例えば、Maら,2004,Acta Biochim Biophys Sin.36(6):419−24を参照のこと)。従って、精製組換えアポリポタンパク質をエンドトキシン非含有にすることができるE.coliの信頼性の高い系を開発することは不可能かもしれない。他の発現系(例えば、酵母および昆虫細胞)におけるアポリポタンパク質の生成もまた、低い。例えば、米国特許第5,059,528号およびそこで引用される参考文献を参照のこと。
【0011】
本開示は、エンドトキシン非生成細菌(例えば、乳酸菌)において組換えアポリポタンパク質を生成するための組成物および方法を提供する。アポリポタンパク質を生成するための非エンドトキシン細菌(例えば、乳酸菌)を使用することの利点としては、以下が挙げられる:(1)エンドトキシンが存在しないこと(エンドトキシンは、大部分のグラム陰性細菌における細胞壁の成分であるが、乳酸菌における細胞壁の成分としては存在しない);(2)細胞外プロテアーゼを産生しない乳酸菌株(L.lactis株が挙げられる)の利用性;(3)乳酸菌は操作しやすいこと;(4)乳酸菌の、組換えペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を分泌する能力(これら組換えペプチドは、安定しておりかつ精製しやすい);(5)酸素の局所的ポケット(localized pocket)(これは、存在する場合、細胞増殖を減少させ収量を低下させ得る)を避けるために必要とされる特別に設計された装置の必要性を低減させるまたは排除することによって、タンパク質生成の規模拡大を単純化する、醗酵代謝(すなわち、酸素の非存在下で起こる醗酵)の使用;(6)発現される遺伝子生成物の収量を増加させるための誘導性発現系が利用できること;ならびに(7)食品産業において乳酸菌は安全に使用されているという長い歴史があること(このことは、乳酸菌を治療用タンパク質(例えば、アポリポタンパク質)の生成に魅力的なクローニング宿主にしている)。
【0012】
(4.1 乳酸菌)
上記に鑑みると、本開示は、乳酸菌においてアポリポタンパク質を発現するための組成物および方法を提供する。本明細書において使用される場合、用語「乳酸菌(lactic acid bacterium)」とは、糖を醗酵するとともに酸(主に生成される酸としては、乳酸が挙げられる)を生成するグラム陽性の微好気性細菌または嫌気性細菌をいう。代表的には、上記方法および組成物は、産業上利用されている乳酸菌(例えば、Lactococcus spp.、Streptococcus spp.、Lactobacillus spp.、Leuconostoc spp.、Pediococcus spp.、Brevibacterium spp.およびPropionibacterium spp.)を使用する。厳密には嫌気性属に属する乳酸生成細菌(ビフィドバクテリア、すなわち、Bifidobacterium spp.)は、食品のスターター培養物として単独で、または乳酸菌と組み合わせて頻繁に使用されており、この乳酸生成細菌はまた、乳酸菌の科内に含まれ得る。
【0013】
他のエンドトキシン非生成細菌(当業者に公知の他のグラム陽性細菌が挙げられる)が、組換えアポリポタンパク質を生成するために使用され得、組換えアポリポタンパク質の生成の範囲が、上記の乳酸菌に限定されないことが理解されるべきである。
【0014】
組換え乳酸菌は、アポリポタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むように構築され得る。上記アポリポタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、適切な調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結されて、当該分野で周知の方法を用いて上記コード配列の発現を制御し得る(例えば、Sambrookら,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NYを参照のこと)。さらに、種々のLactobacillus種から選択された多くの遺伝子のコドン使用頻度パターンが分析されて、必要であれば、コドンの偏りを回避するためのアプローチを開発することが可能である。例えば、PouwelsおよびLeunissen,1994,Nucleic Acids Res.22:929−936を参照のこと。
【0015】
(4.2 アポリポタンパク質およびアポリポタンパク質ペプチド)
乳酸菌において組換え発現されるアポリポタンパク質の性質は、成功するのに重要ではない。本明細書中に記載されるような治療上の利益および/または予防上の利益を提供する実質的に任意のアポリポタンパク質および/またはその誘導体もしくはアナログが、乳酸菌の科を構成するメンバーのうちの1種以上において発現され得る。さらに、脂質と会合したときにLCATを活性化し得るかまたは円盤状粒子(discoidal particle)を形成し得るという点で、アポリポタンパク質(例えば、ApoA−I)の活性を「模倣」する任意のαヘリックスペプチドもしくはペプチドアナログ、または任意の他の型の分子が、乳酸菌において組換え発現され得、従って、「アポリポタンパク質」の定義内に含まれる。適切なアポリポタンパク質の例としては、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、ApoA−V、およびApoEのプレプロアポリポタンパク質形態;ヒトApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、およびApoEのプロ形態および成熟形態;ならびに活性な多型性形態、アイソフォーム、改変体および変異体、ならびに末端切断型形態が挙げられるが、これらに限定されず、このうちの最も一般的なものは、ApoA−I(ApoA−I)およびApoA−I(ApoA−I)である。ApoA−Iは、ApoA−IのR173C分子改変体である(例えば、Paroliniら,2003,J Biol Chem.278(7):4740−6;Calabresiら,1999,Biochemistry 38:16307−14;およびCalabresiら,1997,Biochemistry 36:12428−33を参照のこと)。ApoA−Iは、ApoA−Iの R151分子改変体である(例えば、Daumら,1999,J MoI Med.77(8):614−22を参照のこと)。システイン残基を含むアポリポタンパク質変異体もまた公知であり、使用され得る(例えば、米国特許出願公開第2003/0181372号を参照のこと)。上記アポリポタンパク質は、モノマーまたはダイマーの形態であり得、これらは、ホモダイマーであってもよいし、ヘテロダイマーであってもよい。例えば、プロApoA−Iおよび成熟ApoA−I(Duvergerら,1996,Arterioscler Thromb Vasc Biol.16(12):1424−29)、プロApoA−Iおよび成熟ApoA−I(Franceschiniら,1985,J Biol Chem.260:1632−35)、プロApoA−Iおよび成熟ApoA−I(Daumら,1999,J MoI Med.77:614−22)、プロApoA−IIおよび成熟ApoA−II(Shelnessら,1985,J Biol Chem.260(14):8637−46;Shelnessら,1984,J Biol Chem.259(15):9929−35)、プロApoA−IVおよび成熟ApoA−IV(Duvergerら,1991,Euro J Biochem.201(2):373−83)、プロApoEおよび成熟ApoE(McLeanら,1983,J Biol Chem.258(14):8993−9000)、プロApoJおよび成熟ApoJならびにプロApoHおよび成熟ApoHのホモダイマーおよびヘテロダイマー(可能な場合)が、使用され得る。上記アポリポタンパク質は、上記アポリポタンパク質が複合体中に含まれる場合にある生物学的活性を保持する限りにおいて、それらの単離を容易にする要素に対応する残基(例えば、Hisタグ)または他の目的で設計される他の要素に対応する残基を含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記アポリポタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、ヒトから得られ得る。ヒトアポリポタンパク質配列の非限定的な例は、米国特許第5,876,968号、同第5,643,757号、および同第5,990,081号、ならびにWO 96/37608において開示される;これらの開示は、本明細書中においてその全体が参考として援用される。
【0017】
上記参考文献に加えて、ヒトアポリポタンパク質の配列としては、種々の配列データベース(例えば、Genbank)において入手可能である配列が挙げられる。例えば、ヒトApoA−IについてのGenbankアクセッション番号としては、NP_000030およびAAB59514、P02647、CAA30377、ならびにAAA51746が挙げられるが、これらに限定されない。ヒトApoA−IIについてのGenBankアクセッション番号としては、NP_001634およびP02652が挙げられるが、これらに限定されない。ヒトApoA−IVについてのGenBankアクセッション番号としては、AAB50137、P06727、NP_000473、およびNP_001634が挙げられるが、これらに限定されない。ヒトApoA−VについてのGenBankアクセッション番号としては、NP_443200、AAB59546、およびQ6Q788が挙げられるが、これらに限定されない。ヒトApoEについてのGenBankアクセッション番号としては、Q6Q788、P02649、AAB50137、BAA96080、AAG27089、AAL82810、AAB59546、AAB59397、AAH03557、AAD02505、NP_000032、およびAAB59518が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記アポリポタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、非ヒトから得られる(例えば、米国特許出願公開第2004/0077541号(その開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される))。アポリポタンパク質A−Iタンパク質が、多くの非ヒト動物(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル、ヒヒ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ハリネズミ、アナグマ、マウス、ラット、ネコ、モルモット、ハムスター、アヒル、ニワトリ、サケおよびウナギにおいて同定された(Brouilletteら,2001,Biochim Biophys Acta.1531:4−46;Yuら,1991,Cell Struct Funct.16(4):347−55;ChenおよびAlbers,1983,Biochim Biophys Acta 753(1):40−6;Luoら,1989,J Lipid Res.30(11):1735−46;Blatonら,1977,Biochemistry 16:2157−63;Sparrowら,1995,J Lipid Res.36(3):485−95;Beaubatieら,1986,J Lipid Res.27:140−49;Januzziら,1992,Genomics 14(4):1081−8;GoulinetおよびChapman,1993,J Lipid Res.34(6):943−59;Colletら,1997,J Lipid Res.38(4):634−44;ならびにFrankおよびMarcel,2000,J Lipid Res.41(6):853−72)。
【0019】
非ヒト動物種由来のアポリポタンパク質A−Iタンパク質は、同様の大きさであり(Mr 約27,000〜28,000)かつかなりの相同性を共有する(Smithら,1978,Ann Rev Biochem.47:751−7)。例えば、ウシApoA−Iタンパク質は、241アミノ酸残基を含み、一連の反復性両親媒性αヘリックス領域を形成し得る。ウシApoA−Iタンパク質には、10個の両親媒性αヘリックス領域が存在し、代表的には、残基43〜64、65〜86、87〜97、98〜119、120〜141、142〜163、164〜184、185〜206、207〜217および218〜241の間に存在する(Sparrowら,1992,Biochim Biophys Acta.1123:145−150、およびSwaney,1980,Biochim Biophys Acta 617:489−502を参照のこと)。ヒトApoA−Iタンパク質(GenBankアクセッション番号XM_52106またはNM_000039)とウシApoA−Iタンパク質(GenBankアクセッション番号A56858)との間の、プログラムBLASTを使用するアミノ酸配列比較により、これら配列は77%同一であることが明らかになっている(Altschulら,1990,J MoI Biol.215(3):403−10)。
【0020】
ブタ(pig)(ブタ:porcine)ApoA−Iタンパク質は、分子量約30,280を有する、約264アミノ酸残基を含む。GenBankアクセッション番号S31394は、分子量30,254を有する264残基のブタApoA−I配列を提供する一方で、GenBankアクセッション番号JT0672は、分子量30,320を有する265残基のブタApoA−Iタンパク質を提供する(Weiler−Guttlerら,1990,J Neurochem.54(2):444−450;Trieuら,1993,Gene 123(2):173−79;Trieuら,1993,Gene 134(2):267−70もまた参照のこと)。
【0021】
ニワトリApoA−I前駆体は、264アミノ酸残基を有する;上記配列は、GenBankアクセッション番号LPCHA1で提供されている。Jacksonらは、ニワトリ(hen)ApoA−Iを、234アミノ酸残基を含み、分子量約28,000を有しかつヒトApoA−Iとはイソロイシンの存在が異なると説明した(Jacksonら,1976,Biochim Biophys Acta.420(2):342−9)。Yangらは、成熟ニワトリApoA−Iタンパク質を、240アミノ酸残基から構成され、ヒトと50%未満の相同性を有すると説明した(Yangら,1987,FEBS Lett.224(2):261−6、ShackelfordおよびLebherz;1983,J Biol Chem.258(11):7175−7180、Banjerjeeら,1985,J Cell Biol.101(4):1219−1226、Rajavashisthら,1987,J Biol Chem.262(15):7058−65、Ferrariら,1987,Gene 60(1):39−46、Bhattacharyyaら,1991,Gene 104(2):163−168;Lamon−Favaら,1992,J Lipid Res.33(6):831−42もまた参照のこと)。ニワトリApoA−Iタンパク質の円偏光二色性分光分析(circular dichroism)研究により、このタンパク質は、脂質なしの状態において、両親媒性αヘリックスの束(bundle)として構成されることが実証されている(Kissら,1999,Biochemistry 38(14):4327−34)。ニワトリ、ヒト、ウサギ、イヌおよびラットの間での二次構造特徴の比較は、ヒトApoA−Iに対する、特に、このタンパク質のN末端から3分の2において、ApoA−Iの二次構造の良好な保存を示す(Yangら,1987,FEBS Lett.224(2):261−6)。
【0022】
七面鳥におけるリポタンパク質研究により、ヒトApoA−IおよびApoA−IIに対する類推において表されたリポタンパク質のApoAクラスが同定された。七面鳥におけるApoA−Iは、分子量約27,000を有する主要なApoAポリペプチドであった(KelleyおよびAlaupovic,1976,Atherosclerosis 24(1−2):155−75、KelleyおよびAlaupovic,1976,Atherosclerosis 24(1−2):177−87)。アヒルApoA−Iは、約246アミノ酸残基を含み得かつ分子量約28,744を有する(GenBankアクセッション番号A61448、Guら,1993,J Protein Chem.12(5):585−91)。
【0023】
アポリポタンパク質に対応するペプチドおよびペプチドアナログ、ならびにApoA−I、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−IVおよびApoEの活性を模倣し、乳酸菌における発現に適したアゴニストの非限定的な例は、米国特許第6,004,925号、同第6,037,323号、同第6,046,166号、および同第5,840,688号、米国特許出願公開第2004/0266671号、同第2004/0254120号、同第2003/0171277号、同第2003/0045460号、および同第2003/0087819号(これらの開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0024】
(4.3 乳酸菌発現ベクターおよび調節配列)
上記組換え乳酸菌は、上記コードヌクレオチド配列に作動可能に連結された、少なくとも1つの構成性プロモーターまたは少なくとも1つの調節性プロモーターを含み得る。本明細書において使用される場合、用語「作動可能に連結」とは、機能的関係があるヌクレオチド配列要素の連結をいう。例えば、「作動可能に連結」されているプロモーターとは、この調節要素が、RNAポリメラーゼ開始およびこの核酸の発現を制御する(例えば、上記コード配列の転写に影響を及ぼす)のに、ヌクレオチドコード配列に対する関係において適切な位置および配向にあることを意味する。上記プロモーター領域は、任意の原核生物細胞に存在する、乳酸菌において機能し得る(例えば、作動可能に連結された核酸配列の発現を促進し得る)プロモーターに基づき得るが、いくつかの実施形態においては、このプロモーターは、乳酸菌種由来である。例えば、いくつかの実施形態において、上記プロモーター領域は、Lactococcus lactis(Lactococcus lactis subspecies lactis(例えば、MG1363とよばれる株(Lactococcus lactis subspecies cremorisとも文献中では言及される)(Nautaら,1997,Nat Biotechnol.15:980−983))およびLactococcus lactis subspecies lactis biovar.diacetylactisを含む)のプロモーター領域由来であり得る。組換え乳酸菌の構築における使用に適した他のプロモーター領域の例は、プロモーターP170およびその誘導体を含む領域を含めて、WO 94/16086において開示されている。その例は、WO 98/10079および米国特許出願公開第2002/0137140号(これらの開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0025】
いくつかの実施形態において、組換えアポリポタンパク質を発現するために使用される乳酸菌は、その細胞外ハウスキーピングプロテアーゼであるHtrAが不活性化された改変体であり得る。例えば、Miyoshiら,2002,Appl Environ Microbiol 68:3141−3146(この開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記組換え乳酸菌において使用されるプロモーターは、調節性または誘導性のプロモーターであり得る。上記プロモーターを調節または誘導する因子としては、プロモーター配列の活性を調節し得る任意の物理的因子および化学的因子が挙げられる。これらの因子としては、物理的条件(例えば、温度および光);化学物質(例えば、IPTG、トリプトファン、ラクテートまたはナイシン);および環境条件または増殖条件の因子(例えば、pH、インキュベーション温度、および酸素含有量)が挙げられるが、これらに限定されない。プロモーター活性を調節するための他の条件としては、とりわけ、熱ショック遺伝子の発現を誘起する温度シフト;増殖培地の組成(例えば、イオン強度/NaCl含有量);細胞内または培地中での代謝産物(乳酸/ラクテートを含む)の蓄積;必須の細胞構成要素またはそのための前駆体の存在/非存在;細菌の増殖期または増殖速度が挙げられ得る。例えば、米国特許出願公開第2002/0137140号(この開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0027】
乳酸菌において使用するための多くの誘導性遺伝子発現系が開発されてきた(例えば、Kok,1996,Antonie Van Leeuwenhoek.70:129−145;Kuipersら,1997,Trends Biotechnol 15:135−40;Djordjevic and Klaenhammer,1998,Mol Biotechnol 9:127−139;Kleerebezemら,1997,Appl Environ Microbiol.63:4581−4584を参照のこと)。有用な乳酸菌発現系としては、NICE系(de Ruyterら,1996,Appl Environ Microbiol.62:3662−3667)が挙げられる。この系は、L.lactisにおける抗微生物性ペプチドであるナイシンの生合成を制御する2成分系からの遺伝的要素に基づいている。他の有用な誘導性発現系は、L.lactisのバクテリオファージであるf31(O’Sullivanら,1996,Biotechnology(N.Y.),14:82−87;ならびにWalkerおよびKlaenhammer,1998,J Bacteriol 180:921−931)ならびにrlt(Nautaら,1997,Nat Biotechnol.15:980−983)、環境変化(例えば、pH(Israelsenら,1995,Appl Environ Microbiol.61:2540−2547)、Zn2+(LlullおよびPoquet,2004,Appl Environ Microbiol.70:5398−5406)、塩濃度(Sandersら,1998,MoI Gen Genet,257:681−685)、および宿主細胞によって生成されるかもしくは宿主細胞増殖の間に天然に存在する条件によって生成される代謝産物)によって誘導されるプロモーターからの遺伝的要素の使用を包含する。このようなプロモーターとしては、WO 94/16086、WO 98/10079、米国特許出願公開第2002/0137140号、およびMadsenら,1999,Mol Microbiol.107:75−87に開示されるように、とりわけ、pH誘導性P170プロモーターおよびその誘導体が挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記プロモーターおよび上記アポリポタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、自律的に複製するレプリコン(例えば、プラスミド、転移可能要素(transposable element)、バクテリオファージ、またはコスミド)で上記乳酸菌に導入され得る。いくつかの実施形態において、上記プロモーターおよび上記アポリポタンパク質ヌクレオチドコード配列は、上記アポリポタンパク質ヌクレオチドコード配列の細菌中での安定な維持を提供するように、上記アポリポタンパク質ヌクレオチドコード配列が上記乳酸菌細胞染色体に組み込まれる条件下で導入され得る。組み込みは、とりわけ、相同組換え、トランスポゾン、接合移入(conjugal transfer)およびファージインテグラーゼ(例えば、Frazierら,2003,Appl Environ Microbiol.69(2):1121−8;Christiansenら,1994,J Bacteriol.176(4):1069−76;Romeroら,1992,Appl Environ Microbiol.58(2):699−702;Romeroら,1991,J Bacteriol.173(23):7599−606;Leenhoutsら,1991,Appl Environ Microbiol.57(9):2562−7;Leenhoutsら,1990,Appl Environ Microbiol.56(9):2726−2735;Chopinら,1989,Appl Environ Microbiol.55(7):1769−74;およびScheirlinckら,1989,Appl Environ Microbiol.55(9):2130−7を参照のこと)に基づく組み込み系によって影響を受け得る。
【0029】
他の実施形態において、上記アポリポタンパク質ヌクレオチドコード配列は、上記選択された宿主生物の染色体に天然に存在するプロモーターに作動可能に連結される位置で、上記乳酸菌細胞染色体へ導入され得る(例えば、Rauchら,1992,J Bacteriol.174(4):1280−7;Israelsenら,1993,Appl Environ Microbiol.59(1):21−26;およびMaguinら,1996,J Bacteriol.178(3):931−5を参照のこと)。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記アポリポタンパク質ヌクレオチドコード配列は、上記遺伝子生成物を上記細菌から上記培養培地へと分泌させ得る、シグナルペプチド(SP)をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結される。乳酸菌における使用に適したシグナルペプチド(Usp 45が挙げられる)は、米国特許出願公開第2002/0137140号(この開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)において開示されている。
【0031】
いくつかの実施形態において、さらなるヌクレオチド配列(例えば、乳酸菌における異種タンパク質の生成および分泌を改善するために使用されるもの)が、本明細書中に記載される方法および組成物において使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、ブドウ球菌ヌクレアーゼ(staphyloccal nuclease)(Nuc)をコードするヌクレオチド配列および合成ペプチドLEISSTCDAをコードするヌクレオチド配列は、アポリポタンパク質をコードするヌクレオチド配列に連結され得る。例えば、Nouailleら,2005,Braz J Med Biol Res.38:353−359(この開示は、その全体が本明細書中において参考として援用される)を参照のこと。
【0032】
いくつかの実施形態において、乳酸菌において使用するために開発された発現ベクターは、乳酸菌において組換えアポリポタンパク質を発現するために使用され得る。これらのベクターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:pLF22(例えば、Trakanovら,2004,Microbiology 73:170−175を参照のこと)およびpTREX(例えば、Reuterら,2003,「Vaccine Protocols」,Methods in Molecular Medicine 87:101−114を参照のこと)。
【0033】
種々の実施形態において、アポリポタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む上記乳酸菌は、例えば、米国特許出願公開第2002/0137140号において開示されるように、エンドトキシン非含有のアポリポタンパク質を生成するために培養され得る。上記方法は、上記形質転換された乳酸菌を、上記アポリポタンパク質の発現に適した条件下で培養する工程、および上記形質転換された乳酸菌から上記アポリポタンパク質を回収する工程を包含し得る。上記組換え細胞および/または上記アポリポタンパク質は、当業者に公知の従来からの技術を使用して収集され得る。例えば、米国特許出願公開第2002/0137140号(この開示は、その全体が本明細書中において参考として援用される)を参照のこと。
【0034】
いくつかの実施形態において、短鎖アシルリン脂質が、上記組換えアポリポタンパク質を含む上記乳酸菌(上記のとおり)を培養するために使用される培地(すなわち、醗酵培地)に添加される。上記乳酸菌は、栄養源として上記短鎖アシルリン脂質を利用し得る。さらに、上記短鎖アシルリン脂質は、上記発現されるアポリポタンパク質を可溶化するための一助として使用され得る。上記短鎖アシルリン脂質は、上記アシル鎖を切断するホスホリパーゼを添加し、短鎖脂肪酸と短鎖溶解性PL(lysoPL)とを遊離させることによって、容易に除去され得る。上記短鎖脂肪酸および溶解性PLは可溶性であるので、上記アポリポタンパク質は、沈殿および精製させられ得る。
【0035】
(4.4 組換えアポリポタンパク質−脂質複合体)
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の上記組換えアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質−脂質複合体において処方および投与され得る。このアプローチは、特に、上記複合体がHDLに、そして特にプレ−β−1またはプレ−β−2 HDL集団に類似の大きさおよび密度を有する場合に、上記複合体が循環中で増大した半減期を有するはずであるので、いくつかの利点を有する。上記アポリポタンパク質−脂質複合体は、以下に記載の多くの方法のうちのいずれかによって従来通り調製され得る。米国特許第6,004,925号(この開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)もまた参照のこと。長期貯蔵寿命を有する安定な調製物が、凍結乾燥によって作製され得る。上記凍結乾燥したアポリポタンパク質−脂質複合体は、薬学的再処方のためのバルクを調製するため、または被験体へ投与する前に滅菌水もしくは適切な緩衝化溶液で再水和することによって再構成され得る個々のアリコートもしくは投与単位を調製するために、使用され得る。
【0036】
当業者に周知の種々の方法が、上記アポリポタンパク質−脂質小胞または複合体を調製するために使用され得る。この目的のために、リポソームまたはプロテオリポソームを調製するために利用可能な多くの技術が、使用され得る。例えば、上記アポリポタンパク質は、適切な脂質と一緒に超音波処理されて(バスまたはプローブソニケーターを用いて)、複合体を形成し得る。あるいは、上記アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質−脂質複合体の自発的形成を生じる予備形成された脂質小胞と合わせられ得る。なお他の実施形態において、上記アポリポタンパク質−脂質複合体は、界面活性剤透析方法によって形成され得る;例えば、上記アポリポタンパク質と、脂質と、界面活性剤との混合物が、透析されて、上記界面活性剤を除去して、アポリポタンパク質−脂質複合体を再構成もしくは形成する(例えば、Jonasら,1986,Methods in Enzymol.128:553−582を参照のこと)。
【0037】
前述のアプローチは実現可能であるが、各方法は、費用、収率、再現性および安全性の面で、それら自体に特有の生成課題を示す。HDLに類似の特性を有するアポリポタンパク質−リン脂質複合体を調製するための単純な方法は、米国特許第6,004,925号(この開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されている。
【0038】
上記凍結乾燥した生成物は、上記ペプチド−脂質複合体の溶液または懸濁物を得るために再構成され得る。この目的のために、上記凍結乾燥粉末は、適切な容量(しばしば、静脈内注射に都合の良い、5mgペプチド/ml)になるまで水溶液で再水和される。いくつかの実施形態において、上記凍結乾燥粉末は、リン酸緩衝化生理食塩水または生理食塩水で再水和される。その混合物は、攪拌またはボルテックスされて、再水和を容易にし得る。そして、大部分の場合、その再構成工程は、上記複合体の脂質成分の相転移温度以上の温度で行われ得る。
【0039】
得られた再構成調製物のアリコートを、上記調製物中の複合体が望ましいサイズ分布;例えば、HDLのサイズ分布を有することを確認するために特徴付けられ得る。この目的のための例示的方法は、ゲル濾過クロマトグラフィーである。以下に記載の作業実施例において、Pharmacia Superose 6 FPLCゲル濾過クロマトグラフィーシステムを使用した。使用した緩衝液は、50mMリン酸塩緩衝液(pH7.4)中に150mM NaClを含む。代表的なサンプル容積は、5mgペプチド/mlを含む複合体を20〜200μlである。カラム流速は、0.5ml/分である。既知の分子量およびストークス直径の一連のタンパク質、ならびにヒトHDLを、カラムを較正するための標準物質として使用し得る。上記タンパク質およびリポタンパク質複合体は、波長254nmまたは280nmの光の吸収または散乱によってモニターされ得る。
【0040】
上記組換えアポリポタンパク質は、種々の脂質(飽和脂質、不飽和脂質、天然脂質および合成脂質ならびに/またはリン脂質が挙げられる)と複合体形成され得る。適したリン脂質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:短いアルキル鎖のリン脂質、卵ホスファチジルコリン、ダイズホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、1−ミリストイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン、1−パルミトイル−2−ステアロイルホスファチジルコリン、1−ステアロイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジオレオホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルグリセロールホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、脳ホスファチジルセリン、脳スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、ジステアロイルスフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、ガラクトセレブロシド、ガングリオシド、セレブロシド、ジラウリルホスファチジルコリン、(1,3)−D−マンノシル−(1,3)ジグリセリド、アミノフェニルグリコシド、3−コレステリル−6’−(グリコシルチオ)ヘキシルエーテル糖脂質、ならびにコレステロールおよびその誘導体。
【0041】
他の実施形態において、組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、上記組換えアポリポタンパク質と、米国特許出願第60/665,180号(発明の名称「Charged Lipoprotein Complexes and Their Uses」、2005年3月24日出願)、および国際出願番号PCT/IB2006/000635において開示される脂質とを複合体形成することによって作製され得る。
【0042】
(4.5 薬学的組成物)
本開示によって企図される薬学的組成物は、インビボでの投与および送達に適した薬学的に受容可能なキャリア中の活性成分として、本明細書中に記載の組換えアポリポタンパク質または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体を含む。ペプチド模倣性アポリポタンパク質を使用する実施形態において、上記ペプチド模倣性アポリポタンパク質は、遊離の酸もしくは塩基の形態、または薬学的に受容可能な塩の形態のいずれかにおいて、上記組成物中に含まれ得る。改変タンパク質(例えば、アミド化タンパク質、アシル化タンパク質、アセチル化タンパク質またはpeg化タンパク質)もまた、使用され得る。
【0043】
注射可能な組成物は、水性または油性のビヒクル中に、活性成分の滅菌の懸濁液、溶液またはエマルジョンを含み得る。上記組成物はまた、処方剤(例えば、懸濁剤、安定剤および/または分散剤)を含み得る。上記注射用組成物は、単位投与形態において(例えば、アンプルにおいて)または複数用量容器において提示され得、そして添加保存剤を含み得る。注入用には、組成物は、荷電したリポタンパク質複合体と適合性の材料(例えば、エチレンビニルアセテートまたは当該分野で公知の任意の他の適合性材料)から製造される注入バッグ中に供給され得る。
【0044】
あるいは、上記注入用組成物は、使用前に適切なビヒクル(滅菌した発熱物質を含まない水、緩衝液、デキストロース溶液などが挙げられるが、これらに限定されない)で再構成するために散剤形態で提供され得る。この目的のために、上記組換えアポリポタンパク質が凍結乾燥され得るか、または同時に凍結乾燥されたアポリポタンパク質−脂質複合体が調製され得る。上記保管された組成物は、単位投与形態において供給され得、そしてインビボで使用する前に再構成され得る。
【0045】
長期間の送達のために、上記活性成分は、移植による投与;例えば、皮下注射、皮内注射、または筋肉内注射のために、デポー組成物として処方され得る。従って、例えば、組換えアポリポタンパク質−脂質複合体または組換えアポリポタンパク質単独は、適したポリマー物質または疎水性物質と一緒に(例えば、受容可能な油中のエマルジョンとして)またはリン脂質フォーム(foam)もしくはイオン交換樹脂中に処方され得る。
【0046】
あるいは、経皮的吸収のために活性成分をゆっくりと放出する接着性ディスクまたはパッチとして製造される経皮送達系が、使用され得る。この目的のために、透過性増強剤が、上記活性成分の経皮的透過性を促進するために使用され得る。特定の利益は、本明細書中に記載される荷電した複合体を、虚血性心疾患および高コレステロール血症を有する患者における使用のためのニトログリセリンパッチに組み込むことによって達成され得る。
【0047】
あるいは、上記送達は、カテーテルもしくは灌流器(perfusor)を用いて局所にまたは壁内に(脈管壁内に)行われ得る(例えば、米国特許出願公開第2003/0109442号を参照のこと)。
【0048】
上記組成物は、望ましい場合、上記活性成分を含む、1つ以上の単位投与形態を含み得るパックまたはディスペンサーで提示され得る。上記パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイル(例えば、ブリスターパック)を含み得る。上記パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付属し得る。
【0049】
(4.6 処置方法)
本明細書中に記載の組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体ならびに組成物は、リポタンパク質複合体が有用であると示された実質的にあらゆる目的のために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記複合体および組成物は、脂質異常症ならびに/または脂質異常症と関連する実質的に任意の疾患、状態および/もしくは障害を処置または予防するために使用され得る。本明細書において使用される場合、用語「脂質異常症」または「脂質異常性」とは、血漿中の脂質のレベルが異常に上昇しているかまたは異常に減少していることをいう。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:以下の状態と関連した、脂質の変化したレベル:冠状動静脈心疾患;冠状動脈疾患;心臓血管の疾患、高血圧、再狭窄、脈管もしくは脈管周囲の疾患;脂質異常性障害;リポタンパク質異常血症(dyslipoproteinemia);高レベルの低密度リポタンパク質コレステロール;高レベルの超低密度リポタンパク質コレステロール;低レベルの高密度リポタンパク質;高レベルのリポタンパク質Lp(a)コレステロール;高レベルのアポリポタンパク質B;アテローム硬化症(アテローム硬化症の処置および予防を含む);高脂血症;高コレステロール血症;家族性高コレステロール血症(FH);家族性複合型高脂血症(familial combined hyperlipidemia)(FCH);リポタンパク質リパーゼ欠損症(例えば、高トリグリセリド血症、低αリポタンパク質血症、および高コレステロールリポタンパク質血症(hypercholesterolemialipoprotein)。
【0050】
脂質異常症と関連する疾患としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:冠状動静脈心疾患、冠状動脈疾患、急性冠状動静脈症候群、心臓血管疾患、高血圧、再狭窄、脈管もしくは脈管周囲の疾患;脂質異常性障害;リポタンパク質異常血症;高レベルの低密度リポタンパク質コレステロール;高レベルの超低密度リポタンパク質コレステロール;低レベルの高密度リポタンパク質;高レベルのリポタンパク質Lp(a)コレステロール;高レベルのアポリポタンパク質B;アテローム硬化症(アテローム硬化症の処置および予防を含む);高脂血症;高コレステロール血症;家族性高コレステロール血症(FH);家族性複合型高脂血症(familial combined hyperlipidemia)(FCH);リポタンパク質リパーゼ欠損症(例えば、高トリグリセリド血症、低αリポタンパク質血症、および高コレステロールリポタンパク質血症(hypercholesterolemialipoprotein)。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記方法は、脂質異常症と関連する疾患を処置または予防する方法を包含し、この方法は、投与後少なくとも1日間、投与前のベースライン(初期)レベルより約10mg/dL〜300mg/dL高い範囲内で、血清レベルで複合体化アポリポタンパク質を達成するに有効な量で、組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体を被験体に投与する工程を包含する。
【0052】
他の実施形態において、上記方法は、脂質異常症と関連する疾患を処置または予防するための方法を包含し、この方法は、投与後の少なくとも1日間、投与前の初期HDL−コレステロール画分より少なくとも約10%高い、HDL−コレステロール画分の循環血漿濃度を達成するに有効な量で、組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体を被験体に投与する工程を包含する。
【0053】
他の実施形態において、上記方法は、脂質異常症と関連する疾患を処置または予防するための方法を包含し、この方法は、投与後の5分間〜1日間の間に、30〜300mg/dLの間のHDL−コレステロール画分の循環血漿濃度を達成するに有効な量で、本明細書中に記載の荷電されたリポタンパク質複合体または組成物を被験体に投与する工程を包含する。
【0054】
他の実施形態において、上記方法は、脂質異常症と関連する疾患を処置または予防するための方法を包含し、この方法は、投与後の5分間〜1日間の間に、30〜300mg/dLの間のコレステリルエステルの循環血漿濃度を達成するに有効な量で、組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体を被験体に投与する工程を包含する。
【0055】
他の実施形態において、上記方法は、脂質異常症と関連する疾患を処置または予防するための方法を包含し、この方法は、投与後の少なくとも1日間、投与前のベースライン(初期)レベルを少なくとも約10%上回る糞便コレステロール排泄の増加を達成するために有効な量で、組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体を被験体に投与する工程を包含する。
【0056】
本明細書中に記載の組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体あるいは組成物は、単独で、または前述の状態を処置もしくは予防するために使用される他の薬物との併用療法において、使用され得る。このような治療としては、必要とされる薬物の同時投与または連続的投与が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、高コレステロール血症またはアテローム硬化症の処置において、組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、現在使用しているコレステロール低下治療のうちの1つ以上と一緒に施され得る;これらのコレステロール低下治療としては、例えば、胆汁酸樹脂、ナイアシン、スタチン、コレステロール吸収インヒビターおよび/もしくはフィブリン酸が挙げられる。このような併用レジメンは、特に有益な治療上の効果をもたらし得る。なぜなら、各薬物は、コレステロールの合成および輸送における異なる標的に対して作用するからである;すなわち、胆汁酸樹脂は、コレステロール再循環、カイロミクロンおよびLDL集団に影響を及ぼす;ナイアシンは、主に、VLDLおよびLDL集団に影響を及ぼす;スタチンは、コレステロール合成を阻害し、LDL集団(およびおそらく増加するLDLレセプター発現)を減少させる;それに対して、本明細書中に記載される荷電したリポタンパク質複合体は、RCTに影響を及ぼし、HDLを増加させ、コレステロール排出(cholesterol efflux)を促進する。
【0057】
他の実施形態において、上記組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、冠状動脈心臓疾患;冠状動脈疾患;心臓血管疾患、高血圧、再狭窄、脈管もしくは脈管周囲の疾患;脂質異常性障害;リポタンパク質異常血症;高レベルの低密度リポタンパク質コレステロール;高レベルの超低密度リポタンパク質コレステロール;低レベルの高密度リポタンパク質;高レベルのリポタンパク質Lp(a)コレステロール;高レベルのアポリポタンパク質B;アテローム硬化症(アテローム硬化症の処置および予防を含む);高脂血症;高コレステロール血症;家族性高コレステロール血症(FH);家族性複合型高脂血症(familial combined hyperlipidemia)(FCH);リポタンパク質リパーゼ欠損症(例えば、高トリグリセリド血症、低αリポタンパク質血症、および高コレステロールリポタンパク質血症(hypercholesterolemialipoprotein)を処置または予防するためにフィブリン酸とともに使用され得る。
【0058】
上記組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、循環でのバイオアベイラビリティーを確実にする任意の適した経路によって投与され得る。例えば、上記組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、小さなHDL画分、例えば、プレ−β様、プレ−γ様およびプレ−β様のHDL画分、αHDL画分、HDL3画分および/またはHDL2画分を増大させる投与量において投与され得る。いくつかの実施形態において、上記投与量は、例えば、画像化技術(例えば、磁気共鳴画像化(MRI)または脈管内超音波(IVUS))によって測定される場合に、アテローム硬化斑の低減を達成するために有効である。IVUSによって追跡すべきパラメーターとしては、ベースラインからのアテローム容積の変化の%、および全アテローム容積の変化が挙げられるが、これらに限定されない。MRIによって追跡すべきパラメーターとしては、IVUSについてのもの、ならびに脂質組成および斑のカルシウム沈着が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
上記斑の退縮は、最後の注入の終わりに、または最後の注入後数週間以内に、あるいは治療開始後3ヶ月以内、6ヶ月以内または1年以内に、それ自体のコントロールである時間ゼロ 対 時間tとして患者を用いて測定され得る。
【0060】
投与は、最良には、非経口投与経路(静脈内(IV)注射、筋肉内(IM)注射、皮内注射、皮下(SC)注射、および腹腔内(IP)注射が挙げられる)によって達成され得る。特定の実施形態において、投与は、灌流器、浸透器(infiltrator)またはカテーテルによるものである。いくつかの実施形態において、荷電したリポタンパク質複合体は、注射によって、皮下移植可能ポンプによってまたはデポー調製物によって、非経口投与を介して得られるものに等しい循環血清濃度を達成する量において、投与される。上記複合体はまた、例えば、ステントまたは他のデバイスに取り込まれ得る。
【0061】
投与は、種々の異なる処置レジメンを通じて達成され得る。例えば、いくらかの静脈内注射は、1日の間に周期的に投与され得、上記注射の全累積容量は、1日の毒性用量に達しない。あるいは、1回の静脈内注射が、約3〜15日間毎に、好ましくは、約5〜10日間毎に、最も好ましくは約10日間毎に施され得る。なお別の代替法において、段階的に上昇する用量が投与され得、1回の投与につき50〜200mgの間の用量において約1〜5用量で開始して、次に、1回の投与につき200mg〜1gの反復用量が続く。患者の必要性に依存して、投与は、1時間より長い持続時間でのゆっくりとした注入によるか、1時間以下の迅速な注入によるか、1回のボーラス注射によるものであり得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、投与は、注射のシリーズとして行われ得、その後、6ヶ月〜1年間にわたって中止され得、その後、別のシリーズが開始され得る。その後、注射の維持シリーズが、1年ごとに投与され得るかまたは3〜5年ごとに投与され得る。上記注射のシリーズは、1日中行われ得るか(複合体の特定の血漿レベルを維持するための注入)、数日間行われ得るか(例えば、8日間の期間で4回の注射)、または数週間行われ得(例えば、4週間の期間で4回の注射)、その後、6ヶ月〜1年後に再度開始され得る。
【0063】
他の投与経路が使用され得る。例えば、消化管を介する吸収は、例えば、口内粘膜、胃および/または小腸の刺激の強い環境において、活性成分の分解を回避するかまたは最小にするために適切な処方(例えば、超陽性コーティング)が使用されるのであれば、経口投与経路(経口摂取経路、口内経路および舌下経路が挙げられるが、これらに限定されない)によって達成され得る。あるいは、粘膜組織を介する投与(例えば、膣投与様式および直腸投与様式)は、消化管における分解を回避または最小にするために利用され得る。他の実施形態において、本発明の処方物は、経皮的に(transcutaneously)(例えば、経皮的に(transdermally))、または吸入によって投与され得る。好ましい経路は、レシピエントの状態、年齢およびコンプライアンスによって変動し得ることが理解される。
【0064】
組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体あるいは組成物の実際の用量は、投与経路によって変動し得る。
【0065】
種々の組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体の毒性および治療上の効力は、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物において標準的な薬学的手順を使用して決定され得る。毒性効果と治療上の効果との間の上記用量比率は、治療指数であり、比LD50/ED50として表され得る。高い治療指数を示す組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体が好ましい。追跡され得るパラメーターの非限定的な例としては、肝機能トランスアミナーゼ(2×正常ベースラインレベル以下)が挙げられる。これは、非常に多くのコレステロールが肝臓にもたらされかつ肝臓がこのような量を同化できないという指標である。赤血球に対する効果もまた、モニターされ得る。なぜなら、赤血球からのコレステロール移動は、赤血球を脆くするかまたはそれらの形状に影響を及ぼすからである。
【0066】
患者は、ある医療行為(例えば、予防処置)を受ける前に、またはその間またはその後に、数日間から数週間、処置され得る。投与は、別の侵襲性治療(例えば、血管形成術、頸動脈切断(carotid ablation)、ロトブレーダー(rotoblader)または臓器移植(例えば、心臓、腎臓、肝臓など)に付随(concomitant)してもよいし、同時(contemporaneous)であってもよい。
【0067】
特定の実施形態において、組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、コレステロール合成がスタチンまたはコレステロール合成インヒビターによって制御されている患者に投与される。他の実施形態において、組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、胆汁酸塩およびコレステロールを捕らえるために、胆汁酸排出を上げて血中コレステロール濃度を低下させるために、結合樹脂(例えば、半合成樹脂(例えば、コレスチルアミン))で、または線維(例えば、植物性繊維)での処置を受けている患者に投与される。
【0068】
(4.7 他の用途)
本明細書中に記載の組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体および組成物は、例えば、診断目的で、血清HDLを測定するためにインビトロでのアッセイにおいて使用され得る。ApoA−I、ApoA−IIおよびApoペプチドは、血清のHDL成分と会合するので、組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、HDL集団、ならびにプレ−βおよびプレ−β2 HDL集団の「マーカー」として使用され得る。さらに、上記組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、RCTにおいて有効なHDLの亜集団のマーカーとして使用され得る。この目的のために、組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、患者血清サンプルに添加され得るかまたは患者血清サンプルと混合され得る;適切なインキュベーション時間の後に、上記HDL成分は、組み込まれた組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体を検出することによってアッセイされ得る。これは、標識された組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体(例えば、放射性標識、蛍光標識、酵素標識、色素など)を使用して、あるいは組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体に対して特異的な抗体(または抗体フラグメント)を使用するイムノアッセイによって、達成され得る。
【0069】
あるいは、標識された組換えアポリポタンパク質および/または組換えアポリポタンパク質−脂質複合体は、循環系を可視化するために、またはRCTをモニターするために、またはHDLがコレステロール排出において活性であるはずである脂肪線条(fatty streak)、アテローム硬化病変などにおけるHDLの蓄積を可視化するために、画像化手順(例えば、CATスキャン、MRIスキャン)において使用され得る。
【0070】
全ての引用された参考文献は、各個々の刊行物、特許または特許出願が、それらの全体が全ての目的で本明細書中に参考として援用されていることが詳細にかつ個々に示されたのと同程度にまで、それら全体が全ての目的で本明細書中に参考として援用される。
【0071】
いずれの刊行物の引用も、出願日より前の開示に関するものであり、本発明が先行発明によってこのような刊行物に先んじて権利化されないという承認として解釈されるべきでない。
【0072】
本発明の多くの改変およびバリエーションが、当業者にとって明らかなように、その趣旨および範囲から逸脱することなく行われ得る。記載される特定の実施形態は、例示目的で提供されるに過ぎず、本発明は、権利化される特許請求の範囲に対する等価物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌において発現可能な発現ベクターであって、アポリポタンパク質をコードするヌクレオチドコード配列、および該ヌクレオチドコード配列に作動可能に連結されて該ヌクレオチドコード配列の発現を制御する1つ以上の調節ヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
【請求項2】
前記ヌクレオチドコード配列は、ヒトアポリポタンパク質をコードする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
前記ヌクレオチドコード配列は、プレプロアポリポタンパク質、プレプロApoA I、プロApoA I、ApoA I、プレプロApoA II、プロApoA II、ApoA II、プレプロApoA−IV、プロApoA IV、ApoA IV、ApoA V、プレプロApoE、プロApoE、ApoE、プレプロApoA IMilano、プロApoA IMilano、ApoA IMilano、プレプロApoA IParis、プロApoA IParis、およびApoA IParisから選択されるヒトアポリポタンパク質をコードする、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記調節ヌクレオチド配列のうちの1つは、前記ヌクレオチドコード配列に作動可能に連結される構成性プロモーターを含む、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記調節ヌクレオチド配列のうちの1つは、前記ヌクレオチドコード配列に作動可能に連結される調節性プロモーターを含む、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項6】
前記プロモーターは、乳酸菌由来である、請求項4または5に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記プロモーターは、pH、温度、および酸素からなる群より選択される因子によって調節される、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項8】
前記調節性プロモーターは、P170プロモーターである、請求項5に記載の発現ベクター。
【請求項9】
前記ベクターは、自律的に複製するレプリコンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項10】
前記ベクターは、プラスミド、転移可能要素、バクテリオファージ、またはコスミドから選択される、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
前記ベクターは、前記宿主細胞染色体に安定に組み込まれる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項12】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載のヌクレオチドコード配列を含む、乳酸菌。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の発現ベクターを含む、乳酸菌。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のヌクレオチドコード配列によってコードされるタンパク質を発現する、乳酸菌。
【請求項15】
請求項12、13または14のいずれか1項に記載の乳酸菌であって、該乳酸菌は、Lactococcus spp.、Streptococcus spp.、Lactobacillus spp.、Leuconostoc spp.、Pediococcus spp.、Brevibacterium spp.およびPropionibacterium spp.から選択される、乳酸菌。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の発現ベクターで形質転換された乳酸菌によって生成される、エンドトキシン非含有のアポリポタンパク質。
【請求項17】
エンドトキシン非含有のアポリポタンパク質を生成するための方法であって、
a)アポリポタンパク質をコードするヌクレオチドコード配列を含む乳酸菌を、該アポリポタンパク質の発現に適した条件下で培養する工程;および
b)該形質転換された乳酸菌から該アポリポタンパク質を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項18】
前記乳酸菌は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発現ベクターで形質転換される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヌクレオチドコード配列は、ヒトアポリポタンパク質をコードする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ヌクレオチドコード配列は、プレプロアポリポタンパク質、プレプロApoA I、プロApoA I、ApoA I、プレプロApoA II、プロApoA II、ApoA II、プレプロApoA−IV、プロApoA IV、ApoA IV、ApoA V、プレプロApoE、プロApoE、ApoE、プレプロApoA IMilano、プロApoA IMilano、ApoA IMilano、プレプロApoA IParis、プロApoA IParis、およびApoA IParisから選択されるヒトリポタンパク質をコードする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記調節ヌクレオチド配列のうちの1つは、前記ヌクレオチドコード配列に作動可能に連結される構成性プロモーターを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記調節ヌクレオチド配列のうちの1つは、前記ヌクレオチドコード配列に作動可能に連結される調節性プロモーターを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記プロモーターは、乳酸菌由来である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記プロモーターは、pH、温度、および酸素からなる群より選択される因子によって調節される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記調節性プロモーターは、P170プロモーターを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記ベクターは、自律的に複製するレプリコンを含む、請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ベクターは、プラスミド、転移可能要素、バクテリオファージまたはコスミドから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ベクターは、前記宿主細胞染色体に安定に組み込まれる、請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記乳酸菌は、Lactococcus spp.、Streptococcus spp.、Lactobacillus spp.、Leuconostoc spp.、Pediococcus spp.、Brevibacterium spp.およびPropionibacterium spp.から選択される、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2009−505652(P2009−505652A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527580(P2008−527580)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052968
【国際公開番号】WO2007/023476
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(507318059)セレニス セラピューティクス ホールディング エスア (3)
【Fターム(参考)】